説明

クリップに装飾体を付設した筆記具

【課題】特別な工具や特別な部材がなくとも、筆記具に対し装飾体を有した接続紐を簡単に付設することができる筆記具を得る。
【解決手段】軸筒表面に向かって突出した脚部と軸心に沿った方向に延びたクリップ本体とで構成されたクリップに装飾体を付設した筆記具において、前記装飾体を、弾性変形により内径が拡径可能な環状体を先端に有した接続紐に接続し、前記環状体に前記クリップ本体を挿通して前記環状体を前記クリップ本体の頭端部側へ移動させ、前記環状体の一方の内面を前記脚部に当接させ該環状体を前記脚部に当接した箇所を支点にして軸筒表面側に回転させることで、前記環状体が弾性変形により内径が拡径し、前記環状体の他方の内面がクリップ本体の頭端部を通過して、前記環状体が前記脚部の軸筒への付け根部に移動するとともに、環状体の内径が閉径して元の状態に戻ってなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスコットやキャラクター等を模した装飾体をクリップに付設した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筆記具に、小さな人形や動物あるいは車等のマスコットやキャラクター等を模した装飾体を付設する方法として、チェーン等の接続紐を介して付設する方法が知られている。この様な方法は、接続紐の先端に設けた金具を介して筆記具に取付けられることが多い。この場合、チェーンの先端に設けたC型状の金具をクリップの軸筒の表面に向かって突出した脚部に形成した取付け用の孔部に嵌めて付設するが、C型状の金具を脚部の孔部に嵌める際に、一端ペンチでC型状の開いた部分を拡開し、孔部に嵌め込んだ後に前記C型状の拡開した部分をカシメて元の円環状にする。また他の方法として、実用新案登録公報3058134号公報で開示されているように、吊り下げ孔にチェーンを結着した回転リングを軸筒に螺合して付設する方法がある。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録公報3058134号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前者の方法では、C型状の金具の開いた部分を拡げたりカシメたりして閉じたりする必要があり、そのための工具が必要となる。クリップの脚部という小スペースな場所でそのような工具を使用するには作業性が悪いという問題がある。また、後者の方法では、吊り下げ孔にチェーンを結着する専用部材(回転リング)を軸筒に取付ける必要があるため、必要がなくなった装飾体を外した後も軸筒に回転リングが残ってしまうという問題がある。
【0005】
本発明はこうした事実に鑑み、特別な工具や特別な部材がなくとも、筆記具に対し装飾体を有した接続紐を簡単に付設することができる筆記具を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
「1.軸筒表面に向かって突出した脚部と軸心に沿った方向に延びたクリップ本体とで構成されたクリップに装飾体を付設した筆記具において、前記装飾体を、弾性変形により内径が拡径可能な環状体を先端に有した接続紐に接続し、前記環状体に前記クリップ本体を挿通して前記環状体を前記クリップ本体の頭端部側へ移動させ、前記環状体の一方の内面を前記脚部に当接させ該環状体を前記脚部に当接した箇所を支点にして軸筒表面側に回転させることで、前記環状体が弾性変形により内径が拡径し、前記環状体の他方の内面がクリップ本体の頭端部を通過して、前記環状体が前記脚部の軸筒への付け根部に移動するとともに、環状体の内径が閉径して元の状態に戻ってなることを特徴とする、クリップに装飾体を付設した筆記具。
2.前記環状体の一部にスリットを設け、前記環状体が前記スリットを介して拡径可能としたことを特徴とする、請求項1に記載のクリップに装飾体を付設した筆記具。」
である。
【0007】
本発明において環状体は、円形でも四角形でも多角形でも良く、クリップに装着可能であり、装着した際にクリップの裏側に収まり基部を取囲み可能な形状であれば良い。また、材質はステンレス、ピアノ線等を使用することができる。弾性変形とは金属の材質自体が有する弾性を利用したものや、形状的にバネ性を付与したものであっても良く、内径が拡径し、環状体の一方の内面がクリップの脚部に当接した状態で、他方の内面がクリップ本体の頭端部を通過して脚部の軸筒への付け根部に移動し、内径が元の状態に戻れば良い。さらに、環状体の一部にスリットを設けることにより、装着時に環状体を回転させた際にスリットが拡開して変形が起りやすくなる。環状体にスリットを設ける場合には、付設後は環状体が脚部から簡単に外れがないようにスリットが閉じる必要があるため、その材質をバネ性を有するもので成形することが肝要である。
装飾体と環状体とを接続する接続紐は、一般的な金属で形成されたチェーンや繊維で出来たいわゆる紐であっても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクリップに装飾体を付設した筆記具によれば、装飾体の接続紐を環状体を介して容易にクリップの基部に装着できるので製造コスト低減することができ結果的に安価なものを提供することが可能となる。また特別な部材を必要としないので、装飾体を取り外したあとは一般的な筆記具として使用することに違和感が無いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図面を参照しながら本発明のクリップに装飾体を配した筆記具を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、本実施例においてはクリップの脚部がある側の端部を頭端部として説明を行うものとする。図1は、本発明の筆記具の要部概念図で、図2は図1を断面的に見た図である。筆記具1は、軸筒2の後方に後軸部3を圧入して固着してある。後軸部3にはクリップ4が一体で成形されている。クリップ4は軸筒2の軸心に沿った方向に延びるクリップ本体5と、クリップ本体5の裏面から軸筒2の表面に向かって突出した脚部6とで構成してある。また、装飾体7はハート形状のものであり、ハートの内隅部7aには取付金具8を固設してある。取付金具8は先端部(図示せず)を装飾体7に埋め込み、丸環部8aを外部に露出させている。丸環部8aにはチェーン9の端部金輪9aを取付けてある。チェーン9の反対側の端部金輪9bには環状体10を取付けてある。環状体10はステンレスで形成した円環状の部材であり、一部にスリット10aを設けてある。
【0010】
次に、筆記具に装飾体を付設するときの取付方法を説明する。装飾体7及びチェーン9が付いている環状体10にクリップ本体5を挿通して、環状体10をクリップ本体5の先端から頭端部5a側へ移動して環状体10の一方の内面10bを脚部6に当接させ、さらに環状体10を脚部6に当接した箇所を支点にして後軸部3の表面側に回転させることで、環状体10がスリット10aの拡がりに伴う弾性変形により内径が拡径し、環状体10の他方の内面10cがクリップ本体5の頭端部5aを通過して、環状体10が脚部6の後軸部3への付け根部6aに移動するとともに、環状体10の内径が閉径して元の状態に戻り環状体10が脚部6から外れないようになる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明のクリップに装飾体を付設した筆記具では、マスコットやキャラクター等を模した装飾体だけでなく、小型の爪切りやライトあるいはルーペ等といった実用的な機能を有するものを装飾体として採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の筆記具の要部概念図である。
【図2】図2は図1を断面的に見た図である。
【符号の説明】
【0013】
1…筆記具、2…軸筒、3…後軸部、
4…クリップ、5…クリップ本体、5a…頭端部、6…脚部、6a…付け根部、
7…装飾体、8…取付金具、9…チェーン、
10…環状体、10a…スリット、10b…一方の内面、10c…他方の内面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒表面に向かって突出した脚部と軸心に沿った方向に延びたクリップ本体とで構成されたクリップに装飾体を付設した筆記具において、前記装飾体を、弾性変形により内径が拡径可能な環状体を先端に有した接続紐に接続し、前記環状体に前記クリップ本体を挿通して前記環状体を前記クリップ本体の頭端部側へ移動させ、前記環状体の一方の内面を前記脚部に当接させ該環状体を前記脚部に当接した箇所を支点にして軸筒表面側に回転させることで、前記環状体が弾性変形により内径が拡径し、前記環状体の他方の内面がクリップ本体の頭端部を通過して、前記環状体が前記脚部の軸筒への付け根部に移動するとともに、環状体の内径が閉径して元の状態に戻ってなることを特徴とする、クリップに装飾体を付設した筆記具。
【請求項2】
前記環状体の一部にスリットを設け、前記環状体が前記スリットを介して拡径可能としたことを特徴とする、請求項1に記載のクリップに装飾体を付設した筆記具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−231792(P2006−231792A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51966(P2005−51966)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】