説明

キートップ部材の製造方法

【課題】表面硬度が高く、キートップのエッジをシャープに保持できるキーットップ部材を製造すること。
【解決手段】1または2以上のキートップと、当該キートップの底部に連接する連接部とを備えるキートップ部材を製造する方法であって、連接部を形成するための第1の開口部と、その第1の開口部にあってそれよりさらに窪む、キートップを形成するための第2の開口部とを有するシリコーンゴム製の型枠の第1の開口部の上に、基材シートを配置する配置工程(ステップS102)と、型枠の各開口部に、アクリレート系樹脂を少なくとも含有する樹脂を注入する樹脂注入工程(ステップS103)と、樹脂を硬化させる硬化工程(ステップS104)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キートップ部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話等に用いられるキートップの表面の耐磨耗性を向上させるために、キートップの表面にキートップよりも高い硬度を有するハードコート層を形成している。ハードコート層の形成方法として、一般的に、キートップの表面にハードコート材をスプレー塗布する方法が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−182468号公報(発明の詳細な説明)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、スプレー塗布によりハードコート層を形成する場合には、キートップのエッジにハードコート材の液溜りが形成されやすい。その結果、キートップのエッジが丸みを帯び、シャープな形状が損なわれる。また、スプレー塗布では、硬化時におけるハードコート材の硬化や収縮が不均一になり、残留応力が発生する。その結果、硬化後のハードコート層にクラック(ひび割れ)が発生したり、キートップの表面からハードコート層が剥がれ易くなる。したがって、スプレー塗布では、均一の厚みを有するハードコート層を得ることが困難である。
【0005】
さらに、キートップ形成用の樹脂シートにハードコート処理を行った後にエンボス加工を施して、キートップを形成するという方法も考えられる。しかし、当該方法では、樹脂シートが厚すぎる場合、エンボス加工を施すことが難しい。また、樹脂シートの厚みが薄すぎる場合、その一部が極端に引き延ばされ、当該樹脂シートの一部の強度が低下する。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表面硬度が高く、かつキートップのエッジをシャープに保持できるキートップ部材の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、キートップ部材にハードコート材を塗布したり、樹脂シートをエンボス加工することなく、ハードコート材であるアクリル系樹脂を型枠に注入してキートップ部材を製造するようにしている。この際、シリコーンゴム製の型枠を用いて成形するようにしている。具体的には、本発明に係るキートップ部材の製造方法は、1または2以上のキートップと、当該キートップの底部に連接する連接部とを備えるキートップ部材を製造する方法であって、連接部を形成するための第1の開口部と、その第1の開口部にあってそれよりさらに窪む、キートップを形成するための第2の開口部とを有するシリコーンゴム製の型枠の第1の開口部の上に、基材シートを配置する配置工程と、型枠の各開口部に、アクリレート系樹脂を少なくとも含有する樹脂を注入する樹脂注入工程と、樹脂を硬化させる硬化工程と、を含むものとしている。
【0008】
このような製造方法を採用すると、キートップ部材自体がハードコート材で形成されるので、従来のようなハードコート層の剥離、ひび割れは発生しない。また、ハードコート材を塗布する工程がないので、工程の簡略化を図ることができると共に、シリコーンゴム製の型枠における開口部のエッジをシャープにしさえすれば、キートップのエッジをシャープに保つことができる。また、エンボス加工を採用しないので、高強度なキートップ部材を得ることができる。さらに、金属製の金型を用いずに、シリコーンゴム製の型枠を用いるので、離型剤を用いなくても、樹脂硬化後のキートップ部材を当該型枠から容易にはずすことができる。
【0009】
また、他の本発明は、さらに、型枠は、キートップの天面に凸部を形成するための開口部であって、第2の開口部にそれよりさらに窪む第3の開口部、あるいはキートップの天面に凹部を形成するための突出部であって、第2の開口部に、その底面から突出する突出部を有するものとしている。
【0010】
このような型枠を用いてキートップ部材を製造すると、キートップ天面に形成される凸部または凹部のように高低差の極めて小さな部分があっても、クラックを生じることなく、かつシャープなエッジを有する形態にて製造できる。
【0011】
また、他の本発明は、さらに、基材シートは透明な樹脂シートであり、樹脂はアクリレート系樹脂と光重合開始剤とを少なくとも含み、硬化工程を、基材シートを通して樹脂に光を照射し、樹脂を硬化させる工程としている。
【0012】
このように、光硬化性樹脂を用いてキートップ部材を製造すると、硬化速度が高いので、製造工期を短くできる。また、容易に常圧成形を実現できる。
【0013】
また、他の本発明は、さらに、樹脂注入工程において、23℃の粘度が10mPa・S以上300000mPa・S以下の範囲である樹脂を型枠の各開口部に注入するものである。
【0014】
このように、特定の範囲の粘度を有する光硬化性樹脂を用いると、型枠内の隅々にまで樹脂を充填でき、常圧成形でも、シャープなエッジを持つキートップ部材を製造しやすくなる。粘度が10mPa・S以上の場合には、厚さの薄いキートップ部材であっても容易に製造できる。一方、粘度が300000mPa・S以下の場合には、微細な凹凸を有するキートップ部材であってもシャープなエッジを形成できる。
【0015】
また、他の本発明は、さらに、樹脂注入工程において、23℃のチキソトロピーを示す値が0.5以上3.0以下の範囲である樹脂を、型枠の各開口部に注入するものである。
【0016】
このように、特定の範囲のチキソトロピーを有する光硬化性樹脂を用いると、均一な強度で、かつシャープなエッジを持つキートップ部材を製造しやすくなる。チキソトロピーを示す値が0.5以上の場合には、樹脂を構成する複数の材料(添加材、充填材等を含む)を均一に分散させることができるので、場所によって強度のバラツキの少ないキートップ部材を容易に製造できる。一方、チキソトロピーを示す値が3.0以下の場合には、気泡を巻き込むことなく樹脂を注入できるので、微細な凹凸を有するキートップ部材を容易に製造できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、表面硬度が高く、かつキートップのエッジをシャープに保持できるキートップ部材を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法について、図1から図4に基づいて説明する。なお、以下の説明において、図2〜図4に示す矢示X1方向を上、矢示X2方向を下、矢示Y1方向を左、矢示Y2方向を右、矢示Z1方向を表および矢示Z2方向を裏とそれぞれ規定する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係るキートップ部材の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【0020】
本実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法は、図1に示すように、加飾工程(S101)と、配置工程(S102)と、樹脂注入工程(S103)と、硬化工程(S104)と、離型工程(S105)という各工程を有する。
【0021】
図2は、本発明の一実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法に用いられる型枠10の斜視図であり、型枠10を開口側から見た状態を示す図である。図3は、本発明の一実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法を説明するための図であり、(A)は、配置工程(S102)を説明するための図であり、(B)は、樹脂注入工程(S103)を説明するための図である。図4は、図3に続いて、本発明の一実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法を説明するための図であり、(A)は、硬化工程(S104)を説明するための図であり、(B)は、離型工程(S105)後のキーットップ部材の断面図である。
【0022】
図1に示すように、まず、基材シート26の片面に加飾層28を形成する(ステップS101)。加飾層28の形成方法として、UV硬化型や熱硬化型のスクリーンインキを用いたグラビア印刷、シルク印刷、凸版印刷、オフセット印刷、ホットスタンプおよびフレキソ印刷等の印刷法が挙げられるが、加飾層28の形成方法は、特にこれらの方法に限定されるものではない。また、コンピュータ画像とプリンタを用いたフルカラーによるオンデマンド印刷を用いるようにしても良い。なお、加飾層28を形成する前に、必要に応じて基材シート26に一度、UV処理、コロナ放電処理またはスパッタリング処理等の表面処理を行ってから、加飾層28を形成すると、より一層、加飾層28を形成しやすくなる。
【0023】
次に、図3(A)に示すように、シリコーンゴム製の型枠10に、加飾層28を形成した面が型枠10の内方に向くように、基材シート26を配置する(ステップS102)。図2に示すように、型枠10は、略直方体の空間を有する1つの第1の開口部11を有する。第1の開口部11の底部12には、さらに裏方向に向かって窪む略直方体の空間を有する第2の開口部13が12個形成されている。各第2の開口部13の底面14には、さらに裏方向に向かって窪む第3の開口部15が形成されている。第1の開口部11は、キートップ部材における各キートップの底部を連接する平板状の連接部を形成するための空間である。第2の開口部13は、各キートップを形成するための空間である。第3の開口部15は、各キートップ天面にある凸状の数字、文字もしくは記号(凸部)を形成するための空間である。具体的には、第3の開口部15は、数字の「0」から「9」、アスタリスク(*)およびシャープ(#)の合計12個の数字および記号を反転させた形態の凹部である。
【0024】
基材シート26は、型枠10における第1の開口部11の開口面より少し小さい面積を有する樹脂板である。このため、後述する樹脂注入工程(ステップS103)では、基材シート26と、第1の開口部11の開口面との間に存在する隙間から、樹脂が注入される。
【0025】
基材シート26は、透光性を有する薄肉状の樹脂シートである。基材シート26として、熱可塑性樹脂からなるシートを好適に採用することができる。熱可塑性樹脂として、例えば、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニデン系、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体系、ポリフッ化ビニル系、ポリビニルブチラール系、ポリフッ化ビニデン系等のビニル系重合体、ポリスチレン系、アクリルスチレン系、ABS等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸エチル系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリアクリルニトリル等のアクリル系樹脂(PMMA系樹脂)、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリメチルペンテン系等のポリオレフィン系樹脂、酢酸セルロース系、ニトロセルロース系等のセルロース系誘導体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体系等のポリエステル系樹脂やポリエステル系エラストマー、ブタジエン系ゴム、クロロプレン系ゴム、シリコーンゴム等のゴム系樹脂、ビニロン系、ポリビニルアルコール系等のポリビニルアルコール系樹脂およびウレタン系、PC系樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂として、例えば、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリイミド系、ポリアミドイミド系、尿素系およびメラミン系の各樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に、PMMA系樹脂、PC系樹脂、ABS系樹脂は、透明性が高く、加工性および寸法安定性に優れているため、基材シート26の材料として好適である。また、基材シート26の厚みは、20μm以上2000μm以下とするのが好ましい。20μm以上の厚みとすると、キートップのクリック感が得られやすく、2000μm以下の厚みとすると、機械加工が容易でキートップ部材の薄型化も図ることができる。当該厚みは、50μm以上1000μm以下とするのが更に好ましく、200μm以上700μm以下とするのが最も好ましい。
【0026】
次に、図3(B)に示すように、型枠10の第1の開口部11、第2の開口部13および第3の開口部15に未硬化状態の光硬化性樹脂23を注入する(ステップS103)。光硬化性樹脂23は、第1の開口部11の開口面と基材シート26との隙間から注入される。光硬化性樹脂23としては、キートップ部材の裏側から照光することを考慮して、無色透明または半透明のものを用いるのが好ましい。本実施の形態に係る製造方法に用いられる光硬化性樹脂23としては、紫外線硬化型(UV硬化型)の樹脂が好適に用いられる。特に、光硬化性樹脂23の主剤には、アクリレート系樹脂を採用するのが好適である。ここで、アクリレート系樹脂として、例えば、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート(PC)系、脂肪族系等からなるウレタン系アクリレートまたはウレタン系メタアクリレート、ビスフェノールA型系、ビスフェノールF型系、ビスフェノールAD型系、水添加型ビスフェノールA型系、ダイマー酸変性系等からなるエポキシ系アクリレート樹脂またはエポキシ系メタアクリレート樹脂、ポリエステル系アクリレート樹脂、ポリエステル系メタアクリレート樹脂、シリコーン系アクリレート樹脂、シリコーン系メタアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0027】
また、光硬化性樹脂23は、主剤の他に、光重合開始剤を含む。光重合開始剤として、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系およびチオキサントン系の光重合開始剤等を好適に用いることができる。特に、光重合開始剤には、その吸収波長領域が365nm以上400nm以下となるものを採用するのが好ましい。また、光重合開始剤の添加量は、アクリレート系樹脂の重量を100とすると、それに対して0.2以上15以下の重量とするのが好ましく、0.5以上10以下の重量とするのがより好ましく、1以上5以下の重量とするのが最も好ましい。このような添加量を採用すると、光硬化性樹脂23に深部硬化性を付与することが可能となり、光硬化性樹脂23を完全に硬化させることができる。また、光硬化性樹脂23を硬化させる際に、該光硬化性樹脂23が収縮し過ぎるのを防止できると共に、黄変するのも防止できる。
【0028】
また、本実施の形態に係る製造方法に用いられる光硬化性樹脂23の粘度は、23℃の温度下で、10mPa・S以上300000mPa・S以下であるのが好ましく、100mPa・S以上100000mPa・S以下であるのが更に好ましく、200mPa・S以上10000mPa・S以下であるのが最も好ましい。また、光硬化性樹脂23のチキソトロピック性(揺動時に見かけ粘度が低く、静止時に粘度が高くなる性質)は、23℃の温度下で、回転粘度計法にて測定した値が0.5以上3.0以下であるのが好ましく、0.7以上2.5以下であるのが更に好ましく、0.8以上2.0以下であるのが最も好ましい。
【0029】
また、光硬化性樹脂23が硬化した後の機械的強度、耐水性または密着力を向上させるために、必要に応じて、光硬化性樹脂23に各種の充填剤、シランカップリング剤もしくはチタネート系カップリング剤等を加えるようにしても良い。充填材としては、例えば、コロイダルシリカ、微粉砕状シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ等の各種シリカ系充填剤、沈降性バリウム、セリサイト、マイカ、水酸化アルミニウムの他、各種ウイスカーまたは各種ガラスビーズ等が挙げられるが、特にこれらのものに限定されるものではない。また、シランカップリング材としては、アミノ官能系、エポキシ官能系、ビニル官能系、メルカプト官能系もしくは不飽和官能系等から成るものが挙げられるが、特にこれらのものに限定されるものではない。また、上述したものの他、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、老化防止剤もしくは黄変を抑制するためのブルーミング剤等を必要に応じて加えるようにしても良い。
【0030】
また、粘度および/またはチキソトロピック性を調整すべく、光硬化性樹脂23の主剤として、単官能性モノマー、二官能性モノマーあるいは多官能性モノマーを選択するのが好ましい。これらは、使用する主剤の溶解度パラメータ(SP値)もしくは、用途によって適宜使い分けることができる。
【0031】
次に、図4(A)に示すように、基材シート26の表側(すなわち、加飾層28の形成面とは反対側)から紫外線(UV)を照射して、未硬化状態の光硬化性樹脂23を硬化させる(ステップS104)。この硬化工程を続けることによって、キートップ部材の耐磨耗性、耐薬品性または耐水性等の特性を向上させることができる。光硬化性樹脂23に照射するUVの放射照度(mW/cm)と積算照射量(mJ/cm)は、使用する光硬化性樹脂23の主剤や種類、キートップ部材の厚み等を考慮して決める必要がある。なお、光硬化性樹脂23に代えて、電子線硬化性の樹脂を採用しても良い。この場合、電子線を照射することによって、樹脂を硬化させる必要がある。
【0032】
次に、キーットップ部材を、型枠10から取り外す(ステップS105)。この結果、図4(B)に示すように、凸部32と、各キートップ30と、各キートップ30の底部に連接する平板状の連接部31とが光硬化性樹脂23から成るキーットップ部材1が完成する。
【0033】
以上のように構成されたキーットップ部材の製造方法では、キートップ部材1自体が光硬化性樹脂23で形成されるので、従来のようなハードコート層の剥離、ひび割れは発生しない。また、ハードコート材を塗布する工程がないので、工程の簡略化を図ることができると共に、型枠10における各開口部11,13,15のエッジをシャープにしさえすれば、各キートップ30、連接部31および凸部32のエッジをシャープに保つことができる。また、エンボス加工を採用しないので、高強度なキートップ部材1を得ることができる。さらに、金属製の金型を用いずに、シリコーンゴム製の型枠10を用いるので、離型剤を用いなくても、樹脂硬化後のキートップ部材1を当該型枠10から容易にはずすことができる。また、型枠10には、第3の開口部15が設けられているため、キートップ天面に形成される凸部32のように高低差の極めて小さな部分があっても、クラックを生じることなく、かつシャープなエッジを有する形態にて製造できる。また、光硬化性樹脂23にUV照射を行ってキートップ部材1を製造している。そのため、硬化速度が高くなり、製造工期を短くできる。また、容易に常圧成形を実現できる。
【0034】
また、キーットップ部材の製造方法では、樹脂注入工程において、23℃の粘度が10mPa・S以上300000mPa・S以下の範囲である光硬化性樹脂23を型枠10の各開口部11,13,15に注入している。このため、型枠10内の隅々にまで光硬化性樹脂23を充填でき、常圧成形でもシャープなエッジを持つキートップ部材1を製造しやすくなる。粘度が10mPa・S以上の場合には、厚さの薄いキートップ部材1であっても容易に製造できる。一方、粘度が300000mPa・S以下の場合には、微細な凹凸を有するキートップ部材1であってもシャープなエッジを形成できる。
【0035】
また、キーットップ部材の製造方法では、樹脂注入工程において、23℃のチキソトロピーを示す値が0.5以上3.0以下の範囲である光硬化性樹脂23を、型枠10の各開口部11,13,15に注入している。このため、均一な強度で、かつシャープなエッジを持つキートップ部材1を製造しやすくなる。チキソトロピーを示す値が0.5以上の場合には、光硬化性樹脂23を構成する複数の材料(添加材、充填材等を含む)を均一に分散させることができるので、場所によって強度のバラツキの少ないキートップ部材1を容易に製造できる。一方、チキソトロピーを示す値が3.0以下の場合には、気泡を巻き込むことなく樹脂を注入できるので、微細な凹凸を有するキートップ部材を容易に製造できる。
【0036】
また、キーットップ部材の製造方法では、吸収波長が365nm以上400nm以下の光重合開始剤を用いている。吸収波長が365nm以上の光重合開始剤を用いると、光硬化性樹脂23に深部硬化性を付与することができ、加飾層28が吸収波長を遮断して光硬化性樹脂23の一部が未硬化状態となるのを防止することができる。また、吸収波長が400nm以下の光重合開始剤を用いると、硬化したキートップ部材1が黄変せず、高い透明性を確保できる。
【0037】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0038】
上述の実施の形態では、光硬化性樹脂23として、UV硬化型のものが採用されているが、これに代えて、電子線硬化型、熱硬化型もしくは室温硬化可能な他の樹脂を採用しても良い。
【0039】
また、上述の実施の形態では、キートップ30の天面に凸部32を形成しているが、当該天面に数字、文字もしくは記号の形状を有する凹部を形成するように、シリコーンゴム製の型枠10において、第2の開口部13の底面14に突出部を設けても良い。また、図1に示すステップS102とステップS103の順序を変え、型枠10に光硬化性樹脂23を注入した後に、基材シート26を配置しても良い。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。表1に、各実施例および各比較例の製造条件および得られた結果を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例1)
1.サンプルの製造
テフロン(登録商標)製の500cc用のビーカー(ニチヤス社製)に、ウレタン系オリゴマー(根上工業株会社製、製品名:アートレジンUN−9000PEP)90重量部、ウレタン系オリゴマー(日本合成化学工業株会社製、製品名:紫光UV−1700B)10重量部、アクリレート(大阪有機化学株式会社製、製品名:V#150)30重量部およびアクリレート(大阪有機化学株式会社製、製品名:HEA)70重量部を入れ、当該ビーカーをデジタルホットスターラー(アズワン社製、製品名:DP−1M)上で60℃に加温しながらフッ素コーティングされたステンレス軟膏ヘラ(アズワン社製、製品名:FP−12)を用いて、30分掛けて攪拌しながら、これらを均一に溶解させた。そして、当該ビーカーをデジタルホットスターラーから外して、室温まで冷却させた。次に、アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、製品名:KBM603)1重量部および光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、製品名:イルガキュア1700)3重量部を、それぞれ上記のビーカーに加え、ステンレス軟膏ヘラを用いて、温室で攪拌しながら均一に混合し、上記の材料が混合された配合物を得た。次に、当該配合物を500ml用の茶褐色ビン(アズワン社製、製品名:グッドボーイ褐色ビン)に移し変え、蓋をして、温度23℃、湿度50%RHの条件下の部屋で一夜放置してサンプル−1を得た。また、回転式粘度計(トキメック株式会社製、製品名:B型回転式粘度計)を用いて、サンプル−1の粘度およびIT値(回転速度が1rpmと10rpmにおける粘度比)を測定した。なお、粘度を計測する際の温度および回転式粘度計の回転速度は、それぞれ23℃および20rpmとした。
【0043】
2.試験片の製造
次に、基材シートとして、PC樹脂シート(帝人化成株式会社製、製品名:パンライトフィルムPC−3555、大きさ:A4、厚さ:0.25mm)を用意した。次に、加飾層を形成するために、基材シートを昇華型熱転写プリンタ(日本ビクター株式会社製、製品名:カラープリンタTrueprint3500)にセットした。染料を受容するための塩化酢酸ビニル系樹脂からなる受容層(日本ビクター株式会社製、製品名:JP−D304F)を同プリンタにセットし、当該受容層を基材シートに印刷した。次に、昇華型カラーインクリボン(日本ビクター株式会社製、製品名:JP−D304I)を用いて基材シートに模様を印刷した。最後に、オーバーコートインクリボン(日本ビクター株式会社製、製品名:JP−T340I)を用いて、基材シートに保護層を印刷した。なお、加飾層の全光線透過率をJIS K7361に従い、室温23℃の条件下で、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、型式:NDH2000型)を用いて測定したところ、当該加飾層の全光線透過率は、40%であった。次に、このようにして得られた基材シートを、NTカッターを用いて、150mm×100mmの大きさに切断し、加飾付き基材シートを得た。次に、シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、製品名:KE1600)100重量部およびシリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、製品名:Cat−1600)10重量部をテフロン(登録商標)製の500mlビーカーに入れ、ステンレス軟膏ヘラを用いて、攪拌しながら均一に混合し、当該混合物をステンレス製金型(大きさ:152mm×102mm×20mm)に注ぎ、室温23℃の条件下で一昼夜置いて硬化させた。次に、この硬化させたシリコーンゴムの表面にアラビア数字の0〜9およびアラビア文字の#を彫り、シリコーンゴムからなる型枠を得た。型枠に彫られているアラビア数字および文字の寸法は、以下のとおりである。アラビア数字の0(文字幅:0.5mm、文字高さ:0.5mm)、アラビア数字の1(文字幅:0.5mm、文字高さ:0.5mm)、アラビア数字の2(文字幅:0.5mm、文字高さ:1.0mm)、アラビア数字の3(文字幅:0.5mm、文字高さ:1.0mm)、アラビア数字の4(文字幅:0.2mm、文字高さ:1.5mm)、アラビア数字の5(文字幅:0.2mm、文字高さ:1.5mm)、アラビア数字の6(文字幅:1.0mm、文字高さ:1.0mm)、アラビア数字の7(文字幅:1.0mm、文字高さ:1.0mm)、アラビア数字の8(文字幅:0.2mm、文字高さ:0.5mm)、アラビア数字の9(文字幅:0.2mm、文字高さ:0.5mm)、アラビア文字の#(文字幅:0.2mm、文字高さ:0.5mm)。次に、23℃の温度下で、この型枠内にサンプル−1を注型した。さらに、加飾付き基材シートをその印刷面がサンプル−1と接触するように型枠内に配置した。この状態で加飾付き基材シートの上に重さ2kgの錘を30秒間載せた後、当該錘を外した。次に、加飾付き基材シートが配置された型枠を加飾付き基材シートの印刷面側からUVが当たるようにUV照射装置に設置した。次に、UVランプのコンベラーからの高さが14cm、放射照度が150mW/cmで積算照射量が2500mJ/cmとなるようにUVを照射した。なお、UVを照射する際のUVランプとして、メタルハイドランプ(岩崎電気株式会社製、製品名:M04−L41)を採用し、UV照射装置としてコンベヤタイプのUV照射装置(岩崎電気株式会社製、製品名:アイミニグランテージ(4kW)ECS−401GX)を用いた。UV照射終了後、型枠をUV照射装置から外し、当該型枠を23℃まで冷却した。その後、加飾付き基材シートを型枠から外し、試験片−1を得た。
【0044】
3.評価方法および合格判定基準
(1)粘度:回転式粘度計(トキメック株式会社製、製品名:B型回転式粘度計)を用いてサンプル−1の粘度が10〜300000mPa・Sの範囲であることを確認できた場合に、合格とした。なお、測定条件は、温度を23℃とし、回転速度を20rpmとした。
【0045】
(2)粘度:回転式粘度計(トキメック株式会社製、製品名:B型回転式粘度計)を用いてサンプル−1の粘度が10〜350000mPa・Sの範囲であることを確認できた場合に、合格とした。なお、測定条件は、温度を60℃とし、回転速度を20rpmとした。
【0046】
(3)TI値:回転式粘度計(トキメック株式会社製、製品名:B型回転式粘度計)を用いて、回転速度が1rpmの場合と、10rpmの場合のサンプル−1の粘度比(1/10rpm)が0.5〜0.3の範囲であることを確認できた場合に、合格とした。なお、測定温度を、23℃または60℃とした。
【0047】
(4)注型の可否:型枠面にサンプル−1を乗せ、サンプル−1が型枠面に彫られたアラビア数字および文字の凹部に入ってゆくことが目視にて確認できた場合に、合格とした。
【0048】
(5)アラビア数字および文字の凹凸:双眼実体顕微鏡(カールトン株式会社製、製品名:DST 44FT型)を用いて、試験片−1上に、アラビア数字および文字の微細な凹凸が均一に形成されていることを確認できた場合に、合格とした。なお、測定条件は、温度を23℃とし、双眼実体顕微鏡の倍率を20倍とした。
【0049】
(6)アラビア数字および文字のエッジ:双眼実体顕微鏡(カールトン株式会社製、製品名:DST 44FT型)を用いて、試験片−1上に、アラビア数字および文字のコーナーがシャープに形成されていることを確認できた場合に、合格とした。なお、測定条件は、温度を23℃とし、双眼実体顕微鏡の倍率を20倍とした。
【0050】
なお、本実施例では、粘度の評価については、(2)の評価方法を採用せず、(1)の評価方法のみを採用した。また、(3)の評価方法については、23℃の場合のみ合格判定を行った。
【0051】
4.結果
(1)粘度:50mPa・S(23℃)であった。:○(合格)、(3)TI値:1.1(23℃)であった。:○(合格)、(4)注型の可否:サンプル−1はアラビア数字および文字が彫られた凹部にスムーズに入っていった。:○(合格)、(5)アラビア数字および文字の凹凸:アラビア数字および文字の微細な凹凸が均一に形成されていた。:○(合格)、(6)アラビア数字および文字のエッジ:アラビア数字および文字のコーナーのエッジは、シャープであった。:○(合格)
【0052】
(実施例2)
1.サンプルの製造
実施例1の配合物を、再び、実施例1で用いたビーカーに移し、充填材として球状シリカ(電気化学工業株式会社製、製品名:FB−40S)100重量部を加え、プラネタリーミキサー(株式会社井上製作所製、型式:PLM−5)を用いて、1000rpmの回転速度で30分間攪拌し、各材料が均一に混ざった配合物を得た。この配合物を実施例1で用いた茶褐色ビンに入れた後、実施例1と同様の方法でサンプル−2を作製した。
【0053】
2.試験片の製造
サンプル−2を用いて、実施例1と同様の方法で試験片−2を作製した。
【0054】
3.評価方法および合格判定基準
実施例1の場合と同様の評価方法および合格判定基準を採用した。なお、本実施例では、粘度の評価については、(2)の評価方法を採用せず、(1)の評価方法のみを採用した。また、(3)の評価方法については、23℃の場合のみ合格判定を行った。
【0055】
4.結果
(1)粘度:30000mPa・S(23℃)であった。:○(合格)、(3)TI値:0.8(23℃)であった。:○(合格)、(4)注型の可否:サンプル−2はアラビア数字および文字が彫られた凹部にスムーズに入っていった。:○(合格)、(5)アラビア数字および文字の凹凸:アラビア数字および文字の微細な凹凸が均一に形成されていた。:○(合格)、(6)アラビア数字および文字のエッジ:アラビア数字および文字のコーナーのエッジは、シャープであった。:○(合格)
【0056】
(実施例3)
1.サンプルの製造
実施例2で加えた球状シリカの量を120重量部とし、それ以外は、実施例2と同様の方法でサンプルA−3を作製した。
【0057】
2.試験片の製造
サンプル−3を用いて、実施例1と同様の方法により試験片−3を作製した。
【0058】
3.評価方法および合格判定基準
実施例1の場合と同様の評価方法および合格判定基準を採用した。なお、本実施例では、粘度の評価については、(2)の評価方法を採用せず、(1)の評価方法のみを採用した。また、(3)の評価方法については、23℃の場合のみ合格判定を行った。
【0059】
4.結果
(1)粘度:15000mPa・S(23℃)であった。:○(合格)、(3)TI値:0.6(23℃)であった。:○(合格)、(4)注型の可否:サンプル−3はアラビア数字および文字が彫られた凹部にスムーズに入っていった。:○(合格)、(5)アラビア数字および文字の凹凸:アラビア数字および文字の微細な凹凸が均一に形成されていた。:○(合格)、(6)アラビア数字および文字のエッジ:アラビア数字および文字のコーナーのエッジは、シャープであった。:○(合格)
【0060】
(実施例4)
1.サンプルの製造
実施例1で用いたビーカーに、ウレタン系オリゴマー(根上工業株会社製、製品名:アートレジンUN−9000H)60重量部、ウレタン系オリゴマー(日本合成化学工業株会社製、製品名:紫光UV−3200B)30重量部、エポキシ系オゴマー(共栄社化学株式会社製、エポキシエステル3002A)10重量部を入れ、実施例1の場合と同様に60℃に加熱しながら攪拌し、均一に溶解させた。次に、実施例1で用いたアクリレート(大阪有機化学株式会社製、製品名:V#150)10重量部、アクリレート(大阪有機化学株式会社製、製品名:HEA)70重量部を混合し、配合物を得た。その後、当該配合物を用いて、実施例1と同様の方法でサンプル−4を作製した。
【0061】
2.試験片の製造
サンプル−4を用いて、実施例1と同様の方法で試験片−4を作製した。
【0062】
3.評価方法および合格判定基準
実施例1の場合と同様の評価方法および合格判定基準を採用した。なお、本実施例では、粘度の評価については、(2)の評価方法を採用せず、(1)の評価方法のみを採用した。また、(3)の評価方法については、23℃の場合のみ合格判定を行った。
【0063】
4.結果
(1)粘度:20000mPa・S(23℃)であった。:○(合格)、(3)TI値:1.2(23℃)であった。:○(合格)、(4)注型の可否:サンプル−4はアラビア数字および文字が彫られた凹部にスムーズに入っていった。:○(合格)、(5)アラビア数字および文字の凹凸:アラビア数字および文字の微細な凹凸が均一に形成されていた。:○(合格)、(6)アラビア数字および文字のエッジ:アラビア数字および文字のコーナーのエッジは、シャープであった。:○(合格)
【0064】
(実施例5)
1.サンプルの製造
実施例4の配合物に、充填材として、沈降性硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製、製品名:#100)300重量部を加え、実施例2と同様にプラレタリーミキサーを用いて1000rpmの回転速度で30分間攪拌した。その後、実施例1と同様の方法でサンプル−5を作製した。また、回転式粘度計(トキメック株式会社製、製品名:B型回転式粘度計)を用いてサンプル−5の粘度およびIT値を測定した。粘度およびIT値の測定は、サンプル−5を500cc用の茶褐色ビンに入れた状態で、熱風式オーブン(ヤマト株式会社製、型式:DK600型)を用いて60℃の温度に1時間加熱した状態で行った。温度の測定方法は、放射温度計(株式会社堀場製作所製、製品名:IT−550)を用いて、サンプル−5の表面温度を測定した。また、粘度を計測する際の回転式粘度計の回転速度は20rpmとした。
【0065】
2.試験片の製造
次に、基材シートとして、PMMA樹脂シート(住友化学株式会社製、製品名:テクノロイS001、大きさ:A4、厚み:0.4mm)を用意した。その後、実施例1と同様の方法で、基材シートに加飾層を形成すると共に、実施例1と同様の型枠を用意した。次に、実施例1で用いたデジタルホットスターラーを用いて型枠を60℃に加温し、サンプル−5を実施例1の場合と同様、注型した。その後、実施例1と同様の条件でUV照射を行い、試験片−5を作製した。なお、型枠の温度測定には、粘度およびIT値の測定の際に用いた放射温度計を採用した。
【0066】
3.評価方法および合格判定基準
実施例1の場合と同様の評価方法および合格判定基準を採用した。なお、本実施例では、粘度の評価については、(1)および(2)の双方の評価方法を採用した。また、(3)の評価方法においては、23℃および60℃の双方の場合について合格判定を行った。
【0067】
4.結果
(1)粘度:2980000mPa・S(23℃)であった。:○(合格)、(2)粘度:30000mPa・S(60℃)であった。:○(合格)、(3)TI値:2.9(23℃)および2.7(60℃)であった。:○(合格)、(4)注型の可否:サンプル−5はアラビア数字および文字が彫られた凹部にスムーズに入っていった。:○(合格)、(5)アラビア数字および文字の凹凸:アラビア数字および文字の微細な凹凸が均一に形成されていた。:○(合格)、(6)アラビア数字および文字のエッジ:アラビア数字および文字のコーナーのエッジは、シャープであった。:○(合格)
【0068】
次に、本発明の比較例について説明する。
(比較例1)
1.サンプルの製造
エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名:iER828)100重量部、エポキシ樹脂用反応性希釈剤として、アルキルモノグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名:YDE111N)20重量部、充填材として実施例2で用いた球状シリカ100重量部およびシランカップリング剤として実施例1で用いたアミノ系シランカップリング剤1重量部をそれぞれ加え、実施例2で使用したプラネタリーミキサーを用いて、実施例2の場合と同様の条件で攪拌し、配合物を得た。この配合物を実施例1で用いた茶褐色ビンに入れた後、実施例1と同様の条件で一晩放置した。この際、エポキシ樹脂用の硬化剤として、ポリアミン硬化剤(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名:LV11)を1kg入りの角缶を購入した状態で、同部屋に置いた。翌日、茶褐色ビンに上記エポキシ樹脂用の硬化剤55重量部を加え、金属製の軟膏ヘラで均一に攪拌し、サンプル−6を得た。なお、エポキシ樹脂のエポキシ当量と、エポキシ樹脂用硬化剤のエポキシ樹脂用硬化剤アミン当量の配合比は1対1とした。
【0069】
2.試験片の製造
実施例1の場合と同様に、サンプル−6を型枠内に注型し、加飾付き基材シートを型枠内に配置した。この状態で加飾付き基材シートの上に重さ2kgの錘を載せ、23℃の温度下で3日間置いた後、錘を取り外した。その後、加飾付き基材シートを型枠から外し、試験片−6を得た。
【0070】
3.評価方法および合格判定基準
実施例1の場合と同様の評価方法および合格判定基準を採用した。なお、本比較例では、粘度の評価については、(2)の評価方法を採用せず、(1)の評価方法のみを採用した。また、(3)の評価方法については、23℃の場合のみ合格判定を行った。
【0071】
4.結果
(1)粘度:100mPa・S(23℃)であった。:○(合格)、(3)TI値:0.3(23℃)であった。:×(不合格)、(4)注型の可否:サンプル−6では、充填材である球状シリカが樹脂と分離して沈降した。そのため、サンプル−6を注型した場合、アラビア数字および文字の凹部の大部分において樹脂のみが注型された。:×(不合格)、(5)アラビア数字および文字の凹凸:アラビア数字および文字の微細な凹凸は均一に形成されなかった。:×(不合格)、(6)アラビア数字および文字のエッジ:アラビア数字および文字のコーナーのエッジは、シャープにならなかった。:×(不合格)
【0072】
(比較例2)
1.サンプルの製造
比較例1で用いたエポキシ樹脂100重量部に、実施例5で用いた沈降性硫酸バリウム700重量部、比較例1で用いたポリアミン型硬化剤33重量部をそれぞれ加え、それ以外は実施例5と同様の方法でサンプル−7を作製した。
【0073】
2.試験片の製造
サンプル−7を用いて、比較例1と同様の方法で試験片−7を作製した。なお、基材シートとして、実施例5と同様のPMMA樹脂シートを採用した。
【0074】
3.評価方法および合格判定基準
実施例1の場合と同様の評価方法および合格判定基準を採用した。なお、本比較例では、粘度の評価については、(2)の評価方法を採用せず、(1)の評価方法のみを採用した。また、(3)の評価方法については、23℃の場合のみ合格判定を行った。
【0075】
4.結果
(1)粘度:500000mPa・S(23℃)であった。:×(不合格)、(3)TI値:3.5(23℃)であった。:×(不合格)、(4)注型の可否:サンプル−7のTI値が高かったため、注型できなかった。:×(不合格)、(5)アラビア数字および文字の凹凸:アラビア数字および文字の微細な凹凸は均一に形成されなかった。:×(不合格)、(6)アラビア数字および文字のエッジ:アラビア数字および文字のコーナーのエッジは、シャープにならなかった。:×(不合格)
【0076】
(比較例3)
1.サンプルの製造
比較例2の配合物を用いて、実施例5と同様の方法でサンプル−8を作製した。
【0077】
2.試験片の製造
サンプル−8を用いて、比較例1と同様の方法で試験片−8を作製した。なお、サンプル−8を注型する際の型枠の温度を60℃とした。
【0078】
3.評価方法および合格判定基準
実施例1の場合と同様の評価方法および合格判定基準を採用した。なお、本比較例では、粘度の評価については、(1)の評価方法を採用せず、(2)の評価方法のみを採用した。また、(3)の評価方法については、60℃の場合のみ合格判定を行った。
【0079】
4.結果
(1)粘度:50000mPa・S(60℃)であった。:×(不合格)、(3)TI値:3.3(60℃)であった。:×(不合格)、(4)注型の可否:サンプル−8のTI値が高かったため、注型できなかった。:×(不合格)、(5)アラビア数字および文字の凹凸:アラビア数字および文字の微細な凹凸は均一に形成されなかった。:×(不合格)、(6)アラビア数字および文字のエッジ:アラビア数字および文字のコーナーのエッジは、シャープにならなかった。:×(不合格)
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のキーットップ部材の製造方法は、携帯電話、リモコン、電子計算機、スマートキー等の電子機器を製造あるいは使用する産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明の一実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法に用いられる型枠の斜視図であり、型枠を開口側から見た状態を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法を説明するための図であり、(A)は、配置工程を説明するための図であり、(B)は、樹脂注入工程を説明するための図である。
【図4】図3に続いて、本発明の一実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法を説明するための図であり、(A)は、硬化工程を説明するための図であり、(B)は、本発明の一実施の形態に係るキーットップ部材の製造方法の離型工程後に得られたキーットップ部材の断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1…キーットップ部材
10…型枠
11…第1の開口部
13…第2の開口凹部
15…第3の開口部
23…光硬化性樹脂(樹脂)
26…基材シート
30…キートップ
31…連接部
32…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2以上のキートップと、当該キートップの底部に連接する連接部とを備えるキートップ部材を製造する方法であって、
上記連接部を形成するための第1の開口部と、その第1の開口部にあってそれよりさらに窪む、上記キートップを形成するための第2の開口部とを有するシリコーンゴム製の型枠の上記第1の開口部の上に、基材シートを配置する配置工程と、
上記型枠の各開口部に、アクリレート系樹脂を少なくとも含有する樹脂を注入する樹脂注入工程と、
上記樹脂を硬化させる硬化工程と、
を含むことを特徴とするキートップ部材の製造方法。
【請求項2】
前記型枠は、前記キートップの天面に凸部を形成するための開口部であって、前記第2の開口部にそれよりさらに窪む第3の開口部、あるいは前記キートップの天面に凹部を形成するための突出部であって、前記第2の開口部に、その底面から突出する突出部を有することを特徴とする請求項1に記載のキートップ部材の製造方法。
【請求項3】
前記基材シートは透明な樹脂シートであり、
前記樹脂はアクリレート系樹脂と光重合開始剤とを少なくとも含み、
前記硬化工程は、前記基材シートを通して前記樹脂に光を照射し、前記樹脂を硬化させる工程であることを特徴とする請求項1または2に記載のキートップ部材の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂注入工程において、23℃の粘度が10mPa・S以上300000mPa・S以下の範囲である前記樹脂を前記型枠の各開口部に注入することを特徴とする請求項3に記載のキートップ部材の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂注入工程において、23℃のチキソトロピーを示す値が0.5以上3.0以下の範囲である前記樹脂を、前記型枠の各開口部に注入することを特徴とする請求項3または4に記載のキートップ部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−9735(P2009−9735A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167670(P2007−167670)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】