説明

クランプ装置

【課題】1つの動力源によって、軸組等の面体フレームを形成する部材の形状に応じた数のクランプユニットをそれぞれ所定の位置へと適切に移動させて当該部材をクランプすることにより省スペース化を図ることができるクランプ装置を提供する。
【解決手段】 軸組2等の面体フレームを形成する部材21をクランプする複数のクランプユニット3と、該複数のクランプユニット3をそれぞれ連結及び切り離し可能な複数の連結部材41を有するクランプ連結機構4と、駆動手段51を用いてクランプ連結機構4を所定の位置へと直線移動させる直線移動機構5と、を備えるクランプ装置であって、クランプユニット3は、直線移動機構5によって所定の位置へと移動して、部材21をクランプした状態で、連結部材41から切り離される場合に当該クランプユニット3を所定の位置に固定するためのロック機構32を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプユニットを所定の位置へと移動させることによって軸組等の面体フレームを形成する多種多様な寸法の部材をクランプすることができるクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な生活ニーズに対応するため、多種多様な形状の軸組が用いられている。通常、軸組の溶接は、ロボットを制御して行われるため、溶接の位置をそれぞれの軸組に応じて適切に固定する必要がある。このような軸組の固定には、複数のクランプユニットが用いられている。また、軸組を適切に固定するためには、これら複数のクランプユニットをそれぞれ軸組の所定の寸法位置へと移動させる必要がある。そのため、従来は、クランプユニットを所定の位置へと移動させるために、それぞれのクランプユニットにサーボ機構が設けられていた。
【0003】
また、特許文献1の溶接治具では、ベース上に取り付けられたサーボモータによってボールねじを介して固定具が複数備えられた移動部を移動させることによりベース上に配置された部材を任意の点で固定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−227697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、サーボ機構をそれぞれのクランプユニットに設けた場合には、サーボ機構自体のスペースも必要となるため、隣り合うクランプユニット間の距離が制限され、細かな位置決めを行うことができなくなる。また、特許文献1では、ベース上に配置された部材を固定するための固定具は、移動部に予め取り付けられているものであるため、必要に応じて容易に固定具の数を変更することができない。そのため、固定する部材の形状によっては、適切に固定できない場合がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、1つの動力源によって、軸組等の面体フレームを形成する部材の形状に応じた数のクランプユニットをそれぞれ所定の位置へと適切に移動させて当該部材をクランプすることにより省スペース化を図ることができるクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のクランプ装置は、面体フレームを形成する部材をクランプする複数のクランプユニットと、該複数のクランプユニットをそれぞれ連結及び切り離し可能な複数の連結部材を有するクランプ連結機構と、駆動手段を用いて前記クランプ連結機構を所定の位置へと直線移動させる直線移動機構と、を備えるクランプ装置であって、前記クランプユニットは、前記直線移動機構によって所定の位置へと移動して、前記連結部材から切り離される場合に当該クランプユニットを前記所定の位置に固定するためのロック機構を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載のクランプ装置は、前記複数のクランプユニットは、前記直線移動機構によって直線移動した際の位置情報を検出するためのエンコーダをそれぞれ設けていることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載のクランプ装置は、前記直線移動機構は、前記駆動手段と、該駆動手段の出力軸に回転自在に取り付けられたピニオンと、該ピニオンが転動自在に噛合する固定ラックとを備え、前記駆動手段には前記クランプ連結機構が取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のクランプ装置によれば、複数のクランプユニットをそれぞれ連結可能な連結部材を有するクランプ連結機構は、駆動手段を有する直線移動機構によって所定の位置へと直線移動することができる。従って、それぞれのクランプユニット毎に駆動手段を必要とすることなく、1つの駆動手段で複数のクランプユニットをそれぞれ所定の位置へと移動させることができるので、装置自体を簡略化できるとともに省スペース化を図ることができる。
【0011】
また、クランプ連結機構は、複数のクランプユニットをそれぞれ連結及び切り離し可能な複数の連結部材を有しているので、軸組等の面体フレームを形成する部材の形状に応じた数のクランプユニットをそれぞれ所定の位置へと適切に移動させて当該部材をクランプすることができる。また、所定の位置にて部材をクランプしたそれぞれのクランプユニットは、ロック機構によってその場から動かないよう固定される。従って、連結部材からクランプユニットが切り離された後でも所定の位置からずれることがないので、適切に軸組の溶接作業等を行うことができ、生産効率を向上させることができる。
【0012】
請求項2記載のクランプ装置によれば、それぞれのクランプユニットには、直線移動機構によって直線移動した際の位置情報を検出するためのエンコーダが設けられているので、部材をクランプした状態でロック機構によって所定の位置にて固定されているクランプユニットのそれぞれの位置を正確に把握することができる。
【0013】
請求項3記載のクランプ装置によれば、駆動手段を駆動させることによって、出力軸を介してピニオンが回転するとともに、該ピニオンは、固定ラックに沿って直線移動するので、それに伴って駆動手段に取り付けられているクランプ連結機構も直線移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るクランプ装置の一例を示す概略模式図。
【図2】クランプユニットの一例を示す概略模式図。
【図3】直線移動機構の一例を示す概略模式図。
【図4】本発明に係るクランプ装置の動作について説明するための概略説明図。
【図5】本発明に係るクランプ装置によって長手鋼材がクランプされた状態を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るクランプ装置について、各図面を参照しつつ説明する。本発明に係るクランプ装置1は、図1に示すように、面体フレームの一種である矩形枠状の軸組2を形成する部材である長手鋼材21をクランプする複数のクランプユニット3と、該複数のクランプユニット3をそれぞれ連結及び切り離し可能な複数の連結部材41を有するクランプ連結機構4と、該クランプ連結機構4を所定の位置へと直線移動させる直線移動機構5とを備えている。面体フレームは、溝形鋼、リップ溝型鋼、山形鋼等の長手鋼材を例えば、一対の柱材、上弦材、及び下弦材として用いて矩形枠状に形成される軸組等を含むものである。軸組2を形成する長手鋼材21は、例えば、開口が内側を向くように配置したリップ溝形鋼からなるものであり、その端部は予め決められた位置に設けられている位置決め治具6によって固定されている。
【0016】
クランプユニット3は、図2に示すように、長手鋼材21をクランプするためのクランプ部31と、不図示のベース上に形成されるレール7を挟持することによって当該クランプユニット3を所定の位置にて固定するロック機構32と、連結部材41に連結される連結孔33とを備えている。
【0017】
クランプ部31は、例えば、長手鋼材21を上から押えて固定する押え部材31aと、長手鋼材21を下から支持する支持部材31bとからなるものである。ロック機構32は、レール7を挟持するために、レール7の両側面に先端が当接する構造になっている。レール7は、クランプユニット3の移動方向へ長尺に形成されており、クランプユニット3がどの位置で連結部材41から切り離されたとしてもロック機構32によって固定できるようになっている。尚、クランプ部31及びロック機構32は、図2の構成に限定されるものではなく、他の従来公知のクランプ機構及びロック機構を採用しても良い。
【0018】
クランプ連結機構4は、図1に示すように、1枚のプレート42上に複数のクランプユニット3をそれぞれ連結及び切り離し可能な連結部材41が複数並べられて設けられたものである。この連結部材41は、例えば、シリンダ等によって構成されており、連結軸41aが伸縮するようになっている。連結部材41は、この連結軸41aを伸張させて、クランプユニット3に設けられている連結孔33に挿着することによってクランプユニット3を連結する。また、クランプユニット3を連結部材41から切り離す際には、連結軸41aを収縮させて連結孔33から抜き出すことにより連結を解除する。尚、連結部材41の構成は、このような形態に限定されるものではなく、他の従来公知の連結機構を採用しても良い。
【0019】
直線移動機構5は、図3に示すように、クランプ連結機構4を所定の位置へと直線移動させるための機構であって、駆動手段として機能するサーボモータ51と、該サーボモータ51の出力軸52に取り付けられたピニオン53と、該ピニオン53が転動自在に噛合する固定ラック54とから構成されている。この固定ラック54は、例えばベース8上に動かないように固定されている。従って、サーボモータ51を駆動させることによって、出力軸52を介してピニオン53が回転するとともに、ピニオン53は、固定ラック54に沿って直線移動するので、それに伴ってサーボモータ51も、図3中の矢印方向へと直線移動することができる。尚、矢印と反対側の方向へと移動させる場合には、サーボモータ51を逆回転させれば良い。また、このサーボモータ51には、エンコーダが内蔵されており、当該サーボモータ51の位置情報を把握することができるようになっている。
【0020】
また、サーボモータ51には、連結部材41が設けられたプレート42が取り付けられているので、サーボモータ51が直線移動すれば、それに伴って連結部材41及び該連結部材41に連結されているクランプユニット3も直線移動することができる。このクランプユニット3にも、上端がベアリング(不図示)を介して回転自在に取り付けた回転軸34が設けられており、この回転軸34には、エンコーダ9が取り付けられるとともに、下端には固定ラック54と噛み合うピニオン35が取り付けられている。従って、直線移動機構5によってクランプユニット3が直線移動する際には、ピニオン35とともに回転軸34は回転するので、エンコーダ9は、この回転軸34の回転角度情報からクランプユニット3の位置情報を検出することができる。
【0021】
以下、クランプ装置1の動作について図面を参照しつつ説明する。具体的には、クランプ装置1は、制御コンピュータ(不図示)に接続されており、この制御コンピュータからの命令(プログラム)に従って動作が行われる。図1に示すように、軸組2を形成するための長手鋼材21は、端部が予め決められた位置に設けられている位置決め治具6によって固定されて設置されている。クランプ装置1は、長手鋼材21のクランプに必要な数のクランプユニット3を連結部材41に連結させた状態で、図1に示すように、予め設定されている初期位置にて待機している。
【0022】
この状態から、クランプ装置1は、制御コンピュータに予め入力された長手鋼材21の情報に基づいて、それぞれのクランプユニット3が長手鋼材21の所定寸法位置へと移動するよう制御される。具体的には、制御コンピュータに長手鋼材21をクランプするそれぞれの所定寸法位置の情報が入力されており、それぞれのクランプユニット3に設けられているエンコーダ9から得られる位置情報に基づいて、それぞれのクランプユニット3が長手鋼材21の所定寸法位置へと移動したか否かを判別する。
【0023】
そして、図4に示すように、長手鋼材21の1つ目の所定寸法位置にクランプユニット3が到達すると、当該クランプユニット3は、図2に示すように、長手鋼材21をクランプした状態で、連結部材41から切り離される。このように切り離されたクランプユニット3は、ロック機構32によってその場から動かないように固定される。
【0024】
その後、クランプ装置1は、連結部材41に連結されている他のクランプユニット3を直線移動機構5を用いて、長手鋼材21の次の所定寸法位置に到達するまで矢印方向へと移動させ、同様の動作を繰り返す。この動作は、図5に示すように、それぞれのクランプユニット3によって長手鋼材21のクランプが完了するまで行われる。これにより、長手鋼材21の形状に応じた数のクランプユニット3をそれぞれ所定の寸法位置へと適切に移動させて長手鋼材21をクランプすることができる。
【0025】
以上の説明では、クランプ装置1を用いて長手鋼材21をクランプする場合を例に説明したが、クランプ装置1によってクランプする部材は長手鋼材21に限定されるものではなく、軸組等の面体フレームを形成するその他の部材についても適用することは可能である。また、本実施形態では、3つの連結部材41を有するクランプ連結機構4について示しているが、クランプ連結機構4が有する連結部材41の数はこれに限定されるものではなく、少なくとも1つ以上の連結部材41が設けられていれば、クランプユニット3を所定の位置へ移動させることができる。また、クランプユニット3は、必ずしも全て連結部材41に連結されている必要はなく、クランプする部材の種類に応じて必要な数のクランプユニット3を連結させておけば良い。また、逆にクランプユニット3を全て連結部材41に連結させておいて、部材のクランプに必要な数のクランプユニット3のみをそれぞれの所定の位置にてクランプさせて切り離し、その他のクランプユニット3については連結部材41に連結したままにしておいても良い。
【0026】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係るクランプ装置は、多種多様な形状を有する軸組等の面体フレームの溶接等を行う際に当該面体フレームを固定するために用いるクランプ装置として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 クランプ装置
2 軸組(面体フレーム)
21 長手鋼材(部材)
3 クランプユニット
32 ロック機構
4 クランプ連結機構
41 連結部材
5 直線移動機構
51 サーボモータ(駆動手段)
9 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面体フレームを形成する部材をクランプする複数のクランプユニットと、
該複数のクランプユニットをそれぞれ連結及び切り離し可能な複数の連結部材を有するクランプ連結機構と、
駆動手段を用いて前記クランプ連結機構を所定の位置へと直線移動させる直線移動機構と、を備えるクランプ装置であって、
前記クランプユニットは、前記直線移動機構によって所定の位置へと移動して、前記連結部材から切り離される場合に当該クランプユニットを前記所定の位置に固定するためのロック機構を備えることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記複数のクランプユニットは、前記直線移動機構によって直線移動した際の位置情報を検出するためのエンコーダをそれぞれ設けていることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記直線移動機構は、前記駆動手段と、該駆動手段の出力軸に回転自在に取り付けられたピニオンと、該ピニオンが転動自在に噛合する固定ラックとを備え、
前記駆動手段には前記クランプ連結機構が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218003(P2012−218003A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83383(P2011−83383)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)