説明

キャンディー用食感改良剤

【課題】現在、嗜好の変化とともにキャンディーをサクサクと容易に噛むことができ、幼児や老人等が食するに好適なものが求められている。本発明は、キャンディーの煮詰め時、冷却成型時および保存中において表面に油脂のしみだしがなく、噛んだ時に割れやすく咀嚼が容易で、特にサクサクとした歯ごたえが得られるキャンディーを製造するに有効なキャンディー用食感改良剤を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明者らはキャンディー中にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有させることで課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャンディーの煮詰め時、冷却成型時および保存中において表面に油脂のしみだしがなく、噛んだ時に割れやすく特にサクサクと容易に噛むことができ、風味、外観が良好なキャンディーを製造するに有効なキャンディー用食感改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にキャンディーは、ハードキャンディー、ソフトキャンディー、チューイングキャンディー等の口内において唾液および口内温度で溶かしながら食する嗜好品の菓子のことをさす。しかし、現在の嗜好変化とともにキャンディーをサクサクと容易に噛むことができ、幼児や老人等が食するに好適なものが求められている。
【0003】
従来のキャンディーには様々な種類があり、それぞれの風味、食感の違いはあるが、ハードキャンディーは噛んだときに割れにくいという共通の欠点を持っている。この欠点を改善するために、キャンディー中に油脂を多量に含有させ、親水性のポリグリセリン脂肪酸エステル、親油性グリセリン脂肪酸エステルおよび親水性のショ糖脂肪酸エステルを油脂に添加、混合したハードキャンディーがある。(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では油脂を多量に配合することで目的の食感を得ている。ゆえに、得られたハードキャンディー中に親水性のポリグリセリン脂肪酸エステル7.1%、親油性のグリセリン脂肪酸エステル4.3%、親水性のショ糖脂肪酸エステル1.4%の乳化剤が配合されることから風味も悪く、経済的でないことから現実的な解決には程遠く満足とはいい難い。
また、砂糖、水飴およびゼラチンを溶解して混合し、この混合液に砂糖微粉末を添加してエアレーションすることを特徴とする砂糖菓子の製造方法がある。(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この製造方法はゼラチンや砂糖微粉末を用いており、製造工程中にエアレーションが必要であることから、製造工程が複雑であり満足とはいい難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−106823
【特許文献2】特開2002−315510
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、煮詰め時、冷却成型時および保存中において表面に油脂のしみだしがなく、噛んだ時に割れやすくキャンディーをサクサクと容易に噛むことができるキャンディー用食感改良剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前述の現状に鑑み、キャンディーの糖質原料を煮詰め、油脂原料との混合時にポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有するキャンディー用食感改良剤を配合することで、表面に油脂のしみだしがなく、噛んだ時に割れやすいキャンディーとなることを見出し、目的を達成するに至った。すなわち本発明は、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含むキャンディー用食感改良剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のキャンディー用食感改良剤を含有するキャンディーは噛んだときに咀嚼が容易で違和感がなく噛むことができ、幼児や老人等が食するに好適なものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明はキャンディーを容易に噛むことができ、サクサクとした食感が得られるキャンディー用食感改良剤に関するものである。
【0009】
キャンディーは砂糖や水あめを主原料とする菓子の総称であり、その種類は非常に多く様々な分類法が考えられる。例示するとキャラメルやヌガーなどを代表とするソフトキャンディーにはミルクキャラメル、コーヒーキャラメル、チョコレートキャラメルおよびヌガーなどが挙げられる。タフィやドロップなどを代表とするハードキャンディーにはブリットル、バタースカッチ、クランチやフルーツドロップ、コーヒードロップ、チョコレートドロップ、ミンツドロップなどが挙げられる。飴菓子はバターボール、乳菓、梅干あめ、有平糖、ごま玉などが挙げられ、錠菓には錠菓、ラムネ菓子などが挙げられ、乾燥物にはフローレット、シュガーバー、メレンゲなどが挙げられる。また、ゼリーやマシュマロ、ボンボンなどもキャンディーに分類することができる。
本発明におけるキャンディーは原料に糖質原料と油脂原料より構成されるものであればよく、特に限定されるものではないが、ハードキャンディーが好適である。また、その製法は当該分野の公知の方法に準じて製造すれば良く、その方法には何ら制限されるものではない。
【0010】
本発明に使用するポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、グリセリンの重合度が2〜10、縮合リシノレイン酸の重合度が2〜6であることが好ましい。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量はキャンディー中に配合時0.01〜20%、好ましくは0.05〜10%、より好ましくは0.1%〜5%の範囲である。0.01%未満では目的の食感が得られず不十分であり、20%を超えると風味が悪く好ましくない。
【0011】
本発明のポリグリセリン脂肪酸エステルはキャンディーの調製が可能であれば何ら制限されるものではない。例示するとグリセリン重合度が2〜10で、構成する脂肪酸残基としてラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化は、当該分野で公知の方法に従って行えばよい。ポリグリセリンと脂肪酸との混合量を変更することにより種々の性質をもつポリグリセリン脂肪酸エステルを調製することができる。例えば、親水性のポリグリセリン脂肪酸エステルを得る場合、ポリグリセリンの水酸基価と脂肪酸の分子量から計算により等モルになるように重量を計算して仕込めばよく、新油性のポリグリセリン脂肪酸エステルを得る場合、脂肪酸のモル数を増加させればよい。
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルの混合比率は特に限定するものではないが、好ましくはポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル:ポリグリセリン脂肪酸エステルが90:10〜10:90、より好ましくは70:30〜50:50の範囲である。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル:ポリグリセリン脂肪酸エステルが90:10超過であると、キャンディーの表面に油脂のしみだしが発生することがあり、10:90未満であると、キャンディーが硬くなり咀嚼しにくいことがあり好ましくない。
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値はキャンディーの調製が可能であれば何ら制限されるものではないが、7.0〜20.0が好ましく、10.0〜16.0の範囲がより好ましい。HLB値が7.0未満であるとキャンディーの表面に油脂のしみだしが発生することがあり好ましくない。
なお、ここでいうHLB値とは下記式により算出された値をいう。
HLB=20×(1−S/A)
式中、S:エステルのけん化価、A:構成脂肪酸の酸価
【0012】
本発明のショ糖脂肪酸エステルはキャンディーの調製が可能であれば何ら制限されるものではなく、例示すると構成する脂肪酸残基としてラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
ショ等脂肪酸エステルのHLB値はキャンディーの調製が可能であれば何ら制限されるものではないが、5.0〜20.0が好ましく、7.0〜16.0の範囲がより好ましい。HLB値が5.0未満であるとキャンディーの表面に油脂のしみだしが発生することがあり好ましくない。
【0013】
その他、本発明品に併用することができる乳化剤はキャンディーの調製が可能であれば何ら制限されるものではなく、例示するとグリセリン脂肪酸エステル、酵素分解レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、コハク酸モノグリやクエン酸モノグリ等の有機酸モノグリセリド等が挙げられ、これら乳化剤を1種または2種以上併用して使用しても良い。
本発明のキャンディー用食感改良剤を含む乳化剤の添加量は乳化剤総量としてキャンディー配合時0.01%〜20%、好ましくは0.05%〜10%、より好ましくは0.1〜5%の範囲である。0.01%未満では目的の食感が得られず不十分であり、20%超過では風味が悪くなることがあり好ましくない。
【0014】
本発明に使用される油脂はキャンディーの調製が可能であれば何ら制限されるものではない。例示すると植物性油脂であればヤシ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、落花生油、コメ油、ナタネ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、大豆油、サフラワー油等、動物性油脂であれば乳脂、魚油、ラード、牛脂、豚脂等、さらにこれらの油脂を化学処理した硬化油、エステル交換油、分別油等が挙げられ、これらの油脂を1種または2種以上併用して使用しても良い。
【0015】
本発明に使用される糖質原料は、例えばグリセリン、ショ糖、果糖、麦芽糖、ブドウ糖、デキストリン異性化糖、水飴、還元水飴、トレハロース、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等が挙げられ、これら糖質原料を1種または2種以上併用して使用しても良い。
【0016】
本発明のキャンディーは本発明のキャンディー用食感改良剤を含めばよく乳蛋白質、大豆蛋白質、小麦蛋白質、ゼラチン、卵白、脱脂粉乳、全脂粉乳、牛乳等のタンパク質を1種または2種以上併用して使用しても良い。
本発明に使用されるpHの変化を抑制する目的に緩衝作用のあるものであれば何を使用しても良く、クエン酸塩類、リン酸塩類、重合リン酸塩類(ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、メタリン酸塩等)を1種または2種以上併用して使用しても良い。
また、安定性を高める目的に使用されるゲル化剤としては、寒天、ゼラチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、ペクチン、カラーギーナン等の多糖類やゲル化剤を用いてもよく、食物繊維としては、セルロース、ポリデキストロース、グアーガム酵素分解物、難消化性の多糖類等が挙げられる。
さらに、果汁や酸味料、香料等や着色料等を添加しても良い。
【0017】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
実施例1
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン70重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン30重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、本発明品1を得た。
【0019】
実施例2
縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン70重量%(サンソフトNo.818H、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン30重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、本発明品2を得た。
【0020】
実施例3
縮合リシノレイン酸テトラグリセリン70重量%(サンソフトNo.818DG、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン30重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、本発明品3を得た。
【0021】
実施例4
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン70重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸デカグリセリン30重量%(サンソフトQ−18S;HLB12.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、本発明品4を得た。
【0022】
実施例5
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン70重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ヘキサグリセリン30重量%(サンソフトQ−18F;HLB10.5、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、本発明品5を得た。
【0023】
実施例6
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン70重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ジグリセリン30重量%(サンソフトA−18D;HLB7.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、本発明品6を得た。
【0024】
実施例7
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン70重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とショ糖ステアリン酸エステル30重量%(リョートーシュガーエステルS−1670;HLB16、三菱化学フーズ株式会社製)を加熱混合し、本発明品7を得た。
【0025】
実施例8
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン70重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とショ糖ステアリン酸エステル30重量%(リョートーシュガーエステルS−570;HLB5、三菱化学フーズ株式会社製)を加熱混合し、本発明品8を得た。
【0026】
実施例9
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン90重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン10重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、本発明品9を得た。
【0027】
実施例10
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン50重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン50重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、本発明品10を得た。
【0028】
実施例11
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン10重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン90重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、本発明品11を得た。
【0029】
実施例12
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリン60重量%(サンソフトNo.818R、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン20重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)とショ糖ステアリン酸エステル20重量%(リョートーシュガーエステルS−1670;HLB16、三菱化学フーズ株式会社製)を加熱混合し、本発明品12を得た。
【0030】
比較例1
ショ糖ステアリン酸エステル70重量%(リョートーシュガーエステルS−070;HLB1以下、三菱化学フーズ株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン30重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、比較品1を得た。
【0031】
比較例2
ナタネ硬化油脂肪酸モノ・ジグリセリド70重量%(サンソフトNo.1030、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン30重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、比較品2を得た。
【0032】
比較例3
精製大豆レシチン70重量%(サンレシチンL−61、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ペンタグリセリン30重量%(サンソフトA−181E;HLB13.0、太陽化学株式会社製)を加熱混合し、比較品3を得た。
【0033】
比較例4
ナタネ硬化油脂肪酸モノ・ジグリセリド60重量%(サンソフトNo.1030、太陽化学株式会社製)とモノステアリン酸ヘキサグリセリン30重量%(サンソフトQ−18F;HLB10.5、太陽化学株式会社製)とショ糖ステアリン酸エステル10重量%(リョートーシュガーエステルS−1670;HLB16、三菱化学フーズ株式会社製)を加熱混合し、比較品4を得た。
【0034】
試験例1
表1〜3記載のようにグラニュー糖50g、水あめ(Bx.81)43.2gを計量し、水6.8gを加え混合し、この混合液を加熱し120℃になるように煮詰めた後、油脂とともに実施例で調製した本発明品1〜12もしくは本発明品13(サンソフトNo.818R)または比較品を混合し、冷却、成型することによりキャンディー1〜19を得た。
【0035】
試験例2 (食感評価)
得られたキャンディーの食感は20名のパネラーによる官能評価を実施し、以下の基準で評価した。
10:20名中、20名が噛んだときに割れやすいと評価した。
9:20名中、19名または18名が噛んだときに割れやすいと評価した。
8:20名中、17名または16名が噛んだときに割れやすいと評価した。
7:20名中、15名または14名が噛んだときに割れやすいと評価した。
6:20名中、13名または12名が噛んだときに割れやすいと評価した。
5:20名中、11名または10名が噛んだときに割れやすいと評価した。
4:20名中、9名または8名が噛んだときに割れやすいと評価した。
3:20名中、7名または6名が噛んだときに割れやすいと評価した。
2:20名中、5名または4名が噛んだときに割れやすいと評価した。
1:20名中、3名以下が噛んだときに割れやすいと評価した。
【0036】
試験例3 (風味評価)
得られたキャンディーの風味は20名のパネラーによる官能評価を実施し、以下の基準で評価した。
10:乳化剤のにがみとにおいを全く感じることなく大変良い。
9:乳化剤のにがみとにおいを感じることなく大変良い。
8:乳化剤のにがみとにおいを感じることなく良い。
7:乳化剤のにおいを極僅かに感じるが、にがみは感じることなく良い。
6:乳化剤のにおいを僅かに感じるが、にがみは感じることなく良い。
5:乳化剤のにおいを僅かに感じ、にがみを極僅かに感じるが普通。
4:乳化剤のにおいを僅かに感じ、にがみを僅かに感じるが普通。
3:乳化剤のにがみとにおいを感じ悪い。
2:乳化剤のにがみとにおいを強く感じ悪い。
1:乳化剤のにがみとにおいを極めて強く感じ大変悪い。
【0037】
試験例4 (油のしみだし評価)
得られたキャンディーの表面の油のしみだしは以下の基準で評価した。
5:表面に油のしみだしが全く見られず大変良好であった。
4:表面に油のしみだしが見られず大変良好であった。
3:表面に油のしみだしが極少量見られたが良好であった。
2:表面に油のしみだしが少量見られた。
1:表面に油のしみだしが見られた。
【0038】
試験例5 (糖分離状態の評価)
得られたキャンディーの糖の分離は以下の基準で評価した。
5:糖の分離は全く見られず大変良好であった。
4:糖の分離は見られず大変良好であった。
3:糖の分離が極少量見られたが良好であった。
2:糖の分離が少量見られた。
1:糖の分離が見られた。
【0039】
試験例6 (硬度測定)
得られたキャンディーの硬度は木屋式硬度計(KIYA SEISAKUSHO,LTD.)を用いて測定した。試料は厚さ5.0mmに成型したものを用いて5回測定し、平均値を算出した。
なお、表中の(N)とはニュートンであり、測定値より換算した値を示す。
試験例2〜6の評価結果および硬度測定結果を評価として表1〜3に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1より明らかなように、本発明品1〜5を含有するキャンディー1〜5は噛んだときに割れやすく、風味も良かった。さらに、キャンディー表面の油のしみだしや糖の分離が見られず、大変良好であった。また、硬度は17.6〜78.0Nであり、健康な成人男性の噛む力が約680Nであるのに対し、20%まで低下すると言われる義歯の人および幼児や老人等も容易に咀嚼することができる硬さであった。本発明品6〜8を含有するキャンディー6〜8はキャンディー7で食感が割れやすく、硬度は58.8Nであり、風味が良く、油のしみだしおよび糖も分離も見られず良好であった。キャンディー6で糖の分離が極少量見られ、キャンディー8で油のしみだしが極少量見られたが、硬度がそれぞれ26.5N、49.0Nであり、目的の食感が得られ噛んだときに割れやすく、風味も良かった。キャンディー6の硬度が低い値であったことは糖の分離が極少量見られたことに起因すると考えられる。
【0042】
【表2】

【0043】
表2より明らかなように、本発明品9〜11を含有するキャンディー9〜11はキャンディー10で食感が割れやすく、硬度が53.9Nで、風味が良く、油のしみだしおよび糖の分離も見られず良好であり、キャンディー9で油のしみだしおよび糖の分離が極少量見られたが、噛んだときに割れやすく、硬度は60.8Nで、風味も良かった。また、キャンディー11は風味が良く、油のしみだしおよび糖の分離は良好であり、硬度は93.1Nであったものの、食感は11名が噛んだときに割れやすいと評価した。加えて、キャンディー13は油のしみだし、糖の分離が極少量見られるものの、硬度は55.1Nで、食感が割れやすく、風味は良かった。キャンディー14は添加量が多いことにより風味は普通であったが、硬度が24.5Nで目的の食感が得られ噛んだときに割れやすく、油のしみだしや糖の分離が全く見られず良好であった。キャンディー15は添加量が少ないことにより硬度が86.2Nであったものの、食感は11名が噛んだときに割れやすいと評価し、油のしみだしや糖の分離が極少量見られたが、風味は良かった。
【0044】
【表3】

【0045】
表3より明らかなように、比較品1〜4を含有するキャンディー16〜19は硬く噛み割ることが不可能であった。キャンディー16は食感が硬く咀嚼することはできないとともに、硬度は本測定器の最大加圧重196Nでは砕けることなく非常に硬く、義歯の人および幼児や老人等の噛む力が弱い人にとって、咀嚼が容易ではない。また、油のしみだしや糖の分離が見られ不十分であった。キャンディー17は16と同様に噛んだとき硬く割ることができず硬度も196N以上であり、油のしみだしや糖の分離が見られ不十分であった。加えて、キャンディー18は目的のキャンディーを得ることができないとともに、硬度が196N以上であり、風味は乳化剤のにがみを強く感じ悪かった。キャンディー19は硬度が196N以上であり噛んだときに硬く咀嚼することができないとともに、油のしみだしや糖の分離が見られ不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明はキャンディーの製造においてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有するキャンディー用食感改良剤を配合することにより、咀嚼が容易で違和感がなく噛むことができることから、あごの力が強くない人や、幼児や老人等が食する際、簡単に咀嚼することができるキャンディーに利用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有することを特徴とするキャンディー用食感改良剤。
【請求項2】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する請求項1記載のキャンディー用食感改良剤。
【請求項3】
ショ糖脂肪酸エステルを含有する請求項1または2記載のキャンディー用食感改良剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか記載のキャンディー用食感改良剤を含有することを特徴とするキャンディー。

【公開番号】特開2011−147367(P2011−147367A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9804(P2010−9804)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】