説明

クロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッド

【課題】摺動板の強度増大を行うことなく摺動板とクロスヘッドとの間の面圧を低下させることができるクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドを提供することを目的とする。
【解決手段】ピストン棒の一端と連接棒の一端とを回動可能に接続するピン14と、架構に固定された固定端から自由端へ向かって立設された摺動板に対して摺動して往復動するシュー8と、ピン14とシュー8とを接続する連結板13とを備えたクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッド2において、シュー8の往復動方向における端部8c,8dは、中央部8eよりも薄い厚さの薄厚部8fとされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、船舶推進用の主機として、クロスヘッド型ディーゼル機関が用いられている(特許文献1参照)。このようなクロスヘッド型ディーゼル機関は、ピストン棒の一端と連接棒の一端とを回動可能に接続するクロスヘッドを備えており、このクロスヘッドは本体側に固定された摺動板上を摺動しつつ往復動する。クロスヘッドが摺動板上を往復動する際に、ピストンからピストン棒を介してクロスヘッドに力が伝達される。この伝達された力の横方向(摺動板へ向かう方向)への分力は、サイドフォースと称され、摺動板を変形する力となる。
この摺動板の変形を抑えるために、従来では、摺動板の板厚を増加させたり、摺動板の変形を抑えるリブを追加設置したりすることによって、摺動板の強度を増大させることとしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−336560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、摺動板の変形を抑えるために摺動板の強度を増加させると、コストの増大を招くだけでなく、摺動板とクロスヘッドとの間の面圧が上昇して潤滑油の油膜切れといった不具合を招いてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、摺動板の強度増大を行うことなく摺動板とクロスヘッドとの間の面圧を低下させることができるクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドは、ピストン棒の一端と連接棒の一端とを回動可能に接続するピンと、本体側に固定された一側端から他側端へ向かって立設された摺動板に対して摺動しつつ往復動する摺動部と、前記ピンと前記摺動部とを接続する接続部とを備えたクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドにおいて、前記摺動部の前記往復動方向における端部は、該端部以外の部分よりも薄い厚さの薄厚部とされていることを特徴とする。
【0007】
摺動部の往復動方向における端部を、端部以外の部分よりも薄い厚さとし、剛性を端部以外の部分よりも低下させることとした。これにより、摺動部の端部を介して摺動板に伝達される力(サイドフォース)を小さくすることができるので、摺動部と摺動板との間の面圧の局所的な上昇を抑えることができる。
【0008】
さらに、本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドでは、前記薄厚部は、前記摺動板とは反対側の面が除去された形状とされていることを特徴とする。
【0009】
摺動板とは反対側の面が除去された形状の薄厚部としたので、容易に加工することができる。また、摺動板に対する摺動面積を減らすことなく薄厚部が形成されるので、面圧を増大させずに薄厚部を形成することができる。
【0010】
さらに、本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドでは、前薄厚部は、前記摺動板側の面が除去された形状されていることを特徴とする。
【0011】
摺動板側の面が除去された形状の薄厚部としてもよい。
【0012】
さらに、本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドでは、前記接続部は、前記ピンから前記摺動部へと向かう力が該摺動部の中央から前記摺動板の前記他側端側へオフセットされた位置に加わるように設けられていることを特徴とする。
【0013】
ピンから摺動部へと向かう力(サイドフォース)が、摺動部の中央から摺動板の他側端側へとオフセットされた位置に加わるように接続部が設けられているので、摺動部におけるサイドフォースの作用点が摺動板の他側端側へとオフセットされることになる。これにより、摺動部は、摺動部の他側端側の端部が摺動板側に変位し、摺動部の一側端側の端部がピン側に変位するモーメントを作用点周りに受けることになる。したがって、クロスヘッドにサイドフォースが加わった場合には、摺動部は、摺動部の他側部側端部が摺動板側に変位するとともに、摺動部の一側端側の端部がピン側に変位することになり、しかも摺動部の一側端側の端部の変位が他側端側の端部の変位よりも大きくすることができる。この変位は、サイドフォースが加わったときの摺動板と同様の変形となる。なぜなら、摺動板は、一側端が本体側に固定されて他側端へ向かって立設されているため、クロスヘッドからサイドフォースが加わった場合には、一側端よりも他側端が大きく変位するように撓むからである。したがって、本発明のクロスヘッドは、サイドフォースが加わった場合に、摺動板の変形に対応するように摺動部を変位させることができるので、摺動部と摺動板との間の面圧を低下させることができる。
【0014】
さらに、本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドでは、前記接続部の前記摺動部側に位置する腕部が、前記摺動部の中央よりも前記摺動板の前記他側端側へオフセットされていることを特徴とする。
【0015】
接続部の腕部は、接続部の摺動部側に位置するので、この腕部の位置によって摺動部に加わるサイドフォースの作用点を決定することができる。本発明は、腕部を摺動部の中央よりも摺動板の他側端側へオフセットさせることとしたので、摺動部の他側部側端部を摺動板側に変位させるとともに、摺動部の一側端側の端部をピン側に変位させることができる。
なお、腕部によって作用点を決めるため、腕部の他に摺動部へとサイドフォースを伝達するリブ等を設けずに、腕部のみが摺動部に接続されていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドでは、前記接続部の前記摺動部側に位置する腕部の前記一側端側には、前記他側端に向かって形成された切欠部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
腕部の一側端側に、他側端に向かって形成された切欠部が設けられているので、サイドフォースの作用点を摺動部の中央よりも摺動板の他側端側へオフセットさせることができる。また、切欠部を起点とした腕部の変形を許容することができる。これにより、摺動部の他側部側端部を摺動板側に変位させるとともに、摺動部の一側端側の端部をピン側に変位させることが更に円滑に行われる。
なお、切欠部としては、繰り返し荷重による寿命低下を避けるためにR形状とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関は、上記のいずれかに記載されたクロスヘッドを備えていることを特徴とする。
【0019】
上記のいずれかのクロスヘッドを備えているので、摺動板の面圧を低下させることができ、摺動板の厚さを薄くでき、あるいは過剰な補強が不要となるので、全体重量を低下させてコストを下げることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドによれば、摺動板とクロスヘッドとの間の面圧を低下させることができるので、摺動板の増厚や補強を可及的に減らすことができ、クロスヘッド型ディーゼル機関の軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のクロスヘッド型ディーゼル機関を示した概略縦断面図である。
【図2】図1のクロスヘッド周りを示した拡大斜視図である。
【図3】クロスヘッドの側面図である。
【図4】図3のクロスヘッドの部分拡大平面図である。
【図5】図4に示したクロスヘッドの作用を示した図であり、(a)は摺動板に対するシューの位置関係を示した平面図、(b)は摺動板およびシューの変形を示した平面図である。
【図6】図3に示したクロスヘッドのシュー端部の作用を示した図であり、(a)はシューの摺動方向に対する面圧を示したグラフ、(b)はシュー端部の形状を比較例とともに示した部分拡大側面図である。
【図7】クロスヘッドの位置に対するサイドフォースの変化を示したグラフである。
【図8】摺動板の変形パターンを示した部分拡大斜視図である。
【図9】図4に示したクロスヘッドの変形例を示した部分拡大平面図である。
【図10】図3に示したクロスヘッドのシュー端部の変形例を示した部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態にかかるクロスヘッド型ディーゼル機関の概略が示されている。同図に示されたディーゼル機関は、典型的には船舶推進用の主機として用いられ、2ストローク1サイクルのユニフロー掃気方式とされている。
【0023】
このディーゼル機関は、下方に位置する台板20と、台板20上に設けられた架構(本体)5と、架構5上に設けられたジャケット21とを備えている。これら台板20、架構5及びジャケット21は、上下方向に延在する複数のテンションボルト(図示せず)によって一体的に締め付けられて固定されている。
【0024】
ジャケット21にはシリンダライナ22が設けられており、このシリンダライナ22の上端にはシリンダカバー23が設けられている。シリンダライナ22およびシリンダカバー23によって形成された空間内にピストン1が往復動可能に設けられている。ピストン1の下端には、ピストン棒24の上端が回動可能に取り付けられている。
【0025】
台板20はクランクケースとされており、クランク軸4が設けられている。クランク軸4の上端には、連接棒3の下端が回動可能に接続されている。
【0026】
架構5には、ピストン棒24と連接棒3とを回動可能に接続するクロスヘッド2が設けられている。すなわち、ピストン棒24の下端および連接棒3の上端がクロスヘッド2に接続されている。クロスヘッド2の両側(図1において左右)には、上下方向に延在する一対の摺動板6が架構5側に固定された状態で設けられている。
【0027】
図2に示されているように、摺動板6は、架構5の隔壁9に対して固定されている。すなわち、摺動板6は、その一側端である固定端6aが隔壁9に対して固定され、他側端に向かって立設されている。なお、他側端は、隔壁9に固定されていない自由端6bとされている。
摺動板6は、固定端6aにて隔壁9に対して固定されているだけであり、摺動板6の変形を防止するためのリブ等の補強部材は設けられていない。
【0028】
クロスヘッド2は、ピストン棒24の下端と連接棒3の上端とが回動可能に接続されたピン14と、摺動板6に対して摺動しつつ往復動するシュー(摺動部)8と、ピン14とシュー8とを接続する連結板(接続部)13とを備えている。
【0029】
図3には、ピン14の端面側からみたクロスヘッド2の側面図が示されている。同図に示されているように、シュー8は、ピン14の両側に1対設けられている。連結板13のシュー8側には、腕部13aが設けられている。この腕部13aは、図4に示されているように、シュー8と連結板13の本体部13bとを連結する。この腕部13aを介して、ピン14からのサイドフォースが摺動板6へと伝達される。なお、同図に示されているように、シュー8に対しては腕部13aのみが接続されており、腕部13a以外にシューに対して力を伝達する部材は設けられていない。
【0030】
図4に示されているように、腕部13aは、ピン14の軸線方向におけるシュー8の中央部(同図において左右方向における中央部)よりも、ピン14の軸線方向中央側(同図において左側)にオフセットして位置されている。より具体的には、腕部13aの中央軸線C1は、シュー8の中央軸線C2よりもピン14の軸線方向中央側にオフセット量d0だけオフセットされている。したがって、ピン14から腕部13aを介してシュー8に伝達されるサイドフォースの作用点Pは、シュー8の中央軸線C2からオフセットされた腕部13aの中央軸線C1上に位置することになる。したがって、サイドフォースが作用点Pに加わると、作用点P周りに図4において反時計回りのモーメントが発生し、シュー8の内側端部8bが摺動板6側(図4において下方)に変位するとともに、シュー8の外側端部8aがピン14の軸線側(図4において上方)に変位する。
【0031】
また、作用点Pをシュー8の中央からオフセットしたことにより、摺動板6の固定端6a側に位置するシュー8の外側端部(摺動部の一側端側の端部)8aと作用点Pとの距離d1が、摺動板6の自由端6b側に位置するシュー8の内側端部(摺動部の他側端側の端部)8bと作用点Pとの距離d2よりも大きくなる。これにより、サイドフォースによって作用点Pに力が加わった場合、外側端部8aの変位が内側端部8bの変位よりも大きくなる(後述する図5(b)参照)。
【0032】
一方、図3に示されているように、シュー8の往復動方向(同図において上下方向)における上端部8c及び下端部8dには、シュー8の上下方向における中央部8eよりも薄い厚さとされた薄厚部8fが設けられている。この薄厚部8fは、図3のようにクロスヘッド2を側面視した場合に、腕部13aの外形線13bと連続するようにテーパ状に形成されている。すなわち、薄厚部8fは、摺動板6とは反対側の面がテーパ状に除去されることによって形成されている。図6(b)には、シュー8の端部を拡大して示した図が示されており、同図から分かるように、腕部13aの外形線13bと薄厚部8fのテーパ部8gが連続して形成されている。この形状は、腕部13aからシュー8へと向かうサイドフォースの応力線に沿って形成されていることが好ましい。なお、同図には破線にて比較例の形状が示されている。この比較形状は一般的に用いられ、シュー8の端部の厚さが中央部と同等とされており、しかも、腕部13a’の外形線13b’がシュー8に接続される前にシュー8と同等の幅となっている。すなわち、比較例の形状は、シュー8の端部が本実施形態よりも大きな剛性を有する形状となっている。
【0033】
次に、図7及び図8を用いて、サイドフォースによる摺動板6の変形について説明する。
図7は、クロスヘッド2の位置に対するサイドフォースの変化を示しており、同図において、横軸はクロスヘッド2を介して摺動板に加わるサイドフォースの大きさを示し、縦軸はクロスヘッド2の往復動方向位置を示す。同図に示されているように、位置Z1及び位置Z2にてサイドフォースが極大値を示すようになっている。これは、位置Z1では、シリンダ内の燃焼空間での爆発によってサイドフォースが増大することを示し、位置Z2では、ピストン棒24(図1参照)が鉛直方向から傾いて摺動板6へ向かう方向(サイド方向)への分力が大きくなることを示す。このように、サイドフォースの大きさは、クロスヘッド2の往復動方向位置に応じて変化する。
【0034】
図8には、サイドフォースを受けた場合の摺動板6の変形パターンが2通り示されている。
変形パターンAは、サイドフォースを受けて摺動板6の自由端6bが固定端6aを支点として撓んで変形するパターンである。
変形パターンBは、シュー8が摺動板6を局所的に押圧し、摺動板6が局所的に凹変形されるパターンである。
以下に、変形パターンA及び変形パターンBのそれぞれに対して、本実施形態の作用効果について説明する。
【0035】
[変形パターンA]
本実施形態のクロスヘッド2は、変形パターンAに対して、図4に示した作用点Pのオフセットが有効に機能する。
すなわち、図5(a)に示されているように、サイドフォースが同図において右方から左方へと加わった場合、摺動板6は、2点鎖線で示すように自由端6bが左方へと変位する(変形パターンA)。
一方、本実施形態のクロスヘッド2は、腕部13aを自由端6b側にオフセットしているので、作用点Pがシュー8の中央軸線C2から自由端6b側にずれることになる。これにより時計回りのモーメントがシュー8に加わり、図5(b)に示すように、シュー8の外側端部8aをピン14側(図において右側)に大きく変位させることができる。このシュー8の変形は、摺動板6の変形パターンAと同様の変形となるので、摺動板6の変形に倣ってシュー8を変形させることになり、摺動板6とシュー8との間の面圧を低下させることができる。
【0036】
このように、本実施形態によれば、摺動板6の変形パターンAの変形を許容しつつ面圧を低下させることができるので、摺動板6の板厚増大や他のリブ等の補強部材の追加といった補強対策が不要となる。したがって、図2に示したように、摺動板6の自由端6bの変形を抑えるリブを廃止した構造を採用することができる。よって、クロスヘッド型ディーゼル機関の軽量化およびコストダウンを図ることができる。さらには、補強用リブを摺動板6および隔壁9(図2参照)に対して溶接する工程が省略できるので、製造期間および製造コストを大幅に削減することができる。
【0037】
[変形パターンB]
本実施形態のクロスヘッド2は、変形パターンBに対して、図3に示した薄厚部8fが有効に機能する。
すなわち、図6(b)に示されているように、シュー8の端部8c,8dに薄厚部8fを設けているので、この薄厚部8fの剛性はシュー8の中央部8eよりも低下している。これにより、シュー8の端部8c,8dを介して摺動板6に伝達されるサイドフォースを小さくすることができる。したがって、シュー8端部での面圧の局所的増大を回避することができる。例えば、破線で示した比較例のようにシュー8の端部の厚さを中央部と同様に一定とした場合には、シュー8の端部を介して伝達されるサイドフォースは、図6(a)の破線で示すように極大値を示す。これに対して、本実施形態では、図6(a)の実線で示すように、端部8c,8dの剛性を中央部8eに比べて低下させたので、シュー8の端部8c,8dの面圧を中央部8eと同様にほぼ一定とすることができる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、摺動板6の変形パターンBの変形を許容しつつシュー端部8c,8dの面圧を低下させて均一化することができるので、摺動板6の板厚増大や他のリブ等の補強部材の追加といった補強対策が不要となる。したがって、図2に示したように、摺動板6の自由端6bの変形を抑えるリブを廃止した構造を採用することができる。よって、クロスヘッド型ディーゼル機関の軽量化およびコストダウンを図ることができる。さらには、補強用リブを摺動板6および隔壁9(図2参照)に対して溶接する工程が省略できるので、製造期間および製造コストを大幅に削減することができる。
また、摺動板6とは反対側の面が除去された形状の薄厚部8fとしたので、容易に加工することができる。さらに、摺動板6に対する摺動面積を減らすことなく薄厚部8fが形成されるので、面圧を増大させずに薄厚部8fを形成することができる。
【0039】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図4に示した作用点Pのオフセット方法に代えて、図9に示したオフセット方法を採用することができる。すなわち、図9に示した腕部30は、その基端部30aでは腕部30の中央軸線がシュー8の中央軸線C2に一致するが、基端部30aよりもシュー8側に切欠部31が形成されている。この切欠部31は、摺動板6の固定端6a側(すなわちシュー8の外側端部8a側;同図において上側)に設けられ、摺動板6の自由端6b側(すなわちシュー8の内側端部8b;同図において下側)に向かって形成されている。このように切欠部31を設けることによって、作用点Pをシュー8の内側端部8b側にオフセットさせ、切欠部31における変形を許容することができる。
さらに、切欠部31はR形状とされているので、応力集中を緩和させることによって繰り返し荷重による寿命低下を避けることができるようになっている。
なお、図9に示した腕部30の基端部30aの中心軸線は、シュー8の中央軸線C2に一致した形状とされているが、基端部30aの中心軸線をシュー8の内側端部8b側にオフセットさせてもよい。
【0040】
また、図3に示した薄厚部8fは、シュー8の腕部13a側の面をテーパ状とした(図10(a)参照)が、これに代えて、図10(b)に示すように、シュー8の腕部13a側の面を矩形状としても良い。また、図10(c)に示すように、シュー8の腕部13a側の面をR形状としても良い。
【0041】
また、図10(d)に示すように、シュー8端部の摺動板6側の面を、摺動板6から離間するようにテーパ状に形成することによって薄厚部8fを設けることとしても良い。
さらに、図10(d)に示した薄厚部8fの摺動板6側の形状は、摺動板6の反対側の面(腕部13a側の面)を加工した図10(a)乃至(c)と組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0042】
2 クロスヘッド
3 連接棒
5 架構
6 摺動板
6a 固定端(一側端)
6b 自由端(他側端)
8 シュー(摺動部)
8a 外側端部(一側端側の端部)
8b 内側端部(他側端側の端部)
8c 上端(端部)
8d 下端(端部)
8e 中央部(端部以外の部分)
8f 薄厚部
13 連結板(接続部)
13a 腕部
14 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン棒の一端と連接棒の一端とを回動可能に接続するピンと、
本体側に固定された一側端から他側端へ向かって立設された摺動板に対して摺動しつつ往復動する摺動部と、
前記ピンと前記摺動部とを接続する接続部と、
を備えたクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッドにおいて、
前記摺動部の前記往復動方向における端部は、該端部以外の部分よりも薄い厚さの薄厚部とされていることを特徴とするクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッド。
【請求項2】
前記薄厚部は、前記摺動板とは反対側の面が除去された形状とされていることを特徴とする請求項1に記載のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッド。
【請求項3】
前薄厚部は、前記摺動板側の面が除去された形状されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッド。
【請求項4】
前記接続部は、前記ピンから前記摺動部へと向かう力が該摺動部の中央から前記摺動板の前記他側端側へオフセットされた位置に加わるように設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッド。
【請求項5】
前記接続部の前記摺動部側に位置する腕部が、前記摺動部の中央よりも前記摺動板の前記他側端側へオフセットされていることを特徴とする請求項4に記載のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッド。
【請求項6】
前記接続部の前記摺動部側に位置する腕部の前記一側端側には、前記他側端に向かって形成された切欠部が設けられていることを特徴とする請求項4又は5に記載のクロスヘッド型ディーゼル機関のクロスヘッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載されたクロスヘッドを備えていることを特徴とするクロスヘッド型ディーゼル機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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