説明

クレードル

【課題】表示端末がクレードルに載置されたことを表示端末に検知させ表示端末側で自動的にバックライトを消灯出来るように、構成が簡単な被検知部を備えたクレードルを提供する。
【解決手段】クレードル1は表示端末2がクレードル1の載置部4に載置されたとき表示端末2の磁気センサ18が磁気を感応可能な位置に永久磁石16を備えている。表示端末2は磁気センサ18による磁気の検知又は非検知に応じて液晶表示面3のバックライトを消灯又は点灯する。クレードル1の載置部4の後部壁面5には複数の突出部31が形成されている。表示端末2が外された後のクレードル1の空に載置部4に顧客が磁気ストライプ23の有る面を載置部4の後部壁面5に向けて通帳22を置いたとしても傾斜の有る突出部31の上部31−1に沿って滑り落ち載置部4の最下部に保持されるので、通帳22は磁気ストライプ23が永久磁石16の磁気から悪影響を受けない距離gの位置に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示端末を載置するクレードルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示装置付き電子機器を載置するクレードルが提案されている。例えば、表示装置付き電子機器とこの電子機器を保持するクレードルとが別体になっていて、クレードルは載置部を開閉する回動自在な背もたれを備え、電子機器を載置部に保持するときは背もたれを回動させて載置部を開くようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、保持される装置と保持する装置の2つの装置が別体でなく、表示装置を構成する筐体とこの筐体を保持する他の筐体が回転可能に一体化され、一方の筐体の磁気を他方の筐体で検知して相互の回転位置関係を知るようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、文献例は示さないが、表示装置付き電子機器を載置するクレードルに、被検知部として磁石を装着した例も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−126966号公報
【特許文献2】特開2006−211238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、例えば、銀行の窓口で顧客がインターネット・バンキングなどの開設申込を行う場合、窓口担当者は、傍に置いてあるクレードル上の表示端末をクレードルごと顧客の方に差出して、顧客にクレードルから表示端末を取り外してもらい、顧客に表示端末を操作してもらって、顧客の住所、名前、生年月日、電話番号、既設の通常取引用の口座番号等を入力してもらう場合が多くなっている。
【0007】
表示端末は液晶表示装置で構成される場合が多く、液晶表示装置はバックライトを備えている。バックライトが点灯されている液晶表示は表示が明るいから、そのままであると顧客が必要データの入力を終わって表示端末をクレードルに置き戻して窓口担当者に差し戻したとき、表示されている入力データを第三者に見られる恐れがある。
【0008】
したがって、クレードルに表示端末が載置されたとき、表示端末側で自装置がクレードルに載置されたことを検知して自装置のバックライトを自動的に消灯する必要がある。この場合、クレードル側に被検知部を設け、表示端末側に検知部を設けるのが好ましい。
【0009】
この逆にクレードル側に検知部を設け、表示端末側に被検知部を設けるようにすると、検知側のクレードルに、表示端末のバックライトの消灯を制御するための通信装置を設けなければならないので構成が複雑になり全体的にコストアップになるので好ましくない。
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1には、表示端末がクレードルに載置されたとき表示端末のバックライトを自動的に消灯する思想は如何なる態様においても何ら開示がなく、バックライトを消灯すべき課題は考慮されていない。
【0011】
また、特許文献2は、磁気を利用して磁気を検知し、2つの筐体間の回転等の位置関係を知ることは開示されているが、もともと2つの筐体が一体に構成されているため、一方が他方から取り外されるという環境設定はなく、したがって、バックライトを自動的に消灯する思想はない。
【0012】
また、顧客に表示端末を操作してもらって、顧客の住所、名前、生年月日、電話番号、既設の通常取引用の口座番号等を入力してもらう場合、顧客は取り出した通帳を一時的に置く場所として、表示端末を取り外したクレードルを、紛れることのない格好の置場として、通帳をクレードルに置くことがしばしばある。
【0013】
この場合、クレードルに被検知部として磁石を装着した例では、磁石によって通帳の磁気ストライプの磁気データが破壊される不具合が生じる可能性があるが、そのような不具合について考慮されているものは見当たらない。
【0014】
本発明は、上記従来の実情に鑑み、表示端末がクレードルに載置されたことを表示端末に検知させ表示端末側で自動的にバックライトを消灯出来るように、構成が簡単な被検知部を備え、且つ顧客が無意識に通帳をクレードルに置いた場合でも通帳の磁気ストライプの磁気データを破壊することのないクレードルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明のクレードルは、液晶表示面と該液晶表示面のバックライトの点灯・消灯を制御する制御部とクレードルに載置されたことを検知する磁気センサとを備えた表示端末を載置部に載置される永久磁石内蔵のクレードルであって、上記永久磁石が上記クレードルの内部に配設される位置は、上記表示端末が上記載置部に位置決め部材により位置決めされて載置されたとき上記磁気センサとの間の距離が上記磁気センサの磁気検知可能な限度となる磁気検知可能限界距離以内の位置であるとともに、上記表示端末に代わって磁気ストライプ付きの通帳が上記載置部に載置されたとき上記磁気ストライプとの間の距離が上記磁気ストライプの磁気記録が上記永久磁石の磁気によって破壊されない限度となる非破壊限界距離以上の位置である、ように構成される。
【0016】
このクレードルにおいて、上記磁気検知可能限界距離以内の位置で且つ上記非破壊限界距離以上の位置は、例えば、上記載置部の壁面の厚さによって設定される、ように構成され、また、例えば、上記載置部の後部壁面に複数設けられ、水平方向に対し斜め下方に突き出る上面と該上面の外端部から下方の載置部外壁面に至る傾斜面と、上記上面から上記傾斜面に回り込む角部に形成されたR部と、からなる突出部によって設定される、ように構成される。
【0017】
上記突出部は、例えば、複数設けられ、上記表示端末が上記載置部に載置される際の上記表示端末と上記載置部との位置関係を決める位置決め部を兼ねる、ように構成するのがこのましく、また、例えば、上記磁気検知可能限界距離は11mmであり、上記非破壊限界距離は5mmである、ように構成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、表示端末がクレードルの載置部に載置されたことを表示端末が検知できる被検知部として、簡単な構成の永久磁石を用いるので、コストが安価であるという効果を奏する。
【0019】
また、顧客が表示端末を載置部から取り出して、空いた載置部に磁気ストライプ付きの通帳を置いたとしても、永久磁石が磁気ストライプ内のデータが破損されることがないので、顧客としてはクレードルの使い勝手が良く且つ窓口担当者としては顧客によるクレードルの取扱いに気を配る必要がなく他に専念できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1〜6に係るクレードルを表示端末と共に示す斜視図である。
【図2】(a)は実施例1に係る図1の、クレードルは全体を、表示端末は下方の要部のみを示す側断面図、(b)は表示端末の光検知部を(a)の矢印a方向に見た図である。
【図3】実施例2に係る図1の、クレードルは全体を、表示端末は下方の要部のみを示す側断面図である。
【図4】実施例3に係る図1の、クレードルは全体を、表示端末は下方の要部のみを示す側断面図である。
【図5】(a)は実施例4に係る図1の、クレードルは全体を、表示端末は下方の要部のみを示す側断面図、(b)はクレードルから表示端末が外された後の空となった載置部に顧客が通帳を差し込んで置いた状態を示す図である。
【図6】(a),(b)は実験の結果安全であると確認された実施例5に係るクレードルにおける永久磁石の取付位置とクレードルに載置された表示端末の磁気センサ又は通帳の磁気ストライプとの距離関係を示す図である。
【図7】図6(a)に示す永久磁石取付内部壁面の盛り上げの厚みを種々変更して得た実験結果とその結果から得られた評価を示す図表である。
【図8】(a)は実施例6に係るクレードルの正面図、(b) はそのA−A´矢視断面図、(c)はクレードルの突出部と表示端末の背面の窪みとの関係を示す図である。
【図9】(a)は実施例6に係る図1の、クレードルは全体を、表示端末は下方の要部のみを示す側断面図、(b)はクレードルから表示端末が外された後の空となった載置部に顧客が通帳を差し込んで置いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施例1〜6に係るクレードルを表示端末と共に示す斜視図である。図1に示すクレードル1は、硬質樹脂製の成形品からなり、クレードル1に載置された表示端末2にクレードル1に載置されたことを検知させる詳しくは後述する被検知部を備えている。
【0022】
一方の表示端末2は、図では陰になって見えない背面に、クレードル1の被検知部を検知する検知部を備えている。また、表示端末2は、図1に示すように、前面に液晶表示部3を備え、内部には、特には図示しないが、液晶表示部3のバックライトの点灯と消灯を制御する制御部を備えている。
【0023】
この表示端末2の上記の制御部は、検知部がクレードルの被検知部を検知しなくなったとき、表示端末2がクレードル1の載置部から取り出されたと認識して液晶表示部3のバックライトを点灯し、検知部がクレードルの被検知部を検知したとき、表示端末2がクレードル1の載置部に載置されたと認識して液晶表示部3のバックライトを消灯する。
【実施例1】
【0024】
図2(a)は、実施例1に係る図1の、クレードル1は全体を、表示端末2は下方の要部のみを示す側断面図であり、図2(b)は、表示端末2の光検知部を図2(a)の矢印a方向に見た図を示している。
【0025】
図2(a)に示すように、クレードル1の載置部4の後部壁面5には、被検知部としての突起6が形成されている。一方の表示端末2には、突起6に対応する位置に検知部を備えている。検知部は、可動ノブ7、回動部材8、仕切り板9及び光センサ10から成る。光センサ10は、図2(b)に示すように発光部10aと受光部10bが対向配置されて成る。
【0026】
表示端末2がクレードル1の載置部4に載置されると、クレードル1の突起6が、表示端末2の検知部の可動ノブ7を押し込む。可動ノブ7が押されると、可動ノブ7の延長部に連結されている回動部材8の一方の端部が矢印bで示すように外側方向に移動する。
【0027】
回動部材8は中央部を支持軸11に支持されている。これにより、回動部材8は支持軸11を支点にしてシーソー状に回動する。すなわち、可動ノブ7の延長部との連結部が矢印bで示す外側方向に移動すると、回動部材8の他方の端部に連結する仕切り板9が矢印cで示すように内側方向に移動する。
【0028】
仕切り板9が移動する内側方向には、光センサ10が配置されている。仕切り板9の内側方向への移動によって、仕切り板9の先端が光センサ10の発光部10aと受光部10bとの対向部に進入し、光センサ10の光路を遮断する。光センサ10は光路が遮断されたことを示す信号を制御部に出力する。この信号により制御部は、表示端末2がクレードル1の載置部4に載置されたことを認識し、液晶表示部3のバックライトを消灯する。
【0029】
表示端末2がクレードル1の載置部4から取り出されると、表示端末2の検知部の各構成部がそれぞれ上記とは逆方向に移動するので、仕切り板9から光センサ10の光路が開放され、この光路が開放された信号が光センサ10から制御部に送られ、制御部は表示端末2がクレードル1の載置部4から取り出されたことを認識して、液晶表示部3のバックライトを点灯する。
【実施例2】
【0030】
図3は、実施例2に係る図1の、クレードル1は全体を、表示端末2は下方の要部のみを示す側断面図である。図3に示すように、クレードル1の載置部4の後部壁面5には、被検知部としての突起6が形成されている。
【0031】
一方の表示端末2には、突起6に対応する位置に検知部を備えている。検知部は、可動ノブ7と、板バネ状切片12を備えたスイッチ13とから成る。スイッチ13は外部から板バネ状切片12を押されるとスイッチ回路を閉じ、外部圧力が掛からないときは板バネ状切片12の戻り力でスイッチ回路を開くように構成されている。
【0032】
表示端末2がクレードル1の載置部4に載置されると、クレードル1の突起6が、表示端末2の検知部の可動ノブ7を押し込む。可動ノブ7が押されると、可動ノブ7の延長部7aの先端が、スイッチ13の板バネ状切片12を押し込む。
【0033】
板バネ状切片12が押し込まれたことにより、スイッチ13はスイッチ回路を閉じ、これにより、スイッチ回路が閉じたことを示す信号をスイッチ13から制御部に送出される。この信号により制御部は、表示端末2がクレードル1の載置部4に載置されたことを認識し、液晶表示部3のバックライトを消灯する。
【0034】
表示端末2がクレードル1の載置部4から取り出されると、表示端末2の検知部の各構成部がそれぞれ上記とは逆方向に移動する。これにより、スイッチ13のスイッチ回路が開かれ、スイッチ回路が開かれたことを示す信号がスイッチ13から制御部に送られ、制御部は表示端末2がクレードル1の載置部4から取り出されたことを認識して、液晶表示部3のバックライトを点灯する。
【実施例3】
【0035】
図4は、実施例3に係る図1の、クレードル1は全体を、表示端末2は下方の要部のみを示す側断面図である。図4に示すように、クレードル1の載置部4の後部壁面5には、被検知部としての突起6が形成されている。
【0036】
一方の表示端末2には、突起6に対応する位置に検知部としてのスイッチ14を備えている。スイッチ14は、突起6との対向面に押しボタン15を備えている。スイッチ14は外部から押しボタン15を押されるとスイッチ回路を閉じ、外部圧力が掛からないときは押しボタン15の戻り力でスイッチ回路を開くように構成されている。
【0037】
表示端末2がクレードル1の載置部4に載置されると、クレードル1の突起6が、表示端末2のスイッチ14の押しボタン15を押し込む。押しボタン15が押し込まれたことにより、スイッチ14はスイッチ回路を閉じ、これにより、スイッチ回路が閉じたことを示す信号をスイッチ14から制御部に送出される。この信号により制御部は、表示端末2がクレードル1の載置部4に載置されたことを認識し、液晶表示部3のバックライトを消灯する。
【0038】
表示端末2がクレードル1の載置部4から取り出されると、表示端末2のスイッチ14の押しボタン15が押し圧力から開放され、戻り力で元の位置に戻る。これにより、スイッチ回路が開かれ、スイッチ回路が開かれたことを示す信号がスイッチ14ら制御部に送られ、制御部は表示端末2がクレードル1の載置部4から取り出されたことを認識して、液晶表示部3のバックライトを点灯する。
【実施例4】
【0039】
ところで、上述した実施例1〜3のように、検知部を機構で構成すると、検知と検知解除の都度、必然的に機構部分に機械的動作が発生する。機械的動作は位置ずれによって動作が不安定になる性質を有することに加えて、経時的に劣化するので、表示端末2側に検知部の交換または保守処理の作業が発生するという不便を伴う。
【0040】
この不便を解消するために、つまり表示端末2側に機械的動作を伴わない検知部を構築するために、クレードル側の被検知部を永久磁石で構成することにした。永久磁石は字義通り永久に磁気を有する物であり、且つ極めて安価である。
【0041】
図5(a)は、実施例4に係る図1の、クレードル1は全体を、表示端末2は下方の要部のみを示す側断面図であり、図5(b)は、クレードル1から表示端末2が外された後の空となった載置部4を一時の置き台代わりにして、載置部4に顧客が通帳を差し込んで置いた状態を示す図である。
【0042】
図5(a)に示すように、クレードル1の載置部4の後部壁面5の内部壁面には、被検知部としての永久磁石16がビス17によって固設されている。一方の表示端末2には、永久磁石16の磁気検出が可能な位置に磁気センサ18が設けられている。磁気センサ18は、永久磁石16に対応する位置に設けられた表示端末2内部の固定部19にビス21によって固定されている。
【0043】
表示端末2がクレードル1の載置部4に載置されると、表示端末2の磁気センサ18がクレードル1の永久磁石16の磁気を検知して作動する。磁気センサ18の磁気検知作動信号は制御部に送出される。この信号により制御部は、表示端末2がクレードル1の載置部4に載置されたことを認識し、液晶表示部3のバックライトを消灯する。
【0044】
表示端末2がクレードル1の載置部4から取り出されると、磁気センサ18がクレードル1の永久磁石16の磁気を検知することが出来なくなるので磁気センサ18の磁気検知作動信号が消失する。制御部は磁気センサ18の磁気検知作動信号が消失したことで表示端末2がクレードル1の載置部4から取り出されたことを認識して、液晶表示部3のバックライトを点灯する。
【実施例5】
【0045】
ところで、図5(b)に示すように、顧客が載置部4を一時の置き台代わりにして載置部4に通帳22を置いた場合、通帳22の磁気ストライプ23内の保存しているデータが破損される等の、ときとして不具合が起きることが想定される。それは永久磁石16の磁気に限らず一般に磁気は、通帳22の磁気ストライプ23のような磁性体を磁化する性質があるからである。
【0046】
もちろん磁気の影響範囲は距離fの二乗に反比例することと、磁気センサ18の磁気の強さにも拠ることであるから、必ず不具合が起きるとは一概には言えない。そこで、本発明者は、安全性を確保するために、上記のような不具合が起きる場合と起きない場合とを実験により確認してみることにした。
【0047】
図6(a),(b)は上記実験の結果、安全であると確認された実施例5に係るクレードル1における永久磁石16の取付位置と、クレードル1に載置された表示端末2の磁気センサ18、又は通帳22の磁気ストライプ23との距離関係を示す図である。尚、永久磁石は、磁束密度は600〜700ガウスである。また、クレードル1の筐体はABS樹脂などの硬質樹脂のため、磁気に影響は及ぼさないと考えられる。
【0048】
図6(a)に示すように、永久磁石16から載置部4の後部壁面5までの安全な距離gを確保するために、後部壁面5の内側の永久磁石取付内部壁面5aは他の内部壁面5bよりも盛上げて形成されている。この距離gは、図5(b)に示した顧客が載置部4に通帳22を置いた場合の磁気ストライプ23との距離fに対応する。すなわち、g=fである。
【0049】
また、この場合、永久磁石16の表面16aから載置部4に載置された表示端末2の磁石センサ18の磁気検知面18aまでの距離hは、永久磁石取付内部壁面5aの盛り上げがあっても、磁石センサ18が永久磁石16の磁気を検知できる距離である。
【0050】
図7は、図6(a)に示す永久磁石取付内部壁面5aの盛り上げの厚みを種々変更して得た実験結果とその結果から得られた評価を示す図表である。図7に示す図表25は、左から右へ、センサ/永久磁石、又は通帳/永久磁石の間隙を示す欄26、センサが作動する範囲の評価の欄27、通帳磁気でータの破壊の有無を示す欄28、及びセンサが作動し、通帳データに影響しない範囲を示す欄29から成る。
【0051】
欄26には、図6(a),(b)に示した距離h又は距離fが示される。欄27は、欄26の距離の数値が図6(a)の距離hを示しているとき、磁気センサ18が磁気を検知して作動する(「○」)か否(「×」)かを示す評価欄である。
【0052】
欄28は、欄26の距離の数値が図6(b)の距離fを示しているとき、通帳22の磁気ストライプ23の磁気データが破壊される(「有り」)か否(「無し」)かを評価した評価欄である。
【0053】
欄29は、欄27の評価が「○」で且つ欄28の評価が「無し」である欄26の距離の範囲に、安全性を確認できる評価「○」を付与して示したものである。これにより、距離f及び距離h共に、5mm〜11mmが良い範囲であることが分かる。但し距離f(=g)と距離hとの間には、図6(a)に示したように表示端末2の筐体の厚さi(機械的ガタも含む)に対応する距離の間隔があるので、この分も含めて、5mm〜11mmを満足させる距離g(=f)を決定する必要がある。
【0054】
例えば、一例として、永久磁石16の表面16aからクレードル1の載置部4の後部壁面5までの距離g(=f)を6.5mmとし、磁気センサ18の磁気検知面18aから表示端末2の筐体表面までの距離を1.5mm、機械的ガタの範囲を1mmとすれば、永久磁石16の表面16aから磁気センサ18の磁気検知面18aまでの距離hは「6.5+1.5+1.0=9.0」(mm)となる。
【0055】
すなわち、距離g(=f)=6.5mmと、距離h=9.0mmは、ともに図7に示す実験結果の評価を示す図表25のセンサが作動し、通帳データに影響しない範囲を示す欄29の評価「○」の範囲内にあり、図6(a),(b)に示すクレードル1の構成は、安全性を確保できる設計範囲内にあることを示している。
【実施例6】
【0056】
ところで、永久磁石16の表面16aからクレードル1の載置部4の後部壁面5までの距離g(=f)を6.5mmに形成するためには、上記の実施例5のように、永久磁石取付内部壁面5aを盛り上げることに限るものではない。他の例の実施例6として以下に説明する。
【0057】
図8(a)は、実施例6に係るクレードルの正面図であり、同図(b) はそのA−A´矢視断面図、同図(c)はクレードルの突出部と表示端末2の背面に形成された窪みとの関係を示す図である。
【0058】
図8(a),(b)に示すように、本例のクレードル1は、載置部4の後部壁面5の下方に複数(図の例では2個)の突出部31(31a、31b)を備えている。この突出部31は図8(b)に示すように、永久磁石取付内部壁面5aからの突出の度合いは距離g(=f)である。換言すれば、永久磁石16の表面16aから、クレードル1の載置部4の後部壁面5に垂直な方向に見た突出部31の凸面(前方面)との距離が距離g(=f)になるように形成されている。この距離g(=f)は例えば図7で説明した9.0mmである。
【0059】
また、突出部31の上部31−1は、載置部4の後部壁面5に対し垂直に張出しているのではなく、垂直から更に角度θだけ開いた角度、すなわち前部下方に傾斜する形状で張出している。さらに、上部31−1から凸面(前方面)に回り込む角部31−2にはRが形成されている。
【0060】
尚、角度θは図8(b)では、一例として実測値が25度であるように示しているが、永久磁石取付内部壁面5aからの突出の度合いの距離g(=f)が確保されていれば、上部31−1の傾斜角は25度に限るものではない。小さいよりは大きい方がよい。この突出部31は、表示端末2が載置部4に載置されたとき、図8(c)に示すように、表示端末2の背面に形成された窪み32に係合して、表示端末2の位置決めを行う。
【0061】
図9(a)は、実施例6に係るクレードル1と、クレードル1に載置された表示端末2の下方の要部のみを示す側断面図であり、図8(b)はクレードル1から表示端末2が外された後の空となった載置部4に顧客が通帳22を差し込んで置いた状態を示す図である。
【0062】
図9(a)に示すように、クレードル1の突出部31は、表示端末2の窪み32に係合して表示端末2を載置部4に位置決めしている。これにより、表示端末2の磁気センサ18は、図8(a)に示すようにクレードル1の内部中央に配置されている永久磁石16に対し正しい位置で対向し、永久磁石16の磁気を誤り無く検出することができる。
【0063】
また、図9(b)に示すように、万一顧客が、クレードル1から表示端末2が外された後の空となった載置部4に、磁気ストライプ23の有る面を載置部4の後部壁面5に向けて通帳22を置いたとしても、突出部31の上部31−1には傾斜が有り且つ角部31−2(図8(b)参照)にRが形成されているので、通帳22は突出部31の上部31−1にとどまって置かれることはなく、突出部31を滑り落ちて載置部4の最下部に保持される。
【0064】
これにより、永久磁石16の表面16aと通帳22の磁気ストライプ23との間には、図8(b)で説明した距離g(=f)が形成される。すなわち、永久磁石16の磁気によって通帳22の磁気ストライプ23内の磁気データが破壊される恐れは全く無い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、バックライト付き表示端末用の永久磁石を内蔵したクレードルに利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 クレードル
2 表示端末
3 液晶表示部
4 載置部
5 後部壁面
5a 永久磁石取付内部壁面
5b 他の内部壁面
6 突起
7 可動ノブ
7a 延長部
8 回動部材
9 仕切り板
10 光センサ
10a 発光部
10b 受光部
11 支持軸
12 板バネ状切片12
13、14 スイッチ
15 押しボタン
16 永久磁石
17 ビス
18 磁気センサ
19 固定部
21 ビス
22 通帳
23 磁気ストライプ
25 実験結果の評価を示す図表
26 センサ/永久磁石、又は通帳/永久磁石の間隙を示す欄
27 センサが作動する範囲の評価の欄
28 通帳磁気でータの破壊の有無を示す欄
29 センサが作動し、通帳データに影響しない範囲を示す欄
31(31a、31b) 突出部
32 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示面と該液晶表示面のバックライトの点灯・消灯を制御する制御部とクレードルに載置されたことを検知する磁気センサとを備えた表示端末を載置部に載置される永久磁石内蔵のクレードルであって、
前記永久磁石が前記クレードルの内部に配設される位置は、
前記表示端末が前記載置部に位置決め部材により位置決めされて載置されたとき前記磁気センサとの間の距離が前記磁気センサの磁気検知可能な限度となる磁気検知可能限界距離以内の位置であるとともに、
前記表示端末に代わって磁気ストライプ付きの通帳が前記載置部に載置されたとき前記磁気ストライプとの間の距離が前記磁気ストライプの磁気記録が前記永久磁石の磁気によって破壊されない限度となる非破壊限界距離以上の位置である、
ことを特徴とするクレードル。
【請求項2】
前記磁気検知可能限界距離以内の位置で且つ前記非破壊限界距離以上の位置は、前記載置部の壁面の厚さによって設定される、
ことを特徴とする請求項1記載のクレードル。
【請求項3】
前記磁気検知可能限界距離以内の位置で且つ前記非破壊限界距離以上の位置は、前記載置部の後部壁面に複数設けられ、水平方向に対し斜め下方に突き出る上面と該上面の外端部から下方の載置部外壁面に至る傾斜面と、前記上面から前記傾斜面に回り込む角部に形成されたR部と、からなる突出部によって設定される、
ことを特徴とする請求項1記載のクレードル。
【請求項4】
前記突出部は複数設けられ、前記表示端末が前記載置部に載置される際の前記表示端末と前記載置部との位置関係を決める位置決め部を兼ねている、
ことを特徴とする請求項3記載のクレードル。
【請求項5】
前記磁気検知可能限界距離は11mmであり、前記非破壊限界距離は5mmである、
ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のクレードル。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のクレードルに載置される表示端末であって、
液晶表示面と、
該液晶表示面のバックライトの点灯・消灯を制御する制御部と、
前記クレードルの前記永久磁石の磁気を検知する磁気センサと、
を備え、
前記制御部は、前記磁気センサが前記永久磁石の前記磁気を検知しないとき前記液晶表示部面のバックライトを点灯し、前記前記磁気センサが前記永久磁石の前記磁気を検知したとき前記液晶表示部面のバックライトを消灯する、
ことを特徴とする表示端末。

【図1】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−11996(P2013−11996A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143555(P2011−143555)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)