説明

クッション

【課題】クッション機能の発揮を要望しない場合でも、クッションを取り外す必要がない保護具を提供する。
【解決手段】膨張可能な膨張部102と、膨張部102を支持する支持部104とを備えたクッションであって、膨張部102の端部と支持部104とが接合した接合部分を有する。また、膨張部102の膨張に伴って膨張部102の端部とは異なる他の端部がせり上がるように構成される。支持部104は、支持部104を衣服に係止する係止部を有し、係止部は切れ込みと弾性体とを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張可能な膨張部と、膨張部を支持する支持部とを備えたクッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳幼児の身体の発達は、生後6カ月〜1年半の間に、寝返りからつかまり立ち、更に二足歩行へ移行する。この時期は乳幼児の身体のバランスが不安定で、後方への転倒が非常に多い。後頭部の打撲が頻発し、嘔吐や意識の混濁なども起こり得る。そこで、転倒してもその衝撃を直接頭に受けない乳幼児用の保護道具が各種発明されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、乳幼児に背負わせる乳幼児用の後頭部保護クッションが開示されている。特許文献1で開示の後頭部保護クッションによれば、乳幼児にクッションを背負わせることで、後方への転倒時に、乳幼児の後頭部を衝撃から守ることができる。また、特許文献2には、乳幼児の側頭部及び後頭部を覆う乳幼児頭部保護具が開示されている。乳幼児頭部保護具は気体密閉袋を有する。気体密閉袋で乳幼児を包み、空気の量を調整することで乳幼児の上半身に乳幼児頭部保護具を固定することができる。特許文献2で開示の乳幼児頭部保護具によれば、転倒時に保護具がずれることなく、乳幼児の後方転倒時の後頭部及び側頭部への衝撃を和らげ、頭部を保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−204736号公報
【特許文献2】特開2007−284848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の保護具によれば、クッション機能の発揮を要望しない場合は、保護具を取り外す必要があった。クッション機能の発揮の要否に応じて、乳幼児に保護具を装着したり乳幼児から保護具を取り外したりすることは、保育者には大変煩雑である。
【0006】
本発明は、膨張可能な膨張部と、膨張部を支持する支持部とを備えたクッションであって、膨張部に覆われた身体の一部を保護するクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るクッションの特徴的な構成は、膨張可能な膨張部と、膨張部を支持する支持部とを備えたクッションであって、
膨張部の端部と支持部とが接合した接合部分を有する。また、本発明に係るクッションの好適な態様によれば、膨張部の膨張に伴って膨張部の端部とは異なる他の端部がせり上がるように構成される。
【0008】
背景技術の項目で説明したように、従来のクッションによれば、クッション機能の発揮を要望しない場合は、クッションを取り外す必要があった。一方、本発明のクッションによれば、膨張部の端部と支持部とが接合した接合部分を有するため、膨張部が膨張すると膨張部の端部とは異なる他の端部がせり上がり、膨張部が萎むと膨張部の他の端部が垂れ下がる。従って、クッション機能の発揮を要望する場合は、クッションを装着し膨張部を膨張させることによって、接合部分を支点に膨張部の他の端部が身体の一部に向かってせり上がらせ、身体の一部を保護することができる。また、クッション機能の発揮を要望しない場合は、膨張部を萎ませることによって、クッションを装着した者の活動の自由度を向上させることができる。その結果、クッション機能の発揮を要望しない場合でも、クッションを取り外す必要がない。
【0009】
本発明に係るクッションの好適な態様によれば、接合部分は支持部の方に凸状に膨らんでいる。従って、膨張部が膨張することにより、クッションが装着された身体の一部に沿って支持部が湾曲する。その結果、膨張時に、クッションが装着された身体の一部に対する締め付けを防ぐことができる。
【0010】
本発明に係るクッションの好適な態様によれば、支持部は、支持部を衣服に係止する係止部を有し、係止部は切り込みと弾性体とを含む。従って、衣服にクッションを直接縫い付けたり、衣服にマジックテープ(登録商標)やスナップ等を取り付けたりすることが不要である。
【0011】
本発明に係るクッションの好適な態様によれば、膨張部は、衣服の襟に内蔵されている。従って、クッションの常時装着が可能となり、クッションの取り外しが不要である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るクッションを示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るクッションの膨張手順を示すフローチャートである。
【図3】クッションを有する衣服を着用した人形を示す写真である。
【図4】本発明の実施形態2に係るクッションを示す模式図である。
【図5】本発明の実施形態2に係るクッションの一部を示す写真である。
【図6】本発明の実施例2に係るクッションを衣服に係止する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から図6を参照して、本発明のクッション及びクッションの装着手順に係る実施形態を説明する。本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図せず、当該構成と均等な構成も含む。
【0014】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係るクッション100を示す模式図である。図1(a)は、クッション100の全体を示す模式図である。図1(b)は、クッション100を有する衣服Aを着用した被験者Bの背後を示す模式図である。図1(c)は、被験者Bの左側を示す模式図である。クッション100は、膨張可能な膨張部102と膨張部102を支持する支持部104とを備え、被験者Bの肩部に装着される。その結果、被験者Bの後頭部が膨張部102に覆われ、被験者Bの後頭部を保護することができる。さらにクッション100は、膨張部102の端部と支持部104とが接合した接合部分106を有する。
【0015】
膨張部102は、プラスチック袋である。膨張部102は、空気入出口108を有する。空気入出口108から空気を注入したり排出したりする。空気入出口108には、逆止弁が付いている。空気を空気入出口108から注入することにより、膨張部102を膨張させることができる。空気入出口108には、逆止弁が付いているため、膨張部102から空気が漏れることを防ぎ得る。
【0016】
支持部104は、衣服Aと膨張部102とを支持する。支持部104は、クッション100を装着する身体の一部(被験者Bの肩部)に沿って湾曲する。支持部104は、厚紙である。
【0017】
接合部分106は支持部104の方に凸状に膨らんでいる。従って、膨張部102が膨張することにより、クッション100が装着された身体の一部(被験者Bの肩部)に沿って支持部104が湾曲する。その結果、膨張時に、クッション100が装着された身体の一部(被験者Bの肩部)に対する締め付けを防ぐことができる。接合部分106は、第1端106aと第2端106bとを有する。接合部分106のうち、第1端106aと第2端106bとの間の部分は支持部104の方に凸状に膨らんでいる。
【0018】
膨張部102が膨張することにより、クッション100と被験者Bとの間に空間Cが形成される。従って、クッション100使用時には、被験者Bの首部周辺の通気性が良くなり、通気性悪化に伴う被験者Bの首部の発疹を予防することができる。なお、膨張部102は、支持部104と接合した膨張部102の端部とは異なる他の端部E(膨張部102の端部E)を有する。
【0019】
図2は、本発明の実施形態1に係るクッション100の膨張手順を示すフローチャートである。図3は、クッション100を有する衣服Aを着用した人形を示す写真である。図3(a)は膨張部102の25%に空気が注入された状態を示し、図3(b)は膨張部102の50%に空気が注入された状態を示し、図3(c)は膨張部102の75%に空気が注入された状態を示し、図3(d)は膨張部102の100%に空気が注入された状態を示す。以下、図1から図3を参照して、クッションの膨張手順を説明する。
【0020】
ステップS202:膨張部102の空気を排出する。膨張部102に空気が注入されていない状態で、衣服Aを着用する。衣服Aを着用したらステップS204へ進む。
【0021】
ステップS204:空気入れを利用して、空気入出口108から膨張部102に空気を注入する。空気を注入している状態でステップS206へ進む。
なお、ステップS204において、空気入出口108から膨張部102に空気を注入し得る限りは、利用する道具は、空気入れに限らない。例えば、保育者が空気入出口108をくわえ、息を吐くことで空気入出口108から膨張部102に空気を注入し得る。
【0022】
ステップS206:膨張部102への空気の注入に応じて膨張部102が膨張する。膨張部102の膨張に伴って、膨張部102の端部Eが接合部分106を支点にせり上がる。膨張部102に十分な空気を注入することによって、被験者Bの後頭部が転倒に伴う衝撃から守られる。膨張部102に空気が十分に注入されたら、ステップは終了する。
【0023】
以上、図1から図3を参照して、本発明の実施形態1に係るクッション100を説明した。クッション100によれば、膨張部102の端部と支持部104とが接合した接合部分106を有するため、膨張部102が膨張すると膨張部102の端部Eがせり上がり、膨張部102が萎むと膨張部102の端部Eが垂れ下がる。従って、クッション機能の発揮を要望する場合は、クッション100を装着し膨張部102を膨張させることによって、接合部分106を支点に膨張部102の端部Eを身体の一部に向かってせり上がらせ、身体の一部を保護することができる。また、クッション機能の発揮を要望しない場合は、膨張部102を萎ませることによって、クッション100を装着した者の活動の自由度を向上させることができる。
【0024】
[実施形態2]
図4は、本発明の実施形態2に係るクッション400を示す模式図である。図5は、本発明の実施形態2に係るクッション400の一部を示す写真である。クッション400は、膨張可能な膨張部102と、接合部分106と、空気入出口108と、膨張部102を支持する支持部402とを備える。膨張部102、接合部分106、及び空気入出口108については、実施形態1において説明したクッション100の構成要素と同様に機能するので、その説明は省略する。
【0025】
支持部402は、衣服Dと膨張部102とを支持する。支持部402は、クッション400を装着する身体の一部(被験者の肩部)に沿って湾曲する。支持部402は、厚紙である。
【0026】
支持部402は、衣服Dを支持部402に係止するための係止部405(第1係止部405a及び第2係止部405b)を備える。係止部405は、支持部402に形成した円弧状の切れ込み404(第1切れ込み404a及び第2切れ込み404b)と衣服Dを支持部402に把持するための弾性体406(第1弾性体406a及び第2弾性体406b)とを含む。弾性体406は、例えばゴムである。
【0027】
第1弾性体406aは、第1切れ込み404aをまたいで支持部402に固定されている。同様に、第2弾性体406bは、第2切れ込み404bをまたいで支持部402に固定されている。
【0028】
係止部405は、切れ込み404と弾性体406とを一対に組み合わせて、衣服Dを把持する。
【0029】
図6は、本発明の実施形態2に係るクッション400を衣服Dに係止する手順を示すフローチャートである。以下、図4から図6を参照して、クッション400の係止手順を説明する。なお、ステップS204及びステップS206は、図3を参照して説明した実施形態1に係るクッション100の膨張手順と同様なので、説明を省略する。
【0030】
ステップS602:第1切れ込み404aを衣服Dと接する側に押し下げる。支持部402と第1切れ込み404aとの間に隙間ができる。隙間は、衣服Dの一部を挿入できればよく、隙間の大きさは限定しない。隙間ができたらステップS604へ進む。
【0031】
ステップS604:第1切れ込み404aと第1弾性体406aとの間の隙間に衣服Dの一部D1を挿入する。図4(b)及び図5(b)に示すように、衣服Dの一部D1を挿入できたら、ステップS606へ進む。
【0032】
ステップS606:第1切れ込み404aを衣服Dの一部D1で覆う。第1切れ込み404aを衣服Dの一部D1で覆えたら、ステップS608へ進む。
【0033】
ステップS608:衣服の一部D1で包まれた第1切れ込み404aと支持体402との間に第1弾性体406aを挿入する(図4(c)及び図5(c))。第1弾性体406aを挿入したら、第2係止部405bによって衣服Dの一部D2を係止するために、ステップS602へ進む。
【0034】
ステップS602からステップS608までを係止部405の個数回、繰り返す。図4(c)に示すように、切れ込み404と衣服Dの一部との間に弾性体406を挿入したら、ステップ204へ進む。
【0035】
ステップS206で、膨張部102がせり上がったら、ステップは終了する。なお、クッション400の係止手順においては、衣服Dに支持部402を係止できさえすればステップS204及びステップS206は必須でない。
【0036】
以上、図4から図6を参照して、本発明の実施形態2に係るクッション400を説明した。本発明に係るクッションの好適な態様によれば、支持部は、支持部を衣服に係止する係止部を有し、係止部は切れ込みと弾性体とを含む。従って、衣服にクッションを直接縫い付けたり、衣服にマジックテープ(登録商標)やスナップ等を取り付けたりすることが不要である。
【0037】
なお、弾性体406は、衣服Dを把持できさえすれば、ゴムに限定されない。弾性体406は、バネであり得る。また、係止部405は、衣服Dを係止できれば、個数は2つ(第1係止部405a、第2係止部405b)に限定されない。3つ以上であり得る。また、切れ込み404の形状は円弧状に限定されない。弾性体406との一対の組み合わせで衣服Dを把持し得る限りは、多角形形状(例えば三角形状)等その他の形状、円弧状とその他の形状との組み合わせであり得る。
【0038】
以上、図1から図6を参照して、本発明の実施形態に係るクッションを説明した。本発明に係るクッションによれば、膨張部の端部と支持部とが接合した接合部分を有するため、膨張部が膨張すると膨張部の端部とは異なる他の端部がせり上がり、膨張部が萎むと膨張部の他の端部が垂れ下がる。従って、クッション機能の発揮を要望する場合は、クッションを装着し膨張部を膨張させることによって、接合部分を支点に膨張部の他の端部を身体の一部に向かってせり上がらせ、身体の一部を保護することができる。また、クッション機能の発揮を要望しない場合は、膨張部を萎ませることによって、クッションを装着した者の活動の自由度を向上させることができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態に係るクッションを肩に装着した場合は、膨張部102がせり上がることで後頭部を保護し得る。身体の一部を保護し得る限りは、クッションの装着位置は、肩に限定されない。例えば、クッションを腰部の下方に装着した場合は、膨張部102がせり上がることで腰部を保護し得る。クッションを腰部に装着した場合は、膨張部102がせり上がることで背中部を保護し得る。さらに、膨張部102は、クッション機能を発揮し得る限りは、プラスチック袋に限定されない。合成樹脂製シート材で形成した袋であり得る。また、合成ゴム製シート材で形成した袋であり得る。気密加工された化学繊維製布をベロア加工したシート材で形成した袋であり得る。
【0040】
また、空気入出口108は、空気の注入及び排出が自在にできれば、逆止弁が付いていることに限定されない。また、支持部104及び支持部402は、膨張部102を支持できさえすればよく、厚紙に限定されない。支持部104及び支持部402は、合成樹脂板であり得る。また、接合部分106の形状は、湾曲形状に限定されない。矩形状であり得る。さらにまた、膨張部102の最先端部と支持部104とが接合されることに限定されない。膨張部102の膨張に伴い膨張部102がせり上がりさえすれば、接合部分106は、膨張部102の最先端部から少しずれた部分である膨張部102の端部と支持部104との接合部であり得る。
【0041】
また、膨張部は、衣服の襟に内蔵され得る。膨張部が衣服の襟に内蔵されている場合はクッションの常時装着が可能となり、クッションの取り外しが不要である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
身体の一部を保護することができるクッションであり、例えば、乳幼児用の転倒時後頭部保護具や怪我人の患部を保護する保護具として利用し得る。
【符号の説明】
【0043】
100 クッション
102 膨張部
104 支持部
106 接合部
400 クッション
402 支持部
404 切れ込み
405 係止部
406 弾性体




【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張可能な膨張部と、
前記膨張部を支持する支持部と
を備えたクッションであって、
前記膨張部の端部と前記支持部とが接合した接合部分を有する、クッション。
【請求項2】
前記膨張部の膨張に伴って前記膨張部の前記端部とは異なる他の端部がせり上がるように構成される、請求項1に記載のクッション。
【請求項3】
前記接合部分は前記支持部の方に凸状に膨らんでいる、請求項1又は請求項2に記載のクッション。
【請求項4】
前記支持部は、前記支持部を衣服に係止する係止部を有し、
前記係止部は切れ込みと弾性体とを含む、請求項1から請求項3のうちの一項に記載のクッション。
【請求項5】
前記膨張部は、衣服の襟に内蔵されている、請求項1から請求項3のうちの一項に記載のクッション。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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