クッションおよび車椅子
【課題】着座者の姿勢を補正可能なクッションおよび車椅子を提供することを課題とする。
【解決手段】クッション1は、セルユニット2と、体圧分布を調整する内圧調整部3と、体圧用センサ薄膜51、77と、複数の体圧用電極01X〜16X、01Y〜16Y、01a〜16a、01b〜16b、01c〜16c、01d〜16dと、複数の体圧用検出部A0101〜A1616と、を有し、体圧用検出部A0101〜A1616に加わる体圧を電気量として検出可能なシート状の体圧センサ5、7と、内圧調整部3を制御し、セル20LB、20LF、20RB、20RF、21B、21LF、21RFの内圧を変化させる制御部4、8と、を備える。制御部4、8は、基準体圧分布と実際の体圧分布とを格納する記憶部43、44、83、84と、実際の体圧分布が基準体圧分布に近づくように、内圧調整部3を制御する演算部42、82と、を有する。
【解決手段】クッション1は、セルユニット2と、体圧分布を調整する内圧調整部3と、体圧用センサ薄膜51、77と、複数の体圧用電極01X〜16X、01Y〜16Y、01a〜16a、01b〜16b、01c〜16c、01d〜16dと、複数の体圧用検出部A0101〜A1616と、を有し、体圧用検出部A0101〜A1616に加わる体圧を電気量として検出可能なシート状の体圧センサ5、7と、内圧調整部3を制御し、セル20LB、20LF、20RB、20RF、21B、21LF、21RFの内圧を変化させる制御部4、8と、を備える。制御部4、8は、基準体圧分布と実際の体圧分布とを格納する記憶部43、44、83、84と、実際の体圧分布が基準体圧分布に近づくように、内圧調整部3を制御する演算部42、82と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座用のクッション、当該クッションがシートに用いられる車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の身体支持装置は、複数のエアセルと、内圧センサと、体圧センサと、を備えている。内圧センサは、エアセルの内圧を測定可能である。体圧センサは、マットレスにおける横臥者の体圧分布を測定可能である。エアセルの内圧は、体圧センサの測定した体圧分布に基づいて、調整される。同文献記載の身体支持装置によると、エアセルの内圧が過剰に低くなり、「ボトムアウト」が発生するのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−505663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車椅子のシートにおいても、着座者の体圧分布を調整するために、エアセルが用いられる場合がある。エアセルは、予め空気を入れた状態で用いられる。すなわち、介護者は、シートに着座した直後の着座者の着座状態を目視しながら、エアセルの内圧を調整している。また、一旦調整された内圧は、車椅子の使用中に変更されない。このように、初期の着座状態に応じて、エアセルの内圧は固定されている。
【0005】
しかしながら、初期の着座状態に対して、着座者の姿勢が傾いた場合は、エアセルの内圧が実際の着座者の姿勢に合わなくなる。とりわけ、着座者が高齢者や麻痺患者である場合は、自分で姿勢を補正することが困難である。このため、着座者に「床ずれ」が発生するおそれがある。また、着座者がバランスを崩すことも考えられる。
【0006】
このような場合は、着座者の姿勢を、初期の着座状態に近づくように、自動的に補正すればよい。しかしながら、特許文献1には、人の姿勢に応じてエアセルの内圧を調整する技術は開示されているものの、人の姿勢に応じて人の姿勢そのものを補正する方法は開示されていない。
【0007】
本発明のクッションおよび車椅子は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、着座者の姿勢を補正可能なクッションおよび車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明のクッションは、着座者が着座する座面と、該座面の下側に配置され、流体が出入可能な複数のセルを有するセルユニットと、複数の該セルの内圧を変化させることにより、該着座者の体圧分布を調整する内圧調整部と、該座面の下側に配置され、ポリマーを含み該着座者の体圧により弾性的に変形可能な体圧用センサ薄膜と、該体圧用センサ薄膜に直接あるいは間接的に接続される複数の体圧用電極と、複数の該体圧用電極間に形成される複数の体圧用検出部と、を有し、該体圧用検出部に加わる体圧を電気量として検出可能なシート状の体圧センサと、該内圧調整部を制御し、該セルの該内圧を変化させる制御部と、を備えてなるクッションであって、前記制御部は、前記着座者の姿勢の基準となる基準体圧分布と、該着座者の実際の体圧分布と、を格納する記憶部と、実際の該体圧分布が該基準体圧分布に近づくように、前記内圧調整部を制御する演算部と、を有することを特徴とする。
【0009】
ここで、「直接あるいは間接的に」とは、体圧用電極と体圧用センサ薄膜とが接合されているかいないかによらず体圧用電極が体圧用センサ薄膜に直接接続されている場合と、体圧用電極と体圧用センサ薄膜との間に少なくとも一つの別の層(例えば電極保護層など)が介装されている場合と、を含む。
【0010】
本発明のクッションは、座面とセルユニットと内圧調整部と体圧センサと制御部とを備えている。制御部は、記憶部と演算部とを備えている。記憶部には、基準体圧分布と実際の体圧分布とが格納される。基準体圧分布は、着座者の姿勢の基準となる体圧分布である。実際の体圧分布は、体圧センサにより測定される。制御部は、実際の体圧分布が基準体圧分布に近づくように、内圧調整部を制御する。内圧調整部は、制御部の指示に応じたセルの内圧を変化させ、着座者の体圧分布を補正する。つまり、着座者の姿勢を補正する。本発明のクッションによると、着座者の実際の体圧分布を、基準体圧分布に近づけることができる。つまり、着座者の姿勢を補正することができる。
【0011】
従来、着座者の姿勢は、介護者の目視により、定期的に確認されていた。このため、介護者の技量や確認の頻度によっては、着座者の姿勢の変化が判りにくい場合があった。この点、本発明のクッションによると、着座者の姿勢の変化を、着座者の体圧分布から測定することができる。このため、介護者の技量によらず、着座者の姿勢の変化を把握することができる。また、制御部を調整することにより、簡単に、測定の頻度を多くすることができる。このため、確実に、着座者の姿勢の変化を把握することができる。
【0012】
また、従来、着座者の姿勢は、介護者の目視により、確認されていた。このため、着座者の姿勢を定量的に把握したデータが、存在しなかった。したがって、セルの内圧の調整作業や着座者の着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合も、定量化された共通のデータを基に、指導や訓練を行うことができなかった。よって、介護スキルの伝授が困難であった。
【0013】
この点、本発明のクッションによると、着座者の姿勢つまり体圧分布を、制御部の記憶部に格納することができる。このため、着座者の姿勢を定量化したデータを、保存することができる。したがって、セルの内圧の調整作業や着座者の着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合であっても、指導や訓練を簡単に行うことができる。すなわち、介護スキルの伝授が簡単である。また、着座者の姿勢を定量化したデータは、着座者の症状の把握や研究などにも有効利用することができる。
【0014】
とりわけ、着座者が幼児や高齢者や麻痺患者である場合は、自分で姿勢を補正することが困難である。また、着座者が声を発することができない場合や着座者の声が小さい場合は、姿勢を崩しても介護者に知らせることが困難である。このような場合に、本発明のクッションは特に好適である。
【0015】
また、体圧用センサ薄膜は、着座者の体圧により弾性的に変形可能である。このため、体圧センサは、柔軟であり、伸縮性を有している。したがって、体圧センサが、着座者の体に沿って変形しやすい。よって、体圧センサが、着座者の近く、例えば座面の真下に配置されている場合であっても、着座者は、硬さ、ごわつきなどの違和感を感じにくい。また、体圧センサは、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。このため、体圧分布の検出精度が高い。
【0016】
また、自分で姿勢を補正することが困難な着座者をクッションに座らせる際は、着座状態の設定が重要である。着座状態は、着座者の行動の目的に応じて、設定する必要がある。例えば、着座者がリラックスしたい場合は、着座者を後傾させた方がよい。また、着座者が食事を取りたい場合は、着座者を前傾させた方がよい。この点、本発明のクッションによると、セルの内圧を調整することにより、座面を前後左右自在に傾斜させることができる。このため、所望の着座状態を設定することができる。
【0017】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、さらに、前記座面の下側に配置され、該座面の傾斜を電気量として検出可能な傾斜センサを備え、前記演算部は、該傾斜センサの該電気量を参照しながら前記内圧調整部を制御する構成とする方がよい。
【0018】
特許文献1の身体支持装置のように、クッションに内圧センサを配置すると、セルの内圧を測定することができる。しかしながら、内圧は、着座者の姿勢、体重などに応じて、設定される。例えば、着座者の体重が重い場合、内圧は大きく設定される。反対に、着座者の体重が軽い場合、内圧は小さく設定される。このように、セルの内圧は、種々の状況に応じて設定されるものであり、クッションの座面の傾斜だけを反映するものではない。このため、クッションに内圧センサを配置しても、座面の傾斜を測定することは困難である。
【0019】
この点、本構成のクッションは、傾斜センサを備えている。このため、座面の傾斜を電気量として検出することができる。着座者の姿勢を補正する際、演算部は、傾斜センサの電気量を参照する。このため、制御部は、より確実に、実際の体圧分布が基準体圧分布に近づくように、内圧調整部を制御することができる。
【0020】
また、着座者の着座状態を設定する場合は、傾斜センサにより座面の状態を確認することができる。このため、より簡単に、また確実に、所望の着座状態を設定することができる。
【0021】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記体圧センサにおいて、複数の前記体圧用電極は、前記体圧用センサ薄膜の上側に配置される帯状の体圧用上側電極と、該体圧用センサ薄膜の下側に配置される帯状の体圧用下側電極と、からなり、複数の前記体圧用検出部は、該体圧用上側電極と該体圧用下側電極とが、上側または下側から見て、交差することにより形成され、前記体圧により該体圧用検出部の静電容量が変化する構成とする方がよい。
【0022】
つまり、本構成は、本発明のクッションの体圧センサとして、静電容量型センサを用いるものである。本構成によると、体圧用検出部の静電容量の変化を基に、体圧分布を測定することができる。
【0023】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記体圧用上側電極および前記体圧用下側電極は、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を含んで形成される構成とする方がよい。
【0024】
本構成によると、体圧用上側電極、体圧用下側電極が、体圧用センサ薄膜と共に伸縮することができる。したがって、体圧用センサ薄膜の伸縮を、体圧用上側電極、体圧用下側電極が規制するおそれは小さい。また、体圧センサ全体の伸縮性がより大きくなる。このため、体圧センサが、着座者の体に沿って変形しやすい。また、体圧センサが、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0025】
(5)好ましくは、上記(2)ないし(4)のいずれかの構成において、前記傾斜センサは、ポリマーを含み前記座面の前記傾斜により弾性的に変形可能な傾斜用センサ薄膜と、該傾斜用センサ薄膜の上側に配置される傾斜用上側電極と、該傾斜用センサ薄膜の下側に配置される傾斜用下側電極と、該傾斜用上側電極と該傾斜用下側電極とが、上側または下側から見て、重複することにより形成される複数の傾斜用検出部と、を有し、該傾斜用検出部に加わる荷重により、該傾斜用検出部の静電容量が変化する構成とする方がよい。
【0026】
つまり、本構成は、本発明のクッションの傾斜センサとして、静電容量型センサを用いるものである。本構成によると、傾斜用検出部の静電容量の変化を基に、座面の傾斜を測定することができる。
【0027】
また、傾斜用センサ薄膜は、座面の傾斜により弾性的に変形可能である。このため、傾斜センサは、柔軟であり、伸縮性を有している。したがって、傾斜センサは、座面の傾斜に対して、追従して変形しやすい。よって、座面の傾斜の検出精度が高い。
【0028】
(5−1)好ましくは、上記(5)の構成において、前記傾斜用上側電極および前記傾斜用下側電極は、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を含んで形成される構成とする方がよい。
【0029】
本構成によると、傾斜用上側電極、傾斜用下側電極が、傾斜用センサ薄膜と共に伸縮することができる。したがって、傾斜用センサ薄膜の伸縮を、傾斜用上側電極、傾斜用下側電極が規制するおそれは小さい。また、傾斜センサ全体の伸縮性がより大きくなる。このため、傾斜センサが、着座者の体に沿って変形しやすい。また、傾斜センサが、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0030】
(6)上記課題を解決するため、本発明の車椅子は、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成のクッションを有するシートを備えることを特徴とする。本発明の車椅子のシートは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成のクッションを有している。このため、着座者の実際の体圧分布を、基準体圧分布に近づけることができる。つまり、着座者の姿勢を補正することができる。
【0031】
また、着座者の姿勢の変化を、着座者の体圧分布から測定することができる。このため、介護者の技量によらず、着座者の姿勢の変化を把握することができる。また、制御部を調整することにより、簡単に、測定の頻度を多くすることができる。このため、確実に、着座者の姿勢の変化を把握することができる。
【0032】
また、着座者の姿勢つまり体圧分布を、制御部の記憶部に格納することができる。このため、着座者の姿勢を定量化したデータを、保存することができる。したがって、セルの内圧の調整作業や着座者の着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合であっても、指導や訓練を簡単に行うことができる。すなわち、介護スキルの伝授が簡単である。また、着座者の姿勢を定量化したデータは、着座者の症状の把握や研究などにも有効利用することができる。また、本発明の車椅子によると、セルの内圧を調整することにより、座面を前後左右自在に傾斜させることができる。このため、所望の着座状態を設定することができる。
【0033】
(7)傾動アクチュエーターは、ポリマーを含む傾斜用センサ薄膜と、該傾斜用センサ薄膜の表側に配置される傾斜用表側電極と、該傾斜用センサ薄膜の裏側に配置される傾斜用裏側電極と、該傾斜用表側電極と該傾斜用裏側電極とが、表側または裏側から見て、重複することにより形成される複数の傾斜用検出部と、を有する、少なくとも一つの傾斜センサと、該傾斜センサの表側に配置される硬質の表側挟持板と、該傾斜センサの裏側に配置される硬質の裏側挟持板と、該傾斜センサの該傾斜用検出部と、該表側挟持板と、の間に介装される押圧部材と、該押圧部材が径方向内側に収容されると共に流体が出入可能なリング状のセルを有するセルユニットと、複数の該セルの内圧を変化させることにより、該表側挟持板の傾斜を調整する内圧調整部と、該内圧調整部を制御し、該セルの該内圧を変化させる制御部と、を備え、該裏側挟持板に対して該表側挟持板が傾斜する際、該表側挟持板の傾斜に応じた荷重が、該押圧部材を介して、該傾斜用検出部に入力されることにより、該傾斜用検出部の静電容量が変化し、該制御部が、該内圧調整部を介して、該静電容量の変化に応じて該セルの内圧を調整し、該傾斜を変化させることを特徴とする。
【0034】
上記傾動アクチュエーターによると、表側挟持板と裏側挟持板との間に静電容量型の傾斜センサが介装されている。傾斜センサには、押圧部材を介して、裏側挟持板に対する表側挟持板の傾斜が入力される。このため、傾斜センサにより、表側挟持板の傾斜を検出することができる。また、押圧部材は、リング状のセルの径方向内側に収容されている。当該セルの内圧を調整することにより、表側挟持板の傾斜を変化させることができる。このように、上記傾動アクチュエーターによると、表側挟持板の傾斜を検出することができると共に、当該傾斜を変化させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、着座者の姿勢を補正可能なクッションおよび車椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一実施形態の車椅子の左側面図である。
【図2】同車椅子の上面図である。
【図3】同車椅子のクッションの分解斜視図である。
【図4】同クッションのセルユニットの上面図である。
【図5】同クッションの体圧センサの透過上面図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】姿勢補正方法のフローチャートである。
【図8】立ち上がり兆候検出方法のフローチャートである。
【図9】動き度合検出方法のフローチャートである。
【図10】第二実施形態の車椅子のクッションの分解斜視図である。
【図11】同クッションの傾斜センサの分解斜視図である。
【図12】第三実施形態の車椅子のクッションの分解斜視図である。
【図13】第四実施形態の車椅子のクッションの体圧センサの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の車椅子の実施の形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明のクッションの実施の形態についての説明を含むものである。
【0038】
<第一実施形態>
[車椅子の構成]
まず、本実施形態の車椅子の構成について簡単に説明する。図1に、本実施形態の車椅子の左側面図を示す。図2に、同車椅子の上面図を示す。なお、図中、左右方向は、後側から前側を見た場合を基準に、定義されている。また、図2においては、着座者Mを透過して示す。
【0039】
図1、図2に示すように、本実施形態の車椅子9は、フレーム90と、主輪91L、91Rと、キャスター92L、92Rと、シート93と、バックサポート94と、フットサポート95L、95Rと、アームサポート96L、96Rと、ハンドル97L、97Rと、を備えている。
【0040】
主輪91L、91Rは、フレーム90の左右両側に配置されている。主輪91L、91Rは、前後方向に回転可能である。キャスター92L、92Rは、フレーム90の左右両側であって、主輪91L、91Rの前側に配置されている。キャスター92L、92Rは、前後方向に回転可能である。また、キャスター92L、92Rは、左右方向に揺動可能である。
【0041】
シート93は、長方形板状を呈している。シート93は、フレーム90に固定されている。シート93は、シート本体930と、クッション1と、を備えている。クッション1は、シート本体930の上側に配置されている。着座者Mは、クッション1の上面(座面520)に着座している。
【0042】
バックサポート94は、フレーム90に固定されている。バックサポート94は、いわゆる「背もたれ」である。着座者Mの背中は、バックサポート94により支持されている。フットサポート95L、95Rは、フレーム90の前端に固定されている。着座者Mの左足裏はフットサポート95Lにより、右足裏はフットサポート95Rにより、それぞれ支持されている。アームサポート96L、96Rは、フレーム90に固定されている。着座者Mの左前腕部はアームサポート96Lにより、右前腕部はアームサポート96Rにより、それぞれ支持されている。ハンドル97L、97Rは、フレーム90の後端に固定されている。車椅子9を移動させる際、ハンドル97L、97Rは介護者(図略)により把持される。
【0043】
[クッションの構成]
次に、本実施形態のクッションの構成について説明する。図3に、本実施形態のクッションの分解斜視図を示す。なお、上側基板52を透過して示す。図3に示すように、本実施形態のクッション1は、セルユニット2と、内圧調整部と、制御部と、体圧センサ5と、4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBと、4枚の上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RBと、下側挟持板71と、を備えている。
【0044】
(セルユニット2)
図4に、本実施形態のクッションのセルユニットの上面図を示す。図3、図4に示すように、セルユニット2は、4個のエアセル20LF、20RF、20LB、20RBを備えている。エアセル20LF、20RF、20LB、20RBは、本発明の「セル」の概念に含まれる。エアセル20LF、20RF、20LB、20RBは、各々、ウレタンフィルム製であって、角筒状を呈している。図2にハッチングで示すように、シート93つまりクッション1は、左前部分1LF、右前部分1RF、左後部分1LB、右後部分1RBに区分けされる。図3、図4に戻って、エアセル20LFは左前部分1LFに、エアセル20RFは右前部分1RFに、エアセル20LBは左後部分1LBに、エアセル20RBは右後部分1RBに、それぞれ対応している。エアセル20LF、20RF、20LB、20RBは、柔軟である。エアセル20LF、20RF、20LB、20RBと、後述する内圧調整部3と、の間では、空気の給排が行われる。空気は、本発明の「流体」の概念に含まれる。
【0045】
(傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RB)
4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBは、いわゆる変位センサである。傾斜センサ6LFはエアセル20LFの上面に、傾斜センサ6RFはエアセル20RFの上面に、傾斜センサ6LBはエアセル20LBの上面に、傾斜センサ6RBはエアセル20RBの上面に、それぞれ配置されている。
【0046】
(上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RB)
4枚の上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RBは、各々、硬質の樹脂製であって長方形板状を呈している。上側挟持板70LFは傾斜センサ6LFの上側に、上側挟持板70RFは傾斜センサ6RFの上側に、上側挟持板70LBは傾斜センサ6LBの上側に、上側挟持板70RBは傾斜センサ6RBの上側に、それぞれ配置されている。
【0047】
(下側挟持板71)
下側挟持板71は、硬質の樹脂製であって長方形板状を呈している。下側挟持板71の上面には、エアセル20LF、20RF、20LB、20RBが配置されている。下側挟持板71は、図1に示すシート本体930の上面に配置されている。
【0048】
(内圧調整部3)
図4に示すように、内圧調整部3は、合計4組の給排ユニット30を備えている。なお、図4においては、給排ユニット30を1組だけ示す。4組の給排ユニット30は、4個のエアセル20LF、20RF、20LB、20RBに接続されている。4組の給排ユニット30の構成は同様である。以下、4組の給排ユニット30を代表して、エアセル20RF用の給排ユニット30について説明する。
【0049】
給排ユニット30は、ポンプ300と、給排切替バルブ301と、圧力計302と、メインホース305と、排気ホース306と、を備えている。メインホース305は、ポンプ300とエアセル20RFとを接続している。メインホース305の途中には、給排切替バルブ301と、圧力計302と、が配置されている。給排切替バルブ301はポンプ300側に、圧力計302はエアセル20RF側に、それぞれ配置されている。排気ホース306は、給排切替バルブ301に接続されている。給排切替バルブ301を切り替えることにより、メインホース305と排気ホース306とを、連結、遮断することができる。
【0050】
(体圧センサ5)
図3に示すように、体圧センサ5は、4枚の上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RBの上側に配置されている。図5に、本実施形態のクッションの体圧センサの透過上面図を示す。図6に、図5のVI−VI断面図を示す。なお、図5においては、上側基板52を省略して示す。また、体圧用下側電極01Y〜16Y、体圧用下側配線01y〜16y、下側配線用コネクタ55を細線で示す。また、体圧用検出部A0101〜A1616にハッチングを施して示す。また、図6においては、体圧用上側配線01x〜16x、体圧用下側配線01y〜16y、上側配線用コネクタ54、下側配線用コネクタ55を省略して示す。
【0051】
図5、図6に示すように、体圧センサ5は、体圧用センサ薄膜51と、体圧用上側電極01X〜16Xと、体圧用下側電極01Y〜16Yと、体圧用検出部A0101〜A1616と、体圧用上側配線01x〜16xと、体圧用下側配線01y〜16yと、上側基板52と、下側基板53と、上側配線用コネクタ54と、下側配線用コネクタ55と、を備えている。なお、体圧用検出部の符号「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、体圧用上側電極01X〜16Xに対応している。下二桁の「△△」は、体圧用下側電極01Y〜16Yに対応している。体圧センサ5の切断時伸びは、300%である。
【0052】
体圧用センサ薄膜51は、ウレタンゴム製であって、長方形のシート状を呈している。ウレタンゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。
【0053】
上側基板52は、体圧用センサ薄膜51の上側に配置されている。上側基板52は、アクリルゴムを含んで形成されている。上側基板52は、長方形板状を呈している。上側基板52の上面は、座面520である。体圧用上側電極01X〜16Xは、上側基板52の下面に、合計16本配置されている。体圧用上側電極01X〜16Xは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。アクリルゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。導電性カーボンブラックは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。体圧用上側電極01X〜16Xは、各々、帯状を呈している。体圧用上側電極01X〜16Xは、各々、左右方向に延在している。体圧用上側電極01X〜16Xは、前後方向に、所定間隔毎に離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0054】
体圧用上側配線01x〜16xは、上側基板52の下面に、合計16本配置されている。体圧用上側配線01x〜16xは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。体圧用上側配線01x〜16xは、各々、線状を呈している。上側配線用コネクタ54は、体圧用センサ薄膜51の右後隅に配置されている。体圧用上側配線01x〜16xは、各々、体圧用上側電極01X〜16Xの右端と、上側配線用コネクタ54と、を接続している。
【0055】
下側基板53は、体圧用センサ薄膜51の下側に配置されている。下側基板53は、アクリルゴムを含んで形成されている。下側基板53は、長方形板状を呈している。体圧用下側電極01Y〜16Yは、下側基板53の上面に、合計16本配置されている。体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。アクリルゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。導電性カーボンブラックは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、帯状を呈している。体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、前後方向に延在している。体圧用下側電極01Y〜16Yは、左右方向に、所定間隔毎に離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0056】
体圧用下側配線01y〜16yは、下側基板53の上面に、合計16本配置されている。体圧用下側配線01y〜16yは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。体圧用下側配線01y〜16yは、各々、線状を呈している。下側配線用コネクタ55は、体圧用センサ薄膜51の右前隅に配置されている。体圧用下側配線01y〜16yは、各々、体圧用下側電極01Y〜16Yの前端と、下側配線用コネクタ55と、を接続している。
【0057】
体圧用検出部A0101〜A1616は、図5にハッチングで示すように、体圧用上側電極01X〜16Xと、体圧用下側電極01Y〜16Yと、が上側または下側から見て、交差する部分(重複する部分)に配置されている。体圧用検出部A0101〜A1616は、各々、体圧用上側電極01X〜16Xの一部と、体圧用下側電極01Y〜16Yの一部と、体圧用センサ薄膜51の一部と、を備えている。体圧用検出部A0101〜A1616は、合計256個(=16個×16個)配置されている。体圧用検出部A0101〜A1616は、体圧センサ5の略全面に亘って配置されている。
【0058】
図5中、点線で区分けしたように、クッション1は、左前部分1LF、右前部分1RF、左後部分1LB、右後部分1RBに区分けされる。左前部分1LFには、体圧用上側電極09X〜16Xと体圧用下側電極01Y〜08Yとの交差部分である、合計64個の体圧用検出部(A0901→A0908→A1608→A1601で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)が対応している。
【0059】
右前部分1RFには、体圧用上側電極09X〜16Xと体圧用下側電極09Y〜16Yとの交差部分である、合計64個の体圧用検出部(A0909→A0916→A1616→A1609で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)が対応している。
【0060】
左後部分1LBには、体圧用上側電極01X〜08Xと体圧用下側電極01Y〜08Yとの交差部分である、合計64個の体圧用検出部(A0101→A0108→A0808→A0801で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)が対応している。
【0061】
右後部分1RBには、体圧用上側電極01X〜08Xと体圧用下側電極09Y〜16Yとの交差部分である、合計64個の体圧用検出部(A0109→A0116→A0816→A0809で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)が対応している。
【0062】
(制御部4)
制御部4は、電源回路41と、CPU(Central Processing Unit)42と、RAM(Random Access Memory)43と、EEP−ROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)44と、駆動回路45と、を備えている。CPU42は、本発明の「演算部」の概念に含まれる。RAM43、EEP−ROM44は、本発明の「記憶部」の概念に含まれる。
【0063】
電源回路41は、体圧用検出部A0101〜A1616に、正弦波状の交流電圧を印加する。交流電圧は、体圧用検出部A0101〜A1616に、走査的に順番に印加される。EEP−ROM44には、予め、体圧用検出部A0101〜A1616における静電容量と荷重(体圧)との対応を示すマップなどが、格納されている。RAM43には、上側配線用コネクタ54、下側配線用コネクタ55から入力されるインピーダンス、位相などが、一時的に格納される。
【0064】
CPU42は、RAM43に格納されたインピーダンス、位相を基に、体圧用検出部A0101〜A1616の静電容量を抽出する。そして、静電容量から、体圧センサ5における体圧分布を算出する。
【0065】
図3に示すように、制御部4は、4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBに接続されている。制御部4には、4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBの変位が電気信号として入力される。
【0066】
図4に示すように、駆動回路45は、内圧調整部3の給排ユニット30の、ポンプ300と、給排切替バルブ301と、に接続されている。また、制御部4には、内圧調整部3の給排ユニット30の圧力計302から、圧力が電気信号として入力される。
【0067】
[姿勢補正方法]
次に、本実施形態の車椅子における、着座者の姿勢補正方法について説明する。図7に、姿勢補正方法のフローチャートを示す。ここで、シート93上の着座者Mが傾動する場合のフローチャートは、傾動方向によらず、前後左右同様である。図7では、代表して、シート93上の着座者Mが左側に傾動する場合のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。
【0068】
(ステップ1(S1))
ステップ1においては、着座者Mの初期状態(シート93に着座した直後)の体圧データがサンプリングされる。介護者は、着座者Mを、理想的な姿勢で車椅子9に着座させる。制御部4は、まず、この状態の体圧用検出部A0101〜A1616の体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)を、体圧センサ5を用いてサンプリングする。体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)は、本発明の「基準体圧分布」の概念に含まれる。
【0069】
次に、CPU42は、左前部分1LFに対応する体圧用検出部(A0901→A0908→A1608→A1601で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり左前合計値DLF0を算出する。同様に、右前部分1RFに対応する体圧用検出部(A0909→A0916→A1616→A1609で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり右前合計値DRF0を算出する。同様に、左後部分1LBに対応する体圧用検出部(A0101→A0108→A0808→A0801で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり左後合計値DLB0を算出する。同様に、右後部分1RBに対応する体圧用検出部(A0109→A0116→A0816→A0809で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり右後合計値DRB0を算出する。
【0070】
続いて、CPU42は、以下の式(1)から、総合計値DT0を算出する。
DT0=DLF0+DRF0+DLB0+DRB0・・・・・式(1)
また、CPU42は、以下の式(2)から、左合計値DL0を算出する。
DL0=DLF0+DLB0・・・・・式(2)
また、CPU42は、以下の式(3)から、右合計値DR0を算出する。
DR0=DRF0+DRB0・・・・・式(3)
また、CPU42は、以下の式(4)から、前合計値DF0を算出する。
DF0=DLF0+DRF0・・・・・式(4)
また、CPU42は、以下の式(5)から、後合計値DB0を算出する。
DB0=DLB0+DRB0・・・・・式(5)
それから、CPU42は、以下の式(6)から、左傾斜率PL0(%)を算出する。
PL0=(DL0/DT0)×100・・・・・式(6)
また、CPU42は、以下の式(7)から、右傾斜率PR0(%)を算出する。
PR0=(DR0/DT0)×100・・・・・式(7)
また、CPU42は、以下の式(8)から、前傾斜率PF0(%)を算出する。
PF0=(DF0/DT0)×100・・・・・式(8)
また、CPU42は、以下の式(9)から、後傾斜率PB0(%)を算出する。
PB0=(DB0/DT0)×100・・・・・式(9)
体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)、左前合計値DLF0、右前合計値DRF0、左後合計値DLB0、右後合計値DRB0、総合計値DT0、左合計値DL0、右合計値DR0、前合計値DF0、後合計値DB0、左傾斜率PL0、右傾斜率PR0、前傾斜率PF0、後傾斜率PB0は、RAM43に格納される。また、RAM43には、図3に示す4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBから入力される、座面520の傾斜データが格納される。
【0071】
(ステップ2(S2))
ステップ2においては、着座者Mの現在の状態の体圧データがサンプリングされる。制御部4は、まず、現在の体圧用検出部A0101〜A1616の体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)を、体圧センサ5を用いてサンプリングする。体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)は、本発明の「実際の体圧分布」の概念に含まれる。
【0072】
次に、CPU42は、左前合計値DLF1、右前合計値DRF1、左後合計値DLB1、右後合計値DRB1、総合計値DT1、左合計値DL1、右合計値DR1、前合計値DF1、後合計値DB1、左傾斜率PL1、右傾斜率PR1、前傾斜率PF1、後傾斜率PB1を算出する。なお、算出方法は、ステップ1同様(添字「0」が「1」に代わっただけ)である。これらのデータは、RAM43に格納される。
【0073】
(ステップ3(S3))
ステップ3においては、CPU42は、以下の式(10)から、左傾動率dPL(%)を算出する。なお、式(10)中、「ABS」は「絶対値」を示す。
dPL=ABS(PL0−PL1)・・・・・式(10)
【0074】
(ステップ4(S4))
ステップ4においては、CPU42は、左傾動率dPLと、しきい値SL1(=1%)と、を比較する。なお、しきい値SL1は、EEP−ROM44に格納されている。左傾動率dPLがしきい値SL1以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。制御部4は、ステップ2〜ステップ4を、0.5秒毎に繰り返している。一方、左傾動率dPLがしきい値SL1超過の場合は、ステップ5に進む。
【0075】
(ステップ5(S5))
ステップ5においては、CPU42は、左傾動率dPLと、しきい値SL2(=4%)と、を比較する。なお、しきい値SL2は、EEP−ROM44に格納されている。左傾動率dPLがしきい値SL2以下の場合は、ステップ8に進む。
【0076】
(ステップ8(S8))
ステップ8においては、図4に示すように、制御部4の駆動回路45により、給排ユニット30を駆動する。具体的には、左側のエアセル20LF、20LBの内圧を高くする。つまり、給排切替バルブ301によりメインホース305とエアセル20LFとを連結し、ポンプ300によりエアセル20LFに空気を供給する。エアセル20LBにも同様に空気を供給する。
【0077】
あるいは、右側のエアセル20RF、20RBの内圧を低くする。つまり、ポンプ300を停止し、給排切替バルブ301によりメインホース305と排気ホース306とを連結する。そして、エアセル20RFの空気を排気する。エアセル20RBも同様に空気を排気する。
【0078】
給排ユニット30駆動中において、制御部4は、圧力計302を介して、エアセル20LF、20LB、20RF、20RBの内圧をチェックしている。また、制御部4は、図3に示す4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBを介して、座面520の傾斜をチェックしている。また、制御部4は、体圧センサ5を介して、体圧データをチェックしている。CPU42は、当該体圧データと、初期状態の体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)と、を比較している。双方の体圧データが略一致した時点で、制御部4は、エアセル20LF、20LB、20RF、20Rの内圧の調整を終了する。その後、ステップ2に戻る。このようにして、着座者Mの体圧分布を、初期の基準体圧分布に近づける。
【0079】
(ステップ6(S6))
ステップ5において、左傾動率dPLがしきい値SL2超過の場合は、ステップ6に進む。ステップ6においては、左傾動率dPLがしきい値SL2を超過している状態の経過時間Tがカウントされる。経過時間Tがしきい値T1(=8秒)以下の場合は、ステップ8に進む。つまり、着座者Mの体圧分布を、初期の基準体圧分布に近づける。一方、経過時間Tがしきい値T1(=8秒)超過の場合、もはや着座者Mの姿勢を補正している猶予はなくなる。このため、ステップ7に進む。
【0080】
(ステップ7(S7))
ステップ7においては、制御部4が警報装置(図略)を駆動する。警報により、介護者は、着座者Mの異常に気付くことができる。
【0081】
[立ち上がり兆候検出方法]
次に、本実施形態の車椅子における、着座者の立ち上がり兆候検出方法について説明する。図8に、立ち上がり兆候検出方法のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。また、ステップ1(S1)、ステップ2(S2)、ステップ7(S7)は、姿勢補正方法と同様である。
【0082】
(ステップ30(S30))
ステップ30においては、CPU42は、以下の式(11)から、立ち上がり兆候度PS(%)を算出する。
PS={(DT0−DT1)/DT0}×100・・・・・式(11)
【0083】
(ステップ40(S40))
ステップ40においては、CPU42は、立ち上がり兆候度PSと、しきい値SL3(=40%)と、を比較する。なお、しきい値SL3は、EEP−ROM44に格納されている。立ち上がり兆候度PSがしきい値SL3以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。一方、立ち上がり兆候度PSがしきい値SL3超過の場合、着座者Mが、車椅子9から立ち上がろうとしているおそれがある。このため、ステップ7に進む。
【0084】
[動き度合検出方法]
次に、本実施形態の車椅子における、着座者の動き度合検出方法について説明する。図9に、動き度合検出方法のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。また、ステップ1(S1)、ステップ2(S2)、ステップ7(S7)は、姿勢補正方法と同様である。
【0085】
(ステップ50(S50))
ステップ50においては、CPU42は、まず、体圧用検出部A0101〜A1616毎に、しきい値T2(=3秒)前の体圧データDA2(0101)〜DA2(1616)と、現在の体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)と、の差分を算出する。
【0086】
一例として、A0101の場合は、以下の式(12)から、差分ΔA0101を算出する。なお、式(12)中、「ABS」は「絶対値」を示す。
ΔA0101=ABS{DA2(0101)−DA1(0101)}・・・・・式(12)
CPU42は、次に、ΔA0101〜ΔA1616を合計して、差分合計値dDsを算出する。
【0087】
(ステップ60(S60))
ステップ60においては、CPU42は、以下の式(13)から、動き度合PMを算出する。
PM=(dDs/DT1)×100・・・・・式(13)
【0088】
(ステップ70(S70))
ステップ70においては、CPU42は、動き度合PMと、しきい値SL4(=15%)と、を比較する。なお、しきい値SL4は、EEP−ROM44に格納されている。動き度合PMがしきい値SL4以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。一方、動き度合PMがしきい値SL4超過の場合、車椅子9上での着座者Mの動きが激しいおそれがある。このため、ステップ7に進む。
【0089】
[作用効果]
次に、本実施形態の車椅子の作用効果について簡単に説明する。本実施形態の車椅子9のクッション1の制御部4は、体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)が体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)に近づくように、内圧調整部3を制御する。内圧調整部3は、制御部4の指示に応じたエアセル20LF、20RF、20LB、20RBの内圧を変化させ、着座者Mの体圧分布を補正する。つまり、着座者Mの姿勢を補正する。本実施形態のクッション1によると、着座者Mの実際の体圧分布を、基準体圧分布に近づけることができる。つまり、着座者Mの姿勢を補正することができる。
【0090】
また、本実施形態のクッション1によると、着座者Mの姿勢の変化を、着座者Mの体圧分布から測定することができる。このため、介護者の技量によらず、着座者Mの姿勢の変化を把握することができる。また、制御部4を調整することにより、簡単に、測定の頻度を多くすることができる。このため、確実に、着座者Mの姿勢の変化を把握することができる。
【0091】
また、本実施形態のクッション1によると、着座者Mの姿勢つまり体圧分布を、制御部4のEEP−ROM44に格納することができる。このため、着座者Mの姿勢を定量化したデータを、保存することができる。したがって、エアセル20LF、20RF、20LB、20RBの内圧の調整作業や着座者Mの着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合であっても、指導や訓練を簡単に行うことができる。すなわち、介護スキルの伝授が簡単である。また、着座者Mの姿勢を定量化したデータは、着座者Mの症状の把握や研究などにも有効利用することができる。
【0092】
また、本実施形態のクッション1は、傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBを備えている。このため、座面520の傾斜を電気量として検出することができる。着座者Mの姿勢を補正する際、CPU42は、傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBの電気量を参照する。このため、制御部4は、より確実に、体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)が体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)に近づくように、内圧調整部3を制御することができる。
【0093】
また、体圧センサ5は、静電容量型センサである。このため、体圧用検出部A0101〜A1616の静電容量の変化を基に、体圧分布を測定することができる。また、体圧用上側電極01X〜16Xおよび体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。このため、体圧用上側電極01X〜16Xが上側基板52と、体圧用下側電極01Y〜16Yが下側基板53と、共に伸縮することができる。したがって、上側基板52、下側基板53の伸縮を、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用下側電極01Y〜16Yが規制するおそれは小さい。また、体圧センサ5全体の伸縮性がより大きくなる。このため、体圧センサ5が、着座者Mの体に沿って変形しやすい。また、体圧センサ5が、着座者Mの体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0094】
また、本実施形態のクッション1によると、着座者Mの姿勢の補正だけでなく、着座者Mの立ち上がり兆候や、着座者Mの動き度合を検出することができる。このため、介護者の負担を軽減することができる。
【0095】
また、本実施形態のクッション1によると、既存の車椅子9にクッション1をアドオンするだけで、車椅子9に、姿勢補正機能、立ち上がり兆候検出機能、動き度合検出機能を追加することができる。すなわち、車椅子9のグレードによらず、介護者にとって重要な上記機能を追加することができる。このため、汎用性が高い。
【0096】
<第二実施形態>
本実施形態の車椅子と第一実施形態の車椅子との相違点は、クッションの構成だけである。ここでは、相違点についてのみ説明する。図10に、本実施形態のクッションの分解斜視図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0097】
[クッションの構成]
まず、本実施形態のクッションの構成について説明する。図10に示すように、本実施形態のクッション1は、セルユニット2と、内圧調整部と、制御部と、体圧センサ5と、傾斜センサ6と、上側挟持板72と、下側挟持板71と、押圧部材73LF、73RF、73Bと、クッション本体74と、を備えている。このうち、内圧調整部、制御部、体圧センサ5、下側挟持板71の構成は、第一実施形態と同様である。
【0098】
(セルユニット2、上側挟持板72)
セルユニット2は、3個のエアセル21LF、21RF、21Bを備えている。エアセル21LF、21RF、21Bは、本発明の「セル」の概念に含まれる。エアセル21LF、21RF、21Bは、各々、ウレタンフィルム製であって、上下方向を軸方向とする短軸円筒状を呈している。エアセル21LF、21RF、21Bは、柔軟である。エアセル21LF、21RF、21Bは、上側基板62の上面に固定されている。上側挟持板72は、硬質の樹脂製であって長方形板状を呈している。上側挟持板72は、セルユニット2の上側に配置されている。
【0099】
(傾斜センサ6)
傾斜センサ6は、体圧センサ5同様の静電容量型センサである。傾斜センサ6は、セルユニット2と下側挟持板71との間に介装されている。図11に、本実施形態のクッションの傾斜センサの分解斜視図を示す。なお、上側基板62を透過して示す。図11に示すように、傾斜センサ6は、傾斜用センサ薄膜61と、3つの傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bと、3つの傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bと、傾斜用検出部と、3つの傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bと、傾斜用下側配線67と、上側基板62と、下側基板63と、を備えている。傾斜センサ6の切断時伸びは、300%である。
【0100】
傾斜用センサ薄膜61は、ウレタンゴム製であって、長方形のシート状を呈している。ウレタンゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。
【0101】
上側基板62は、傾斜用センサ薄膜61の上側に配置されている。上側基板62は、アクリルゴムを含んで形成されている。上側基板62は、長方形板状を呈している。3つの傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bは、上側基板62の下面に配置されている。傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bは、各々、円形を呈している。3つの傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bは、左前方、右前方、後方に頂点のある正三角形状に配置されている。
【0102】
傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bは、上側基板62の下面に配置されている。傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bは、各々、線状を呈している。傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bは、傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bと、制御部と、を並列的に接続している。
【0103】
下側基板63は、傾斜用センサ薄膜61の下側に配置されている。下側基板63は、アクリルゴムを含んで形成されている。下側基板63は、長方形板状を呈している。3つの傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、下側基板63の上面に配置されている。傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、各々、円形を呈している。3つの傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、左前方、右前方、後方に頂点のある正三角形状に配置されている。
【0104】
傾斜用下側配線67は、下側基板63の上面に配置されている。傾斜用下側配線67は、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。傾斜用下側配線67は、線状を呈している。傾斜用下側配線67は、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bと、制御部と、を直列的に接続している。
【0105】
傾斜用検出部は、傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bと、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bと、が上側または下側から見て、重複する部分に配置されている。傾斜用検出部は、合計3個配置されている。
【0106】
(クッション本体74)
クッション本体74は、ウレタン発泡体製であって、長方形板状を呈している。クッション本体74の上面は、座面740である。クッション本体74は、体圧センサ5の上側に配置されている。
【0107】
(押圧部材73LF、73RF、73B)
押圧部材73LF、73RF、73Bは、各々、ポリウレタン製であって、上下方向を軸方向とする短軸円柱状を呈している。押圧部材73LFはエアセル21LFの径方向内側に、押圧部材73RFはエアセル21RFの径方向内側に、押圧部材73Bはエアセル21Bの径方向内側に、それぞれ収容されている。押圧部材73LF、73RF、73Bの軸長と、エアセル21LF、21RF、21Bの軸長と、は略一致している。図11にハッチングで示すように、押圧部材73LF、73RF、73Bは、上側基板62に圧接している。着座者の体重移動、座面740の傾斜は、押圧部材73LF、73RF、73Bを介して、傾斜センサ6に伝達される。
【0108】
[作用効果]
次に、本実施形態の車椅子の作用効果について説明する。本実施形態の車椅子は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の車椅子と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の車椅子のクッション1の傾斜センサ6は、静電容量型センサである。このため、傾斜用検出部の静電容量の変化を基に、座面の傾斜を測定することができる。
【0109】
また、傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bおよび前記傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。このため、傾斜用上側電極64LF、64RF、64B、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bが、傾斜用センサ薄膜61と共に伸縮することができる。したがって、傾斜用センサ薄膜61の伸縮を、傾斜用上側電極64LF、64RF、64B、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bが規制するおそれは小さい。また、傾斜センサ6全体の伸縮性がより大きくなる。このため、傾斜センサ6が、着座者の体に沿って変形しやすい。また、傾斜センサ6が、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0110】
また、押圧部材73LF、73RF、73Bの軸長と、エアセル21LF、21RF、21Bの軸長と、は略一致している。このため、押圧部材73LF、73RF、73Bから着座者が受ける異物感が小さい。
【0111】
また、本実施形態の車椅子のクッションには、傾動アクチュエーターが組み込まれている。傾動アクチュエーターは、傾斜センサ6と、上側挟持板72と、下側挟持板71と、押圧部材73LF、73RF、73Bと、セルユニット2と、内圧調整部3(図4を援用)と、制御部4(図4、図5を援用)と、を備えている。上側挟持板72は前記(7)の構成の「表側挟持板」の概念に、下側挟持板71は前記(7)の構成の「裏側挟持板」の概念に、それぞれ含まれる。
【0112】
下側挟持板71に対して上側挟持板72が傾斜する際、上側挟持板72の傾斜に応じた荷重は、押圧部材73LF、73RF、73Bを介して、傾斜用検出部に入力される。荷重により、傾斜用検出部の静電容量が変化する。静電容量の変化に応じて、制御部は、内圧調整部を介して、エアセル21LF、21RF、21Bの内圧を調整する。そして、上側挟持板72の傾斜を変化させる。本実施形態の傾動アクチュエーターによると、上側挟持板72の傾斜を検出することができると共に、当該傾斜を変化させることができる。
【0113】
また、本実施形態の傾動アクチュエーターによると、硬質の上側挟持板72と硬質の下側挟持板71との間に、少なくとも上側挟持板72、下側挟持板71よりも軟質の傾斜センサ6を挟み込むことにより、下側挟持板71に対する上側挟持板72の傾斜を確実に検出することができる。また、セルユニット2により、下側挟持板71に対して上側挟持板72を傾動させることができる。
【0114】
<第三実施形態>
本実施形態の車椅子と第二実施形態の車椅子との相違点は、クッションの構成だけである。ここでは、相違点についてのみ説明する。図12に、本実施形態のクッションの分解斜視図を示す。なお、図10と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0115】
図12に示すように、クッション1は、3個の傾斜センサ60LF、60RF、60Bと、3個の押圧部材73LF、73RF、73Bと、を備えている。傾斜センサ60Bは、傾斜用センサ薄膜61Bと傾斜用上側電極62Bと傾斜用下側電極63Bとを備えている。傾斜用センサ薄膜61Bは、ウレタンゴム製であって、円形のシート状を呈している。ウレタンゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。傾斜用上側電極62Bは、銅製であって、薄肉の円板状を呈している。傾斜用上側電極62Bは、傾斜用センサ薄膜61Bの上側に配置されている。傾斜用下側電極63Bは、銅製であって、薄肉の円板状を呈している。傾斜用下側電極63Bは、傾斜用センサ薄膜61Bの下側に配置されている。傾斜センサ60LF、60RFも、傾斜センサ60Bと同様の構成を有している。
【0116】
押圧部材73LFは傾斜センサ60LFの上側に、押圧部材73RFは傾斜センサ60RFの上側に、押圧部材73Bは傾斜センサ60Bの上側に、それぞれ配置されている。また、押圧部材73LFと傾斜センサ60LFとはエアセル21LFの径方向内側に、押圧部材73RFと傾斜センサ60RFとはエアセル21RFの径方向内側に、押圧部材73Bと傾斜センサ60Bとはエアセル21Bの径方向内側に、それぞれ収容されている。傾斜用検出部は、傾斜センサ60LF、60RF、60B毎に1個ずつ配置されている。傾斜用検出部は、合計3個配置されている。
【0117】
本実施形態の車椅子は、構成が共通する部分に関しては、第二実施形態の車椅子と同様の作用効果を有する。また、本実施形態のクッションによると、押圧部材73LF、73RF、73Bと、傾斜センサ60LF、60RF、60Bと、が1対1に対応している。このため、例えば、押圧部材73LFにより傾斜センサ60LFが押圧されても、当該押圧力が傾斜センサ60RF、60Bに伝達されるおそれがない。すなわち、押圧力が水平方向に伝達されない。したがって、より精度よく、座面740の傾斜を検出することができる。
【0118】
また、本実施形態の車椅子のクッションには、第二実施形態の車椅子のクッションと同様に、傾動アクチュエーターが組み込まれている。傾動アクチュエーターは、傾斜センサ60LF、60RF、60Bと、上側挟持板72と、下側挟持板71と、押圧部材73LF、73RF、73Bと、セルユニット2と、内圧調整部3(図4を援用)と、制御部4(図4、図5を援用)と、を備えている。上側挟持板72は本発明の「表側挟持板」の概念に、下側挟持板71は本発明の「裏側挟持板」の概念に、それぞれ含まれる。
【0119】
下側挟持板71に対して上側挟持板72が傾斜する際、上側挟持板72の傾斜に応じた荷重は、押圧部材73LF、73RF、73Bを介して、傾斜用検出部に入力される。荷重により、傾斜用検出部の静電容量が変化する。静電容量の変化に応じて、制御部は、内圧調整部を介して、エアセル21LF、21RF、21Bの内圧を調整する。そして、上側挟持板72の傾斜を変化させる。本実施形態の傾動アクチュエーターによると、上側挟持板72の傾斜を検出することができると共に、当該傾斜を変化させることができる。
【0120】
また、本実施形態の傾動アクチュエーターによると、硬質の上側挟持板72と硬質の下側挟持板71との間に、少なくとも上側挟持板72、下側挟持板71よりも軟質の傾斜センサ60LF、60RF、60Bを挟み込むことにより、下側挟持板71に対する上側挟持板72の傾斜を確実に検出することができる。また、セルユニット2により、下側挟持板71に対して上側挟持板72を傾動させることができる。
【0121】
<第四実施形態>
本実施形態の車椅子と第一実施形態の車椅子との相違点は、クッションの体圧センサの構成が異なる点である。ここでは相違点についてのみ説明する。図13に、本実施形態のクッションの体圧センサの上面図を示す。図13に示すように、体圧センサ7は、体圧用基板76と、体圧用センサ薄膜77と、体圧用コネクタ78と、体圧用電極01a〜16a、01b〜16b、01c〜16c、01d〜16dと、体圧用配線79と、を備えている。
【0122】
体圧用基板76は、エラストマー製であって、長方形板状を呈している。体圧用基板76は、弾性変形可能である。体圧用センサ薄膜77は、体圧用基板76の上面に配置されている。体圧用センサ薄膜77は、導電性フィラーが配合されたエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)製であって、長方形膜状を呈している。体圧用センサ薄膜77における導電性フィラーの含有割合は、体圧用センサ薄膜77の体積を100vol%とした場合の約45vol%である。無荷重状態において、体圧用センサ薄膜77は、高い導電性を有する。一方、荷重が加わり体圧用センサ薄膜77が変形すると、導電性フィラー同士の接触状態が変化する。これにより、三次元的な導電パスが崩壊し、体圧用センサ薄膜77の電気抵抗は増加する。つまり、体圧用センサ薄膜77の電気抵抗は、弾性変形量が増加するのに従って増加する。体圧用コネクタ78は、正方形板状を呈している。体圧用コネクタ78は、体圧用基板76の上面の右後隅に配置されている。
【0123】
体圧用電極01a〜16aは、体圧用センサ薄膜77の左辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01b〜16bは、体圧用センサ薄膜77の右辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01a〜16aと体圧用電極01b〜16bとは、図13に一点鎖線で示すように、各々、左右方向に対向している。
【0124】
体圧用電極01c〜16cは、体圧用センサ薄膜77の後辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01d〜16dは、体圧用センサ薄膜77の前辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01c〜16cと体圧用電極01d〜16dとは、図13に一点鎖線で示すように、各々、前後方向に対向している。これら一点鎖線の交点(合計256=16×16)が、体圧用検出部である。体圧用電極01a〜16a、01b〜16b、01c〜16c、01d〜16dと、体圧用コネクタ78とは、各々、体圧用配線79により接続されている。
【0125】
制御部8は、電源回路81と、CPU82と、RAM83と、EEP−ROM84と、駆動回路85と、を備えている。CPU82は、本発明の「演算部」の概念に含まれる。RAM83、EEP−ROM84は、本発明の「記憶部」の概念に含まれる。制御部8は、体圧用コネクタ78と電気的に接続されている。EEP−ROM84には、予め、体圧用検出部における電気抵抗と体圧(荷重)との対応を示すマップが、格納されている。電源回路81は体圧用検出部に直流電圧を印加する。直流電圧は、合計256点の体圧用検出部に、走査的に順番に印加される。各体圧用検出部の電気抵抗は、RAM83に一時的に格納される。CPU82は、RAM83に格納された電気抵抗から、体圧用センサ薄膜77の荷重分布を算出する。駆動回路85は、前出図4を援用して示すように、内圧調整部3の給排ユニット30の、ポンプ300と給排切替バルブ301とに接続されている。また、制御部8には、給排ユニット30の圧力計302から、圧力が電気信号として入力される。
【0126】
本実施形態の車椅子は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の車椅子と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の車椅子によると、体圧センサ7の電気抵抗の変化から体圧分布を算出することができる。
【0127】
<その他>
以上、本発明の車椅子の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0128】
第一実施形態においては、傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBとして、変位センサを用いた。変位センサの種類は特に限定しない。渦電流式、光学式(レーザ式)、超音波式、接触式などの変位センサを用いてもよい。また、変位センサ以外のセンサを傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBとして用いてもよい。
【0129】
また、体圧センサ5、7、傾斜センサ6、60LF、60RF、60Bの構成、形状、大きさなどは、特に限定しない。また、体圧センサ5、7、傾斜センサ6、60LF、60RF、60Bから出力される電気量についても、電圧、電気抵抗、静電容量などのいずれであってもよい。体圧用検出部、傾斜用検出部に印加される電圧は、交流であっても直流であってもよい。また、電圧の波形は、正弦波状であっても、矩形波状であってもよい。
【0130】
また、体圧センサ5、7、傾斜センサ6、60LF、60RF、60Bにおいて、体圧用センサ薄膜51、77、傾斜用センサ薄膜61、61Bのポリマーの種類は、特に限定しない。例えば、第一〜第三実施形態の静電容量型の体圧センサ5、傾斜センサ6、60LF、60RF、60Bでは、伸縮の繰り返しに対する耐久性、および静電容量を大きくするという観点から、伸び、強度、および比誘電率が大きいエラストマーを用いることが望ましい。例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、およびこれらの発泡体や、ウレタンフォームなどが好適である。
【0131】
また、体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bは、エラストマー以外の他のポリマー製、例えば伸縮性を有する布製であってもよい。この場合、体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bに荷重が加わると、布を構成する繊維間の隙間が潰されて、布の厚さは小さくなる。つまり、体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bの厚さが小さくなる。これにより、電極間距離は小さくなる。その結果、静電容量が大きくなり、荷重が検出される。
【0132】
布は、伸縮性を有するものであれば、織布、編み布、不織布のいずれであってもよい。布を使用することにより、伸縮柔軟性に優れた体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bを、比較的低コストに実現することができる。また、布を構成する繊維間には隙間がある。このため、小さな荷重で押圧された場合でも、隙間が潰れることにより、布の厚さは変化しやすい。したがって、体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bは、高い検出感度を有し、応答性に優れる。体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bは、単層であっても、複層であってもよい。複層の場合、異なる材質の誘電層を用いてもよい。
【0133】
また、体圧センサ5においては、上側基板52の下面に、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用上側配線01x〜16xを下側から覆う、上側電極保護層を配置してもよい。同様に、下側基板53の上面に、体圧用下側電極01Y〜16Y、体圧用下側配線01y〜16yを上側から覆う、下側電極保護層を配置してもよい。すなわち、体圧用センサ薄膜51に、体圧用上側電極01X〜16Xと、体圧用下側電極01Y〜16Yと、が「間接的に」接続されていてもよい。こうすると、体圧用センサ薄膜51に電極、配線を配置しにくい場合(例えば体圧用センサ薄膜51が発泡体製の場合)であっても、上側基板52、下側基板53に電極、配線を配置することができる。
【0134】
同様に、傾斜センサ6においては、上側基板62の下面に、傾斜用上側電極64LF、64RF、64B、傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bを下側から覆う、上側電極保護層を配置してもよい。同様に、下側基板63の上面に、傾斜用下側電極65LF、65RF、65B、傾斜用下側配線67を上側から覆う、下側電極保護層を配置してもよい。すなわち、傾斜用センサ薄膜61に、傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bと、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bと、が「間接的に」接続されていてもよい。こうすると、傾斜用センサ薄膜61に電極、配線を配置しにくい場合(例えば傾斜用センサ薄膜61が発泡体製の場合)であっても、上側基板62、下側基板63に電極、配線を配置することができる。
【0135】
また、第四実施形態の抵抗変化型の体圧センサ7では、導電性フィラーとの相溶性などを考慮して、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴムなどが好適である。なお、第四実施形態では、体圧用センサ薄膜77の電気抵抗は、弾性変形量(荷重)が増加するのに従って増加した。しかし、荷重が増加するのに従って、電気抵抗が低下するような体圧用センサ薄膜77を使用してもよい。体圧用センサ薄膜77の電気抵抗の挙動については、母材のエラストマーの種類、導電性フィラーの種類および配合量などにより、調整することができる。
【0136】
また、上側基板52、下側基板53の材質は、特に限定しない。絶縁性を有する樹脂、エラストマーを用いればよい。例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン共重合体ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンゴム、ブチルゴムを用いてもよい。なお、電極、配線は、上側基板52、下側基板53に印刷してもよい。
【0137】
また、上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RB、72の材質は特に限定しない。例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンなどの樹脂、アルミニウムなどの金属、木製であってもよい。硬質である方が、下側挟持板71に対する上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RB、72の傾斜、つまり座面520、740の傾斜を、傾斜センサ6、6LF、6RF、6LB、6RB、60LF、60RF、60Bが検出しやすい。
【0138】
また、第一〜第三実施形態の体圧センサ5においては、電極および配線を、エラストマーを含んで形成した。この場合、電極および配線が伸縮するため、上側基板52、下側基板53と一体となって変形することができる、という利点がある。電極および配線は、例えば印刷などを用いて、上側基板52、62、下側基板53、63、あるいは体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bに、直接形成してもよい。
【0139】
電極および配線に用いられるポリマーの材質は特に限定しない。ポリマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどのエラストマーであってもよい。また、ポリマーは、ポリエステル、エポキシなどの樹脂であってもよい。こうすると、電極の伸縮性が高くなる。このため、電極と体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61とが一体的に屈曲、伸縮しやすい。
【0140】
電極および配線に用いられる導電性フィラーの材質は特に限定しない。導電性フィラーは、炭素材料および金属から選ばれる一種以上からなるものであってもよい。金属としては、導電性の高い銀、銅等が好適である。よって、導電性フィラーとして、銀、銅等の微粒子、あるいは表面に銀等のめっきを施した微粒子を使用することができる。また、炭素材料は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、炭素材料からなる導電性フィラーを用いると、体圧センサ5、7の製造コストを低減することができる。炭素材料としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの誘導体、グラファイト、導電性炭素繊維などが挙げられる。特に、導電性カーボンブラック、グラファイト、導電性炭素繊維は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、これらの材料を用いると、体圧センサ5、7延いてはクッション1の製造コストを削減することができる。また、電極、配線を、金属材料や、有機繊維の表面に金属めっきを施した材料などで形成してもよい。
【0141】
また、いずれの実施形態においても、電極の数、配置場所については、特に限定しない。例えば、第一〜第三実施形態の体圧センサ5において、帯状の体圧用上側電極01X〜16X、体圧用下側電極01Y〜16Yの数、幅、長さについては、適宜決定すればよい。例えば、幅が大きいものと小さいものとを混合して、配置してもよい。また、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用下側電極01Y〜16Yの配置形態を変えることにより、体圧用検出部A0101〜A1616の数、配置を調整すればよい。上記実施形態では、一層の体圧センサ5、7により、体圧分布を検出した。しかし、二層以上の体圧センサ5、7を使用して、体圧分布を検出してもよい。
【0142】
また、上記実施形態では、エアセル20LF、20RF、20LB、20RB、21LF、21RF、21Bの内圧調整に空気を用いたが、窒素など他の気体、水、オイル、ジェルなどの液体を用いてもよい。また、エアセル20LF、20RF、20LB、20RB、21LF、21RF、21Bの配置数、形状、寸法などは特に限定しない。また、ポンプ300の代わりに、コンプレッサーやブロワなど、別の送風装置を配置してもよい。
【0143】
また、各種しきい値SL1〜SL4、T1、T2を設定可能な数値範囲は、特に限定しない。例えば、SL1を0%以上2%以下としてもよい。SL2を3%以上5%以下としてもよい。SL3を30%以上50%以下としてもよい。SL4を10%以上20%以下としてもよい。T1を5秒以上10秒以下としてもよい。T2を1秒以上5秒以下としてもよい。
【0144】
また、本発明のクッション1は車椅子9のみならず、ソファーなど他の椅子、自動車、電車、航空機、船舶などの乗物のシートに用いることができる。また、傾動アクチュエーターは、クッション1のみならず、テレビゲームのコントローラーなどに用いることができる。また、入力に対して何らかの出力が返ってくる入出力インターフェイスとして用いることができる。
【符号の説明】
【0145】
1:クッション、1LB:左後部分、1LF:左前部分、1RB:右後部分、1RF:右前部分、2:セルユニット、3:内圧調整部、4:制御部、5:体圧センサ、6:傾斜センサ、6LB:傾斜センサ、6LF:傾斜センサ、6RB:傾斜センサ、6RF:傾斜センサ、7:体圧センサ、8:制御部、9:車椅子。
01X〜16X:体圧用上側電極、01Y〜16Y:体圧用下側電極、01a〜16a:体圧用電極、01b〜16b:体圧用電極、01c〜16c:体圧用電極、01d〜16d:体圧用電極、01x〜16x:体圧用上側配線、01y〜16y:体圧用下側配線、20LB:エアセル(セル)、20LF:エアセル(セル)、20RB:エアセル(セル)、20RF:エアセル(セル)、21B:エアセル(セル)、21LF:エアセル(セル)、21RF:エアセル(セル)、30:給排ユニット、41:電源回路、42:CPU(演算部)、43:RAM(記憶部)、44:EEP−ROM(記憶部)、45:駆動回路、51:体圧用センサ薄膜、52:上側基板、53:下側基板、54:上側配線用コネクタ、55:下側配線用コネクタ、61:傾斜用センサ薄膜、62:上側基板、63:下側基板、67:傾斜用下側配線、71:下側挟持板、72:上側挟持板、74:クッション本体、76:体圧用基板、77:体圧用センサ薄膜、78:体圧用コネクタ、79:体圧用配線、81:電源回路、82:CPU(演算部)、83:RAM(記憶部)、84:EEP−ROM(記憶部)、85:駆動回路、90:フレーム、93:シート、94:バックサポート。
60LF:傾斜センサ、60RF:傾斜センサ、60B:傾斜センサ、61B:傾斜用センサ薄膜、62B:傾斜用上側電極、63B:傾斜用下側電極、64LF:傾斜用上側電極、64RF:傾斜用上側電極、64B:傾斜用上側電極、65LF:傾斜用下側電極、65RF:傾斜用下側電極、65B:傾斜用下側電極、66LF:傾斜用上側配線、66RF:傾斜用上側配線、66B:傾斜用上側配線、70LF:上側挟持板、70RF:上側挟持板、70LB:上側挟持板、70RB:上側挟持板、73LF:押圧部材、73RF:押圧部材、73B:押圧部材、91L:主輪、91R:主輪、92L:キャスター、92R:キャスター、95L:フットサポート、95R:フットサポート、96L:アームサポート、96R:アームサポート、97L:ハンドル、97R:ハンドル。
300:ポンプ、301:給排切替バルブ、302:圧力計、305:メインホース、306:排気ホース、520:座面、740:座面、930:シート本体。
A0101〜A1616:体圧用検出部、DA0(0101)〜DA0(1616):体圧データ(基準体圧分布)、DA1(0101)〜DA1(1616):体圧データ(実際の体圧分布)、DB0:後合計値、DB1:後合計値、DF0:前合計値、DF1:前合計値、DL0:左合計値、DL1:左合計値、DR0:右合計値、DR1:右合計値、DT0:総合計値、DT1:総合計値、DLB0:左後合計値、DLB1:左後合計値、DLF0:左前合計値、DLF1:左前合計値、DRB0:右後合計値、DRB1:右後合計値、DRF0:右前合計値、DRF1:右前合計値、M:着座者、PB0:後傾斜率、PB1:後傾斜率、PF0:前傾斜率、PF1:前傾斜率、PL0:左傾斜率、PL1:左傾斜率、PR0:右傾斜率、PR1:右傾斜率、PM:動き度合、PS:立ち上がり兆候度、SL1〜SL4:しきい値、T:経過時間、T1:しきい値、dDs:差分合計値、dPL:左傾動率。
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座用のクッション、当該クッションがシートに用いられる車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の身体支持装置は、複数のエアセルと、内圧センサと、体圧センサと、を備えている。内圧センサは、エアセルの内圧を測定可能である。体圧センサは、マットレスにおける横臥者の体圧分布を測定可能である。エアセルの内圧は、体圧センサの測定した体圧分布に基づいて、調整される。同文献記載の身体支持装置によると、エアセルの内圧が過剰に低くなり、「ボトムアウト」が発生するのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−505663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車椅子のシートにおいても、着座者の体圧分布を調整するために、エアセルが用いられる場合がある。エアセルは、予め空気を入れた状態で用いられる。すなわち、介護者は、シートに着座した直後の着座者の着座状態を目視しながら、エアセルの内圧を調整している。また、一旦調整された内圧は、車椅子の使用中に変更されない。このように、初期の着座状態に応じて、エアセルの内圧は固定されている。
【0005】
しかしながら、初期の着座状態に対して、着座者の姿勢が傾いた場合は、エアセルの内圧が実際の着座者の姿勢に合わなくなる。とりわけ、着座者が高齢者や麻痺患者である場合は、自分で姿勢を補正することが困難である。このため、着座者に「床ずれ」が発生するおそれがある。また、着座者がバランスを崩すことも考えられる。
【0006】
このような場合は、着座者の姿勢を、初期の着座状態に近づくように、自動的に補正すればよい。しかしながら、特許文献1には、人の姿勢に応じてエアセルの内圧を調整する技術は開示されているものの、人の姿勢に応じて人の姿勢そのものを補正する方法は開示されていない。
【0007】
本発明のクッションおよび車椅子は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、着座者の姿勢を補正可能なクッションおよび車椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記課題を解決するため、本発明のクッションは、着座者が着座する座面と、該座面の下側に配置され、流体が出入可能な複数のセルを有するセルユニットと、複数の該セルの内圧を変化させることにより、該着座者の体圧分布を調整する内圧調整部と、該座面の下側に配置され、ポリマーを含み該着座者の体圧により弾性的に変形可能な体圧用センサ薄膜と、該体圧用センサ薄膜に直接あるいは間接的に接続される複数の体圧用電極と、複数の該体圧用電極間に形成される複数の体圧用検出部と、を有し、該体圧用検出部に加わる体圧を電気量として検出可能なシート状の体圧センサと、該内圧調整部を制御し、該セルの該内圧を変化させる制御部と、を備えてなるクッションであって、前記制御部は、前記着座者の姿勢の基準となる基準体圧分布と、該着座者の実際の体圧分布と、を格納する記憶部と、実際の該体圧分布が該基準体圧分布に近づくように、前記内圧調整部を制御する演算部と、を有することを特徴とする。
【0009】
ここで、「直接あるいは間接的に」とは、体圧用電極と体圧用センサ薄膜とが接合されているかいないかによらず体圧用電極が体圧用センサ薄膜に直接接続されている場合と、体圧用電極と体圧用センサ薄膜との間に少なくとも一つの別の層(例えば電極保護層など)が介装されている場合と、を含む。
【0010】
本発明のクッションは、座面とセルユニットと内圧調整部と体圧センサと制御部とを備えている。制御部は、記憶部と演算部とを備えている。記憶部には、基準体圧分布と実際の体圧分布とが格納される。基準体圧分布は、着座者の姿勢の基準となる体圧分布である。実際の体圧分布は、体圧センサにより測定される。制御部は、実際の体圧分布が基準体圧分布に近づくように、内圧調整部を制御する。内圧調整部は、制御部の指示に応じたセルの内圧を変化させ、着座者の体圧分布を補正する。つまり、着座者の姿勢を補正する。本発明のクッションによると、着座者の実際の体圧分布を、基準体圧分布に近づけることができる。つまり、着座者の姿勢を補正することができる。
【0011】
従来、着座者の姿勢は、介護者の目視により、定期的に確認されていた。このため、介護者の技量や確認の頻度によっては、着座者の姿勢の変化が判りにくい場合があった。この点、本発明のクッションによると、着座者の姿勢の変化を、着座者の体圧分布から測定することができる。このため、介護者の技量によらず、着座者の姿勢の変化を把握することができる。また、制御部を調整することにより、簡単に、測定の頻度を多くすることができる。このため、確実に、着座者の姿勢の変化を把握することができる。
【0012】
また、従来、着座者の姿勢は、介護者の目視により、確認されていた。このため、着座者の姿勢を定量的に把握したデータが、存在しなかった。したがって、セルの内圧の調整作業や着座者の着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合も、定量化された共通のデータを基に、指導や訓練を行うことができなかった。よって、介護スキルの伝授が困難であった。
【0013】
この点、本発明のクッションによると、着座者の姿勢つまり体圧分布を、制御部の記憶部に格納することができる。このため、着座者の姿勢を定量化したデータを、保存することができる。したがって、セルの内圧の調整作業や着座者の着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合であっても、指導や訓練を簡単に行うことができる。すなわち、介護スキルの伝授が簡単である。また、着座者の姿勢を定量化したデータは、着座者の症状の把握や研究などにも有効利用することができる。
【0014】
とりわけ、着座者が幼児や高齢者や麻痺患者である場合は、自分で姿勢を補正することが困難である。また、着座者が声を発することができない場合や着座者の声が小さい場合は、姿勢を崩しても介護者に知らせることが困難である。このような場合に、本発明のクッションは特に好適である。
【0015】
また、体圧用センサ薄膜は、着座者の体圧により弾性的に変形可能である。このため、体圧センサは、柔軟であり、伸縮性を有している。したがって、体圧センサが、着座者の体に沿って変形しやすい。よって、体圧センサが、着座者の近く、例えば座面の真下に配置されている場合であっても、着座者は、硬さ、ごわつきなどの違和感を感じにくい。また、体圧センサは、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。このため、体圧分布の検出精度が高い。
【0016】
また、自分で姿勢を補正することが困難な着座者をクッションに座らせる際は、着座状態の設定が重要である。着座状態は、着座者の行動の目的に応じて、設定する必要がある。例えば、着座者がリラックスしたい場合は、着座者を後傾させた方がよい。また、着座者が食事を取りたい場合は、着座者を前傾させた方がよい。この点、本発明のクッションによると、セルの内圧を調整することにより、座面を前後左右自在に傾斜させることができる。このため、所望の着座状態を設定することができる。
【0017】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、さらに、前記座面の下側に配置され、該座面の傾斜を電気量として検出可能な傾斜センサを備え、前記演算部は、該傾斜センサの該電気量を参照しながら前記内圧調整部を制御する構成とする方がよい。
【0018】
特許文献1の身体支持装置のように、クッションに内圧センサを配置すると、セルの内圧を測定することができる。しかしながら、内圧は、着座者の姿勢、体重などに応じて、設定される。例えば、着座者の体重が重い場合、内圧は大きく設定される。反対に、着座者の体重が軽い場合、内圧は小さく設定される。このように、セルの内圧は、種々の状況に応じて設定されるものであり、クッションの座面の傾斜だけを反映するものではない。このため、クッションに内圧センサを配置しても、座面の傾斜を測定することは困難である。
【0019】
この点、本構成のクッションは、傾斜センサを備えている。このため、座面の傾斜を電気量として検出することができる。着座者の姿勢を補正する際、演算部は、傾斜センサの電気量を参照する。このため、制御部は、より確実に、実際の体圧分布が基準体圧分布に近づくように、内圧調整部を制御することができる。
【0020】
また、着座者の着座状態を設定する場合は、傾斜センサにより座面の状態を確認することができる。このため、より簡単に、また確実に、所望の着座状態を設定することができる。
【0021】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記体圧センサにおいて、複数の前記体圧用電極は、前記体圧用センサ薄膜の上側に配置される帯状の体圧用上側電極と、該体圧用センサ薄膜の下側に配置される帯状の体圧用下側電極と、からなり、複数の前記体圧用検出部は、該体圧用上側電極と該体圧用下側電極とが、上側または下側から見て、交差することにより形成され、前記体圧により該体圧用検出部の静電容量が変化する構成とする方がよい。
【0022】
つまり、本構成は、本発明のクッションの体圧センサとして、静電容量型センサを用いるものである。本構成によると、体圧用検出部の静電容量の変化を基に、体圧分布を測定することができる。
【0023】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記体圧用上側電極および前記体圧用下側電極は、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を含んで形成される構成とする方がよい。
【0024】
本構成によると、体圧用上側電極、体圧用下側電極が、体圧用センサ薄膜と共に伸縮することができる。したがって、体圧用センサ薄膜の伸縮を、体圧用上側電極、体圧用下側電極が規制するおそれは小さい。また、体圧センサ全体の伸縮性がより大きくなる。このため、体圧センサが、着座者の体に沿って変形しやすい。また、体圧センサが、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0025】
(5)好ましくは、上記(2)ないし(4)のいずれかの構成において、前記傾斜センサは、ポリマーを含み前記座面の前記傾斜により弾性的に変形可能な傾斜用センサ薄膜と、該傾斜用センサ薄膜の上側に配置される傾斜用上側電極と、該傾斜用センサ薄膜の下側に配置される傾斜用下側電極と、該傾斜用上側電極と該傾斜用下側電極とが、上側または下側から見て、重複することにより形成される複数の傾斜用検出部と、を有し、該傾斜用検出部に加わる荷重により、該傾斜用検出部の静電容量が変化する構成とする方がよい。
【0026】
つまり、本構成は、本発明のクッションの傾斜センサとして、静電容量型センサを用いるものである。本構成によると、傾斜用検出部の静電容量の変化を基に、座面の傾斜を測定することができる。
【0027】
また、傾斜用センサ薄膜は、座面の傾斜により弾性的に変形可能である。このため、傾斜センサは、柔軟であり、伸縮性を有している。したがって、傾斜センサは、座面の傾斜に対して、追従して変形しやすい。よって、座面の傾斜の検出精度が高い。
【0028】
(5−1)好ましくは、上記(5)の構成において、前記傾斜用上側電極および前記傾斜用下側電極は、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を含んで形成される構成とする方がよい。
【0029】
本構成によると、傾斜用上側電極、傾斜用下側電極が、傾斜用センサ薄膜と共に伸縮することができる。したがって、傾斜用センサ薄膜の伸縮を、傾斜用上側電極、傾斜用下側電極が規制するおそれは小さい。また、傾斜センサ全体の伸縮性がより大きくなる。このため、傾斜センサが、着座者の体に沿って変形しやすい。また、傾斜センサが、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0030】
(6)上記課題を解決するため、本発明の車椅子は、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成のクッションを有するシートを備えることを特徴とする。本発明の車椅子のシートは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成のクッションを有している。このため、着座者の実際の体圧分布を、基準体圧分布に近づけることができる。つまり、着座者の姿勢を補正することができる。
【0031】
また、着座者の姿勢の変化を、着座者の体圧分布から測定することができる。このため、介護者の技量によらず、着座者の姿勢の変化を把握することができる。また、制御部を調整することにより、簡単に、測定の頻度を多くすることができる。このため、確実に、着座者の姿勢の変化を把握することができる。
【0032】
また、着座者の姿勢つまり体圧分布を、制御部の記憶部に格納することができる。このため、着座者の姿勢を定量化したデータを、保存することができる。したがって、セルの内圧の調整作業や着座者の着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合であっても、指導や訓練を簡単に行うことができる。すなわち、介護スキルの伝授が簡単である。また、着座者の姿勢を定量化したデータは、着座者の症状の把握や研究などにも有効利用することができる。また、本発明の車椅子によると、セルの内圧を調整することにより、座面を前後左右自在に傾斜させることができる。このため、所望の着座状態を設定することができる。
【0033】
(7)傾動アクチュエーターは、ポリマーを含む傾斜用センサ薄膜と、該傾斜用センサ薄膜の表側に配置される傾斜用表側電極と、該傾斜用センサ薄膜の裏側に配置される傾斜用裏側電極と、該傾斜用表側電極と該傾斜用裏側電極とが、表側または裏側から見て、重複することにより形成される複数の傾斜用検出部と、を有する、少なくとも一つの傾斜センサと、該傾斜センサの表側に配置される硬質の表側挟持板と、該傾斜センサの裏側に配置される硬質の裏側挟持板と、該傾斜センサの該傾斜用検出部と、該表側挟持板と、の間に介装される押圧部材と、該押圧部材が径方向内側に収容されると共に流体が出入可能なリング状のセルを有するセルユニットと、複数の該セルの内圧を変化させることにより、該表側挟持板の傾斜を調整する内圧調整部と、該内圧調整部を制御し、該セルの該内圧を変化させる制御部と、を備え、該裏側挟持板に対して該表側挟持板が傾斜する際、該表側挟持板の傾斜に応じた荷重が、該押圧部材を介して、該傾斜用検出部に入力されることにより、該傾斜用検出部の静電容量が変化し、該制御部が、該内圧調整部を介して、該静電容量の変化に応じて該セルの内圧を調整し、該傾斜を変化させることを特徴とする。
【0034】
上記傾動アクチュエーターによると、表側挟持板と裏側挟持板との間に静電容量型の傾斜センサが介装されている。傾斜センサには、押圧部材を介して、裏側挟持板に対する表側挟持板の傾斜が入力される。このため、傾斜センサにより、表側挟持板の傾斜を検出することができる。また、押圧部材は、リング状のセルの径方向内側に収容されている。当該セルの内圧を調整することにより、表側挟持板の傾斜を変化させることができる。このように、上記傾動アクチュエーターによると、表側挟持板の傾斜を検出することができると共に、当該傾斜を変化させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、着座者の姿勢を補正可能なクッションおよび車椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第一実施形態の車椅子の左側面図である。
【図2】同車椅子の上面図である。
【図3】同車椅子のクッションの分解斜視図である。
【図4】同クッションのセルユニットの上面図である。
【図5】同クッションの体圧センサの透過上面図である。
【図6】図5のVI−VI断面図である。
【図7】姿勢補正方法のフローチャートである。
【図8】立ち上がり兆候検出方法のフローチャートである。
【図9】動き度合検出方法のフローチャートである。
【図10】第二実施形態の車椅子のクッションの分解斜視図である。
【図11】同クッションの傾斜センサの分解斜視図である。
【図12】第三実施形態の車椅子のクッションの分解斜視図である。
【図13】第四実施形態の車椅子のクッションの体圧センサの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の車椅子の実施の形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明のクッションの実施の形態についての説明を含むものである。
【0038】
<第一実施形態>
[車椅子の構成]
まず、本実施形態の車椅子の構成について簡単に説明する。図1に、本実施形態の車椅子の左側面図を示す。図2に、同車椅子の上面図を示す。なお、図中、左右方向は、後側から前側を見た場合を基準に、定義されている。また、図2においては、着座者Mを透過して示す。
【0039】
図1、図2に示すように、本実施形態の車椅子9は、フレーム90と、主輪91L、91Rと、キャスター92L、92Rと、シート93と、バックサポート94と、フットサポート95L、95Rと、アームサポート96L、96Rと、ハンドル97L、97Rと、を備えている。
【0040】
主輪91L、91Rは、フレーム90の左右両側に配置されている。主輪91L、91Rは、前後方向に回転可能である。キャスター92L、92Rは、フレーム90の左右両側であって、主輪91L、91Rの前側に配置されている。キャスター92L、92Rは、前後方向に回転可能である。また、キャスター92L、92Rは、左右方向に揺動可能である。
【0041】
シート93は、長方形板状を呈している。シート93は、フレーム90に固定されている。シート93は、シート本体930と、クッション1と、を備えている。クッション1は、シート本体930の上側に配置されている。着座者Mは、クッション1の上面(座面520)に着座している。
【0042】
バックサポート94は、フレーム90に固定されている。バックサポート94は、いわゆる「背もたれ」である。着座者Mの背中は、バックサポート94により支持されている。フットサポート95L、95Rは、フレーム90の前端に固定されている。着座者Mの左足裏はフットサポート95Lにより、右足裏はフットサポート95Rにより、それぞれ支持されている。アームサポート96L、96Rは、フレーム90に固定されている。着座者Mの左前腕部はアームサポート96Lにより、右前腕部はアームサポート96Rにより、それぞれ支持されている。ハンドル97L、97Rは、フレーム90の後端に固定されている。車椅子9を移動させる際、ハンドル97L、97Rは介護者(図略)により把持される。
【0043】
[クッションの構成]
次に、本実施形態のクッションの構成について説明する。図3に、本実施形態のクッションの分解斜視図を示す。なお、上側基板52を透過して示す。図3に示すように、本実施形態のクッション1は、セルユニット2と、内圧調整部と、制御部と、体圧センサ5と、4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBと、4枚の上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RBと、下側挟持板71と、を備えている。
【0044】
(セルユニット2)
図4に、本実施形態のクッションのセルユニットの上面図を示す。図3、図4に示すように、セルユニット2は、4個のエアセル20LF、20RF、20LB、20RBを備えている。エアセル20LF、20RF、20LB、20RBは、本発明の「セル」の概念に含まれる。エアセル20LF、20RF、20LB、20RBは、各々、ウレタンフィルム製であって、角筒状を呈している。図2にハッチングで示すように、シート93つまりクッション1は、左前部分1LF、右前部分1RF、左後部分1LB、右後部分1RBに区分けされる。図3、図4に戻って、エアセル20LFは左前部分1LFに、エアセル20RFは右前部分1RFに、エアセル20LBは左後部分1LBに、エアセル20RBは右後部分1RBに、それぞれ対応している。エアセル20LF、20RF、20LB、20RBは、柔軟である。エアセル20LF、20RF、20LB、20RBと、後述する内圧調整部3と、の間では、空気の給排が行われる。空気は、本発明の「流体」の概念に含まれる。
【0045】
(傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RB)
4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBは、いわゆる変位センサである。傾斜センサ6LFはエアセル20LFの上面に、傾斜センサ6RFはエアセル20RFの上面に、傾斜センサ6LBはエアセル20LBの上面に、傾斜センサ6RBはエアセル20RBの上面に、それぞれ配置されている。
【0046】
(上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RB)
4枚の上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RBは、各々、硬質の樹脂製であって長方形板状を呈している。上側挟持板70LFは傾斜センサ6LFの上側に、上側挟持板70RFは傾斜センサ6RFの上側に、上側挟持板70LBは傾斜センサ6LBの上側に、上側挟持板70RBは傾斜センサ6RBの上側に、それぞれ配置されている。
【0047】
(下側挟持板71)
下側挟持板71は、硬質の樹脂製であって長方形板状を呈している。下側挟持板71の上面には、エアセル20LF、20RF、20LB、20RBが配置されている。下側挟持板71は、図1に示すシート本体930の上面に配置されている。
【0048】
(内圧調整部3)
図4に示すように、内圧調整部3は、合計4組の給排ユニット30を備えている。なお、図4においては、給排ユニット30を1組だけ示す。4組の給排ユニット30は、4個のエアセル20LF、20RF、20LB、20RBに接続されている。4組の給排ユニット30の構成は同様である。以下、4組の給排ユニット30を代表して、エアセル20RF用の給排ユニット30について説明する。
【0049】
給排ユニット30は、ポンプ300と、給排切替バルブ301と、圧力計302と、メインホース305と、排気ホース306と、を備えている。メインホース305は、ポンプ300とエアセル20RFとを接続している。メインホース305の途中には、給排切替バルブ301と、圧力計302と、が配置されている。給排切替バルブ301はポンプ300側に、圧力計302はエアセル20RF側に、それぞれ配置されている。排気ホース306は、給排切替バルブ301に接続されている。給排切替バルブ301を切り替えることにより、メインホース305と排気ホース306とを、連結、遮断することができる。
【0050】
(体圧センサ5)
図3に示すように、体圧センサ5は、4枚の上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RBの上側に配置されている。図5に、本実施形態のクッションの体圧センサの透過上面図を示す。図6に、図5のVI−VI断面図を示す。なお、図5においては、上側基板52を省略して示す。また、体圧用下側電極01Y〜16Y、体圧用下側配線01y〜16y、下側配線用コネクタ55を細線で示す。また、体圧用検出部A0101〜A1616にハッチングを施して示す。また、図6においては、体圧用上側配線01x〜16x、体圧用下側配線01y〜16y、上側配線用コネクタ54、下側配線用コネクタ55を省略して示す。
【0051】
図5、図6に示すように、体圧センサ5は、体圧用センサ薄膜51と、体圧用上側電極01X〜16Xと、体圧用下側電極01Y〜16Yと、体圧用検出部A0101〜A1616と、体圧用上側配線01x〜16xと、体圧用下側配線01y〜16yと、上側基板52と、下側基板53と、上側配線用コネクタ54と、下側配線用コネクタ55と、を備えている。なお、体圧用検出部の符号「A○○△△」中、上二桁の「○○」は、体圧用上側電極01X〜16Xに対応している。下二桁の「△△」は、体圧用下側電極01Y〜16Yに対応している。体圧センサ5の切断時伸びは、300%である。
【0052】
体圧用センサ薄膜51は、ウレタンゴム製であって、長方形のシート状を呈している。ウレタンゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。
【0053】
上側基板52は、体圧用センサ薄膜51の上側に配置されている。上側基板52は、アクリルゴムを含んで形成されている。上側基板52は、長方形板状を呈している。上側基板52の上面は、座面520である。体圧用上側電極01X〜16Xは、上側基板52の下面に、合計16本配置されている。体圧用上側電極01X〜16Xは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。アクリルゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。導電性カーボンブラックは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。体圧用上側電極01X〜16Xは、各々、帯状を呈している。体圧用上側電極01X〜16Xは、各々、左右方向に延在している。体圧用上側電極01X〜16Xは、前後方向に、所定間隔毎に離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0054】
体圧用上側配線01x〜16xは、上側基板52の下面に、合計16本配置されている。体圧用上側配線01x〜16xは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。体圧用上側配線01x〜16xは、各々、線状を呈している。上側配線用コネクタ54は、体圧用センサ薄膜51の右後隅に配置されている。体圧用上側配線01x〜16xは、各々、体圧用上側電極01X〜16Xの右端と、上側配線用コネクタ54と、を接続している。
【0055】
下側基板53は、体圧用センサ薄膜51の下側に配置されている。下側基板53は、アクリルゴムを含んで形成されている。下側基板53は、長方形板状を呈している。体圧用下側電極01Y〜16Yは、下側基板53の上面に、合計16本配置されている。体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。アクリルゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。導電性カーボンブラックは、本発明の「導電性フィラー」の概念に含まれる。体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、帯状を呈している。体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、前後方向に延在している。体圧用下側電極01Y〜16Yは、左右方向に、所定間隔毎に離間して、互いに略平行になるように、配置されている。
【0056】
体圧用下側配線01y〜16yは、下側基板53の上面に、合計16本配置されている。体圧用下側配線01y〜16yは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。体圧用下側配線01y〜16yは、各々、線状を呈している。下側配線用コネクタ55は、体圧用センサ薄膜51の右前隅に配置されている。体圧用下側配線01y〜16yは、各々、体圧用下側電極01Y〜16Yの前端と、下側配線用コネクタ55と、を接続している。
【0057】
体圧用検出部A0101〜A1616は、図5にハッチングで示すように、体圧用上側電極01X〜16Xと、体圧用下側電極01Y〜16Yと、が上側または下側から見て、交差する部分(重複する部分)に配置されている。体圧用検出部A0101〜A1616は、各々、体圧用上側電極01X〜16Xの一部と、体圧用下側電極01Y〜16Yの一部と、体圧用センサ薄膜51の一部と、を備えている。体圧用検出部A0101〜A1616は、合計256個(=16個×16個)配置されている。体圧用検出部A0101〜A1616は、体圧センサ5の略全面に亘って配置されている。
【0058】
図5中、点線で区分けしたように、クッション1は、左前部分1LF、右前部分1RF、左後部分1LB、右後部分1RBに区分けされる。左前部分1LFには、体圧用上側電極09X〜16Xと体圧用下側電極01Y〜08Yとの交差部分である、合計64個の体圧用検出部(A0901→A0908→A1608→A1601で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)が対応している。
【0059】
右前部分1RFには、体圧用上側電極09X〜16Xと体圧用下側電極09Y〜16Yとの交差部分である、合計64個の体圧用検出部(A0909→A0916→A1616→A1609で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)が対応している。
【0060】
左後部分1LBには、体圧用上側電極01X〜08Xと体圧用下側電極01Y〜08Yとの交差部分である、合計64個の体圧用検出部(A0101→A0108→A0808→A0801で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)が対応している。
【0061】
右後部分1RBには、体圧用上側電極01X〜08Xと体圧用下側電極09Y〜16Yとの交差部分である、合計64個の体圧用検出部(A0109→A0116→A0816→A0809で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)が対応している。
【0062】
(制御部4)
制御部4は、電源回路41と、CPU(Central Processing Unit)42と、RAM(Random Access Memory)43と、EEP−ROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)44と、駆動回路45と、を備えている。CPU42は、本発明の「演算部」の概念に含まれる。RAM43、EEP−ROM44は、本発明の「記憶部」の概念に含まれる。
【0063】
電源回路41は、体圧用検出部A0101〜A1616に、正弦波状の交流電圧を印加する。交流電圧は、体圧用検出部A0101〜A1616に、走査的に順番に印加される。EEP−ROM44には、予め、体圧用検出部A0101〜A1616における静電容量と荷重(体圧)との対応を示すマップなどが、格納されている。RAM43には、上側配線用コネクタ54、下側配線用コネクタ55から入力されるインピーダンス、位相などが、一時的に格納される。
【0064】
CPU42は、RAM43に格納されたインピーダンス、位相を基に、体圧用検出部A0101〜A1616の静電容量を抽出する。そして、静電容量から、体圧センサ5における体圧分布を算出する。
【0065】
図3に示すように、制御部4は、4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBに接続されている。制御部4には、4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBの変位が電気信号として入力される。
【0066】
図4に示すように、駆動回路45は、内圧調整部3の給排ユニット30の、ポンプ300と、給排切替バルブ301と、に接続されている。また、制御部4には、内圧調整部3の給排ユニット30の圧力計302から、圧力が電気信号として入力される。
【0067】
[姿勢補正方法]
次に、本実施形態の車椅子における、着座者の姿勢補正方法について説明する。図7に、姿勢補正方法のフローチャートを示す。ここで、シート93上の着座者Mが傾動する場合のフローチャートは、傾動方向によらず、前後左右同様である。図7では、代表して、シート93上の着座者Mが左側に傾動する場合のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。
【0068】
(ステップ1(S1))
ステップ1においては、着座者Mの初期状態(シート93に着座した直後)の体圧データがサンプリングされる。介護者は、着座者Mを、理想的な姿勢で車椅子9に着座させる。制御部4は、まず、この状態の体圧用検出部A0101〜A1616の体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)を、体圧センサ5を用いてサンプリングする。体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)は、本発明の「基準体圧分布」の概念に含まれる。
【0069】
次に、CPU42は、左前部分1LFに対応する体圧用検出部(A0901→A0908→A1608→A1601で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり左前合計値DLF0を算出する。同様に、右前部分1RFに対応する体圧用検出部(A0909→A0916→A1616→A1609で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり右前合計値DRF0を算出する。同様に、左後部分1LBに対応する体圧用検出部(A0101→A0108→A0808→A0801で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり左後合計値DLB0を算出する。同様に、右後部分1RBに対応する体圧用検出部(A0109→A0116→A0816→A0809で囲まれる領域に配置されている体圧用検出部)の体圧データの合計値、つまり右後合計値DRB0を算出する。
【0070】
続いて、CPU42は、以下の式(1)から、総合計値DT0を算出する。
DT0=DLF0+DRF0+DLB0+DRB0・・・・・式(1)
また、CPU42は、以下の式(2)から、左合計値DL0を算出する。
DL0=DLF0+DLB0・・・・・式(2)
また、CPU42は、以下の式(3)から、右合計値DR0を算出する。
DR0=DRF0+DRB0・・・・・式(3)
また、CPU42は、以下の式(4)から、前合計値DF0を算出する。
DF0=DLF0+DRF0・・・・・式(4)
また、CPU42は、以下の式(5)から、後合計値DB0を算出する。
DB0=DLB0+DRB0・・・・・式(5)
それから、CPU42は、以下の式(6)から、左傾斜率PL0(%)を算出する。
PL0=(DL0/DT0)×100・・・・・式(6)
また、CPU42は、以下の式(7)から、右傾斜率PR0(%)を算出する。
PR0=(DR0/DT0)×100・・・・・式(7)
また、CPU42は、以下の式(8)から、前傾斜率PF0(%)を算出する。
PF0=(DF0/DT0)×100・・・・・式(8)
また、CPU42は、以下の式(9)から、後傾斜率PB0(%)を算出する。
PB0=(DB0/DT0)×100・・・・・式(9)
体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)、左前合計値DLF0、右前合計値DRF0、左後合計値DLB0、右後合計値DRB0、総合計値DT0、左合計値DL0、右合計値DR0、前合計値DF0、後合計値DB0、左傾斜率PL0、右傾斜率PR0、前傾斜率PF0、後傾斜率PB0は、RAM43に格納される。また、RAM43には、図3に示す4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBから入力される、座面520の傾斜データが格納される。
【0071】
(ステップ2(S2))
ステップ2においては、着座者Mの現在の状態の体圧データがサンプリングされる。制御部4は、まず、現在の体圧用検出部A0101〜A1616の体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)を、体圧センサ5を用いてサンプリングする。体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)は、本発明の「実際の体圧分布」の概念に含まれる。
【0072】
次に、CPU42は、左前合計値DLF1、右前合計値DRF1、左後合計値DLB1、右後合計値DRB1、総合計値DT1、左合計値DL1、右合計値DR1、前合計値DF1、後合計値DB1、左傾斜率PL1、右傾斜率PR1、前傾斜率PF1、後傾斜率PB1を算出する。なお、算出方法は、ステップ1同様(添字「0」が「1」に代わっただけ)である。これらのデータは、RAM43に格納される。
【0073】
(ステップ3(S3))
ステップ3においては、CPU42は、以下の式(10)から、左傾動率dPL(%)を算出する。なお、式(10)中、「ABS」は「絶対値」を示す。
dPL=ABS(PL0−PL1)・・・・・式(10)
【0074】
(ステップ4(S4))
ステップ4においては、CPU42は、左傾動率dPLと、しきい値SL1(=1%)と、を比較する。なお、しきい値SL1は、EEP−ROM44に格納されている。左傾動率dPLがしきい値SL1以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。制御部4は、ステップ2〜ステップ4を、0.5秒毎に繰り返している。一方、左傾動率dPLがしきい値SL1超過の場合は、ステップ5に進む。
【0075】
(ステップ5(S5))
ステップ5においては、CPU42は、左傾動率dPLと、しきい値SL2(=4%)と、を比較する。なお、しきい値SL2は、EEP−ROM44に格納されている。左傾動率dPLがしきい値SL2以下の場合は、ステップ8に進む。
【0076】
(ステップ8(S8))
ステップ8においては、図4に示すように、制御部4の駆動回路45により、給排ユニット30を駆動する。具体的には、左側のエアセル20LF、20LBの内圧を高くする。つまり、給排切替バルブ301によりメインホース305とエアセル20LFとを連結し、ポンプ300によりエアセル20LFに空気を供給する。エアセル20LBにも同様に空気を供給する。
【0077】
あるいは、右側のエアセル20RF、20RBの内圧を低くする。つまり、ポンプ300を停止し、給排切替バルブ301によりメインホース305と排気ホース306とを連結する。そして、エアセル20RFの空気を排気する。エアセル20RBも同様に空気を排気する。
【0078】
給排ユニット30駆動中において、制御部4は、圧力計302を介して、エアセル20LF、20LB、20RF、20RBの内圧をチェックしている。また、制御部4は、図3に示す4つの傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBを介して、座面520の傾斜をチェックしている。また、制御部4は、体圧センサ5を介して、体圧データをチェックしている。CPU42は、当該体圧データと、初期状態の体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)と、を比較している。双方の体圧データが略一致した時点で、制御部4は、エアセル20LF、20LB、20RF、20Rの内圧の調整を終了する。その後、ステップ2に戻る。このようにして、着座者Mの体圧分布を、初期の基準体圧分布に近づける。
【0079】
(ステップ6(S6))
ステップ5において、左傾動率dPLがしきい値SL2超過の場合は、ステップ6に進む。ステップ6においては、左傾動率dPLがしきい値SL2を超過している状態の経過時間Tがカウントされる。経過時間Tがしきい値T1(=8秒)以下の場合は、ステップ8に進む。つまり、着座者Mの体圧分布を、初期の基準体圧分布に近づける。一方、経過時間Tがしきい値T1(=8秒)超過の場合、もはや着座者Mの姿勢を補正している猶予はなくなる。このため、ステップ7に進む。
【0080】
(ステップ7(S7))
ステップ7においては、制御部4が警報装置(図略)を駆動する。警報により、介護者は、着座者Mの異常に気付くことができる。
【0081】
[立ち上がり兆候検出方法]
次に、本実施形態の車椅子における、着座者の立ち上がり兆候検出方法について説明する。図8に、立ち上がり兆候検出方法のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。また、ステップ1(S1)、ステップ2(S2)、ステップ7(S7)は、姿勢補正方法と同様である。
【0082】
(ステップ30(S30))
ステップ30においては、CPU42は、以下の式(11)から、立ち上がり兆候度PS(%)を算出する。
PS={(DT0−DT1)/DT0}×100・・・・・式(11)
【0083】
(ステップ40(S40))
ステップ40においては、CPU42は、立ち上がり兆候度PSと、しきい値SL3(=40%)と、を比較する。なお、しきい値SL3は、EEP−ROM44に格納されている。立ち上がり兆候度PSがしきい値SL3以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。一方、立ち上がり兆候度PSがしきい値SL3超過の場合、着座者Mが、車椅子9から立ち上がろうとしているおそれがある。このため、ステップ7に進む。
【0084】
[動き度合検出方法]
次に、本実施形態の車椅子における、着座者の動き度合検出方法について説明する。図9に、動き度合検出方法のフローチャートを示す。なお、図中、添字「0」は初期状態を、添字「1」は現在状態を、それぞれ示す。また、ステップ1(S1)、ステップ2(S2)、ステップ7(S7)は、姿勢補正方法と同様である。
【0085】
(ステップ50(S50))
ステップ50においては、CPU42は、まず、体圧用検出部A0101〜A1616毎に、しきい値T2(=3秒)前の体圧データDA2(0101)〜DA2(1616)と、現在の体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)と、の差分を算出する。
【0086】
一例として、A0101の場合は、以下の式(12)から、差分ΔA0101を算出する。なお、式(12)中、「ABS」は「絶対値」を示す。
ΔA0101=ABS{DA2(0101)−DA1(0101)}・・・・・式(12)
CPU42は、次に、ΔA0101〜ΔA1616を合計して、差分合計値dDsを算出する。
【0087】
(ステップ60(S60))
ステップ60においては、CPU42は、以下の式(13)から、動き度合PMを算出する。
PM=(dDs/DT1)×100・・・・・式(13)
【0088】
(ステップ70(S70))
ステップ70においては、CPU42は、動き度合PMと、しきい値SL4(=15%)と、を比較する。なお、しきい値SL4は、EEP−ROM44に格納されている。動き度合PMがしきい値SL4以下の場合は、特にアクションを行わず、ステップ2に戻る。一方、動き度合PMがしきい値SL4超過の場合、車椅子9上での着座者Mの動きが激しいおそれがある。このため、ステップ7に進む。
【0089】
[作用効果]
次に、本実施形態の車椅子の作用効果について簡単に説明する。本実施形態の車椅子9のクッション1の制御部4は、体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)が体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)に近づくように、内圧調整部3を制御する。内圧調整部3は、制御部4の指示に応じたエアセル20LF、20RF、20LB、20RBの内圧を変化させ、着座者Mの体圧分布を補正する。つまり、着座者Mの姿勢を補正する。本実施形態のクッション1によると、着座者Mの実際の体圧分布を、基準体圧分布に近づけることができる。つまり、着座者Mの姿勢を補正することができる。
【0090】
また、本実施形態のクッション1によると、着座者Mの姿勢の変化を、着座者Mの体圧分布から測定することができる。このため、介護者の技量によらず、着座者Mの姿勢の変化を把握することができる。また、制御部4を調整することにより、簡単に、測定の頻度を多くすることができる。このため、確実に、着座者Mの姿勢の変化を把握することができる。
【0091】
また、本実施形態のクッション1によると、着座者Mの姿勢つまり体圧分布を、制御部4のEEP−ROM44に格納することができる。このため、着座者Mの姿勢を定量化したデータを、保存することができる。したがって、エアセル20LF、20RF、20LB、20RBの内圧の調整作業や着座者Mの着座方法などを、熟練の介護者が新人に教育する場合であっても、指導や訓練を簡単に行うことができる。すなわち、介護スキルの伝授が簡単である。また、着座者Mの姿勢を定量化したデータは、着座者Mの症状の把握や研究などにも有効利用することができる。
【0092】
また、本実施形態のクッション1は、傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBを備えている。このため、座面520の傾斜を電気量として検出することができる。着座者Mの姿勢を補正する際、CPU42は、傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBの電気量を参照する。このため、制御部4は、より確実に、体圧データDA1(0101)〜DA1(1616)が体圧データDA0(0101)〜DA0(1616)に近づくように、内圧調整部3を制御することができる。
【0093】
また、体圧センサ5は、静電容量型センサである。このため、体圧用検出部A0101〜A1616の静電容量の変化を基に、体圧分布を測定することができる。また、体圧用上側電極01X〜16Xおよび体圧用下側電極01Y〜16Yは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。このため、体圧用上側電極01X〜16Xが上側基板52と、体圧用下側電極01Y〜16Yが下側基板53と、共に伸縮することができる。したがって、上側基板52、下側基板53の伸縮を、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用下側電極01Y〜16Yが規制するおそれは小さい。また、体圧センサ5全体の伸縮性がより大きくなる。このため、体圧センサ5が、着座者Mの体に沿って変形しやすい。また、体圧センサ5が、着座者Mの体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0094】
また、本実施形態のクッション1によると、着座者Mの姿勢の補正だけでなく、着座者Mの立ち上がり兆候や、着座者Mの動き度合を検出することができる。このため、介護者の負担を軽減することができる。
【0095】
また、本実施形態のクッション1によると、既存の車椅子9にクッション1をアドオンするだけで、車椅子9に、姿勢補正機能、立ち上がり兆候検出機能、動き度合検出機能を追加することができる。すなわち、車椅子9のグレードによらず、介護者にとって重要な上記機能を追加することができる。このため、汎用性が高い。
【0096】
<第二実施形態>
本実施形態の車椅子と第一実施形態の車椅子との相違点は、クッションの構成だけである。ここでは、相違点についてのみ説明する。図10に、本実施形態のクッションの分解斜視図を示す。なお、図3と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0097】
[クッションの構成]
まず、本実施形態のクッションの構成について説明する。図10に示すように、本実施形態のクッション1は、セルユニット2と、内圧調整部と、制御部と、体圧センサ5と、傾斜センサ6と、上側挟持板72と、下側挟持板71と、押圧部材73LF、73RF、73Bと、クッション本体74と、を備えている。このうち、内圧調整部、制御部、体圧センサ5、下側挟持板71の構成は、第一実施形態と同様である。
【0098】
(セルユニット2、上側挟持板72)
セルユニット2は、3個のエアセル21LF、21RF、21Bを備えている。エアセル21LF、21RF、21Bは、本発明の「セル」の概念に含まれる。エアセル21LF、21RF、21Bは、各々、ウレタンフィルム製であって、上下方向を軸方向とする短軸円筒状を呈している。エアセル21LF、21RF、21Bは、柔軟である。エアセル21LF、21RF、21Bは、上側基板62の上面に固定されている。上側挟持板72は、硬質の樹脂製であって長方形板状を呈している。上側挟持板72は、セルユニット2の上側に配置されている。
【0099】
(傾斜センサ6)
傾斜センサ6は、体圧センサ5同様の静電容量型センサである。傾斜センサ6は、セルユニット2と下側挟持板71との間に介装されている。図11に、本実施形態のクッションの傾斜センサの分解斜視図を示す。なお、上側基板62を透過して示す。図11に示すように、傾斜センサ6は、傾斜用センサ薄膜61と、3つの傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bと、3つの傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bと、傾斜用検出部と、3つの傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bと、傾斜用下側配線67と、上側基板62と、下側基板63と、を備えている。傾斜センサ6の切断時伸びは、300%である。
【0100】
傾斜用センサ薄膜61は、ウレタンゴム製であって、長方形のシート状を呈している。ウレタンゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。
【0101】
上側基板62は、傾斜用センサ薄膜61の上側に配置されている。上側基板62は、アクリルゴムを含んで形成されている。上側基板62は、長方形板状を呈している。3つの傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bは、上側基板62の下面に配置されている。傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bは、各々、円形を呈している。3つの傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bは、左前方、右前方、後方に頂点のある正三角形状に配置されている。
【0102】
傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bは、上側基板62の下面に配置されている。傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bは、各々、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bは、各々、線状を呈している。傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bは、傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bと、制御部と、を並列的に接続している。
【0103】
下側基板63は、傾斜用センサ薄膜61の下側に配置されている。下側基板63は、アクリルゴムを含んで形成されている。下側基板63は、長方形板状を呈している。3つの傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、下側基板63の上面に配置されている。傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、各々、円形を呈している。3つの傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、左前方、右前方、後方に頂点のある正三角形状に配置されている。
【0104】
傾斜用下側配線67は、下側基板63の上面に配置されている。傾斜用下側配線67は、アクリルゴムと、銀粉と、を含んで形成されている。傾斜用下側配線67は、線状を呈している。傾斜用下側配線67は、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bと、制御部と、を直列的に接続している。
【0105】
傾斜用検出部は、傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bと、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bと、が上側または下側から見て、重複する部分に配置されている。傾斜用検出部は、合計3個配置されている。
【0106】
(クッション本体74)
クッション本体74は、ウレタン発泡体製であって、長方形板状を呈している。クッション本体74の上面は、座面740である。クッション本体74は、体圧センサ5の上側に配置されている。
【0107】
(押圧部材73LF、73RF、73B)
押圧部材73LF、73RF、73Bは、各々、ポリウレタン製であって、上下方向を軸方向とする短軸円柱状を呈している。押圧部材73LFはエアセル21LFの径方向内側に、押圧部材73RFはエアセル21RFの径方向内側に、押圧部材73Bはエアセル21Bの径方向内側に、それぞれ収容されている。押圧部材73LF、73RF、73Bの軸長と、エアセル21LF、21RF、21Bの軸長と、は略一致している。図11にハッチングで示すように、押圧部材73LF、73RF、73Bは、上側基板62に圧接している。着座者の体重移動、座面740の傾斜は、押圧部材73LF、73RF、73Bを介して、傾斜センサ6に伝達される。
【0108】
[作用効果]
次に、本実施形態の車椅子の作用効果について説明する。本実施形態の車椅子は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の車椅子と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の車椅子のクッション1の傾斜センサ6は、静電容量型センサである。このため、傾斜用検出部の静電容量の変化を基に、座面の傾斜を測定することができる。
【0109】
また、傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bおよび前記傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bは、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。このため、傾斜用上側電極64LF、64RF、64B、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bが、傾斜用センサ薄膜61と共に伸縮することができる。したがって、傾斜用センサ薄膜61の伸縮を、傾斜用上側電極64LF、64RF、64B、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bが規制するおそれは小さい。また、傾斜センサ6全体の伸縮性がより大きくなる。このため、傾斜センサ6が、着座者の体に沿って変形しやすい。また、傾斜センサ6が、着座者の体の動きに対しても、追従して変形しやすい。
【0110】
また、押圧部材73LF、73RF、73Bの軸長と、エアセル21LF、21RF、21Bの軸長と、は略一致している。このため、押圧部材73LF、73RF、73Bから着座者が受ける異物感が小さい。
【0111】
また、本実施形態の車椅子のクッションには、傾動アクチュエーターが組み込まれている。傾動アクチュエーターは、傾斜センサ6と、上側挟持板72と、下側挟持板71と、押圧部材73LF、73RF、73Bと、セルユニット2と、内圧調整部3(図4を援用)と、制御部4(図4、図5を援用)と、を備えている。上側挟持板72は前記(7)の構成の「表側挟持板」の概念に、下側挟持板71は前記(7)の構成の「裏側挟持板」の概念に、それぞれ含まれる。
【0112】
下側挟持板71に対して上側挟持板72が傾斜する際、上側挟持板72の傾斜に応じた荷重は、押圧部材73LF、73RF、73Bを介して、傾斜用検出部に入力される。荷重により、傾斜用検出部の静電容量が変化する。静電容量の変化に応じて、制御部は、内圧調整部を介して、エアセル21LF、21RF、21Bの内圧を調整する。そして、上側挟持板72の傾斜を変化させる。本実施形態の傾動アクチュエーターによると、上側挟持板72の傾斜を検出することができると共に、当該傾斜を変化させることができる。
【0113】
また、本実施形態の傾動アクチュエーターによると、硬質の上側挟持板72と硬質の下側挟持板71との間に、少なくとも上側挟持板72、下側挟持板71よりも軟質の傾斜センサ6を挟み込むことにより、下側挟持板71に対する上側挟持板72の傾斜を確実に検出することができる。また、セルユニット2により、下側挟持板71に対して上側挟持板72を傾動させることができる。
【0114】
<第三実施形態>
本実施形態の車椅子と第二実施形態の車椅子との相違点は、クッションの構成だけである。ここでは、相違点についてのみ説明する。図12に、本実施形態のクッションの分解斜視図を示す。なお、図10と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0115】
図12に示すように、クッション1は、3個の傾斜センサ60LF、60RF、60Bと、3個の押圧部材73LF、73RF、73Bと、を備えている。傾斜センサ60Bは、傾斜用センサ薄膜61Bと傾斜用上側電極62Bと傾斜用下側電極63Bとを備えている。傾斜用センサ薄膜61Bは、ウレタンゴム製であって、円形のシート状を呈している。ウレタンゴムは、本発明の「ポリマー」の概念に含まれる。傾斜用上側電極62Bは、銅製であって、薄肉の円板状を呈している。傾斜用上側電極62Bは、傾斜用センサ薄膜61Bの上側に配置されている。傾斜用下側電極63Bは、銅製であって、薄肉の円板状を呈している。傾斜用下側電極63Bは、傾斜用センサ薄膜61Bの下側に配置されている。傾斜センサ60LF、60RFも、傾斜センサ60Bと同様の構成を有している。
【0116】
押圧部材73LFは傾斜センサ60LFの上側に、押圧部材73RFは傾斜センサ60RFの上側に、押圧部材73Bは傾斜センサ60Bの上側に、それぞれ配置されている。また、押圧部材73LFと傾斜センサ60LFとはエアセル21LFの径方向内側に、押圧部材73RFと傾斜センサ60RFとはエアセル21RFの径方向内側に、押圧部材73Bと傾斜センサ60Bとはエアセル21Bの径方向内側に、それぞれ収容されている。傾斜用検出部は、傾斜センサ60LF、60RF、60B毎に1個ずつ配置されている。傾斜用検出部は、合計3個配置されている。
【0117】
本実施形態の車椅子は、構成が共通する部分に関しては、第二実施形態の車椅子と同様の作用効果を有する。また、本実施形態のクッションによると、押圧部材73LF、73RF、73Bと、傾斜センサ60LF、60RF、60Bと、が1対1に対応している。このため、例えば、押圧部材73LFにより傾斜センサ60LFが押圧されても、当該押圧力が傾斜センサ60RF、60Bに伝達されるおそれがない。すなわち、押圧力が水平方向に伝達されない。したがって、より精度よく、座面740の傾斜を検出することができる。
【0118】
また、本実施形態の車椅子のクッションには、第二実施形態の車椅子のクッションと同様に、傾動アクチュエーターが組み込まれている。傾動アクチュエーターは、傾斜センサ60LF、60RF、60Bと、上側挟持板72と、下側挟持板71と、押圧部材73LF、73RF、73Bと、セルユニット2と、内圧調整部3(図4を援用)と、制御部4(図4、図5を援用)と、を備えている。上側挟持板72は本発明の「表側挟持板」の概念に、下側挟持板71は本発明の「裏側挟持板」の概念に、それぞれ含まれる。
【0119】
下側挟持板71に対して上側挟持板72が傾斜する際、上側挟持板72の傾斜に応じた荷重は、押圧部材73LF、73RF、73Bを介して、傾斜用検出部に入力される。荷重により、傾斜用検出部の静電容量が変化する。静電容量の変化に応じて、制御部は、内圧調整部を介して、エアセル21LF、21RF、21Bの内圧を調整する。そして、上側挟持板72の傾斜を変化させる。本実施形態の傾動アクチュエーターによると、上側挟持板72の傾斜を検出することができると共に、当該傾斜を変化させることができる。
【0120】
また、本実施形態の傾動アクチュエーターによると、硬質の上側挟持板72と硬質の下側挟持板71との間に、少なくとも上側挟持板72、下側挟持板71よりも軟質の傾斜センサ60LF、60RF、60Bを挟み込むことにより、下側挟持板71に対する上側挟持板72の傾斜を確実に検出することができる。また、セルユニット2により、下側挟持板71に対して上側挟持板72を傾動させることができる。
【0121】
<第四実施形態>
本実施形態の車椅子と第一実施形態の車椅子との相違点は、クッションの体圧センサの構成が異なる点である。ここでは相違点についてのみ説明する。図13に、本実施形態のクッションの体圧センサの上面図を示す。図13に示すように、体圧センサ7は、体圧用基板76と、体圧用センサ薄膜77と、体圧用コネクタ78と、体圧用電極01a〜16a、01b〜16b、01c〜16c、01d〜16dと、体圧用配線79と、を備えている。
【0122】
体圧用基板76は、エラストマー製であって、長方形板状を呈している。体圧用基板76は、弾性変形可能である。体圧用センサ薄膜77は、体圧用基板76の上面に配置されている。体圧用センサ薄膜77は、導電性フィラーが配合されたエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)製であって、長方形膜状を呈している。体圧用センサ薄膜77における導電性フィラーの含有割合は、体圧用センサ薄膜77の体積を100vol%とした場合の約45vol%である。無荷重状態において、体圧用センサ薄膜77は、高い導電性を有する。一方、荷重が加わり体圧用センサ薄膜77が変形すると、導電性フィラー同士の接触状態が変化する。これにより、三次元的な導電パスが崩壊し、体圧用センサ薄膜77の電気抵抗は増加する。つまり、体圧用センサ薄膜77の電気抵抗は、弾性変形量が増加するのに従って増加する。体圧用コネクタ78は、正方形板状を呈している。体圧用コネクタ78は、体圧用基板76の上面の右後隅に配置されている。
【0123】
体圧用電極01a〜16aは、体圧用センサ薄膜77の左辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01b〜16bは、体圧用センサ薄膜77の右辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01a〜16aと体圧用電極01b〜16bとは、図13に一点鎖線で示すように、各々、左右方向に対向している。
【0124】
体圧用電極01c〜16cは、体圧用センサ薄膜77の後辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01d〜16dは、体圧用センサ薄膜77の前辺に、所定間隔ずつ離間して並んでいる。体圧用電極01c〜16cと体圧用電極01d〜16dとは、図13に一点鎖線で示すように、各々、前後方向に対向している。これら一点鎖線の交点(合計256=16×16)が、体圧用検出部である。体圧用電極01a〜16a、01b〜16b、01c〜16c、01d〜16dと、体圧用コネクタ78とは、各々、体圧用配線79により接続されている。
【0125】
制御部8は、電源回路81と、CPU82と、RAM83と、EEP−ROM84と、駆動回路85と、を備えている。CPU82は、本発明の「演算部」の概念に含まれる。RAM83、EEP−ROM84は、本発明の「記憶部」の概念に含まれる。制御部8は、体圧用コネクタ78と電気的に接続されている。EEP−ROM84には、予め、体圧用検出部における電気抵抗と体圧(荷重)との対応を示すマップが、格納されている。電源回路81は体圧用検出部に直流電圧を印加する。直流電圧は、合計256点の体圧用検出部に、走査的に順番に印加される。各体圧用検出部の電気抵抗は、RAM83に一時的に格納される。CPU82は、RAM83に格納された電気抵抗から、体圧用センサ薄膜77の荷重分布を算出する。駆動回路85は、前出図4を援用して示すように、内圧調整部3の給排ユニット30の、ポンプ300と給排切替バルブ301とに接続されている。また、制御部8には、給排ユニット30の圧力計302から、圧力が電気信号として入力される。
【0126】
本実施形態の車椅子は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の車椅子と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の車椅子によると、体圧センサ7の電気抵抗の変化から体圧分布を算出することができる。
【0127】
<その他>
以上、本発明の車椅子の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0128】
第一実施形態においては、傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBとして、変位センサを用いた。変位センサの種類は特に限定しない。渦電流式、光学式(レーザ式)、超音波式、接触式などの変位センサを用いてもよい。また、変位センサ以外のセンサを傾斜センサ6LF、6RF、6LB、6RBとして用いてもよい。
【0129】
また、体圧センサ5、7、傾斜センサ6、60LF、60RF、60Bの構成、形状、大きさなどは、特に限定しない。また、体圧センサ5、7、傾斜センサ6、60LF、60RF、60Bから出力される電気量についても、電圧、電気抵抗、静電容量などのいずれであってもよい。体圧用検出部、傾斜用検出部に印加される電圧は、交流であっても直流であってもよい。また、電圧の波形は、正弦波状であっても、矩形波状であってもよい。
【0130】
また、体圧センサ5、7、傾斜センサ6、60LF、60RF、60Bにおいて、体圧用センサ薄膜51、77、傾斜用センサ薄膜61、61Bのポリマーの種類は、特に限定しない。例えば、第一〜第三実施形態の静電容量型の体圧センサ5、傾斜センサ6、60LF、60RF、60Bでは、伸縮の繰り返しに対する耐久性、および静電容量を大きくするという観点から、伸び、強度、および比誘電率が大きいエラストマーを用いることが望ましい。例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、およびこれらの発泡体や、ウレタンフォームなどが好適である。
【0131】
また、体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bは、エラストマー以外の他のポリマー製、例えば伸縮性を有する布製であってもよい。この場合、体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bに荷重が加わると、布を構成する繊維間の隙間が潰されて、布の厚さは小さくなる。つまり、体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bの厚さが小さくなる。これにより、電極間距離は小さくなる。その結果、静電容量が大きくなり、荷重が検出される。
【0132】
布は、伸縮性を有するものであれば、織布、編み布、不織布のいずれであってもよい。布を使用することにより、伸縮柔軟性に優れた体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bを、比較的低コストに実現することができる。また、布を構成する繊維間には隙間がある。このため、小さな荷重で押圧された場合でも、隙間が潰れることにより、布の厚さは変化しやすい。したがって、体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bは、高い検出感度を有し、応答性に優れる。体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bは、単層であっても、複層であってもよい。複層の場合、異なる材質の誘電層を用いてもよい。
【0133】
また、体圧センサ5においては、上側基板52の下面に、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用上側配線01x〜16xを下側から覆う、上側電極保護層を配置してもよい。同様に、下側基板53の上面に、体圧用下側電極01Y〜16Y、体圧用下側配線01y〜16yを上側から覆う、下側電極保護層を配置してもよい。すなわち、体圧用センサ薄膜51に、体圧用上側電極01X〜16Xと、体圧用下側電極01Y〜16Yと、が「間接的に」接続されていてもよい。こうすると、体圧用センサ薄膜51に電極、配線を配置しにくい場合(例えば体圧用センサ薄膜51が発泡体製の場合)であっても、上側基板52、下側基板53に電極、配線を配置することができる。
【0134】
同様に、傾斜センサ6においては、上側基板62の下面に、傾斜用上側電極64LF、64RF、64B、傾斜用上側配線66LF、66RF、66Bを下側から覆う、上側電極保護層を配置してもよい。同様に、下側基板63の上面に、傾斜用下側電極65LF、65RF、65B、傾斜用下側配線67を上側から覆う、下側電極保護層を配置してもよい。すなわち、傾斜用センサ薄膜61に、傾斜用上側電極64LF、64RF、64Bと、傾斜用下側電極65LF、65RF、65Bと、が「間接的に」接続されていてもよい。こうすると、傾斜用センサ薄膜61に電極、配線を配置しにくい場合(例えば傾斜用センサ薄膜61が発泡体製の場合)であっても、上側基板62、下側基板63に電極、配線を配置することができる。
【0135】
また、第四実施形態の抵抗変化型の体圧センサ7では、導電性フィラーとの相溶性などを考慮して、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴムなどが好適である。なお、第四実施形態では、体圧用センサ薄膜77の電気抵抗は、弾性変形量(荷重)が増加するのに従って増加した。しかし、荷重が増加するのに従って、電気抵抗が低下するような体圧用センサ薄膜77を使用してもよい。体圧用センサ薄膜77の電気抵抗の挙動については、母材のエラストマーの種類、導電性フィラーの種類および配合量などにより、調整することができる。
【0136】
また、上側基板52、下側基板53の材質は、特に限定しない。絶縁性を有する樹脂、エラストマーを用いればよい。例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン共重合体ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンゴム、ブチルゴムを用いてもよい。なお、電極、配線は、上側基板52、下側基板53に印刷してもよい。
【0137】
また、上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RB、72の材質は特に限定しない。例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンなどの樹脂、アルミニウムなどの金属、木製であってもよい。硬質である方が、下側挟持板71に対する上側挟持板70LF、70RF、70LB、70RB、72の傾斜、つまり座面520、740の傾斜を、傾斜センサ6、6LF、6RF、6LB、6RB、60LF、60RF、60Bが検出しやすい。
【0138】
また、第一〜第三実施形態の体圧センサ5においては、電極および配線を、エラストマーを含んで形成した。この場合、電極および配線が伸縮するため、上側基板52、下側基板53と一体となって変形することができる、という利点がある。電極および配線は、例えば印刷などを用いて、上側基板52、62、下側基板53、63、あるいは体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61、61Bに、直接形成してもよい。
【0139】
電極および配線に用いられるポリマーの材質は特に限定しない。ポリマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどのエラストマーであってもよい。また、ポリマーは、ポリエステル、エポキシなどの樹脂であってもよい。こうすると、電極の伸縮性が高くなる。このため、電極と体圧用センサ薄膜51、傾斜用センサ薄膜61とが一体的に屈曲、伸縮しやすい。
【0140】
電極および配線に用いられる導電性フィラーの材質は特に限定しない。導電性フィラーは、炭素材料および金属から選ばれる一種以上からなるものであってもよい。金属としては、導電性の高い銀、銅等が好適である。よって、導電性フィラーとして、銀、銅等の微粒子、あるいは表面に銀等のめっきを施した微粒子を使用することができる。また、炭素材料は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、炭素材料からなる導電性フィラーを用いると、体圧センサ5、7の製造コストを低減することができる。炭素材料としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの誘導体、グラファイト、導電性炭素繊維などが挙げられる。特に、導電性カーボンブラック、グラファイト、導電性炭素繊維は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、これらの材料を用いると、体圧センサ5、7延いてはクッション1の製造コストを削減することができる。また、電極、配線を、金属材料や、有機繊維の表面に金属めっきを施した材料などで形成してもよい。
【0141】
また、いずれの実施形態においても、電極の数、配置場所については、特に限定しない。例えば、第一〜第三実施形態の体圧センサ5において、帯状の体圧用上側電極01X〜16X、体圧用下側電極01Y〜16Yの数、幅、長さについては、適宜決定すればよい。例えば、幅が大きいものと小さいものとを混合して、配置してもよい。また、体圧用上側電極01X〜16X、体圧用下側電極01Y〜16Yの配置形態を変えることにより、体圧用検出部A0101〜A1616の数、配置を調整すればよい。上記実施形態では、一層の体圧センサ5、7により、体圧分布を検出した。しかし、二層以上の体圧センサ5、7を使用して、体圧分布を検出してもよい。
【0142】
また、上記実施形態では、エアセル20LF、20RF、20LB、20RB、21LF、21RF、21Bの内圧調整に空気を用いたが、窒素など他の気体、水、オイル、ジェルなどの液体を用いてもよい。また、エアセル20LF、20RF、20LB、20RB、21LF、21RF、21Bの配置数、形状、寸法などは特に限定しない。また、ポンプ300の代わりに、コンプレッサーやブロワなど、別の送風装置を配置してもよい。
【0143】
また、各種しきい値SL1〜SL4、T1、T2を設定可能な数値範囲は、特に限定しない。例えば、SL1を0%以上2%以下としてもよい。SL2を3%以上5%以下としてもよい。SL3を30%以上50%以下としてもよい。SL4を10%以上20%以下としてもよい。T1を5秒以上10秒以下としてもよい。T2を1秒以上5秒以下としてもよい。
【0144】
また、本発明のクッション1は車椅子9のみならず、ソファーなど他の椅子、自動車、電車、航空機、船舶などの乗物のシートに用いることができる。また、傾動アクチュエーターは、クッション1のみならず、テレビゲームのコントローラーなどに用いることができる。また、入力に対して何らかの出力が返ってくる入出力インターフェイスとして用いることができる。
【符号の説明】
【0145】
1:クッション、1LB:左後部分、1LF:左前部分、1RB:右後部分、1RF:右前部分、2:セルユニット、3:内圧調整部、4:制御部、5:体圧センサ、6:傾斜センサ、6LB:傾斜センサ、6LF:傾斜センサ、6RB:傾斜センサ、6RF:傾斜センサ、7:体圧センサ、8:制御部、9:車椅子。
01X〜16X:体圧用上側電極、01Y〜16Y:体圧用下側電極、01a〜16a:体圧用電極、01b〜16b:体圧用電極、01c〜16c:体圧用電極、01d〜16d:体圧用電極、01x〜16x:体圧用上側配線、01y〜16y:体圧用下側配線、20LB:エアセル(セル)、20LF:エアセル(セル)、20RB:エアセル(セル)、20RF:エアセル(セル)、21B:エアセル(セル)、21LF:エアセル(セル)、21RF:エアセル(セル)、30:給排ユニット、41:電源回路、42:CPU(演算部)、43:RAM(記憶部)、44:EEP−ROM(記憶部)、45:駆動回路、51:体圧用センサ薄膜、52:上側基板、53:下側基板、54:上側配線用コネクタ、55:下側配線用コネクタ、61:傾斜用センサ薄膜、62:上側基板、63:下側基板、67:傾斜用下側配線、71:下側挟持板、72:上側挟持板、74:クッション本体、76:体圧用基板、77:体圧用センサ薄膜、78:体圧用コネクタ、79:体圧用配線、81:電源回路、82:CPU(演算部)、83:RAM(記憶部)、84:EEP−ROM(記憶部)、85:駆動回路、90:フレーム、93:シート、94:バックサポート。
60LF:傾斜センサ、60RF:傾斜センサ、60B:傾斜センサ、61B:傾斜用センサ薄膜、62B:傾斜用上側電極、63B:傾斜用下側電極、64LF:傾斜用上側電極、64RF:傾斜用上側電極、64B:傾斜用上側電極、65LF:傾斜用下側電極、65RF:傾斜用下側電極、65B:傾斜用下側電極、66LF:傾斜用上側配線、66RF:傾斜用上側配線、66B:傾斜用上側配線、70LF:上側挟持板、70RF:上側挟持板、70LB:上側挟持板、70RB:上側挟持板、73LF:押圧部材、73RF:押圧部材、73B:押圧部材、91L:主輪、91R:主輪、92L:キャスター、92R:キャスター、95L:フットサポート、95R:フットサポート、96L:アームサポート、96R:アームサポート、97L:ハンドル、97R:ハンドル。
300:ポンプ、301:給排切替バルブ、302:圧力計、305:メインホース、306:排気ホース、520:座面、740:座面、930:シート本体。
A0101〜A1616:体圧用検出部、DA0(0101)〜DA0(1616):体圧データ(基準体圧分布)、DA1(0101)〜DA1(1616):体圧データ(実際の体圧分布)、DB0:後合計値、DB1:後合計値、DF0:前合計値、DF1:前合計値、DL0:左合計値、DL1:左合計値、DR0:右合計値、DR1:右合計値、DT0:総合計値、DT1:総合計値、DLB0:左後合計値、DLB1:左後合計値、DLF0:左前合計値、DLF1:左前合計値、DRB0:右後合計値、DRB1:右後合計値、DRF0:右前合計値、DRF1:右前合計値、M:着座者、PB0:後傾斜率、PB1:後傾斜率、PF0:前傾斜率、PF1:前傾斜率、PL0:左傾斜率、PL1:左傾斜率、PR0:右傾斜率、PR1:右傾斜率、PM:動き度合、PS:立ち上がり兆候度、SL1〜SL4:しきい値、T:経過時間、T1:しきい値、dDs:差分合計値、dPL:左傾動率。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者が着座する座面と、
該座面の下側に配置され、流体が出入可能な複数のセルを有するセルユニットと、
複数の該セルの内圧を変化させることにより、該着座者の体圧分布を調整する内圧調整部と、
該座面の下側に配置され、ポリマーを含み該着座者の体圧により弾性的に変形可能な体圧用センサ薄膜と、該体圧用センサ薄膜に直接あるいは間接的に接続される複数の体圧用電極と、複数の該体圧用電極間に形成される複数の体圧用検出部と、を有し、該体圧用検出部に加わる体圧を電気量として検出可能なシート状の体圧センサと、
該内圧調整部を制御し、該セルの該内圧を変化させる制御部と、
を備えてなるクッションであって、
前記制御部は、前記着座者の姿勢の基準となる基準体圧分布と、該着座者の実際の体圧分布と、を格納する記憶部と、実際の該体圧分布が該基準体圧分布に近づくように、前記内圧調整部を制御する演算部と、を有することを特徴とするクッション。
【請求項2】
さらに、前記座面の下側に配置され、該座面の傾斜を電気量として検出可能な傾斜センサを備え、
前記演算部は、該傾斜センサの該電気量を参照しながら前記内圧調整部を制御する請求項1に記載のクッション。
【請求項3】
前記体圧センサにおいて、複数の前記体圧用電極は、前記体圧用センサ薄膜の上側に配置される帯状の体圧用上側電極と、該体圧用センサ薄膜の下側に配置される帯状の体圧用下側電極と、からなり、
複数の前記体圧用検出部は、該体圧用上側電極と該体圧用下側電極とが、上側または下側から見て、交差することにより形成され、
前記体圧により該体圧用検出部の静電容量が変化する請求項1または請求項2に記載のクッション。
【請求項4】
前記体圧用上側電極および前記体圧用下側電極は、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を含んで形成される請求項3に記載のクッション。
【請求項5】
前記傾斜センサは、ポリマーを含み前記座面の前記傾斜により弾性的に変形可能な傾斜用センサ薄膜と、該傾斜用センサ薄膜の上側に配置される傾斜用上側電極と、該傾斜用センサ薄膜の下側に配置される傾斜用下側電極と、該傾斜用上側電極と該傾斜用下側電極とが、上側または下側から見て、重複することにより形成される複数の傾斜用検出部と、を有し、
該傾斜用検出部に加わる荷重により、該傾斜用検出部の静電容量が変化する請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のクッション。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のクッションを有するシートを備える車椅子。
【請求項1】
着座者が着座する座面と、
該座面の下側に配置され、流体が出入可能な複数のセルを有するセルユニットと、
複数の該セルの内圧を変化させることにより、該着座者の体圧分布を調整する内圧調整部と、
該座面の下側に配置され、ポリマーを含み該着座者の体圧により弾性的に変形可能な体圧用センサ薄膜と、該体圧用センサ薄膜に直接あるいは間接的に接続される複数の体圧用電極と、複数の該体圧用電極間に形成される複数の体圧用検出部と、を有し、該体圧用検出部に加わる体圧を電気量として検出可能なシート状の体圧センサと、
該内圧調整部を制御し、該セルの該内圧を変化させる制御部と、
を備えてなるクッションであって、
前記制御部は、前記着座者の姿勢の基準となる基準体圧分布と、該着座者の実際の体圧分布と、を格納する記憶部と、実際の該体圧分布が該基準体圧分布に近づくように、前記内圧調整部を制御する演算部と、を有することを特徴とするクッション。
【請求項2】
さらに、前記座面の下側に配置され、該座面の傾斜を電気量として検出可能な傾斜センサを備え、
前記演算部は、該傾斜センサの該電気量を参照しながら前記内圧調整部を制御する請求項1に記載のクッション。
【請求項3】
前記体圧センサにおいて、複数の前記体圧用電極は、前記体圧用センサ薄膜の上側に配置される帯状の体圧用上側電極と、該体圧用センサ薄膜の下側に配置される帯状の体圧用下側電極と、からなり、
複数の前記体圧用検出部は、該体圧用上側電極と該体圧用下側電極とが、上側または下側から見て、交差することにより形成され、
前記体圧により該体圧用検出部の静電容量が変化する請求項1または請求項2に記載のクッション。
【請求項4】
前記体圧用上側電極および前記体圧用下側電極は、ポリマーと、該ポリマーに充填される導電性フィラーと、を含んで形成される請求項3に記載のクッション。
【請求項5】
前記傾斜センサは、ポリマーを含み前記座面の前記傾斜により弾性的に変形可能な傾斜用センサ薄膜と、該傾斜用センサ薄膜の上側に配置される傾斜用上側電極と、該傾斜用センサ薄膜の下側に配置される傾斜用下側電極と、該傾斜用上側電極と該傾斜用下側電極とが、上側または下側から見て、重複することにより形成される複数の傾斜用検出部と、を有し、
該傾斜用検出部に加わる荷重により、該傾斜用検出部の静電容量が変化する請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のクッション。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のクッションを有するシートを備える車椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−71099(P2012−71099A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101152(P2011−101152)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
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