説明

クレーンの制御装置及びクレーン

【課題】カメラの光軸方向を正確に算出できるクレーンの制御装置を提供する。
【解決手段】起伏自在のブームと、ブームの先端に取り付けられて下方を撮影するカメラ5と、撮影された画像に基づいてブームを移動させる制御部7と、を備えるクレーンの制御装置Dである。
そして、ブームの先端には、加速度計31とジャイロ32とを有する姿勢角基準装置3と、ブームに対するカメラの回転角度を計測する回転角度計4と、が設置されており、制御部7は、姿勢角基準装置3と回転角度計4とによって、重力方向を基準としたカメラ5の光軸方向を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの制御装置及びクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クレーン作業では、フックを荷の真上に位置させて作業を行う。
【0003】
このため、クレーンのオペレータは、玉掛け者の合図のもと、目測によって荷の真上にフックを移動させるようにクレーンを操作している。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1には、ブーム先端にカメラを取り付けたうえで、このカメラを重力方向に向くように制御するとともに、画像認識によってフックの位置を特定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−179290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の構成では、カメラの光軸方向と鉛直方向とのなす角を検出するために傾斜計を用いているため、カメラの光軸方向を正確に鉛直方向に向けることができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、カメラの光軸方向と鉛直方向とのなす角を正確に算出できるクレーンの制御装置と、このクレーンの制御装置を備えたクレーンと、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のクレーンの制御装置は、起伏自在のブームと、前記ブームの先端に取り付けられて下方を撮影するカメラと、撮影された画像に基づいて前記ブームを移動させる制御部と、を備えるクレーンの制御装置であって、前記ブームの先端には、クレーン作動中であっても常時鉛直下向きを検出する姿勢角基準装置と、前記ブームに対する前記カメラの回転角度を計測する回転角度計と、が設置されており、前記制御部は、前記姿勢角基準装置と前記回転角度計とによって、重力方向を基準とした前記カメラの光軸方向を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明のクレーンの制御装置は、ブームと、カメラと、制御部と、を備えるクレーンの制御装置であって、ブームの先端には、クレーン作動中であっても常時鉛直下向きを検出する姿勢角基準装置と、ブームに対するカメラの回転角度を計測する回転角度計と、が設置されており、制御部は、姿勢角基準装置と回転角度計とによって、重力方向を基準としたカメラの光軸方向を算出する。
【0010】
したがって、姿勢角基準装置を用いることで重力方向を正確に認識できるため、重力方向を基準としてカメラの光軸方向を正確に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の構成を説明するブロック図である。
【図2】ラフテレーンクレーンの全体構成を説明する側面図である。
【図3】ブーム先端の構成を拡大して説明する説明図である。(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
【図4】姿勢角とカメラ回転角度の関係を説明する説明図である。(a)はカメラ光軸を重力方向に制御する場合、(b)はブーム先端を荷の真上に移動させる場合においてカメラ光軸が重力方向に向いていない場合である。
【図5】実施例1のカメラ回転駆動による作用を説明する画像図である。
【図6】実施例2の画像移動による作用を説明する画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、図2を用いて本実施例のクレーンの制御装置Dを備えるクレーンとしてのラフテレーンクレーン1の機械的な構成を説明する。なお、以下の実施例1,2では、ラフテレーンクレーン1を例にして説明するが、これに限定されるものではなく、オールテレーンクレーンなどの移動式クレーンに広く本発明を適用できる。
【0014】
本実施例のラフテレーンクレーン1は、図2に示すように、走行機能を有する車両の本体部分となる車体10と、車体10の四隅に設けられたアウトリガ11,・・・と、車体10に水平旋回可能に取り付けられた旋回台12と、旋回台12に立設されたブラケット13に取り付けられたブーム14と、を備えている。
【0015】
この旋回台12は、旋回用モータの動力を伝達されるピニオンギヤを有しており、このピニオンギヤが車体10に設けた円形状のギヤに噛み合うことで旋回軸を中心に回動する。
【0016】
さらに、ブーム14は、基端ブーム141と中間ブーム142と先端ブーム143とによって入れ子式に構成されており、伸縮シリンダ(不図示)によって伸縮できるようになっている。
【0017】
また、基端ブーム141は、付け根部がブラケット13に水平に設置された支持軸に揺動自在に取り付けられており、支持軸を回転中心として上下に起伏できるようになっている。
【0018】
また、ブラケット13と基端ブーム141との間には、起伏シリンダ15が架け渡されており、この起伏シリンダ15を伸縮することでブーム14全体を起伏することができる。
【0019】
さらに、先端ブーム143の最先端のブームヘッド144にはシーブ145(図3参照)が配置されており、このシーブ145にはロープ16が掛け回されてフック17が吊下げられている。
【0020】
加えて、図3の拡大図に示すように、本実施例のブームヘッド144には、カメラ駆動部2によって回転駆動されるカメラ5が設置されている。
【0021】
このカメラ5は、先端ブーム143の最先端のブームヘッド144に下向きに取り付けられて下方を撮影するズーム機能をもつアナログムービーカメラ又はデジタルムービーカメラであり、連続的に動画を撮影する。
【0022】
また、カメラ駆動部2は、ブームヘッド144の側方に突き出したブラケット21と、このブラケット21に固定されて回動軸を支持する軸支持ブラケット22と、この軸支持ブラケット22に回動自在に支持されてカメラ5が取り付けられたカメラ支持ブラケット24と、このカメラ支持ブラケット24を軸支持ブラケット22に相対的に回転させるモータ23と、を備えている。
【0023】
そして、このカメラ支持ブラケット24の回動軸は、後述する制御部7での計算を単純化できるように、ブームヘッド144に配置された下側のシーブ145の回転軸と同一直線上に位置している。
【0024】
さらに、この軸支持ブラケット22のモータ23が設置された側と反対側の軸には、軸支持ブラケット22とカメラ支持ブラケット24の相対的な回転角度を計測する回転角度計4が設置されている。
【0025】
この回転角度計4は、ブームヘッド144とカメラ5の相対的な回転角度を計測するもので、3線式の可変抵抗器(いわゆるポテンショメータ(potentionmeter))である。
【0026】
そして、本実施例では、ブームヘッド144の側方に突き出したブラケット21に、先端ブーム143及びブームヘッド144の起伏方向の水平面に対する角度を検出する姿勢角基準装置3が設置されている。
【0027】
この姿勢角基準装置3は、クレーン作動中であっても常時鉛直下向きを検出するもので、重力方向加速度を検出する加速度計31と、起伏方向の角速度を検出するジャイロ32と、ジャイロ32の信号に含まれるドリフト成分を重力方向加速度を使って除去した信号を積分して傾斜角度を計算する計算機(不図示)と、を備える。なお、計算機は必須のものではなく、制御部7において前記計算をする場合には計算機はなくてもよい。
【0028】
また、姿勢角基準装置3としては、クレーン作動中でも鉛直下向きを検出できるものであればよく、必ずしも加速度計31とジャイロ32とを備えるものでなくてもよい。
【0029】
この加速度計31は、重力加速度の影響を受けたブームヘッド144の加速度を検出するもので、コイルばねや板ばねを用いる機械式、光ファイバへの張力による波長の変化を検出する光学式、静電容量型、ピエゾ抵抗型、ガス温度分布型等の半導体式など、いずれの方式でもよい。
【0030】
また、ジャイロ32は、ブームヘッド144の起伏方向の回転角速度を検出する角速度検出器であり、コリオリの力を利用した振動ジャイロ、サニャック効果を用いた光学式ジャイロなど、いずれの方式でもよい。
【0031】
つづいて、本実施例の姿勢角基準装置3の特徴について説明する。ジャイロ32にはジャイロ特有のドリフトがあるため、積分すると誤差が増えるという欠点がある。一方、加速度計31は重力加速度より三角関数を使って重力方向を基準とした傾斜角を得ることができるものの、加速度には振動成分や衝撃成分が重畳するため正しい傾斜角を検出できないという欠点がある。
【0032】
そこで、地球の重力方向を基準とした傾斜角が検出できる加速度計31の情報からカルマンフィルタを使ってジャイロ32のドリフト分を推定し、ジャイロ32の検出角速度からドリフト分を差し引いて積分した相対傾斜角を併用することにより、振動や衝撃を含まない地球の重力方向を基準とした傾斜角が得られる。
【0033】
次に、本実施例のクレーンの制御装置Dの制御系の構成について説明する。
【0034】
本実施例のクレーンの制御装置Dは、図1に示すように、入力側として加速度計31とジャイロ32を有する姿勢角基準装置3、ロープ16の長さを検出するロープ長計61、旋回角、起伏角、ブーム長さを検出するクレーン姿勢検出手段62、カメラ5、回転角度計4を備え、出力側としてカメラ駆動部2、ブーム14を旋回、起伏、伸縮駆動する油圧制御弁であるクレーン駆動手段81、キャビン内に配置された表示モニタとしてのタッチパネルモニタ82を備え、入力側からの入力値に基づいて出力側に命令する制御部7を備えている。
【0035】
この制御部7は、CPU、メモリ、HDD、SSDなどによって構成される汎用のマイクロコンピュータであり、撮影された画像に基づいてオペレータの指示により又は自動的にブーム14を移動させる。
【0036】
また、タッチパネルモニタ82は、表示部と位置入力部とを組み合わせて構成されるもので、撮影された画像を表示する出力装置であると同時に、画像上の任意の位置を押すことで機器を操作する入力装置である。
【0037】
次に、本実施例のクレーンの制御装置Dの作用について、光軸方向演算処理、回転駆動制御、ブーム移動制御の順に説明する。なお、これらの演算や制御は前記した制御部7によって主に実行される。
【0038】
(光軸方向演算処理)
光軸方向演算処理では、まず、姿勢角基準装置3を用いてブームヘッド144の水平面に対する起伏方向の相対角度θ1を検出する。すなわち、加速度計31によって重力加速度及び移動加速度を検出し、カルマンフィルタによりジャイロ32の信号に含まれるドリフト分を推定する。そして、ジャイロ32の信号から推定したドリフト分を差し引いて積分して傾斜角度を計算する。
【0039】
つづいて、カメラ5のブームヘッド144に対する相対角度θ2を、回転角度計4によって検出する。そうすると、制御部7は、カメラ5の光軸方向を、図4(a)(b)に示すように、(θ1−θ2)と計算できる。
【0040】
(回転駆動制御)
回転駆動制御では、制御部7は、計算されたカメラ5の光軸方向(θ1−θ2)が重力方向真下向きとなるように、すなわち、(θ1−θ2=−90°,θ2=90°+θ1)となるように、カメラ5をモータ23によって回転駆動させる。ただし、実際には、モータ23の動作遅れや制御誤差などが生じるため、正確に回転駆動させることは困難である。
【0041】
(ブーム移動制御)
ブーム移動制御では、前提として、図4(b)に示すように、回転駆動制御によってはカメラ5が重力方向真下を向いていない状態を想定している。また、ブームヘッド144からロープを介して吊下げられたフック17は、地面に置かれた荷物の近いところに位置していることを想定する。さらに、タッチパネルモニタ82の画面では、フック17と吊荷は図5(b)のように表示されているとする。
【0042】
このブーム移動制御は、以下の(1)〜(4)の手順で実行される。
【0043】
(1)オペレータは、図5(b)に示すように、カメラ5で撮影された画像中の荷物の位置を、タッチパネルモニタ82で指示する。なお、タッチパネルモニタ82で荷物の位置を指示した後は、後に続く演算で画像認識により荷物の位置を特定してもよい。
【0044】
(2)タッチパネルモニタ82の画像は、画像中心を原点とする座標を持ち、この座標はロープ長計61によって検出されたブームヘッド144からフック17までの距離Lとカメラ5の焦点距離より得られる。画像上に指示した荷物の位置は、カメラ5の光軸とレンズ中心の交点を原点とするカメラ座標系Σ1における荷物の位置P1(X1,Y1,Z1),(Z1=L/cosΔθ)として求める。ここで、Δθは後述する位置誤差である。
【0045】
(3)指示された荷物の位置には、図5(a)(b)に示すように、撮影された画像に基づく荷物位置P1と、カメラ5が重力方向真下を向いていると仮定した画像に基づく荷物位置P2と、の位置誤差Δθが生じている。ここで、荷物位置P2は、図5(a)に示すように、カメラ5の光軸が重力方向真下を向き、カメラ5の光軸とレンズ中心の交点を原点とするカメラ座標系Σ2における荷物の位置に相当する。
【0046】
この位置誤差Δθを、ブームヘッド144の水平面に対する起伏方向の相対角度θ1と、カメラ5のブームヘッド144に対する相対角度θ3とに基づいて計算する。
【0047】
なお、この位置誤差Δθを計算する前提として、カメラ5を重力方向真下に向けるための角度θ4=θ1+90°とすると、Δθ=θ4−θ3である。なお、位置誤差Δθ=0の場合、すなわち、カメラ5が重力方向真下を向いている場合はθ4=θ3となる。
【0048】
(4)荷物位置P1を位置誤差Δθによって補正し、補正後の荷物位置P2(X2,Y2,Z2)を求める。カメラ5の光軸とレンズ中心の交点を原点とするカメラ座標系Σ1をX軸回りにΔθだけ回転させる座標変換、すなわち、式(1)により求める。
【数1】

【0049】
(5)制御部7は、求めた位置誤差Δθを考慮したうえで、フック高さ位置にあると仮定した荷物位置P2を座標変換により認識し、クレーン駆動手段81によってブーム14を旋回、起伏、伸縮してブームヘッド144を荷物の真上に移動する。
【0050】
なお、本実施例では、荷物がフック高さ位置にあると仮定して、ロープ長を演算に利用したが、ブームの姿勢(起伏角、伸縮長さ)を用いて算出したカメラ5と地面との距離を演算に用いてもよい。
【0051】
次に、本実施例のクレーンの制御装置Dが有する効果を列挙して説明する。
【0052】
(1)このように、本実施例のクレーンの制御装置Dは、ブーム14と、カメラ5と、制御部7と、を備えるクレーンの制御装置Dであって、ブーム14の先端としてのブームヘッド144には、クレーン作動中であっても常時鉛直下向きを検出する−具体的には加速度計31とジャイロ32とを有する−姿勢角基準装置3と、ブーム14に対するカメラ5の回転角度を計測する回転角度計4と、が設置されており、制御部7は、姿勢角基準装置3と回転角度計4とによって、重力方向を基準としたカメラの光軸方向を算出する。
【0053】
したがって、姿勢角基準装置3を用いることで重力方向を正確に認識できるため、重力方向を基準としてカメラ5の光軸方向を正確に算出できる。
【0054】
つまり、従来のような傾斜計を用いると、重力加速度に加えて移動加速度の影響を受けるためブーム14の移動中などには正確に重力方向を検出できなかったが、加速度計31とジャイロ32を用いて、カルマンフィルタによりジャイロのドリフトを補正することで、より正確に重力方向を検出できるようになる。
【0055】
(2)また、カメラ5を回転駆動するカメラ駆動部2をさらに備え、制御部7は、算出されたカメラ5の光軸方向が重力方向真下に一致するように、カメラ駆動部2によってカメラ5を回転駆動することで、ブーム14の動きに応じて、カメラ5を重力方向真下に向けることができる。
【0056】
しかも、加速度計31とジャイロ32を有する姿勢角基準装置3によって重力方向(鉛直方向)真下を正確に検出しているため、制御部7はカメラ駆動部2に正確な値を出力できる。
【0057】
(3)さらに、制御部7は、撮影された画像上の荷物の位置から実際の荷物の方向を算出して、ブーム14の先端が荷物の重力方向真上に来る方向にブーム14を移動させることで、起伏角度等の計測値がたわみ等で誤差を含んでも、正確に荷物の方向を算出してブーム14を移動できる。
【0058】
この場合、ブーム14の移動中にも「検出−位置指定−画像認識」のサイクルを繰り返し実行することで、少なくともブーム14の移動方向がわかっていればブーム14を移動させることが可能となる。
【0059】
例えば、ブームヘッド144からみて第一象限に荷物が位置する場合には右前方に移動させ、第三象限に荷物が位置する場合には左後方に移動させることで荷物の真上に近づけることができる。
【0060】
より好ましくは、ブーム14を移動させている最中に、荷物との距離に応じてカメラ5を自動的にズームアップさせ、より詳細な荷物の位置を指示していくことがよい。
【0061】
(4)そして、制御部7は、荷物を吊る前、荷物を地切りする際、荷物を吊った状態、又は、荷降ろしをする際の少なくともいずれかにおいて、ブーム14の先端が荷物の重力方向真上に来る方向にブーム14を移動させることで、負荷を検出しなくても、画像認識によって容易に移動方向を算出してブーム14を移動できる。
【0062】
さらに、このようにブーム14の先端のブームヘッド144が荷物の真上に位置することで、荷物の横振れを抑制できるため安全に作業できる。
【0063】
(5)また、表示モニタはタッチパネルモニタ82として構成されており、制御部7は、タッチパネルモニタ82内でオペレータによって指示された位置に基づいて荷物の位置を特定することで、特定の識別パターンを用いなくても、荷物の位置を正確に認識できる。
【0064】
つまり、フック17上面に特定の識別パターンを塗装などで形成し、この識別パターンをパターンマッチングなどで画像認識することなく、簡易な操作によって荷物の位置を特定できる。
【0065】
この場合、ブームヘッド144とフック17との距離に応じて、近づくにつれてカメラ5をズームアップしていくことで、より正確に荷物の位置を指示することができる。
【0066】
(6)そして、本実施例のクレーンとしてのラフテレーンクレーン1は、上記したいずれかに記載のクレーンの制御装置Dを備えることで、荷物が振れることを抑制した安全なクレーンになる。
【実施例2】
【0067】
以下、図1,6を用いて、前記実施例とは異なりカメラ5を回転駆動させない場合について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0068】
まず構成について説明すると、本実施例のクレーンの制御装置Dは、図1に示すように、実施例1と同様に、姿勢角基準装置3、ロープ長計61、クレーン姿勢検出手段62、カメラ5、回転角度計4、カメラ駆動部2、クレーン駆動手段81、タッチパネルモニタ82、制御部7、などを備えている。
【0069】
ただし、本実施例では、カメラ5を回転駆動させる必要がないため、カメラ駆動部2の構成のうち、回転駆動に関する構成であるモータ23は必ずしも必要ではない。
【0070】
また、カメラ5によって撮影された画像範囲は、その画像範囲の全体がタッチパネルモニタ82に表示されているのではなく、一部分を抜き出して表示されている。つまり、カメラ5はタッチパネルモニタ82に表示された領域より広い範囲を撮影している。
【0071】
次に、本実施例のクレーンの制御装置Dの画像移動制御について、図6を用いて説明する。
【0072】
(画像移動制御)
前記実施例1と同様に、あらかじめ光軸方向演算処理によってカメラ5の光軸方向を(θ1−θ2)と計算する。
【0073】
そして、画像移動制御では、カメラ5を重力方向真下に向けるための角度θ4=θ1+90°と、カメラ5のブームヘッド144に対する相対角度θ3と、に基づいてタッチパネルモニタ82の表示される範囲を移動する。
【0074】
すなわち、図6(a)(b)に示すように、実施例1と略同様の演算方法でブームヘッド144の重力方向真下位置を演算し、この点がタッチパネルモニタ82の中心と一致するように、表示範囲をずらす。そして、本実施例では、座標変換した後の画像上の荷物の位置を指示することで、ブームヘッド144の移動方向と距離を算出できる。
【0075】
次に、本実施例のクレーンの制御装置Dの有する効果について説明する。
【0076】
(1)このように、本実施例のクレーンの制御装置Dでは、制御部7は、撮影された画像を表示する表示モニタとしてのタッチパネルモニタ82の画面内で、ブーム14の先端の重力方向真下が画像の中心に位置するように画像を移動する。
【0077】
したがって、カメラ駆動部2が制御誤差などによってブーム14の動きに十分に追従しなくても、正確にブーム先端としてのブームヘッド144の真下を認識できる。
【0078】
逆にいうと、画像認識によってブームヘッド144の真下を認識できることで、カメラ5を真下に向ける必要がなくなるため、カメラ駆動部2は不要になる。
【0079】
そして、このように画面上でブームヘッド144の真下を認識できれば、オペレータは、ブーム14をどの方向に移動させればよいか理解できるため、荷物の真上にブームヘッド144を移動させやすくなる。
【0080】
(2)また、制御部7は、撮影された画像上の荷物の位置から実際の荷物の方向を算出して、ブーム14の先端が荷物の重力方向真上に来る方向にブーム14を移動させることで、起伏角度等の計測値がたわみ等で誤差を含んでも、正確に荷物の方向を算出してブーム14を移動できる。
【0081】
なお、この他の構成および作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0082】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0083】
例えば、実施例1では、ロープ長計61を用いて荷物までの距離を検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、画像上で距離を検出することもできる。
【0084】
また、実施例1では、ロープ長計61を用いて座標変換によりブームヘッド144の移動距離を演算する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ロープ長計61がなくても移動方向は算出できるため、フィードバック制御によってブームヘッド144を荷物の真上に移動させることはできる。
【0085】
すなわち、ロープ長計61がない場合には、荷物までの距離は不明であるが移動方向は明らかなので、少量の移動−計測を繰り返すことで、荷物の真上までブームヘッド144を移動させることができる。
【0086】
この場合、例えば、まず、カメラ5の光軸方向の重力方向に対する誤差Δθが検出できているため、撮影した画像のうち、Δθ分だけずらした画像を選択してタッチパネルモニタ82に表示する。つづいて、タッチパネルモニタ82で荷物の位置を指示することにより、画像上でブームヘッド真下位置に対する荷物位置の方向が特定できるので、荷物の方向にブームヘッド144を動かす。次に、ブームヘッド真下位置と荷物位置の間の画素数が減少するようにブーム14を移動させれば、ブームヘッド144を荷物の真上に位置させることができる。
【0087】
さらに、実施例1,2では、主として荷物を吊る前にブームヘッド144を荷物の真上に移動させる例について説明したが、これに限定されるものではなく、荷物を地切りする際や、荷物を吊った状態のクレーン作業や、荷物を地面に降ろす際にも、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0088】
D クレーンの制御装置
1 ラフテレーンクレーン(クレーン)
14 ブーム
144 ブームヘッド
2 カメラ駆動部
3 姿勢角基準装置
31 加速度計
32 ジャイロ
4 回転角度計
5 カメラ
7 制御部
81 クレーン駆動手段
82 タッチパネルモニタ(表示モニタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏自在のブームと、前記ブームの先端に取り付けられて下方を撮影するカメラと、撮影された画像に基づいて前記ブームを移動させる制御部と、を備えるクレーンの制御装置であって、
前記ブームの先端には、クレーン作動中であっても常時鉛直下向きを検出する姿勢角基準装置と、前記ブームに対する前記カメラの回転角度を計測する回転角度計と、が設置されており、
前記制御部は、前記姿勢角基準装置と前記回転角度計とによって、重力方向を基準とした前記カメラの光軸方向を算出することを特徴とするクレーンの制御装置。
【請求項2】
前記カメラを回転駆動するカメラ駆動部をさらに備え、前記制御部は、算出されたカメラの光軸方向が重力方向真下に一致するように、前記カメラ駆動部によって前記カメラを回転駆動することを特徴とする請求項1に記載のクレーンの制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、撮影された画像を表示する表示モニタの画面内で、前記ブームの先端の重力方向真下が画像の中心に位置するように前記画像を移動することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクレーンの制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、撮影された画像上の荷物の位置から実際の荷物の方向を算出して、前記ブームの先端が荷物の重力方向真上に来る方向に前記ブームを移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のクレーンの制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、荷物を吊る前、荷物を地切りする際、荷物を吊った状態、又は、荷物を地面に降ろす際、の少なくともいずれかにおいて、前記ブームの先端が荷物の重力方向真上に来る方向に前記ブームを移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のクレーンの制御装置。
【請求項6】
前記表示モニタはタッチパネルとして構成されており、前記制御部は、前記タッチパネル内で指示された位置に基づいて荷物の位置を特定することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載のクレーンの制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のクレーンの制御装置を備えるクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−207571(P2011−207571A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76593(P2010−76593)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)