説明

クリーニング装置、定着装置及び画像形成装置

【課題】被清掃体の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するフィルム部材を挟んで当接部材を被清掃体に当接させる当接位置におけるフィルム部材にZ折れが発生することを抑制することができるクリーニング装置、並びにこれを備えた定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】塗布ローラ41表面に接触し、塗布ローラの表面移動方向に対して逆方向に表面移動するウェブ72と、ウェブ72が塗布ローラ表面に接触する当接位置Eでウェブ72を挟んで塗布ローラ41表面に当接するフィルム当接ブレード71とを備える塗布部材クリーニング装置70において、当接位置Eの上流側及び下流側に配置された、第一ガイドローラ75と第二ガイドローラ76の表面上におけるウェブ72が接触する領域にウェブ72の移動方向に沿うように、第一ローラ溝75a及び第二ローラ溝76aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に用いられるクリーニング装置、並びに、これを備えた定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。特に、電子写真方式の画像形成装置は、普通紙に高精細な画像を高速で形成することができるため、広くオフィスで使用されている。このような電子写真方式の画像形成装置においては、記録媒体上のトナーを加熱して溶融させ、溶融したトナーを加圧することによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く用いられている。この熱定着方式は、高い定着速度及び高い定着画像品質等を提供することができるため、好適に用いられている。
【0003】
しかし、このような熱定着方式を採用した電子写真方式の画像形成装置における消費電力の半分以上は、熱定着方式の定着装置においてトナーの加熱処理のために消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、低消費電力(省エネルギー)の画像形成装置が望まれている。このため、従来の画像形成装置における消費電力の半分以上を消費する定着装置での省エネルギー化が求められている。そのため、このような省エネルギー化の背景の下、定着装置の方式としては、加熱処理に多くの電力を消費していた熱定着方式に代えて、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させる定着方式、または、トナーを加熱することを必要としない定着方式が望まれている。特に、トナーを加熱することなくトナーを記録媒体に定着させる非加熱定着方式が低消費電力の点で理想的である。
このような非加熱定着方式としては、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させる湿式定着方式が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献4に記載の定着装置で用いる定着方式)。このように、湿式定着方式の定着装置ではトナーを軟化させるために加熱処理を行う必要がないため、熱定着方式に比べて省エネルギー化を実現することができる。
【0004】
特許文献1〜特許文献4の何れの特許文献に記載の定着装置も、接触型の定着液付与手段である塗布ローラを用いて定着液を液状のまま記録媒体に塗布することで、定着液を記録媒体上の未定着トナー像に付与する構成である。
このような液状の定着液を塗布する構成に対して、特許文献5及び6には、液状の定着液をその液中に気泡が分散した泡状定着液とし、この泡状定着液を記録媒体上のトナー像に塗布する構成が記載されている。
このように、定着液を泡状とすることにより定着液の密度を下げることが出来るため、液状の定着液よりも少量の定着液で塗布ローラ表面上の定着液の膜厚を厚くすることが出来、記録媒体上のトナー粒子に対する液体の表面張力の影響を軽減することができる。また、少量の定着液であるため、記録媒体上の残液感を抑制することができる。さらに、泡状の定着液は通常の液体状の定着液よりも流れ難いため、定着液によってトナー粒子が流されることによる画像劣化も防止することができる。このように、泡状定着液を用いて定着を行うことにより、残液感を抑制することができる少量の定着液塗布量で、トナー画像を乱すことなく定着することができる。
【0005】
特許文献5及び6に記載の定着装置のように、塗布ローラ等の塗布部材を用いて泡状定着液を記録媒体に塗布する構成の場合、記録媒体に泡状定着液を塗布したあとの塗布部材から除去手段によって除去する塗布部材クリーニング装置を設けることが望ましい。これは、記録媒体に泡状定着液を塗布する塗布位置を通過した後の塗布部材には記録媒体に塗布しきれずに残った残留泡状定着液が付着しており、この残留泡状定着液を回収するためである。残留泡状定着液は、泡状定着液として塗布部材に供給された後、時間が経過しており、且つ、塗布位置で機械的な力を受けているため、泡の一部が消泡するなどにより、塗布部材に供給されたときよりも泡状定着液の密度が上昇することが考えられる。このため、塗布部材に残留泡状定着液が残留している状態で新たな泡状定着液を塗布部材に供給すると、密度が異なる泡状定着液が混ざって記録媒体に泡状定着液を均一に付与することができなくなるおそれがある。さらに、泡状定着液を用いることにより、オフセットして塗布部材に付着するトナーは通常の液状の定着液を用いる構成に比べて少なくなるものの、オフセットは起こり得るものであり、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写され、画像劣化となるおそれがある。このように、記録媒体に付与する泡状定着液が不均一になったり、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写されたりすることを防止するために、塗布部材クリーニング装置を設けて残留泡状定着液を塗布部材表面から除去するのである。
【0006】
しかしながら、塗布部材クリーニング装置の除去手段として、塗布部材の表面に当接してその表面上のオフセットトナーを含んだ残留泡状定着液を除去するクリーニングブレードを設けたところ、次のような問題を引き起こすことがあった。すなわち、クリーニングブレードを塗布部材の表面に当接させると、クリーニングブレードと塗布部材との当接位置の入口(当接位置に対して塗布部材の表面移動方向上流側)でオフセットトナーを含んだ残留泡状定着液を塞き止め滞留させる。このオフセットトナーは、画像形成動作中には定着液によって軟化した状態になっているが、画像形成動作が停止して長期間放置されると、硬い樹脂の塊になる。この樹脂の塊は、クリーニングブレードと塗布部材表面との両方に対して固着した状態になる。この状態で画像形成動作を開始すると、硬い樹脂の塊を粉砕しながら、粉砕物をクリーニングブレードと塗布部材との当接位置に進入させて、ブレード表面や塗布部材表面を傷付けてしまう。そして、この傷により、クリーニング不良が発生してしまう。
【0007】
このような問題を解決可能なクリーニング装置として、本出願人は、特許文献6において、次のようなクリーニング装置を提案している。すなわち、塗布部材表面に当接し、その当接位置で塗布部材の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状のフィルム部材と、フィルム部材と塗布部材表面とが接触する位置でフィルム部材を挟んで塗布部材表面に当接するクリーニングブレードとを備えるクリーニング装置である。
このようなクリーニング装置であれば、フィルム部材を挟んでクリーニングブレードが塗布部材表面に当接する当接位置の入口で、残留泡状定着液などの当接表面上の付着物を塞き止めて滞留させるが、フィルム部材を適切なタイミングで表面移動させることによって、当接位置の入口に滞留していた異物を取り去ることができる。これにより、付着物がクリーニングブレードと塗布部材との当接位置に滞留し続けることに起因して塗布部材の表面を傷付けることを防止し、塗布部材の表面が傷付くことに起因するクリーニング不良の発生を防止することができる。これにより、塗布部材の表面の付着物を長期間に渡って良好に除去することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献6に記載のクリーニング装置では、当接位置におけるフィルム部材にシワが発生し、このシワが成長して「Z折れ」と呼ばれる、部分的に三枚分のフィルム部材が重なった状態となる現象が発生することがあった。当接位置におけるフィルム部材にZ折れが発生すると、当接位置におけるフィルム部材の厚みが異なることで、当接位置の幅方向(フィルム部材の表面における移動方向に直交する方向)で当接圧が不均一になり、クリーニング不良の原因となる。
【0009】
このような問題は、塗布部材の表面上の泡状定着液を用紙などの最終的な記録媒体に塗布する構成に限らず、中間転写体などの中間的なトナー像担持体に塗布する構成でも生じ得る。
また、このような問題は、上述のように、軟化させたトナー粒子が経時で硬化するような定着液を用いた定着装置の塗布部材クリーニング装置のように、被清掃体上の除去対象となる付着物がトナー粒子を含有する定着液であるクリーニング装置において生じ易い。しかし、被清掃体上の除去対象となる付着物はトナ−粒子を含有する定着液に限るものではない。また、フィルム部材を挟んで被清掃体に当接する部材としては、ブレード状の部材に限るものではない。
【0010】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、被清掃体の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するフィルム部材を挟んで当接部材を被清掃体に当接させる当接位置におけるフィルム部材にZ折れが発生することを抑制することができるクリーニング装置、並びにこれを備えた定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、被清掃体の表面に接触し、該被清掃体の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能あるいは無端移動可能に複数の張架部材に張架された帯状のフィルム部材と、該フィルム部材が該被清掃体表面に接触する位置で該フィルム部材を挟んで該被清掃体表面に当接する当接部材と有し、該張架部材として、該フィルム部材を挟んで該当接部材が該被清掃体表面に当接する当接位置に対して、該フィルム部材の移動方向上流側の一つ目の該張架部材である当接位置上流側張架部材と、該当接位置に対して該フィルム部材の移動方向下流側の一つ目の該張架部材である当接位置下流側張架部材とを少なくとも有し、該被清掃体の表面上の付着物を除去するクリーニング装置において、上記当接位置上流側張架部材と上記当接位置下流側張架部材との表面上における該フィルム部材が接触する領域には、該フィルム部材の移動方向に沿うように、かつ、該フィルム部材の移動方向に交差する方向の複数箇所で該フィルム部材と対向するように、溝部が形成されていることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のクリーニング装置において、上記当接位置上流側張架部材または上記当接位置下流側張架部材の少なくとも一方は、上記フィルム部材が表面移動するときに表面移動せず、該フィルム部材との間で表面を摺擦する固定型張架部材であり、該固定型張架部材の上記溝部は、該固定型張架部材の該フィルム部材が接触する領域における該フィルム部材表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、該フィルム部材の移動方向下流側ほど両端部側となるように、該フィルム部材の移動方向に対して傾斜していることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のクリーニング装置において、上記当接位置上流側張架部材または上記当接位置下流側張架部材の少なくとも一方は、上記フィルム部材の表面移動に合わせて連れ回る連れ回りローラであり、該連れ回りローラの上記溝部は、該連れ回りローラの該フィルム部材が接触する領域における該フィルム部材表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、該フィルム部材の移動方向下流側ほど中央部側となるように、幅方向の略中央部を挟んで巻き方向が逆となる螺旋状の溝であることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のクリーニング装置において、上記当接位置上流側張架部材または上記当接位置下流側張架部材の少なくとも一方は、上記フィルム部材が表面移動するときに、該フィルム部材よりも速い速度で表面移動し、該フィルム部材との間で表面を摺擦する順回転駆動ローラであり、該順回転駆動ローラの上記溝部は、該順回転駆動ローラの該フィルム部材が接触する領域における該フィルム部材表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、該フィルム部材の移動方向下流側ほど中央部側となるように、幅方向の略中央部を挟んで巻き方向が逆となる螺旋状の溝であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4のクリーニング装置において、上記当接位置上流側張架部材に上記順回転駆動ローラを用いることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のクリーニング装置において、上記当接位置上流側張架部材または上記当接位置下流側張架部材の少なくとも一方は、上記フィルム部材が表面移動するときに、該フィルム部材の移動方向とは逆方向に表面移動し、該フィルム部材との間で表面を摺擦する逆回転駆動ローラであり、該逆回転駆動ローラの上記溝部は、該逆回転駆動ローラの該フィルム部材が接触する領域における該フィルム部材表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、該フィルム部材の移動方向下流側ほど両端部側となるように、幅方向の略中央部を挟んで巻き方向が逆となる螺旋状の溝であることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか1項に記載のクリーニング装置において、上記フィルム部材は、繰り出し軸から繰り出され、上記当接位置を通過した後、巻き取り軸に巻き取られる、巻き取り式のウェブであり、該巻き取り軸に対して該ウェブの移動方向上流側の一つ目の上記張架部材は、該巻き取り軸に巻き取られたウェブの径が経時で変化しても、該ウェブに常に接触する構成であることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7に記載のクリーニング装置において、上記当接位置から上記巻き取り軸までの間に配置された上記張架部材は、上記ウェブの上記当接部材が当接する側の面にのみ接触するものであり、該当接位置から該巻き取り軸までの間の複数箇所に配置されていることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7または8に記載のクリーニング装置において、上記当接位置下流側張架部材から上記巻き取り軸までの間の上記フィルム部材を加熱する加熱手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9の何れか1項に記載のクリーニング装置において、上記フィルム部材の表面移動が、連続的な表面移動ではなく、表面移動と停止とを繰り返す間欠動作であることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、該樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に該泡状定着液を付与する泡状定着液付与手段とを有し、該泡状定着液を付与することで軟化した該樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、上記定着液泡状化手段によって上記泡状定着液になり、上記定着液付与対象に付与されず、表面移動体に付着した状態の該泡状定着液をクリーニングする泡状定着液クリーニング手段を備え、該泡状定着液クリーニング手段として、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のクリーニング装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11の定着装置において、上記泡状定着液付与手段は、表面移動する表面に供給された上記泡状定着液を、上記定着液付与対象と対向する塗布位置で該定着液付与対象の表面に塗布する塗布部材を有し、上記クリーニング装置を、該塗布位置を通過した後の該塗布部材の表面上の該泡状定着液をクリーニングする塗布部材クリーニング手段に用いることを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面である定着液付与対象の表面に泡状定着液を塗布し、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、該定着手段として、請求項11または12に記載の定着装置を用いることを特徴とするものである。
【0012】
本発明者らがZ折れの発生について鋭意検討を重ねたところ、Z折れはフィルム部材の移動方向に対して斜めに発生した「斜めシワ」が徐々に深くなり、最終的にシワを形成するフィルム部材が重なることによって発生することが分かった。この斜めシワは、次のような経緯で発生するものと考えられる。
すなわち、張架部材同士の回転軸の僅かな傾きや当接位置における当接圧のムラによって、フィルム部材に対して捩れる方向の力が加わり、フィルム部材に斜めシワの最初のきっかけとなるような変形が生じる。そして、この捩れる方向の力が加わったままの状態で、フィルム部材が表面移動することで変形が徐々に大きくなり、斜めシワ発生するものと考えられる。
【0013】
本発明のクリーニング装置のように、表面に溝部を形成した当接位置上流側張架部材及び当接位置下流側張架部材を用いたところ、表面が平滑なものに比べて当接位置における斜めシワの発生が抑制できることを確認した。これは以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、溝部が形成された当接位置上流側張架部と当接位置下流側張架部材との間に張架され、当接位置を含む領域のフィルム部材には、フィルム部材の移動方向に沿うような複数の小さな縦シワが形成される。このように、フィルム部材に小さな縦シワが発生した状態で、斜めシワが発生するには複数の縦シワを横切る必要があり、これは平坦なフィルム部材に斜めシワが発生するよりもより大きな捩れ方向の力が作用する必要がある。上述したように、フィルム部材に斜めシワを発生させる力は、フィルム部材が表面移動する間に徐々にシワを形成する程度の力である。このため、平坦なフィルム部材よりも大きな捩れ方向の力が作用する必要がある縦シワが発生した状態のフィルム部材では、斜めシワ発生の最初のきっかけとなるような力が作用しても斜めシワになるような変形が生じ難い。このように変形が生じ難いため、本発明のクリーニング装置のように、当接位置上流側張架部材及び当接位置下流側張架部材の表面に溝部が形成された構成は、表面が平滑なものに比べて斜めシワの発生が抑制できるものと考えられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、当接位置に斜めシワが発生することを抑制できるため、斜めシワに起因して発生するZ折れが当接位置に発生することを抑制することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の塗布部材クリーニング装置の斜視説明図。
【図2】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。
【図3】同プリンタのK用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図4】同プリンタの定着装置を示す拡大構成図。
【図5】同定着装置の定着液供給部を示す拡大構成図。
【図6】同定着装置における膜厚調整ブレードと塗布ローラとを示す拡大模式図。
【図7】図6よりも膜厚調整ギャップを広くした状態の膜厚調整ブレードと塗布ローラとを示す拡大模式図。
【図8】塗布ニップにおける塗布ローラ表面と転写紙とを拡大して示す拡大模式図。
【図9】泡状定着液を示す拡大模式図。
【図10】本実施形態の塗布部材クリーニング装置の拡大説明図。
【図11】当接位置近傍の拡大説明図。
【図12】本実施形態の塗布部材クリーニング装置を張架部材側から見た模式図。
【図13】図12に示す塗布部材クリーニング装置のシワの発生状況の模式図。
【図14】図13とはガイドローラの溝部の傾きが逆方向の塗布部材クリーニング装置のシワの発生状況の模式図。
【図15】第一ガイドローラと繰り出し軸との間に裏面接触ローラを設けた構成の説明図。
【図16】変形例の定着装置の定着液塗布部の拡大説明図。
【図17】(a)は、従来の定着装置において、比較的薄定着液の層を塗布ローラから転写紙に塗布している状態を示す模式図、(b)は、同状態における塗布ローラと転写紙との間の拡大して示す拡大模式図。
【図18】従来の液定着方式の定着装置における定着液塗布部を拡大して示す拡大構成図(液層厚みが比較的大きいとき)。
【図19】平滑なローラを使用した塗布部材クリーニング装置を張架部材側から見た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタ100という)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタ100の基本的な構成について説明する。図2は、プリンタ100の要部を示す概略構成図である。同図において、プリンタ100は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3(Y,M,C,K)、転写ユニット20、紙搬送ユニット28、レジストローラ対15、定着装置30、図示しない光書込装置などを備えている。
【0017】
図示しない光書込装置は、レーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、プロセスユニット3(Y,M,C,K)におけるドラム状の感光体4(Y,M,C,K)に向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4(Y,M,C,K)の表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像になる。なお、符号の後に付されたY,M,C,Kという添字は、イエロー,マゼンタ,シアン,黒用の仕様であることを示している。
【0018】
プロセスユニット3(Y,M,C,K)はそれぞれ、潜像担持体である感光体4と、その周囲に配設される各種機器とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ100本体に対して着脱可能になっている。黒用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、図3に示すように、感光体4Kの他、現像装置6K、帯電装置7K、除電ランプ8K、ドラムクリーニング装置9K等を備えている。
【0019】
感光体4Kとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。無端ベルト状のものを用いても良い。
【0020】
現像装置6Kは、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて静電潜像を現像してKトナー像を得る二成分現象方式のものである。二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用してもよい。感光体4Kの表面上で現像されたKトナー像は、後述する一次転写ニップで中間転写ベルト25に一次転写される。
【0021】
一次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーは、ドラムクリーニング装置9Kによって感光体4K表面から除去される。同図では、ドラムクリーニング装置9Kとして、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレードによって転写残トナーを掻き取る方式のものを示しているが、他の方式によって転写残トナーを除去するものを用いてもよい。
【0022】
除電ランプ8Kは、光照射によって感光体4Kを除電する。除電された感光体4Kの表面は、帯電装置7Kによって一様に帯電せしめられることで、初期化する。帯電装置7Kとしては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4Kに当接させながら回転させるものを示したが、感光体4Kに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0023】
先に示した図2において、4つのプロセスユニット3(Y,M,C,K)の感光体4(Y,M,C,K)には、これまで説明してきたプロセスによって(Y,M,C,K)トナー像が形成される。4つのプロセスユニット3(Y,M,C,K)の下方には、転写ユニット20が配設されている。この転写ユニット20は、複数の張架ローラ(21、22、23)によって張架している中間転写ベルト25を、感光体4(Y,M,C,K)に当接させて、Y,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。そして、駆動ローラ21の回転駆動によって中間転写ベルト25を図中時計回り方向に無端移動させる。
【0024】
Y,M,C,K用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ26(Y,M,C,K)によって中間転写ベルト25を感光体4(Y,M,C,K)に向けて押圧している。これら一次転写ローラ26(Y,M,C,K)には、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の一次転写ニップには、感光体4(Y,M,C,K)上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各一次転写ニップで各色トナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0025】
転写ユニット20の図中下方には、駆動ローラ29bと二次転写ローラ29aとの間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。この紙搬送ユニット28は、自らの二次転写ローラ29aと、転写ユニット20の中間転写ベルト25との間に、紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。
【0026】
紙搬送ユニット28の二次転写ローラには図示しない電源によって二次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット20の中間転写ベルト25のループ内で、中間転写ベルト25が掛け回されている転写バックアップローラ23は、接地されている。これにより、二次転写ニップに二次転写電界が形成されている。
【0027】
この二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対15が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙Pに一括二次転写され、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。二次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って図示しない定着装置30へと搬送される。
【0028】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、二次転写ニップで転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置24によって掻き取り除去される。
【0029】
次に、定着装置30について説明する。
図4は、実施形態に係るプリンタの定着装置30を示す拡大構成図である。この定着装置30は、転写紙Pに定着液を塗布する定着液塗布部140とこの定着液塗布部140に定着液を供給する定着液供給部130とからなる。
定着液塗布部140は、塗布ローラ41、加圧ローラ43、塗布部材クリーニング装置70、加圧部材クリーニング装置80などを備える。
【0030】
図5は、定着装置30の定着液供給部130を示す拡大構成図である。
定着液供給部130は、定着液収容器31内に収容されている液状定着液31aを泡化させながら、得られた泡状定着液Buを塗布ローラ41に供給するものである。具体的には、定着液収容器31内に収容されている液状定着液31aを、搬送ポンプ33及び液搬送パイプ34等からなる定着液輸送手段によって気体・液体混合部35に送る。
【0031】
搬送ポンプ33としては、ギヤポンプ、ベローズポンプ、チューブポンプ等を用いることが可能であるが、中でもチューブポンプを用いることが望ましい。ギヤポンプ等のように、定着液中で駆動する機構があると、ポンプ内で液が起泡し、液に圧縮性が出て、搬送能力が低下させるおそれがある。また、前述の機構を構成する材料によって定着液を汚染したり、機構を定着液で劣化させたりするおそれもある。これに対し、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であり、定着液内で駆動する機構がないため、それらの不具合を引き起こすことがない。
【0032】
気体・液体混合部35においては、定着液の流入とともに空気口36から空気を取り入れて液状定着液31aと空気とを混合しながら、それらを微小孔シート37に通すことで、定着液を泡化させる。微小孔シート37の孔径は、例えば30〜100[μm]程度である。微小孔シート37の代わりに、連泡構造の多孔質部材である焼結セラミックス板、不織布、発泡樹脂シート等を用いてもよい。また、液状定着液31aと空気口36からの空気とを羽根状攪拌子で攪拌して液に気泡を巻き込みませることで泡化させたり、搬送ポンプ33の吐出側に空気供給ポンプを接続して泡化させたりする構成を採用してもよい。
【0033】
気体・液体混合部35としては何れの構成であっても、例えば0.5〜1[mm]程度の比較的大きな泡径の泡をごく短時間で生成することができる。但し、後述するように、定着用の泡としては、できるだけ細かくする方が望ましい。そこで、プリンタ100では、気体・液体混合部35で得られた比較的大きな泡の泡状定着液Buを、泡微細化部38で微細化させる。
【0034】
気体・液体混合部35で生成された比較的大きな泡の泡状定着液Buは、泡搬送パイプ38cを通って泡微細化部38に供給される。
泡微細化部38は、比較的大きな泡径の泡をせん断力の付与によって二つ以上に分割して微細化させる。外側円筒38aの中に内側円筒38bを内包する二重円筒構造になっており、泡状定着液Buを不動の外側円筒38aと、回転する内側円筒38bとの隙間に通すことで、泡状定着液Buの比較的大きな泡径の泡にせん断力を付与する。このせん断力により、大きな泡を二つ以上の微小な泡に分割しながら、外側円筒38aに設けられた泡の出口38dからノズル39へ、所望の微小な泡径を有する泡状定着液Buを排出する。
【0035】
なお、液搬送速度は、回転する内側円筒38bの回転数や、内側円筒38bの軸線方向長さに基づいて決定することが望ましい。外側円筒38aの内径をd1[mm]、内側円筒38bの軸線方向長さをL[mm]で表し、且つ内側円筒38bの外径d2[mm]、回転数をR[rpm]で表すと、微小な泡を生成するための液搬送速度V[mm/秒]は、「V=L×π×(d1−d2)/4/(1000/R)」という演算式で決まることがわかった。
【0036】
例えば、d1が10[mm]、d2が8[mm]、Lが50[mm]、回転数が1000[rpm]とすると、液搬送速度は約1400[mm/秒](1.4[cc/秒])となる。A4サイズの転写紙Pに定着処理を施すために必要な泡状定着液の量が3[cc]であると仮定すると、液状定着液31aから必要量の泡状定着液Buを生成するのに、約2[秒]の立ち上がり時間ですみ、極めて素早く、所望の泡径を有する泡状定着液Buを生成可能となる。内側円筒38bにらせん状の溝を設けて、外側円筒38a内での搬送性を向上させてもよい。
【0037】
このように、液状定着液31aを大きな泡径の泡からなる泡状定着液Buへと泡化させる気体・液体混合部35と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡に分割する泡微細化部38とを組み合わせることで、液状定着液31aを極めて短時間に5〜50[μm]程度の微小な泡径の泡からなる泡状定着液Buに変化させることができる。
【0038】
なお、泡状定着液Buのかさ密度としては、0.01〜0.1[g/cm]の範囲が望ましい。また、定着液は、転写紙P上のトナー等の樹脂含有微粒子の層への塗布時に泡状となっていればよく、定着液収容器31内で泡状である必要はない。定着液収容器31中では気泡を含有しない液体の状態にしておき、容器から液を供給する時点や、樹脂含有微粒子の層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にすることで、定着液の輸送体積や保存体積の減容を図って、輸送コストや保存コストを低減することができる。
【0039】
泡微細化部38で得られた微細な泡状定着液Buについては、図4に示したように、ノズル39に通して、塗布ローラ41表面に供給する。供給された泡状定着液Buは、塗布ローラ41表面に対して自らの先端を所定の間隙を介して対向させている膜厚調整ブレード42により、塗布ローラ41表面上での膜厚が調整される。この膜厚調整ブレード42は、図6、図7に示すように、片持ち支持された状態で、固定端側のブレード回動軸42aを中心にして回動することで、自らの先端と、塗布ローラ41との間隙を変化させる。図示しない制御部は、モータ駆動によるブレード回動で前述の間隙を調整することで、図6に示すように、泡状定着液Buの塗布ローラ41表面上における膜厚を比較的薄くしたり、図7に示すように比較的厚くしたりする膜厚調整を行う。
【0040】
なお、膜厚調整ブレード42の代わりに、ワイヤーバーによって膜厚を調整してもよい。この場合、膜厚調整ブレード42に比べ、塗布ローラ41表面上における軸線方向の膜厚を均一にすることが可能になる。
【0041】
トナー像が形成された転写紙Pに泡状定着液Buを塗布するための塗布ローラ41には、弾性ローラ部を具備する加圧ローラ43が当接して塗布ニップCを形成している。上述した紙搬送ベルト29によって二次転写ニップから定着装置30に向けて搬送される転写紙Pは、画像面を塗布ローラ41に向けた状態でこの塗布ニップC内に挟み込まれる。そして、塗布ニップC内において、塗布ローラ41上の泡状定着液Buが画像面に塗布される。
【0042】
次に本発明に係る定着装置30の定着の原理について概説する。
本発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることで樹脂を含有する微粒子を軟化させる軟化剤を含有した泡状定着液を、記録媒体等の定着液塗布対象の表面上の樹脂微粒子に付与する。これにより、定着液塗布対象の表面上の樹脂微粒子を軟化させ、樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着方法を取っている。言うまでもないことだが、ここで、表記している樹脂微粒子とは、特に何であるかを限定はしないが、画像形成装置に適用した場合だと、トナーのことを指す。
【0043】
次に、従来の湿式定着方式を用いた定着装置について説明する。
上述した上記特許文献1には、トナーを溶解または膨潤可能で、水に不溶または難溶な有機化合物が水に分散混合された水中油滴型の定着液を用いる湿式定着方式の定着装置が記載されている。この定着装置では、未定着のトナーが所定位置に配設された被定着物の表面に対して定着液を噴霧または滴下してトナーを溶解または膨潤させた後、被定着物を乾燥させる構成である。
【0044】
しかし、上記特許文献1の定着装置では、水に不溶又は難溶な有機化合物が、水に分散混合された水中油滴型の定着液を用いている。このため、多量の定着液を未定着トナーに付与した場合には、転写紙などの記録媒体(非定着物)が、定着液の水分を吸収し、記録媒体にシワやカールが発生する。これにより、画像形成装置に必要とされる安定かつ高速な記録媒体の搬送を著しく損なうこととなる。そこで、乾燥装置を用いて、定着液に含まれる多量の水を蒸発させることにより、記録媒体に付与された定着液から水分を除去しようとすると、熱定着方式を用いる画像形成装置の消費電力に匹敵する電力を必要とすることとなる。
【0045】
また、撥水性処理された未定着トナーを弾かない定着液として、油性溶媒に、トナーを溶解又は膨潤させる材料を溶解させた油性の定着液が従来よりいくつか提案されている。その一つとして例えば、上記特許文献2には、トナーを構成する樹脂成分を溶解又は膨潤させる材料を成分としての脂肪族二塩基酸エステル等を希釈液(溶媒)として不揮発性のジメチルシリコーンで希釈した(溶解させた)定着液が提案されている。また、上記特許文献3には、未定着トナー画像の定着液として、トナーを溶解し、かつシリコーンオイルと相溶性を有する溶剤の100の容量に対し、シリコーンオイル8〜120容量部を混合してなる相溶状態の定着液が提案されている。これにより、静電気的方式で形成された未定着トナー像を、画像を乱すことなく鮮明にかつ容易に記録媒体上に固着できる。このような油性の定着液は、撥水性処理された未定着トナーとの高い親和性を有する油性溶媒を含むため、撥水性処理された未定着トナーを弾くことなく、トナーを溶解又は膨潤させ、トナーを記録媒体に定着させることができる。
【0046】
このような従来の湿式定着方式では定着液を通常の液体状のまま記録媒体状のトナー像に付与していたため、記録媒体上のトナー像への定着液の微量塗布と塗布ローラへのトナーオフセット防止を両立することが極めて難しいという問題があった。この問題について図17及び図18を用いて説明する。
【0047】
図17は、従来の湿式定着方式の液状定着液を用いる定着装置60の説明図である。図17(a)は液状定着液を用いる定着装置60の概略説明図である。また、図17(b)は、液状定着液を用いる定着装置60における記録媒体である転写紙Pと転写紙Pに接触して液状定着液31aを塗布する塗布部材である塗布ローラ41との近接部の拡大説明図である。
図17(a)に示すように、塗布ローラ41を用いて転写紙P上の未定着のトナー層Tへ液状定着液31aを塗布する構成において、液状定着液31aを転写紙Pに微量付与するために、塗布ローラ41上の液状定着液31aの膜厚が未定着のトナー層Tの厚みよりも薄くなる場合、図17(b)のようになる。塗布ローラ41上の液状定着液31aには、塗布ローラ41の表面が転写紙Pと接触する塗布位置で塗布ローラ41から転写紙Pに付与されるものの他に、図17(b)中の矢印F1で示すように塗布位置を通過した後も塗布ローラ41の表面に残留するものがある。そして、塗布ローラ41の表面が転写紙Pから分離する位置で、塗布ローラ41表面に残留する液状定着液31aの液膜によって生じる表面張力(図17(b)中の矢印F2方向に働く)で未定着のトナー層Tのトナー粒子が引っ張られてしまう。これにより、塗布ローラ41の表面にオフセットしたトナー粒子Taが付着し、塗布ローラ41と剥離した後の転写紙P上の定着トナー層Tbによって形成される画像が大幅に乱れてしまう。
【0048】
逆に、塗布ローラ41上の液状定着液31aの膜厚を未定着のトナー層Tよりも十分厚くすると、図18のようになる。塗布ローラ41の表面が転写紙Pから分離する位置では、液状定着液31aの液量が多いため塗布ローラ41表面の液膜による表面張力が未定着のトナー層Tのトナー粒子に作用しにくくなる。これにより、塗布ローラ41側にオフセットしたトナーが付着しにくくなるが、転写紙Pの紙面に多量の液状定着液31aが塗布されるため、過剰な液状定着液31aにより転写紙P上のトナー粒子が流され画質劣化を生じたり、転写紙Pに付与した液状定着液31aの乾燥時間が長くなり定着応答性に問題が生じたりしてしまう。また、転写紙Pに著しい残液感(紙を手で触れたときの湿った感触)が発生する。さらに、液状定着液31aが水を含有するものであると、記録媒体として紙等のセルロースを含有する転写紙Pへの液状定着液31aの塗布量が多い場合、紙等の転写紙Pが著しくカールし、画像形成装置などの装置内における記録媒体搬送時に紙詰まりが発生する恐れがある。
このように、塗布ローラ41を用いて液状定着液31aを塗布する構成では、液状定着液31aの塗布量が多すぎると、トナー粒子が流されることによる画質劣化、液状定着液31aの乾燥時間が長くなることによる定着応答性の低下という問題が生じる。さらに、記録媒体の材質によっては紙詰まりが発生しやすくなるという問題が生じる。一方、これらの問題を防止するために液状定着液31aを微量塗布する構成とすると、上述したように塗布ローラ41の表面にトナー粒子がオフセットしてしまう。よって、定着応答性向上や残液感低減やカール防止のために転写紙P上のトナー層に定着液を微量塗布することと塗布ローラ41へのトナーオフセットを防止することとを両立することが極めて難しい。
【0049】
定着液の微量塗布とトナーオフセットの防止とを両立することができる定着方式として、上記特許文献5には、定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とし、この泡状定着液を塗布ローラを用いて記録媒体上のトナー像に塗布する構成が記載されている。このように、定着液を泡状とすることにより定着液の密度を下げることが出来るため、従来よりも少量の定着液で塗布ローラ表面上の定着液の膜厚を厚くすることが出来、液体の表面張力の記録媒体上のトナー粒子に対する影響を軽減することができる。また、少量の定着液であるため、記録媒体上の残液感を抑制することが出来、泡状の定着液は通常の液体状の定着液よりも流れ難いため、定着液によってトナー粒子が流されることによる画像劣化も防止することができる。よって、上記特許文献5のように泡状定着液を用いて定着を行うことにより、従来よりも少量の定着液塗布量でトナー画像を乱すことなく定着することができる。
そして、本実施形態の定着装置30も上記特許文献5と同様に定着液を泡状にして記録媒体上のトナー層に塗布する構成である。
【0050】
また、上記特許文献5に記載の定着装置は、塗布部材である塗布ローラ上の泡状定着液の膜厚を制御する泡状定着液膜厚制御手段を備えている。そして、塗布ローラが記録媒体に接して泡状定着液を記録媒体上の樹脂微粒子に付与している時間が、塗布ローラによって塗布される泡状定着液が記録媒体上の樹脂微粒子層を浸透して記録媒体に到達する浸透時間より同じ又は長くなるように膜厚を制御する。これにより、樹脂微粒子の塗布ローラへのオフセット付着を防止でき、樹脂微粒子を乱すことなく、かつ樹脂微粒子を担持した記録媒体に定着液を塗布した後は素早く樹脂微粒子の記録媒体への定着が可能となる。このため、定着応答性に優れた定着を行うことができる。
【0051】
図8は、本実施形態の定着装置30において塗布ローラ41が転写紙Pと接触する部分(塗布ニップC)の拡大説明図である。
定着液を、少量であっても厚みの嵩張る泡状定着液Buの状態で転写紙Pに塗布することで、図示のように、液状の場合に比べてニップ出口から遠い位置で塗布ローラ41表面上の定着液と転写紙P上の定着液とを分離させる。更に、泡状にすることで、塗布ローラ41表面上の定着液の表面張力によるトナーの引き込みを解消する。これらの結果、塗布ローラ41へのトナーのオフセットを有効に抑えることができ、オフセットによる白抜け画像の発生を解消することができた。
【0052】
なお、未定着のトナー層Tのトナー粒子Tpの粒径が5〜10[μm]程度である場合、未定着のトナー層Tを乱すことなく泡状定着液Buを未定着のトナー層Tに付与するには、泡状定着液Buの泡径範囲を5〜50[μm]程度にすることが望ましい。プリンタ100では、泡微細化部38での泡微細化により、このような微細な径の泡をつくり出している。
【0053】
また、泡微細化部38で微細化した泡は、図9に示すように、気泡Bu−Aと、それぞれの気泡Bu−Aを区切る液膜境界Bu−B(以下、プラトー境界と称す)とから主に構成されている。
【0054】
先に示した図4において、転写紙Pの塗布ニップ通過時間(例えば先端がニップ入口に進入してから先端がニップ出口から排出される間での時間)を、50[ms(ミリ秒)]から300[ms]の範囲に設定している。これにより、転写紙Pの塗布ニップ通過時間を、泡状定着液の浸透時間と同じかそれ以上にしている。塗布ニップ通過時間(以下、ニップ時間という)については、「(ニップ幅)/(紙の搬送速度)」という数式によって算出することが可能である。転写紙Pの搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、転写紙Pを塗布ローラ41及び対峙する加圧ローラ43に挟んで(ローラは回転させない状態で)加圧し、紙に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。転写紙Pの搬送速度に応じて、ニップ幅を調整することでニップ時間を泡状定着液のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。
【0055】
実施形態に係る定着装置30では、加圧ローラ43を弾性多孔質体(以下、スポンジと記す)とすることで、紙の搬送速度に応じて、塗布ローラ41とスポンジの加圧ローラ43の軸間距離を変更してニップ幅を変えることが容易となる。スポンジの代わりに、弾性ゴムも適するが、スポンジは、弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ41の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
【0056】
なお、定着液中には樹脂軟化または膨潤剤が含有されており、スポンジの加圧ローラ43に定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがある。このため、スポンジ素材の樹脂材は、軟化剤または膨潤剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が望ましい。また、ローラ部がスポンジからなる加圧ローラ43については、ローラ表面を可撓性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が軟化剤または膨潤剤で劣化する素材であっても、軟化剤または膨潤剤により軟化や膨潤を示さない可撓性フィルムで覆うことでスポンジの加圧ローラ43の劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂の多孔質体などが適する。また、スポンジを覆う可撓性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・バーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを例示することができる。
【0057】
塗布ローラ41とローラ部がスポンジからなる加圧ローラ43とが常時接触している場合、転写紙Pが搬送されていない時に塗布ローラ41上の泡状定着液Buがスポンジの加圧ローラ43に付着し汚す恐れがある。この付着を防止する狙いから、紙先端検知手段(図示せず)を塗布ローラ41へ紙が搬送される手前に設け、紙先端検知信号に応じて、紙の先端から後方にのみ泡状定着液Buが塗布されるようなタイミングで塗布ローラ41に泡状定着液Buを形成することが望ましい。
【0058】
加圧ローラ43は、図示しない接離機構により、待機時は塗布ローラ41から離間する位置まで移動される。塗布時だけ、前述の紙先端検知手段の検知結果に基づいて塗布ローラ41に圧接する位置まで接離機構によって移動せしめられる。塗布ローラ41から離間するタイミングについては、紙の後端検知結果に基づいて決定される。
【0059】
泡のトナー層に対する浸透時間をなるべく短くするためには、上述したように、塗布ローラ41等の塗布部材上における泡状定着液Buの層厚を未定着のトナー層Tの厚み以上とする必要がある。カラー画像では、転写紙P上の未定着のトナー層Tの厚みは色や明暗により異なる。そこで、泡状定着液Buの層厚については、未定着のトナー層Tの転写紙P上における厚みの最大値を基準として設定する。画像信号から未定着のトナー層Tの厚みの最大値については、画像信号に基づいて求めることができる。画像信号に応じて、未定着のトナー層Tの最大値に対し、膜厚調整ブレード42の隙間制御により行い、必ず未定着のトナー層Tの厚みの最大値以上になるように泡状定着液Buの層厚を制御する。各画像機器において、転写紙P上の未定着のトナー層Tは、スキャナやPCからの画像信号に応じて設定テーブルに基づき算出された値によって一定に決まる。そこで、画像信号をもとに転写紙P上に付着する設定値の最大値に合わせてその最大値以上に塗布ローラ41上の泡状定着液Bu層厚を調整する。
【0060】
また、未定着のトナー層Tの厚みが異なると、泡のトナー層に対する浸透時間が異なる(トナー層が厚いほど浸透時間は長くなる)ことから、未定着のトナー層Tの厚みに応じてニップ時間を可変にする必要がある。ニップ時間可変手段としては、紙搬送速度を変化させる手段やニップ幅を変化させる手段が適する。画像情報信号から転写紙P上における未定着のトナー層Tの厚みの最大値を算出し、浸透時間を換算しその浸透時間以上となるようにニップ幅や紙搬送速度を変化させる。
【0061】
泡状の定着液は、上述したように、軟化剤を含有した液体中に気泡を含有するものである。軟化剤を含有した液体は、気泡を安定に含有し、なるべく均一な気泡の大きさからなる気泡層を構成する泡状とするため、起泡剤及び増泡剤を有することが望ましい。また、ある程度粘度が高いほうが、気泡が安定して液体中に分散するため、増粘剤を含有することが望ましい。
【0062】
起泡剤としては、陰イオン界面活性剤、特に、脂肪酸塩が望ましい。脂肪酸塩は界面活性を有するため、水を含有する定着液の表面張力を下げ、定着液を発泡し易くするとともに、泡表面で脂肪酸塩が層状ラメラ構造をとるため泡壁(プラトー境界)が他の界面活性剤よりも強くなり、泡沫安定性が極めて高くなる。また、脂肪酸塩の起泡性を効果的にするため、定着液には水を含有することが望ましい。脂肪酸としては、大気中での長期安定性の観点から酸化に強い飽和脂肪酸が望ましい。但し、飽和脂肪酸塩を含有する定着液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで脂肪酸塩の水に対する溶解・分散性を助け、5〜15[℃]までの低気温において、優れた起泡性を有することができ、広い環境温度範囲において定着の安定を可能とし、また、定着液長期放置中の脂肪酸塩の定着液中分離を防止することができる。
【0063】
飽和脂肪酸塩に用いる脂肪酸としては、炭素数12、14、16及び18の飽和脂肪酸、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が適する。炭素数が11以下の飽和脂肪酸塩は臭気が大きくなり、当該定着液を用いるオフィス・家庭で用いる画像形成機器に適さない。また、炭素数19以上の飽和脂肪酸塩は、水に対する溶解性が低下し、定着液の放置安定性を著しく低下させてしまう。これらの飽和脂肪酸による飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。
【0064】
また、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1から3の不飽和脂肪酸が望ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上記飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いても構わない。
【0065】
更に、上記飽和脂肪酸塩又は不飽和脂肪酸塩において、当該定着液の起泡剤として用いる場合、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはアミン塩であることが望ましい。定着装置30に電源を投入後、素早く定着可能な状態にすることは定着装置30の商品価値として重要な要素である。定着装置30において定着可能な状態とするためには、定着液が適切な泡状となっていることが必須であるが、上述の脂肪酸塩を素早く起泡させることで、電源投入後定着可能な状態を短時間でつくることができる。特に、アミン塩とすることで、定着液にせん断力を加えたときに最も短時間で起泡させ、泡状定着液を容易に作製することが可能であり、定着装置への電源投入後の定着可能な状態を最も短時間でつくることができる。
【0066】
樹脂を溶解又は膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含んでいる。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。
【0067】
更に、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
【0068】
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率))を臭気の指標とすることができる。また、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合には、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
【0069】
上述の脂肪族エステルとしては、飽和脂肪族エステルを含むものが望ましい。上述の脂肪族エステルが、飽和脂肪族エステルを含む場合には、軟化剤の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。また、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解又は膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
【0070】
よって、定着液としては、上述の飽和脂肪族エステルが「R1COOR2」で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式におけるR1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基を示している。また、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。なお、その化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0071】
上述の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについては、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
【0072】
また、定着液としては、上述の脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルを含むものを用いることが望ましい。上述の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができる。例えば、60[ppm]程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが望ましい。上述した脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の、軟化剤の添加によって、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができるため、定着液に含まれる、軟化剤の含有量を低減することができる。
【0073】
上述の脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、「R3(COOR4)」で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式において、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基を示している。また、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。その化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0074】
上述の化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。更に、本発明における定着液において、好ましくは上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0075】
上述の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、「R5(COOR6−O−R7)」で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式において、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基を示している。また、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基を示している。また、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。その化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0076】
また、上述の化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
【0077】
また、脂肪酸エステルではないが、クエン酸エステルや炭酸エチレンや炭酸プロピレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
【0078】
泡状定着液において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。
【0079】
なお、定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。例えば、導電性部材を含有した樹脂含有微粒子でもよい。また、記録媒体は、記録紙に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等何れでもよい。但し、媒体は定着液に対し浸透性を有することが望ましく、媒体基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が望ましい。記録媒体の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。例えば、紙のごとき媒体に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても適用することが可能である。
【0080】
上述した樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本発明の定着液との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。媒体のうち、記録媒体は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本発明における油性とは、室温(20[℃])における水に対する溶解度が、0.1[重量%]以下である性質を意味する。
【0081】
また、泡状となった定着液は、好ましくは、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。すなわち、泡状となった定着液は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20[mN/m]程度の表面エネルギーを有する。現実には撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30[mN/m]であると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、泡状となった定着液の表面張力は、20〜30[mN/m]であることが好ましい。
【0082】
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30[mN/m]とすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、単価もしくは多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
【0083】
また、定着液中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。
【0084】
なお、定着液中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。何れにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
【0085】
定着装置30には、定着液をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって溶解又は膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を設けてもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解又は膨潤したトナーを加圧することによって、溶解又は膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ溶解又は膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0086】
次に、図4に示す定着装置30が備える塗布ローラ41のクリーニングについて説明する。
塗布ローラ41と接触する塗布位置である塗布ニップCを通過した転写紙P上の未定着のトナー層Tは、泡状定着液Buが付与されることで軟化する。泡状定着液Buを転写紙Pに塗布する塗布ローラ41は、転写紙P上の未定着のトナー層Tに対して接触しながら泡状定着液Buを付与する。このとき、転写紙Pが塗布ローラ41と接触する塗布位置である塗布ニップCを通過すると、塗布ローラ41上の泡状定着液Buが全て転写紙Pに付与され、塗布ローラ41がクリーンな状態になるのが理想である。しかし、現実的には、部品や組み付けのばらつき、環境変動、経時変動等の影響により、全てのプロセスが理想どおりに進むとは考え難い。このため、塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41上に泡状定着液Buやオフセットしたトナー粒子Taを残留させることがある。
【0087】
この塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41上に残留する泡状定着液Bu(以下、残留泡状定着液Baと呼ぶ)は、液状の定着液よりも塗布ローラ41の表面移動に対して追従した動きをとる。このため、塗布ローラ41の回転によってその表面が上昇移動をしたとしても、液状の定着液のように下方に流れず、塗布ローラ41表面の表面移動に伴って良好に上昇する。このため、残留泡状定着液Baは、殆ど液だれすることなく、塗布ニップCを通過後のほぼ全量が塗布ローラ41の表面に連れ回りながら移動する。
このような残留泡状定着液Baが塗布ローラ41上に残留したままだと、塗布ローラ41が1周したときに、上述したノズル39から塗布ローラ41に供給される新たな泡状定着液Buと、残留泡状定着液Baとが混ざることで塗布ローラ41上の泡膜の厚みが不安定になったり、オフセットしたトナー粒子Taが転写紙Pに再転写して画像品質の低下を招いたりする恐れがある。さらには、トナーを含んだ残留泡状定着液Baが循環することになり、汚れた泡状定着液Buを用いることになって、定着の品質が低下する恐れがある。このため、塗布ローラ41に残留した残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taを塗布ローラ41上から除去する必要がある。
【0088】
次に、本実施形態の定着装置30の塗布ローラ41に残留した残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taを除去する構成について説明する。
図10は、塗布ローラ41と塗布部材クリーニング装置70との拡大説明図であり、図1は、塗布部材クリーニング装置70の斜視説明図である。なお、図1では、ウェブ72によって一部が隠れる部材のうち、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76のみをウェブ72によって隠れる部分を破線で示している。
定着装置30の定着液塗布部140は、転写紙Pに泡状定着液Buを塗布する塗布位置である塗布ニップCを通過した後、定着液供給部130による泡状定着液Buの供給位置に進入する前の塗布ローラ41表面に対して、PET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルム部材からなるウェブ72を当接させる塗布部材クリーニング装置70を備える。
塗布部材クリーニング装置70は、塗布ローラ41表面に接触し、塗布ローラ41の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能に張架した帯状のウェブ72と、ウェブ72が塗布ローラ41の表面に接触する当接位置Eでウェブ72を挟んで塗布ローラ41の表面に当接する当接部材としてフィルム当接ブレード71とを備える。
さらに、塗布部材クリーニング装置70は、ウェブ72を挟んでフィルム当接ブレード71が塗布ローラ41表面に当接する当接位置に対して、ウェブ72の表面移動方向下流側のウェブ72を加熱する加熱手段としてのヒータ93を備える。ヒータ93は、加熱部材である加熱ローラ94の内部に配置されている。また、ヒータ93がウェブ72を加熱する加熱位置である加熱ローラ94の張架位置と、当接位置Eとの間にウェブ72を張架するフィルム張架部材である第二ガイドローラ76を配置している。
【0089】
この塗布部材クリーニング装置70は、回転可能な繰り出し軸73の周面に帯状のウェブ72を何重にも巻き付けている。帯状のウェブ72の表面移動方向下流側は、回転可能な巻き取り軸74に巻き付けられている。巻き取り軸74が図中時計回り方向に回転駆動することで、巻き取り軸74がウェブ72を巻き取るとともに、その分だけ繰り出し軸73からウェブ72が矢印Aで示すように送り出される。また、塗布部材クリーニング装置70は、第二ガイドローラ76に対してウェブ72の表面移動方向下流側に第三ガイドローラ86を備え、その更に下流側に加熱ローラ94を配置している。このように配置することで、加熱によるウェブ72の変形が有っても、当接位置Eへの影響が当接位置Eに伝達することを、第二ガイドローラ76及び第三ガイドローラ86の二つのガイドローラによって抑制することができる。
【0090】
帯状のウェブ72における繰り出し軸73と巻き取り軸74との間の箇所は、所定のテンションで張架されながら、フィルム当接ブレード71によって塗布ローラ41の表面に押圧されている。この押圧により、ウェブ72が塗布ニップCを通過後の塗布ローラ41表面に圧接して当接位置Eに対して、塗布ローラ41の表面移動方向上流側のくさび状の空間(以下、当接位置入口部と呼ぶ)で残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taを堰き止める。
【0091】
当接位置Eに対してウェブ72の表面移動方向(矢印A方向)の上流側には第一ガイドローラ75を備え、当接位置Eに対してウェブ72の表面移動方向の下流側には第二ガイドローラ76を備える。
塗布部材クリーニング装置70は、第一ガイドローラ75と第二ガイドローラ76とによって、当接位置Eにおける塗布ローラ41の接線に対して平行に張られたウェブ72の背面からフィルム当接ブレード71によって塗布ローラ41に押し付けて塗布ローラ41の表面をクリーニングする構成である。
フィルム当接ブレード71は不図示の接離機構により、その先端を塗布ローラ41に対して接離可能となっているが、フィルム当接ブレード71の当接が解除されれば、ウェブ72も塗布ローラ41から離間する。
【0092】
図11は、当接位置E近傍の拡大説明図である。図11の破線で示す状態が図10で示した状態と同様に、フィルム当接ブレード71が塗布ローラ41に当接した状態であり、図11中の実線でしめす状態は、図10の状態からフィルム当接ブレード71が塗布ローラ41から離間した状態である。フィルム当接ブレード71が図11中の破線で示すように塗布ローラ41に当接した状態から、不図示の接離機構を作動させることで、フィルム当接ブレード71が図11中の実線で示すように塗布ローラ41から離間し、フィルム当接ブレード71の塗布ローラ41に対する当接が解除される。また、フィルム当接ブレード71が塗布ローラ41から離間することで、フィルム当接ブレード71によって図11中の破線で示すように塗布ローラ41の表面に押圧されていたウェブ72が図11中の実線で示すように塗布ローラ41から離間する。
このとき、ウェブ72は第一ガイドローラ75と第二ガイドローラ76との間の張架面72aは、図11に示すように略平面となる。また、塗布部材クリーニング装置70では、図11に示すように、塗布ローラ41との当接が解除された状態のフィルム当接ブレード71の延在方向(図11中の矢印H方向)とウェブ72の張架面72aとが略平行となる。
【0093】
塗布部材クリーニング装置70では、第一ガイドローラ75と第二ガイドローラ76とによって、ウェブ72の蛇行や斜めシワの発生を押さえ込むようにしている。蛇行防止のために第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76は軸方向の両端部に対して中央部の径が僅かに大きい太鼓状またはつづみ状の形状としてもよい。
ウェブ72は、フィルム当接ブレード71の先端部の線圧を受け、塗布ローラ41上に付着した残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taを当接位置入口部で堰き止めて、定着液供給部130による泡状定着液Buの供給位置への進入を防止している。
巻き取り軸74を任意のタイミングで巻き上げることで常時、ウェブ72の新しい表面が現れ、当接位置入口部に滞留した残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taはウェブ72の表面に付着して巻き取られていく。
【0094】
定着液に含まれる軟化剤に対して、ウェブ72が耐溶剤性を有していればフィルム当接ブレード71はウェブ72の裏面から加圧しているため、定着液に直接接触することはない。その結果、フィルム当接ブレード71の材質は耐溶剤性を有していなくても良い。
クリーニングブレードとして用いられる材質としては、ウレタンゴムが一般的である。しかし、定着液を塗布する塗布部材のクリーニングブレードとして、ウレタンゴムブレードを用いると、定着液に含まれる軟化液に対して膨潤してしまう。このため、塗布部材にクリーニングブレードが直接接触する構成では、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、シリコン、フッ素ゴム等の別の材料を用いる必要がある。しかし、これらの材料からなるクリーニングブレードはウレタンゴムよりも耐久性に課題があるため、部品交換サイクルが短くなり、ほかの交換パーツと寿命が異なって交換コストが高くなる不具合がある。
一方、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70のように、フィルム当接ブレード71はウェブ72の裏面から加圧する構成であれば、軟化剤に対して膨潤するウレタンゴムブレードであってもクリーニングブレードとして使用することができる。
なお、この条件を満たすためには、ウェブ72の表面における移動方向に対して直交する幅方向について、ウェブ72の幅がフィルム当接ブレード71の幅よりも広い構成が前提である。
【0095】
塗布ニップCにおける転写紙Pに対する泡状定着液Buの塗布は、転写紙Pのサイズに合わせて同様な面積を塗布できれば無駄が無い。しかし、転写紙Pの表面に対して全面塗布が前提であるので転写紙Pのスキュー等の余裕度、レジストの誤差等の位置精度の余裕度、紙間の泡の切れ具合など、いくつかの余裕度を見ておく必要のある要素があり、これらに起因して加圧ローラ43の表面にも泡状定着液Buが付着してしまうことになる。
加圧ローラ43に付着した泡状定着液Buは、クリーニングしないと転写紙Pの裏面に付着してしまう。転写紙Pの裏面は、定着後の紙搬送経路を構成するガイド板、ローラ等に接触する。さらには両面モードでは中間転写ベルトや感光体等のトナー像担持体に接触するので、機内の構成部品に与える影響は大きい。そのため、加圧ローラ43に対しても十分なクリーニングが行われることが望ましい。
このため、本実施形態の定着装置30では、図4に示すように、加圧部材クリーニング装置80として、塗布部材クリーニング装置70と同様なクリーニング装置を配置している。
【0096】
なお、加圧ローラ43はトナー付着が無い分、ウェブ72を巻き上げるタイミングは塗布部材クリーニング装置70よりも遅くて良く、巻き上げ量は少なくて済む。このため、ウェブ72の交換サイクルを考えれば、塗布部材クリーニング装置70のウェブ72の巻き取り速さに対して、1/nの巻き取り速さであれば、塗布部材クリーニング装置70側のウェブ72のn回毎の交換時に同時に交換すれば交換作業が効率的である。
【0097】
図10に示すように、加熱ローラ94の内部には、ヒータ93を配置し、サーミスタ92によって加熱ローラ94の温度をコントロールする。残留泡状定着液Baはヒータ93によって加熱されることにより、素早く消泡され液状の定着液に戻り、オフセットしたトナー粒子Taはウェブ72に付着したまま巻き取られる。液状の定着液はその量が多ければ自重により落下し定着液回収皿77で回収され、定着液回収パイプ77aを通って定着液回収容器78に回収される。
定着液回収容器78としては、塗布部材クリーニング装置70と加圧部材クリーニング装置80とで、共通でも単独でもよいが、図4に示すように、二つのクリーニング装置で共通の定着液回収容器78のほうが回収の手間が省ける。
定着液回収容器78は、満タン検知センサ79を有しており回収時期をユーザーまたはサービスマン等の管理者に連絡することが可能となっている。
【0098】
図10に示す本実施形態の塗布部材クリーニング装置70は、第二ガイドローラ76に対してウェブ72の表面移動方向下流側に、断熱部材95に可能な範囲のエリアを囲まれた加熱ローラ94が配置されている。そして、加熱ローラ94の更に下流側に、巻き取り軸74が配置されている。加熱部材である加熱ローラ94は巻き取り軸74側の最小径から最大径(表面に付着した泡の中の成分、オフセットトナーを巻き込んで巻き取るため、径は繰り出し軸73に比べ大きくなる、図10中の破線74eで示す)への変化に対しても絶えず接触している状態を維持する位置に配置されている。
【0099】
図10に示す塗布部材クリーニング装置70では、加熱ローラ94と当接位置Eとの間に、第二ガイドローラ76及び第三ガイドローラ86によって張架される位置があることにより、熱によるウェブ72の変形でウェブ72にシワが発生しても、第二ガイドローラ76及び第三ガイドローラ86によって当接位置Eへの影響を抑制できるため良好なクリーニング、及び、巻き取りが可能となっている。
【0100】
また、図10に示すように、定着液回収皿77は、当接位置Eから巻き取り軸74側が最大径となる位置までの下方の全域を網羅する範囲に配置されており、当接位置Eから巻き取り軸74までの間のウェブ72から定着液が垂れた場合でも転写紙Pの搬送経路への影響が無い構成となっている。
また、ヒータ93としては、自己制御型でも温度検出による制御方式でもよく、加熱部材の形状としては、加熱ローラ94のようにローラ状のものに限るものではなく、例えば、ウェブ72に対する位置が固定のガイド板でもよい。
【0101】
このようなウェブ72を用いたクリーニング方式を採用するうえでの大きな課題のひとつにウェブ72のシワや蛇行などの巻き取り品質が挙げられる。ウェブ72を張架するガイドローラを多数使用し、当接位置Eに対して、ウェブ72の移動方向上流側、当接位置に対して下流側、巻き取り軸74の上流側、または、加熱ローラ94の上流側にガイドローラを設置することで、特許文献6に記載の構成であっても十分に斜めシワの発生を防止することができた。しかし、経時において巻き取り動作を続けることで、少しずつ斜めシワが発生し始めてしまった。
この斜めシワの主な原因としては、当接位置Eにおけるフィルム当接ブレード71の線圧(押し付け圧)の幅方向のバラツキとウェブ72を挟んでクリーニングする対象物である塗布ローラ41の回転時のブレなどが挙げられる。フィルム当接ブレード71の線圧の幅方向のばらつきは、組み付け精度のばらつきによって生じ、塗布ローラ41の部品精度や組み付け精度のばらつきによって生じる。線圧のバラツキや回転時のブレによってフィルム当接ブレード71の当接圧は絶えず部分的に変化する。
【0102】
図19は、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76として表面が平滑なローラを使用した塗布部材クリーニング装置70を張架部材側から見た模式図である。
図19に示す状態では、フィルム当接ブレード71が当接する位置(当接位置E)辺りからウェブ72の幅の減少Δdが発生しており、Z折れが発生していることがわかる。当接位置EにZ折れが発生すると、当接位置Eにおけるウェブ72の厚みが異なることで、当接位置Eの幅方向(ウェブ72の表面における移動方向に直交する方向)で当接圧が不均一になり、付着物がすり抜けてクリーニング不良の原因となる。また、図19に示すように、幅の減少Δdが生じることで、巻き取り軸74の巻き取り径が部分的に大きくなる不具合が発生する。
【0103】
ガイドローラとして表面が平滑なローラを用いた構成であっても、フィルム当接ブレード71の加圧条件をより安定したものとするために、フィルム当接ブレード71は固定を中央一点のみとし、フィルム当接ブレード71の先端が塗布ローラ41のブレに追従できる自動調芯機構とすることで、回転精度には対応することができ、使用開始早々は変化が無かった。しかし、経時において巻き取り動作を続けると、機械的精度と加圧力の比較的な均一化だけでは対応しきれず、斜めシワが発生することがあった。斜めシワが発生すると、徐々に深くなり、最終的にシワを形成するウェブ72が重なることによってZ折れが発生する。
【0104】
このような問題に対して、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70は、当接位置上流側張架部材である第一ガイドローラ75と当接位置下流側張架部材である第二ガイドローラ76との表面上におけるウェブ72が接触する領域には、ウェブ72の移動方向に沿うように、かつ、ウェブ72の移動方向に交差する方向の複数箇所でウェブ72と対向するように、溝部として第一ローラ溝75a及び第二ローラ溝76aが形成されている。
【0105】
第一ローラ溝75aが形成された第一ガイドローラ75と第二ローラ溝76aが形成された第二ガイドローラ76ととの間に張架され、当接位置Eを含む領域のウェブ72には、ウェブ72の移動方向に沿うような複数の小さな縦シワが形成される。このように、ウェブ72に小さな縦シワが発生した状態で、斜めシワが発生するには複数の縦シワを横切る必要があり、これは平坦なウェブ72に斜めシワが発生するよりもより大きな捩れ方向の力が作用する必要がある。ウェブ72に斜めシワを発生させる力は、ウェブ72が表面移動する間に徐々にシワを形成する程度の力である。このため、平坦なウェブ72よりも大きな捩れ方向の力が作用する必要がある縦シワが発生した状態のウェブ72では、斜めシワ発生の最初のきっかけとなるような力が作用しても斜めシワになるような変形が生じ難い。このように変形が生じ難いため、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70のように、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76の表面に溝部が形成された構成は、表面が平滑なものに比べて斜めシワの発生が抑制できるものと考えられる。
【0106】
図12は、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70を張架部材側から見た模式図である。図12では、第三ガイドローラ86は省略している。
図12中の、W1は最大通紙幅、41Wは塗布ローラ41の幅、73Wは繰り出し軸73の幅、43Wは、加圧ローラ43の幅である。
図1及び図12に示すように、塗布部材クリーニング装置70の第一ローラ溝75a及び第二ローラ溝76aは、各ガイドローラのウェブ72が接触する領域におけるウェブ72表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、ウェブ72の移動方向下流側ほど中央部側となるように、幅方向の略中央部を挟んで巻き方向が逆となる螺旋状の溝部となっている。この溝部は、幅0.5〜1.0[mm]程度である。また、溝部は、螺旋状となっているため、図12に示すように、各ガイドローラの回転軸に直交する方向から見ると第一ローラ溝75a及び第二ローラ溝76aは、斜め方向の溝となる。
また、ガイドローラ上に構成された溝の深さは僅かでよく、本実施形態では、ステンレス鋼からなるφ8〜10[mm]程度のガイドローラに対して、溝深さは0.5[mm]程度である。また、溝の外形部とのエッジは落としてウェブ72が溝に引っかかることを防止している。
【0107】
また、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70の第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76は、ウェブ72が表面移動するときに、ウェブ72よりも速い速度で表面移動し、ウェブ72との間で表面を摺擦する順回転駆動ローラである。第一ローラ溝75a及び第二ローラ溝76aがウェブ72の移動方向下流側ほど中央部側となる構成で、ガイドローラがウェブ72よりも速く表面移動するため、ガイドローラの回転により、ウェブ72に対して接触するローラ溝の位置が外側へと変位する。これにより、ウェブ72に発生したシワは徐々に幅方向外側に向かい、幅方向外側端部に到達すると、そのシワは解消される。すなわち、ガイドローラが回転することによって、ウェブ72に接触する位置が外側に向かうローラ溝が形成されていることにより、各ガイドローラがシワ取りローラとして作用する。
【0108】
図12に示す方向から見たときの図中の上下方向の垂線に対する第一ローラ溝75a及び第二ローラ溝76aの角度として、10[°]、15[°]及び20[°]の3種類のローラを試作、各ガイドローラに対して、ウェブ72と接触する表面がウェブ72の移動方向と同方向に、且つ、ウェブ72の移動速度よりも速い表面移動速度で回転するように駆動を入力して、斜めシワの抑制効果を確認した。20[°]では角度がつきすぎ、10[°]は緩い状態となり、小さい縦シワを強制的に発生させる構成としては、15[°]が適当と思われる。
ガイドローラとして、SUS(ステンレス鋼)の金属ローラを用いたところ、20[°]は溝のエッジ部分の処理が不十分だと引っかかり、ガイドローラでの強制回転時に傷がつきやすい可能性が有った。
【0109】
また、10[°]では、ガイドローラのウェブ72を幅方向端部に押し広げる効果が、目視の限りでは15[°]に比べ不十分であった。
上述した試作では、金属ローラを用いたが金属ローラに比べてグリップ力が高くなるゴムローラを用いてもよい。
【0110】
図13は、図12に示す塗布部材クリーニング装置70のシワの発生状況の模式図である。
第二ガイドローラ76に強制駆動の場合はウェブの巻上げ速度よりも速く短時間に回転して強制的にウェブ72の端部側にシワを押しやる方向の力を発生させるので、第二ガイドローラ76と第三ガイドローラ86との間のウェブ72に示すように、ウェブ72の接触部分の下流側から上流側にかけて溝が広がる角度となっている。
上述した構成では、第二ガイドローラ76に強制駆動を入力する構成であるが、各ガイドローラがウェブ72の移動に合わせて連れ回る構成であっても、溝の角度はウェブ72の接触部分の下流側から上流側にかけて溝が広がる角度とすることができる。
【0111】
図1等に示す構成では、溝の角度はウェブ72の接触部分の下流側から上流側にかけて溝が広がる角度としているが、溝の角度としては、図14に示すように、ウェブ72の接触部分の上流側から下流側にかけて溝が広がる角度としてもよい。この場合は、各ガイドローラは、ウェブ72の移動方向に対して逆方向に移動するように駆動する。または、固定する。これにより、ガイドローラと接触する領域を通過するウェブ72に対して強制的にウェブ72の幅方向の端部側にシワを押しやる方向の力を発生させることができる。
【0112】
何れの構成においても、ガイドローラに設けた溝がウェブ72の搬送方向に沿う方向に形成されているため、小さな縦シワが発生し、斜めシワの発生を抑制することができる。
また、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70の巻き上げ動作は間欠動作を行っている。当接位置Eにおける、ウェブ72のクリーニングは泡の転写率に影響される。このため、当接位置Eに残留泡状定着液Baがたまり過ぎないレベルで巻き上げていき、消泡用のヒータ93で液にもどして回収できる範囲の送り量(単位面積あたりの泡の回収量)が決まる。本実施形態では、5〜20枚毎に1[mm]の巻き上げ量としている。
【0113】
本実施形態の塗布部材クリーニング装置70の巻き上げ動作は、間欠動作であり1回の送り出し量も僅かである。このような構成では、停止時間が長く張力が掛かっていることで、ガイドローラ間の溝に沿って多条の縦シワが発生する。この多条の縦シワが発生した状態で巻き上げを行っていると斜めシワが発生しにくいと思われる。
【0114】
螺旋状の溝を備えた張架ローラとしては、シワ発生を抑える目的で印刷業界等で使用されているシワ取りローラがある。ウェブを巻き取る技術では、シワ取りローラは一般的な技術であり、印刷機関連やフィルムの巻き取りなど、工業製品関連での使用をよく見かける。それらは高速での連続巻き上げが一般的である。しかし、このような従来の構成に対して、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70は、ガイドローラで張架されている間に非回転部材(フィルム当接ブレード71)があり、巻き取り以外の部材(塗布ローラ41)と接触している。このような構成では、連続巻き上げを行うとウェブ72の幅の減少Δdが発生したが、間欠巻き上げとすると、シワの発生を抑制することができ、ウェブ72の幅の減少Δdは発生しなかった。
【0115】
また、当接位置Eを通過したウェブ72の外周面側は、塗布ニップCを通過したときよりも回収物が乾燥し、粘性が上昇した状態であり、これがガイドローラに接触すると搬送抵抗の上昇、および、ローラ径が変化する。このため、当接位置Eを通過したウェブ72の外周面側にはガイドローラは接触することができない。
その結果、一つのガイドローラがウェブ72に接触する係り角度が小さくなり、そのガイドローラの表面形状のウェブ72に対する影響が小さくなり、縦シワが形成しにくくなる。
【0116】
このような問題に対して、図15に示すように、第一ガイドローラ75と繰り出し軸73との間にウェブ72における第一ガイドローラ75が接触する面の裏面に接触する裏面接触ローラ85を設けても良い。この位置のウェブ72には付着物がついていないため、ウェブ72の外周側にガイドローラが接触しても搬送抵抗の上昇やローラ径が変化といった問題は生じない。そして、裏面側からガイドローラが接触することで、第一ガイドローラ75及び裏面接触ローラ85で係り角度を広く確保することができ、効率的に縦シワを形成することができる。
【0117】
本実施形態の塗布部材クリーニング装置70では、残留泡状定着液Baを回収するが、回収した泡を巻き込みながらウェブ72を巻き取ると泡はすぐには消えず、巻き取り径の不均一を引き起こし、捩れ方向の力が作用することを助長する。このため、巻き取り軸74よりも前までに消泡が必要であり、ヒータ93で加熱することで消泡しているが、温度を付与することでウェブ72にシワが発生しやすい。このため、ヒータ93の加熱によって発生するシワの影響をキャンセルできる構成が必要となる。このため、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70では、第二ガイドローラ76と巻き取り軸74との間の第三ガイドローラ86にも第一ローラ溝75a及び第二ローラ溝76aと同様の第三ローラ溝86aが形成されている。
【0118】
図16は、変形例の定着装置30の定着液塗布部140の拡大説明図である。
変形例の定着装置30は、塗布部材が、塗布ローラ41と分離ローラ401とに張架された塗布ベルト400で有る点で上述した定着装置30と異なる。塗布部材クリーニング装置70の構成は上述した実施形態の塗布部材クリーニング装置70と同様である。
図16に示す変形例の定着装置30では、分離ローラ401が図16中の矢印J方向に付勢されることで、塗布ベルト400にテンションを与えている。そして、塗布ローラ41よりも十分に小径の分離ローラ401のローラ径の半分が分離の曲率となる。このような変形例では、分離手段として曲率分離方式を採用することで、紙搬送品質の向上を図ることができる。
【0119】
本実施形態の塗布部材クリーニング装置70は、クリーニング対象として、残留泡状定着液Baを回収する構成であるクリーニング対象は粉体でもよい。また、ウェブ72のようなフィルム部材として耐熱性のものを使用すれば、加熱方式の定着ローラのクリーニング手段としても適用可能である。
【0120】
以上、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70は、被清掃体である塗布ローラ41の表面に接触し、塗布ローラ41の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能に複数の張架部材である各ガイドローラ(75、76、86及び94)に張架された帯状のフィルム部材であるウェブ72と、ウェブ72が塗布ローラ41表面に接触する位置でウェブ72を挟んで塗布ローラ41表面に当接する当接部材であるフィルム当接ブレード71と有し、ガイドローラとして、ウェブ72を挟んでフィルム当接ブレード71が塗布ローラ41表面に当接する当接位置Eに対して、ウェブ72の移動方向上流側の一つ目のガイドローラである当接位置上流側張架部材としての第一ガイドローラ75と、当接位置Eに対してウェブ72の移動方向下流側の一つ目のガイドローラである当接位置下流側張架部材としての第二ガイドローラ76とを少なくとも有し、塗布ローラ41の表面上の付着物を除去するクリーニング装置である。このような塗布部材クリーニング装置70において、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76の表面上におけるウェブ72が接触する領域には、ウェブ72の移動方向に沿うように、かつ、ウェブ72の移動方向に交差する方向の複数箇所でウェブ72と対向するように、溝部として第一ローラ溝75a及び第二ローラ溝76aが形成されている。このように、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76の表面に溝部が形成された構成は、表面が平滑なものに比べて斜めシワの発生が抑制でき、斜めシワに起因して発生するZ折れが当接位置に発生することを抑制することができる。このため、経時に渡って安定したクリーニング性能を維持することができる。
【0121】
また、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70が備える第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76は、巻き取り動作によってウェブ72が表面移動するときに、巻き取り動作に同期して、ウェブ72よりも速い速度で表面移動し、ウェブ72との間で表面を摺擦する順回転駆動ローラである。また、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76の溝部は、図1及び図12に示すように、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76の表面のウェブ72が接触する領域におけるウェブ72表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、ウェブ72の移動方向下流側ほど中央部側となるように、幅方向の中央部を挟んで巻き方向が逆となる螺旋状の溝である。ガイドローラ表面上における溝部の幅方向における位置が、ウェブ72の移動方向下流側ほど中央部側となるように形成され、ガイドローラがウェブ72よりも速い速度で表面移動することにより、ウェブ72を幅方向外側に広げる力が発生し、シワを伸ばす作用が働き、より確実に斜めシワの発生を抑制することができる。また、ウェブ72の巻き上げ動作を停止している状態でガイドローラを回転させると、ウェブ72を張架するテンションに影響が出たり、ウェブが摩耗で傷ついたりしてしまうおそれがある。これに対して、巻き上げ時の短時間のガイドローラを回転させることで、張架テンションへの影響やウェブ72の傷を抑制しつつ、効率的にシワを伸ばすことができる。
【0122】
また、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70では、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76ともにする順回転駆動ローラであるが、当接位置上流側張架部材である第一ガイドローラ75として順回転駆動ローラを用いる構成が特に好適である。本発明者らがウェブ72のシワの発生ポイントを観察したところ、ウェブ72の巻き元から発生する斜めシワの影響が大きい。これに対して、当接位置Eよりも上流側の第一ガイドローラ75として順回転駆動ローラを用いることで、縦シワを発生させられたウェブ72の使用長さが長くなる。さらに、当接位置Eの上流側でウェブ72のシワを積極的に端部側に押しやることで、当接位置Eに斜めシワが発生することをより確実に抑制することができる。なお、第一ガイドローラ75が順回転するように駆動させるためには、繰り出し軸73に掛けているバックテンションをその分強くする必要がある。
【0123】
また、図1や図12に示すガイドローラのように、ガイドローラ表面上における溝部の幅方向における位置が、ウェブ72の移動方向下流側ほど中央部側となるように形成された第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76としては、順回転駆動ローラに限らず、ウェブ72の表面移動に合わせて連れ回る連れ回りローラにも適用可能である。連れ回りローラに螺旋状の溝が形成されていることにより、連れ回りローラとウェブ72との接触位置における溝の位置がローラの回転に伴って幅方向に変位するため、ウェブ72に形成される縦シワの発生位置も幅方向に変位する。これにより、縦シワの発生位置が固定されることに起因するシワの成長を抑制できる。
【0124】
また、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70が備える第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76としては、図14に示すように、ガイドローラの表面のウェブ72が接触する領域における溝部の幅方向の位置が、ウェブ72の移動方向下流側ほど両端側となるように、幅方向の中央部を挟んで巻き方向が逆となるような螺旋状の溝を形成されたものであってもよい。このように、ガイドローラ表面上における溝部の幅方向における位置が、ウェブ72の移動方向下流側ほど中央部側となるように形成されたガイドローラを用いる構成では、ガイドローラは、ウェブ72が表面移動するときに表面移動せずウェブ72との間で表面を摺擦する固定型張架部材、または、ウェブ72が表面移動するときにウェブ72の移動方向とは逆方向に表面移動してウェブ72との間で表面を摺擦する逆回転駆動ローラである。ガイドローラ表面上における溝部の幅方向における位置が、ウェブ72の移動方向下流側ほど両端側となるように形成され、ガイドローラが停止またはウェブ72の移動方向と逆方向に表面移動することにより、ウェブ72を幅方向外側に広げる力が発生し、シワを伸ばす作用が働き、より確実に斜めシワの発生を抑制することができる。また、当接位置上流側張架部材や当接位置下流側張架部材が固定型張架部材である場合は、ローラ形状である必要はなく、ウェブ72をガイドする形状でそのウェブ72が接触する表面に溝部が形成されていれば良い。
張架部材のウェブ72が接触する領域に設ける溝部としては、ウェブ72の移動方向に平行な形状でもよいが、ガイドローラに設けた螺旋状の溝のように、ウェブ72の移動方向に対して傾斜した形状のほうが、ウェブ72を端部側に押し広げる作用が働き、斜めシワの発生を抑制する構成として効果的である。
【0125】
また、塗布部材クリーニング装置70のフィルム部材は、繰り出し軸73から繰り出され、当接位置Eを通過した後、巻き取り軸74に巻き取られる、巻き取り式のウェブ72である。また、ヒータ93がウェブ72を加熱する加熱部材である加熱ローラ94は、ウェブ72に接触し、且つ、巻き取り軸74の近傍に配置されている。さらに、巻き取り軸74に巻き取られたウェブ72の径が経時で変化しても、加熱ローラ94がウェブ72に常に接触する構成である。加熱ローラ94が巻き取り軸74の径の変化に対して、ベルトテンションを受けながら絶えず接触していることで、ウェブ72のガイド部材の一部を兼ねている。限られたスペースにおいて、ガイド部材が多い方がシワの発生を当接位置Eまで影響させない構成という点で有利である。また、加熱ローラ94と巻き取り軸74との軸間距離は短い方がよい。
また、加熱ローラ94がウェブ72に常に接触ため、加熱ローラ94と第二ガイドローラ76との間でウェブ72を張架する第三ガイドローラ86に対するウェブ72の接触状態を一定に保つことができる。溝部が形成された第三ガイドローラ86によってピッチの短い多条の縦シワができることで、オフセットトナーや定着液の成分が表面に付着したまま巻き取られることで発生する、巻き取り径の幅方向の変化に対してもその影響を上流側に与えにくい。このような作用を得るためには、溝が形成されたガイドローラが絶えず接触して縦シワを作り続けることが必要となるので、当接位置Eと巻き取り軸74との間に、巻き取り径の変化に対しても絶えず接触できる位置にガイドローラが配置されている構成は好適である。
【0126】
また、塗布部材クリーニング装置70では、当接位置Eから巻き取り軸74までの間に配置された張架部材(76、86、94)は、ウェブ72のフィルム当接ブレード71が当接する側の面にのみ接触するものであり、当接位置Eから該巻き取り軸74までの間の複数箇所に配置されている。ガイド部材の表面の溝部に異物が混入すると、溝部を設けたことによる効果が低下するのみではなく、溝部に混入した異物は除去し難い。このため、溝部が形成されたガイド部材を用いた構成では、表面が平滑なガイド部材を用いる構成以上に、ガイド部材の表面に異物が付着することを防止する必要がある。このため、塗布部材クリーニング装置70では、残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taが、ガイド部材の表面の溝部に入らないためにも、当接位置Eに対して下流側のガイド部材は全てウェブ72の内側に配置する構成とする必要がある。また、ガイド部材をウェブ72の内側に配置する構成とすることで、ウェブ72の反転といった構成が取れず、必然的に一つのガイドローラのウェブ72との接触角度は小さくなるので複数本のガイド部材が必要となる。
【0127】
また、塗布部材クリーニング装置70は、第二ガイドローラ76から巻き取り軸74までの間のウェブ72を加熱する加熱手段として、ヒータ93を備える加熱ローラ94を有する。当接位置Eでウェブ72によって回収した付着物に含有される残留泡状定着液Baは、液状の定着液よりも嵩が大きいため、回収した後、泡の状態で保管することは回収した付着物の収容部の大型化に繋がる。このような問題に対して、加熱手段を設け、ウェブ72で回収した残留泡状定着液Baを加熱することで破泡させることで消泡を行い、液状の状態とすることで、回収した付着物の収容部の大型化を抑制することができる。しかし、この加熱による消泡では、熱をかけることで薄層のウェブ72はシワが発生しやすい。本実施形態の塗布部材クリーニング装置70は、熱によるシワが発生しようとしても、予め形成している縦シワによって斜めシワとなることを抑制できるため、消泡の熱に起因して斜めシワが発生することを抑制することができる。また、巻き取り軸74の直前に配置された加熱ローラ94はウェブ72と密着することで効率的な熱供給を行っているため、その下流側に配置された巻き取り軸74の径変化の影響を受けやすい。この影響を抑制できる構成として、加熱ローラ94の上流側のガイド部材である第三ガイドローラ86は溝部が形成されたガイド部材となっている。また、加熱ローラ94の表面上におけるウェブ72が接触する領域に溝部を形成するとより効果的である。この場合、加熱ローラ94が固定型張架部材や逆回転駆動ローラである場合は、上流側から下流側に広くなる角度を持つ溝を形成し、連れ回りローラや順回転駆動ローラである場合は、上流側から下流側に狭くなる角度を持つ溝を形成する。
【0128】
また、塗布部材クリーニング装置70は、ウェブ72の表面移動が、連続的な表面移動ではなく、表面移動と停止とを繰り返す間欠動作である。ウェブ72を連続的に表面移動させると、大量のウェブ72を消費してしまうことになる。これに対して、数枚から数十枚の間はウェブ72を固定したままの状態でクリーニングを継続し、回収した残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taの量で適量巻き上げる事で消費量を抑えて、効率的な使用が可能となる。また、間欠条件が決まった後で、クリーニング中に連続的に表面移動を行う連続巻き上げを試したところ、斜めシワが発生しガイド部材の溝部だけでは斜めシワの発生を抑制する作用は不十分であった。このように連続的に表面移動を行ったときに斜めシワが発生し易くなる原因は特定できていないが、間欠動作に戻して使用を継続したところ、僅かづつではあるが、斜めシワの程度が改善方向にむかった。これは、張架された状態のウェブ72の一部に、弾性体であるフィルム当接ブレード71が高い線圧で当接されていることで、連続巻き上げは間欠巻き上げと条件が変わっている可能性がある。
【0129】
また、本実施形態の定着装置30は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液31aを液中に気泡が分散した泡状定着液Buとする定着液泡状化手段である定着液供給部130と、樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層である未定着のトナー層Tを担持する定着液付与対象である転写紙Pの表面に泡状定着液Buを付与する泡状定着液付与手段である定着液塗布部140とを有し、泡状定着液Buを付与することで軟化したトナー粒子が軟化した未定着のトナー層を記録媒体である転写紙Pに定着する定着装置である。定着液供給部130によって泡状定着液Buになり、転写紙Pに付与されず、表面移動体である塗布ローラ41及び加圧ローラ43に付着した状態の泡状定着液Buをクリーニングする泡状定着液クリーニング手段として、塗布部材クリーニング装置70及び加圧部材クリーニング装置80を備える。泡状の定着液を用いることで、転写紙P上のトナー像への定着液の微量塗布と塗布ローラ41へのトナーオフセット防止を両立することができる。ここで、塗布ニップCで転写紙Pに付与されなかった泡状定着液Bu(残留泡状定着液Ba)が塗布ローラ41に付着したままとなると新しい泡状定着液Buと混ざって適切な定着が出来なくなるおそれがある。さらに、泡状定着液Buが加圧ローラ43に付着したままとなると、定着液が転写紙Pの裏面に付着して機内の構成部品に付着するおそれがある。これに対して、定着装置30は、塗布部材クリーニング装置70及び加圧部材クリーニング装置80によって塗布ローラ41及び加圧ローラ43を長期間に渡って良好にクリーニングすることができるので、塗布ローラ41や加圧ローラ43に泡状定着液Buが付着したままとなることに起因する不具合を防止することができる。
【0130】
また、本実施形態の定着装置30の泡状定着液付与手段である定着液塗布部140は、表面移動する表面に供給された泡状定着液Buを、定着液付与対象である転写紙Pと対向する塗布位置である塗布ニップCで転写紙Pの表面に塗布する塗布部材である塗布ローラ41を有し、塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41の表面上の泡状定着液Buである残留泡状定着液Baをクリーニングする塗布部材クリーニング手段として、塗布部材クリーニング装置70を用いる。残留泡状定着液Baとともに塗布部材クリーニング装置70によってクリーニングされる位置に到達するオフセットしたトナー粒子Taは、軟化し形態が変化している。そして、このオフセットしたトナー粒子Taは、粘性が高く、流動性はほとんど無いため、当接位置でクリーニング部材に付着すると付着したままとなり、そのまま硬化することがあるが、塗布部材クリーニング装置70ではウェブ72に付着したオフセットしたトナー粒子Taをウェブ72の表面移動によって当接位置Eから強制的に回収する。これにより、当接位置Eでオフセットしたトナー粒子Taが硬化することに起因する不具合を防止することができる。さらに、クリーニングブレードであるフィルム当接ブレード71等、定着液が接触して問題のある部材をウェブ72の内側に配置することで、定着液に接触することに起因する問題を防止することができる。
【0131】
本実施形態の画像形成装置としてのプリンタ100は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体である転写紙P上に未定着のトナー層Tを形成するトナー像形成手段であるプロセスユニット3等と、転写紙P上にトナー像を定着せしめる定着手段とを備え、定着手段として、本実施形態の定着装置30を用いる。定着装置30では塗布ローラ41上の残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taを良好に回収することができるため、プリンタ100では、残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taが塗布ローラ41に残留することに起因する定着不良や画像品質の低下を防止することができ、良好な画像形成を行うことができる。さらに、定着装置30は非加熱の定着方式であるため、熱定着方式の定着装置を備えた構成よりも省エネルギー化を実現できる。
【符号の説明】
【0132】
4 感光体
20 転写ユニット
25 中間転写ベルト
28 紙搬送ユニット
30 定着装置
31 定着液収容器
31a 液状定着液
38 泡微細化部
41 塗布ローラ
43 加圧ローラ
70 塗布部材クリーニング装置
71 フィルム当接ブレード
72 ウェブ
72a 張架面
73 繰り出し軸
74 巻き取り軸
75 第一ガイドローラ
75a 第一ローラ溝
76 第二ガイドローラ
76a 第二ローラ溝
86 第三ガイドローラ
86 第三ローラ溝
94 加熱ローラ
100 プリンタ
130 定着液供給部
140 定着液塗布部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】特許第3290513号公報
【特許文献2】特開2004−109749号公報
【特許文献3】特開昭59−119364号公報
【特許文献4】特開2004−109747号公報
【特許文献5】特開2007−219105号公報
【特許文献6】特開2011−034048号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清掃体の表面に接触し、該被清掃体の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能あるいは無端移動可能に複数の張架部材に張架された帯状のフィルム部材と、
該フィルム部材が該被清掃体表面に接触する位置で該フィルム部材を挟んで該被清掃体表面に当接する当接部材と有し、
該張架部材として、該フィルム部材を挟んで該当接部材が該被清掃体表面に当接する当接位置に対して、該フィルム部材の移動方向上流側の一つ目の該張架部材である当接位置上流側張架部材と、該当接位置に対して該フィルム部材の移動方向下流側の一つ目の該張架部材である当接位置下流側張架部材とを少なくとも有し、
該被清掃体の表面上の付着物を除去するクリーニング装置において、
上記当接位置上流側張架部材と上記当接位置下流側張架部材との表面上における該フィルム部材が接触する領域には、
該フィルム部材の移動方向に沿うように、かつ、該フィルム部材の移動方向に交差する方向の複数箇所で該フィルム部材と対向するように、溝部が形成されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1のクリーニング装置において、
上記当接位置上流側張架部材または上記当接位置下流側張架部材の少なくとも一方は、
上記フィルム部材が表面移動するときに表面移動せず、該フィルム部材との間で表面を摺擦する固定型張架部材であり、
該固定型張架部材の上記溝部は、該固定型張架部材の該フィルム部材が接触する領域における該フィルム部材表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、該フィルム部材の移動方向下流側ほど両端部側となるように、該フィルム部材の移動方向に対して傾斜していることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1または2のクリーニング装置において、
上記当接位置上流側張架部材または上記当接位置下流側張架部材の少なくとも一方は、
上記フィルム部材の表面移動に合わせて連れ回る連れ回りローラであり、
該連れ回りローラの上記溝部は、該連れ回りローラの該フィルム部材が接触する領域における該フィルム部材表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、該フィルム部材の移動方向下流側ほど中央部側となるように、幅方向の略中央部を挟んで巻き方向が逆となる螺旋状の溝であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のクリーニング装置において、
上記当接位置上流側張架部材または上記当接位置下流側張架部材の少なくとも一方は、
上記フィルム部材が表面移動するときに、該フィルム部材よりも速い速度で表面移動し、該フィルム部材との間で表面を摺擦する順回転駆動ローラであり、
該順回転駆動ローラの上記溝部は、該順回転駆動ローラの該フィルム部材が接触する領域における該フィルム部材表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、該フィルム部材の移動方向下流側ほど中央部側となるように、幅方向の略中央部を挟んで巻き方向が逆となる螺旋状の溝であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項4のクリーニング装置において、
上記当接位置上流側張架部材に上記順回転駆動ローラを用いることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のクリーニング装置において、
上記当接位置上流側張架部材または上記当接位置下流側張架部材の少なくとも一方は、
上記フィルム部材が表面移動するときに、該フィルム部材の移動方向とは逆方向に表面移動し、該フィルム部材との間で表面を摺擦する逆回転駆動ローラであり、
該逆回転駆動ローラの上記溝部は、該逆回転駆動ローラの該フィルム部材が接触する領域における該フィルム部材表面の移動方向に直交する幅方向の位置が、該フィルム部材の移動方向下流側ほど両端部側となるように、幅方向の略中央部を挟んで巻き方向が逆となる螺旋状の溝であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のクリーニング装置において、
上記フィルム部材は、繰り出し軸から繰り出され、上記当接位置を通過した後、巻き取り軸に巻き取られる、巻き取り式のウェブであり、
該巻き取り軸に対して該ウェブの移動方向上流側の一つ目の上記張架部材は、該巻き取り軸に巻き取られたウェブの径が経時で変化しても、該ウェブに常に接触する構成であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
請求項7に記載のクリーニング装置において、
上記当接位置から上記巻き取り軸までの間に配置された上記張架部材は、上記ウェブの上記当接部材が当接する側の面にのみ接触するものであり、該当接位置から該巻き取り軸までの間の複数箇所に配置されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載のクリーニング装置において、
上記当接位置下流側張架部材から上記巻き取り軸までの間の上記フィルム部材を加熱する加熱手段を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載のクリーニング装置において、
上記フィルム部材の表面移動が、連続的な表面移動ではなく、表面移動と停止とを繰り返す間欠動作であることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項11】
樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、
該樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に該泡状定着液を付与する泡状定着液付与手段とを有し、
該泡状定着液を付与することで軟化した該樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、
上記定着液泡状化手段によって上記泡状定着液になり、上記定着液付与対象に付与されず、表面移動体に付着した状態の該泡状定着液をクリーニングする泡状定着液クリーニング手段を備え、
該泡状定着液クリーニング手段として、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のクリーニング装置を用いることを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項11の定着装置において、
上記泡状定着液付与手段は、表面移動する表面に供給された上記泡状定着液を、上記定着液付与対象と対向する塗布位置で該定着液付与対象の表面に塗布する塗布部材を有し、
上記クリーニング装置を、該塗布位置を通過した後の該塗布部材の表面上の該泡状定着液をクリーニングする塗布部材クリーニング手段に用いることを特徴とする定着装置。
【請求項13】
樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、
記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面である定着液付与対象の表面に泡状定着液を塗布し、
該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、
該定着手段として、請求項11または12に記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate