説明

キーボックス

【課題】鍵の収納状態を直接的に検知できて、複雑な処理回路が不要となり構成簡易にして安価に形成し得るキーボックスを提供する。
【解決手段】鍵が所定状態で収納される鍵収納部を有するボックス本体と、該ボックス本体の鍵収納部の前面開口を閉塞する蓋体と、鍵収納部への鍵の収納状態を検知する検知手段と、を備えたキーボックスであって、検知手段は、鍵が収納された際に鍵と収納動作と連動して所定方向に移動する蓋体の変位に基づいて鍵の収納状態を検知することを特徴とする。前記蓋体は、その外形形状が鍵収納部の前面開口の内形形状より小さく形成されると共に、前面開口内の上部に設けた軸を介して下端部が傾動可能に配設され、鍵が鍵収納部に収納された際に下端部が鍵収納部内に押し込まれた状態に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば体育館等の出入口用ドアの錠を解錠/施錠するための鍵を収納するキーボックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキーボックスとしては、例えば内部に鍵収納部を有するボックス本体の前面開口部に蓋体を開閉可能に設け、この蓋体がリモコン操作やカードリーダへのカードの差し込みにより開閉されると共に、蓋体の開閉状態がマイクロスイッチにより検知されるものが知られている。そして、このキーボックスは、マイクロスイッチの検知信号によりボックス本体内への鍵の収納状態(鍵の有無)が例えば警備会社等に通報されるようになっている。なお、マイクロスイッチを使用したキーボックスは、例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平10−317742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなキーボックスにあっては、マイクロスイッチが鍵収納部を閉塞する蓋体の開閉動作に連動してオン・オフする構造であることから、鍵収納部への鍵の収納状態が、鍵に直接関与していない蓋体を介して間接的に検知する状態となって直接的な検知を行うことができない。そのため、鍵の収納忘れがあっても蓋体を閉じることによりマイロスイッチが鍵有り信号と同じ信号を出力することになり、これらを判別するためには、複雑な処理回路が必要となってキーボックスのコストアップを招き易い。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、鍵の収納状態を直接的に検知できて、複雑な処理回路が不要となり構成簡易にして安価に形成し得るキーボックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、鍵が所定状態で収納される鍵収納部を有するボックス本体と、該ボックス本体の鍵収納部の前面開口を閉塞する蓋体と、前記鍵収納部への鍵の収納状態を検知する検知手段と、を備えたキーボックスであって、前記検知手段は、鍵が収納された際に鍵の収納動作と連動して所定方向に移動する前記蓋体の変位に基づいて鍵の収納状態を検知することを特徴とする。
【0006】
そして、前記蓋体は、請求項2に記載の発明のように、その外形形状が鍵収納部の前面開口の内形形状より小さく形成されると共に、前面開口内の上部に設けた軸を介して下端部が傾動可能に配設され、鍵が鍵収納部に収納された際に下端部が鍵収納部内に押し込まれた状態になることが好ましい。また、前記鍵収納部は、請求項3に記載の発明のように、その底面部が前記蓋体の先端部の傾動軌跡に対応した円弧形状に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、ボックス本体の鍵収納部を閉塞し鍵が収納された際に鍵と連動して移動する蓋体の変位に基づいて、検知手段により鍵の収納状態が検知されるため、鍵の収納に連動する変位板の変位により検知手段で鍵の収納状態を直接的に検知できて、複雑な処理回路が不要となり構成簡易にして安価なキーボックスを得ることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、蓋体の外形形状が鍵収納部の前面開口の内形形状より小さく形成されると共に前面開口内に傾動可能に配設されているため、鍵が鍵収納部に収納されると蓋体の下端部が鍵収納部内に自動的に押し込まれた状態となり、例えばこの蓋体の位置を外部から視認できる構成とすること等により、鍵の収納状態を外部からでも一目で把握できる等、使い勝手に優れたキーボックスが得られる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、鍵収納部の底面部が蓋体の先端部の傾動軌跡に対応した円弧形状に形成されているため、蓋体の傾動動作時にその先端部と鍵収納部の底面部間に隙間等の発生がなくなり、鍵の鍵収納部内への収納や取り出しをスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は、本発明に係わるキーボックスの一実施形態を示し、図1がその斜視図、図2が縦断面図、図3がキーボックスとリモコンの接続状態の制御系の概略ブロック図、図4がリモコンの斜視図、図5が使用方法の一例を示す説明図、図6が鍵の収納状態を示す図2と同様の断面図である。
【0011】
図1に示すように、キーボックス1は、薄型の略直方体形状のボックス本体2を有し、このボックス本体2の前面開口部にはカバー3が開閉可能に配設されている。また、ボックス本体2は、図2に示すように、例えばその内部右寄りに、底面、上面、左右の側面及び背面により所定大きさの前面開口4aが形成された鍵収納部4が設けられると共に、内部左寄りには、図示しない非常用の錠等が収納配置されている。なお、ボックス本体2内に配置される前記錠等の構成については、従来と略同様に構成されているため、その詳細な説明は省略する。
【0012】
そして、前記鍵収納部4の前面開口には、本発明の蓋体としての変位板7が配置されている。この変位板7は、例えばめくら板により正面視で長方形状に形成され、その外形形状が鍵収納部4の前面開口4aの内形形状より僅かに小さく設定されて、鍵収納部4の前面開口4a内に位置する状態で配置されている。また、この変位板7は、その左右の上端部7aが鍵収納部4の両側面上部に軸支されることにより、その下端部7bが前後方向に傾動(回動)可能に配設されている。なお、変位板7は、通常その自重により図2に示すように垂直状態に設定されて、鍵収納部4の前面開口4aが閉塞されるようになっている。
【0013】
さらに、鍵収納部4の一方の側面の所定位置には、変位板7の変位を検出する光センサ9(検知手段)が配置されており、この光センサ9のリード線が後述する基板に接続されている。この光センサ9から照射される赤外線により変位板7の変位が検知され、その信号が前記基板6を介して後述するリモコン12に出力されることになる。なお、変位板7の変位を検知する検知手段としては、側面に設けた光センサ9に限らず、マイクロスイッチや歪みゲージ等の他の適宜のセンサを使用することができる。
【0014】
前記鍵収納部4の底面部には、ガイド板10が配置されており、このガイド板10の内面10aの形状は、前記変位板7の先端部である下端部7bの傾動動作時の軌跡と略一致するように円弧形状に形成されている。また、ガイド板10の前端部には、上方に所定寸法に立ち上がったストッパー部10bが設けられており、このストッパー部10bにより変位板7の前面開口4aから前方への飛び出しが防止されて、変位板7で鍵収納部4の前面開口4aが閉塞されると共に、後述する如く鍵収納部4内に収納された鍵11の前方への飛び出しが防止されるようになっている。
【0015】
なお、ボックス本体2の鍵収納部4の大きさやガイド板10の大きさは、収納される鍵11の大きさに応じて、鍵11がガイド板10上に載置され得る大きさに設定されると共に、ボックス本体2に内蔵される前記基板6としては、光センサ9の検知信号を処理する処理回路が組み込まれた基板か、もしくは光センサ9の検知信号を後述するリモコン12にそのままの状態で送信する中継基板等が使用される。
【0016】
次に、このように構成されたキーボックス1の使用方法の一例を図5に基づいて説明する。先ず、前記キーボックス1は、体育館の入口近傍の電設用ボックスや所定の壁面にリモコン12と共に設置されて使用される。この時、リモコン12は、図4に示すように、警備状態や光センサ9の状態を表示する液晶表示部12aと、各状態を音声で知らせるスピーカ部12bと、カードデータ等を読み取る非接触型の読み取り部12cと、操作釦12d等によって構成されている。そして、このリモコン12は、図3に示すように、その内部に、CPU13、ROM14、RAM15、前記キーボックス1の歪みゲージ9の信号が入力されるインターフェース(I/F)16等を有すると共に、CPU13で処理した所定の信号を警備会社18に送信する送信部17等が制御基板上に構築されて配置されている。
【0017】
このリモコン12とキーボックス1の設置状態において、体育館の使用者が鍵11を開けて体育館に入ろうとする場合は、図5に示すように、リモコン12を操作して警備会社18により警戒状態に設定されているキーボックス1の警戒状態を解除(K1)し、キーボックス1のカバー3を例えば自動で開放(K2)させる。カバー3が開放されると、ボックス本体2の鍵収納部4内に鍵11が収納されていることから、変位板7が図6に示すように後方側に傾動して鍵収納部4の前面開口4aが開放されている。この開放している前面開口4aを利用して鍵収納部4内の鍵11が使用者により取り出される(K3)。
【0018】
そして、鍵11が鍵収納部4から取り出されると、鍵11の取り出しに連動して変位板7がその自重により前方に傾動して、図2に示す垂直状態となり、鍵収納部4の前面開口4aが閉塞されると共に、変位板7の垂直位置への復帰により光センサ9の検知範囲から変位板7が外れて、光センサ9が鍵11が収納されていない状態を検知、すなわち光センサ9から鍵無し信号が基板6を介してリモコン12に出力される。この状態で使用者が取り出した鍵11を使用して体育館のドアの錠を解除することにより、体育館の使用が可能となる。
【0019】
一方、体育館の使用が終了した場合は、鍵11によりドアの錠を施錠し、この施錠した鍵11をキーボックス1の鍵収納部4内に収納(K4)する。この鍵11の収納は、鍵11を鍵収納部4内の変位板7の下端部7bに押し当てて後方側に押し込むことにより行われ、図6に示すように、鍵11の押し込みで変位板7が後方側に傾動すると共に、鍵11が変位板7の下端部7b前方のガイド板10上に載置状態でかつガイド板10のストッパー10bにより前方への飛び出しが防止された状態で鍵収納部4に収納される。
【0020】
また、鍵11の押し込みで変位板7が所定角度傾動して光センサ9の検知範囲に入ると、光センサ9が変位板7の位置、すなわち鍵11の収納状態を検知して、鍵有り信号が基板6を介してリモコン12に出力される。また、変位板7も鍵11が前方に収納されてることから、その前方への傾動動作(戻り)が規制されて収納位置に維持されることになる。なお、鍵11の鍵収納部4への収納時に、鍵収納部4の底面部に変位板7の傾動軌跡に合致した内面形状のガイド板10が配置されているため、変位板7の下端部7b先端とガイド板10の内面10aとの間の隙間が略一定に維持され、隙間への鍵11の嵌り込み等がなくなり、鍵11のスムーズな収納が可能となる。
【0021】
そして、鍵11をガイド板10上に載置収納したらカバー3を閉じ(K5)、その後リモコン12を操作して警戒設定(K6)することにより、リモコン12の送信部17から警戒信号が警備会社18に送信されて警戒状態に設定される。つまり、体育館用の鍵11によりキーボックス1の変位板7を後方側に押すことにより、変位板7が後方側に傾動してこの変位板7の下端部7bとガイド板10のストッパー10bとで鍵11が挟まれて状態で収納され、また、鍵11を取り出すことにより変位板7が前方に傾動して鍵11が収納されていない状態に設定されると共に、鍵11の収納、非収納に応じて連動する変位板7の傾動位置により鍵11の有無が光センサ9により直接的に検知されることになる。
【0022】
このように、上記実施形態のキーボックス1にあっては、ボックス本体2の鍵収納部4を閉塞し鍵11が収納された際に後方側に傾動する変位板7の変位(傾動動作)に基づいて、鍵収納部4に配置した光センサ9により鍵11の収納状態が検知されるため、鍵11の収納に連動して傾動する変位板7により鍵11の収納状態を直接的に検知できて、複雑な処理回路が不要となり構成簡易にして安価なキーボックス1を得ることができる。
【0023】
また、変位板7の外形形状が鍵収納部4の前面開口4aの内形形状より僅かに小さく形成されると共に前面開口4a内に傾動可能に配設されているため、鍵11が鍵収納部4に収納されると変位板7の下端部7bが鍵収納部4内に自動的に押し込まれた状態となり、この変位板7の位置により鍵11の収納状態を使用者が簡単に把握することができる。さらに、鍵収納部4の底面部に変位板7の下端部7bの傾動軌跡に対応した内面10aの円弧形状のガイド板10が配置されているため、変位板7の傾動動作時にその下端部7bと鍵収納部4の底面部であるガイド板10の内面10a間に隙間等の発生がなくなり、鍵11の鍵収納部4内への収納や取り出しをスムーズに行うことができる。
【0024】
また、鍵11に連動して傾動する変位板7の変位を光センサ9で検知することにより鍵11の状態が直接的に検知されるため、従来のような複雑な処理回路が不要となり構成簡易にして安価なキーボックス1を得ることができると同時に、耐久性に優れた変位板7の変位を光センサ9で長期に亘り安定して検知できて、信頼性の高いキーボックス1を得ることが可能となる。また、カバー3を開放して鍵11で変位板7を押し込むだけで、光センサ9により鍵11の有無が自動的に検知されるため、鍵11の取り出しや収納操作を極めて簡単に行うことができると共に、キーボックス1をリモコン12と併用することで、警戒設定や警戒解除を簡単かつ確実に行うことができて、使い勝手と操作性に優れた監視システムの構築が可能となる。
【0025】
なお、上記実施形態において、キーボックス1のカバー3に、図1の二点鎖線で示すように、例えば鍵11の収納状態を表示するLED等の表示灯19を設けてカバー3を開けない状態で鍵11の有無を使用者に認識させるようにしても良いし、例えばカバー3を透明板で形成して、変位板7の傾動位置により鍵11の有無を外部から一目で把握できるように構成することもできる。また、ボックス本体2内の適宜位置にLED等からなる図示しない室内灯を常時点灯状態で(もしくはカバー3の開放に応じて点灯するように)配置してボックス本体2内を照明し、外部が暗い場合でも鍵11の出し入れを容易に行い得るようにしても良い。さらに、上記実施形態においては、変位板7が自重により垂直位置に戻るように構成したが、例えばバネによって変位板7に常に垂直位置に戻る付勢力を作用させて、初期位置への戻りを素早くかつ確実に行うように構成することもできる。
【0026】
さらに、上記実施形態における、変位板7やガイド板10の形状、検知手段の配置位置、リモコン12とキーボックス1のブロック図、カバー3の形状やその開閉機構等は一例であって、例えば変位板7とガイド板10を一体化して鍵収納部4の側面にストッパ機構を設けて変位板7の位置を規制したり、リモコン12とキーボックス1を一体化した構造とする等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、体育館のドア用キーボックスに限らず、例えば各種ビルや倉庫用等の錠を有する全てのドアのキーボックスに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係わるキーボックスの一実施形態を示す斜視図
【図2】同その鍵の非収納状態の縦断面図
【図3】同キーボックスとリモコンの接続状態の制御系の概略ブロック図
【図4】同そのリモコンの斜視図
【図5】同動作の一例を示す説明図
【図6】同鍵の収納状態の図2と同様の縦断面図
【符号の説明】
【0029】
1・・・キーボックス、2・・・ボックス本体、3・・・カバー、4・・・鍵収納部、4a・・・前面開口、7・・・変位板(蓋体)、7a・・・上端部、7b・・・下端部、9・・・光センサ、10・・・ガイド板、10a・・・内面、10b・・・ストッパー部、11・・・鍵、12・・・リモコン、18・・・警備会社、19・・・表示灯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵が所定状態で収納される鍵収納部を有するボックス本体と、該ボックス本体の鍵収納部の前面開口を閉塞する蓋体と、前記鍵収納部への鍵の収納状態を検知する検知手段と、を備えたキーボックスであって、
前記検知手段は、鍵が収納された際に鍵の収納動作と連動して移動する前記蓋体の変位に基づいて鍵の収納状態を検知することを特徴とするキーボックス。
【請求項2】
前記蓋体は、その外形形状が鍵収納部の前面開口の内形形状より小さく形成されると共に、前面開口内の上部に設けた軸を介して下端部が傾動可能に配設され、鍵が鍵収納部に収納された際に下端部が鍵収納部内に押し込まれた状態になることを特徴とする請求項1に記載のキーボックス。
【請求項3】
前記鍵収納部は、その底面部が前記蓋体の先端部の傾動軌跡に対応した円弧形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキーボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−14040(P2008−14040A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187041(P2006−187041)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(000101400)アツミ電氣株式会社 (69)