説明

クリップ

【課題】 名札ケースが引っ張り力を受けても脱落することのないクリップを提供すること。
【解決手段】 名札ケース10を着脱するための開放口Cが形成されたフック部15を有する本体16と、この本体16に取り付けられた移動部材17と、前記本体16の上部に装着された紐状部材13を備えてクリップ11が構成されている。開放口Cは、フック部15の底部よりも上方に位置するように形成されており、移動部材17は、開放口Cを閉塞する板状部材により構成され、当該移動部材17を鉛直面内で回転させて第1の位置に設定したときに開放口Cを閉塞し、第2の位置に設定したときに開放口Cを開放するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリップに係り、更に詳しくは、名札ケース側に引っ張り力等の意図しない力が加えられても名札ケースの脱落を防止することのできるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種展示会、講演会、或いは一定の集会等においては、扁平な透明ケースに名刺等を収納して当該ケースをクリップに保持させ、このクリップに取り付けられた帯状の紐状部材を利用者の首回りに吊り下げ保持することで、各人の特定が行えるようになっている。
【0003】
特許文献1には、前述したクリップが示されている。同クリップは、吊り下げたときに略鉛直面内に位置する基片と、この基片に沿って取り付けられた挟持片とを備え、当該挟持片の下端側をばねの力によって基片の下端側に押し付けるように保つことで、実質的に、洗濯挟みに類似した状態を保って名札ケースを吊り下げ保持できるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特許第3590326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたクリップにあっては、挟持片に意図しない押圧力が加えられたときや、名札ケースが引っ張り力を受けたときに、当該名札ケースがクリップから脱落してしまう、という不都合がある。これは、基片と挟持片との接点が、名札ケースの保持用穴の形成縁に沿って位置し得る構成となっているためである。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、名札ケースが引っ張り力を受けても脱落することのないクリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、被保持体に設けられた保持用穴に係り合わせて前記被保持体の吊り下げ保持を可能とするクリップにおいて、
被保持体着脱用の開放口が形成されたフック部を有する本体と、この本体に取り付けられるとともに当該本体に対して相対移動可能に設けられた移動部材とを含み、
前記開放口は、前記フック部の底部よりも上方に位置するように形成され、
前記移動部材は、当該移動部材を第1の位置に設定したときに前記開放口を閉塞する一方、第2の位置に設定したときに前記開放口を開放して被保持体の着脱を可能とした構成を採っている。ここで、被保持体としては、名札ケース等を例示することができる。
【0008】
本発明において、前記移動部材は、前記本体に対して回転可能に設けられている、という構成を採ることができる。
【0009】
また、前記移動部材は、前記本体に対してスライド移動可能に設けることもできる。
【0010】
更に、前記本体の上部に吊り下げ用の紐状部材の装着部が設けられ、当該装着部は、紐状部材が閉ループ状態を保ったまま交換可能に設けられる、という構成を採っている。
【0011】
また、前記移動部材は、前記開放口の左右幅と略同一の幅を有する閉塞用領域を含み、当該閉塞用領域が前記第1の位置に保たれたときに、前記開放口を閉塞するように設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、名札ケースに設けられる保持用穴の形成縁は、フック部の底部にのみ接触した状態となる。従って、フック部が損傷等することがない限り、名札ケースは、常にクリップに保持された状態となり、名札ケースに引っ張り力等が作用することがあっても当該名札ケースの不用意な脱落は確実に防止されるものとなる。
【0013】
また、前記開放口を開閉するための移動部材は本体に対して回転可能若しくはスライド移動可能に設けられるものであるため、移動部材が第1の位置を保っている限り、名札ケースの脱落は確実に防止できる他、名札ケースを本体に着脱する際の操作も簡単に行うことができる。
【0014】
更に、閉ループ状態にある紐状部材が本体に対して着脱できる装着部を設けたことで、紐状部材を使用者のニーズに応じて交換することができる。
【0015】
また、前記移動部材の閉塞用領域が開放口と同一の幅に設けられているため、名札ケースに形成されている保持用穴の形成縁に移動部材の閉塞用領域が引っ掛かってしまうような虞がなくなり、吊り下げ保持された状態にある名札ケースが、利用者の動きによって揺れ動いても、フック部の形状に沿って無理なく滑り回転できるため、利用者が動きを停止して静止したときに、常に表示面を鉛直向きに位置させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明における位置若しくは方向に関する用語は、図1を矢印D方向から見た状態を基準とする。
【0017】
図1には、本実施形態に係るクリップの使用状態における概略斜視図が示され、図2には、図1のA−A線矢視断面図が示されている。また、図3には、図1の分解斜視図が示されている。これらの図において、被保持体としての名札ケース10がクリップ11及びこれに装着された紐状部材13を介して吊り下げ保持されている。名札ケース10は、透明な樹脂シートを袋状に形成して構成された公知のケースであり、その中央上端部には、左右方向に延びるスロット状の保持用穴10Aが形成されている。
【0018】
前記クリップ11は左右両側に開通しているとともに前部に開放口(図3参照)Cを形成するフック部15を下部領域に備えた本体16と、当該本体16の前面側に取り付けられた移動部材17と、本体16の背面側に取り付けられたポケット装着用クリップ18とを備えて構成されている。フック部15は板状をなして本体16と一体成形されている。すなわち、本体16の後端下面から下方に延びる鉛直面部20と、この鉛直面部20の下部に連なって前方に緩やかに湾曲して先端が底部よりも上方に位置する円弧面部21とを備え、側面視形状が釣り針に類似したJ字状に設けられている。また、フック部15において、前記開放口Cの左右幅を決定する左右幅W(図5参照)は、本体16の左右幅W1よりも若干短い幅に設定されている。なお、左右幅Wは、前記保持用穴10Aの左右幅よりも幾分小さく設定されている。
【0019】
前記本体16は略直方体となる外形に設けられている。この本体16は、図5ないし図10に示されるように、略鉛直面内に位置する前面部23と、当該前面部23との間に所定間隔を隔てて配置された背面部24と、これら前面部23及び背面部24の左右両側に位置する左側面部25及び右側面部26とを備えて上端及び下端が開放する略角筒状に設けられている。前面部23及び背面部24の各中央部には、前記移動部材17及びポケット装着用クリップ18を取り付けるための取付穴28,29がそれぞれ形成され、また、前面部23の取付穴28回りにおいて、当該取付穴28の放射方向には、周方向略90度間隔を隔てた位置に節度機構を構成するスロット溝23Aが形成されている。
【0020】
前記右側面部26の上部は、切欠穴30が形成されているとともに、当該切欠穴30の下部は、背面側に開放した形状に設けられている。また、背面部24は、その上部領域にコ字状切欠部33が形成され、当該切欠部33で囲まれる内側は、紐状部材13を掛け回すための装着部としての横軸35として形成されている。ここで、コ字状切欠部33の図3中下部左端は、前記右側面部26に形成された切欠穴30に連なる形状に設けられている。
【0021】
前記移動部材17は全体的に平坦な板状をなし、前記本体16の左右幅に略対応する左右幅を備えた板状部37と、当該板状部37の下部に一体に連なるとともに板状部37の左右幅よりも小さく、且つ、前記フック部15の左右幅と略同一の左右幅に設けられた閉塞用領域としての開閉板部38と、板状部37の背面側に設けられた突軸40とを備えて構成されている。突軸40は、スロット41を介して分割されており、これにより、前記前面部23に形成された取付穴28に回転可能な状態で強制的に嵌合可能となっている。移動部材17は、開閉板部38が板状部37の下方に位置する状態(図1参照)を第1の位置として前記開放口Cを閉塞する一方、開閉板部38が板状部37の左右何れかに並ぶ位置若しくは板状部37の上方に位置する状態(図4参照)を第2の位置として前記開放口Cを開放するようになっている。なお、前記突軸40回りには、本体16に形成されたスロット溝23Aとともに節度機構を構成する突条37Aが形成され、当該突条37Aがスロット溝23Aに嵌合する位置で移動部材17の鉛直面内における自由な回転が規制され、これにより、開閉板部38が開放口Cを閉塞している状態において、不用意に開放口Cを開放することがないようになっている。
【0022】
ポケット装着用クリップ18は、前記背面部24に相対する前壁部45と、当該前壁45の上端に連なる後壁部46と、この後壁部46の上端から上前方に延びる延長壁部48とを備え、後壁部46の前面側には、隙間調整突部50が形成され、当該隙間調整突部50と前壁部45との間に利用者の胸ポケットの上部が挿入できるようになっている。なお、前壁部45の前面側には、突軸52が設けられており、当該突軸52を本体16の背面部24に形成された取付穴29に対して相対回転可能な状態で嵌合するように設けられている。
【0023】
次に、本実施形態におけるクリップ11の組み立て要領と使用方法について説明する。
【0024】
図3に示されるように、紐状部材13は、本体16の上端開口にループの一部を挿入し、当該ループ内に横軸35を先端(図9中左端)から挿入することで横軸35に掛け回して装着することができ、これと反対の操作を行うことにより取り外しを行うことができる。そのため、予め無端状に形成された紐状部材であっても着脱を支障なく行えるとともに、異種のタイプの紐状部材を任意に選択して装着することができる。
【0025】
前記移動部材17は、その背面側に位置する突軸40を本体16の取付穴28に嵌合させて一体化される一方、ポケット装着用クリップ18は、突軸52を取付穴29に嵌合させて一体化でき、これにより、クリップ11の組み立てを完了することができる。
【0026】
名札ケース10をクリップ11に支持させるときは、移動部材17を第2の位置(図4参照)に回転させフック部15の円弧状部21を名札ケース10の保持用穴10Aに挿入し、その後に、移動部材17を第1の位置(図1参照)に回転させればよい。このとき、移動部材17の突条37Aがクリック動作をもってスロット溝23Aに嵌合するため、以後の不用意なる回転が規制されて名札ケース10の脱落が防止される。
【0027】
このようにして支持された名札ケース10は、図2に示されるように、保持用穴10Aの形成縁がフック部15の底部に引っ掛かった状態となり、円弧状部21の先端は保持用穴10Aの形成縁よりも上方に位置するため、名札ケース10に下方への引っ張り力が作用することがあっても名札ケース10の脱落は物理的に防止されることとなる。
【0028】
従って、このような実施形態によれば、名札ケース10を紛失することなく、常に一定の状態に支持することができるクリップを提供することができる。
【0029】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、位置、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、位置などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した物品の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0030】
例えば、前記実施形態では、被保持体として、名札ケース10を対象とした場合を図示、説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、携帯電話やキーホルダー等を吊り下げ保持することもできる。
【0031】
また、前記開放口Cが前方に形成される場合に限らず、後部に形成される場合であってもよい。要するに、本発明は、フック部15の先端位置がフック部15の底部よりも上方に位置し、当該フック部15の底部に保持用穴10Aを引っ掛ける構成であれば足りる。
【0032】
また、前記実施形態では、移動部材17が鉛直面内で回転することで開放口Cを開閉する構成としたが、移動部材17を本体16に対してスライド移動可能に設けることで開放口Cを開閉できるようにしてもよい。つまり、本発明は、移動部材17の面に対して前方から押圧力が付与されたときに、その押圧力によって開放口Cを開放することのない開閉方式を採用してあればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態の使用状態を示す概略斜視図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】図1の分解斜視図。
【図4】名札ケースを取り外すときの状態を示す概略斜視図。
【図5】クリップを背面側から見た分解斜視図。
【図6】移動部材が第1の位置にあるときのクリップの右側面図。
【図7】移動部材が第2の位置にあるときのクリップの右側面図。
【図8】クリップの正面図。
【図9】クリップの背面図。
【図10】クリップの平面図。
【符号の説明】
【0034】
10 名札ケース(被保持体)
10A 保持用穴
11 クリップ
13 紐状部材
15 フック部
16 本体
17 移動部材
18 ポケット装着用クリップ
38 開閉板部(閉塞用領域)
C 開放口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保持体に設けられた保持用穴に係り合わせて前記被保持体の吊り下げ保持を可能とするクリップにおいて、
被保持体着脱用の開放口が形成されたフック部を有する本体と、この本体に取り付けられるとともに当該本体に対して相対移動可能に設けられた移動部材とを含み、
前記開放口は、前記フック部の底部よりも上方に位置するように形成され、
前記移動部材は、当該移動部材を第1の位置に設定したときに前記開放口を閉塞する一方、第2の位置に設定したときに前記開放口を開放して被保持体の着脱を可能としたことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
名札ケースに設けられた保持用穴に係り合わせて前記名札ケースの吊り下げ保持を可能とするクリップにおいて、
名札ケース着脱用の開放口が形成されたフック部を有する本体と、この本体に取り付けられるとともに当該本体に対して相対移動可能に設けられた移動部材とを含み、
前記開放口は、前記フック部の底部よりも上方に位置するように形成され、
前記移動部材は、当該移動部材を第1の位置に設定したときに前記開放口を閉塞する一方、第2の位置に設定したときに前記開放口を開放して名札ケースの着脱を可能としたことを特徴とするクリップ。
【請求項3】
前記移動部材は、前記本体に対して回転可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のクリップ。
【請求項4】
前記移動部材は、前記本体に対してスライド移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のクリップ。
【請求項5】
前記本体の上部に吊り下げ用の紐状部材の装着部が設けられ、当該装着部は、紐状部材が閉ループ状態を保ったまま交換可能に設けられていることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のクリップ。
【請求項6】
前記移動部材は、前記開放口の左右幅と略同一の幅を有する閉塞用領域を含み、当該閉塞用領域が前記第1の位置に保たれたときに、前記開放口を閉塞することを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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