説明

クリーンルーム内床開口作業用囲い

【課題】床開口への落下物を防いで作業の安全性を確保でき、かつクリーンルームの清浄度を保つことができるクリーンルーム内床開口作業用囲いを提供する。
【解決手段】囲い本体11が、直方体の辺を構成する枠状のフレーム材21と、その直方体の4つの側面と天井面とを構成するよう各フレーム材21に固定された5つのパネル材22、23とを有する。側面のパネル材23は上側に出入口24をあけて設けられている。キャスター12がフレーム材21の下端に床面上を移動可能に設けられる。シート状の開閉部材13が出入口24を開閉可能に囲い本体11に設けられる。下部シート材14が囲い本体11と床面との間の間隙を覆うよう囲い本体11に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム内で床開口から床下作業を行うときに使用するクリーンルーム内床開口作業用囲いに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダウンフローによる気流方式を採用したクリーンルームは、複数の床板を敷き詰めて床面を形成した二重床構造のフリーアクセスフロアから成っている(例えば、特許文献1または2参照)。一部の床板には、厚さ方向に貫通して設けられた複数の通気孔が設けられている。天井面に設けられたフィルタを通った空気は床面に向けて吹き出され、クリーンルームの清浄度を保つのに望ましい、床面に略垂直のダウンフローの気流となり各通気孔を通って床下に流れるようになっている。床下には、各種ユーティリティの配管、配線、ダクト類などが設置されており、それらの点検や改修作業が頻繁に行われている。
【0003】
従来、床下の配管などの点検等の作業を行うときには、発塵対策を施しながら床板を1〜数枚取り外し、作業者が床上と床下とを行き来できるようにして作業を行っている。このとき、図4に示すように、カラーコーン51やコーンバー52などを使用して床開口53の周囲にバリケードを施して、床開口53からの転落を防止する対策を行っている。また、枠体や柵などで床開口の周囲を覆うことも考えられる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−168743号公報
【特許文献2】実開平1−168745号公報
【特許文献3】特開平8−326330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カラーコーンなどでバリケードを施したり、特許文献3に記載のような枠体や柵などで覆ったりする方法では、上部に覆いがないため、近くで作業を行っているときに工具を落としたり、荷崩れがあったりすると、床開口で作業中の作業者に危険であるという課題があった。また、カラーコーンなどでバリケードを施す場合、床面を転がってきたものが床開口から落ちるのを防ぐことはできず、同様の危険性があった。
【0006】
さらに、床下内に集積した塵埃が床下作業により巻き上がってクリーンルーム内に入るおそれがあり、クリーンルームの清浄度が低下するという課題もあった。また、ダウンフローの気流が床開口に集中するため、本来クリーンルームの清浄度を保つために望ましい床面に略垂直のダウンフローの気流が乱され、クリーンルームの清浄度を低下させるおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、床開口への落下物を防いで作業の安全性を確保でき、かつクリーンルームの清浄度を保つことができるクリーンルーム内床開口作業用囲いを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るクリーンルーム内床開口作業用囲いは、クリーンルーム内で床開口から床下作業を行うときに使用するクリーンルーム内床開口作業用囲いであって、側面と天井面とを有し、クリーンルームの床面との間に間隙をあけて前記床開口を覆うよう床面上に設置され、前記側面に出入口を有する囲い本体と、前記出入口を開閉可能な開閉部材と、前記囲い本体に前記間隙を覆うよう設けられた下部シート材とを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係るクリーンルーム内床開口作業用囲いは、囲い本体により床開口を覆っているため、床面を転がってきたものが床開口へ落下するのを防ぎ、床下作業を安全に行うことができる。また、床下作業により粉塵が巻き上がっても、その粉塵がクリーンルーム内に飛散するのを防ぎ、クリーンルームの清浄度を保つことができる。
【0010】
本発明に係るクリーンルーム内床開口作業用囲いは、囲い本体の側面や上面に注意喚起のための表示がされていてもよい。開閉部材は、垂れ幕状のシートから成っても、扉から成ってもよい。囲い本体、開閉部材および下部シート材は、クリーンルーム内に塵埃を持ち込んだり飛散させたりしないよう、帯電防止材料から成ることが好ましい。囲い本体および開閉部材は、囲い本体の内部での作業状態を外部から目視で確認できるよう、透明または半透明であることが好ましい。
【0011】
本発明に係るクリーンルーム内床開口作業用囲いにおいて、前記囲い本体は、直方体の辺を構成する枠状のフレーム材と、前記直方体の4つの側面と天井面とを構成するよう各フレーム材に固定された5つのパネル材とを有し、前記パネル材のうち前記側面の1つを構成するパネル材は上側に前記出入口をあけて設けられ、前記開閉部材はシート状で、前記出入口の上部に取り付けられていることが好ましい。
【0012】
この場合、囲い本体を、各フレーム材にパネル材を固定することで組み立てることができ、各フレーム材からパネル材を取り外すことで解体することができるので、囲い本体の組立、解体が容易である。このため、使用するときに組み立て、使用しないときには解体して保管スペースを節約することができる。各フレーム材や各パネル材として、汎用のものを使用した場合、材料コストを低減することができる。各フレーム材および各パネル材は、組み立てる際に粉塵を発生させない樹脂製や金属製であることが好ましい。この場合、クリーンルーム内でも清浄度を保ったまま、囲い本体を組み立てることができる。シート状の開閉部材は、取付け容易で、かつ出入口からの出入りを容易にすることができる。シート状の開閉部材および下部シート材は、透明な帯電防止ビニルシートから成ることが好ましい。
【0013】
本発明に係るクリーンルーム内床開口作業用囲いは、前記フレーム材の下端に前記床面上を移動可能な複数のキャスターを有し、前記床面はクリーンルーム内に気流を形成する複数の通気孔を有し、前記下部シート材は前記囲い本体が覆う前記床面の前記通気孔の総面積と同等面積の通気用間隙を前記床面との間に形成して前記間隙を覆うことが好ましい。
この場合、各キャスターにより容易に移動可能である。作業中に移動しないよう、各キャスターにはストッパーが設けられていることが好ましい。
【0014】
下部シート材は囲い本体が覆う床面の通気孔の総面積と同等面積の通気用間隙を床面との間に形成しているので、床開口をあける前の床面の通気孔を通過する空気の量と、床開口に流れ込む空気の量とが同等になる。このため、クリーンルーム内のダウンフローの気流の乱れを抑え、クリーンルームの清浄度を保つことができる。
【0015】
本発明に係るクリーンルーム内床開口作業用囲いにおいて、前記下部シート材は前記囲い本体に上下動させて前記通気用間隙の幅を調整可能に設けられていてもよい。この場合、下部シート材を上下動させて通気用間隙の幅を調整し、床開口をあける前の床面の通気孔を通過する空気の量と、床開口に流れ込む空気の量とが同等になるよう容易に設定することができる。このため、クリーンルーム内のダウンフローの気流の乱れを抑え、クリーンルームの清浄度を保つことが容易にできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、床開口への落下物を防いで作業の安全性を確保でき、かつクリーンルームの清浄度を保つことができるクリーンルーム内床開口作業用囲いを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態のクリーンルーム内床開口作業用囲いを示す、一部を切り欠いた斜視図である。
【図2】図1に示すクリーンルーム内床開口作業用囲いの、図1とは異なる角度からの斜視図である。
【図3】図1に示すクリーンルーム内床開口作業用囲いの使用状態を示す、一部を切り欠いた側面図である。
【図4】従来のクリーンルーム内床開口の転落防止用のバリケードを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図3は、本発明の実施の形態のクリーンルーム内床開口作業用囲いを示している。
図1乃至図3に示すように、クリーンルーム内床開口作業用囲い10は、複数の床板1を敷き詰めた床面を有するクリーンルーム内で、床板1を外し、床下2での作業を床開口3を通して行うときに使用され、囲い本体11と4つのキャスター12と開閉部材13と下部シート材14とを有している。
【0019】
図1および図2に示すように、囲い本体11は、15本のフレーム材21と複数のパネル材22と開口用パネル材23とを有している。各フレーム材21は、断面がコの字型の軽量鉄骨のランナー部材から成り、横長の直方体の辺を構成する枠状に組み立てられている。各フレーム材21は、12本が直方体の各辺を構成し、3本が隣り合う長辺の中間位置を接続するよう配置され、それぞれの接続位置でビス留めされている。
【0020】
各パネル材22は、半透明なプラスチック段ボール製で、各フレーム材21による直方体の長手方向に沿った2つの側面、天井面、および一方の端面を構成するよう、フレーム材21に粘着テープで貼り付けられている。図2に示すように、開口用パネル材23は、半透明なプラスチック段ボール製で、各フレーム材21による直方体の他方の端面の下縁のフレーム材21に粘着テープで固定されている。開口用パネル材23は、上縁のフレーム材21aとの間に、作業員が出入りできる間隔を開けている。囲い本体11は、側面の、上縁のフレーム材21aおよび両側縁の各フレーム材21bと、開口用パネル材23の上縁とで囲まれた内側が出入口24となっている。
【0021】
図1および図2に示すように、各キャスター12は、各フレーム材21の下端にそれぞれ設けられている。各キャスター12は、ストッパーを有し、囲い本体11を支持可能でかつクリーンルームの床面上を移動可能に、フレーム材21に固定されている。これにより、囲い本体11は、クリーンルームの床面との間に、各キャスター12により生じる間隙をあけて、クリーンルームの床板1を外して形成された床開口3を囲うとともに、床開口3の上方を覆うよう構成されている。
【0022】
図2に示すように、開閉部材13は、透明な帯電防止ビニルシートから成り、出入口24の上縁のフレーム材21aまたは天井面を構成するパネル材22に固定されている。開閉部材13は、出入口24の前に垂れ下がって、出入口24を開閉可能に覆うように設けられている。開閉部材13は、粘着テープにより、出入口24を気密的に閉じることができる。
【0023】
図1および図2に示すように、下部シート材14は、透明な帯電防止ビニルシートから成り、各フレーム材21による直方体の側面を構成する各パネル材22および開口用パネル材23の下縁部に粘着テープで固定されている。下部シート材14は、各キャスター12により囲い本体11と床面との間に生じる間隙の前に垂れ下がって、その間隙を覆うよう設けられている。下部シート材14は、固定する際に床面との間隔を調整して粘着テープで固定することが好ましい。図2に示すように、囲い本体11のパネル材22の外面には、注意喚起のための表示25を取り付けることができる。
【0024】
床板1は、クリーンルーム内に気流を形成する複数の通気孔を有している。下部シート材14は、囲い本体11が覆う床板1の通気孔の総面積と同等面積の通気用間隙を床板1との間に形成して床面との間の間隙を覆うよう、床面との間隔を調整して固定される。
【0025】
なお、図1および図2に示す具体的な一例では、囲い本体11は、長さが1820mm、幅が910mm、高さが910mmである。また、各床板1は、600mm角であり、3枚取り外すことにより床下2に入って作業を行うことができる。床下2は、高さが80〜130cmである。但し、その数値は例示であり、限定されるものではない。
【0026】
次に、作用について説明する。
図3に示すように、クリーンルーム内床開口作業用囲い10は、囲い本体11により床開口3を覆って床下作業を行うために使用される。囲い本体11により床開口3を覆っているため、床面を転がってきたものが床開口3へ落下するのを防ぎ、床下作業を安全に行うことができる。また、床下作業により粉塵が巻き上がっても、その粉塵がクリーンルーム内に飛散するのを防ぎ、クリーンルームの清浄度を保つことができる。床下作業終了後、クリーンスーツの塵埃を払い落とした後に、出入口24からクリーンルームに入ることにより、塵埃がクリーンルーム内に飛散するのを防ぐことができる。このように、クリーンルーム内床開口作業用囲い10は、クリーンルームの清浄度を保つことができる。
【0027】
下部シート材14は囲い本体11が覆う床板1の通気孔の総面積と同等面積の通気用間隙を床面との間に形成しているので、床開口3をあける前の床面の通気孔を通過する空気の量と、床開口3に流れ込む空気の量とが同等になる。このため、クリーンルーム内のダウンフローの気流の乱れを抑え、クリーンルームの清浄度を保つことができる。
【0028】
クリーンルーム内床開口作業用囲い10は、囲い本体11をフレーム材21、パネル材22および開口用パネル材23で構成しているため、囲い本体11を、各フレーム材21にパネル材22および開口用パネル材23を固定することで組み立てることができ、各フレーム材21からパネル材22および開口用パネル材23を取り外すことで解体することができる。各フレーム材21は、ビスにより組立および解体が可能である。このため、囲い本体11の組立、解体が容易である。このため、使用するときに組み立て、使用しないときには解体して保管スペースを節約することができる。各フレーム材21、各パネル材22および開口用パネル材23として、市販の汎用のものを使用することにより、材料コストを低減することができる。
【0029】
各フレーム材21が鉄製であり、各パネル材22が樹脂製であるため、組立て時に紙粉や木粉を発生する紙や木と異なり、組立て時に粉塵を発生しない。このため、クリーンルーム内で清浄度を保ったまま、囲い本体11を組み立てることができる。また、開閉部材13および下部シート材14が帯電防止ビニルシートから成るため、塵埃を吸着せず、クリーンルーム内に塵埃を持ち込んだり飛散させたりするのを防ぐことができる。
【0030】
クリーンルーム内床開口作業用囲い10は、各キャスター12により容易に移動可能である。作業中には、ストッパーで各キャスター12を固定することにより、移動しないようにすることができる。また、囲い本体11が半透明で、開閉部材13が透明であるため、囲い本体11の内部での作業状態を、外部から目視で確認することができる。さらに、開閉部材13が透明であるため、囲い本体11の内部や外側の状態が目視で確認でき、人が安全に出入りできる。
【0031】
下部シート材14は、囲い本体11に上下動させて通気用間隙の幅を調整可能に設けられていてもよい。下部シート材14を上下動可能にする構成は、例えば、囲い本体11に、上下方向に沿ってレール部材を固定し、下部シート材14に、レール部材に沿って移動して任意の位置で停止可能なストッパ付きのスライダを固定して構成することができる。
【0032】
この場合、下部シート材14を上下動させて通気用間隙の幅を調整し、床開口3をあける前の床面の通気孔を通過する空気の量と、床開口3に流れ込む空気の量とが同等になるよう容易に設定することができる。このため、クリーンルーム内のダウンフローの気流の乱れを抑え、クリーンルームの清浄度を保つことが容易にできる。
【符号の説明】
【0033】
1 床板
2 床下
3 床開口
10 クリーンルーム内床開口作業用囲い
11 囲い本体
21 フレーム材
22 パネル材
23 開口用パネル材
24 出入口
12 キャスター
13 開閉部材
14 下部シート材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム内で床開口から床下作業を行うときに使用するクリーンルーム内床開口作業用囲いであって、
側面と天井面とを有し、クリーンルームの床面との間に間隙をあけて前記床開口を覆うよう床面上に設置され、前記側面に出入口を有する囲い本体と、
前記出入口を開閉可能な開閉部材と、
前記囲い本体に前記間隙を覆うよう設けられた下部シート材とを、
有することを特徴とするクリーンルーム内床開口作業用囲い。
【請求項2】
前記囲い本体は、直方体の辺を構成する枠状のフレーム材と、前記直方体の4つの側面と天井面とを構成するよう各フレーム材に固定された5つのパネル材とを有し、前記パネル材のうち前記側面の1つを構成するパネル材は上側に前記出入口をあけて設けられ、前記開閉部材はシート状で、前記出入口の上部に取り付けられていることを、
特徴とする請求項1記載のクリーンルーム内床開口作業用囲い。
【請求項3】
前記フレーム材の下端に前記床面上を移動可能な複数のキャスターを有し、
前記床面はクリーンルーム内に気流を形成する複数の通気孔を有し、
前記下部シート材は前記囲い本体が覆う前記床面の前記通気孔の総面積と同等面積の通気用間隙を前記床面との間に形成して前記間隙を覆うことを、
特徴とする請求項2記載のクリーンルーム内床開口作業用囲い。
【請求項4】
前記下部シート材は前記囲い本体に上下動させて前記通気用間隙の幅を調整可能に設けられていることを、
特徴とする請求項3記載のクリーンルーム内床開口作業用囲い。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202148(P2012−202148A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69050(P2011−69050)
【出願日】平成23年3月27日(2011.3.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.カラーコーン
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)