説明

クリーニング装置

【課題】メンテナンス空間を確保し易くして、作業性を向上させたクリーニング装置を提供する。
【解決手段】検討装置2は、搬送装置1を水平姿勢から姿勢変更させて形成される空間部を利用してブランケット胴14a、14bのニップ部より離間する方向へ移動可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材をブランケットに挟み込んで搬送することによりシート両面のクリーニングが行なえるクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オフセット印刷機へ記録紙、印刷シートなどのシート材(樹脂シート、枚葉紙など)を供給して印刷の前工程として画像品位を向上させるため、シート材に付着した塵埃を除去するクリーニング装置が用いられる。クリーニング装置には、シート面に付着した塵埃をエアブローにより除去するものや、粘着ローラ対を通過させて塵埃を粘着させて除去するもの、更には一対のブランケット胴を通過させてシート両面に付着する塵埃を除去する装置などがある。
【0003】
ブランケット胴にはゴム製のブランケットが巻き付けられており、ブランケットには粘着ローラが押圧しており、ブランケットに付着した塵埃を粘着し、粘着ローラに押圧する回収ローラへ回収するようになっている。この回収ローラに回収される塵埃が多くなると軸方向に抜き出して交換するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対のブランケット胴のうちシリンダーからブランケットを取り外して交換する場合、シート搬送面より上側のブランケット胴に対する作業スペースは確保し易いことから比較的容易に行なえる。しかしながら、シート搬送面より下側のブランケット胴に対する作業空間が確保し難い。具体的には、ブランケット胴の近傍には見当装置や搬送装置が設けられるので、シリンダーよりブランケットを取り外して交換する作業が行ない難い。
特に、クリーニング装置でシート材のジャム(紙づまり)が発生すると、駆動伝達機構と連繋するブランケット胴を分解しなければメンテナンスを行なえない場合があり、メンテナンスに時間がかかるという不具合がある。
【0005】
本発明は上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、メンテナンス空間を確保し易くして、作業性を向上させたクリーニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
シート材を挟み込んで搬送する際にシート面のクリーニングを行なう一対のブランケット胴と、一対のブランケット胴のニップ部上流側近傍に設けられシート材を位置決めしてニップ部へ送り込む見当装置と、シート材を見当装置へ搬送する搬送装置が水平姿勢から姿勢変更可能に設けられており、見当装置は、搬送装置を水平姿勢から姿勢変更させて形成される空間部を利用してブランケット胴のニップ部より離間する方向へ移動可能に設けられていることを特徴とする。
また、搬送装置はシート搬送方向上流側の回転軸を中心にシート搬送方向下流側を上方へはね上げて水平姿勢から起立姿勢へ姿勢変更し、見当装置は起立した搬送装置の下方空間部へ移動可能に設けられることを特徴とする。
また、搬送装置はシート搬送方向上流端側を上方へ持ち上げてシート搬送方向下流側を上流側へ移動させて水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更し、見当装置は倒立した搬送装置の手前側空間部へ移動可能に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述したクリーニング装置を用いれば、見当装置は、搬送装置を水平姿勢から姿勢変更させて形成される空間部を利用してブランケット胴のニップ部より離間する方向へ移動させることで、ブランケット胴の周囲に十分な作業空間を形成できる。したがって、1対のブランケット胴のうち特にシート搬送面より下側のブランケット胴に巻き付けられたブランケットを交換するために十分な作業空間が確保できる。また、メンテナンスのためにクリーニング装置を分解する必要はなく特別な取出し機構を設ける必要もないため、メンテナンス作業を効率良く行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るクリーニング装置の最良の実施形態について添付図面とともに詳細に説明する。クリーニング装置の一例としてシート材(例えば樹脂シート)に印刷処理の前工程として用いられるクリーニング装置について説明する。
図1乃至図3において、クリーニング装置には、シート材の搬送方向上流側から下流側に向かって、搬送装置1、見当装置2、第1のクリーニング部3、第2のクリーニング部4が設けられている。
【0009】
図2Aにおいて、搬送装置1は例えばベルトコンベアが用いられ、幅方向両側に設けられた水平フレーム5のシート搬送方向上流側に回転可能に軸支された回転軸5a、シート搬送方向下流側に回転可能に軸支された回転ローラ5b間に複数の無端ベルト6が架設されている。無端ベルト6に対向して押さえコロ7が設けられており、押さえコロ7は自重によりベルト6に当接して従動回転するように設けられている。搬送装置1は、シート搬送方向上流側の回転軸5aを中心にシート搬送方向下流側を上方へはね上げて水平姿勢から姿勢変更できるようになっている。
【0010】
具体的には、図3Aにおいて、幅方向両側に設けられた水平フレーム5には取手5cが設けられており、該取手5cを把持して回転軸5aを中心に回転できるようになっている。水平フレーム5はスリット8aが形成されたレバー8の一端に連繋している。レバー8には長手方向にスリット8aが設けられている。見当装置2にはスリット8aに挿入可能な固定ピン9が設けられている。図3Bにおいて、搬送装置1は、取手5cを把持してシート搬送方向下流側を上方へ持ち上げると、シート搬送方向上流端の回転軸5aを中心に時計回り方向へ回転する。このとき、水平フレーム4に連繋するレバー8も徐々に同方向へ回転し、レバー8が起立(直立)するまで回転する。搬送装置1は、レバー8が直立した位置で連繋部のモーメントがつりあった傾斜状態で停止する。図3Cにおいて、レバー8が直立した状態で後述する見当装置2を搬送装置1の下方空間部へ移動させ、スリット8aに固定ピン9を係止することで搬送装置1が傾斜した姿勢で停止するようになっている。
【0011】
図1において、見当装置2は、第1のクリーニング部3の上流側近傍に設けられシート材を位置決めする。図4において、見当装置2はシート材の先端を爪10に突き当てた状態で、両側からガイド板20(図5参照)により挟み込むことで位置決めが行なわれ、爪10を退避させてシート材を第1のクリーニング部3へ送りローラ11により送り込むようになっている。この見当装置2は、装置本体に対し固定ねじ12により固定されている。この固定ねじ12を緩めることで、両側装置フレームに固定される断面コ字状のガイドレール13のレール溝に沿ってコロ2aが転動するようになっている。これにより、シート搬送方向下流端を上方へはね上げられた搬送装置1の下方空間部へ見当装置2をガイドレール13に沿ってスライドさせることができる。また、図3Aにおいて、見当装置2には固定ピン9が設けられており、図3Cにおいて見当装置2をスライドさせて起立したレバー8のスリット8aに固定ピン9を挿入して係止することができるようになっている。図2Bに見当装置2を搬送装置1の下方空間部へ移動した状態を示す。
【0012】
図1において、第1のクリーニング部3には、シート材(樹脂シートなど)を挟み込んで搬送する際にシート両面のクリーニングを行なう一対のブランケット胴14a、14bが設けられている。図3A、Bにおいて、ブランケット胴14a、14bには、金属製のシリンダー15a、15bの周囲にゴム製のブランケット16a、16bが巻き付けられている。図1において、ブランケット16a、16bには粘着ローラ17a、17bが各々圧接しており、ブランケット16a、16bに付着した塵埃を粘着し、クリーニングローラ18a、18bに回収するようになっている。クリーニングローラ18a、18bは、装置手前側に軸方向に引き出して交換できるようになっている。また、第1のクリーニング部3の下流側に設けられる第2のクリーニング部4は、複数の粘着ローラ対19a、19bが設けられており、シート材の両面をクリーニングして次工程へ送り出すようになっている。
【0013】
図5において、シート材Sは、搬送装置1の無端ベルト6に載置されたまま見当装置2へ搬送される。そして、シート材Sは先端部が爪10に突き当たる際に両側からガイド板20により挟み込まれて位置決めが行なわれた後、爪10を退避させて送りローラ11を駆動することで、ブランケット胴14a、14bのニップ部へ送り込まれてクリーニングが行なわれる。
【0014】
図3D〜Fにおいて、ブランケット胴14a、14bに巻き付けられたブランケット16a、16bを交換する場合には、クリーニング装置の動作を一旦停止させる(図3D参照)。そして、水平レバー5の取手5cを把持し搬送装置1のシート搬送方向下流側を持ち上げて、回転軸5aを中心に時計回り方向へ回転させ、レバー8が直立した位置で停止する(図3E参照)。次に、見当装置2の固定ねじ12(図4参照)を緩めてガイドレール13に沿って搬送装置1の下方空間部へ移動させる。そして、固定ピン9をレバー8のスリット8aに挿入して係止することで搬送装置1及び見当装置2が固定される(図3F、図3C参照)。このように搬送装置1を姿勢変更して形成される空間部を利用して、ブランケット胴14a、14bに巻き付けられたブランケット16a、16bの交換などメンテナンス作業が行なえるようになっている。
【0015】
次に搬送装置の他例について、図6乃至図8を参照して説明する。
搬送装置1の姿勢変更は、シート搬送方向下流側を起立させる場合に限らず、倒立させて姿勢変更するようにしてもよい。具体的には、図8A、Bにおいて搬送装置1は、シート搬送方向上流側を上方へ持ち上げてシート搬送方向下流側を上流側へ移動させて水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更するようになっている。見当装置2は搬送装置1に一体に組み付けられるため、倒立した搬送装置1の手前側空間部へ移動するようになっている。
【0016】
尚、図6Aにおいて、搬送装置1はベルトコンベアに限らず、シート材Sを見当装置2へ搬送するのに無端ベルト6を用い、見当装置2からブランケット胴14a、14bへ送り込む場合には、シート材Sの後端を送り爪21により押動するようになっている。図6Bにおいて、送り爪21は、シート材Sをブランケット胴14a、14bへ送り込む際には水平位置にあり、元の位置へ戻る際には次のシート材Sと干渉しないように、破線で示すように爪位置を搬送面より下方に退避させて移動するようになっている。
【0017】
図7A、Bにおいて、搬送装置1は装置両側に上下に設けられたガイドレール22の間をシート搬送方向下流側に回転自在に設けられたベアリング23が転動するようになっている。また、搬送装置1にはシート搬送方向上流側で第1のスライドアーム24aの先端に連繋している。第1のスライドアーム24aは第2、第3のスライドアーム24b、24cと同軸状に設けられている。第3のスライドアーム24cは装置本体に鉛直方向に固定されている。また、搬送装置1の裏面側には、ガススプリング(ダンパー)25の可動ロッドが接続されている。ガススプリング25本体は装置本体に固定されている。
【0018】
図8A、Bにおいて、ブランケット胴14a、14bに巻き付けられたブランケットを交換する場合には、クリーニング装置を一旦停止させた状態で、搬送装置1のシート搬送方向上流側のロッド26を把持して持ち上げることにより、第1、第2のスライドアーム24a、24bやガススプリング25の可動ロッドが徐々に伸張し、搬送装置1のシート搬送方向下流側のベアリング23がガイドレール22を転がりながらシート搬送方向上流側へ移動する。見当装置2は搬送装置1にシート搬送方向下流側に一体に設けられているので、見当装置2もシート搬送方向上流側へ移動する。そして、ベアリング23がガイドレール22の上流端まで移動すると、搬送装置1は倒立した姿勢で保持される。搬送装置1は、自重により元に戻ろうとするが、ガススプリング25の保持圧により倒立姿勢が保持される。このように、搬送装置1を姿勢変更して形成される空間部を利用して、ブランケット胴14a、14bに巻き付けられたブランケットの交換などメンテナンス作業が行なえるようになっている。
【0019】
尚、シート材Sは樹脂シートに限らず、フィルム材、記録紙などであってもよい。クリーニング装置は、両面クリーニングについて説明したが、片面クリーニングの場合にも適用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】クリーニング装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】メンテナンス作業を行なう場合の斜視説明図である。
【図3】搬送装置及び見当装置の移動動作を示す状態説明図である。
【図4】見当装置の斜視説明図である。
【図5】搬送装置及び見当装置の動作説明図である。
【図6】他例に係る搬送装置の斜視図である。
【図7】他例に係るクリーニング装置の説明図及び斜視説明図である。
【図8】他例に係るクリーニング装置の搬送装置及び見当装置の移動動作を示す説明図及び斜視説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 搬送装置
2 見当装置
3 第1のクリーニング部
4 第2のクリーニング部
5 水平フレーム
5a 回転軸
5b 回転ローラ
5c 取手
6 無端ベルト
7 押さえコロ
8 レバー
8a スリット
9 固定ピン
10 爪
11 送りローラ
12 固定ねじ
13 ガイドレール
14a、14b ブランケット胴
15a、15b シリンダー
16a、16b ブランケット
17a、17b 粘着ローラ
18a、18b クリーニングローラ
19a、19b 粘着ローラ対
20 ガイド板
21 送り爪
22 ガイドレール
23 ベアリング
24a 第1のスライドアーム
24b 第2のスライドアーム
24c 第3のスライドアーム
25 ガススプリング
26 ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を挟み込んで搬送する際にシート面のクリーニングを行なう一対のブランケット胴と、
一対のブランケット胴のニップ部上流側近傍に設けられシート材を位置決めしてニップ部へ送り込む見当装置と、
シート材を見当装置へ搬送する搬送装置が水平姿勢から姿勢変更可能に設けられており、
見当装置は、搬送装置を水平姿勢から姿勢変更させて形成される空間部を利用してブランケット胴のニップ部より離間する方向へ移動可能に設けられていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
搬送装置はシート搬送方向上流側の回転軸を中心にシート搬送方向下流側を上方へはね上げて水平姿勢から起立姿勢へ姿勢変更し、見当装置は起立した搬送装置の下方空間部へ移動可能に設けられることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項3】
搬送装置はシート搬送方向上流側を上方へ持ち上げてシート搬送方向下流側を上流側へ移動させて水平姿勢から倒立姿勢へ姿勢変更し、見当装置は倒立した搬送装置の手前側空間部へ移動可能に設けられることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate