説明

クッキングペーパー

【課題】抗菌性とドリップの拡散吸収性に優れるクッキングペーパーを提供する。
【解決手段】パルプ繊維とバインダーとを含む不織布シートであり、
目付量が40〜60g/m2であり、
シート密度が0.1〜0.15g/cm3であり、
バインダーの配合量が15〜20重量%であり、
前記バインダー中に0.5〜1.0重量%の抗菌剤を含むクッキングペーパーにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッキングペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
台所、調理場等では、紙や不織布等からなる、いわゆるクッキングペーパーがよく利用されている。
クッキングペーパーの用途は、煮物の落とし蓋用途、揚げ物の油分の吸収用途、清拭用途など多岐にわたるが、代表的な用途の一つに、肉、鮮魚等の食品を冷蔵、冷凍する際の包装材としての用途がある。
【特許文献1】特開2003−190067
【特許文献2】特開2005−139603
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このためクッキングペーパーでは、食品からのドリップの吸収性や、冷凍保管後の半解凍状態での食品からの剥離性、さらには包装した食料品の鮮度が効果的に保持されることが望ましい。現状ある商品はクッキングペーパーの用途である揚げ物の油分の吸収用途、水分吸収用途等幅広い用途に適した商品であるため、保鮮用途で使用した場合にはドリップが吸収された状態や食品からの剥離性に関してはシートの強度が弱く適していないという問題点がある。
そこで、本発明の主たる課題は、食品冷蔵保管時のドリップを吸収した状態や半解凍時に破損なく食品から剥離でき、しかも、食品の鮮度保持性を有する、クッキングペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記の通りである。
<請求項1記載の発明>
パルプ繊維とバインダーとを含む不織布シートであり、
目付量が40〜60g/m2であり、
シート密度が0.1〜0.15g/cm3であり、
バインダーの配合量が15〜20重量%であり、
前記バインダー中に0.5〜1.0重量%の抗菌剤を含む、ことを特徴とするクッキングペーパー。
【0005】
<請求項2記載の発明>
抗菌剤の有効成分が、銀イオンである請求項1記載のクッキングペーパー。
【発明の効果】
【0006】
本発明のクッキングペーパーは、特に、鮮魚、鮮肉の食材の包装に用いたときに、
シート全体でドリップを拡散でき、ドリップ溜まりを防止できる、
半解凍した状態でも食材から破れることなく剥離することができる、
水や食材からのドリップを吸収した状態でも湿潤強度が低下せず破れにくい、
抗菌効果を有する、
といった、作用効果を奏する。
特に、抗菌剤の有効成分が銀イオンである場合には食材の変色が効果的に防止される。
以上のとおり本発明によれば、食品解凍後のドリップを吸収した状態や半解凍時に破損なく食品から剥離でき、しかも、食品の鮮度保持性を有する、クッキングペーパーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次いで本発明の実施の形態を以下に詳述する。
本実施の形態のクッキングペーパーは、パルプ繊維とバインダーと含む不織布シートである。
前記不織布シートには、パルプ繊維以外の天然、合成繊維を含まれているのが望ましい。この場合、パルプ繊維とパルプ繊維以外の繊維は、90:10〜50:50の割合であるのがよい。
【0008】
パルプ繊維としては、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、などから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチドケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0009】
パルプ繊維以外の繊維としては、例えば、コットン、レーヨン等の天然繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンと痾オレフィンとからなる結晶性プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル樹脂;フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂から構成される熱可塑性繊維、生分解性合成繊維などから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
前記熱可塑性繊維は、単一成分の繊維でもよく、複数の樹脂を適宜組み合わせて構成される複合繊維、例えば並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型、三層以上の多層型、中空並列型、中鞘芯型、異形鞘芯型、海島型等で且つ低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成した構造の複合繊維とすることもできる。
【0010】
原料繊維からの不織布の製法としては、エアスルー、ヒートロールによるサーマルボンド、ニードルパンチ、スパンボンド、スパンレース、エアレイド等の製法が採用できるが、特に、スパンボンド、エアレイド、スパンレースが適する。
スパンレース法であれば、使用する繊維の繊維長は2〜100mm程とするのが好ましい。例えば、パルプ繊維の繊維長は、2mm以上10mm以下程度のものを使用することが好ましい。また、パルプ繊維以外の繊維の繊維長は20mm以上100mm以下であるのが好ましい。特には32mm以上70mm以下がよい。
用いる繊維の繊維太さは、1.0〜10.0dtex、好適には1.5〜7.5dtex、特に好適には2.0〜6.5dtexとする。繊維の太さが1.0dtex未満であると、乾燥時および湿潤時の引張強度が不足する。反対に10.0dtexを超えると剛性が高くなり、柔らかさに劣るようになる。
【0011】
他方、本形態のクッキングペーパーは、目付量が40〜60g/m2、好適には45〜55g/m2である。目付量が40g/m2未満であると、クッキングペーパーに必要な水分、ドリップの吸収性を確保するのが困難となる。
シート密度は0.1〜0.15g/cm3、好適には0.11〜0.14g/cm3である。シート密度が当該範囲であると、水分、ドリップを吸収した際の湿潤強度を十分に確保でき、しかも、水分、ドリップの拡散性が発揮され、クッキングペーパーに起因するドリップ溜まりの発生、それによる食品の鮮度低下が効果的に防止できる。
【0012】
他方、本形態のクッキングペーパーは、0.5〜1.0重量%抗菌剤を含むバインダーが、15〜20重量%配合されている。
バインダーは不織布シート中に内添させてもよいが、好適には、不織布シート地を形成した後、その表裏面に対して塗布・塗工・印刷などして付与する。表面強度の向上効果が特に顕著に発揮され、例えば、食材を包装して冷凍した後、半解凍状態で食材から剥離する際にシートが破れるおそれは格段に小さくなる。
前記バインダーの主材は、PVA(ポリビニールアルコール)、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、デンプン等、アクリル系エマルジョンバインダーなど、不織布シート形成に用いられている既知のバインダーの中から適宜選択して用いる。ただし、クッキングペーパーの用途に鑑みて食品衛生上、人体への悪影を考慮する。
【0013】
抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛及びこれらのイオンやその塩等の有効金属成分をゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、チタン酸カリウム等の無機材に担持させた無機系抗菌剤が挙げられる。その他、ヒノキチオール等の天然抗菌剤も用いうる。
特に好適には、銀イオンを有効成分とするもので、代表的に銀又は銀イオン(塩)をゼオライトに担持させたものが挙げられる。銀イオンが、ゼオライト中に0.1〜15重量%含まれるものが適当である。好ましくは0.1〜5重量%である。このように抗菌性金属イオンの量を限定するのは、0.1〜15重量%の範囲で優れた抗菌性を発揮するからである。
抗菌剤として用い得る既知の抗菌剤製品としては、例えば、大和化学工業株式会社製のアモルデンAQ−1500、アモルデンMTS、アモルデンMCPスーパー、アモルデンHS等がある。
【実施例】
【0014】
次いで、本発明の実施例、比較例及び従来例について、「液拡散性」、「液保持量」、「食材変色性」、「半解凍時の剥離性」、「湿潤強度」、「包みやすさ」、「吸水量」について試験し評価した結果を示す。
実施例等の具体的な組成・物性及び試験結果、評価は表1中に示す。
なお、実施例及び比較例に用いたバインダーは銀系抗菌剤を0.5%含有するものである。従来例1及び2に用いられているバインダーは、抗菌剤を含まないものである。
【0015】
試験方法及び評価方法は次記のとおりである。
[液拡散性]100mm四方に裁断した乾燥状態の試料の上に、中央に通液孔を有する重さ60g、高さ10mmの円筒形の錘を載置し、前記通液孔を介して試料に水1mLを注入する。1分経過後に水分が拡散している範囲の面積を測定する。測定された面積の大小により拡散性を判断でき、広いほうが拡散性に優れる。
【0016】
[液保持量]拡散性の試験終了後に、錘と試料との間に予め重量を測定した乾燥濾紙を挟み、1分間放置する。次いで、濾紙重量を測定し、乾燥時の重量との差分から濾紙に移行した水分量を算出する。移行水分量が少ないと液保持性が少なく食材保存に使用した際、ドリップ溜りが少なく優れる。移行水分量が多いと保持量が多く適さない。
【0017】
[食材変色性]生のマグロの切り身50gを試料で包装し、5℃に保持された冷蔵庫内で12時間保管した後、解凍して切り身から試料を剥離したときの、切り身の変色具合を目視にて確認した。表中、ほとんど変色していないもの:○、若干変色しているもの:△、変色しているもの:×として表記した。
【0018】
[半解凍時の剥離性]生のマグロの切り身50g(100mm×80mm)を試料で包装し、6時間冷凍保管したのち、常温で30分放置して半解凍の状態とし、この状態でマグロから試料を剥離したときに破れが生ずるか否かを確認した。
表中、破れなし:○、やや破れあり:△、破れあり:×として表記した。
【0019】
[湿潤強度]試料は、縦・横方向ともに幅25mm×長さ150mmで作成する。ロードセル引張試験機のつかみ間隔を100mmに設定し、水を含ませた平筆を用い、試験片の中央部を、幅10mm以上が濡れるように湿潤させ、速度100mm/minで試験する。
【0020】
[包みやすさ]生のマグロの切り身50g(100mm×80mm)を試料で包装し、その包装の際のその包みやすさを官能評価した。
表中、柔らかく包みやすい:○、どちらでもない:△、硬く包みにくい:×として表記した。
【0021】
[吸水量]吸水量は、100mm四方に裁断した乾燥状態の試料の重量を測定したのち、純水中に十分に浸漬させ、次いで、純水中から引き上げて30秒後の重量を測定し、その測定値から乾燥状態時の重量を引いた値を吸水量とした。
なお、本試験において450g/m2以下は吸収量が不十分であり、700g/m2を超えると過度に食材の水分を奪うおそれがあると判断できる。
【0022】
【表1】

【0023】
表1の結果より、本発明の構成を採ることで、食品冷蔵保管後や食品解凍後のドリップを吸収した状態や半解凍時に破損なく食品から剥離でき、しかも、食品の鮮度保持性が発揮されることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、クッキングペーパー以外の紙製品にも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維とバインダーとを含む不織布シートであり、
目付量が40〜60g/m2であり、
シート密度が0.1〜0.15g/cm3であり、
バインダーの配合量が15〜20重量%であり、
前記バインダー中に0.5〜1.0重量%の抗菌剤を含む、ことを特徴とするクッキングペーパー。
【請求項2】
抗菌剤の有効成分が、銀イオンである請求項1記載のクッキングペーパー。