説明

クレーン用の鋼ロープを案内し、保持し、緊張させるための自動化システムと方法

コンテナを積み込むためのワイヤロープの固定には大きな応力がかかり、ねじ込み式の丈夫なグリップを使用することが必要となる。現在、ロープを固定するためにこのようなクレーンに取り付けられているシステムは固定された、ねじ込み式のグリップである。自動的かつ即時的に動作(遠隔的に制御)できる楔機構に基づく、はるかに多用途で柔軟性の高いシステムが提案される。アセンブリは、スライドするクランプと、クランプの駆動装置と、必要な付加的案内手段と、ロープをピンと緊張させるための緊張装置を備える。このソリューションにより、以下のことが実現する。ジブを吊り上げた状態でロープ切替を実行することで、船の操作と隣接するクレーンの操作が可能となり、ロープ切替時間の短縮ができ、固定要素(クランプ)と緊張装置をロープ端部の長さ部分をピンと緊張させるための機構として使用でき、スプレッダの位置ずれが発生しても、瞬時に修正可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナの運搬および移動の産業分野において、クレーン用の鋼ワイヤロープに関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ運搬クレーンの吊り荷用ロープは、吊り荷の巻き上げ、荷揚用のジブの巻き上げ、および最も頻繁に改良が行われる荷移動用トロリを平行移動させる役割を担う。このロープは太いゲージの、継ぎ目のない非常に長いロープで、大きな荷重を受けるため、定期的に新しいものと交換しなければならない。ロープは、固定された楔機構端部と、固定されねじ込まれたグリップまたはクランプとによって、しっかりとアンカリング(固定定着)される。
【0003】
ロープの切替作業あるいは吊り荷の巻き上げ作業は、現在、何時間も要し、クレーンの荷揚用のジブを水平位置にした状態で行われる。この状況は、隣接する船やクレーンの操作の障害となる。つまり、ロープ切替作業が続く間、ドック入れの操作やクレーン位置の変更ができない。
【0004】
ロープは、吊上用スプレッダ(係合要素)がコンテナと完全に整列し、水平になるようにピンと緊張させなければならない。ロープのアンカリングは位置が固定されているため、この作業は多くの時間と労力を費やす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロープ切替作業には、長時間クレーンを不動状態とする必要がある。この作業中、すべてのロープのアンカリングを解放し、ロープがクレーン内をできるだけ通過しやすくなるようにしなければならない。
【0006】
ドック内のクレーンと荷揚用ジブの位置によっては、その他の作業、つまり船の操作と他のクレーンの位置決めの障害となる問題が生じ得る。
【0007】
荷揚用ジブの端部にロープをアンカリングするには、クランプを分解し再組立するための装置と工具が必要となる。この領域には人員が入るこむ余裕はほとんどない。なぜなら巻上げ等によって何度も強打され、落下物による問題や、高所での作業に固有のその他の危険にさらされるからである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
自動的に、即時的に、瞬時に、そして遠隔制御的な作動を可能とするシステムを提案する。
【0009】
アセンブリ(図1)は、スライドするクランプ(図2)、これらのクランプの駆動装置)、付加的な案内システム、およびロープをピンと緊張させる自動化緊張装置を含んで構成される。
【0010】
クランプ(図2)は、ロープに損傷を与えることなく十分な圧力を加えることができ、それらが支えるロープを歪ます力よりずっと小さな力で駆動させることができる自己閉塞型となるのに適した形状と角度とを有する楔機構を基本とする。クランプ駆動装置が故障しても、ロープと楔部との間の摩擦によって楔部は閉塞した状態のままとなる。
【0011】
自動化操作と、荷揚用ジブの直立姿勢は、ロープの走りをより良く案内することが必要となる。すると、緊張装置によって溝付滑車にかかる力が大きくなり、したがって、この溝付滑車とその支持軸を強化しなければならなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
提案するシステム(図1)では、ロープの各端部に自動化クランプが必要である。緊張装置は1つだけでもよいが、独立した緊張装置としてもよく、クランプと共通の駆動装置を用いる別の設計とすることも可能である。
【0013】
このシステムは、双方のロープのそれぞれの端部に1つずつの合計4つのクランプを備え、各々が駆動装置を有する。クランプは2つのスライド式楔部と、剛体で構成される筐体によって形作られる。駆動装置は、楔部を閉塞し、あるいは開放できるように大きさが合わせられる。
【0014】
溝付滑車であるシーブは、ロープを案内し、クランプが横向きの応力を受けるのを防止し、またロープが擦れ、もしくは強く折れ曲がるのを防止する。さらに、形成された弛み部分が、ロープをピンと緊張させ、吊上用スプレッダを水平化にするのに役立ち、緊張装置および対応するクランプの選択的な閉塞によってロープの走りを増減する。
【0015】
図1は、装置の配置状態を示す図である。ここでは、共に流体圧シリンダの手段による緊張装置と4つのクランプの直接的で直線的な配置が示されている。これは1例であって、さまざまな可能な形態(空気圧シリンダ、ソレノイド、電気モータ、ウォームギアトランスミッション等)があることを明言すべきである。
【0016】
溝付滑車は、付加的な案内手段とともに、双方のロープが平行な平面上に保持され、負荷を受けたときに相互に擦れ合うことがない位置に配置されている。
【0017】
緊張装置は、比較的広いロープの走り範囲を有し、その効果は、図1に示されるように、全体から見て内側である緊張装置側の方に配置される溝付滑車の設置によって増大する。
【0018】
図1において全体から見て外側であるクランプ側に配置される溝付滑車は、ロープとクランプの軸の間の同軸性を維持する。
【0019】
提案されたシステムの直接的なバリエーションは、構成要素の配置の順番を変更すること、クランプの数または緊張装置の数を変更すること、あるいは緊張装置のロープ緊張方向を反対方向にすること、および溝付滑車、ボルトもしくはその他の適当な要素によって案内を持続すること等によって得られる。
【0020】
図2は、図1の詳細図で、開放位置にあるクランプの作用の可能性を示す図である。筐体の内部に、2つの独立した楔部があり、これらは筐体の傾斜平面上をスライドする。楔部の駆動装置は流体圧シリンダであり、そのロッドは、クランプの軸の近くに配置され、曲げ応力が最小限にされている。
【0021】
筐体は、その側壁を開いてしまう傾向のある大きな垂直方向の力に耐えなければならないため、非常に頑丈である。図2には、相互にネジ留めされた2枚の圧延平板を使った形態が示されているが、これ以外に多くの可能性がある。
【0022】
これらの図は、具体的な実施例に対応するものである。5つの駆動装置は流体圧シリンダであり、それぞれが同一の流体回路の部分を形作っている。流体圧ステーション(図示せず)は、同じ領域に配置されている。
【0023】
移動可能な複数の楔部のそれぞれは、2つの明確に異なる壁面を有する。外壁部は、筐体上をスライドし、摩擦を低減するように調整されている。内壁部はロープを固定し、そこには溝形状が機械加工され、2つのクランプが閉じた形が六角形となり、ロープに4つの領域で圧力がかかることで、ロープの損傷を与えないようにされている。この内壁部には凹凸があり、ロープを確実に把持し、駆動装置の誤動作が発生した際に、セルフロックできるようになっている。
【0024】
筐体には、2つの楔部が横方向に相互に近づくように変位するときに、ピンが2つの楔部をそれぞれ移動できるように、ピンを受け入れる特別な溝がある。
【0025】
複数の溝付滑車は、付加的な案内手段とともに、双方のロープが平行な平面に維持され、負荷を受けたときに相互に擦れ合う可能性がないように配置されている。滑車のフレームとその支持軸は、ロープの全負荷(クランプが完全に開放されたと仮定したときの)に耐えられように計算されている。
【0026】
経済性、スペースおよび簡潔さの理由で、この実施例では1つの緊張装置を用いているが、これは提案されるシステムの本質的特徴ではない。
【0027】
要素のほとんどすべてが大きな負荷を受け、厳しい気象条件の要素にさらされる。したがって、これらはワイヤロープを含め、適当な特徴を有する鋼で設計される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】装置の配置状態を示す図である。
【図2】図1の詳細図で、開放位置にあるクランプの作用の可能性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドする楔機構を備えるクランプによるコンテナ運搬クレーンのロープの固定。
【請求項2】
前記クランプの自動化。
【請求項3】
複数のロープをピンと緊張させるための緊張装置とこれに対応する溝付滑車と、これらを案内し、前記クランプまたは緊張装置への横向きの応力を伝達の防止。
【請求項4】
前記提案されたものに類似した機構と歯車を使って行うことができる巻き上げられた荷揚用ジブを用いるロープ交換作業。
【請求項5】
前記提案されたクランプの使用によって生じるロープを固定する領域で行われる以下の作業の自動化であって、
ロープの固定または解放の作業、
ロープをピンと緊張させる作業、
吊上用スプレッダの水平化または位置合わせ作業を含む作業の自動化。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−528964(P2009−528964A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557773(P2008−557773)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/ES2006/000423
【国際公開番号】WO2007/101893
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(507374608)マエリスク エスパーニャ ソシエダッド アノニマ (3)