説明

クッション体および該クッション体を用いた座席シート並びにこれらの製造方法

【課題】 成形が容易でコスト高とならずに表層の硬さを部位に応じて異ならせた、繊維製クッション材からなるクッション体,これを用いた座席シート並びにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 クッション体を形成するクッション体形成工程と、シートフレームにクッション体および表皮を取り付ける組み付け工程とを備え、クッション体形成工程では、熱接着性複合短繊維および熱接着性複合短繊維よりも高い融点を有する非弾性捲縮短繊維とが交差するシート状繊維構造体4を形成し、シート状繊維構造体を所定形状に裁断し、所定形状のキャビティ40aを有すると共に型面41a,42aに形成された蒸気孔43の開口率が型面の部位に応じて異なるように設定された成形型40内に、シート状繊維構造体4を配置し、成形型40に対して蒸気を吹き付けて、蒸気孔43の開口率に応じて表層の硬度が部位によって異なるクッション体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクッション体および該クッション体を用いた座席シート並びにこれらの製造方法に係り、特に、繊維製クッション材からなるクッション体および該クッション体を用いた座席シート並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル系短繊維をクッション材として用いた座席シートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に記載の座席シートに用いられるクッション体は、蒸気熱によって溶解する熱可塑性のバインダと、このバインダよりも高融点の繊維が混合され適度の嵩高性の繊維群よりなる繊維質体を、ホットメルトフィルムを介して、下型および上型の少なくとも一方の成形面に蒸気の吹出し孔を多数有する下型成形面と上型成形面間に配置し、両型を圧締し、吹出し孔より蒸気を噴射して成形し成形面形状を有するように形成される。
【0003】
このように、蒸気熱に対して溶解する熱可塑性のバインダを含む繊維質体を成形型内に配置して、スチーム成形することによって、所望形状のクッション体を得ることが可能となる。そして、繊維質体の表面付近には、蒸気の熱により溶解したホットメルトフィルムが含浸するため、含浸部分に硬質層を形成することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平5−321114号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、成形時にホットメルトフィルムを部分的に配置することによって、表層の硬度を部位によって異ならせることができるが、ホットメルトフィルムの含浸によって形成された硬質層はもとより表層全体として、繊維質体の風合が失われて、全体に触感が硬くなってしまうという問題があった。また、特許文献1の技術では、ホットメルトを介在させるため、成形に手間が掛かったり、原材料費がかさんだりするという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、成形が容易でコスト高とならずに表層の硬さを部位に応じて異ならせた、繊維製クッション材からなるクッション体および該クッション体を用いた座席シート並びにこれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明によれば、シート状繊維構造体を成形してなるクッション体の製造方法であって、所定形状のキャビティを有すると共に型面に形成された蒸気孔の開口率が前記型面の部位に応じて異なるように設定された成形型内に、所定形状に裁断したシート状繊維構造体を配置する工程と、前記成形型に対して蒸気を吹き付けて、前記蒸気孔の開口率に応じて表層の硬度が部位によって異なるクッション体を形成する工程と、を備えることにより解決される。
【0008】
このように、本発明では、シート状繊維構造体を型面に蒸気孔が形成された成形型内に配置し、圧締状態でスチーム形成することによって、クッション体を形成する。そして、成形型の型面には、部位に応じて開口率が異なるように蒸気孔が形成されている。これにより、蒸気孔の開口率が小さい部位では、成形されたクッション体の表層をシート状繊維構造体の風合を残した柔らかい状態に仕上げることができ、蒸気孔の開口率が大きい部位では、表層を硬い状態に仕上げることができる。
【0009】
また、上記製造方法によれば、シート状繊維構造体を成形してなるクッション体であって、成形時に前記シート状繊維構造体に吹き付ける蒸気量を部位に応じて異ならせることにより、表層の硬度が部位によって異なるように形成されてなるものを得ることができる。
【0010】
また、シート状繊維構造体を成形してなるクッション体であって、
所定形状のキャビティを有すると共に型面に形成された蒸気孔の開口率が前記型面の部位に応じて異なるように設定された成形型内に、所定形状に裁断した前記シート状繊維構造体を圧縮した状態で配置し、前記成形型に対して蒸気を吹き付けることによって、前記蒸気孔の開口率に応じて表層の硬度が部位によって異なるように形成されてなるものを得ることができる。
【0011】
また、上記課題は、本発明によれば、表皮に覆われたクッション体と、該クッション体を支持する支持体とを備えた座席シートの製造方法であって、前記クッション体を形成するクッション体形成工程と、前記クッション体を前記支持体に取り付ける組み付け工程と、を備え、前記クッション体形成工程には、所定形状のキャビティを有すると共に型面に形成された蒸気孔の開口率が前記型面の部位に応じて異なるように設定された成形型内に、所定形状に裁断したシート状繊維構造体を配置するシート状繊維構造体配置工程と、前記成形型に対して蒸気を吹き付けて、前記蒸気孔の開口率に応じて表層の硬度が部位によって異なるクッション体を形成する工程が含まれることにより解決される。
【0012】
また、前記クッション体形成工程では、前記成形型内に前記表皮および所定形状に裁断された前記シート状繊維構造体を積層して配置してもよい。これにより、クッション体と表皮とを一体に成形することができる。
【0013】
また、前記成形型の型面は、前記クッション体のうち前記支持体への取付け箇所を形成する部位よりも、着座時に着座者と当接する箇所を形成する部位の方が、前記蒸気孔の開口率が低く設定されていると、着座感を良好にすることができる。
【0014】
また、上記製造方法によれば、シート状繊維構造体を成形し表皮で覆ってなるクッション体と、該クッション体を支持する支持体とを備えた座席シートであって、前記クッション体は、成形時に前記シート状繊維構造体に吹き付ける蒸気量を部位に応じて異ならせることにより、表層の硬度が部位によって異なるように形成されてなるものを得ることができる。
【0015】
また、シート状繊維構造体を成形し表皮で覆ってなるクッション体と、該クッション体を支持する支持体とを備えた座席シートであって、前記クッション体は、所定形状のキャビティを有すると共に型面に形成された蒸気孔の開口率が前記型面の部位に応じて異なるように設定された成形型内に、所定形状に裁断した前記シート状繊維構造体を圧縮した状態で配置し、前記成形型に対して蒸気を吹き付けることによって、前記蒸気孔の開口率に応じて表層の硬度が部位によって異なるように形成されてなるものを得ることができる。
【0016】
上記シート状繊維構造体は、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点と、前記熱接着性複合短繊維よりも高い融点を有する非弾性捲縮短繊維と前記熱接着性複合短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点と、が散在し分布してなるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成形型内に配置したシート状繊維構造体をスチーム成形することによってクッション体を形成する際に、成形型の型面に形成された蒸気孔の開口率を部位に応じて異ならせて設定することにより、表層の硬さを蒸気孔の開口率に応じて異ならせたクッション体を得ることができる。
【0018】
このように本発明では、硬さの異なる複数のクッション体を組み合わせたり、他の部材を介在させたりすることなく、蒸気孔の開口率を異ならせることのみで表層の硬さを部位に応じて異ならせたクッション体を得ることができる。これにより、成形に手間が掛からず、コスト高とならずにクッション体および該クッション体を用いた座席シートを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材,配置等は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0020】
図1〜図9は本発明の一実施形態に係るものであり、図1は座席シートの説明図、
図2はウェブの繊維方向の説明図、図3はシート状繊維構造体の製造工程の説明図、図4はシート状繊維構造体の積層前の説明図、図5は成形型の説明図、図6は成形型にシート状繊維構造体を圧締した状態を示す説明図、図7は成形型の説明図、図8はクッション体の高圧スチーム工程の説明図、図9はクッション体の断面説明図である。
図10〜図12は本発明の他の実施形態に係るものであり、図10は成形型の説明図、図11は成形型にシート状繊維構造体を圧締した状態を示す説明図、図12は成形型にシート状繊維構造体および表皮を圧締した状態を示す説明図である。
【0021】
本例の座席シート1は、車、電車、航空機等の座席に適用することができるものであり、事務椅子、介護椅子等の各種椅子等にも適用可能である。
本例の座席シート1は、図1に示すように、着座部10と、背もたれ部20と、を備えている。着座部10,背もたれ部20は、それぞれ支持体としてのシートフレーム15,25にクッション体11,21を載置し、クッション体11,21を表皮13,23で覆った構成となっている。なお、本発明において、クッション体を支持する支持体は、フレーム状のものに限られるものではなく、例えば、板状等であってもよい。
【0022】
本例のクッション体について、着座部10のクッション体11を例にとって説明する。クッション体21についても同様な方法で形成されている。本例のクッション体11は、後述するようにウェブ2を林立状態に折り畳んだシート状繊維構造体4を形成し、このシート状繊維構造体4を複数積層して、無数の蒸気孔(スチーム通気孔)43が型面に形成された成形型40内に配置し、圧締した状態で、高圧スチーム成形機50内で高圧スチーム成形されたものである。
【0023】
まず、本例のクッション体11を形成するためのウェブ2について説明する。ウェブ2は、非弾性捲縮短繊維の集合体からなるマトリックス繊維中に、この短繊維よりも低い融点であって、少なくとも120℃以上の融点を有する熱接着性複合短繊維が接着成分として分散・混合されたものである。
【0024】
本例のウェブ2は、非弾性捲縮短繊維としての非弾性ポリエステル系捲縮短繊維と、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維を構成するポリエステルポリマーの融点より40℃以上低い融点を有する熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとからなる熱接着性複合短繊維とが、主に長さ方向に繊維の方向が向くように混綿されたものである。さらに、熱処理によって、熱接着性複合短繊維同士間、および熱接着性複合短繊維と非弾性ポリエステル系捲縮短繊維との間に立体的繊維交差点が形成される。
【0025】
本例では、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維として、異方冷却により立体捲縮を有する単糸繊度12デニール、繊維長64mmの中空ポリエチレンテレフタレート繊維を用いている。
非弾性ポリエステル系捲縮短繊維は、通常のポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトンまたはこれらの共重合エステルからなる短繊維ないしそれら繊維の混綿体、または上記のポリマー成分のうちの2種以上からなる複合繊維等を用いることができる。これら短繊維のうち好ましいのはポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートの短繊維である。さらに、固有粘度において互いに異なる2種のポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、またはその組み合わせからなり、熱処理等により捲縮がミクロクリンプを有する潜在捲縮繊維を用いることもできる。
【0026】
また、短繊維の断面形状は、円形、偏平、異型または中空のいずれであってもよい。また、その短繊維の太さは2〜200デニール、特に6〜100デニールの範囲にあることが好ましい。この短繊維の太さが小さいと、ソフト性はアップするもののクッション体の弾力性が低下する場合が多い。
【0027】
また、短繊維の太さが大きすぎると、取扱い性、特にウェブ2の形成性が悪化する。また構成本数も少なくなりすぎて、熱接着性複合短繊維との間に形成される交差点の数が少なくなり、クッション体の弾力性が発現しにくくなると同時に耐久性も低下するおそれがある。更には風合も粗硬になりすぎる。
【0028】
また、本例では、熱接着性複合短繊維として、融点154℃の熱可塑性ポリエーテルエステル系エラストマーを鞘成分に用い、融点230℃ポリブチレンテレフタレートを芯成分に用いた単糸繊度6デニール、繊維長51mmの芯/鞘型熱融着性複合繊維(芯/鞘比=60/40:重量比)が用いられている。
【0029】
熱接着性複合短繊維は、熱可塑性エラストマーと非弾性ポリエステルとで構成される。そして、前者が繊維表面の少なくとも1/2を占めるものが好ましい。重量割合でいえば、前者と後者が複合比率で30/70〜70/30の範囲にあるのが適当である。熱接着性複合短繊維の形態としては、サイド・バイ・サイド、シース・コア型のいずれであってもよいが、好ましいのは後者である。このシース・コア型においては、非弾性ポリエステルがコアとなるが、このコアは同心円上あるいは偏心状にあってもよい。特に偏心型のものにあっては、コイル状弾性捲縮が発現するので、より好ましい。
【0030】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマーやポリエステル系エラストマーが好ましい。特に後者が適当である。ポリウレタン系エラストマーとしては、分子量が500〜6000程度の低融点ポリオール、例えばジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等と、分子量500以下の有機ジイソシアネート、例えばp,p−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等と、分子量500以下の鎖伸長剤、例えばグリコール、アミノアルコールあるいはトリオールとの反応により得られるポリマーである。これらのポリマーのうち、特に好ましいものはポリオールとしてポリテトラメチレングリコール、またはポリ−ε−カプロラクトンあるいはポリブチレンアジペートを用いたポリウレタンである。この場合、有機ジイソシアネートとしてはp,p'−ジフェニルメタンジイソシアネートが好適である。また、鎖伸長剤としては、p,p'ビジスヒドロキシエトキシベンゼンおよび1,4−ブタンジオールが好適である。
【0031】
一方、ポリエステル系エラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アレキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステルブロック共重合体、より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジカルボン酸の少なくとも1種と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、あるいは1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、またこれらのエステル形成性誘導体などから選ばれたジオール成分の少なくとも1種、および平均分子量が約400〜5000程度の、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−および1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等のポリ(アレキレンオキシド)グリコールのうち少なくとも1種から構成される三元共重合体である。
【0032】
しかしながら、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維との接着性や温度特性、強度の面からすれば、ポリブチレン系テレフタレートをハードセグメントとし、ポリオキシブチレングリコールをソフトセグメントとするブロック共重合ポリエーテルポリエステルが好ましい。この場合、ハードセグメントを構成するポリエステル部分は、主たる酸成分テレフタル酸、主たるジオール成分がブチレングリコール成分であるポリブチレンテレフタレートである。勿論、この酸成分の一部(通常30モル%以下)は他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていてもよく、同様にグリコール成分の一部(通常30モル%以下)はブチレングリコール成分以外のジオキシ成分で置換されてもよい。
【0033】
また、ソフトセグメントを構成するポリエーテル部分は、ブチレングリコール以外のジオキシ成分で置換されたポリエーテルであってもよい。なお、ポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、その他各種の改良剤等も必要に応じて配合されていてもよい。
【0034】
このポリエステル系エラストマーの重合度は、固有粘度で0.8〜1.7dl/g、特に0.9〜1.5dl/gの範囲にあることが好ましい。この固有粘度が低すぎると、マトリックスを構成する非弾性ポリエステル系捲縮短繊維とで形成される熱固着点が破壊され易くなる。一方、この粘度が高すぎると、熱融着時に紡錘状の節部が形成されにくくなる。
【0035】
熱可塑性エラストマーの基本的特性としては、破断伸度が500%以上が好ましく、更に好ましくは800%以上である。この伸度が低すぎると、クッション体11が圧縮されその変形が熱固着点におよんだとき、この部分の結合が破壊され易くなる。
【0036】
一方、熱可塑性エラストマーの300%の伸長応力は0.8kg/mm以下が好ましく、更に好ましくは0.8kg/mmである。この応力が大きすぎると、熱固着点が、クッション体11に加わる力を分散しにくくなり、クッション体11が圧縮されたとき、その力で熱固着点が破壊されるおそれがあるか、あるいは破壊されない場合でもマトリックスを構成する非弾性ポリエステル系捲縮短繊維まで歪ませたり、捲縮をへたらせてしまったりすることがある。
【0037】
また、熱可塑性エラストマーの300%伸長回復率は60%以上が好ましく、さらに好ましくは70%以上である。この伸長回復率が低いと、クッション体11が圧縮されて熱固着点は変形しても、もとの状態に戻りにくくなるおそれがある。これらの熱可塑性エラストマーは、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維を構成するポリマーよりも低融点であり、かつ熱固着点の形成のための融着処理時に捲縮短繊維の捲縮を熱的にへたらせないものであることが必要である。この意味から、その融点は短繊維を構成するポリマーの融点より40℃以上、特に60℃以上低いことが好ましい。かかる熱可塑性エラストマーの融点は例えば120〜220℃の範囲の温度とすることができる。
【0038】
この融点差が40℃より小さいと、以下に述べる融着加工時の熱処理温度が高くなり過ぎて、非弾性ポリエステル系捲縮短繊維の捲縮のへたりを惹起し、また捲縮短繊維の力学的特性を低下させてしまう。なお、熱可塑性エラストマーについて、その融点が明確に観察されないときは、融点は軟化点をもって交替する。
【0039】
一方、上記複合繊維の熱可塑性エラストマーの相手方成分として用いられる非弾性ポリエステルとしては、既に述べたような、マトリックスを形成する捲縮短繊維を構成するポリエステル系ポリマーが採用されるが、そのなかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートがより好ましく採用される。
【0040】
上述の複合繊維は、ウェブ2の重量を基準として、20〜100%、好ましくは30〜80%の範囲で分散・混入される。
本例のウェブ2では、バインダ繊維としての熱接着性複合短繊維と、主体繊維としての非弾性捲縮短繊維が、60:40の重量比率で混綿されている。
【0041】
複合繊維の分散・混入率が低すぎると、熱固着点の数が少なくなり、クッション体11が変形し易くなったり、弾力性、反撥性および耐久性が低くなったりするおそれがある。また、配列した山間の割れも発生するおそれがある。
【0042】
本例では、非弾性ポリエステル系短繊維と、熱接着性複合短繊維とを、重量比率40:60で混綿し、ローラーカードに通して、目付20g/mのウェブ2に形成した。
【0043】
この連続ウェブ2中の長さ方向(連続している方向)に向いている繊維Cと横方向(ウェブの幅方向)に向いている繊維Dの単位体積当りの総数を調べると、C:D=2:1であることが確かめられた。
本例のウェブ2は、上述のように長さ方向に向いている繊維の方が、横方向に向いている繊維よりも相対的割合が多くなるように形成されている。すなわち、本例のウェブ2は、単位体積当りにおいて、C≧3D/2、好ましくはC≧2Dの関係を満足するように形成されている。
【0044】
ここでウェブ2の長さ方向に向いている繊維とは、図2に示すように、ウェブ2の長さ方向に対する繊維の長さ方向の角度θが、0°≦θ≦45゜の条件を満足する繊維であり、横方向(ウェブの幅方向)に向いている繊維とは、θが45°<θ≦90゜を満足する繊維である。図中、符号aはウェブを構成する繊維、符号bはウェブの長さ方向、符号cはウェブを構成する繊維方向を表している。
また、シート状繊維構造体4を構成する繊維の向きについても、シート状繊維構造体4の厚さ方向および厚さ方向に垂直な方向に沿う方向とは、これらの方向に対して±45°の範囲にあるものを意味する。
【0045】
各繊維の向いている方向は、ウェブ2の表層部、内層部でランダムな箇所を抽出し、透過型光学顕微鏡で観察することによって観察した。
なお、ウェブ2の厚みは5mm以上、好ましくは10mm以上、更に好ましくは20mm以上である。通常5〜150mm程度の厚みである。
【0046】
次に、主に長さ方向に繊維が沿うように形成されたウェブ2を、所定の密度と構造体としての所望の厚さになるようにアコーデオンの如く折り畳んでいき、複合繊維同士間、および非弾性ポリエステル系捲縮短繊維と複合繊維間に立体的な繊維交差点を形成せしめた後、ポリエステルポリマーの融点よりも低く、熱可塑性エラストマーの融点(または流動開始点)より10〜80℃高い温度で熱処理することにより、上記繊維交差点でエラストマー成分が熱融着され、可撓性熱固着点が形成される。例えば、特表2002−516932号公報に示された装置(市販のものでは、Struto社製Struto設備等)により製造することができる。
【0047】
具体的には、図3に示すように、ローラ表面速度2.5m/分の駆動ローラ61により、熱風サクション式熱処理機62(熱処理ゾーンの長さ5m、移動速度1m/分)内へ押し込むことでアコーデオン状に折り畳み、熱処理炉にて190℃で5分間処理し熱融着された厚さ25mmのシート状繊維構造体4を得た。
【0048】
このようにして形成されたシート状繊維構造体4中には、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点、および熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点とが散在した状態となっている。
シート状繊維構造体4の密度は、0.015〜0.20g/cmの範囲が、クッション性、通気性、弾力性の発現のために適当である。
【0049】
長さ方向に繊維が沿うように形成されたウェブ2を折り畳んで形成することにより、シート状繊維構造体4は、厚さ方向に向いている繊維の方が、厚さ方向と垂直な方向を向いている繊維よりも多く、主に繊維方向が厚さ方向と平行となる。つまり、本例のシート状繊維構造体4は、単位体積当りにおいて、厚さ方向に沿って配列している繊維の総数をA、厚さ方向に対して垂直な方向に沿って配列している繊維の総数をBとしたときに、A≧3B/2、好ましくはA≧2Bの関係を満足するように形成される。
【0050】
次に、シート状繊維構造体4を所定形状に裁断し、図4に示すように、縦方向に積層した。本例では、略矩形状のシート状繊維構造体4a、シート状繊維構造体4bと、クッション体11の土手部11b(図6参照)を形成するためのU字型のシート状繊維構造体4cと、両腿の間にわずかに突出させる凸部11c(図6参照)を形成するためのシート状繊維構造体4dとを裁断し、シート状繊維構造体4aとシート状繊維構造体4bとの間に、シート状繊維構造体4cとシート状繊維構造体4dを挟持させた。これらのシート状繊維構造体4a〜4dは、その厚さ方向に積層される。つまり、繊維方向が縦方向に揃うように積層される。なお、シート状繊維構造体4a〜4dは、厚さに応じてそれぞれ複数のシート状繊維構造体を積層したものであってもよい。
また、シート状繊維構造体4a〜4dが互いに当接する部分には、必要に応じホットメルトフィルム、ホットメルト不織布、ホットメルト接着剤等が配設される。
【0051】
このように積層したシート状繊維構造体4a〜4dを、図5に示すような、成形型40に配設し、圧締する。本例の成形型40は、第1型(上型)41と第2型(下型)42からなる。第1型41と第2型42を型締めすると所望のクッション11の凹凸形状を有するキャビティ40aが形成される(図6参照)。
第1型41は、主にシートフレーム15に取付ける部位を含むクッション体11の裏面側を形成するものである。第2型42は、主に着座時に着座者と当接して直接荷重が掛かる部位を含む表面側を形成するものである。
【0052】
第1型41の型面41a,第2型42の型面42aには一部又は全面に蒸気孔43が形成されている。成形型40は、鉄,鋼,アルミニウム等の金属、ガラス繊維,カーボン繊維を使用し樹脂で形成したもの、又、合成樹脂のいずれで形成されていてもよい。
【0053】
図6は、シート状繊維構造体4a〜4dを内部に配置し、成形型40を型締めした状態の断面図である。シート状繊維構造体4a〜4dは、自然状態で成形型40のキャビティ40aよりも、容積で1.2〜3.0倍程度大きく形成されている。したがって、型締め時には、シート状繊維構造体4a〜4dは、キャビティ40aの形状に圧縮された状態となる。
【0054】
図7(A),(B)に示すように、本例の成形型40は、型面41a,42aの部位によって蒸気孔43の開口(面積)率が異なるように設定されている。ここで、開口率とは、型面41a,42aの単位表面積当たりの蒸気孔43の総開口面積の比率である。本例の成形型40では、着座時に着座者と直接当接する座面部11a(凸部11cを含む)を形成する部位Aと、土手部11bのうち座席中央側の面を形成する部位Bと、土手部11bのうち座席外側の面を形成する部位Cと、クッション体11の裏面側を形成する部位Dには、それぞれ異なる開口率で蒸気孔43が形成されている。本例では、シートフレーム15に取付ける部位(裏面側)の方が、着座時に着座者が接する部分(表面側)よりも蒸気孔43の開口率が高く設定されている。
【0055】
すなわち、本例の成形型40では、部位Aには蒸気孔43が形成されておらず、開口率は0%である。これに対し、部位B,C,Dにはそれぞれ開口率10%,50%,50%で蒸気孔43が形成されている。これにより、本例の成形型40では、次述の高圧スチーム成形時に外部から内部に吹き込む蒸気量を、成形型40の部位に応じて、すなわち蒸気孔43の開口率の大きさに応じて異ならせることができる。開口率が大きいほど内部に配置されたシート状繊維構造体に吹き付けられる蒸気量が大きくなる。
【0056】
次に、図8に示すように、シート状繊維構造体4a〜4dが内部に配設された成形型40を高圧スチーム成形機50内に入れる。そして、高圧スチーム成形機50内部を大気圧よりも高い気圧である2〜8気圧程度に加圧し、1〜3分間、成形型40に120℃〜180℃程度の蒸気を吹き付ける。蒸気を吹き付けた後、冷却し、脱型してクッション体11を得る。
【0057】
本例では、5.5気圧に加圧し、約1分10秒間蒸気を吹き付けた。蒸気の温度は、熱接着性複合短繊維の融点、すなわち、熱可塑性エラストマーの融点よりも高い温度であって、非弾性捲縮短繊維の融点よりも低い温度に設定した。また、タクトタイムを3〜5分とした。
【0058】
このように蒸気を吹き付けることによって、成形型40の蒸気孔43から蒸気が通気性を有するシート状繊維構造体4a〜4d内に入り込む。シート状繊維構造体4a〜4dは、圧縮状態で成形型40内に配設されており、蒸気熱によって、熱接着性複合短繊維同士、および熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維との交差点が熱融着され、成形型40のキャビティ40aの形状に形成される。
【0059】
また、シート状繊維構造体4a〜4d間に配設されたホットメルトフィルム、ホットメルト不織布、ホットメルト接着剤等が、蒸気熱によって溶融し、シート状繊維構造体4a〜4d同士を固着する。
このように、蒸気によってシート状繊維構造体4a〜4d内の繊維同士が熱融着されると共に、ホットメルトフィルム、ホットメルト不織布、ホットメルト接着剤等がシート状繊維構造体4a〜4d同士を固着することによって、所定形状のクッション体11が形成される。なお、必要に応じ表面に布帛を入れても良いし、シート状繊維構造体4a〜4d間にスチール等のワイヤを入れても良い。
【0060】
図9は成形型40から脱型したクッション体11の部分断面図である。本例のクッション体11は、蒸気孔43の開口率が0%である成形型40の部位Aにて成形される座面部11aおよび凸部11cの表層部12aにはスチーム成形時に蒸気が直接吹き付けられることがないため、表層部12aはシート状繊維構造体4aの柔らかい風合を残した状態に形成される。これにより、ソフトな着座感を得ることができ、着座感を良好とすることができる。
【0061】
また、開口率が10%である部位Bにて成形される土手部11bの内側部分には、蒸気孔43を通してわずかに蒸気が吹き付けられる。これにより、吹き付けられた蒸気の蒸気熱によって、わずかに熱接着性複合短繊維同士、および熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維との交差点が熱融着されるので、土手部11bの内側部分の表層部12bはやや硬い触感に形成される。
【0062】
また、開口率が50%である部位C,Dにて成形される土手部11bの外側部分およびクッション体11の裏面には、蒸気孔43を通して多量の蒸気が吹き付けられる。これにより、吹き付けられた蒸気の蒸気熱によって、熱接着性複合短繊維同士、および熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維との交差点が熱融着されるので、土手部11bの外側部分およびクッション体11の裏面の表層部12cは硬めに形成される。
【0063】
なお、蒸気孔43の開口率は、上記設定に限らず、適宜に設定してもよいことは勿論である。例えば、座面部11aに対応して蒸気孔43を形成してもよいし、座面部11a内でさらに領域毎に開口率を異ならせてもよい。
【0064】
このように、成形型40の型面41a,42aの部位に応じて蒸気孔43の開口率を異ならせて設定することにより、開口率に応じて熱接着性複合短繊維の融着,溶融度合いを制御することが可能であり、これによりクッション体11の表層の硬さを調節することができる。
【0065】
すなわち、従来は、シート状繊維構造体でクッション体を形成する場合には、ホットメルトフィルム等をシート状繊維構造体の表面に含浸させて表層部を硬く形成したり、ウレタンフォームでクッション体を形成す場合には、硬さの異なるウレタンフォールを組み合わせたりして、硬さの調整を行っていたが、本例では、予め成形型40の蒸気孔43の開口率を部位によって異ならせて設定しておけばよいだけである。これにより、製造に手間が掛からず、他の材料も必要としないので好適である。
【0066】
なお、本例では、蒸気孔43の開口率を異ならせるために、単位面積当たりの同形状(同面積)の蒸気孔43の数を調整していたが、これに限らず、蒸気孔43自体の大きさを異ならせるようにしてもよい。
【0067】
本例のクッション体11は、繊維の方向が厚さ方向に向いたシート状繊維構造体4a〜4dを積層して高圧スチーム成形している。したがって、クッション体11を構成する繊維は、座席シート1に着座者が着座したときに荷重が加わる方向に沿うように配列されている。このような構成によって、本例のクッション体11は、通気性を有すると共に、応力方向に対して適度な硬さを確保することができ、また、応力の分散性、耐久性に優れたものとなる。
【0068】
また、本例のクッション体11は、成形型40によって圧縮した状態で成形されるものであり、成形型40のキャビティの形状に合わせて、3次元的な複雑な凹凸形状とすることが可能である。その際、成形型40内での圧縮度に応じて、部分的にクッション感を調整することも可能となる。
【0069】
以上はクッション体11について説明したが、クッション体21についても同様に形成することができる。クッション体21についても、着座者が着座したときに荷重が掛かる方向がクッション体21の厚さ方向である。したがって、応力方向に硬さや応力の分散性、耐久性を確保するために、シート状繊維構造体を応力の掛かる方向に積層して、成形型内で高圧スチーム形成することにより、3次元的な形状とするとよい。そして、このように形成されたクッション体11,21をシートフレーム15,25に配設し、表皮13,23で覆うことによって、座席シート1が形成される。
【0070】
なお、クッション体11を形成するときに、表皮13とシート状繊維構造体4a〜4dとをホットメルトフィルム、ホットメルト不織布、ホットメルト接着剤等を介在させて積層し、これらを成形型40に配設して、高圧スチーム成形してもよい。このようにすれば、表皮13をクッション体11と一体に形成することができる。表皮23についても同様である。
【0071】
なお、上記実施形態では、着座部10および背もたれ部20に、シート状繊維構造体4を積層して高圧スチーム形成したクッション体11,21を用いているが、これに限らず、アームレストやヘッドレスト等の着座者による荷重が掛かる部位に、シート状繊維構造体4を積層して高圧スチーム形成したクッション体を用いてもよい。
【0072】
次に本例の成形型40の改変例について説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付し重複する説明は省略する。
図10に示すように、本例の成形型40は、上記実施形態と同様の第1型41と、アルミニウム合金等の鋳物で形成された通気性のない第2型42とから構成される。すなわち、第2型42の型面42a(図11参照)には、蒸気孔43が形成されていない。
【0073】
図11は、この成形型40に、上記実施形態と同様のシート状繊維構造体4a〜4dを配置し圧締した状態を示している。
本例の成形型40でクッション体11を形成した場合には、第2型42の型面42aで成形されるクッション体11の表面側(すなわち座面部11a,凸部11c,土手部11bを形成する部位)は、直接蒸気に吹き付けられることがない。したがって、この面によって形成される部位は、その表層をシート状繊維構造体の柔らかい風合を残した状態に形成することができる。
【0074】
図12は、本例の成形型40に、表皮13とシート状繊維構造体4a〜4dを積層して配置し圧締した状態を示している。本例では、表皮13を成形型42の型面42aと当接するように配置している。このようにすれば、通気性がない表皮13を成形型40内に配置することができる。なお、上述のように、表皮13とシート状繊維構造体4a〜4dを、ホットメルトフィルム、ホットメルト不織布、ホットメルト接着剤等を介在させて積層してもよい。このようにして高圧スチーム成形することにより、表皮13をクッション体11と一体に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係る座席シートの説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るウェブの繊維方向の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るシート状繊維構造体の製造工程の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るシート状繊維構造体の積層前の説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る成形型の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る成形型にシート状繊維構造体を圧締した状態を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る成形型の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るクッション体の高圧スチーム工程の説明図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るクッション体の断面説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る成形型の説明図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る成形型にシート状繊維構造体を圧締した状態を示す説明図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る成形型にシート状繊維構造体および表皮を圧締した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 座席シート
2 ウェブ
4 シート状繊維構造体
10 着座部
11,21 クッション体
13,23 表皮
15,25 シートフレーム
20 背もたれ部
40a キャビティ
40 成形型
41 第1型
42 第2型
43 蒸気孔
50 高圧スチーム成形機
61 駆動ローラ
62 熱風サクション式熱処理機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状繊維構造体を成形してなるクッション体の製造方法であって、
所定形状のキャビティを有すると共に型面に形成された蒸気孔の開口率が前記型面の部位に応じて異なるように設定された成形型内に、所定形状に裁断したシート状繊維構造体を配置する工程と、
前記成形型に対して蒸気を吹き付けて、前記蒸気孔の開口率に応じて表層の硬度が部位によって異なるクッション体を形成する工程と、を備えたことを特徴とするクッション体の製造方法。
【請求項2】
前記シート状繊維構造体は、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点と、前記熱接着性複合短繊維よりも高い融点を有する非弾性捲縮短繊維と前記熱接着性複合短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点と、が散在し分布してなることを特徴とする請求項1に記載のクッション体の製造方法。
【請求項3】
シート状繊維構造体を成形してなるクッション体であって、
成形時に前記シート状繊維構造体に吹き付ける蒸気量を部位に応じて異ならせることにより、表層の硬度が部位によって異なるように形成されてなることを特徴とするクッション体。
【請求項4】
シート状繊維構造体を成形してなるクッション体であって、
所定形状のキャビティを有すると共に型面に形成された蒸気孔の開口率が前記型面の部位に応じて異なるように設定された成形型内に、所定形状に裁断した前記シート状繊維構造体を圧縮した状態で配置し、前記成形型に対して蒸気を吹き付けることによって、前記蒸気孔の開口率に応じて表層の硬度が部位によって異なるように形成されてなることを特徴とするクッション体。
【請求項5】
前記シート状繊維構造体は、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点と、前記熱接着性複合短繊維よりも高い融点を有する非弾性捲縮短繊維と前記熱接着性複合短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点と、が散在し分布してなることを特徴とする請求項3又は4に記載のクッション体。
【請求項6】
表皮に覆われたクッション体と、該クッション体を支持する支持体とを備えた座席シートの製造方法であって、
前記クッション体を形成するクッション体形成工程と、
前記クッション体を前記支持体に取り付ける組み付け工程と、を備え、
前記クッション体形成工程には、所定形状のキャビティを有すると共に型面に形成された蒸気孔の開口率が前記型面の部位に応じて異なるように設定された成形型内に、所定形状に裁断したシート状繊維構造体を配置するシート状繊維構造体配置工程と、
前記成形型に対して蒸気を吹き付けて、前記蒸気孔の開口率に応じて表層の硬度が部位によって異なるクッション体を形成する工程が含まれることを特徴とする座席シートの製造方法。
【請求項7】
前記シート状繊維構造体は、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点と、前記熱接着性複合短繊維よりも高い融点を有する非弾性捲縮短繊維と前記熱接着性複合短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点と、が散在し分布してなることを特徴とする請求項6に記載の座席シートの製造方法。
【請求項8】
前記シート状繊維構造体配置工程では、前記成形型内に前記表皮および所定形状に裁断した前記シート状繊維構造体を積層して配置することを特徴とする請求項6に記載の座席シートの製造方法。
【請求項9】
前記成形型の型面は、前記クッション体のうち前記支持体への取付け箇所を形成する部位よりも、着座時に着座者と当接する箇所を形成する部位の方が、前記蒸気孔の開口率が低く設定されていることを特徴とする請求項6に記載の座席シートの製造方法。
【請求項10】
シート状繊維構造体を成形し表皮で覆ってなるクッション体と、該クッション体を支持する支持体とを備えた座席シートであって、
前記クッション体は、成形時に前記シート状繊維構造体に吹き付ける蒸気量を部位に応じて異ならせることにより、表層の硬度が部位によって異なるように形成されてなることを特徴とする座席シート。
【請求項11】
シート状繊維構造体を成形し表皮で覆ってなるクッション体と、該クッション体を支持する支持体とを備えた座席シートであって、
前記クッション体は、所定形状のキャビティを有すると共に型面に形成された蒸気孔の開口率が前記型面の部位に応じて異なるように設定された成形型内に、所定形状に裁断した前記シート状繊維構造体を圧縮した状態で配置し、前記成形型に対して蒸気を吹き付けることによって、前記蒸気孔の開口率に応じて表層の硬度が部位によって異なるように形成されてなることを特徴とする座席シート。
【請求項12】
前記シート状繊維構造体は、熱接着性複合短繊維同士が交差した状態で熱融着された固着点と、前記熱接着性複合短繊維よりも高い融点を有する非弾性捲縮短繊維と前記熱接着性複合短繊維とが交差した状態で熱融着された固着点と、が散在し分布してなることを特徴とする請求項10又は11に記載の座席シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−326168(P2006−326168A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157214(P2005−157214)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)