説明

クレーン用車輪ユニット及びこれを用いた天井クレーン

【課題】走行レールに沿って巻上機を搭載した前後2つの横行フレームを移動する際に、円滑で安定した走行が可能であり、同時にその構造が小型コンパクトであるクレーン用車輪ユニットを提供する。
【解決手段】所定間隔で配置された左右一対の走行レールに沿って巻上装置を移動する車輪ユニットあって、上記巻上装置を搭載した揚重フレームに連結されたサドルフレームと、上記サドルフレームに軸承された複数の走行車輪と、上記走行車輪を駆動する駆動手段とを備える。上記サドルフレームはそれぞれ上記揚重フレームに連結され上記走行レールに沿って所定長さを有する複数のフレーム部材で構成し、この複数のフレーム部材は、(1)それぞれに上記走行レールに沿って前後に複数の走行車輪を軸承し、(2)上記走行レールに沿って走行方向前後に直列となるように配置し、(3)互いに前後隣接する端部がレール踏面に対して上下方向に回動可能に軸連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天井クレーンなどの車輪ユニット及び天井クレーンに係わり、左右一対の走行レールに沿って前後2条の横行レールに担持した揚重機を移動する走行車輪構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に巻上装置としてのクレーンは用途に応じて種々の形式のものが知られ、各種建造物の天井に据え付けられる天井クレーンは広く知られている。このような天井クレーンは所定の作業エリアを縦走する走行レールが左右一対配置され、この左右の走行レールにガーダ(梁;girder)を車輪ユニットで走行可能に取付けている。そしてこのガーダに敷設された横行レールに沿ってトロリーを装架し、このトロリーにホイストなどの巻上装置(巻上げ機など)を装備している。従って巻上装置を装備したトロリーは走行レールに沿ってX方向に縦走し、横行レールに沿ってY方向に移動することによって作業エリアのX−Y方向の任意位置に運搬物(重量物)を搬送するクレーン構造として知られている。
【0003】
従来、このような天井クレーンとしては例えば特許文献1に開示されているように左右一対の走行レールに車輪ユニットを介してガーダを移動自在に取付け、このガーダに敷設した横行レールにトロリーを位置移動可能に装着している。そしてこのトロリーに巻上げ機を搭載している。従って巻上げ機に吊下した運搬物の重量はトロリーとこれを搭載したガーダに支持され、このガーダは車輪ユニット(一般にサドルユニットと呼ばれる)を介して走行レールに支えられることとなる。
【0004】
また、上述の横行フレームを、距離を隔てて前後に並設した2つのレール部材(ガーダ)で構成する所謂ダブルレール式トロリー構造が例えば特許文献2に開示されている。同文献には前後適宜間隔に配置した2つのレール部材に跨るようにトロリーを装着し、この2つのレール部材(ガーダ)を左右一対の走行レールに車輪を装備したサドルで走行可能に支持するクレーン構造が提案されている。このようなダブルレール式クレーン構造ではより大重量の運搬物の懸吊が可能であり、また運搬物の重量を分散することにより装置構成をより小型・コンパクトにすることが出来る特徴が知られている。
【0005】
そこで上記ガーダを支持する車輪ユニットは運搬物の重量を支えるのと同時に走行レール上を円滑に転動することが要求される。この為、車輪ユニットは複数の車輪とこの各車輪に重量を均等に分配するフレーム構造(サドルフレーム)とで構成されている。前掲特許文献1の車輪ユニットは走行レールに沿って前後複数の車輪で構成され、この前後の車輪は走行方向に配置されたビーム形状のフレームに軸支持されている。また特許文献2には前後2つの横行レールそれぞれに配置された複数の車輪でそれぞれビーム形状のフレームに軸支持されている。
【0006】
ところが建造物に据え付けられる走行レールは運搬物の重量或いは温度環境の変化などで撓んで歪曲することがある。この走行レールのレール踏面が歪曲すると前後に複数配列された走行車輪には偏った重量負荷が及ぶこととなり、走行車輪の故障、耐久性に問題を生ずる。そこでこのような走行レールの歪曲によって走行車輪に及ぶ重量負荷の偏りを防ぐために、従来例えば特許文献3のボギー構造が採られている。同文献にはガーダに揺動自在に軸支持したピボットフレームを設け、このピボットフレームに前後複数の車輪を軸支持した車輪フレームを支持している。同公報のものは第1及び第2の2つのピボットフレームをそれぞれ上下揺動自在に積み重ね、最下段のピボットフレームに前後複数の車輪を軸承した車輪フレームを支持している。
【特許文献1】特開平6−263379号公報(図1)
【特許文献2】特開平8−12262号公報(図1)
【特許文献3】特開2002−241076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように運搬物を揚上支持する横行フレームを前後2つの横行レールで構成するダブルレール(ガーダ)走行式クレーン構造は、装置全体を小型でコンパクトに構成することが出来ることと、また大重量の運搬物を運搬することが出来る特徴が知られている。この為、例えばクリーンルームなど限られた空間内にクレーンを装備する場合、或いは特に大重量の運搬物を懸吊するクレーン構造として多用されている。
【0008】
ところがこのようなクレーン構造では並行する第1及び第2のガーダを前掲特許文献2のように単一のサドルフレームに連結して支持すると前後のガーダの重量が複数の車輪に偏って作用し、円滑な走行の妨げ、或いは走行車輪の故障、耐久性に問題を生ずる。これと同様に上述のダブルレール構造以外のクレーン構造であっても走行車輪の車輪径を小さく構成して装置設備の小型化を計ると重量を支えるために車輪数を多く配置しなければならない。これは揚重フレームを構成するガーダを支持する走行車輪の耐久性は外周径と車軸径が大きいほど耐重量特性に優れるが、逆に装置の大型化、特に高さ寸法の大型化を招く。
【0009】
このように走行レールに沿って多数の車輪列を配置すると走行レールの歪曲によって各車輪に及ぶ荷重負荷に偏りが生ずる。このような場合、従来は前掲特許文献3に開示されているようなボギー式懸架構造が採られている。このボギー式懸架構造では、車輪を支持(軸承)するサドルフレームとガーダとの間に天秤状のピボットフレームを1段或いは数段に渡って配置しなければならない。これによって装置設備の大型化、特に揚程方向の高さ寸法が高くなる問題が生ずる。つまり前後複数の車輪列を走行レールの歪曲に応じてピボッタリーに上下動するためのフレームをサドルフレームの上に数段(文献3のものは2段)配置しなければならない。これによって走行レールと巻上機を搭載したトロリーとの間に必要以上の高さ寸法を要し、既存の建造物或いはクリーンルームなどの限られたスペースに採用する際には大きな障害となる。
【0010】
そこで本発明者は前後に配置したダブルレール走行式のクレーン構造に於いて、第1のガーダに付与される重量負荷と、第2のガーダに付与される重量負荷をそれぞれ個別のサドルフレームで支持することによって重量負荷のバランスを図り、この前後2つのサドルフレームを走行レールの走行面に対して上下動可能に軸連結することによって個々の車輪が独走することなく歪曲したレール面であっても均等にフィットして円滑に回転し、これによって装置設備の小型コンパクト化と走行の安定性が得られるとの着想に至った。
【0011】
本発明は走行レールに沿って巻上機を搭載した前後2つの横行フレームを移動する際に、円滑で安定した走行が可能であり、同時にその構造が小型コンパクトであるクレーン用車輪ユニットの提供をその主な課題としている。更に本発明は既存の建造物或いはクリーンルームなどの限られたスペースに設置することが可能な天井クレーンの提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記課題を解決するため以下の構成を採用したものである。所定間隔で配置された左右一対の走行レールに沿って巻上装置を移動する車輪ユニットであって、上記巻上装置を搭載した揚重フレーム(天井クレーにおけるガーダ12)に連結されたサドルフレーム(30,40)と、上記サドルフレームに軸承された複数の走行車輪(32、42)と、上記走行車輪を駆動する駆動手段(M3、M4)とを備える。上記サドルフレームはそれぞれ上記揚重フレームに連結され上記走行レール(11)に沿って所定長さ(L1)を有する複数のフレーム部材で構成し、この複数のフレーム部材は、(1)それぞれに上記走行レールに沿って前後に複数の走行車輪(32、42)を軸承し、(2)上記走行レールに沿って走行方向前後に直列となるように配置し、(3)互いに前後隣接する端部(30Z、40Z)がレール踏面(11y)に対して上下方向に回動可能に軸連結する。
【0013】
上記揚重フレームは、上記走行レールの走行方向前後に距離を隔てて並設された第1の揚重フレーム(12a)と第2の揚重フレーム(12b)で構成し、上記サドルフレームは上記第1の揚重フレームに連結された第1のフレーム部材(30)と上記第2の揚重フレームに連結された第2のフレーム部材(40)で構成する。
【0014】
上記複数のフレーム部材は互いに隣接する端部に設けられた略々同一径の軸穴に連結ピン部材で上記走行レールに沿って直列に連結し、この複数のフレーム部材は上記走行レールの走行面に対して上記連結ピン部材(45)を中心に上下方向に回動可能に連結する。
【0015】
上記複数のフレーム部材は互いに連結された第1及び第2の2つのフレーム部材(30、40)で構成し、この第1フレーム部材(30)と第2フレーム部材(40)には、それぞれに前列車輪(32a、32b、42a、42b)と後列車輪(32c、32d、42c、42d)を配置し、上記第1フレーム部材には最前列車輪(32a)に第1の駆動モータ(M3)が、第2フレーム部材には最後列車輪(42d)に第2の駆動モータ(M4)がそれぞれ連結配置される。
【0016】
上記複数のフレーム部材に配設された車輪は金属ホイールにゴム、合成樹脂などのライニングが施され、上記複数のフレーム部材に設けられた上記軸穴には合成樹脂のブッシュが装着される。
【0017】
本発明に係わる天井クレーンは、次の構成を採用する。所定間隔に配置された左右一対の走行レール(11a、11b)と、上記左右の走行レール間に架設されたガーダ(12a、12b)と、上記ガーダに敷設された横行レール(15a、15b)に沿って移動自在のトロリー(20)と、上記トロリーに搭載された巻上装置(25、26)とを備える。上記ガーダは上記走行レールに沿って前後に並設された第1ガーダ(12a)と第2ガーダ(12b)で構成し、この第1及び第2のガーダにはそれぞれに第1及び第2のサドルフレーム(30、40)を連結し、上記第1及び第2のサドルフレームは、(1)それぞれ上記走行レールに沿って所定の長さ(L1)を有するフレーム形状に構成し、(2)それぞれに上記走行レールに沿って前後に複数の車輪(32、42)が回動自在に軸承され、(3)上記走行レールに沿って走行方向前後に直列となるように配置し、(4)互いに前後隣接する端部(30Z、40Z)がレール踏面(11y)に対して上下方向に回動可能に軸連結される。
【0018】
上記第1のサドルフレームは上記第1のガーダに、上記第2のサドルフレームは上記第2のガーダにそれぞれボルトなどの固定手段で一体に取付ける。
【発明の効果】
【0019】
本発明は巻上機を搭載支持する揚重フレーム(天井クレーンにあってはガーダ)を複数のサドルフレームで連結支持し、この複数のサドルフレームを走行レールに走行方向前後に直列となるように配置し、各サドルフレームの隣接する端部をレール踏面に対して上下方向に回動自在に軸連結したものであるから、サドルフレームに軸承した複数の走行車輪は走行レールの踏面が歪曲していてもこれに倣うように上下動して前後の車輪に偏った荷重が及ぶ恐れがない。
【0020】
従ってサドルフレームに多数の車輪を前後に配列することが可能となり、車輪径の小型化を図ることが出来る。特に従来の前後複数の車輪を軸承したサドルフレームを天秤状のピボットフレームを介してガーダなどの揚重フレームに取付ける場合と比較するとその高さ寸法を著しく低減することが可能となり、クリーンルームなどの限られた作業スペースにクレーン装置をコンパクトに装備することが可能となる。
【0021】
更に本発明は走行レールの走行方向に前後2つのガーダを配置し、このガーダに巻上装置を搭載したクレーン構造に於いて第1及び第2のガーダにそれぞれサドルフレームを連結し、この各サドルフレームに複数の走行車輪を軸支持し、サドルフレームの隣接する端部を軸連結することにより、第1及び第2のガーダに搭載した巻上機とこれに懸吊した運搬物を安定した走行性で円滑に移送することが出来る。つまり巻上機を搭載した2つのガーダは個別のサドルフレームとこれに軸承した複数の車輪で走行レールに支持されるため、ガーダ相互間の寸法誤差、がたつきなどによってサドルフレームに偏った荷重が作用することがない。
【0022】
このように本発明は複数の車輪を軸承したサドルフレームを走行レールに沿って前後に直列に配置し、各サドルフレームの隣接する端部をレール踏面に対して上下方向に回動自在となるように軸連結したものであるから、走行レールが若干歪曲していてもこれに倣うように前後の各車輪は上下動して揚重物の荷重を均等に支えることとなる。これと同時に前後に複数配置される走行車輪の前後間隔は、互いに連結されたサドルフレームで堅固な状態で所定の姿勢と位置関係に保持されるため、直進性に優れ円滑で安定した走行が可能である。従って、従来のボギー式懸架構造のようにピボットフレームなどのバランス部材を設けることなく前後直列のサドルフレームを互いに連結して荷重負荷のバランスを得るものであるから、装置設備を小型コンパクトに構成することが出来、その為の構造もシンプルで安価に製造することが可能である。特にクリーンルームなどの揚程方向の寸法を小さく小型化することが出来る。
【0023】
更に、互いに連結したサドルフレームにそれぞれ配置された複数の車輪に、走行方向の最前列の車輪に第1の駆動モータを、最後列の車輪に第2の駆動モータをそれぞれ連結装備することによって操舵性に富んだ走行が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明の車輪ユニットを備えた天井クレーンの全体構成の説明図であり、図2は走行レールと横行レールのレイアウト構成(平面)の説明図である。図3及び図4は巻上機とこれを備えたトロリーの構成説明図である。図5乃至7は本発明に係わる車輪ユニット(サドルユニット)の詳細構成の説明図であり、図8はその動作状態の説明図である。
【0025】
[天井クレーンの構成説明]
まず後述する車輪ユニットAを用いた天井クレーンBの構成を図1に従って説明する。図1に示すように天井クレーンBは例えば建造物などの作業エリアに左右一対の走行レール11(11a、11b)を配置する。この走行レール11は例えば建造物の側壁などにフレーム部材を据え付け、このフレーム部材に敷設する。右走行レール11aと左走行レール11bとは略々水平面上に配置され、両レールのスパンLは等距離で互いに平行となるように配置されている。このように構成された左右の走行レール11にはガーダ(girder;梁)12が架け渡される。ガーダ12は1本の梁部材で構成しても良いが、大重量の運搬物を搬送する場合或いは小スペースの作業エリアに配置する場合には走行方向前後に一対のガーダでダブルレール構造に構成する。図2(a)及び(b)に示すガーダ12は第1ガーダ12aと第2ガーダ12bで構成し、両者は走行方向前後に所定間隔で平行に配置されている。そしてこのガーダ12は運搬物の重量に耐える強度寸法に構成され、容易に撓まないようになっている。装置構成によってはこのガーダ12には点検用の歩道を兼ねる歩道橋13が付設され、図示14は安全用の手摺り柵である。
【0026】
上記ガーダ12には後述するトロリー20を走行可能に支持する横行レール15が配置される。第1ガーダ12aに第1横行レール15aが、第2ガーダ12bに第2横行レール15bが敷設されている。そしてこの横行レール15a、15bは前述の右走行レール11aと左走行レール11bとの間に配置されている。従って図2(a)に示すX−X方向に走行レール11a、11bが、Y−Y方向に第1及び第2の横行レール15a、15bが敷設されることとなる。そしてこの横行レール15a、15bに沿って巻上機を搭載したトロリー20(後述する)が左右動可能(図1Y方向に移動可能)に支持される。
【0027】
[トロリーの構成]
次に図3及び図4に示すトロリーの構成について説明する。トロリー20は前述の横行レール15に沿って移動可能に支持される。この為、トロリー20は枠組フレーム(以下「ユニットフレーム」と云う)22と、これに回転自在に軸承された走行車輪21とから構成されている。図示の枠組フレーム22は図3(a)に示すように前述の第1ガーダ12aに設置される第1脚枠22aと第2ガーダ12bに設置される第2脚枠22bと、この両脚枠間に架橋支持された載置枠22cで構成されている。そして第1及び第2の脚枠にはそれぞれ走行車輪21が前後4輪ずつ回転自在に軸支持されている。各走行車輪21は図4(b)に示すように金属製のホイールの外周に樹脂、例えばウレタン樹脂、またはフッ素樹脂などでライニングされている。図示21aは車軸である。
【0028】
このように構成された枠組フレーム22は、その第1脚枠22aを前述の第1ガーダ12aに敷設した第1横行レール15aに、第2脚枠22bを第2ガーダ12bの第2横行レール15bにそれぞれの走行車輪21を介して設置されている。この各走行車輪21は第1横行レール15aと第2横行レール15bに載置支持され、走行車輪21は駆動車輪と従動車輪で構成され、駆動車輪には駆動モータ(以下「横行モータM1」という)が装備されている(図3(a)参照)。尚上記第1及び第2の脚枠22a、22bには上述の走行車輪21とは別に横行レール15a、15bの側面15yに係合するガイドコロ27(図6(a)参照)が例えば前後2個所に配置してある。このガイドコロ27a、27bは横行レール15a、15bの側面に係合支持されトロリー20を走行車輪21で左右動する際にその蛇行を防止する。
【0029】
そして上記ユニットフレーム22には主巻上機25と補助巻上機26が搭載されている。主巻上機(以下「メインホイスト」と云う)25は大荷重用の大容量に構成され、補助巻上機(以下「サブホイスト26」と云う)26は小荷重用の小容量に構成されている。巻上機25及び26の構成について説明すると、巻上機25(26)は、ケーシング25a(26a)内に駆動回転軸(不図示)が設けられ、この駆動回転軸に図示しないロードシーブが取付けられている。そしてロードシーブにはチェーン、ロープなどの牽引部材が巻回され、この牽引部材の先端には懸吊フック25x、26xが連結されている。また、駆動回転軸には減速歯車を介して巻上げモータM2が連結装備されている。そしてケーシング25a内にはブレーキ、リミットスイッチなどの電装部品が内蔵されている。
【0030】
上述のメインホイスト25とサブホイスト26とはユニットフレーム22の載置枠22cに固定して据え付けられている。従ってこれらのホイスト25、26は横行レール15に沿って図1Y方向に位置移動自在となり、横行レール15を敷設したガーダ12を介して走行レール11に沿って図1X方向に位置移動自在となり、X−Y方向の任意位置に移動することが可能となる。
【0031】
このようにメインホイスト25とサブホイスト26はトロリー20に据え付けられ、トロリー20の走行車輪21で第1及び第2のガーダ12a、12bに位置移動自在に支持され、各ホイストの懸吊フック25x、26xで運搬物を懸吊することとなる。そしてこのトロリー20は走行車輪21に付設された横行モータM1によって横行レール15に沿って左右動(図1Y方向)することとなる。尚本発明にあって必ずしもサブホイスト26をトロリー20に搭載する必要はなく、運搬物が搬送時に揺れる恐れのある場合に補助的にこれを懸吊するとき、或いは工具などを懸吊する場合に使用する。
【0032】
[車輪ユニットの構成]
上述の第1及び第2のガーダ12a、12bを走行レール11に位置移動可能に支持する車輪ユニットA(以下「サドルユニットA」という)について説明する。図5はこのサドルユニットAの正面図であり、図6はその要部拡大図であり(b)は走行車輪の駆動部を、(c)は走行レールへの設置係合部をそれぞれ示している。尚同図(a)は先に説明したトロリー20とガーダの係合部を示す。また図7(a)はサドルユニットAの平面構成を示し、(b)(c)は連結部の説明図である。
【0033】
そこで前述のように1本或いは2本のガーダ(揚重フレーム)を右走行レール11aと左走行レール11bに支持するサドルユニットAは次のように構成される。図示の第1及び第2のガーダ12a、12bを走行レール11に支持するサドルユニットAの構成について以下説明する。図5に示すように第1ガーダ12aには第1のサドルフレーム(フレーム部材)30が、第2ガーダ12bには第2のサドルフレーム40(フレーム部材)が固定ボルト31、41で連結固定されている。この第1及び第2のサドルフレーム30、40は、前記走行レール11a、11bに沿って所定長さL1を有する枠組みフレームで構成されている。この第1及び第2のサドルフレーム30、40にはそれぞれに走行レール11a、11bに沿う複数の走行車輪32、42が軸支持されている。
【0034】
つまり図7(a)に示すように第1及び第2のサドルフレーム30、40は側枠30a、30b及び側枠40a、40b間に車軸33、43が軸承され、この車軸33、43に走行車輪32、42が軸支持されている。図示のものは第1のサドルフレーム30に走行車輪32a、32b、32c、32dが、第2のサドルフレーム40に走行車輪42a、42b、42c、42dがそれぞれ軸支持されている。この4列構成の走行車輪32、42はそれぞれが同一平面に位置するように軸支されている。そして図7(a)左方向に移動する場合に第1のサドルフレーム30の最前列に位置する走行車輪32aには第1走行モータM3が減速ギアを介してその車軸に連結装備してあり、第2のサドルフレーム40の最後列に位置する走行車輪42dには第2走行モータM4が減速ギアを介して連結装備されている。この第1及び第2の走行モータM3、M4と走行車輪32、42との連結構造は図6(b)に示すように走行モータの出力軸に固定された減速ギアG0と車輪32,42の側部に固定された減速歯車G1で連結してある。
【0035】
そこで上述のように構成された第1のサドルフレーム30と第2のサドルフレーム40とは前記走行レール11に沿って前後に直列となるように配置され、これらに取付けられた走行車輪32a〜32dと42a〜42dがレール踏面11yに沿うように配置されている。そして第1のサドルフレーム30の端縁30zと第2のサドルフレーム40の端縁40zとは連結ピン部材45でレール踏面11yに対し上下方向に回動可能に軸連結されている。図7(b)(c)に拡大した状態を示すが、第1のサドルフレーム30に一体的に固着したブラケット34に軸穴34hが、第2のサドルフレーム40に一体化したブラケット44に軸穴44hが穿設され、両軸穴に合成樹脂等のすべり軸受けであるフランジ付きのブッシュ45vが嵌合され、ブッシュ45vの軸穴径と略々同一径の連結ピン部材45がブッシュ45vに貫挿されている。特に上記軸穴34hと44hとはそれぞれ車軸33、43と同じ方向に穿設され、連結ピン部材45でブッシュ45vを介して連結されている。従って図1X方向に示す第1及び第2のサドルフレーム30と40の相対位置は規制されているが、連結ピン部材45を軸に回動(屈曲)自在に連結され矢視方向(図7(b)参照)に蛇行するのを規制している。
【0036】
尚上記第1のサドルフレーム30と第2のサドルフレーム40には上述の走行車輪32、42とは別に走行レール11a、11bの側面に係合するガイドコロ36、46(図6(c)参照)が例えば前後2個所にそれぞれのサドルフレーム30,40に配置してあり、第1及び第2のガーダ12a、12bを走行車輪32、42で前後動する際にその蛇行を防止する。つまり各ガイドコロ36、46は走行レール11a、11bの側面に規制されるように係合されている(図5参照)。
【0037】
以上要するに走行レール11a、11bに沿って複数のサドルフレーム30、40が直列に配置され、この両サドルフレーム30、40の互いに隣接する端部は連結ピン部材45でレール踏面11yに対し上下方向(図1Z方向)にのみ回動自在に構成され、このレール踏面11yと直交する左右方向(図1Y方向)には回動しないように運動規制されている。この運動規制によって走行車輪32、42の直進性(X方向運動規制)が確保されるように構成されている。
【0038】
尚、図示の車輪ユニットAはクリーンルームで使用する場合に備えて、各走行車輪32a〜32d、42a〜42dはそれぞれ合成樹脂例えばウレタン樹脂などでコーティングされ、前記連結ピン部材45は合成樹脂製等のすべり軸受けであるブッシュ45vで軸支され金属などの摩耗粉が発生し難い構成となっている。
【0039】
次に図8(a)乃至(d)に従って上述の車輪ユニットAの動作について説明する。左右の走行レール11a、11bが前記第1及び第2のガーダ12a、12bに作用する運搬物の重量で撓んだ場合を図8(a)に示す。尚同図は説明を容易にするため誇大表現してあるが走行レール11は運搬物の重量で水平面から下側にU字状に歪曲することがある。この場合、第1ガーダ12aの荷重W1は第1のサドルフレーム30に作用し、第2ガーダ12bの荷重W2は第2のサドルフレーム40に作用する。これらの荷重W1,W2は前述の巻上機(メインホイスト)25の取付け位置が両ガーダの中心に位置するときには[(運搬物重量+トロリー重量)/2+ガーダ重量]となり、荷重W1とW2は略々等しくなる。この荷重W1は第1のサドルフレーム30の前輪32aと32bにその1/2が作用し、残り1/2が後輪32cと32dに作用する。
【0040】
このとき前輪32aと32bの一方がレール踏面11yから浮上すると全ての荷重が他方に作用する。このような荷重の偏りは第1及び第2のサドルフレーム30、40の前輪及び後輪全てにおいて同様となる。このとき本発明の車輪ユニットAは図8(b)に示すように連結ピン部材45を中心に第1サドルフレーム30と第2サドルフレーム40とがレール踏面11yに倣って屈曲するように変位する。これによって前輪・後輪、全ての車輪は略々等しい状態で走行レール11a、11bに接触して転動する。従って荷重W1は均等に走行車輪32a〜32dに分散支持され、同様に荷重W2は均等に走行車輪42a〜42dに分散支持される。従って走行レール11に縦列配置された複数の車輪には略々均等な荷重が作用するため、例えば車輪の1つが浮上して隣接する車輪に倍の荷重が作用することがない。また、各車輪はその車軸に支えられて円滑に転動し、過剰な摩耗、摩損を招くことがなく耐久性に富んだ車輪ユニットが得られる。
【0041】
尚、走行レール11が環境温度などの変化によって上方に迫り上がった場合にも図8(c)に示すように上述と同様の作用により、走行車輪32a〜32d及び42a〜42dは円滑な転動と、レール踏面11yに沿った直進性が得られ、同様に蛇行性においても不用意に蛇行することがない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係わる車輪ユニットを備えた天井クレーンの全体構成の斜視説明図である。
【図2】図1の装置に於ける走行レールのレイアウト説明図であり、(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図3】図1の装置に於ける巻上げ機とこれを備えたトロリーの構成説明図であり、(a)は上面図、(b)は走行車輪の拡大図である。
【図4】図1の装置に於ける巻上げ機とこれを備えたトロリーの構成説明図であり、(a)は正面図、(b)は走行車輪の断面図である。
【図5】図1のガーダを走行レールに位置移動可能に支持する車輪ユニット(サドルユニット)の全体説明図である。
【図6】図5に示す要部の拡大説明図であり、(a)はI部の拡大、(b)はII部の拡大、(c)はIII部の拡大説明図である。
【図7】図5のサドルユニットの構成説明図であり、(a)は平面状態の説明図、(b)は連結部の平面構成の説明図、(c)は連結部の正面構成の説明図である。
【図8】図5の装置に於ける動作状態の説明図であり、(a)は走行レールが上向きに湾曲した場合の走行状態の説明図であり、(b)はその要部の拡大説明図である。また(c)は走行レールが下向きに湾曲した場合の走行状態の説明図であり、(d)はその要部拡大説明図である。
【符号の説明】
【0043】
A 車輪ユニット(サドルユニット)
B 天井クレーン
11 走行レール
11a 右走行レール
11b 左走行レール
11y レール踏面
12 ガーダ
12a 第1ガーダ
12b 第2ガーダ
20 トロリー
15 横行レール
15a 第1横行レール
15b 第2横行レール
20a 枠組みフレーム
21 走行車輪
22 ユニットフレーム
25 主巻上機(メインホイスト)
26 補助巻上機(サブホイスト)
27 ガイドコロ
30 第1のサドルフレーム
40 第2のサドルフレーム
32(32a〜32d) 走行車輪
33 車軸
42(42a〜42d) 走行車輪
43 車軸
45 連結ピン部材
45v ブッシュ
M1 横行モータ
M3 第1走行モータ
M4 第2走行モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔で配置された左右一対の走行レールに沿って巻上装置を移動する車輪ユニットであって、
上記巻上装置を搭載した揚重フレームに連結されたサドルフレームと、
上記サドルフレームに軸承された複数の走行車輪と、
上記走行車輪を駆動する駆動手段と、
を備え、
上記サドルフレームはそれぞれ上記揚重フレームに連結され上記走行レールに沿って所定長さを有する複数のフレーム部材で構成され、
この複数のフレーム部材は、
(1)それぞれに上記走行レールに沿って前後に複数の走行車輪が軸承され、
(2)上記走行レールに沿って走行方向前後に直列となるように配置され、
(3)互いに前後隣接する端部がレール踏面に対して上下方向に回動可能に軸連結され、
ていることを特徴とするクレーン用車輪ユニット。
【請求項2】
前記揚重フレームは、前記走行レールの走行方向前後に距離を隔てて並設された第1の揚重フレームと第2の揚重フレームで構成され、
前記サドルフレームは上記第1の揚重フレームに連結された第1のフレーム部材と上記第2の揚重フレームに連結された第2のフレーム部材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクレーン用車輪ユニット。
【請求項3】
前記複数のフレーム部材は互いに隣接する端部に設けられた略々同一径の軸穴に連結ピン部材で前記走行レールに沿って直列に連結され、
この複数のフレーム部材は前記走行レールの走行面に対して上記連結ピン部材を中心に上下方向に回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーン用車輪ユニット。
【請求項4】
前記複数のフレーム部材は互いに連結された第1及び第2の2つのフレーム部材で構成され、
この第1フレーム部材と第2フレーム部材には、それぞれに前列車輪と後列車輪が配置され、
上記第1フレーム部材には最前列車輪に第1の駆動モータが、第2フレーム部材には最後列車輪に第2の駆動モータがそれぞれ連結配置されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載のクレーン用車輪ユニット。
【請求項5】
前記複数のフレーム部材に配設された車輪は金属ホイールにゴム、合成樹脂などのライニングが施され、
前記複数のフレーム部材に設けられた前記軸穴には合成樹脂のブッシュが装着されていることを特徴とするクレーン用車輪ユニット。
【請求項6】
所定間隔に配置された左右一対の走行レールと、
上記左右の走行レール間に架設されたガーダと、
上記ガーダに敷設された横行レールに沿って移動自在のトロリーと、
上記トロリーに搭載された巻上装置と、
を備え、
上記ガーダは上記走行レールに沿って前後に並設された第1ガーダと第2ガーダで構成され、
この第1及び第2のガーダにはそれぞれに第1及び第2のサドルフレームが連結され、
上記第1及び第2のサドルフレームは、
(1)それぞれ上記走行レールに沿って所定の長さを有するフレーム形状に構成され、
(2)それぞれに上記走行レールに沿って前後に複数の車輪が回動自在に軸承され、
(3)上記走行レールに沿って走行方向前後に直列となるように配置され、
(4)互いに前後隣接する端部がレール踏面に対して上下方向に回動可能に軸連結され、
ていることを特徴とする天井クレーン。
【請求項7】
前記第1のサドルフレームは前記第1のガーダに、前記第2のサドルフレームは前記第2のガーダにそれぞれボルトなどの固定手段で一体に取付けられていることを特徴とする請求項6に記載の天井クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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