説明

クリーンロボット

【課題】高速且つ円滑な作動軸の動きを実現可能なクリーンロボットを提供すること。
【解決手段】下側ジャバラ状部材50は、作動軸32の一端側がカバー部31から延出するのに従ってカバー部から外側に向かって伸びるように構成される一方で、上側ジャバラ状部材52は、作動軸32の一端側がカバー部31から延出するのに従ってカバー部31から内側に向かって伸びるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の実装等に用いるため、少なくとも装置内部で発生する粉塵等を外部に放出しないように構成されたクリーンロボットが知られている。このクリーンロボットは、外部の粉塵や水滴が装置内部に入ることを防止したり、装置内部の粉塵や油滴が外部に飛散することを防止したりすることができるように構成されており、防塵防滴仕様やクリーンルーム仕様のロボットとして知られている。
【0003】
このようなクリーンロボットは、電子部品の実装等に用いられる作動軸と、その作動軸を軸心方向に沿って進退させたり軸心周りに回動させたりする駆動機構とを備えている。粉塵や油滴の発生源は駆動機構周りであるため、この駆動機構周りをカバーで覆っている。更に、作動軸はカバーから延出して進退自在に保持されるため、作動軸の進退に合わせて伸縮するジャバラ部材を作動軸とカバーとの間に介在するように設けている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−101907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のロボットは、カバーとして機能する回動アームと作動軸である主軸の下端部との間に下側ジャバラを設けている。回動アームの内部空間と下側ジャバラの内部空間とは連通されており、主軸の下端部が回動アームから繰り出されると下側ジャバラが伸びてその内部空間は広がり、回動アームの内部空間から空気が流入するように構成されている。
【0006】
一方、カバーとして機能する回動アームと作動軸である主軸の上端部との間に上側ジャバラを設けている。回動アームの内部空間と上側ジャバラの内部空間とは連通されており、主軸の下端部が回動アームから繰り出されると上側ジャバラが縮んでその内部空間は狭まり、回動アームの内部空間に空気が流入するように構成されている。
【0007】
従って、回動アームから主軸の下端部が繰り出されると、上側ジャバラは縮む一方で下側ジャバラは伸び、回動アームに主軸の下端部が収容される方向に後退すると、上側ジャバラは伸びる一方で下側ジャバラは縮む。このように、上側ジャバラの伸縮と下側ジャバラの伸縮とを利用することで、回動アームと上側ジャバラと下側ジャバラとで構成される総内部空間の容積を略一定に保っている。粉塵等の排出を防ぐため回動アームの内部を負圧に保つものであるところ、その総内部空間の容積は略一定に保たれていることから、内部の負圧維持がより確実なものとなっている。
【0008】
ところで、このようなクリーンロボットは、上述したように電子部品の実装等に用いられるものであることから、生産性向上のためより高速でのより円滑な動きが求められている。上記特許文献1においても高速且つ円滑な作動軸の動きを目的としているけれども、市場のニーズはより高速且つ円滑な作動軸の動きを求めている。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、少なくとも装置内部で発生する粉塵を外部に放出しないように構成されたクリーンロボットであって、より高速且つ円滑な作動軸の動きを実現可能なクリーンロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明者は、装置の内部空間を移動する空気の流れに着目した。上述した従来の技術では、上側ジャバラも下側ジャバラもそれぞれの内部を作動軸が通っている構成となっているから、作動軸の動きに伴って上側ジャバラ及び下側ジャバラが伸縮する際に、内部の空気は作動軸とジャバラとの間を流れることになる。高度に高速性や円滑性を追求する場合、この内部の空気の流れをより円滑にすることが必要であると本発明者は考えた。本発明はこのような検討及び知見に基づいてなされたものである。
【0011】
本発明に係るクリーンロボットは、軸心方向に沿って移動すると共に軸心周りに回動する作動軸と、作動軸をその軸心方向に沿って移動させると共に軸心周りに回動させる駆動機構と、作動軸及び駆動機構を覆うカバー部と、作動軸の一端側とカバー部とを繋ぐ第1伸縮部と、作動軸の他端側と前記カバー部とを繋ぐ第2伸縮部と、を有し、カバー部と第1伸縮部と第2伸縮部とで画定される空間であって駆動機構が収容される総内部空間の容積を略一定に保つ容積維持機構と、を備える。駆動機構は、作動軸をその一端側がカバー部から延出するように進退自在に保持する。第1伸縮部は、作動軸の一端側がカバー部から延出するのに従ってカバー部から外側に向かって伸びるように構成される一方で、第2伸縮部は、作動軸の一端側がカバー部から延出するのに従ってカバー部から内側に向かって伸びるように構成される。
【0012】
本発明では、容積維持機構を構成する第2伸縮部を作動軸の他端側とカバー部とを繋ぐものとして構成すると共に、作動軸の一端側がカバー部から延出するのに従って第2伸縮部がカバー部から内側に向かって伸びるように構成している。従って、作動軸の他端側に繋がれた第2伸縮部がカバー部内に突出し、その突出度合いに応じてカバー部の内部空間の容積が必要なだけ減じられ、容積維持機構の機能を果たしている。本発明は、従来のように第2伸縮部内に作動軸が突出し、作動軸の周囲を通って第2伸縮部内に空気が出入りするものではなく、カバー部内に突出した第2伸縮部の突出度合いによって総内部空間の容積を略一定に保っている。そのため、少なくとも第2伸縮部周辺においては、第2伸縮部が伸びて第2伸縮部が占有する体積が増えることで総内部空間の容積が局所的に減じられ、第2伸縮部が縮んで第2伸縮部が占有する体積が減ることで総内部空間の容積が局所的に増える。従って、総内部空間の容積変動に対する働きかけを、第2伸縮部全体で総内部空間に対して直接行うことができる。このように本発明では、第2伸縮部内に空気を出し入れすることで発生していた空気の流れの阻害要因を、第2伸縮部の突出方向を工夫することで根本的に解決し、作動軸の更なる高速化及び円滑化を可能なものとしている。
【0013】
また本発明に係るクリーンロボットでは、第2伸縮部の一端側が作動軸の他端側に繋がれ、第2伸縮部の他端側がカバー部に設けられ外部に繋がる開口部に繋がれていると共に、第2伸縮部の一端側が端面となり、その端面の外周から延びる側面が伸縮可能なように構成されていることも好ましい。
【0014】
この好ましい態様では、有底筒状に形成された第2伸縮部の一端側である端面を作動軸の他端側に繋ぎ、第2伸縮部の他端側である側面の端部を開口部に繋いでいるので、作動軸の軸心方向に沿った移動に伴って作用する力を側面に沿わせて伝えることができる。従って、例えば互いに重なり合った筒が相対的に移動することで伸縮するテレスコピック形態を採用した場合でも、山折と谷折とが交互に繰り返されることで伸縮するジャバラ形態を採用した場合であっても、第2伸縮部の側面を作動軸の移動に連動させて確実に伸縮させることができる。
【0015】
また本発明に係るクリーンロボットでは、第2伸縮部の側面は、弾性材料によって形成され、山折と谷折とが交互に繰り返されたジャバラ形状を成していることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、第2伸縮部の側面を弾性材料によって形成されたジャバラ形状としているので、作動軸の移動に伴ってより円滑に伸縮することができる。更に、ジャバラ形状によって画定される空間全体を使って、総内部空間の容積を一定に保つことができる。
【0017】
また本発明に係るクリーンロボットでは、カバー部の内側に、第2伸縮部の側面が伸縮する際のガイド面を設けることも好ましい。
【0018】
この好ましい態様では、第2伸縮部の側面が伸縮する際にガイド面に沿わせて伸縮させることができるので、作動軸の移動に伴う側面の伸縮をより円滑なものとすることができる。特に側面が弾性材料によって形成されたジャバラ形状とした場合に、作動軸の軸心と交わる方向に作動軸及び容積維持機構を含む部分を高速で移動させると第2伸縮部の側面が遠心力で外側に振られるところ、ガイド面によって第2伸縮部の過度な変形を抑制することができる。
【0019】
また本発明に係るクリーンロボットでは、ガイド面はカバー部の内面によって構成されることも好ましい。
【0020】
この好ましい態様では、ガイド面をカバー部の内面によって構成しているので、別途ガイド面を構成する部材を追加することなくガイド面を設けることができ、コンパクトな構成とすることができる。
【0021】
また本発明に係るクリーンロボットでは、駆動機構は、ボールねじ軸と、ボールねじナットと、ボールねじナットと作動軸の他端側とを連結固定する連結部材とを有し、ボールねじ軸が回転することでボールねじナットがボールねじ軸に沿って移動し、作動軸がその軸心方向に沿って移動することも好ましい。
【0022】
このように、スプラインシャフトとしての作動軸とは独立させてボールねじ軸を設けると、連結部材が作動軸の他端側とボールねじナットとを連結固定するので、作動軸が最もカバー部内に収容された状態では作動軸の他端側とボールねじ軸の他端側とがほぼ同じ位置となるように配置される。従来のように、第2伸縮部に相当する部分をカバー部の外側に向けて伸縮させる方式では、ボールねじ軸及び連結部材をカバー部内に配置する必要があることから、通常の作動軸の長さでは第2伸縮部に相当する部分をカバー部の外側に向けて伸縮させることができないため、作動軸に延長軸を取り付ける必要があった。一方、本発明のように第2伸縮部がカバー部内に向けて伸縮する方式を採用すると、作動軸を延長する必要がなくなり、クリーンロボットの全高も抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、少なくとも装置内部で発生する粉塵を外部に放出しないように構成されたクリーンロボットであって、より高速且つ円滑な作動軸の動きを実現可能なクリーンロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態であるクリーンロボットの昇降回転駆動ユニットの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す上側ジャバラ状部材の近傍を拡大した図である。
【図3】図1に示す下側ジャバラ状部材近傍の変形例を示す図である。
【図4】図3に対応する上側ジャバラ状部材近傍の変形例を示す図である。
【図5】本実施形態のクリーンロボットに変形例としての抑制手段を設けた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0026】
本実施形態では、本発明に係るクリーンロボットを、スカラ型ロボットを例にとって説明するけれども、本発明に係るクリーンロボットの適用範囲はこれに限られるものではない。後述する作動軸周りの技術的思想を適用できる範囲において、直交タイプロボットといった他のタイプのロボットにも適用可能なものである。
【0027】
本実施形態に係るスカラ型ロボットについて図1を参照しながら説明する。図1は、スカラ型ロボットAの昇降回転駆動ユニット30と第2アーム20とを示す概略断面図である。スカラ型ロボットAは、ベース部(不図示)と、第1アーム(不図示)と、第2アーム20と、昇降回転駆動ユニット30とを備えている。
【0028】
ベース部は、床や台に設置固定される部分である。ベース部の上部には、回動可能に第1アームが設けられている。第1アームは、一端側がベース部の上部に回動可能に取り付けられている。第1アームの他端側には、第2アーム20が回動可能に取り付けられている。ベース部から第1アームに至る構成は周知の構成であるので、図に明示しないと共に、更なる詳細な説明を省略する。
【0029】
第2アーム20は、一端20a側にモータ22が、他端20b側に昇降回転駆動ユニット30が取り付けられている。一端20a側は、第1アームに取り付けられる部分である。モータ22は、回転軸22aを下方に向けて突出させて、第2アーム20に取り付けられている。
【0030】
モータ22の下方には減速機23が取り付けられている。減速機23は、入力部23aと出力部23bとを有している。入力部23aは、モータ22の回転軸22aが連結される部分である。出力部23bは、第1アームに連結されている。モータ22の回転軸22aが回転すると、減速機23によってその回転が減速され第1アームに伝達される。第2アーム20は第1アームに対して回動自在に取り付けられており、減速機23を介した回転力の伝達によって所定の回転がなされるように構成されている。
【0031】
昇降回転駆動ユニット30は、第2アーム20の他端20b側に取り付けられている。昇降回転駆動ユニット30は、カバー部31と、作動軸32と、回転装置33(駆動機構)と、昇降装置40(駆動機構)とを備えている。
【0032】
作動軸32は、スプラインシャフトとして構成され、第2アーム20を上下に貫通するように略垂直に配置されている。回転装置33は、作動軸32をその軸心周りに回動させるための装置である。昇降装置40は、作動軸32をその軸心方向に沿って上下に移動させるための装置である。カバー部31は、作動軸32と、回転装置33と、昇降装置40とをその内部に収容するように設けられている。
【0033】
回転装置33は、モータ34と、減速機35とを備えている。モータ34及び減速機35は、作動軸32が貫通するように設けられている。モータ34は、回転自在に支持された円筒状の回転軸34bを備えている。減速機35は、入力部35a及び出力部35bを備えている。
【0034】
出力部35bには、ボールスプラインナット37が連結されている。ボールスプラインナット37の内周面には、複数の縦溝が周方向に一定間隔で形成されている。作動軸32は、スプラインシャフトとして構成されているので、外周面に複数の縦溝が形成された中空の円筒軸として構成されている。作動軸32の縦溝をボールスプラインナット37の縦溝と鋼球を介して噛み合わせ、作動軸32がモータ34や減速機35やボールスプラインナット37に対して上下移動可能な状態で配置されている。モータ34の円筒状の回転軸34bが回転すると、回転軸34bに繋がれた減速機35の入力部35aが回転する。減速機35において、入力部35aに入力された回転は、その回転数が減じられて出力部35bに伝達される。従って、モータ34が回転すると、減速機35によってその回転が減速されボールスプラインナット37に伝達される。ボールスプラインナット37と作動軸32とは、互いの縦溝が噛み合っているので、ボールスプラインナット37と同期して作動軸32が回転する。
【0035】
作動軸32の上端部は、上下に配置されたベアリング38a,38bによって軸心周りに回動可能であって、軸心方向には固定された状態で保持されている。作動軸32は、ベアリング38a,38bを介して、昇降装置40の連結部材41に保持されている。
【0036】
昇降装置40は、連結部材41と、ボールねじナット42と、ボールねじ軸43と、モータ44とを備えている。モータ44は、第2アーム20のモータ34が取り付けられている位置に隣接した位置に取り付けられている。ボールねじ軸43は、モータ44の回転軸に連結され、モータ44の作動により軸心周りに回転する。
【0037】
ボールねじナット42は、ボールねじ軸43に螺合している。連結部材41は、ボールねじナット42と作動軸32の上端部とを連結している。モータ44が回転するとボールねじ軸43が回転し、ボールねじナット42はボールねじ軸43に沿って上下移動する。これによって、連結部材41も上下移動するので、作動軸32も上下移動する。
【0038】
作動軸32の下端部側(一端側)には、第1伸縮部として機能する下側ジャバラ状部材50が設けられ、作動軸32の上端部側(他端側)には、第2伸縮部として機能する上側ジャバラ状部材60が設けられている。上側ジャバラ状部材60の上方には、ラビリンス部材52が配置されている。
【0039】
下側ジャバラ状部材50及び上側ジャバラ状部材60は、弾性材料によって構成され、その側面は谷折と山折とが交互に連続したジャバラ形状をなしている。本実施形態の場合、下側ジャバラ状部材50及び上側ジャバラ状部材60は、ウレタン樹脂によって構成されている。
【0040】
上側ジャバラ状部材60について、図2を参照しながら説明を加える。図2は、上側ジャバラ状部材60の近傍を拡大した図である。上側ジャバラ状部材60は、一端側に端面60aが設けられている。端面60aは金属板を円形に加工して形成されている。端面60aからは、ジャバラ状の側面60bが円筒状に立ち上がっている。従って、端面60aと側面60bとによって、有底円筒状の部材が構成されている。側面60bは、一端側が端面60aに繋がれ、他端側がカバー部31に形成された開口部31aに繋がれている。端面60aは、連結部材60cによって連結部材41に繋がれている。連結部材41は、上述したように作動軸32の上端部と繋がれている。従って、端面60aは、連結部材60c及び連結部材41によって、作動軸32の上端部と繋がれている。このような構成により、作動軸32が下降するとジャバラ状の側面60bが伸び、作動軸32が上昇するとジャバラ状の側面60bが縮む。
【0041】
ラビリンス部材52は、略円板状の外形をなし、その円板状の外形の周囲からカバー部31側に向かって外壁部が形成されている。ラビリンス部材52は、固定板54に対して固定ねじ55によって固定されている。固定板54は、2本の固定ねじ53によって、上側ジャバラ状部材60と共にカバー部31に固定されている。固定板54は、ラビリンス部材52の全外周に対して断続的に複数配置され、隣接する固定板54間には隙間が設けられている。従って、上側ジャバラ状部材60内の空気は、隣接する固定板54の間を通ってラビリンス部材52の外周側に向かい、外周に設けられた外壁によってカバー部31側に方向が変えられる。カバー部31側に向かった空気は、カバー部31にそって流れる。このように、ラビリンス部材52によって、上側ジャバラ状部材60の内側に粉塵等が出入りし難いように、ラビリンス構造が構成されている。尚、ラビリンス部材52を設けずに、上側ジャバラ状部材60の内部を開放した形態を採用することも可能である。
【0042】
作動軸32の上端部と、上側ジャバラ状部材60との間には隙間が形成されている。作動軸32は中空軸であるので、カバー部31内の空気は作動軸32の内側を通ることができるように構成されている。
【0043】
作動軸32の下端部側には、下側ジャバラ状部材50が設けられている。下側ジャバラ状部材50は、一端側に端面50aが設けられている。端面50aは金属板を円形に加工して形成されている。端面50aからは、ジャバラ状の側面50bが円筒状に立ち上がっている。従って、端面50aと側面50bとによって、有底円筒状の部材が構成されている。側面50bは、一端側が端面50aに繋がれ、他端側がカバー部31の下端側に突出した減速機35に繋がれている。端面50aは、作動軸32の下端部と繋がれている。従って、作動軸32が下降するとジャバラ状の側面50bが伸び、作動軸32が上昇するとジャバラ状の側面50bが縮む。
【0044】
作動軸32の内部空間と下側ジャバラ状部材50の内部空間とは連通するように構成されている。従って、作動軸32の内部空間を介して、下側ジャバラ状部材50の内部空間と、カバー部31の内部空間とが連通して、総内部空間を形成している。カバー部31の内部空間と第2アーム20の内部空間とも連通しており、第2アーム20の内部空間にはフレキシブルチューブ15が繋がれている。フレキシブルチューブ15を通して空気の出し入れが可能なように構成されているので、カバー部31の内部空間を含む総内部空間を負圧にしたり正圧にしたりといったように、総内部空間の内圧を適宜調整することが可能である。
【0045】
上述した本実施形態では、下側ジャバラ状部材50の内部空間と作動軸32の内部空間とを連通させることで、下側ジャバラ状部材50の内部空間とカバー部31の内部空間とを連通させたけれども、下側ジャバラ状部材50の内部空間とカバー部31の内部空間とを直接連通させることも好ましい。この好ましい態様について図3及び図4を参照しながら説明する。
【0046】
図3は、下側ジャバラ状部材近傍の変形例を示す図である。図4は、図3に対応する上側ジャバラ状部材近傍の変形例を示す図である。
【0047】
図3に示すように、下側ジャバラ状部材51は、一端側に端面51aが設けられている。端面51aは金属板を円形に加工して形成されており、中央に作動軸32が貫通する穴が形成されている。端面51aからは、ジャバラ状の側面51bが円筒状に立ち上がっている。従って、端面51aと側面51bとによって、穴あり有底円筒状の部材が構成されている。側面51bは、一端側が端面51aに繋がれ、他端側がカバー部31の下端側に突出した減速機35を覆うカバー39に繋がれている。カバー部31及び第2アーム20の内部空間と、カバー39が画定する内部空間とを繋ぐように、第2アーム20には連通穴39aが形成されている。カバー39の内部空間と下側ジャバラ状部材51の内部空間とは連通するように構成されている。下側ジャバラ状部材51の端面51aにはベアリング51cが取り付けられおり、このベアリング51cによって下側ジャバラ状部材51は作動軸32の回転には同期せずその上下昇降のみに同期するように構成されている。従って、作動軸32が下降するとジャバラ状の側面51bが伸び、作動軸32が上昇するとジャバラ状の側面51bが縮む。
【0048】
図4に示すように、上側ジャバラ状部材61は、一端側に端面61aが設けられている。端面61aは金属板を円形に加工して形成されており、中央に作動軸32が貫通する穴が形成されている。端面61aからは、ジャバラ状の側面61bが円筒状に立ち上がっている。従って、端面61aと側面61bとによって、穴あり有底円筒状の部材が構成されている。側面61bは、一端側が端面61aに繋がれ、他端側がカバー部31に形成された開口部31aに繋がれている。端面61aは、連結部材41に固定されている。連結部材41は、上述したように作動軸32の上端部と繋がれている。従って、端面61aは、連結部材41に直接固定されることで作動軸32の上端部と繋がれている。このような構成により、作動軸32が下降するとジャバラ状の側面61bが伸び、作動軸32が上昇するとジャバラ状の側面61bが縮む。
【0049】
このように、作動軸32の内部空間をカバー部31の内部空間とは連通させず、絶縁することで、作動軸32の内部空間に外部からエア配管や電気配線を通すことができる。
【0050】
上述したように本実施形態に係るクリーンロボットとしてのスカラ型ロボットAは、少なくとも装置内部で発生する粉塵を外部に放出しないように構成されたクリーンロボットである。スカラ型ロボットAは、軸心方向に沿って移動すると共に軸心周りに回動する作動軸32と、作動軸32をその軸心方向に沿って移動させると共に軸心周りに回動させる駆動機構(回転装置33、昇降装置40)と、作動軸32及び駆動機構を覆うカバー部31と、作動軸32とカバー部31との間に介在し、駆動機構が収容される総内部空間の容積を略一定に保つ容積維持機構と、を備える。
【0051】
駆動機構は、作動軸32をその一端側がカバー部31から延出するように進退自在に保持する。容積維持機構は、作動軸32の一端側とカバー部31とを繋ぐ第1伸縮部である下側ジャバラ状部材50,51と、作動軸32の他端側とカバー部31とを繋ぐ第2伸縮部である上側ジャバラ状部材60,61とを有する。第1伸縮部である下側ジャバラ状部材50,51は、作動軸32の一端側がカバー部31から延出するのに従ってカバー部31から外側に向かって伸びるように構成される一方で、第2伸縮部である上側ジャバラ状部材60,61は、作動軸32の一端側がカバー部31から延出するのに従ってカバー部31から内側に向かって伸びるように構成されている。
【0052】
本実施形態では、容積維持機構を構成する上側ジャバラ状部材60,61を作動軸32の他端側とカバー部31とを繋ぐものとして構成すると共に、作動軸32の一端側がカバー部31から延出するのに従って上側ジャバラ状部材60,61がカバー部31から内側に向かって伸びるように構成している。従って、作動軸32の他端側に繋がれた上側ジャバラ状部材60,61がカバー部31内に突出し、その突出度合いに応じてカバー部31の内部空間の容積が必要なだけ減じられ、容積維持機構の機能を果たしている。
【0053】
本実施形態は、従来のように上側ジャバラ状部材内に作動軸が突出し、作動軸の周囲を通って上側ジャバラ状部材内に空気が出入りするものではなく、カバー部31内に突出した上側ジャバラ状部材60,61の突出度合いによって総内部空間の容積を略一定に保っている。具体的には、少なくとも上側ジャバラ状部材60,61周辺においては、上側ジャバラ状部材60,61が伸びて上側ジャバラ状部材60,61が占有する体積が増えることで総内部空間の容積が局所的に減じられ、第2伸縮部が縮んで第2伸縮部が占有する体積が減ることで総内部空間の容積が局所的に増える。この局所的な総内部空間の容積増減と、下側ジャバラ状部材50,51の伸縮に伴う下側ジャバラ状部材50,51内の容積増減とを均衡させることで、総内部空間の容積を略一定に保つものとしている。従って、総内部空間の容積変動に対する働きかけを、上側ジャバラ状部材60,61全体で総内部空間に対して直接行うことができる。このように本実施形態では、上側ジャバラ状部材内に空気を出し入れすることで発生していた空気の流れの阻害要因を、上側ジャバラ状部材60,61の突出方向を工夫することで根本的に解決し、作動軸32の更なる高速化及び円滑化を可能なものとしている。
【0054】
また、上側ジャバラ状部材60,61の一端側が作動軸32の他端側に繋がれ、上側ジャバラ状部材60,61の他端側がカバー部31に設けられ外部に繋がる開口部31aに繋がれていると共に、上側ジャバラ状部材60,61の一端側が端面60a,61aとなり、その端面60a,61aの外周から延びる側面60b,61bが伸縮可能なように構成されている。
【0055】
このように、有底筒状に形成された上側ジャバラ状部材60,61の一端側である端面60a,61aを作動軸32の他端側に繋ぎ、上側ジャバラ状部材60,61の他端側である側面60b,61bの端部を開口部31aに繋いでいるので、作動軸32の軸心方向に沿った移動に伴って作用する力を側面60b,61bに沿わせて伝えることができる。従って、本実施形態とは異なり例えば互いに重なり合った筒が相対的に移動することで伸縮するテレスコピック形態を採用した場合でも、本実施形態のように山折と谷折とが交互に繰り返されることで伸縮するジャバラ形態を採用した場合であっても、上側ジャバラ状部材60,61の側面を作動軸32の移動に連動させて確実に伸縮させることができる。
【0056】
また、開口部31aを通って上側ジャバラ状部材60,61の内側へ粉塵等が流入するのを抑制する抑制手段を備えることも好ましい。
【0057】
上述したような有底筒状の上側ジャバラ状部材60,61を設けた場合、その凹んだ内側はカバー部31の開口部31aに臨んで外側を向くことになる。上側ジャバラ状部材60,61の凹んだ内側には、粉塵等が溜まる場合も想定され、上側ジャバラ状部材60,61の側面60b,61bの伸縮に伴って粉塵等が飛散することも考えられる。そこで、ラビリンス部材52のように、開口部31aを通って上側ジャバラ状部材60,61の内側へ粉塵等が流入するのを抑制する抑制手段を設けることで、上側ジャバラ状部材60,61の側面60b,61bの伸縮に伴う粉塵等の飛散を抑制することができる。
【0058】
また、抑制手段としては、ラビリンス部材52に変えてフィルターのような部材を用いることも好ましいものである。更に、抑制手段としては、図5に示すように、開口部31aから上側ジャバラ状部材60,61が伸びる方向とは逆であるカバー部31の外側に向けて延びる第1管部70aと、第1管部70aに繋がり側方に延びる第2管部70bとからなる抑制管70を有するように構成することも好ましい。
【0059】
このように、カバー部31の外側に向けて延びる第1管部70aと第1管部70aに繋がり側方に延びる第2管部70bとに抑制手段である抑制管70を構成しているので、第1管部70aと第2管部70bとによって構成される屈曲部によって上側ジャバラ状部材60,61の内側へ粉塵等が入り込むことを抑制できる。また、僅かに入り込んだ粉塵等が、上側ジャバラ状部材60,61の伸縮に伴って開口部31aから放出された場合も、屈曲部がその放出された粉塵等のそれ以上の飛散を防止し、粉塵等の飛散を抑制することができる。更に、第2管部70bの第1管部70aと繋がっているのとは反対側の端部は開放端とすることができるので、空気の出入りを阻害しないように構成することができ、上側ジャバラ状部材60,61の動きを阻害することがない。
【0060】
また、上側ジャバラ状部材60,61の側面は、弾性材料によって形成され、山折と谷折とが交互に繰り返されたジャバラ形状を成している。
【0061】
このように、上側ジャバラ状部材60,61の側面60b,61bを弾性材料によって形成されたジャバラ形状としているので、作動軸32の移動に伴ってより円滑に伸縮することができる。更に、ジャバラ形状によって画定される空間全体を使って、総内部空間の容積を一定に保つことができる。
【0062】
また、カバー部31の内側に、上側ジャバラ状部材60,61の側面60b,61bが伸縮する際のガイド面を設けることも好ましい。
【0063】
この好ましい態様では、上側ジャバラ状部材60,61の側面が伸縮する際にガイド面に沿わせて伸縮させることができるので、作動軸32の移動に伴う側面60b,61bの伸縮をより円滑なものとすることができる。特に側面60b,61bが弾性材料によって形成されたジャバラ形状としている本実施形態では、作動軸32の軸心と交わる方向に作動軸32及び容積維持機構として機能する上側ジャバラ状部材60,61を含む昇降回転駆動ユニット30を高速で移動させると側面60b,61bが遠心力で外側に振られるところ、ガイド面によって側面60b,61bの過度な変形を抑制することができる。
【0064】
また、ガイド面はカバー部31の内面によって構成されることも好ましい。このように、ガイド面をカバー部31の内面によって構成すると、別途ガイド面を構成する部材を追加することなくガイド面を設けることができ、コンパクトな構成とすることができる。
【0065】
また本実施形態では、ボールねじ・ボールスプライン分離構造を採用している。具体的には、駆動機構は、ボールねじ軸43と、ボールねじナット42と、ボールねじナット42と作動軸32の他端側とを連結固定する連結部材41とを有し、ボールねじ軸43が回転することでボールねじナット42がボールねじ軸43に沿って移動し、作動軸32がその軸心方向に沿って移動する。
【0066】
このように、スプラインシャフトとしての作動軸32とは独立させてボールねじ軸43を設けると、連結部材41が作動軸32の他端側とボールねじナット42とを連結固定するので、作動軸32が最もカバー部31内に収容された状態では作動軸32の他端側とボールねじ軸43の他端側とがほぼ同じ位置となるように配置される。従来のように、第2伸縮部に相当する部分をカバー部の外側に向けて伸縮させる方式では、ボールねじ軸及び連結部材をカバー部内に配置する必要があることから、通常の作動軸の長さでは第2伸縮部に相当する部分をカバー部の外側に向けて伸縮させることができないため、作動軸に延長軸を取り付ける必要があった。一方、本実施形態のように第2伸縮部である上側ジャバラ状部材60,61がカバー部31内に向けて伸縮する方式を採用すると、作動軸32を延長する必要がなくなり、クリーンロボットAの全高も抑制することができる。
【符号の説明】
【0067】
15:フレキシブルチューブ
20:第2アーム
20a:一端
20b:他端
22:モータ
22a:回転軸
23:減速機
23a:入力部
23b:出力部
30:昇降回転駆動ユニット
31:カバー部
31a:開口部
32:作動軸
33:回転装置
34:モータ
34b:回転軸
35:減速機
35a:入力部
35b:出力部
36:ベアリング
37:ボールスプラインナット
38a,38b:ベアリング
39:カバー
39a:連通穴
40:昇降装置
41:連結部材
42:ボールねじナット
43:ボールねじ軸
44:モータ
50:下側ジャバラ状部材
50a:端面
50b:側面
51:下側ジャバラ状部材
51a:端面
51b:側面
51c:ベアリング
52:ラビリンス部材
53:固定ねじ
54:固定板
55:固定ねじ
60:上側ジャバラ状部材
60a:端面
60b:側面
60c:連結部材
61:上側ジャバラ状部材
61a:端面
61b:側面
70:抑制管
70a:第1管部
70b:第2管部
A:スカラ型ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンロボットであって、
軸心方向に沿って移動すると共に軸心周りに回動する作動軸と、
前記作動軸をその軸心方向に沿って移動させると共に軸心周りに回動させる駆動機構と、
前記作動軸及び前記駆動機構を覆うカバー部と、
前記作動軸の一端側と前記カバー部とを繋ぐ第1伸縮部と、前記作動軸の他端側と前記カバー部とを繋ぐ第2伸縮部と、を有し、前記カバー部と前記第1伸縮部と前記第2伸縮部とで画定される空間であって前記駆動機構が収容される総内部空間の容積を略一定に保つ容積維持機構と、を備え、
前記駆動機構は、前記作動軸をその一端側が前記カバー部から延出するように進退自在に保持し、
前記第1伸縮部は、前記作動軸の一端側が前記カバー部から延出するのに従って前記カバー部から外側に向かって伸びるように構成される一方で、
前記第2伸縮部は、前記作動軸の一端側が前記カバー部から延出するのに従って前記カバー部から内側に向かって伸びるように構成されることを特徴とするクリーンロボット。
【請求項2】
前記第2伸縮部の一端側が前記作動軸の他端側に繋がれ、前記第2伸縮部の他端側が前記カバー部に設けられ外部に繋がる開口部に繋がれていると共に、前記第2伸縮部の一端側が端面となり、その端面の外周から延びる側面が伸縮可能なように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクリーンロボット。
【請求項3】
前記第2伸縮部の前記側面は、弾性材料によって形成され、山折と谷折とが交互に繰り返されたジャバラ形状を成していることを特徴とする請求項2に記載のクリーンロボット。
【請求項4】
前記カバー部の内側に、前記側面が伸縮する際のガイド面を設けたことを特徴とする請求項3に記載のクリーンロボット。
【請求項5】
前記ガイド面は前記カバー部の内面によって構成されることを特徴とする請求項4に記載のクリーンロボット。
【請求項6】
前記駆動機構は、ボールねじ軸と、ボールねじナットと、前記ボールねじナットと前記作動軸の他端側とを連結固定する連結部材とを有し、
前記ボールねじ軸が回転することで前記ボールねじナットが前記ボールねじ軸に沿って移動し、前記作動軸がその軸心方向に沿って移動することを特徴とする請求項1に記載のクリーンロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−94953(P2013−94953A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243330(P2011−243330)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】