クッション体
【課題】円筒形状の両端面が平らに形成されるようにする。
【解決手段】弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状に形成されたブロック材30の前面38には、該ブロック材30の長さ方向に離間する両側面32,32間に亘って延在する溝部42が設けられる。クッション体10は、ブロック材30を前面38が外側に臨むように丸めて円筒形状に形成することで、該円筒形状の外周面10Cの全周に亘って溝部42が延在するように形成される。溝部42は、ブロック材30を円筒形状に形成する際に軸方向へ拡開的に変形するようになるので、円筒形状に形成されたクッション体10は、一方の端面10Aおよび他方の端面10Bが互いに平行でかつ平らに形成される。
【解決手段】弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状に形成されたブロック材30の前面38には、該ブロック材30の長さ方向に離間する両側面32,32間に亘って延在する溝部42が設けられる。クッション体10は、ブロック材30を前面38が外側に臨むように丸めて円筒形状に形成することで、該円筒形状の外周面10Cの全周に亘って溝部42が延在するように形成される。溝部42は、ブロック材30を円筒形状に形成する際に軸方向へ拡開的に変形するようになるので、円筒形状に形成されたクッション体10は、一方の端面10Aおよび他方の端面10Bが互いに平行でかつ平らに形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状のブロック材を丸め、該ブロック材の側面を突き合わせて接合することで円筒形状に形成したクッション体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばマットレスは、上面を構成する板状の上クッション材と下面を構成する板状の下クッション材の間に適数のコイルスプリングを配列設置して、上クッション材からの荷重を各コイルスプリングで弾力的に受け止めるよう構成されている。しかし、前記コイルスプリングはバネ鋼等から形成された金属製であり、ウレタン製の上クッション材および下クッション材とは材質が異なるため、当該マットレスの廃棄処分時にはクッション材とコイルスプリングとを分別しなければならず、廃棄作業が面倒かつ煩わしいものとなっていた。
【0003】
そこで近年では、図11に示すように、前記金属製のコイルスプリングの代替部材として、樹脂発泡体から形成された円筒形状のクッション体80が実用化されている。このクッション体80は、図13に示すような弾力性を有する樹脂発泡体から直方体形状に形成されたブロック材82を、長手方向で離間する側面84,84を突き合わせるように環状に丸め、両側面84,84を接着剤で接合することで円筒形状に形成したものである。前記ブロック材82は、該ブロック材82の短手方向に沿う複数のスリット86が厚み方向に貫通形成されており、丸めた該ブロック材82の外周面側で該スリット86が拡開するようになっている(図11)。そしてクッション体80は、図12に示すように、円筒形状の下側の端面(ブロック材82の短手方向で離間する一方の側面)88をマットレス100の下クッション材102に当接させて載置すると共に、円筒形状の上側の端面(ブロック材82の短手方向で離間する他方の側面)90にマットレス100の上クッション材104を載置した姿勢で、当該マットレス100内に配設される。このようなクッション体80は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−520284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記クッション体80は、前記ブロック材82を丸めて円筒形状に形成することで、該ブロック材82の外周面側が内周面側と比べて大きく引き伸されるように周長差が生じる。このため、得られたクッション体80の各々の端面88,90は、外周面側の端縁が引っ張られて、半径方向の内側から外側に向けて傾斜してしまう。このように端面88,90が傾斜したクッション体80を前記マットレス100に使用する場合は、図12に示すように、クッション体80の一方の端面88と下クッション材102の間におよび他方の端面90と上クッション材104との間の各々に隙間が生じてしまう。従って、クッション体80と上クッション材104および下クッション材102との接着面積が小さくなり、マットレス100の使用途中にクッション体80と上クッション材104および下クッション材102とが剥離し易い問題がある。なお、クッション体80の上側の端面90の全面に上クッション材104を接着させた場合には、該上クッション材104が凹凸に歪んでしまうから、マットレス100のフラット状態が損なわれて使用感が低下する問題もある。また、ブロック材82を丸めて円筒形状に形成した後に、各端面88,90を平らに削る補修方法も考えられるが、弾力性を有して変形し易いブロック材82を正確かつ綺麗に加工することは非常に難しい。
【0006】
従って本発明では、円筒形状の両端面が平らに形成されたクッション体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、
弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状のブロック材を丸め、該ブロック材の離間する側面を突き合わせて接合することで円筒形状に形成したクッション体であって、
前記ブロック材の一面には、前記円筒形状とする際に互いに接合する前記側面間に亘って溝部が設けられ、該ブロック材を溝部が外側に臨むように丸めることで、円筒形状の外周面全周に亘って該溝部が延在するように形成されたことを要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、直方体形状のブロック材の一面に、円筒形状とする際に互いに接合する側面間に亘って溝部を設け、該ブロック材を溝部が外側に臨むように丸めて円筒形状の外周面全周に亘って該溝部が延在するようにクッション体を形成したので、円筒形状とした該クッション体における両端面の外周端縁が互いに近づく方向へ引っ張られ難くなり、該両端面を平行でかつ平らにすることができる。これによりクッション体は、別部材の平坦な面に対して端面を適切に当接させた状態で接着することができ、該クッション体と別部材とを剥離し難くすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
前記ブロック材には、円筒形状の外周面となる面に通じる複数の孔部が設けられ、円筒形状の外周面において前記孔部が拡開するよう構成されたことを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、ブロック材に、円筒形状の外周面となる面に通じる複数の孔部を設けたので、該ブロック材を丸めて円筒形状に形成するに際して該孔部が拡開することで外周面側が伸び易くなり、該ブロック材を容易に丸めることができる。また、通気性の向上も期待できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
前記孔部は、スリット状であり、前記円筒形状の軸方向に延在するよう形成されることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、ブロック材における円筒形状の外周面となる面に通じる孔部が、該円筒形状の軸方向に延在するスリット状に形成されているから、該ブロック材を丸めて円筒形状に形成するに際して該孔部が周方向へ拡開することで外周面側が伸び易くなり、該ブロック材を容易に丸めることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、
前記孔部は、円筒形状にしたブロック材の内外方向に連通するよう形成されることを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、ブロック材が弾性変形する際に、前記孔部を介してブロック材の内外へ空気が流通することが許容され、通気性を向上し得る。
【0012】
請求項5に記載の発明は、
前記溝部は、前記ブロック材における円筒形状の外周面となる面に凹むように形成され、
前記ブロック材は、前記溝部により薄くなった薄肉部と、該溝部を挟んで形成された厚肉部とを有することを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、ブロック材に対して端面方向から荷重が加わった際に、主に薄肉部が圧縮変形することによるクッション特性と、該薄肉部の圧縮変形後に厚肉部が圧縮変形することによるクッション特性とが発現するようになり、ブロック材の圧縮変形度合に応じてクッション特性を変化させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るクッション体によれば、円筒形状の両端面を平らに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例のクッション体を示す斜視図である。
【図2】(a)は、第1実施例のクッション体の正面図であり、(b)は、第1実施例のクッション体の平面図である。
【図3】第1実施例のクッション体の圧縮変形態様を示す説明図であって、(a)は、変形初期には主に薄肉部が圧縮変形することを示し、(b)は、薄肉部の圧縮変形後に厚肉部が圧縮変形することを示している。
【図4】円筒形状に丸める前のブロック材を示す斜視図であって、(a)は、円筒形状の外周面となる前面側から見た状態を示し、(b)は、円筒形状の内周面となる後面側から見た状態を示す。
【図5】第1実施例のクッション体を芯材として使用したマットレスの概略平面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】第2実施例のクッション体を示す正面図である。
【図8a】実験に使用された第1実施例のクッション体に相当する試料の寸法図である。
【図8b】実験に使用された第2実施例のクッション体に相当する試料の寸法図である。
【図8c】実験において従来のクッション体に相当する試料の寸法図である。
【図9】実験結果を示すグラフである。
【図10】(a)は、変更例のクッション体を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す変更例のクッション体を構成するブロック材を示す斜視図である。
【図11】従来のクッション体の一例を示す斜視図である。
【図12】図11に示す従来のクッション体を芯材として使用したマットレスの部分断面図である。
【図13】図11に示す従来のクッション体を形成するブロック材の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係るクッション体につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0016】
(第1実施例)
図1は、第1実施例のクッション体10を示す概略斜視図である。第1実施例のクッション体10は、図4(a)および図4(b)に示す直方体形状に予備成形されたブロック材30を丸めて、該ブロック材30の側面32,32を突き合わせて接合することで円筒形状に形成したものである。なお第1実施例では、特に指定がなければ、円筒形状としたブロック材30の中心を通る軸線の延在方向を「軸方向」、外周面が湾曲する方向を「周方向」、円筒形状の端面の半径方向を「径方向」と指称する。従って、円筒形状に形成する前の直方体状態のブロック材30では、クッション体10の周方向が「長さ方向」、クッション体10の軸方向が「高さ方向」、クッション体10の径方向が「厚み方向」に夫々対応している。
【0017】
第1実施例のブロック材30は、図4(a)および図4(b)に示すように、ポリウレタン等の発泡原料を発泡させて形成した弾力性を有する樹脂発泡体であり、長さLと高さHと厚さDとの寸法比(L:H:D)が7:2:1程度とされている。すなわちブロック材30は、長さ方向で離間した側面32,32と、高さ方向で離間して長さ方向へ延在し、長さ方向で丸めて円筒形状とした際に該円筒形状における一方の端面10Aとなる面(以降「下端面」という)34および他方の端面10Bとなる面(以降「上端面」という)36と、厚み方向で離間して、円筒形状とした際に該円筒形状の外周面10Cとなる面(以降「前面」という)38および内周面10Dとなる面(以降「後面」という)40とを有している。なお、ブロック材30における前記長さL、高さHおよび厚さDの寸法比は、クッション体10の外形寸法に応じて適宜変更されることは勿論である。
【0018】
前記ブロック体30を構成する樹脂発泡体としては、ポリウレタンフォーム、ポリエチレン等のポリオレフィン系フォーム、ゴムスポンジ等を用いることができる。この中でも、作り易さや取り扱い性等の観点からポリウレタンフォームが最適である。樹脂発泡体は、発泡倍率が約10〜60倍、見かけ密度が16〜100kg/m3程度に設定されて、柔らかくて復元性(塑性変形しない)がある所謂軟質フォームであって、気泡が連通する連泡構造であるのが望ましい。なお、第1実施例では、樹脂発泡体として連泡構造の軟質ウレタンフォームが用いられている。このような樹脂発泡体から形成されたブロック材30は、荷重が付与された際の圧縮変形や、長さ方向での曲げ変形および捻り変形が発現し易く、かつ荷重が付与が解除されると元の形状に弾性復帰するようになっている。
【0019】
そして、第1実施例のブロック材30は、図4(a)に示すように、前記前面38側における高さ方向の中央に、該前面38に開口する溝部42が、両側面32,32間に亘って長さ方向へ延在するように形成されている。この溝部42は、ブロック材30の前面38に凹むように形成されており、前面38から厚み方向での深さSがブロック材30の厚さDの1/2程度に設定されていると共に、前面38における高さ方向での開口幅Tが該ブロック材30の高さHの1/6程度に設定されている。従って、第1実施例のブロック材30は、該溝部42に沿って長さ方向へ延在する薄肉部44と、該溝部42を挟んで高さ方向の両側に位置して薄肉部44より厚肉に形成された厚肉部46,46とで構成されている。これにより、第1実施例のブロック材30は、前面38が外側となるように長さ方向で丸めて円筒形状に形成すると、各厚肉部46,46の前面38側が長さ方向へ伸びるよう変形することに伴い、溝部42が高さ方向へ拡開的に変形し得るようになっている(図2(a))。
【0020】
また、第1実施例のブロック材30には、図4(a)および図4(b)に示すように、厚み方向に連通し、前面38および後面40の夫々に円形に開口する複数の孔部48,50が、該ブロック材30の全体に散在して形成されている。すなわち、ブロック材30の各厚肉部46には、12個ずつの第1孔部48が、長さ方向へ等間隔で直列に形成されている。また、ブロック材30の薄肉部44には、12個の第2孔部50が、長さ方向へ等間隔で直列に形成されている。なお、各第1孔部48と各第2孔部50とは、長さ方向へ1/2ピッチ分ずらして形成されている(図4(b))。これら第1孔部48および第2孔部50は、ブロック材30を前面38が外側となるように長さ方向で丸めて円筒形状に形成するに際し、長さ方向へ拡開的または縮閉的に変形して該ブロック材30を丸め易くするためのものである。すなわち、ブロック材30を丸めて円筒形状に形成する際に、該ブロック材30が長さ方向で伸びる部分では、第1孔部48および第2孔部50は長さ方向へ拡開的に変形し、該ブロック材30が長さ方向で縮む部分では、第1孔部48および第2孔部50は長さ方向で縮閉的に変形するようになる(図2(a)、図2(b))。
【0021】
第1実施例のクッション体10は、図2(b)に示すように、前述のように形成したブロック材30を前面38が外側となるように丸め、該ブロック材30の両側面32,32を突き合わせて接着剤等で接合することで円筒形状に形成される。これにより、クッション体10の中央には、図1および図2(b)に示すように、内周面10Dにより囲まれて軸方向へ延在し、軸方向の両端で開口する空間12が画成されている。そして、円筒形状に形成されたブロック材30においては、図2(a)および図2(b)に示すように、径方向へ延在する各第1孔部48は、外周面10C側の開口48Aは長さ方向で拡開的に変形して横長楕円形状となっており、内周面10D側の開口48Bは、長さ方向で縮閉的に変形して閉じた状態となっている。一方、径方向へ延在する各第2孔部50は、溝部42側の開口50Aが、長さ方向で縮むように変形して縦長楕円形状となっており、内周面10D側の開口50Bは、長さ方向で縮閉的に変形して閉じた状態となっている。
【0022】
また溝部42は、図2(a)に示すように、ブロック材30を丸めて円筒形状に形成する際に、該ブロック材30の外周面10C側(前面38側)が周方向へ伸びると共に軸方向へ引っ張られることにより、変形前と比べて軸方向へ拡開して開口幅Tが大きくなっている。これにより、第1実施例のクッション体10は、軸方向の両端に位置する一方の端面10Aおよび他方の端面10Bが、その外周端側が引っ張られないから互いに平行でかつ平らになっている。
【0023】
そして、第1実施例のクッション体10は、溝部42により形成された前記薄肉部44が、厚肉部46より脆弱で圧縮変形し易くなっている。このため、クッション体10の他方の端面10Bに対して軸方向から荷重が加わった場合、荷重入力初期段階では、図3(a)に示すように、薄肉部44が主に圧縮変形して該荷重を支えるようになり、軟らかいクッション特性が発現するようになっている。一方、荷重がかかるにつれて、薄肉部44の圧縮変形により両厚肉部46,46が接触した後には、図3(b)に示すように、両厚肉部46,46で荷重を支えるようになるから、前記薄肉部44だけが圧縮変形する場合よりも硬いクッション特性が発現するようになっている。このように、第1実施例のクッション体10によれば、全体として圧縮荷重のバランスがよくなり、適切なクッション特性を保ちながら圧縮荷重を適宜調節できる。すなわち、第1実施例のクッション体10によれば、前述した如く、ある程度まで圧縮変形した際に応力(圧縮荷重)が大きくなって底付きし難いクッション特性を向上することができる。
【0024】
図5および図6は、前述のように構成された第1実施例のクッション体10を、マットレス100に用いる場合を示した説明図である。クッション体10は、その軸方向がマットレス100の厚み方向となる姿勢で該マットレス100内に配設され、一方の端面10Aがマットレス100の下クッション材102の上面に当接し、他方の端面10Bが該マットレス100の上クッション材104の下面に当接している。そして、クッション体10の一方の端面10Aおよび他方の端面10Bは平行でかつ平らに形成されているから、該一方の端面10Aの全面が下クッション材102の上面に接着されると共に該他方の端面10Bの全面が上クッション材104の下面に接着されている。そしてクッション体10は、マットレス100に仰臥した使用者の肩あたりに対応する部分に用いられる。なお、図5の符号106および108は、第1実施例のクッション体10とは異なるクッション特性を有するクッション体であり、当該マットレス100は部位毎にクッション特性を異ならせてある。
【0025】
前述のように構成された第1実施例のクッション体10によれば、弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状のブロック材30において、円筒形状に形成した際に該クッション体10の外周面10Cとなる前面38に、互い接合する側面32,32間に亘って延在する溝部42を設けたので、該ブロック材30を円筒形状に形成した際に一方の端面10Aおよび他方の端面10Bにおける外周端縁が互いに近づく方向へ引っ張られ難くなり、一方の端面10Aおよび他方の端面10Bを平行でかつ平らとすることができる。これによりクッション体10は、マットレス100の下クッション材102における平坦な上面に一方の端面10Aを隙間なく適切に当接させて接着することができると共に、上クッション材104における平坦な下面に他方の端面10Bを隙間なく適切に当接させて接着することができる。従って、クッション体10と上クッション材104および下クッション材102との接着面積が充分に確保され、マットレス100の使用途中にクッション体10と上クッション材104および下クッション材102とが剥離することを防止し得る。また、図5および図6に示すように、第1実施例の複数のクッション体10をマットレス100内に配列設置しても、各クッション体10の他方の端面10Bが平らになっているので、マットレス100のフラット状態が損なわれず、使用感が低下することがない。
【0026】
そして、第1実施例のクッション体10では、ブロック材30の前面38に通じる複数の第1孔部48および第2孔部50を設けてあるから、該ブロック材30を丸めて円筒形状とする際に各第1孔部48および第2孔部50が周方向に拡開的または縮閉的に変形するので、該ブロック材30を円筒形状に丸め易い。また、各第1孔部48および各第2孔部50が、ブロック材30の長さ方向へ等間隔で直列に形成されているので、該ブロック材30を丸める際には、該ブロック材30の全体が均等に変形して綺麗な円筒形状に形成し易い。
【0027】
また、第1実施例のクッション体10は、第1孔部48および第2孔部50が、円筒形状に形成されたブロック材30の外周面10Cおよび内周面10Dに開口して内外方向へ連通するように形成されているので、該ブロック材30が軸方向へ圧縮変形する際または元の形状に弾性復帰する際に各孔部48,50を介した空気の流通が許容される。従って、第1孔部48および第2孔部50を介して空気が流通するので、通気性が確保されて前記空間12に湿気や熱等が籠もることも防止し得る。なお、クッション特性とは、前記特性に加えて、ヒステリシスロス率(JIS K6400-2)の少なさで、荷重解放後の戻りが早いことも要求される。ここでヒステリシスロス率とは、変形及び回復の1サイクルにおける機械的エネルギー損失を示し、圧縮荷重たわみ試験を行って得られる力―たわみ曲線から求められる。ヒステリシスロス率の大きいものほどスローリカバリーとなって、押し込んだ後の開放時の反発力が低下して所謂粘性が強いフォームとなる。従って、第1実施例のクッション体10は、第1孔部48および第2孔部50を設けたことで通気性が良好であるから、荷重解放時にブロック材30内部への空気流入が容易となり、元の形状への弾性復帰が早くなってヒステリシスロス率が少なくなる。
【0028】
更に、第1実施例のクッション体10は、ブロック材30に薄肉部44および厚肉部46が設けられているので、ブロック材30に対して軸方向から荷重が加わった際には、薄肉部44の圧縮変形による軟らかいクッション特性および厚肉部46の圧縮変形による硬いクッション特性が得られるので、荷重の大きさに応じてクッション特性を変化させ得る。すなわち、ブロック材30を構成する樹脂発泡体が単一の発泡原料から形成されていても、異なるクッション特性を得ることができる。
【0029】
(第2実施例)
図7は、第2実施例のクッション体60を示す概略斜視図である。第2実施例のクッション体60は、図11に示す従来のクッション体80を形成する図13に示す直方体形状に予備成形されたブロック材82を基に、該ブロック材82に前記第1実施例のクッション体10を形成する図4に示すブロック材30と同様の溝部68を設けたブロック材62から円筒形状に形成されたものである。すなわち、第2実施例のクッション体60を形成するブロック材62は、円筒形状の外周面60Cとなる前面70に、該円筒形状の軸方向となる高さ方向に沿う複数のスリット状の孔部76が該前面70に通じるように形成されていると共に、円筒形状の外周面60Cとなる該前面70に、側面64,64間に亘って溝部74を設けたものである。換言すると、第2実施例のクッション体60は、第1実施例のクッション体10における第1孔部48および第2孔部80をスリットタイプに変更して、その形成位置およびサイズを変更したものと云える。このような第2実施例のクッション体60は、前記複数のスリット状の孔部76および溝部74を設けた前記ブロック材62を、該溝部74が形成された前面70が外側に臨むように丸め、両側面64,64を突き合わせて接合することで円筒形状に形成される。
【0030】
このような第2実施例のクッション体60は、ブロック材62を円筒形状にすることで、各スリット状の孔部76の外周面60C側が周方向へ拡開的に変形して開口し、第1実施例の第1孔部48および第2孔部50と同様に、ブロック材を丸め易くことに寄与している。また、第2実施例のクッション体60は、各スリット状の孔部76を設けたことで通気性が確保されるから、荷重解放時にブロック材内部への空気流入が容易となり、元の形状への弾性復帰が早くなってり、ヒステリシスロス率が少なくなる。また溝部74は、ブロック材60を丸めて円筒形状に形成する際に、該ブロック材60の外周面60C側(前面70側)が周方向へ伸びると共に軸方向へ引っ張られることにより、変形前と比べて軸方向へ拡開して開口幅Tが大きくなっている。これにより、第2実施例のクッション体60も、軸方向の両端に位置する一方の端面60Aおよび他方の端面60Bが、その外周端側が引っ張られないから互いに平行でかつ平らになっている。更に、第2実施例のクッション体60は、前記溝部74を設けたことにより、第1実施例のクッション体10と同様のクッション特性が得られる。従って、第2実施例のクッション体60は、前記第1実施例のクッション体10と同等の作用効果を発現する。なお、第2実施例のクッション体60では、ブロック材60にスリット状の孔部76を形成したので、丸形通孔形態の第1孔部48および第2孔部50を設けた第1実施例のクッション体10と比べると、同一外形サイズでは樹脂発泡体の体積を大きくできるので、該樹脂発泡体の底付きが起こり難い特徴がある。
【0031】
(実験例)
第1実施例のクッション体10(実施例1)および第2実施例のクッション体60(実施例2)に関して圧縮たわみ荷重試験を行い、クッション特性を確認した。また、比較例として、従来例(図11)として挙げたクッション体(比較例1)および直方体形状のブロック材(比較例2)についても、圧縮たわみ荷重試験を行った。実施例1、実施例2、比較例1および比較例2は、ブロック材を構成する樹脂発泡体として軟質ウレタンフォーム(発泡倍率:40倍、見掛け密度:25kg/m3)を用いている。実施例1のクッション体10は、図8aに示すように、長さ(L)270mm×高さ(H)60mm×厚さ(D)35mmの大きさで、同図に示すサイズおよび位置で溝部42、第1孔部48および第2孔部50が形成されたブロック材30を丸め、突き合わされた側面32,32を接着剤で接合することで円筒形状に形成されている。実施例2のクッション体60は、図8bに示すように、長さ(L)230mm×高さ(H)60mm×厚さ(D)30mmの大きさで、同図に示す寸法で溝部74およびスリット状の孔部76が形成されたブロック材62を丸め、突き合わされた側面64,64を接着剤で接合して円筒形状に形成されている。比較例1のクッション体は、図8cに示すブロック材82を丸め、突き合わされた側面84,84を接着剤で接合して円筒形状に形成されている。比較例1のクッション体に用いられるブロック材82は、実施例2のブロック材62と同様のスリット86が形成されている。比較例2は、長さ166mm×高さ166mm×厚さ60mmの大きさに形成されたブロック材を、曲げや孔等の加工を行うことなくそのまま用いている。
【0032】
圧縮たわみ荷重試験は、JIS K6400−2 B法に基づいて行った。実施例1、実施例2および比較例1は、円筒形状の軸方向を立てた姿勢(ブロック材の短手辺が上下に沿う姿勢)で4つのクッション体を2行2列に並べ、上側の端面中央をφ200の円板によって75%まで圧縮した。すなわち、図8a〜図8cのブロック材30(60,82)の縦寸法が初期高さになっている。比較例2は、1つのブロック材を厚み方向が上下に沿う姿勢でおき、該ブロック材の上側の端面中央をφ200の円板によって75%まで圧縮した。すなわち、比較例2は、ブロック材の厚さが初期高さになっている。なお、圧縮たわみ荷重試験では、予備圧縮を行っていない。実施例1、実施例2、比較例1および2の夫々について、たわみ量(%)と荷重(N)との関係を図9に示す。また、実施例1、実施例2、比較例1および2の夫々について、ヒステリシスロス率(圧縮・開放カーブの内側面積÷圧縮時カーブの下側とX軸で挟まれた面積)を、JIS K6400−2に基づいて算出した。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
図9に示すように、比較例2は、圧縮開始初期の荷重が高くなり、圧縮によってブロック材中のセル形状が変形することで応力が低下するようになるたわみ量が50%前後で略平らとなった後、セルが潰れて内部空間が少なくなると再び荷重が高くなり、たわみ荷重曲線はS字状になる。実施例1および実施例2は、ブロック材30,62の外周面全周に亘って溝部42,74があることで、圧縮開始初期における硬さが比較例2より低下して、たわみ量が0〜50%では圧縮たわみ曲線は直線状になっている。比較例1は、ブロック材82の外周面に溝部がないため、圧縮開始初期における硬さが比較例2より低下しているが実施例1および実施例2より上昇しており、たわみ荷重曲線は僅かにS字状になっている。従って、実施例1および実施例2は、外周面に溝部42,74を形成したことにより、圧縮開始初期(たわみ量:0〜40%)の荷重が比較例1より低く、荷重入力初期段階においては比較例1より該荷重を柔らかく受ける適切なクッション特性を有していることが分かる。また実施例2は、たわみ量が40%〜70%の間では比較例1と比べて荷重が高くなり、荷重の入力が進むと該荷重を受け止めるような適切なクッション特性を有していることも分かる。また、表1に示すように、実施例1および実施例2は、比較例1および2と比べてヒステリシスロス率が低く、第1実施例のクッション体10および第2実施例のクッション大意60は、圧縮していた荷重が解放された際に素早く元の形状まで戻る復元力に優れていることが確認できる。
【0035】
(変更例)
本願発明のクッション体10は、前記各実施例で例示した形態のものに限定されず、様々に変更することが可能である。
(1)クッション体10を構成するブロック材30は、図10(b)に示すように、下端面34および上端面36に、厚み方向へ延在するスリット状の第2の溝部52を、長さ方向へ所要間隔毎に複数設けるようにしてもよい。このような第2の溝部52を設けたブロック材30を丸めて円筒形状に形成されたクッション体10は、図10(a)に示すように、下端面34および上端面36の湾曲に伴って各第2の溝部52の外周端縁側が周方向へ拡開的に変形するようになり、更に当該ブロック材30を円筒形状に丸め易くなる。
(2)溝部42の形成位置は、ブロック材30の前面38における高さ方向の中央に限定されるものではなく、該前面38の上端面36に偏った中間位置または該前面38の下端面34に偏った中間位置に形成してもよい。
(3)溝部42は、前面38に凹状に形成された凹溝形態に限定されず、スリット状の切り込みであってもよい。このようなスリット状の溝部42が設けたブロック材30は、円筒形状に曲げる際に外周面10C側が軸方向へ引っ張られると、該溝部42が拡開的に変形するようになるので、一方の端面10Aおよび他方の端面10Bを平行かつ平らにすることが可能である。
(4)溝部42は、1本に限定されず、複数を幅方向に並べて形成してもよい。
(5)第1孔部48および第2孔部50の開口形状は、円形に限定されるものではなく、楕円形や多角形等であってもよい。また、第1孔部48および第2孔部50の配設数や配設位置も、実施例の形態に限定されるものではない。
(6)第1孔部48および第2孔部50は、前面38からブロック材30の厚み方向へ切り込んだスリットであってもよい。
(7)第1孔部48は、通気性を考慮する必要がなければ、前面38だけに開口してブロック材30の厚み方向へ貫通しない形態としても、該ブロック材30を丸め易くし得る。同様に、第2孔部50は、通気性を考慮する必要がなければ、溝部42だけに開口してブロック材30の厚み方向へ貫通しない形態としても、該ブロック材30を丸め易くし得る。なお、第1孔部48および第2孔部50の何れか一方を、ブロック材30の厚み方向へ貫通したものとしてもよい。更には、第1孔部48および第2孔部50の各々は、貫通形態と非貫通形態とを混在させてもよい。
(8)実施例では、マットレス100にクッション体10を実施する場合を例示したが、クッション体10は、ブロック材30の形状や樹脂発泡体の特性を変更することで、ソファ、座布団、枕等にも実施可能である。
【符号の説明】
【0036】
10,60 クッション体、10D,60D 外周面、30,62 ブロック材
32,64 側面、38,70 前面(外周面となる面)、42,74 溝部
44 薄肉部,46 厚肉部、48 第1孔部(孔部)、76 孔部
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状のブロック材を丸め、該ブロック材の側面を突き合わせて接合することで円筒形状に形成したクッション体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばマットレスは、上面を構成する板状の上クッション材と下面を構成する板状の下クッション材の間に適数のコイルスプリングを配列設置して、上クッション材からの荷重を各コイルスプリングで弾力的に受け止めるよう構成されている。しかし、前記コイルスプリングはバネ鋼等から形成された金属製であり、ウレタン製の上クッション材および下クッション材とは材質が異なるため、当該マットレスの廃棄処分時にはクッション材とコイルスプリングとを分別しなければならず、廃棄作業が面倒かつ煩わしいものとなっていた。
【0003】
そこで近年では、図11に示すように、前記金属製のコイルスプリングの代替部材として、樹脂発泡体から形成された円筒形状のクッション体80が実用化されている。このクッション体80は、図13に示すような弾力性を有する樹脂発泡体から直方体形状に形成されたブロック材82を、長手方向で離間する側面84,84を突き合わせるように環状に丸め、両側面84,84を接着剤で接合することで円筒形状に形成したものである。前記ブロック材82は、該ブロック材82の短手方向に沿う複数のスリット86が厚み方向に貫通形成されており、丸めた該ブロック材82の外周面側で該スリット86が拡開するようになっている(図11)。そしてクッション体80は、図12に示すように、円筒形状の下側の端面(ブロック材82の短手方向で離間する一方の側面)88をマットレス100の下クッション材102に当接させて載置すると共に、円筒形状の上側の端面(ブロック材82の短手方向で離間する他方の側面)90にマットレス100の上クッション材104を載置した姿勢で、当該マットレス100内に配設される。このようなクッション体80は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−520284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記クッション体80は、前記ブロック材82を丸めて円筒形状に形成することで、該ブロック材82の外周面側が内周面側と比べて大きく引き伸されるように周長差が生じる。このため、得られたクッション体80の各々の端面88,90は、外周面側の端縁が引っ張られて、半径方向の内側から外側に向けて傾斜してしまう。このように端面88,90が傾斜したクッション体80を前記マットレス100に使用する場合は、図12に示すように、クッション体80の一方の端面88と下クッション材102の間におよび他方の端面90と上クッション材104との間の各々に隙間が生じてしまう。従って、クッション体80と上クッション材104および下クッション材102との接着面積が小さくなり、マットレス100の使用途中にクッション体80と上クッション材104および下クッション材102とが剥離し易い問題がある。なお、クッション体80の上側の端面90の全面に上クッション材104を接着させた場合には、該上クッション材104が凹凸に歪んでしまうから、マットレス100のフラット状態が損なわれて使用感が低下する問題もある。また、ブロック材82を丸めて円筒形状に形成した後に、各端面88,90を平らに削る補修方法も考えられるが、弾力性を有して変形し易いブロック材82を正確かつ綺麗に加工することは非常に難しい。
【0006】
従って本発明では、円筒形状の両端面が平らに形成されたクッション体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、
弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状のブロック材を丸め、該ブロック材の離間する側面を突き合わせて接合することで円筒形状に形成したクッション体であって、
前記ブロック材の一面には、前記円筒形状とする際に互いに接合する前記側面間に亘って溝部が設けられ、該ブロック材を溝部が外側に臨むように丸めることで、円筒形状の外周面全周に亘って該溝部が延在するように形成されたことを要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、直方体形状のブロック材の一面に、円筒形状とする際に互いに接合する側面間に亘って溝部を設け、該ブロック材を溝部が外側に臨むように丸めて円筒形状の外周面全周に亘って該溝部が延在するようにクッション体を形成したので、円筒形状とした該クッション体における両端面の外周端縁が互いに近づく方向へ引っ張られ難くなり、該両端面を平行でかつ平らにすることができる。これによりクッション体は、別部材の平坦な面に対して端面を適切に当接させた状態で接着することができ、該クッション体と別部材とを剥離し難くすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
前記ブロック材には、円筒形状の外周面となる面に通じる複数の孔部が設けられ、円筒形状の外周面において前記孔部が拡開するよう構成されたことを要旨とする。
従って、請求項2に係る発明によれば、ブロック材に、円筒形状の外周面となる面に通じる複数の孔部を設けたので、該ブロック材を丸めて円筒形状に形成するに際して該孔部が拡開することで外周面側が伸び易くなり、該ブロック材を容易に丸めることができる。また、通気性の向上も期待できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
前記孔部は、スリット状であり、前記円筒形状の軸方向に延在するよう形成されることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、ブロック材における円筒形状の外周面となる面に通じる孔部が、該円筒形状の軸方向に延在するスリット状に形成されているから、該ブロック材を丸めて円筒形状に形成するに際して該孔部が周方向へ拡開することで外周面側が伸び易くなり、該ブロック材を容易に丸めることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、
前記孔部は、円筒形状にしたブロック材の内外方向に連通するよう形成されることを要旨とする。
従って、請求項4に係る発明によれば、ブロック材が弾性変形する際に、前記孔部を介してブロック材の内外へ空気が流通することが許容され、通気性を向上し得る。
【0012】
請求項5に記載の発明は、
前記溝部は、前記ブロック材における円筒形状の外周面となる面に凹むように形成され、
前記ブロック材は、前記溝部により薄くなった薄肉部と、該溝部を挟んで形成された厚肉部とを有することを要旨とする。
従って、請求項5に係る発明によれば、ブロック材に対して端面方向から荷重が加わった際に、主に薄肉部が圧縮変形することによるクッション特性と、該薄肉部の圧縮変形後に厚肉部が圧縮変形することによるクッション特性とが発現するようになり、ブロック材の圧縮変形度合に応じてクッション特性を変化させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るクッション体によれば、円筒形状の両端面を平らに形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施例のクッション体を示す斜視図である。
【図2】(a)は、第1実施例のクッション体の正面図であり、(b)は、第1実施例のクッション体の平面図である。
【図3】第1実施例のクッション体の圧縮変形態様を示す説明図であって、(a)は、変形初期には主に薄肉部が圧縮変形することを示し、(b)は、薄肉部の圧縮変形後に厚肉部が圧縮変形することを示している。
【図4】円筒形状に丸める前のブロック材を示す斜視図であって、(a)は、円筒形状の外周面となる前面側から見た状態を示し、(b)は、円筒形状の内周面となる後面側から見た状態を示す。
【図5】第1実施例のクッション体を芯材として使用したマットレスの概略平面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】第2実施例のクッション体を示す正面図である。
【図8a】実験に使用された第1実施例のクッション体に相当する試料の寸法図である。
【図8b】実験に使用された第2実施例のクッション体に相当する試料の寸法図である。
【図8c】実験において従来のクッション体に相当する試料の寸法図である。
【図9】実験結果を示すグラフである。
【図10】(a)は、変更例のクッション体を示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す変更例のクッション体を構成するブロック材を示す斜視図である。
【図11】従来のクッション体の一例を示す斜視図である。
【図12】図11に示す従来のクッション体を芯材として使用したマットレスの部分断面図である。
【図13】図11に示す従来のクッション体を形成するブロック材の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係るクッション体につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0016】
(第1実施例)
図1は、第1実施例のクッション体10を示す概略斜視図である。第1実施例のクッション体10は、図4(a)および図4(b)に示す直方体形状に予備成形されたブロック材30を丸めて、該ブロック材30の側面32,32を突き合わせて接合することで円筒形状に形成したものである。なお第1実施例では、特に指定がなければ、円筒形状としたブロック材30の中心を通る軸線の延在方向を「軸方向」、外周面が湾曲する方向を「周方向」、円筒形状の端面の半径方向を「径方向」と指称する。従って、円筒形状に形成する前の直方体状態のブロック材30では、クッション体10の周方向が「長さ方向」、クッション体10の軸方向が「高さ方向」、クッション体10の径方向が「厚み方向」に夫々対応している。
【0017】
第1実施例のブロック材30は、図4(a)および図4(b)に示すように、ポリウレタン等の発泡原料を発泡させて形成した弾力性を有する樹脂発泡体であり、長さLと高さHと厚さDとの寸法比(L:H:D)が7:2:1程度とされている。すなわちブロック材30は、長さ方向で離間した側面32,32と、高さ方向で離間して長さ方向へ延在し、長さ方向で丸めて円筒形状とした際に該円筒形状における一方の端面10Aとなる面(以降「下端面」という)34および他方の端面10Bとなる面(以降「上端面」という)36と、厚み方向で離間して、円筒形状とした際に該円筒形状の外周面10Cとなる面(以降「前面」という)38および内周面10Dとなる面(以降「後面」という)40とを有している。なお、ブロック材30における前記長さL、高さHおよび厚さDの寸法比は、クッション体10の外形寸法に応じて適宜変更されることは勿論である。
【0018】
前記ブロック体30を構成する樹脂発泡体としては、ポリウレタンフォーム、ポリエチレン等のポリオレフィン系フォーム、ゴムスポンジ等を用いることができる。この中でも、作り易さや取り扱い性等の観点からポリウレタンフォームが最適である。樹脂発泡体は、発泡倍率が約10〜60倍、見かけ密度が16〜100kg/m3程度に設定されて、柔らかくて復元性(塑性変形しない)がある所謂軟質フォームであって、気泡が連通する連泡構造であるのが望ましい。なお、第1実施例では、樹脂発泡体として連泡構造の軟質ウレタンフォームが用いられている。このような樹脂発泡体から形成されたブロック材30は、荷重が付与された際の圧縮変形や、長さ方向での曲げ変形および捻り変形が発現し易く、かつ荷重が付与が解除されると元の形状に弾性復帰するようになっている。
【0019】
そして、第1実施例のブロック材30は、図4(a)に示すように、前記前面38側における高さ方向の中央に、該前面38に開口する溝部42が、両側面32,32間に亘って長さ方向へ延在するように形成されている。この溝部42は、ブロック材30の前面38に凹むように形成されており、前面38から厚み方向での深さSがブロック材30の厚さDの1/2程度に設定されていると共に、前面38における高さ方向での開口幅Tが該ブロック材30の高さHの1/6程度に設定されている。従って、第1実施例のブロック材30は、該溝部42に沿って長さ方向へ延在する薄肉部44と、該溝部42を挟んで高さ方向の両側に位置して薄肉部44より厚肉に形成された厚肉部46,46とで構成されている。これにより、第1実施例のブロック材30は、前面38が外側となるように長さ方向で丸めて円筒形状に形成すると、各厚肉部46,46の前面38側が長さ方向へ伸びるよう変形することに伴い、溝部42が高さ方向へ拡開的に変形し得るようになっている(図2(a))。
【0020】
また、第1実施例のブロック材30には、図4(a)および図4(b)に示すように、厚み方向に連通し、前面38および後面40の夫々に円形に開口する複数の孔部48,50が、該ブロック材30の全体に散在して形成されている。すなわち、ブロック材30の各厚肉部46には、12個ずつの第1孔部48が、長さ方向へ等間隔で直列に形成されている。また、ブロック材30の薄肉部44には、12個の第2孔部50が、長さ方向へ等間隔で直列に形成されている。なお、各第1孔部48と各第2孔部50とは、長さ方向へ1/2ピッチ分ずらして形成されている(図4(b))。これら第1孔部48および第2孔部50は、ブロック材30を前面38が外側となるように長さ方向で丸めて円筒形状に形成するに際し、長さ方向へ拡開的または縮閉的に変形して該ブロック材30を丸め易くするためのものである。すなわち、ブロック材30を丸めて円筒形状に形成する際に、該ブロック材30が長さ方向で伸びる部分では、第1孔部48および第2孔部50は長さ方向へ拡開的に変形し、該ブロック材30が長さ方向で縮む部分では、第1孔部48および第2孔部50は長さ方向で縮閉的に変形するようになる(図2(a)、図2(b))。
【0021】
第1実施例のクッション体10は、図2(b)に示すように、前述のように形成したブロック材30を前面38が外側となるように丸め、該ブロック材30の両側面32,32を突き合わせて接着剤等で接合することで円筒形状に形成される。これにより、クッション体10の中央には、図1および図2(b)に示すように、内周面10Dにより囲まれて軸方向へ延在し、軸方向の両端で開口する空間12が画成されている。そして、円筒形状に形成されたブロック材30においては、図2(a)および図2(b)に示すように、径方向へ延在する各第1孔部48は、外周面10C側の開口48Aは長さ方向で拡開的に変形して横長楕円形状となっており、内周面10D側の開口48Bは、長さ方向で縮閉的に変形して閉じた状態となっている。一方、径方向へ延在する各第2孔部50は、溝部42側の開口50Aが、長さ方向で縮むように変形して縦長楕円形状となっており、内周面10D側の開口50Bは、長さ方向で縮閉的に変形して閉じた状態となっている。
【0022】
また溝部42は、図2(a)に示すように、ブロック材30を丸めて円筒形状に形成する際に、該ブロック材30の外周面10C側(前面38側)が周方向へ伸びると共に軸方向へ引っ張られることにより、変形前と比べて軸方向へ拡開して開口幅Tが大きくなっている。これにより、第1実施例のクッション体10は、軸方向の両端に位置する一方の端面10Aおよび他方の端面10Bが、その外周端側が引っ張られないから互いに平行でかつ平らになっている。
【0023】
そして、第1実施例のクッション体10は、溝部42により形成された前記薄肉部44が、厚肉部46より脆弱で圧縮変形し易くなっている。このため、クッション体10の他方の端面10Bに対して軸方向から荷重が加わった場合、荷重入力初期段階では、図3(a)に示すように、薄肉部44が主に圧縮変形して該荷重を支えるようになり、軟らかいクッション特性が発現するようになっている。一方、荷重がかかるにつれて、薄肉部44の圧縮変形により両厚肉部46,46が接触した後には、図3(b)に示すように、両厚肉部46,46で荷重を支えるようになるから、前記薄肉部44だけが圧縮変形する場合よりも硬いクッション特性が発現するようになっている。このように、第1実施例のクッション体10によれば、全体として圧縮荷重のバランスがよくなり、適切なクッション特性を保ちながら圧縮荷重を適宜調節できる。すなわち、第1実施例のクッション体10によれば、前述した如く、ある程度まで圧縮変形した際に応力(圧縮荷重)が大きくなって底付きし難いクッション特性を向上することができる。
【0024】
図5および図6は、前述のように構成された第1実施例のクッション体10を、マットレス100に用いる場合を示した説明図である。クッション体10は、その軸方向がマットレス100の厚み方向となる姿勢で該マットレス100内に配設され、一方の端面10Aがマットレス100の下クッション材102の上面に当接し、他方の端面10Bが該マットレス100の上クッション材104の下面に当接している。そして、クッション体10の一方の端面10Aおよび他方の端面10Bは平行でかつ平らに形成されているから、該一方の端面10Aの全面が下クッション材102の上面に接着されると共に該他方の端面10Bの全面が上クッション材104の下面に接着されている。そしてクッション体10は、マットレス100に仰臥した使用者の肩あたりに対応する部分に用いられる。なお、図5の符号106および108は、第1実施例のクッション体10とは異なるクッション特性を有するクッション体であり、当該マットレス100は部位毎にクッション特性を異ならせてある。
【0025】
前述のように構成された第1実施例のクッション体10によれば、弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状のブロック材30において、円筒形状に形成した際に該クッション体10の外周面10Cとなる前面38に、互い接合する側面32,32間に亘って延在する溝部42を設けたので、該ブロック材30を円筒形状に形成した際に一方の端面10Aおよび他方の端面10Bにおける外周端縁が互いに近づく方向へ引っ張られ難くなり、一方の端面10Aおよび他方の端面10Bを平行でかつ平らとすることができる。これによりクッション体10は、マットレス100の下クッション材102における平坦な上面に一方の端面10Aを隙間なく適切に当接させて接着することができると共に、上クッション材104における平坦な下面に他方の端面10Bを隙間なく適切に当接させて接着することができる。従って、クッション体10と上クッション材104および下クッション材102との接着面積が充分に確保され、マットレス100の使用途中にクッション体10と上クッション材104および下クッション材102とが剥離することを防止し得る。また、図5および図6に示すように、第1実施例の複数のクッション体10をマットレス100内に配列設置しても、各クッション体10の他方の端面10Bが平らになっているので、マットレス100のフラット状態が損なわれず、使用感が低下することがない。
【0026】
そして、第1実施例のクッション体10では、ブロック材30の前面38に通じる複数の第1孔部48および第2孔部50を設けてあるから、該ブロック材30を丸めて円筒形状とする際に各第1孔部48および第2孔部50が周方向に拡開的または縮閉的に変形するので、該ブロック材30を円筒形状に丸め易い。また、各第1孔部48および各第2孔部50が、ブロック材30の長さ方向へ等間隔で直列に形成されているので、該ブロック材30を丸める際には、該ブロック材30の全体が均等に変形して綺麗な円筒形状に形成し易い。
【0027】
また、第1実施例のクッション体10は、第1孔部48および第2孔部50が、円筒形状に形成されたブロック材30の外周面10Cおよび内周面10Dに開口して内外方向へ連通するように形成されているので、該ブロック材30が軸方向へ圧縮変形する際または元の形状に弾性復帰する際に各孔部48,50を介した空気の流通が許容される。従って、第1孔部48および第2孔部50を介して空気が流通するので、通気性が確保されて前記空間12に湿気や熱等が籠もることも防止し得る。なお、クッション特性とは、前記特性に加えて、ヒステリシスロス率(JIS K6400-2)の少なさで、荷重解放後の戻りが早いことも要求される。ここでヒステリシスロス率とは、変形及び回復の1サイクルにおける機械的エネルギー損失を示し、圧縮荷重たわみ試験を行って得られる力―たわみ曲線から求められる。ヒステリシスロス率の大きいものほどスローリカバリーとなって、押し込んだ後の開放時の反発力が低下して所謂粘性が強いフォームとなる。従って、第1実施例のクッション体10は、第1孔部48および第2孔部50を設けたことで通気性が良好であるから、荷重解放時にブロック材30内部への空気流入が容易となり、元の形状への弾性復帰が早くなってヒステリシスロス率が少なくなる。
【0028】
更に、第1実施例のクッション体10は、ブロック材30に薄肉部44および厚肉部46が設けられているので、ブロック材30に対して軸方向から荷重が加わった際には、薄肉部44の圧縮変形による軟らかいクッション特性および厚肉部46の圧縮変形による硬いクッション特性が得られるので、荷重の大きさに応じてクッション特性を変化させ得る。すなわち、ブロック材30を構成する樹脂発泡体が単一の発泡原料から形成されていても、異なるクッション特性を得ることができる。
【0029】
(第2実施例)
図7は、第2実施例のクッション体60を示す概略斜視図である。第2実施例のクッション体60は、図11に示す従来のクッション体80を形成する図13に示す直方体形状に予備成形されたブロック材82を基に、該ブロック材82に前記第1実施例のクッション体10を形成する図4に示すブロック材30と同様の溝部68を設けたブロック材62から円筒形状に形成されたものである。すなわち、第2実施例のクッション体60を形成するブロック材62は、円筒形状の外周面60Cとなる前面70に、該円筒形状の軸方向となる高さ方向に沿う複数のスリット状の孔部76が該前面70に通じるように形成されていると共に、円筒形状の外周面60Cとなる該前面70に、側面64,64間に亘って溝部74を設けたものである。換言すると、第2実施例のクッション体60は、第1実施例のクッション体10における第1孔部48および第2孔部80をスリットタイプに変更して、その形成位置およびサイズを変更したものと云える。このような第2実施例のクッション体60は、前記複数のスリット状の孔部76および溝部74を設けた前記ブロック材62を、該溝部74が形成された前面70が外側に臨むように丸め、両側面64,64を突き合わせて接合することで円筒形状に形成される。
【0030】
このような第2実施例のクッション体60は、ブロック材62を円筒形状にすることで、各スリット状の孔部76の外周面60C側が周方向へ拡開的に変形して開口し、第1実施例の第1孔部48および第2孔部50と同様に、ブロック材を丸め易くことに寄与している。また、第2実施例のクッション体60は、各スリット状の孔部76を設けたことで通気性が確保されるから、荷重解放時にブロック材内部への空気流入が容易となり、元の形状への弾性復帰が早くなってり、ヒステリシスロス率が少なくなる。また溝部74は、ブロック材60を丸めて円筒形状に形成する際に、該ブロック材60の外周面60C側(前面70側)が周方向へ伸びると共に軸方向へ引っ張られることにより、変形前と比べて軸方向へ拡開して開口幅Tが大きくなっている。これにより、第2実施例のクッション体60も、軸方向の両端に位置する一方の端面60Aおよび他方の端面60Bが、その外周端側が引っ張られないから互いに平行でかつ平らになっている。更に、第2実施例のクッション体60は、前記溝部74を設けたことにより、第1実施例のクッション体10と同様のクッション特性が得られる。従って、第2実施例のクッション体60は、前記第1実施例のクッション体10と同等の作用効果を発現する。なお、第2実施例のクッション体60では、ブロック材60にスリット状の孔部76を形成したので、丸形通孔形態の第1孔部48および第2孔部50を設けた第1実施例のクッション体10と比べると、同一外形サイズでは樹脂発泡体の体積を大きくできるので、該樹脂発泡体の底付きが起こり難い特徴がある。
【0031】
(実験例)
第1実施例のクッション体10(実施例1)および第2実施例のクッション体60(実施例2)に関して圧縮たわみ荷重試験を行い、クッション特性を確認した。また、比較例として、従来例(図11)として挙げたクッション体(比較例1)および直方体形状のブロック材(比較例2)についても、圧縮たわみ荷重試験を行った。実施例1、実施例2、比較例1および比較例2は、ブロック材を構成する樹脂発泡体として軟質ウレタンフォーム(発泡倍率:40倍、見掛け密度:25kg/m3)を用いている。実施例1のクッション体10は、図8aに示すように、長さ(L)270mm×高さ(H)60mm×厚さ(D)35mmの大きさで、同図に示すサイズおよび位置で溝部42、第1孔部48および第2孔部50が形成されたブロック材30を丸め、突き合わされた側面32,32を接着剤で接合することで円筒形状に形成されている。実施例2のクッション体60は、図8bに示すように、長さ(L)230mm×高さ(H)60mm×厚さ(D)30mmの大きさで、同図に示す寸法で溝部74およびスリット状の孔部76が形成されたブロック材62を丸め、突き合わされた側面64,64を接着剤で接合して円筒形状に形成されている。比較例1のクッション体は、図8cに示すブロック材82を丸め、突き合わされた側面84,84を接着剤で接合して円筒形状に形成されている。比較例1のクッション体に用いられるブロック材82は、実施例2のブロック材62と同様のスリット86が形成されている。比較例2は、長さ166mm×高さ166mm×厚さ60mmの大きさに形成されたブロック材を、曲げや孔等の加工を行うことなくそのまま用いている。
【0032】
圧縮たわみ荷重試験は、JIS K6400−2 B法に基づいて行った。実施例1、実施例2および比較例1は、円筒形状の軸方向を立てた姿勢(ブロック材の短手辺が上下に沿う姿勢)で4つのクッション体を2行2列に並べ、上側の端面中央をφ200の円板によって75%まで圧縮した。すなわち、図8a〜図8cのブロック材30(60,82)の縦寸法が初期高さになっている。比較例2は、1つのブロック材を厚み方向が上下に沿う姿勢でおき、該ブロック材の上側の端面中央をφ200の円板によって75%まで圧縮した。すなわち、比較例2は、ブロック材の厚さが初期高さになっている。なお、圧縮たわみ荷重試験では、予備圧縮を行っていない。実施例1、実施例2、比較例1および2の夫々について、たわみ量(%)と荷重(N)との関係を図9に示す。また、実施例1、実施例2、比較例1および2の夫々について、ヒステリシスロス率(圧縮・開放カーブの内側面積÷圧縮時カーブの下側とX軸で挟まれた面積)を、JIS K6400−2に基づいて算出した。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
図9に示すように、比較例2は、圧縮開始初期の荷重が高くなり、圧縮によってブロック材中のセル形状が変形することで応力が低下するようになるたわみ量が50%前後で略平らとなった後、セルが潰れて内部空間が少なくなると再び荷重が高くなり、たわみ荷重曲線はS字状になる。実施例1および実施例2は、ブロック材30,62の外周面全周に亘って溝部42,74があることで、圧縮開始初期における硬さが比較例2より低下して、たわみ量が0〜50%では圧縮たわみ曲線は直線状になっている。比較例1は、ブロック材82の外周面に溝部がないため、圧縮開始初期における硬さが比較例2より低下しているが実施例1および実施例2より上昇しており、たわみ荷重曲線は僅かにS字状になっている。従って、実施例1および実施例2は、外周面に溝部42,74を形成したことにより、圧縮開始初期(たわみ量:0〜40%)の荷重が比較例1より低く、荷重入力初期段階においては比較例1より該荷重を柔らかく受ける適切なクッション特性を有していることが分かる。また実施例2は、たわみ量が40%〜70%の間では比較例1と比べて荷重が高くなり、荷重の入力が進むと該荷重を受け止めるような適切なクッション特性を有していることも分かる。また、表1に示すように、実施例1および実施例2は、比較例1および2と比べてヒステリシスロス率が低く、第1実施例のクッション体10および第2実施例のクッション大意60は、圧縮していた荷重が解放された際に素早く元の形状まで戻る復元力に優れていることが確認できる。
【0035】
(変更例)
本願発明のクッション体10は、前記各実施例で例示した形態のものに限定されず、様々に変更することが可能である。
(1)クッション体10を構成するブロック材30は、図10(b)に示すように、下端面34および上端面36に、厚み方向へ延在するスリット状の第2の溝部52を、長さ方向へ所要間隔毎に複数設けるようにしてもよい。このような第2の溝部52を設けたブロック材30を丸めて円筒形状に形成されたクッション体10は、図10(a)に示すように、下端面34および上端面36の湾曲に伴って各第2の溝部52の外周端縁側が周方向へ拡開的に変形するようになり、更に当該ブロック材30を円筒形状に丸め易くなる。
(2)溝部42の形成位置は、ブロック材30の前面38における高さ方向の中央に限定されるものではなく、該前面38の上端面36に偏った中間位置または該前面38の下端面34に偏った中間位置に形成してもよい。
(3)溝部42は、前面38に凹状に形成された凹溝形態に限定されず、スリット状の切り込みであってもよい。このようなスリット状の溝部42が設けたブロック材30は、円筒形状に曲げる際に外周面10C側が軸方向へ引っ張られると、該溝部42が拡開的に変形するようになるので、一方の端面10Aおよび他方の端面10Bを平行かつ平らにすることが可能である。
(4)溝部42は、1本に限定されず、複数を幅方向に並べて形成してもよい。
(5)第1孔部48および第2孔部50の開口形状は、円形に限定されるものではなく、楕円形や多角形等であってもよい。また、第1孔部48および第2孔部50の配設数や配設位置も、実施例の形態に限定されるものではない。
(6)第1孔部48および第2孔部50は、前面38からブロック材30の厚み方向へ切り込んだスリットであってもよい。
(7)第1孔部48は、通気性を考慮する必要がなければ、前面38だけに開口してブロック材30の厚み方向へ貫通しない形態としても、該ブロック材30を丸め易くし得る。同様に、第2孔部50は、通気性を考慮する必要がなければ、溝部42だけに開口してブロック材30の厚み方向へ貫通しない形態としても、該ブロック材30を丸め易くし得る。なお、第1孔部48および第2孔部50の何れか一方を、ブロック材30の厚み方向へ貫通したものとしてもよい。更には、第1孔部48および第2孔部50の各々は、貫通形態と非貫通形態とを混在させてもよい。
(8)実施例では、マットレス100にクッション体10を実施する場合を例示したが、クッション体10は、ブロック材30の形状や樹脂発泡体の特性を変更することで、ソファ、座布団、枕等にも実施可能である。
【符号の説明】
【0036】
10,60 クッション体、10D,60D 外周面、30,62 ブロック材
32,64 側面、38,70 前面(外周面となる面)、42,74 溝部
44 薄肉部,46 厚肉部、48 第1孔部(孔部)、76 孔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状のブロック材を丸め、該ブロック材の離間する側面を突き合わせて接合することで円筒形状に形成したクッション体であって、
前記ブロック材の一面には、前記円筒形状とする際に互いに接合する前記側面間に亘って溝部が設けられ、該ブロック材を溝部が外側に臨むように丸めることで、円筒形状の外周面全周に亘って該溝部が延在するように形成された
ことを特徴とするクッション体。
【請求項2】
前記ブロック材には、円筒形状の外周面となる面に通じる複数の孔部が設けられ、円筒形状の外周面において前記孔部が拡開するよう構成された請求項1記載のクッション体。
【請求項3】
前記孔部は、スリット状であり、前記円筒形状の軸方向に延在するよう形成される請求項2記載のクッション体。
【請求項4】
前記孔部は、円筒形状にしたブロック材の内外方向に連通するよう形成される請求項2または3記載のクッション体。
【請求項5】
前記溝部は、前記ブロック材における円筒形状の外周面となる面に凹むように形成され、
前記ブロック材は、前記溝部により薄くなった薄肉部と、該溝部を挟んで形成された厚肉部とを有する請求項1〜4の何れか一項に記載のクッション体。
【請求項1】
弾力性を有する樹脂発泡体からなる直方体形状のブロック材を丸め、該ブロック材の離間する側面を突き合わせて接合することで円筒形状に形成したクッション体であって、
前記ブロック材の一面には、前記円筒形状とする際に互いに接合する前記側面間に亘って溝部が設けられ、該ブロック材を溝部が外側に臨むように丸めることで、円筒形状の外周面全周に亘って該溝部が延在するように形成された
ことを特徴とするクッション体。
【請求項2】
前記ブロック材には、円筒形状の外周面となる面に通じる複数の孔部が設けられ、円筒形状の外周面において前記孔部が拡開するよう構成された請求項1記載のクッション体。
【請求項3】
前記孔部は、スリット状であり、前記円筒形状の軸方向に延在するよう形成される請求項2記載のクッション体。
【請求項4】
前記孔部は、円筒形状にしたブロック材の内外方向に連通するよう形成される請求項2または3記載のクッション体。
【請求項5】
前記溝部は、前記ブロック材における円筒形状の外周面となる面に凹むように形成され、
前記ブロック材は、前記溝部により薄くなった薄肉部と、該溝部を挟んで形成された厚肉部とを有する請求項1〜4の何れか一項に記載のクッション体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−110436(P2012−110436A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260487(P2010−260487)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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