説明

ギャップ付きコア及びコイル装置

【課題】騒音の少ないギャップ付きコア及びコイル装置を提供する。
【解決手段】ギャップ付きコアは、第1の方向において積み重ねられた、第1のコアブロック210と、ギャップ部材220を介して第1のコアブロックを挟み込む一対の第2のコアブロック230と、を有するコア本体と、第1の方向において、一対の第2のコアブロック230の外側に配置された、第1の方向と直交する第2の方向にそれぞれ延出する一対の第1の押さえ部材270と、第2の方向においてコア本体の両側に配置された、それぞれが第1の方向に延出する一対の第2の押さえ部材250と、一対の第2の押さえ部材の各々の両端部を、第2の方向において第2のコアブロックに圧接させるよう作用する締め付け手段201と、を備える。一対の第1の押さえ部材270の各々の両端部が第2の押さえ部材250の各々により連結されて、コア本体を第1の方向に締め付ける力が与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップ付きコア及びギャップ付きコアを備えたコイル装置に関連し、詳細には組み立てられた複数のコアブロックがコア締付具により一体化されたギャップ付きコア及び該ギャップ付きコアを備えたコイル装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているような、ギャップ部材を介して一方向に積み重ねた複数のコアブロックを締付金具により締め付けて一体化したギャップ付きコアが知られている。このようなギャップ付きコアにおいては、各コアブロック間には積み重ね方向に強い磁気吸引力が作用するが、締付金具によりコアブロック同士が積み重ね方向に強く固定されているため、各コアブロックが積み重ね方向に相互に振動して、コアブロックとギャップ部材との衝突によりギャップ部で大きな騒音が発生することは無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−190346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のギャップ付きコアは、剪断方向(ギャップ面と平行な方向)には強く固定されていない為、コアブロック間の剪断方向の振動は十分に抑制されず、コアブロックとギャップ部材との間に生じる摩擦により騒音が発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態に係るギャップ付きコアは、 第1の方向(図2の実施形態においてはY軸方向)において積み重ねられた、第1のコアブロックと、ギャップ部材を介して第1のコアブロックを挟み込む一対の第2のコアブロックと、を有するコア本体と、第1の方向において、一対の第2のコアブロックの外側に配置された、第1の方向と直交する第2の方向(同上Z軸方向)にそれぞれ延出する一対の第1の押さえ部材と、第2の方向においてコア本体の両側に配置された、それぞれが第1の方向に延出する一対の第2の押さえ部材と、一対の第2の押さえ部材の各々の両端部を、第2の方向において第2のコアブロックに圧接させるよう作用する締め付け手段と、を備え、一対の第1の押さえ部材の各々の両端部が第2の押さえ部材の各々により連結されて、一対の第1の押さえ部材間でコア本体を第1の方向に締め付ける力が与えられており、一対の第2の押さえ部材の各々の両端部が締め付け手段により第2のコアブロックに圧接されて、一対の第2の押さえ部材間でコア本体を第2の方向に締め付ける力が与えられている。
【0006】
この構成によれば、積み重ねたコアブロックに対して、積み重ね方向に加えて剪断方向にも締め付け力を与えて固定することにより、隣接するコアブロック間の衝突や摩擦が抑制され、ギャップ部での騒音の発生が防止される。また、第2の押さえ部材が、第1の押さえ部材間でコア本体を第1の方向(コアブロックの積み重ね方向)に締め付ける力を与える機能と、コア本体を第1の方向と垂直な第2の方向(ギャップ付きコアの剪断方向)に締め付ける機能とを兼ね備える構成により、ギャップ付きコアの低騒音化に必要な部品点数を少なくし、低騒音かつ組み立てが容易なギャップ付きコアが提供される。
【0007】
第2の押さえ部材は、コア本体と対向して第1の方向に延出第1の平板部と、第1の平板部の延出方向両端からコア本体と反対側へ直立する一対の第1の直立部と、を有し、ギャップ付きコアは、一対の第2の押さえ部材の一対の第1の直立部を、一対の第1の押さえ部材の第2の方向における端部にそれぞれ連結する連結手段と、第1及び第2の方向と直交する第3の方向(図2の実施形態においてはX軸方向)に延出し、一対の第2の押さえ部材の第1の平板部の第1の方向における端部を介して第2のコアブロックを第2の方向に挟み込み、締め付け手段により第2のコアブロックに押さえ付けられる一対の補強部材と、を更に備えた構成としてもよい。
【0008】
この構成により、連結手段によって第2の押さえ部材の第1の平板部から直立した一対の第1の直立部に第1の方向の力が加えられても、補強部材によって第1の平板部の浮き上がりが防止されると共に、第2の押さえ部材にコア本体への第2の方向(剪断方向)の締め付け力を与えるため、コア本体に剪断方向へ確実に締め付け力を与えることができる。
【0009】
補強部材は、コア本体と対向して第3の方向に延出する第2の平板部と、第2の平板部の第1の方向における一端からコア本体と反対側へ直立する第2の直立部と、を有し、第2の直立部は、連結手段により、第1の直立部と共に第1の押さえ部材の延出方向端部に連結され、第2の平板部には、第2の直立部に沿って、第1の直立部が差し込まれる穴が形成されている構成としてもよい。
【0010】
この構成によれば、補強部材を正確な位置に容易に取り付けることが可能になる。
【0011】
第2の方向において、第1の押さえ部材はコア本体よりも長く、第1の押さえ部材の両端はコア本体よりも外側に突出し、第1の方向において、第2の押さえ部材はコア本体よりも短く、連結手段は、第1の押さえ部材の一端部及び第1の直立部の一方に形成された雌ねじと、第1の押さえ部材の一端部及び第1の直立部の他方と第2の直立部に形成された通し穴と、通し穴の2つを通り雌ねじと係合するスクリューにより、第1の押さえ部材、第2の押さえ部材及び補強部材を連結する構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、簡単な構造により、第2の押さえ部材に2つの機能(すなわち、第1の押さえ部材にコア本体を第1の方向への締め付ける力を与える機能と、第2の方向にコア本体を挟み込む機能)を与えることができる。
【0013】
第1の押さえ部材、第2の押さえ部材、及び補強部材が、板金加工により形成された構成であってもよい。この構成によれば、量産性に優れたギャップ付きコアが提供される。
【0014】
第2の押さえ部材が非磁性金属板から形成された構成であってもよい。この構成によれば、ギャップの磁気飽和抑制効果を損なうことなく、ギャップ付きコアの低騒音化を可能にする。
【0015】
締め付け手段は、一対の第2の押さえ部材の延出方向における一端部と、一端部間に挟み込まれた第2のコアブロックとを貫通し、一対の第2の押さえ部材間でコア本体を第2の方向に締め付ける力を一対の第2の押さえ部材に与える第1の締め付けボルトを含む構成としてもよい。
【0016】
締め付け手段は、一対の第2の押さえ部材の延出方向における中央部と、中央部間に挟み込まれた第1のコアブロックとを貫通し、一対の第2の押さえ部材間でコア本体を第2の方向に締め付ける力を一対の第2の押さえ部材に与える第2の締め付けボルトを含む構成としてもよい。
【0017】
上記2つの各構成によれば、ギャップ部の近傍で第2の押さえ部材をコア本体に圧接させることが可能になり、ギャップ部付近でコア本体が強固に締め付けられるため、より優れた騒音防止効果が奏される。また、ボルトの頭部とコア本体との間で第2の押さえ部材を挟み込む構成により、第2の押さえ部材が浮きあがらずにコア本体に確実に圧接されるため、コア本体を確実に締め付けることが可能になる。
【0018】
第1の押さえ部材は、第2の方向に延出してコア本体と対向する第3の平板部と、第1及び第2の方向と垂直な第3の方向における第3の平板部の両端からコアと反対側へ直立した第3の直立部を有し、第2の方向と垂直な断面が略コの字状に形成されている構成としてもよい。
【0019】
この構成により、第1の押さえ部材の剛性が向上し、より確実にギャップ付きコアに締め付け力を与えることができる。
【0020】
第2の押さえ部材は非磁性金属板から形成されている構成としてもよい。非磁性金属板は、例えばアルミニウム合金板やステンレス鋼板であってもよい。
【0021】
この構成によれば、第2の押さえ部材により磁気回路が形成されず、ギャップによる磁気飽和防止効果を阻害することなく、コアを一体化に保持するための締め付け力を確保することができる。
【0022】
また、本発明の実施形態に係る上記の記載のギャップ付きコアを備えたコイル装置が提供される。このコイル装置は、例えばリアクトルや変圧器であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態の構成によれば、積み重ねたコアブロックに対して、積み重ね方向に加えて剪断方向にも締め付け力を与えて固定する為、隣接するコアブロック間の衝突や摩擦が抑制され、ギャップ部での騒音の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリアクトルの分解図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリアクトルのコアの斜視図である。
【図4】本発明の実施形態のベース金具の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態の中脚押さえ金具の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の側脚押さえ金具の斜視図である。
【図7】本発明の実施形態の補強金具の斜視図である。
【図8】本発明の別の実施形態の中脚及びその周囲の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るリアクトル1について、図面を参照しながら説明する。図1はリアクトル1の斜視図であり、図2はその分解図である。本実施形態のリアクトル1は、三相交流用リアクトルであり、コア2と、3組のボビン3及びコイル4と、カバー5を備えている。図3は、リアクトル1のコア2のみを示す斜視図である。以下の説明において、図2における左上側から右下側に向かう方向を幅方向(X軸正方向)、左下側から右上側に向かう方向を奥行き方向(Y軸正方向)、下側から上側に向かう方向を高さ方向(Z軸正方向)とする。なお、リアクトル1を使用する際には、リアクトル1をどのような方向に向けて配置してもよい。
【0026】
ボビン3は、絶縁性及び耐熱性を有する樹脂から形成された筒状の部材であり、中空部にはコア2の中脚210(後述)が差し込まれる。コイル4は、ボビン3の外周面上に巻き付けられた細長い銅板である。
【0027】
カバー5は、各コイル4の両端に取り付けられた3対の端子(不図示)及び端子カバー52と、保護カバー53と、スペーサー54を備えている。
【0028】
図1に示されるように、コア2は、複数のコアブロックとギャップ部材220から組み立てられたコア本体2aと、コア本体2aを締め付けて一体化する複数の板金部材から組み立てられた締付枠体2bとを備えている。
【0029】
コア本体2aは、3つの中脚210、2つのギャップ部材220、及び2つの側脚230が、Z軸方向に沿って見たときに「日」字状となるように組み立てられたギャップ付きコアの本体である。中脚210及び側脚230は、ケイ素鋼板を積層した直方体状(または厚板状)のコアブロックである。図2に示されるように、中脚210のY軸方向及びX軸方向中央には、Z軸方向に貫通する1つの貫通穴211が形成されている。また、側脚230のY軸方向中央には、X軸方向に等間隔に配列された、Z軸方向に貫通する3つの貫通穴231が形成されている。貫通穴211及び231には、締付ボルト201が通される。なお、中脚210及び側脚230には、他の種類の磁心(例えば圧粉磁心やフェライト磁心)を使用しても良い。また、ギャップ部材220は、電気絶縁性を有する非磁性体(例えばアルミナ等のセラミックスや樹脂)から形成された略矩形状の平板部材である。X軸方向に並べられた3つの中脚210を、一対のギャップ部材220を介して、一対の側脚230によりY軸方向に挟み込むことで、「日」字状のコア本体2aが形成される。
【0030】
締付枠体2bは、2つのベース金具240、6つの中脚押さえ金具250、250’、4枚の絶縁紙260、4つの側脚押さえ金具270、2つの補強金具280、及び9本の締付ボルト201から組み立てられた略直方体形状の枠状体である。本実施形態では、ベース金具240、側脚押さえ金具270及び補強金具280は剛性の高い炭素鋼板から形成され、中脚押さえ金具250は非磁性体のアルミニウム合金板から形成されている。なお、締付枠体2bを構成する各金具は、いずれも剛性の高い非磁性体材料であるステンレス鋼板から形成してもよい。
【0031】
図4は、ベース金具240の斜視図である。ベース金具240は、長手方向に延びる3つの折り曲げ線でクランク状に折り曲げられた細長い板金部材である。ベース金具240は、3つの折り曲げ線を境に、固定部241、直立部242、座部243及び折返部244の4つの細長い略矩形平板状の部分に区画される。具体的には、直立部242は固定部241に対して直角に曲げられており、座部243は直立部242に対して固定部241と反対側に直角に折り曲げられており、更に折返部244は直立部242と対向するように座部243に対して直角に折り曲げられている。ベース金具240は、このようにクランク状に折り曲げられることで、各方向への曲げや捻りに対して高い剛性を有している。固定部241は、リアクトル1の設置面に固定される部分であり、長手方向に延びる縁部の2箇所には、設置面に固定するためのボルトを通す切り欠き245が形成されている。また、座部243は、中脚押さえ金具250を介して、リアクトル本体2aが載せられる部分であり、締付ボルト201を通す3つの丸穴246が長手方向に等間隔に設けられている。丸穴246の間隔は、3つの中脚210の配置間隔と同じ値に設定されている。また、座部243には、両端の2つの丸穴246に隣接して、直立部242と座部243とを区画する折り曲げ線に沿って2つの細長い角穴248が形成されている。また、直立部242にも角穴248に隣接して角穴249が形成されている。角穴249は、角穴248の長手方向中央部に連絡している。
【0032】
図5は、中脚押さえ金具250の斜視図である。中脚押さえ金具250は、略矩形状の細長い平板部251と、平板部251の長手方向両端で直角に折り曲げられて互いに対向する2つの直立部252を有している。平板部251の幅は、中脚210のX軸方向寸法と略同じ大きさに設定されている。また、平板部251の長さは、コア本体2aのY軸方向寸法より僅かに短い大きさに設定されている。直立部252の幅は、ベース金具240に形成された角穴248の幅よりも僅かに狭く形成されており、直立部252が略隙間無く角穴248に差し込まれるようになっている。平板部251の幅方向中央には、締付ボルト201が通される3つの穴(1つの丸穴253と2つの長穴254)が長手方向に等間隔に設けられている。具体的には、平板部251の長手方向中央部に丸穴253が形成され、両端部に長穴254が形成されている。また、直立部252の略中央には、側脚押さえ金具270に固定するためのスクリュー203と係合する雌ねじ255が設けられている。なお、中脚押さえ金具250’は、直立部252を有していない点を除いて、中脚押さえ金具250と同一形状であるため、詳しい説明は省略する。
【0033】
図6は、側脚押さえ金具270の斜視図である。側脚押さえ金具270は、略矩形状の細長い平板部271と、平板部271の幅方向両端で直角に折り曲げられて互いに対向する2つの略矩形状の直立部272、273を有している。平板部271の長手方向両端付近には、中脚押さえ金具250を固定するためのスクリュー203が通る丸穴276が設けられている。直立部273には、長手方向中央部にはツマミ部274が設けられ、幅が広くなっている。ツマミ部274の略中央には指が通る程度の直径の丸穴275が形成されている。
【0034】
図7は、補強金具280の斜視図である。補強金具280は、略矩形状の細長い平板部281と、平板部281の長手方向に延びる縁部の一方から垂直に延びる2つの直立部282を有している。平板部281の短手方向中央には、締付ボルト201が通される3つの丸穴284が長手方向に等間隔に設けられている。丸穴284の間隔は、3つの中脚210の配置間隔と同じ値に設定されている。また、2つの直立部282は、両端の丸穴284にそれぞれ隣接して配置されている。また、平板部281には、2つの直立部282に沿って、2つの細長い角穴283が形成されている。2つの角穴283は、ベース金具240に形成された2つの角穴248と、同じ大きさ及び同じ間隔で形成されており、中脚押さえ金具250の直立部252が略隙間無く差し込まれるようになっている。また、直立部282にも、平板部281に沿って角穴285が形成されている。角穴285は、補強金具280を側脚押さえ金具270に固定するスクリュー203が通る程度の大きさに形成されており、角穴283の中央部に連絡している。また、補強金具280の丸穴284の間には、L字状の係合爪286が複数設けられている。係合爪286は、平板部281から直立部282と同じ側に直立した後、平板部281の長手方向中央へ向けて水平に伸びている。係合爪286は、スペーサー54の固定に使用される。更に、補強金具280の長手方向両端部には、保護カバー53をスクリュー204(図1)で固定するための雌ねじ287が形成されている。
【0035】
次に、コア2の構造の詳細を説明する。中脚210は、一対の中脚押さえ金具250又は250’により上下に挟まれている。具体的には、X軸方向両端の2つの中脚210は直立部252を有する中脚押さえ金具250で挟まれ、X軸方向中央の1つの中脚210は直立部252が形成されていない中脚押さえ金具250’で挟まれている。一対の中脚押さえ金具250又は250’は、1組の締付ボルト201とナット202によって、中脚210に取り付けられている。中脚押さえ金具250、250’が取り付けられた中脚210には、ボビン3が被せられ、更にボビン3を介してコイル4が巻き付けられている。それぞれコイル4が巻き付けられた3つの中脚210は、コイル4の軸をY軸方向に向けて、X軸方向に等間隔に並べられ、Y軸方向両側から一対のギャップ部材220で挟み込まれ、更にその外側から一対の側脚230で挟み込まれて、「日」字状のコア本体2aが形成される。なお、中脚押さえ金具250、250’の長さは、中脚210のY軸方向寸法よりも長く、側脚230を含むコア本体2aのY軸方向の略全長に及ぶ。
【0036】
側脚230は、3対の中脚押さえ金具250、250’の端部を介して、ベース金具240と補強金具280により上下に挟まれている。そして、3組の締付ボルト201とナット202により、ベース金具240と補強金具280との間で締め付けられて、固定されている。具体的には、締付ボルト201を、下から順に、ベース金具240の丸穴246、中脚210の下側に配置される中脚押さえ金具250又は250’の長穴254、側脚230の貫通穴231、中脚210の上側に配置される中脚押さえ金具250又は250’の長穴254、及び補強金具280の丸穴284に通した後、ナット202に捩じ込むことで、これらが一体に固定されている。また、補強金具280の角穴283には、中脚押さえ金具250の直立部252が差し込まれる。
【0037】
中脚210と側脚230との間のギャップ部は、中脚押さえ金具250、250’により上下に挟まれ、締付ボルト201とナット202により剪断方向(ギャップ面と平行な方向)に固定されている。
【0038】
また、コア本体2aは、Y軸方向両側から、絶縁紙260を介して、2対の側脚押さえ金具270により挟み込まれている。側脚押さえ金具270は、それぞれ直立部272、273をY軸方向外側に向け、長手方向をZ軸方向に向けて配置される。各側脚押さえ金具270は、それぞれ2本のスクリュー203により一対の中脚押さえ金具250、ベース金具240及び補強金具280に固定される。具体的には、2本のスクリュー203を、Y軸方向外側から、側脚押さえ金具270の丸穴276、次いで補強金具280の角穴285にそれぞれ通した後、中脚押さえ金具250の雌ねじ255に捻じ込むことで、側脚押さえ金具270は中脚押さえ金具250及び補強金具280に固定される。また、中脚押さえ金具250のY軸方向の長さは、コア本体2aのY軸方向の長さよりも若干短く形成されている。その為、絶縁紙260を介してコア本体2aを挟み込む一対の側脚押さえ金具270の平板部271の間隔よりも、この一対の平板部271の間で挟み込まれる中脚押さえ金具250の直立部252の外側の面同士の間隔の方が短くなる。従って、スクリュー203を捻じ込むことにより、一対の側脚押さえ金具270の間で各中脚押さえ金具250が引っ張られると共に、一対の側脚押さえ金具270の間でコア本体2aに軸方向(すなわち中脚210と側脚230の積み重ね方向)の締め付け力が加えられる。
【0039】
次に、補強金具280及びベース金具240の効果について説明する。本実施形態では、ベース金具240又は補強金具280により、中脚押さえ金具250の長手方向両端部が側脚230に強く押さえ付けられている。柔らかいアルミニウム合金から形成された中脚押さえ金具250は、スクリュー203によってY軸方向に強い張力が加えられると、時間の経過と共に直立部252が徐々にY軸方向外側へ倒れるため、次第に張力が緩和し、コアに十分な締め付け力が与えられなくなる場合がある。
【0040】
中脚押さえ金具250に張力を加えた直後にベース金具240又は補強金具280により中脚押さえ金具250の平板部251の両端部を強く側脚230に固定することで、その後に直立部252が倒れても、側脚230に固定された平板部251の両端部間の張力は残留する。そのため、一対の側脚230間で中脚210を締め付ける力が経時的に低下することはなく、従って、ギャップ部で振動が発生することもない。
【0041】
また、中脚押さえ金具250の直立部252にY軸方向の張力が加えられる作用点(すなわちスクリュー203と係合する雌ねじ255)は、直立部252が平板部251と接続する位置(折り曲げ部)よりもZ軸方向に離れている。そのため、直立部252を介して中脚押さえ金具250にY軸方向の張力が加えられると、折り曲げ部の回りにトルクが発生する。このトルクにより、平板部251に反りが生じてコア本体2aから浮き上がり、コア本体2aのギャップ付近を剪断方向に押さえ付ける力が加えられなくなる。本実施形態のように、ベース金具240又は補強金具280により中脚押さえ金具250の長手方向両端部を側脚230に強く押さえ付ける構成により、このような平板部251の浮き上がりが防止され、尚且つ、更に強い剪断方向の締め付け力が与えられるため、ギャップ部の剪断方向の振動及びこの振動に伴う騒音の発生が抑制される。
【0042】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施の形態は、上記に説明したものに限定されず、特許請求の範囲の記載により表現された技術的思想の範囲内で任意に変更することができる。
【0043】
上記の実施形態においては、中脚210及び中脚押さえ金具250又は250’のY軸方向中央にそれぞれ設けられた貫通穴211、253に締付ボルト201を通し、締付ボルト201及びナット202により一対の中脚押さえ金具250又は250’の間で中脚210を締め付けるようになっている。しかしながら、締付ボルト201及びナット202により中脚押さえ金具250又は250’を中脚210に固定する必要は必ずしもない。図8は、締付ボルト201を使用せずに中脚押さえ金具250又は250’を中脚210に固定する構成例における、中脚210及びその周囲の縦断面図である。図8に示されるように、中脚210a及び中脚押さえ金具250aには、それぞれ貫通穴211及び253が形成されておらず、従って締付ボルト201及びナット202によって固定されていない。その代わりに、コイル4の巻き付け力が、ボビン3を介して各中脚押さえ金具250aに伝達され、この力により各中脚押さえ金具250aが中脚210aに押さえつけられる。
【0044】
また、上記の実施形態は本発明を三相交流リアクトルに適用した例であるが、単相又は2相交流リアクトルに本発明を適用することもできる。例えば、上記実施形態のコア本体1aは3つの中脚210を備えているが、任意の数(例えば1つ、2つ、或いは4つ以上)の中脚を備えたギャップ付きコアに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 リアクトル
2 コア
201 締付ボルト
202 ナット
203、204 スクリュー
210 中脚
220 ギャップ部材
230 側脚
240 ベース金具
250、250’ 中脚押さえ金具
260 絶縁紙
270 側脚押さえ金具
280 補強金具
3 ボビン
4 コイル
5 カバー
52 端子カバー
53 保護カバー
54 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向において積み重ねられた、第1のコアブロックと、ギャップ部材を介して前記第1のコアブロックを挟み込む一対の第2のコアブロックと、を有するコア本体と、
前記第1の方向において、前記一対の第2のコアブロックの外側に配置された、前記第1の方向と直交する第2の方向にそれぞれ延出する一対の第1の押さえ部材と、
前記第2の方向において前記コア本体の両側に配置された、それぞれが前記第1の方向に延出する一対の第2の押さえ部材と、
前記一対の第2の押さえ部材の各々の両端部を、前記第2の方向において前記第2のコアブロックに圧接させるよう作用する締め付け手段と、
を備え、
前記一対の第1の押さえ部材の各々の両端部が前記第2の押さえ部材の各々により連結されて、前記一対の第1の押さえ部材間で前記コア本体を前記第1の方向に締め付ける力が与えられており、
前記一対の第2の押さえ部材の各々の両端部が前記締め付け手段により前記第2のコアブロックに圧接されて、前記一対の第2の押さえ部材間で前記コア本体を前記第2の方向に締め付ける力が与えられていること、を特徴とするギャップ付きコア。
【請求項2】
前記第2の押さえ部材は、前記コア本体と対向して前記第1の方向に延出する第1の平板部と、該第1の平板部の延出方向両端から前記コア本体と反対側へ直立する一対の第1の直立部と、を有し、
前記ギャップ付きコアは、
前記一対の第2の押さえ部材の前記一対の第1の直立部を、前記一対の第1の押さえ部材の前記第2の方向における端部にそれぞれ連結する連結手段と、
前記第1及び前記第2の方向と直交する第3の方向に延出し、前記一対の第2の押さえ部材の前記第1の平板部の前記第1の方向における端部を介して前記第2のコアブロックを前記第2の方向に挟み込み、前記締め付け手段により前記第2のコアブロックに押さえ付けられる一対の補強部材と、
を更に備えたこと、を特徴とする請求項1に記載のギャップ付きコア。
【請求項3】
前記補強部材は、前記コア本体と対向して前記第3の方向に延出する第2の平板部と、該第2の平板部の前記第1の方向における一端から前記コア本体と反対側へ直立する第2の直立部と、を有し、
前記第2の直立部は、前記連結手段により、前記第1の直立部と共に前記第1の押さえ部材の延出方向端部に連結され、
前記第2の平板部には、前記第2の直立部に沿って、前記第1の直立部が差し込まれる穴が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のギャップ付きコア。
【請求項4】
前記第2の方向において、前記第1の押さえ部材は前記コア本体よりも長く、前記第1の押さえ部材の両端は前記コア本体よりも外側に突出し、
前記第1の方向において、前記第2の押さえ部材は前記コア本体よりも短く、
前記連結手段は、前記第1の押さえ部材の一端部及び前記第1の直立部の一方に形成された雌ねじと、前記第1の押さえ部材の一端部及び前記第1の直立部の他方と前記第2の直立部に形成された通し穴と、該通し穴の2つを通り前記雌ねじと係合するスクリューにより、前記第1の押さえ部材、前記第2の押さえ部材及び前記補強部材を連結する、ことを特徴とする請求項3に記載のギャップ付きコア。
【請求項5】
前記第1の押さえ部材、前記第2の押さえ部材、及び前記補強部材が、板金加工により形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のギャップ付きコア。
【請求項6】
前記第2の押さえ部材が非磁性金属板から形成されている、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のギャップ付きコア。
【請求項7】
前記締め付け手段が、前記一対の第2の押さえ部材の延出方向における一端部と、該一端部間に挟み込まれた前記第2のコアブロックとを貫通し、前記一対の第2の押さえ部材間で前記コア本体を前記第2の方向に締め付ける力を該一対の第2の押さえ部材に与える第1の締め付けボルトを含む、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のギャップ付きコア。
【請求項8】
前記締め付け手段は、前記一対の第2の押さえ部材の延出方向における中央部と、該中央部間に挟み込まれた前記第1のコアブロックとを貫通し、前記一対の第2の押さえ部材間で前記コア本体を前記第2の方向に締め付ける力を該一対の第2の押さえ部材に与える第2の締め付けボルトを含む、ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のギャップ付きコア。
【請求項9】
前記第1の押さえ部材は、前記第2の方向に延出して前記コア本体と対向する第3の平板部と、前記第1及び前記第2の方向と垂直な第3の方向における前記第3の平板部の両端から前記コアと反対側へ直立した第3の直立部を有し、前記第2の方向と垂直な断面が略コの字状に形成されている、ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のギャップ付きコア。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のギャップ付きコアを備えたコイル装置。
【請求項11】
リアクトルであることを特徴とする、請求項10に記載のコイル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−30692(P2013−30692A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167258(P2011−167258)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)