説明

クレーンの運転方法、及びその制御装置

【課題】エンジンと発電機を有する電源装置を搭載したクレーンの運転方法、及びその制御装置において、クレーンの運転に必要となる最低限の電力を供給し、発電効率が高く、省燃費で、且つ排気ガス中の有毒物質を削減することのできるクレーンの運転方法、及びその制御装置を提供する。
【解決手段】クレーン1が、コンテナターミナル管理システム15から、荷役対象であるコンテナ36の重量情報を含むコンテナ情報D1を受信するデータ受信ステップと、コンテナの重量情報をもとに、主機6が必要とする必要電力量を算出する必要電力算出ステップと、必要電力量Wからエンジン2の目標回転数を算出する目標エンジン回転数算出ステップと、エンジンの回転数を、目標エンジン回転数にあわせると共に、コンテナ36の荷役を開始するステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上輸送用コンテナを荷役するクレーン(岸壁クレーン、門型クレーン、ストラドルキャリア)等で、エンジンと発電機からなる電源装置を有するクレーンにおいて、必要電力量に応じてエンジンの回転数を制御するクレーンの運転方法及びその制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾や内陸地等のコンテナターミナル(コンテナヤードともいう)では、岸壁クレーンや門型クレーンによって、コンテナ船及びコンテナトレーラトラック(以下、トレーラ又はシャーシと呼ぶ)間のコンテナの荷役を行っている。図9にコンテナターミナル40の概略を示す。
【0003】
以下に、コンテナターミナル40におけるコンテナの荷役搬送システムに関して説明する。コンテナターミナル40では、まず、コンテナ船38に搭載したコンテナ36を、岸壁クレーン1Bにより荷揚げする。岸壁クレーン1Bは、コンテナ36をトレーラ37に積載する。このトレーラ37は、コンテナ36をコンテナ載置エリア41まで運搬する。コンテナ載置エリア41では、門型クレーン1Aが、トレーラ37からコンテナ36を荷下ろしする。以上のようにして、コンテナ36を、コンテナ船38から荷揚げする。
【0004】
また、コンテナターミナル40では、岸壁クレーン1B、門型クレーン1A、トレーラ37等の荷役機器の運用を、管理センター42に設置したコンテナターミナル管理システムにより行っているものもある。
【0005】
以下に、コンテナターミナル管理システムに関して説明する。このコンテナターミナル管理システムは、いくつかのシステムを組み合わせて構成している。例えば、ヤードプランコンピュータシステム(以下、YPCS)に、ベッセルプランモジュール(VP)及びヤードプランモジュール(以下、YP)を組み合わせたものがある。
【0006】
次に、各システムの働きを説明する。ヤードプランコンピュータシステム(YPCS)は、オンライン且つリアルタイムに、コンテナ36に関するコンテナ情報(コンテナ識別番号、位置情報、行き先情報等)を管理し、コンテナヤード40内におけるコンテナ36の在庫管理と、ハンドリングスケジュール(荷役作業の予定)の計画等、及び輸出入コンテナのコンテナターミナル40への搬出入管理を行う。このYPCSは、コンテナターミナル管理システムの中心となるシステムである。
【0007】
また、ベッセルプランモジュール(VP)は、コンテナ船38におけるコンテナ情報(識別番号、位置情報、行き先情報等)を保持しており、この情報に基づいて、コンテナ36の荷役作業の予定を作成し、岸壁クレーン1Bに指示する。この指示(コンテナの位置情報、識別番号等)に基づいて、クレーンオペレータは、荷揚げすべきコンテナ36を識別し、荷役作業を行う。
【0008】
また、ヤードプランモジュール(YP)は、コンテナヤード40におけるコンテナ情報を保持しており、この情報に基づいてコンテナ載置計画や、コンテナシフトプラン等を作成し、門型クレーン1A等に指示する。
【0009】
このコンテナターミナル管理システムの導入により、コンテナ36の荷役作業の効率化を実現している。つまり、コンテナターミナル40では、例えば、あるコンテナ船38か
ら異なるコンテナ船へ、一部のコンテナ36の積み替えを行う場合があり、この乗換えを行うコンテナ36は、移動先のコンテナ船が到着する岸壁の近くに載置する必要がある。
【0010】
また、外来のトレーラによりコンテナターミナル40の外部に運搬するコンテナ36は、コンテナターミナル40の出口近傍に載置する必要がある。このコンテナ36の載置する位置の指示をコンテナターミナル管理システムにより行い、荷役作業を行う領域を分散し、荷役効率の向上を実現している。以上が、コンテナターミナル40における荷役搬送システムの概要である。
【0011】
次に、海上輸送用コンテナ36を荷役するクレーン(例えば、岸壁クレーン、門型クレーン、ストラドルキャリア等)に搭載しているエンジンと発電機からなる電源装置に関して説明する。
【0012】
図10に、門型クレーン1Aに搭載した電源装置10Xの概略を示す。ここでは、特に門型クレーン1Aを例に説明するが、岸壁クレーン等の他の荷役機器にも同様に適用している場合がある。電源装置10Xは、エンジン2と発電機3を組み合わせて発電を行なっている。発電機3で発電した交流電気を、インバータ4Xで整流、周波数制御する。そしてインバータ4Xから、蓄電装置(キャパシタ、リチウムイオン電池、鉛蓄電池など)5に直流電気を送り、主機6(例えば巻上装置等)、補機7に交流電気を送るように構成している。ここで、符号11の実線は、電線を示している。なお、エンジン2は、ディーゼルエンジンを使用することが多いが、ガソリンエンジンや、他の内燃機関で代用することも可能である。
【0013】
主機6は、駆動装置としてモータ30を有している。このモータ30で発生した動力を、減速機32を介してワイヤ34を巻き取るドラム33に伝達するように構成している。このドラム33の回転により、コンテナ36を把持しているスプレッダ35の上げ下げ、つまりコンテナ36の荷役作業を行う。なお、符号31の二重線は、機械的接続を示しており、特に符号34はワイヤを示している。
【0014】
また、補機7は、門型クレーン1Aで使用している電気機器を示しており、例えば、照明器具、操作室の空調装置、コンテナ36の触れ止め制御装置等を示している。
【0015】
次に、電源装置10Xの制御に関して説明する。この電源装置10Xにおいて一般的には、エンジン2の回転数を一定に保つように制御している。例えばエンジン2がディーゼルエンジンの場合は、1500〜1800rpm程度である。
【0016】
つまり、この制御方法では、モータ30が加速中で動力消費が大きい場合でも、モータが定速中や減速中で動力消費が少ない場合でも、エンジン2は同じ速度で回転し、一定周波数で発電を行なう。エンジン2は、常に一定の回転数で回転しており、負荷の増減により燃料噴射量が変化する。
【0017】
なお、電力消費量が微量であり、発電機3にほとんど負荷がかかっていない場合であっても、エンジン2は一定の回転数を保つように回転している。そのため、これがエネルギーロスとなっており、問題であった。
【0018】
これに対して、省燃費、排気ガス中有毒物質の削減、運転中の振動及び騒音の削減等を目的として、エンジン回転数を制御できる電源装置が実用化されている(例えば特許文献1乃至4参照)。特許文献1には、主機の必要とする電力量(必要電力量)に応じて、エンジンの回転数を制御する制御方法が開示されている。
【0019】
特許文献2には、ディーゼルエンジンと発電機の間に増速器と流体接手を設置した構成が開示されている。この構成により、ディーゼルエンジンを燃費効率の高い回転数に制御しながら、発電機では、任意の周波数及び電圧を有する電気を発電することができる。
【0020】
特許文献3には、発電機と補機の間に切替器及びインバータを設置した構成が開示されている。この構成により、エンジンの回転数を下げる制御を行った場合であっても、周波数及び電圧の安定した電気をインバータから、補機に供給することができる。
【0021】
特許文献4には、主発電機及び副発電機を、切替器を介して補機に接続した構成が開示されている。この構成により、エンジンの回転数を下げる制御を行った場合であっても、周波数及び電力の安定した電気を副発電機から、補機に供給することができる。
【0022】
上記の発明では、エンジン回転数をクレーンの必要電力量に応じて制御して、発電効率の向上を実現している。特に特許文献4では、消費した電力に応じて低下する電力を検知し、この電圧をパラメータとしてエンジンの回転数を制御するように構成している。具体的には、クレーンでコンテナを吊上げる際、まずエンジンの回転数をアイドリング回転数(例えば700rpm程度)から最大(例えば1800rpm程度)まで上昇し、コンテナの吊上げを開始する。
【0023】
その後、電力を検知しながら、必要最低限の発電を行なうように、エンジンの回転数を下げていく。この制御により、エンジン回転数を必要電力に応じて制御するため、エンジン回転数を低く抑制することができる。
【0024】
しかしながら、上記の制御方法は、コンテナを吊上げる直前に、エンジン回転数を最大まで上昇し、必要電力量に応じてエンジン回転数を下げる制御を行っている。このため、制御開始時には、エンジンは必要以上の仕事(エネルギーロス)をしてしまうという問題を有している。
【0025】
一方で、エネルギーロスを避けるために、コンテナを吊上げると同時に、エンジン回転数を最低(アイドリング)から上昇し、必要電力に応じてエンジン回転数を上げる制御を行うことが考えられる。この制御において、クレーンは、発電機による発電量が必要電力量まで達するまで、エネルギー不足から減速運転を余儀なくされ、荷役効率が低下してしまう。なお、クレーンは、荷役の最初の段階(コンテナが地切りするまでの段階)に、最も多くのエネルギーを必要とする。
【特許文献1】特許4216738号
【特許文献2】特開2008−247567号公報
【特許文献3】特開2008−247590号公報
【特許文献4】特開2008−247589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンと発電機を有する電源装置を搭載したクレーンの運転方法、及びその制御装置において、クレーンの運転に必要となる最低限の電力を供給し、発電効率が高く、省燃費で、且つ排気ガス中の有毒物質を削減することのできるクレーンの運転方法、及びその制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的を達成するための本発明に係るクレーンの運転方法は、海上輸送用コンテナを荷役するコンテナターミナルで使用するクレーンの運転方法において、前記クレーンが
、エンジンと発電機からなる電源装置と、少なくとも前記エンジンの回転数を制御するクレーン制御装置と、前記コンテナを荷役する主機を有しており、また、前記コンテナターミナルが、前記コンテナの少なくとも位置情報及び重量情報を管理するコンテナターミナル管理システムを有しており、前記クレーンが、前記コンテナターミナル管理システムから、荷役対象であるコンテナの重量情報を含むコンテナ情報を受信するデータ受信ステップと、前記コンテナの重量情報をもとに、前記主機が必要とする必要電力量を算出する必要電力算出ステップと、前記必要電力量から前記エンジンの目標回転数を算出する目標エンジン回転数算出ステップと、前記エンジンの回転数を、前記目標エンジン回転数にあわせると共に、前記コンテナの荷役を開始するステップを有することを特徴とする。
【0028】
この構成により、クレーンは、対象となるコンテナの荷役に必要なエンジン回転数を、荷役作業前に算出することができる。このため、このエンジンの回転数を必要最低限に抑えることができ、電源装置の発電効率を高めることができる。つまり、主機(例えば巻上装置)の作動に必要となる電力量(以下、必要電力量という)に合わせた発電を行なうため、無駄な発電を抑制することができる。
【0029】
上記のクレーンの運転方法において、前記クレーンが、OCR装置を有しており、前記OCR装置が、前記コンテナの本体に表示しているコンテナ識別番号、又は前記コンテナを運搬するトレーラに表示しているトレーラ識別番号を読取るOCRステップと、前記OCR装置で読取ったコンテナ識別番号又はトレーラ識別番号と、前記データ受信ステップで得たコンテナ情報を比較するコンテナ確認ステップを有することを特徴とする。
【0030】
この構成により、クレーンは、対象となるコンテナの重量情報を正確且つ確実に得ることができる。このため、クレーンの電源装置は、必要以上に発電を行なうことがなくなる。つまり、電源装置は、コンテナの荷役に必要な最低限の電力のみを発電するため、発電効率を向上することができる。従って、コンテナターミナルにおいて、コンテナが誤った場所に載置されている場合であっても、クレーンの電源装置は、高い発電効率を維持することができる。
【0031】
上記のクレーンの運転方法において、前記クレーン制御装置が、前記コンテナの重量情報及び前記クレーンの運転パターンマップから、前記エンジンの回転数を制御する制御パターンマップを生成し、前記制御パターンマップをもとに、前記エンジンの回転数を制御する予測制御ステップを有することを特徴とする。
【0032】
この構成により、クレーンは、運転パターンマップから電源装置にかかる負荷を予測し、この予測にもとづいてエンジン回転数の制御をする(制御パターンマップ)ことができる。このため、電源装置で発電する電力量を、高い精度で必要電力量の変化に追従させることができる。
【0033】
上記の目的を達成するための本発明に係るクレーンの運転制御装置は、海上輸送用コンテナを荷役するコンテナターミナルで使用するクレーンの運転制御装置において、前記クレーンが、エンジンと発電機からなる電源装置と、少なくとも前記エンジンの回転数を制御するクレーン制御装置と、前記コンテナを荷役する主機を有しており、また、前記コンテナターミナルが、前記コンテナの少なくとも位置情報及び重量情報を管理するコンテナターミナル管理システムを有しており、前記クレーンが、前記コンテナターミナル管理システムから、荷役対象であるコンテナの重量情報を含むコンテナ情報を受信する車載端末と、前記コンテナの重量情報をもとに、前記主機が必要とする必要電力量を算出し、前記必要電力量から前記エンジンの目標回転数を算出し、前記エンジンの回転数を前記目標エンジン回転数にあわせる制御を行う前記クレーン制御装置を有していることを特徴とする。この構成により、前述したクレーンの運転方法と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
上記のクレーンの運転制御装置において、前記クレーンが、前記コンテナの本体に表示しているコンテナ識別番号、又は前記コンテナを運搬するトレーラに表示しているトレーラ識別番号を読取るOCR装置を有しており、前記クレーン制御装置が、前記OCR装置で取得したコンテナ識別番号又はトレーラ識別番号と、前記車載端末で受信した前記コンテナ情報を比較するように構成したことを特徴とする。この構成により、前述したクレーンの運転方法と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るクレーンの運転方法、及びその制御装置によれば、クレーンの運転に必要となる最低限の電力量(必要電力量)を予め算出し、必要最低限の電力を供給できる程度にエンジンの回転数を制御することができるため、発電効率が高く、省燃費で、且つ排気ガス中の有毒物質を削減したクレーンの運転方法、及びその制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る実施の形態のクレーンの運転制御装置の概略を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のクレーンの運転方法の概略を示した図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のクレーンの運転方法の概略を示した図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のクレーンの運転方法の概略を示した図である。
【図5】クレーンの荷役作業における巻上速度及び必要電力量の推移を表したグラフである。
【図6】クレーンの荷役作業における最大供給電力量の推移を表したグラフである。
【図7】クレーンの荷役作業における最大供給電力量の推移を表したグラフである。
【図8】クレーンの荷役作業における最大供給電力量の推移を表したグラフである。
【図9】従来のコンテナターミナルの概略を示した図である。
【図10】従来のクレーンの電源装置の概略を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明に係る実施の形態のクレーンの運転方法及びその制御装置について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
図1に、本発明に係る実施の形態のクレーンの運転制御装置の概略を示す。クレーン1は、エンジン2及び発電機3からなる電源装置10を有している。この発電機3とインバータ4を電線11で接続している。また、インバータ4は、蓄電装置5、主機6及び補機7と電線11で接続している。
【0039】
また、エンジン2にクレーン制御装置8を接続している。このクレーン制御装置8は、少なくともエンジン2の回転数を制御することができる。また、クレーン制御装置8に車載端末9を接続している。なお、一点鎖線は電気信号的接続を示している。
【0040】
車載端末9は、コンテナターミナル管理システム15からコンテナ情報D1を受信するように構成している。このコンテナ情報D1は、無線LAN又は無線通信等を利用することが望ましい。加えて、コンテナターミナル管理システム15は、少なくとも荷役機器運行管理システム16、及びコンテナID管理システム17を有するように構成する。
【0041】
ここで、荷役機器運行管理システム16は、コンテナターミナル40で荷役作業を行う門型クレーン1A、岸壁クレーン1B、トレーラ37等の運行を管理している。また、コンテナ36の動きも同時に管理している。つまり、各荷役機器のオペレータは、荷役機器
運行管理システム16からの指示に従い、コンテナの荷役作業を行う。また、コンテナID管理システム17は、各コンテナのコンテナ情報を保持しており、具体的にはコンテナ識別番号、コンテナの位置、行き先、コンテナ重量、荷主等の情報を保持している。
【0042】
なお、荷役機器運行管理システム16及びコンテナID管理システム17として、従来のヤードプランコンピュータシステムや、ヤードプランモジュールを利用することもできる。本発明においては、少なくともコンテナ識別番号、コンテナが載置されている位置の情報、及びコンテナの重量の情報を、前述のコンテナターミナル管理システム15が保持するように構成すればよい。また、コンテナ36の重量情報は、コンテナの運搬依頼書に記載してある数値を利用するか、又は、コンテナ36を預かる際に測定した数値を利用するように構成するとよい。
【0043】
また、車載端末9又はクレーン制御装置8に、光学文字認識(Optical Character Recognition)装置(以下、OCR装置12という)を接続してもよい。このOCR装置は、コンテナ36や、トレーラ37に印字された識別番号(コンテナ識別情報D2)を、カメラ等で読み取り、デジタルデータとして、クレーン制御装置8等に送ることができる。
【0044】
次に、クレーン1の運転方法について説明する。図2に、クレーン1の運転方法の制御フローを示す。図2に示す様に、クレーン1は、運転開始(クレーンの運転制御開始S11)と共に、スプレッダ35の降下を行う(主機の運転によるスプレッダ巻下げS12)。スプレッダ35が下降を開始する前、あるいは下降中に、スプレッダ35に設置したカメラで、コンテナ36に印字した識別番号を読取る(OCRステップS13)。なお、OCRステップ(S13)は、例えばクレーンの脚部等の本体に設置したカメラで、トレーラ37の識別番号を読取るようにしても良い。
【0045】
一方、車載端末9で、コンテナターミナル管理システム15に蓄積したコンテナ情報D1(コンテナ情報収集ステップS21)を受信する(データ受信ステップS22)。ここで、受信するコンテナ情報D1は、1つではなく、複数のコンテナ情報D1であることが望ましい。また、コンテナ情報D1は、リアルタイムで更新するように構成することが望ましい。この構成により、車載端末9は、常に最新の情報を保持することができる。そして、このコンテナ情報D1を、クレーン制御装置8に送る。
【0046】
クレーン制御装置8では、OCR装置12で取得したコンテナ又はトレーラの識別番号と、コンテナターミナル管理システム15から受信したコンテナ情報D1を比較する(コンテナ確認ステップS23)。このコンテナターミナル管理システム15は、ターミナル内のある位置に、ある番号のコンテナ36を載置しているという情報を有している。しかしながら、稀に、誤った位置にコンテナ36が載置されている場合がある。この場合、OCR装置12で取得した識別番号と受信したコンテナ情報D1が不一致となる。そこで、クレーン制御装置8は、OCR装置12で取得した識別番号に対応するコンテナ情報D1を、車載端末9から読み込み(重量情報の読み込みS24)、荷役対象であるコンテナ36の正しい重量情報を取得する。
【0047】
次に、コンテナの重量情報にもとづいて、電源装置10のエンジン2の目標回転数を算出する(演算ステップS30)。そして、エンジン2を目標回転数に合わせるように制御する(エンジンの回転数上昇S14)。このエンジン2の制御により、主機6に電力を供給し、コンテナ35とスプレッダ26の連結(S15)の後に、主機6(ドラム33)の運転を開始する(主機の運転によるコンテナとスプレッダの巻上げS16)。
【0048】
主機の運転中は、必要電力量を予測しながらエンジンの回転数を制御する(予測制御ス
テップS40)。なお、この制御は、従来の電力を検知しながらエンジンの回転数を制御する方法でもよい。そして、コンテナをコンテナ載置エリア41又はトレーラ37に載置して、荷役を完了する(荷役完了S17)。
【0049】
図3に、演算ステップ(S30)の詳細な制御フローを示す。この演算ステップ(S30)では、車載端末9から得たコンテナの重量Mを入力値として、必要電力量Wを算出する(S31)。つまり、必要電力量Wは、コンテナの重量Mの関数として表すことができる。
【0050】
次に、必要電力量Wを入力値として、目標エンジン回転数Rを算出する(S32)。つまり、目標エンジン回転数Rは、必要電力量Wの関数として表すことができる。この目標エンジン回転数Rを出力し(S33)、この回転数Rに合わせるように、エンジンの回転数を上昇する制御を行う(S14)。
【0051】
図4に、予測制御ステップ(S40)の詳細な制御フローを示す。この予測制御ステップ(S40)では、主機(ドラム33)の運転状態から、その後の運転パターンを予測する運転パターンマップを選択して読み込む(S41)。クレーンの荷役作業は、例えば、コンテナを吊上げ、トレーラ上で降下し、搭載する等、一定の運転パターンを繰り返すことが多い。そのため、この運転パターンマップと、コンテナの重量情報から、必要電力量Wの推移を推定することができる。
【0052】
この必要電力量Wの推移をもとに、エンジン回転数の推移、すなわちエンジン回転数の制御パターンマップを生成する(S42)。この制御パターンマップと主機の運転状態から、新たな目標エンジン回転数を決定する(S43)。この目標エンジン回転数に合せるようにエンジン2の制御を行う。
【0053】
ここで、運転パターンマップは、クレーン制御装置8において複数のパターンを保持するように構成することが望ましい。例えば、門型クレーン1Aの場合は、コンテナ載置エリア41からトレーラ37に荷役するパターン、トレーラ37からコンテナ載置エリア41に荷役するパターン等を保持するように構成する。また、岸壁クレーン1Bの場合は、コンテナ船38からトレーラ37に荷役するパターン、トレーラ37からコンテナ船38に荷役するパターン等を保持するように構成する。これらの運転パターンマップは、それぞれコンテナを荷役する速度、コンテナの移動軌跡が異なる。このため、必要電力量Wの推移のパターンも異なるため、それぞれの運転パターンマップを適宜選択して利用する。
【0054】
なお、コンテナ確認ステップ(S23)、演算ステップ(S30)及び予測制御ステップ(S40)は、クレーン制御装置8、車載端末9、又はこれらに付属するコンピュータ等で処理を行うように構成している。
【0055】
上記のクレーン1の運転方法により、以下のような作用効果を得ることができる。第1に、クレーン制御装置8は、予めコンテナ36の重量を知ることができる。このため、この重量情報をもとに、必要最低限の電力量(必要電力量W)を算出することができる。これにより、エンジン2の回転数を必要最低限に抑えることができる。
【0056】
特に、コンテナ36の重量が軽い場合は、主機6が必要とする電力量が小さくなる。このため、従来の最大回転数から回転数を下げる方法に比べ、電源装置10のエネルギー効率を向上することができる。
【0057】
第2に、コンテナ36を吊上げてから、エンジン2の回転数を徐々に下げていく制御を行う場合、コンテナの重量がわかっているため、回転数を従来よりも早い段階で落とすこ
とができる。つまり、従来は必要電力量(消費電力量)が低下したことを、電圧低下等で検知し、この情報をもとに、エンジン回転数の制御を行っていた。これに対して、本発明では、予めコンテナ36の重量がわかっている。このため、この重量情報とコンテナ荷役の作業のパターン(運転パターンマップ)から、必要電力量が低下するタイミングを予測して、エンジン回転数を下げることができる。
【0058】
第3に、OCR装置12を利用する構成により、コンテナターミナル管理システム15が有しているコンテナ情報と、実際にクレーン1が荷役するコンテナ36が異なっていた場合、つまり、コンテナ36が前段階の荷役作業にて誤って行われた場合、コンテナ36に印字した識別番号から、この誤りを検知することができる。
【0059】
この場合は、車載端末9の有するコンテナ情報の中から、OCR装置12で読取った識別番号を抽出し、正しいコンテナの重量情報を得ることができる。つまり、クレーン1は、荷役対象としているコンテナ36の重量情報を、正確に取得することが可能となる。
【0060】
次に、クレーン1でコンテナ36を荷役する場合の電源装置10の制御を説明する。図5に、クレーン1で、コンテナ36を地表面から一定の高さまで吊上げる荷役動作を例として、クレーン1の巻上速度V(m/sec)及び必要電力量W(Ws)と、経過時間T(sec)の関係を示す。
【0061】
破線26は、巻上速度Vの変化を示している。これは、クレーン1がコンテナを把持し、巻上速度を加速し(加速領域21)、巻上速度Vが最高速度に達すると速度を維持し(定速領域22)、コンテナの到達点に向けて減速を行い(減速領域23)、到達点で停止する様子を示している。
【0062】
また、二点鎖線24Aは、必要電力量Wの変化を示している。ここで、必要電力量W(Ws)とは、破線26に示すようにクレーン1を運転した際に、必要となる電力量を示す。図5に示す様に、コンテナを地切りする際に、クレーンのドラム33に最も大きな負荷がかかり、必要電力量Wが急激に増大する。その後は、加速領域21から定速領域22、減速領域23と、順に必要電力量Wが低下する。
【0063】
図6に、必要電力量W(Ws)及び最大供給電力Wmax(Ws)と、経過時間T(sec)の関係を示す。二点鎖線24Aは、必要電力量Wの変化を示している。
【0064】
また、一点鎖線25Yは、従来のエンジン回転数制御を行った場合の最大供給電力量Wmaxの変化を示している。ここで、最大供給電力量Wmaxとは、電源装置で発電する電力量を示しており、エンジン回転数の関数として与えられる。
【0065】
一点鎖線25Yに示す様に、クレーンの荷役開始と共に、電源装置のエンジンの回転数は最大まで上昇する。その後、この制御は、必要電力量Wを電圧変化等で検知しながら、エンジン回転数を下げていく。
【0066】
図7に、コンテナの重量が軽い場合の必要電力量W(Ws)及び最大供給電力Wmax(Ws)と、経過時間T(sec)の関係を示す。二点鎖線24Bは、コンテナの重量が軽いなど、主機の負荷が小さい場合の必要電力量Wの変化を示している。
【0067】
なお、図6に示した必要電力量Wは、コンテナ重量が最大の場合(例えば50ton)である。これに対して、図7に示した必要電力量Wは、コンテナ重量が小さい場合(例えば10ton)である。
【0068】
また、一点鎖線25Yは、従来のエンジンン回転数制御を行った場合の最大供給電力Wmaxの変化を示している。一点鎖線25Yに示す様に、クレーンの荷役開始と共に、電源装置のエンジン回転数は最大まで上昇する。そのため、荷役作業の初期段階において、電源装置は必要以上の電力を供給してしまう。つまり、コンテナの重量がわからないため、コンテナ重量が最大であることを前提に発電を行なっている。
【0069】
図8に、コンテナの重量が軽い場合の必要電力量W(Ws)及び最大供給電力Wmax(Ws)と、経過時間T(sec)の関係を示す。実線25は、本発明で提案している制御方法を採用した場合の最大供給電力Wmax(Ws)の変化を示している。実線25に示す様に、クレーンの荷役開始と共に、電源装置のエンジンの回転数は、コンテナ重量に応じた回転数(目標エンジン回転数)まで上昇する。このため、従来の制御方法(一点鎖線25Y)に比べて、無駄の少ない電力供給を行うことができる。なお、斜線に示す部分は、従来の制御方法から本発明の制御方法に変更した場合、削減することのできるエネルギー量を示している。
【0070】
つまり、演算ステップ(S30)の制御により、荷役を開始する初期段階における最大供給電力量Wmaxを適切に抑制することができる。また、予測制御ステップ(S40)により、必要電力量Wの変化にほぼ沿う形で、最大供給電力量Wmaxを制御することができる。
【0071】
その結果、極めてロスの少ない電源装置の制御が可能となる。また、省燃費で、且つ排気ガス中の有毒物質を削減したエンジンの運転を制御することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 クレーン
1A 門型クレーン
1B 岸壁クレーン
2 エンジン
3 発電機
6 主機
8 クレーン制御装置
9 車載端末
10 電源装置
15 コンテナターミナル管理システム
W 必要電力量
Wmax 最大供給電力量
D1 コンテナ情報
S30 演算ステップ
S40 予測制御ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上輸送用コンテナを荷役するコンテナターミナルで使用するクレーンの運転方法において、
前記クレーンが、エンジンと発電機からなる電源装置と、少なくとも前記エンジンの回転数を制御するクレーン制御装置と、前記コンテナを荷役する主機を有しており、また、前記コンテナターミナルが、前記コンテナの少なくとも位置情報及び重量情報を管理するコンテナターミナル管理システムを有しており、
前記クレーンが、前記コンテナターミナル管理システムから、荷役対象であるコンテナの重量情報を含むコンテナ情報を受信するデータ受信ステップと、
前記コンテナの重量情報をもとに、前記主機が必要とする必要電力量を算出する必要電力算出ステップと、
前記必要電力量から前記エンジンの目標回転数を算出する目標エンジン回転数算出ステップと、
前記エンジンの回転数を、前記目標エンジン回転数にあわせると共に、前記コンテナの荷役を開始するステップを有することを特徴とするクレーンの運転方法。
【請求項2】
前記クレーンが、OCR装置を有しており、
前記OCR装置が、前記コンテナの本体に表示しているコンテナ識別番号、又は前記コンテナを運搬するトレーラに表示しているトレーラ識別番号を読取るOCRステップと、
前記OCR装置で読取ったコンテナ識別番号又はトレーラ識別番号と、前記データ受信ステップで得たコンテナ情報を比較するコンテナ確認ステップを有することを特徴とする請求項1に記載のクレーンの運転方法。
【請求項3】
前記クレーン制御装置が、前記コンテナの重量情報及び前記クレーンの運転パターンマップから、前記エンジンの回転数を制御する制御パターンマップを生成し、前記制御パターンマップをもとに、前記エンジンの回転数を制御する予測制御ステップを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーンの運転方法。
【請求項4】
海上輸送用コンテナを荷役するコンテナターミナルで使用するクレーンの運転制御装置において、
前記クレーンが、エンジンと発電機からなる電源装置と、少なくとも前記エンジンの回転数を制御するクレーン制御装置と、前記コンテナを荷役する主機を有しており、また、前記コンテナターミナルが、前記コンテナの少なくとも位置情報及び重量情報を管理するコンテナターミナル管理システムを有しており、
前記クレーンが、前記コンテナターミナル管理システムから、荷役対象であるコンテナの重量情報を含むコンテナ情報を受信する車載端末と、
前記コンテナの重量情報をもとに、前記主機が必要とする必要電力量を算出し、前記必要電力量から前記エンジンの目標回転数を算出し、前記エンジンの回転数を前記目標エンジン回転数にあわせる制御を行う前記クレーン制御装置を有していることを特徴とするクレーンの運転制御装置。
【請求項5】
前記クレーンが、前記コンテナの本体に表示しているコンテナ識別番号、又は前記コンテナを運搬するトレーラに表示しているトレーラ識別番号を読取るOCR装置を有しており、
前記クレーン制御装置が、前記OCR装置で取得したコンテナ識別番号又はトレーラ識別番号と、前記車載端末で受信した前記コンテナ情報を比較するように構成したことを特徴とする請求項4に記載のクレーンの運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−73847(P2011−73847A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228327(P2009−228327)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)