説明

クロスヘッドの滑動シュー

【課題】多様な滑動表面材料の選択を行なうことのできるクロスヘッド滑動シューの提供。
【解決手段】クロスヘッド滑動シュー3はピストンロッド12(特に、2ストロークディーゼルエンジンのピストンロッド)を案内する。クロスヘッド2は、滑動シュー3に支持され、滑動路45に沿って動く。滑動シュー3を支承するための材料は支承板5として形成されている。支承板は予め成形された部材として、滑動シューの担持体として働く部分30に固定されている。支承板5と担持体30との間の結合は、少なくとも部分的に嵌合固定関係で行われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスヘッド滑動シュー、および、この種の滑動シューを有するディーゼルエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
往復動ピストン機械、特に、シリンダー空間がエンジン区画から離れており、2ストローク方式で作動する大型ディーゼルエンジンでは、ピストンロッドがその長手方向軸線に沿って直線的に案内される。ピストンロッドからエンジンの推力棒への力の伝達は、案内部材によって直線滑動路に沿って案内されるクロスヘッドを介して行なわれる。クロスヘッドの滑動シューと支持構造との間で作用する案内力の伝達では、大きい面圧力が生じる。適切な材料を組合わせるとともに潤滑を行なうことによって、滑動運動の摩擦力を最小限に維持し、材料の摩損を大きく防ぐことができる。既知のディーゼルエンジンでは、クロスヘッドの滑動シューは、鋳鉄の担持体と、ホワイトメタルの被覆によって形成される支承層または滑動表面層から成り、その滑動表面材料は担持体上に溶融状態で被着されて被覆となる。支承層と担持体材料との間の結合は、種々のパラメータに依存し、該パラメータは、被覆を行う間、制御状態に置かなければならない。このことは、どちらかと言うと問題があり、補修で形成される滑動面には、時として欠陥がある。さらに、鋳造法で被着される被覆材料に対する制約は不利である。その使用材料を、比較的大きな面積で滑動面に形成しなければならないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、多様な滑動表面材料の選択を行なうことのできるクロスヘッドの滑動シューを創出することである。この場合、滑動表面材料と担持体の間の結合は滑動力から生じる剪断力に耐えなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、ピストンロッド、とりわけ、滑動シューで支持されるクロスヘッド(2)が滑動路(45)に沿って動く2ストロークディーゼルエンジン1におけるピストンロッドを案内するクロスヘッドの前記滑動シュー(3)において、
前記滑動シュー(3)の支承用材料が支承板(5)として形成され、該支承板が予め成形された部材として、担持体である前記滑動シューの一部(30)に固定されており、前記支承板(5)と前記担持体(30)の間の結合が、少なくとも部分的に嵌合固定関係で行われ、前記担持体(30)と前記支承板(5)の間の結合が、更に、前記担持体と前記支承板との内に定着された複数の固定要素(51)によって行われ、これら固定要素が、特に前記支承板を前記担持体に締着するネジであることを特徴とするクロスヘッドの滑動シューにより達成される。
【0005】
クロスヘッドの滑動シューは、ピストンロッド(特に、滑動シューに支持されたクロスヘッドが滑動路に沿って動く、2ストローク・ディーゼルエンジンにおけるピストンロッド)を案内する役をする。滑動シューの支承材料が支承板として形成される。後者は、担持体である滑動シューの一部に予め作られた部品として固定される。この予め作られた部品と担持体との結合は、少なくとも部分的に嵌合固定(form lock)を利用して行なわれる。
前記担持体(30)の横向きの開放室と、該開放室内に設置した前記支承板(5)とで前記嵌合固定がなされても良い。前記担持体(30)の前記開放室が、前記滑動路(45)の方向にある2箇所の端部間に存在する細長い基礎面を有し、リブ状の室壁30aが前記2箇所の端部の各々に存在しても良い。堅固な媒体(530)が前記担持体(30)と前記支承板(5)の間の接触面(35、53)に施されており、前記媒体を介して前記嵌合固定が行われ、特に媒体が接着剤または鑞材から成っていて密封結合を作りだしてもよい。滑動表面(54)を潤滑するために、前記支承板(5)が、潤滑オイル(13’)用分配溝(52)と入口通路(52a)とを有してもよい。前記支承板5が、単一の同質材、複数の異質材、および/または、隣接配置された複数の部片から成っても良い。前記支承板(5)が、支承用として設けた前記滑動表面(54)における前記支承板(5)の材料が、低摩擦力、低磨耗条件下で、前記滑動路(45)から前記クロスヘッド(2)に案内力を伝達することのできる鉛青銅またはその他の好適材料であっても良い。可動用または定置用のディーゼルエンジンであり、上記に記載されたクロスヘッドで案内されるピストンロッド(12)と、クロスヘッド滑動シュー(3)とを有する、特に船舶推進用または発電用のディーゼルエンジンであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ディーゼルエンジンの部分模式図。
【図2】4つの滑動シューを有するクロスヘッドの斜視図。
【図3】本発明による滑動シューの部分的縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ディーゼルエンジン1が、部分断面図として模式的に図1に示されている。ディーゼルエンジン1は単流掃気式2ストロークエンジンである。本エンジンは、エンジン区画200から離れたシリンダー空間100内に複数のシリンダー10を有する。力は、シリンダ10内を上下動するピストン11から、ピストンロッド12、クロスヘッド2のクロスヘッド・スピゴット(spigot:差し込み口)20、推力棒(スラストロッド)21、クランクを経て、最後にエンジンのクランク軸201に伝達される。
クロスヘッド2は、直線滑動路の案内部材である滑動シュー3と軌条4とによって案内される。滑動シュー3を潤滑し、ピストン11を冷却するためのオイル13’が、オイル入口点13および連結供給管130を経て、クロスヘッドに供給される。
【0008】
図2に、クロスヘッド2の詳細が示されている。クロスヘッドの4つの滑動シュー3が、クロスヘッド2(したがって、ピストンロッド12)を軌条4の滑動路45に沿って直線的に、または、軌条4の方向に平行な経路に沿って直線的に案内する。本発明によれば、滑動シュー3を支承する材料は支承板5として形成される。支承板5は、担持体30である滑動シュー3の一部に、予め作られた単一体として取付けられている。支承板5と担持体30とは互いに接触する領域において、互いに補足し合う形状を有し、これによって、担持体30と支承板5とが嵌合固定関係をもって結合されている。具体的に説明すると、担持体の横方向に開いた室(凹所)内に支承板5を配置したて嵌合固定が行われる。前記室は、滑動路45の方向に位置する2箇所の端部間に存在する細長い基礎面を有する。リブ状(突条形態)の室壁30aが2箇所の端部それぞれに存在するが、上側の室壁30aのみが図示されている。長方形の平行六面体形状を有し、室壁30aを越えて僅かに突出する支承板5が前記室内に配置される。嵌合固定は、相補的なその他の輪郭、または部分的に相補関係となる輪郭によっても構成可能である。
【0009】
支承板5は、担持体材料の融点よりも高い融点を有する材料から成る鋳造品として製造される。鋳造品は、機械加工(例えば、研磨および/または被覆)によって、滑動面の摩擦特性を好適に修正できる。
【0010】
支承板5は、滑動面54を潤滑する潤滑オイル13’用の分配溝52と入口通路52aを有する。図3に示すように、担持体30と支承板5との間に、少なくとも部分的に密封結合を行う堅固な媒体530が接触面35と53上に施され、それによって嵌合固定が行われる。この媒体は接着剤または鑞合金であってよい。この種の媒体は、微少な動きを防ぐとともに、潤滑オイル13’の浸透に対する封止効果を発揮する。
【0011】
担持体30と支承板5との間の結合は追加的に、担持体30と支承板5とに定着される固定部材によって行なわれる。この固定部材の具体例は、支承板5を担持体30上に留めるネジ51である。この種の固定部材51は、担持体30が支承板5から浮き上がらないようにする。
【0012】
好適には、支承板5は単体品として形成されている(すなわち、均質な単一材料で形成されている)。しかしながら、例えば層状複合材のような複数の異種成分材料で支承板5を形成してもよい。また、隣接配置した複数部片で支承板5を形成してもよく、その場合、これらの部片は同質材でも、異質材でもよい。
【0013】
支承用滑動表面54における支承板5の材料は、例えば鉛青銅である。滑動路45と滑動表面54の間で、低摩擦力と低磨耗をもって案内力が伝達されるならば、その他の材料を使用してもよい。
【0014】
支承材料には多くの選択肢がある。すなわち、非鉄金属、アルミニウム、ホワイトメタル、鋳鉄、および、これらの金属の組み合わせ(例えば、アルミニウムで裏打ちされた鋳鉄)、さらには、セラミック材料、および/またはプラスチックス等を挙げることができる。
【0015】
滑動シューの公知のホワイトメタル被覆と比較して、本発明による滑動シューの支承板5は抵抗性を大きくすることができる。被覆を行なってもよく、支承板30の基板に対する被覆の結合は、ホワイトメタルよりも問題が少ない。抵抗性の向上により、支承板5のより高い面圧力が許容され、本発明による滑動シューのサイズを小さくすることができる。滑動シューが小さくなれば、エンジン区画200もまた小さくできる。
【0016】
クロスヘッドで案内されるピストンロッド12と、本発明によるクロスヘッド滑動シュー3とを備えたディーゼルエンジンは、可動用(特に、船舶推進用)としても、定置用(特に、発電装置用)としても使用できる。
【符号の説明】
【0017】
1 ディーゼルエンジン
2 クロスヘッド
3 滑動シュー
4 軌条
5 支承板
10 シリンダー
11 ピストン
12 ピストンロッド
13’ 潤滑オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッド、とりわけ、滑動シューで支持されるクロスヘッド(2)が滑動路(45)に沿って動く2ストロークディーゼルエンジン1におけるピストンロッドを案内するクロスヘッドの前記滑動シュー(3)において、
前記滑動シュー(3)の支承用材料が支承板(5)として形成され、該支承板が予め成形された部材として、担持体である前記滑動シューの一部(30)に固定されており、前記支承板(5)と前記担持体(30)の間の結合が、少なくとも部分的に嵌合固定関係で行われ、
前記担持体(30)と前記支承板(5)の間の結合が、更に、前記担持体と前記支承板との内に定着された複数の固定要素(51)によって行われ、これら固定要素が、特に前記支承板を前記担持体に締着するネジであることを特徴とするクロスヘッドの滑動シュー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122616(P2012−122616A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22714(P2012−22714)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2001−284999(P2001−284999)の分割
【原出願日】平成13年9月19日(2001.9.19)
【出願人】(501082602)ヴェルトジィレ シュヴァイツ アクチェンゲゼルシャフト (46)