説明

クラッシャブル車両

【課題】 どのような通常の先頭車両へも取り付けが自在なクラッシャブル装置を配置しても、車両のドアの位置とがずれことがない十分な長さのクラッシャブルゾーンを確保することができるクラッシャブル車両を提供する。
【解決手段】 クラッシャブル車両において、鉄道列車の先頭車両2における運転士の操作により駆動される、前方に伸長されるクラッシャブル装置Bを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッシャブル車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衝突時の衝撃を緩和する機能を有する鉄道車両としては、鉄道車両自体の先頭車両部分に流体バッグや緩衝部材などの緩衝装置を具備する鉄道列車の直撃防止用緩衝装置が本出願人により提案されている(下記特許文献1参照)。
また、鉄道車両の貫通ホロを取り付けるためのホロ座に、ホロの代わりに衝撃吸収体を設けるようにした衝撃吸収装置が提案されている(下記特許文献2参照)。
【0003】
上記した従来のクラッシャブル車両は、いずれも鉄道車両自体に配置するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−285739号公報
【特許文献2】特開2010−241373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような直撃防止用緩衝装置や衝撃吸収装置は、車両自体に取り付ける必要があり、車両を改造するなどその取付コストが嵩むといった問題があった。
また、車両自体が改造されて、その車両の長さ寸法が通常の車両の長さ寸法と異なることになるので、通常の車両のドアの位置と、その改造車両のドアの位置とがずれてしまうといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、どのような通常の先頭車両へも取り付けが自在なクラッシャブル装置を配置しても、車両のドアの位置とがずれことがない十分な長さのクラッシャブルゾーンを確保することができるクラッシャブル車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕クラッシャブル車両において、鉄道列車の先頭車両における運転士の操作により駆動される、前方に伸長されるクラッシャブル装置を具備することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載のクラッシャブル車両において、前記クラッシャブル装置は前方に伸長される弾性部材を具備することを特徴とする。
【0008】
〔3〕上記〔2〕記載のクラッシャブル車両において、前記弾性部材がテレスコープ型の弾性部材であることを特徴とする。
〔4〕上記〔3〕記載のクラッシャブル車両において、前記テレスコープ型の弾性部材は、平常時には圧縮されて収納部に収納されており、前記運転士による操作によってバルブが駆動されて流入する圧縮流体により伸長することを特徴とする。
【0009】
〔5〕上記〔2〕記載のクラッシャブル車両において、前記弾性部材が螺旋状のバネ帯体からなることを特徴とする。
〔6〕上記〔5〕記載のクラッシャブル車両において、前記螺旋状のバネ帯体は、平常時には収縮して収納部に収納されており、前記運転士による操作によってロック機構が解除されて伸長することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
先頭車両にクラッシャブル車両を容易に取り付けることが可能である。その場合、どのような通常の先頭車両へも取り付けが自在なクラッシャブル装置を配置しても、車両のドアの位置がずれことがない。
また、車両自体には何らの改造も要しないので、費用が低減されるとともに、それに伴うメンテナンスも不要である。
【0011】
また、衝突直前に運転士が操作することにより、クラッシャブル車両からクラッシャブル装置を伸長させることができるので、正常運行時にはクラッシャブルゾーンを極力短縮しておくことができ、一方衝突時には衝撃吸収のために十分な長さのクラッシャブルゾーンを確保することができる。
これにより、衝突した際の先頭車両の破損を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を示すクラッシャブル車両の模式図である。
【図2】本発明の第1実施例を示すテレスコープ型のクラッシャブル装置を有するクラッシャブル車両を示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す螺旋状のバネ帯体からなるクラッシャブル装置を有するクラッシャブル車両を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のクラッシャブル車両は、鉄道列車の先頭車両における運転士の操作により駆動される、前方に伸長されるクラッシャブル装置を具備する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示すクラッシャブル車両の模式図であり、図1(a)はそのクラッシャブル車両の衝突直前の模式図、図1(b)はそのクラッシャブル車両の衝突直後の模式図である。
これらの図において、1は線路、2は鉄道列車の先頭車両、3はその先頭車両2との連結部、Aは連結部3を介して先頭車両2に接続されるクラッシャブル車両、Bはそのクラッシャブル車両Aの先頭部に配置されており、運転士が操作することにより伸ばされるクラッシャブル装置である。4は信号機5を有する踏切であり、6は踏切4内に侵入したトラックである。なお、矢印は車両進行方向を示している。
【0015】
図1に示すように、鉄道列車の先頭車両2の前方には、連結部3を介してクラッシャブル車両Aが接続されている。鉄道列車の先頭車両2に乗務している運転士は、前方にトラック6を発見すると、操作装置(図示なし)を操作してクラッシャブル車両Aからクラッシャブル装置Bを前方へ伸長させる。すると、トラック6にはまず伸長したクラッシャブル装置Bが衝突して押しつぶされることになり、クラッシャブル車両Aの破損は低減される。当然、さらに後続の鉄道列車の先頭車両2が受ける衝撃は和らげられる。また、クラッシャブル装置Bが押しつぶされることにより、トラック6側の衝撃も緩和することができる。
【0016】
図2は本発明の第1実施例を示すテレスコープ型のクラッシャブル装置を有するクラッシャブル車両を示す模式図であり、図2(a)はそのクラッシャブル装置が伸長されていない状態を示す図、図2(b)はそのクラッシャブル装置が伸長された状態を示す図である。
これらの図において、11は線路、12は鉄道列車の先頭車両、13はその先頭車両12との連結部、Aは連結部13を介して先頭車両12に接続されるクラッシャブル車両、Bはそのクラッシャブル車両Aの先頭部に配置されており、運転士16が操作することにより伸ばされるクラッシャブル装置である。クラッシャブル車両A内には後述する操作装置の操作により駆動される駆動部21、バルブ制御装置22、電磁操作型バルブ23、圧縮流体源24が配置され、クラッシャブル装置Bには電磁操作型バルブ23に接続されたテレスコープ型の弾性部材26が収納される弾性部材収納部25が配備されている。
【0017】
一方、鉄道列車の先頭車両12の運転パネル14には、非常時に運転士16が操作する操作装置(操作スイッチ)15が配置され、この操作装置15を操作することによりクラッシャブル車両Aからクラッシャブル装置Bが伸長される。なお、17は鉄道列車の車輪、18はクラッシャブル車両Aの車輪を示している。
列車が走行中に前方に障害物があると認識した場合、運転士16は操作装置15を操作する。すると、駆動部21が動作して、図2(b)に示すように、弾性部材収納部25に収納されていたテレスコープ型の弾性部材26が圧縮流体24により前方に伸長され、クラッシャブル装置Bが緩衝装置として機能する。例えば、図1に示すように踏切4内に侵入したトラック6に伸長したテレスコープ型の弾性部材26を有するクラッシャブル装置Bが衝突すると、そのクラッシャブル装置Bが押しつぶされることにより鉄道列車への衝突の衝撃を和らげることができ、また、同時に衝突される側であるトラック6が受ける衝撃も和らげることができる。
【0018】
図3は本発明の第2実施例を示す螺旋状のバネ帯体からなるクラッシャブル装置を有するクラッシャブル車両を示す模式図であり、図3(a)はそのクラッシャブル装置が伸長されていない状態を示す図、図3(b)はそのクラッシャブル装置が伸長されている状態を示す図である。
この実施例では、クラッシャブル車両A内には操作装置15の操作により駆動部31、ロック機構32が配置され、クラッシャブル装置Bには、螺旋状のバネ帯体34が収納されるバネ帯体収納部33が配置されている。鉄道車両の先頭車両12および連結部13の構成は第1実施例と同様である。
【0019】
列車走行中に前方に障害物があると認識した場合、運転士16は操作装置15を操作する。すると、駆動部31が動作して、図3(b)に示すように、ロック機構32が解除されて、バネ帯体収納部33に収納されていた螺旋状のバネ帯体34が前方に伸長され、クラッシャブル装置Bが緩衝装置として機能する。例えば、図1に示すように踏切4内に侵入したトラック6に伸長した螺旋状のバネ帯体34を有するクラッシャブル装置Bが衝突すると、そのクラッシャブル装置Bが押しつぶされることにより、鉄道列車への衝突の衝撃を和らげることができ、また、同時に衝突される側であるトラック6が受ける衝撃も和らげることができる。
【0020】
なお、上記したクラッシャブル装置Bは、上記実施例に限定されるものではなく、コイルバネや空芯状のゴム状弾性体などを用いるようにするなど、種々の変形が可能である。
本発明によれば、先頭車両にクラッシャブル車両を容易に取り付けることが可能である。その場合、どのような通常の先頭車両へも取り付けが自在なクラッシャブル装置を配置しても、車両のドアの位置がずれことがない。
【0021】
また、車両自体には何らの改造も要しないので、費用が低減されるとともに、それに伴うメンテナンスも不要である。
更に、衝突直前に運転士が操作することにより、クラッシャブル車両からクラッシャブル装置を伸長させることができるので、正常運行時にはクラッシャブルゾーンを極力短縮しておくことができる。一方、衝突時には衝撃吸収のために十分な長さのクラッシャブルゾーンを確保することができ、衝突による先頭車両の破損を低減することができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のクラッシャブル車両は、どのような通常の先頭車両へも取り付けが自在なクラッシャブル装置を配置しても、車両のドアの位置とがずれことがない十分な長さのクラッシャブルゾーンを確保することができるクラッシャブル車両として利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1,11 線路
2,12 鉄道列車の先頭車両
3,13 連結部
4 踏切
5 信号機
6 トラック
14 運転パネル
15 操作装置(操作スイッチ)
16 運転士
17 鉄道車両の車輪
18 クラッシャブル車両の車輪
21,31 駆動部
22 バルブ制御装置
23 電磁操作型バルブ
24 圧縮流体源
25 弾性部材収納部
26 テレスコープ型の弾性部材
32 ロック機構
33 バネ帯体収納部
34 螺旋状のバネ帯体
A クラッシャブル車両
B クラッシャブル装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道列車の先頭車両における運転士の操作により駆動される、前方に伸長されるクラッシャブル装置を具備することを特徴とするクラッシャブル車両。
【請求項2】
請求項1記載のクラッシャブル車両において、前記クラッシャブル装置は前方に伸長される弾性部材を具備することを特徴とするクラッシャブル車両。
【請求項3】
請求項2記載のクラッシャブル車両において、前記弾性部材がテレスコープ型の弾性部材であることを特徴とするクラッシャブル車両。
【請求項4】
請求項3記載のクラッシャブル車両において、前記テレスコープ型の弾性部材は、平常時には圧縮されて収納部に収納されており、前記運転士による操作によってバルブが駆動されて流入する圧縮流体により伸長することを特徴とするクラッシャブル車両。
【請求項5】
請求項2記載のクラッシャブル車両において、前記弾性部材が螺旋状のバネ帯体からなることを特徴とするクラッシャブル車両。
【請求項6】
請求項5記載のクラッシャブル車両において、前記螺旋状のバネ帯体は、平常時には収縮して収納部に収納されており、前記運転士による操作によってロック機構が解除されて伸長することを特徴とするクラッシャブル車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−32057(P2013−32057A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168050(P2011−168050)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)