説明

クロスポビドンおよびクロスポビドン含有錠剤

【課題】
本発明は、錠剤に含有させた場合に、吸湿しても外観不良を引き起こすことのないクロスポビドンを提供する。また、本発明は、錠剤が吸湿しても、突起物生成による外観不良を生じないクロスポビドン含有錠剤を提供する。
【解決手段】
粒子径150μm以上の粒子の割合が0.5重量%未満、または、粒子径180μm以上の粒子の割合が0.2重量%未満であるクロスポビドン。さらに、ゆるみかさ密度が0.15g/mL以上、または、かためかさ密度が0.25g/mL以上であるクロスポビドン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤に含有させた場合に、吸湿しても外観不良を生じることのないクロスポビドンに関する。また本発明は、当該クロスポビドンを含有する、吸湿しても外観不良を生じることのない錠剤に関する。さらに本発明は、クロスポビドン含有錠剤の外観不良の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)は、錠剤の崩壊剤として汎用されており、Kollidon CL(BASF社)、POLYPLASDONE XL(ISP社)等の商品名で販売されている。
【0003】
一般にクロスポビドンを含有する製剤は崩壊性に優れるが、錠剤が吸湿することにより錠剤表面に突起物を生じることがある。この突起物は、錠剤の外観不良を引き起こすだけでなく、突起物が錠剤コードなどの刻印部分に発生すると、錠剤コードが判別しにくくなる等の問題を生じる可能性がある。錠剤が吸湿する場面としては、錠剤が高湿下で保管された場合だけでなく、例えば、フィルムコーティング工程、錠剤の加湿による錠剤強度の調整、錠剤の加湿によって構成成分の結晶転移を誘発する等の製剤工程が挙げられる。
【0004】
上述の突起物は、錠剤中に含有されるクロスポビドンが吸湿により膨潤した結果引き起こされるものであり、それを防ぐには平均粒子径が小さいクロスポビドン、例えば平均粒子径(D50%)が20〜40μmのクロスポビドンを使用すればよいとされていた(非特許文献1)。このような平均粒子径が小さいクロスポビドンとして、Kollidon CL-F(D50%:20〜40μm、カタログ値、以下同じ)あるいはKollidon CL-SF(D50%:10〜30μm)(ともにBASF社)やPOLYPLASDONE XL-10(D50%:30〜50μm、ISP社)が入手可能である。また、クロスポビドンの平均粒子径を更に小さくしたものとして、Kollidon CL-M(D50%:3〜10μm、BASF社)やPOLYPLASDONE INF-10(D50%:5〜10μm、ISP社)も入手可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Accelerators Super-disintegrants and dissolution enhancers (BASF社カタログ)
【0006】
しかしながら、上記の平均粒子径が小さいクロスポビドンを使用しても、錠剤が吸湿したときの外観不良が完全には抑制できない点で課題があった。また、平均粒子径(D50%)が10μm以下のクロスポビドンは、崩壊性が不十分であり、錠剤の崩壊剤としての機能は劣るものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、錠剤に含有させた場合に、吸湿しても外観不良を引き起こすことのないクロスポビドンを提供することである。また、当該クロスポビドンを含有する、吸湿しても外観不良を生じることのない錠剤を提供することである。さらには、クロスポビドン含有錠剤の吸湿による外観不良を抑制する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題を解決するため、クロスポビドンの粉体特性に関して鋭意検討した結果、(1)錠剤表面に直径が0.2mm以上の突起物が生成すると錠剤の外観が不良であると認識されること、(2)粒子径150μm以上の粒子が0.5重量%未満、または粒子径180μm以上の粒子が0.2重量%未満のクロスポビドンであれば、それを含有する錠剤が吸湿しても突起物の生成が抑制され外観が良好であることを見い出した。
さらに、クロスポビドンのかさ密度が、(1)ゆるみかさ密度として0.15g/mL以上、またはかためかさ密度として0.25g/mL以上、好ましくはゆるみかさ密度として0.20g/mL以上、またはかためかさ密度として0.30g/mL以上、かつ、(2)粒子径150μm以上の粒子が0.5重量%未満、または粒子径180μm以上の粒子が0.2重量%未満のクロスポビドンが、1週間または1箇月といった長期間、高湿度下で保管してもなお外観が良好であることを見い出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕粒子径150μm以上の粒子の割合が0.5重量%未満、または、粒子径180μm以上の粒子の割合が0.2重量%未満であるクロスポビドン。
〔2〕ゆるみかさ密度が0.15g/mL以上、または、かためかさ密度が0.25g/mL以上である上記〔1〕に記載のクロスポビドン。
〔3〕ゆるみかさ密度が0.20g/mL以上、または、かためかさ密度が0.30g/mL以上である上記〔1〕に記載のクロスポビドン。
〔4〕平均粒子径(D50%)が10μmより大きい、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のクロスポビドン。
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のクロスポビドンを含有する錠剤。
〔6〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のクロスポビドンを含有する素錠。
〔7〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のクロスポビドンを含有する口腔内崩壊錠。
〔8〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のクロスポビドンを使用することによる、外観不良が抑制された錠剤の製造方法。
〔9〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のクロスポビドンを使用することによる、クロスポビドンを含有する錠剤の外観不良抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤は、25℃75%RHなどの高湿下に放置された場合でも、直径0.2mm以上の突起物を生成せず、外観不良を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】25℃75%RH環境下で1箇月保存した実施例1の錠剤の外観
【図2】25℃75%RH環境下で1箇月保存した比較例3の錠剤の外観
【図3】25℃75%RH環境下で1箇月保存した比較例5の錠剤の外観
【図4】25℃75%RH環境下で1箇月保存した比較例7の錠剤の外観
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0013】
本発明のクロスポビドンは、平均粒子径としては特に限定されないが、一般に良好な崩壊性および製剤中への均一な分布性を考慮して、平均粒子径(D50%)として10μm〜100μmが挙げられ、好ましくは15μm〜80μmが挙げられ、より好ましくは20μm〜50μmが挙げられる。平均粒子径(D50%)は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、SALD−3000(島津製作所製)等)を用いて、乾式法により測定した体積基準による粒度分布より求めることができる。
【0014】
本発明のクロスポビドンは、粒子径150μm以上の粒子の割合が0.5重量%未満、好ましくは0.3重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である。また、本発明のクロスポビドンは、粒子径180μm以上の粒子の割合が0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満である。これらの粒子の割合は、気流式ふるい分け測定装置(例えば、エアジェットシーブ200LS(アルピネ社)等)を用いて、検体量10g、吸引圧3500Paにて3分間篩過したときの、篩上の残量の検体量に対する割合として求めることができる。
【0015】
また、本発明のクロスポビドンは、上述の粒子径150μm以上または180μm以上の粒子の割合に加えて、ゆるみかさ密度が0.15g/mL以上、好ましくは0.20g/mL以上、更に好ましくは0.25g/mL以上であり、いずれも0.50g/ml以下であればよい。一方、かためかさ密度は0.25g/mL以上、好ましくは0.30g/mL以上、更に好ましくは0.40g/mL以上であり、いずれも0.70g/ml以下であればよい。このように、粒子径150μm以上の粒子の割合、または粒子径180μm以上の粒子の割合が上述の通りであり、かつ、ゆるめおよびかためかさ密度が大きいクロスポビドンを含有する錠剤は、25℃75%RH等の高湿下に、1週間あるいは1箇月といった長期間保存されても外観不良を生じない優れた特性を有する。
【0016】
ゆるみかさ密度は、クロスポビドン5gを、50mLメスシリンダーに衝撃を与えることなく入れ、その体積から算出することができる。かためかさ密度は、ゆるみかさ密度の測定につづいて、かさ密度測定器(例えば、タップデンサーKYT−3000(セイシン企業製))により、タッピングストローク10mmで200回タッピングしたときの体積より算出することができる。
【0017】
本発明のクロスポビドンは、市販のクロスポビドン(例えば、POLYPLASDONE XL-10(ISP社)、Kollidon CL(BASF社)等が挙げられる)を、適切な粉砕機、例えばハンマーミルまたはピンミルを用いて粉砕すること、あるいは、適切な目開きの篩を使用して篩過すること、またはこの両者を組み合わせることにより得ることができる。クロスポビドンの粒度分布およびかさ密度に与える影響が小さい点で、適切な目開きの篩を使用して篩過することが好ましい。使用する篩の目開きは、180μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。また、篩過時の篩の目詰まりを軽減するため、篩の目開きは75μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
【0018】
本発明での素錠とは、製剤組成物の表面を被覆していない錠剤を意味する。すなわち、錠剤の表面を被覆したフィルムコート錠、糖衣錠等を除いた錠剤を示す(以下、素錠、口腔内崩壊錠を含め錠剤という場合もある)。
本発明の素錠は、例えば、通常製剤として組成される薬物、添加物、賦形剤、滑沢剤等(以下、組成物という場合もある)を混合して打錠したもの、前記の組成物を造粒して打錠したもの、または前記の組成物のいずれかを組み合わせて造粒し、さらに組成物のいずれかと混合して打錠した錠剤等が挙げられる。
また、本発明での口腔内崩壊錠とは、少量の水、または唾液のみで口腔内で容易に崩壊する錠剤を意味する。口腔内での崩壊時間は、60秒〜70秒以下が好ましく、より好ましくは60秒以下が挙げられ、さらに好ましくは30秒以下が挙げられる。
【0019】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤においては、クロスポビドンの添加割合は特に限定されないが、崩壊剤としての通常の添加割合として、例えば1重量%〜30重量%が挙げられ、好ましくは1重量%〜20重量%が挙げられ、より好ましくは1重量%〜10重量%が挙げられ、更に好ましくは1重量%〜5重量%が挙げられる。
【0020】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤においては、クロスポビドンの添加方法は特に限定されない。すなわち、クロスポビドンを含有する顆粒を湿式造粒法または乾式造粒法により製造し錠剤を製することも可能であり、クロスポビドンを含有する粉末を直接圧縮法により錠剤を製することも可能である。または、造粒した顆粒とクロスポビドンを混合し錠剤を製する方法(顆粒外崩壊剤)として使用することも可能である。
【0021】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤には、薬物、機能性食品、栄養補助食品等を含有させることができる。
【0022】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤の薬物としては、錠剤として製剤化できる薬物ならばいずれの薬物も使用することができる。本発明で用いられる薬物は、固形状、結晶状、粉末状、油状、溶液状などいずれでも良く、本発明に適応できる「薬物」としては、内服薬として使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、抗不安剤、抗てんかん剤、解熱鎮痛消炎剤、抗パーキンソン剤、精神神経用剤、鎮暈剤等の神経系及び感覚器官用医薬品;強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、抗脂血症用剤等の循環器官用薬;呼吸促進剤、鎮咳剤、去たん剤、気管支拡張剤等の呼吸器官用薬;止しゃ剤、整腸剤、消化性潰瘍用剤、健胃消化剤、制酸剤、下剤等の消化器官用薬;ホルモン剤及び抗ホルモン剤;泌尿生殖器官及び肛門用薬;ビタミン剤、滋養強壮薬、血液凝固阻止剤、糖尿病用剤等の代謝性医薬品;腫瘍用薬;アレルギー用薬;生薬及び漢方製剤;抗生物質、化学療法剤及び抗原虫剤、駆虫剤といった病原生物に対する医薬品;麻薬;禁煙補助剤等の薬効群の薬物が挙げられる。これらの薬物は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。薬物の錠剤中含量は、薬物の必要量及び薬物の特性により異なるが、通常、錠剤100重量%中0.01重量%〜90重量%であり、好ましくは0.1重量%〜80重量%であり、より好ましくは1重量%〜50重量%であり、更に好ましくは2重量%〜25重量%である。また、これらの薬物は、苦味マスキング、溶出制御、安定化等の目的でその表面の一部又は全部を水溶性高分子、水不溶性高分子、胃溶性高分子、又は腸溶性高分子等のコーティング剤で被覆した被覆粒子として用いることもできる。
【0023】
本発明に適用する薬物の被覆に用いるコーティング剤としては、水溶性高分子として、例えば、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子類や多糖類とそれらの誘導体、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ポリビニルアルコールなどの水溶性ビニル誘導体などが挙げられ、水不溶性高分子としては、例えば、エチルセルロース(特にエチルセルロース水分散液(例えば、商品名:アクアコート、FMC社製))、酢酸ビニルポリマー(例えば、商品名:コリコートSR30D,BASF社製)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(特にその水分散液(例えば、商品名:オイドラギットRL30D、オイドラギットRS30D、エボニックデグサジャパン製))、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(例えば、商品名:オイドラギットNE30D、エボニックデグサジャパン製)が挙げられ、胃溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアセタール・ジエチルアミノアセテート(例えば、商品名:AEA、三菱化学フーズ製)等のアミノアセタール類化合物、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(例えば、商品名:オイドラギットE、エボニックデグサジャパン製)、それらの混合物等が挙げられ、腸溶性高分子としては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(ヒプロメロースフタル酸エステル)、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート等の腸溶性セルロースエステル類、メタクリル酸コポリマーLD(例えば、商品名:オイドラギットL30D−55、エボニックデグサジャパン製、商品名:ポリキッドPA30、三洋化成社製、商品名:コリコートMAE30DP、BASF社製)メタクリル酸コポリマーL(例えば、商品名:オイドラギットL、エボニックデグサジャパン製)、メタクリル酸コポリマーS(例えば、商品名:オイドラギットS100、オイドラギットFS30D、エボニックデグサジャパン製)などの腸溶性アクリル酸系共重合体等が挙げられる。上記のコーティング剤は1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0024】
コーティング剤には適切な可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、マクロゴール6000、マクロゴール4000、マクロゴール400等のマクロゴール類、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、グリセリン、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート20等のポリソルベート類、グリセリン脂肪酸エステル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0025】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤においては、本発明の効果に影響を与えない範囲であれば、製剤分野において通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することができる。使用する添加剤としては、医薬的に許容されるものであればよく、例えば、賦形剤、クロスポビドン以外の崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、甘味剤、矯味剤、有機酸、着香剤・香料、流動化剤、着色剤、安定化剤、コーティング剤等が挙げられる。
【0026】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤に用いる賦形剤は、例えば、乳糖(乳糖水和物、無水乳糖)、白糖、ショ糖、果糖、フラクトオリゴ糖、ブドウ糖、マルトース、還元麦芽糖、粉糖、粉末飴、還元乳糖等の糖類、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、D−マンニトール等の糖アルコール類、カオリン、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等の天然デンプン)、結晶セルロース等が挙げられる。好ましくは、乳糖水和物、無水乳糖等の糖類、D−マンニトール等の糖アルコール、デンプン、結晶セルロースが挙げられる。賦形剤の錠剤中含量は特に限定されないが、通常5重量%〜95重量%が挙げられ、好ましくは10重量%〜80重量%が挙げられる。賦形剤を2種以上使用する場合の賦形剤全量の本発明組成物中含量も上記と同量である。
【0027】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤に用いるクロスポビドン以外の崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファ化デンプン等が挙げられる。クロスポビドン以外の崩壊剤 の錠剤中含量は特に限定されないが、通常30重量%以下が挙げられ、好ましくは20重量%以下が挙げられ、より好ましくは10重量%以下が挙げられる。クロスポビドン以外の崩壊剤 を2種以上使用する場合、崩壊剤全量の本発明組成物中含量も上記と同量である。
【0028】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤は、製剤分野において通常使用される結合剤を添加することができる。該結合剤として例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、アルファ化デンプン、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、寒天、ゼラチン等が挙げられる。該結合剤は1種または2種以上を組合せて用いることができる。結合剤の錠剤中含量は本発明の効果に影響を与えない範囲であれば、特に限定されない。
【0029】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤に用いる滑沢剤は、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、タルク、カルナウバロウ、L−ロイシン、マクロゴール等が挙げられる。滑沢剤の錠剤中含量は特に限定されないが、通常0.01重量%〜5重量%が挙げられ、好ましくは0.1重量%〜4重量%が挙げられる。滑沢剤を2種以上使用する場合の滑沢剤全量の本発明組成物中含量も上記と同量である。
【0030】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤に用いる流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。流動化剤は1種または2種以上を組合せて用いることができる。流動化剤の錠剤中含量は、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下が挙げられる。
【0031】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤を口腔内崩壊錠やチュアブル錠等とする場合には、着香剤・香料を含有させることが好ましい。着香剤・香料としては、例えば、マルトール、エチルマルトール、バニリン等の芳香剤、レモン、オレンジ、グレープフルーツ等の柑橘系香料、ペパーミント、スペアミント、メントール、パイナップル、チェリー、ピーチ、ストロベリー、グレープ、ヨーグルト、コーヒー等が挙げられる。着香剤・香料は、1種または2種以上を組み合わせて適宜適量添加することができる。
【0032】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤を口腔内崩壊錠やチュアブル錠とする場合には、甘味剤および/または矯味剤を含有させることが好ましい。甘味剤としては、例えば、乳糖(乳糖水和物、無水乳糖)、白糖、ショ糖、果糖、フラクトオリゴ糖、ブドウ糖、マルトース、還元麦芽糖、粉糖、粉末飴、還元乳糖等の糖類、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、D−マンニトール等の糖アルコール類、アスパルテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、タウマチン、スクラロース、アセスルファムK、ネオテーム等の高甘味度甘味料等が挙げられる。矯味剤としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸およびその塩類、オレンジ油、レモン油、梅肉エキス、甘味剤および矯味剤は、1種または2種以上を組み合わせて適宜適量添加することができる。
【0033】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤には、所望の場合、公知の方法を用いて、フィルムコーティングを施すことができる。フィルムコーティングに用いるコーティング剤としては、水溶性高分子、水不溶性高分子、胃溶性高分子、腸溶性高分子等が挙げられる。
【0034】
本発明のクロスポビドンを含有する錠剤に用いるコーティング剤としては、水溶性高分子として、例えば、アラビアゴム末、ゼラチン、プルラン、デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子類や多糖類とそれらの誘導体、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ポリビニルアルコールなどの水溶性ビニル誘導体などが挙げられ、水不溶性高分子としては、例えば、エチルセルロース(特にエチルセルロース水分散液(例えば、商品名:アクアコート、FMC社製))、酢酸ビニルポリマー(例えば、商品名:コリコートSR30D,BASF社製)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(特にその水分散液(例えば、商品名:オイドラギットRL30D、オイドラギットRS30D、エボニックデグサジャパン製))、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液(例えば、商品名:オイドラギットNE30D、エボニックデグサジャパン製)が挙げられ、胃溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアセタール・ジエチルアミノアセテート(例えば、商品名:AEA、三菱化学フーズ製)等のアミノアセタール類化合物、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(例えば、商品名:オイドラギットE、エボニックデグサジャパン製)、それらの混合物等が挙げられ、腸溶性高分子としては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(ヒプロメロースフタル酸エステル)、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート等の腸溶性セルロースエステル類、メタクリル酸コポリマーLD(例えば、商品名:オイドラギットL30D−55、エボニックデグサジャパン製、商品名:ポリキッドPA30、三洋化成社製、商品名:コリコートMAE30DP、BASF社製)メタクリル酸コポリマーL(例えば、商品名:オイドラギットL、エボニックデグサジャパン製)、メタクリル酸コポリマーS(例えば、商品名:オイドラギットS100、オイドラギットFS30D、エボニックデグサジャパン製)などの腸溶性アクリル酸系共重合体等が挙げられる。上記のコーティング剤は1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0035】
フィルムコーティング中には適切な可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、マクロゴール6000、マクロゴール4000、マクロゴール400等のマクロゴール類、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、グリセリン、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート20等のポリソルベート類、グリセリン脂肪酸エステル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0036】
フィルムコーティング中には、医薬品に添加可能な着色剤を添加することができる。着色剤としては、酸化チタン、三二酸化鉄(赤色酸化鉄)、黄色三二酸化鉄、黒色酸化鉄等の酸化鉄、タール色素およびそのアルミニウムレーキ等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例、比較例及び試験例をあげて本発明を更に詳しく説明するが、本発明を限定するものではない。
[実施例1]
クロスポビドン(POLYPLASDONE XL-10、ISP社製)を、目開き100μmの篩を用いて篩過した。このクロスポビドンをレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−3000(島津製作所製)を用いて、乾式法により体積基準による粒度分布を測定し、平均粒子径(D50%)を求めたところ24.6μmであった。表1に記載の処方に従い、D−マンニトール(PEARLITOL 50C、ROQUETTE社製)40g、トウモロコシデンプン(日食局方コーンスターチXX16、日本食品化工製)14.9g、および目開き100μmの篩を用いて篩過した上記のクロスポビドン3gを小型万能混合機(調剤ミキサー、株式会社品川工業所製)に仕込み、混合した後、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達製)水溶液を添加して練合した。練合物を乾燥し、整粒した。得られた造粒物に、ステアリン酸マグネシウムを混合後、単発打錠機(EK0、KORSCH社製)を用いて、直径7mm、曲率半径10mmの円形錠用金型にて、約8kNの圧縮力で成型し錠剤を得た。
【0038】
【表1】

[実施例2〜3、比較例1〜3]
実施例1のクロスポビドンを、目開き150μm、180μm、250μm、および355μmの篩を用いて篩過したクロスポビドン(POLYPLASDONE XL-10、ISP社製)に変更して、それぞれ実施例2、実施例3、比較例1、および比較例2の錠剤 を実施例1と同様の方法で作製した。同様に、実施例1のクロスポビドンを、篩過していないクロスポビドン(POLYPLASDONE XL-10、ISP社製)に変更して比較例3の錠剤を作製した。これらのクロスポビドンの平均粒子径(D50%)は、25.6μm〜27.4μmであった。
[実施例4]
クロスポビドン(Kollidon CL、BASF社製)を、目開き100μmの篩を用いて篩過した。このクロスポビドンをレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−3000(島津製作所製)を用いて、乾式法により体積基準による粒度分布を測定し、平均粒子径(D50%)を求めたところ42.8μmであった。表2に記載の処方に従い、乳糖(Pharmatose 200M、DMV社製)40g、トウモロコシデンプン(日食局方コーンスターチXX16、日本食品化工製)16.4g、目開き100μmの篩を用いて篩過した上記のクロスポビドン3g、およびステアリン酸マグネシウム0.6gを混合した。この混合粉末を単発打錠機(EK0、KORSCH社製)を用いて、直径7mm、曲率半径10mmの円形錠用金型にて、直接打錠法により約8kNの圧縮力で成型し錠剤を得た。
【0039】
【表2】

[比較例4]
実施例4の篩過したクロスポビドンを、篩過していないクロスポビドン(Kollidon CL、BASF社製)に変更して実施例4と同様の方法で錠剤を作製した。このクロスポビドンの平均粒子径(D50%)は、144.2μmであった。
[実施例5]
クロスポビドン(Kollidon CL-F、BASF社製)を、目開きの150μmの篩を用いて篩過した。このクロスポビドンをレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−3000(島津製作所製)を用いて、乾式法により体積基準による粒度分布を測定し、平均粒子径(D50%)を求めたところ36.6μmであった。表3に記載の処方に従い、D−マンニトール(PEARLITOL 50C、ROQUETTE社製)53.5g、トウモロコシデンプン(日食局方コーンスターチXX16、日本食品化工製)2.9g、目開き150μmの篩を用いて篩過した上記のクロスポビドン3gを小型万能混合機(調剤ミキサー、株式会社品川工業所製)に仕込み、混合した後、ヒプロメロース2910(TC-5R、信越化学工業社製)水溶液を添加して練合した。練合物を乾燥し、整粒した。得られた造粒物に、ステアリン酸マグネシウムを混合後、単発打錠機(EK0、KORSCH社製)を用いて、直径7mm、曲率半径10mmの円形錠用金型にて、約8kNの圧縮力で成型し錠剤を得た。
【0040】
【表3】

[比較例5]
実施例5の篩過したクロスポビドンを、篩過していないクロスポビドン(Kollidon CL-F、BASF社製)に変更して実施例5と同様の方法で錠剤を作製した。このクロスポビドンの平均粒子径(D50%)は、38.0μmであった。
[比較例6]
実施例5のクロスポビドンを、目開き150μmの篩を用いて篩過したクロスポビドン(Kollidon CL-SF(BASF社製))に変更して、実施例5と同様の方法で錠剤を作製した。このクロスポビドンの平均粒子径(D50%)は、22.1μmであった。
[比較例7]
実施例5の篩過したクロスポビドンを、篩過していないクロスポビドン(Kollidon CL-SF、BASF社製)に変更して実施例5と同様の方法で錠剤を作製した。このクロスポビドンの平均粒子径(D50%)は、22.5μmであった。
[実施例6]
クロスポビドン(POLYPLASDONE XL-10、ISP社製)を、目開き100μmの篩を用いて篩過した。このクロスポビドンをレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−3000(島津製作所製)を用いて、乾式法により体積基準による粒度分布を測定し、平均粒子径(D50%)を求めたところ24.6μmであった。表4に記載の処方に従い、ニフェジピン(ダイト株式会社製)40g、D−マンニトール(PEARLITOL 50C、ROQUETTE社製)50g、トウモロコシデンプン(日食局方コーンスターチXX16、日本食品化工製)10g、および目開き100μmの篩を用いて篩過した上記のクロスポビドン12.5gを小型万能混合機(調剤ミキサー、株式会社品川工業所製)に仕込み、混合した後、アルファ化デンプン(アミコールC、日澱化學製)水溶液を添加して練合した。練合物を乾燥し、整粒した。得られた造粒物に、ステアリン酸マグネシウムを混合後、単発打錠機(EK0、KORSCH社製)を用いて、直径7.0mm、曲率半径10mmの円形錠用金型にて約8kNの圧縮力で成型し錠剤を得た。
【0041】
【表4】

[比較例8]
実施例6の篩過したクロスポビドンを、篩過していないクロスポビドン(Kollidon CL-M、平均粒子径(D50%)9.4μm)に変更して実施例6と同様の方法で錠剤を作製した。
[試験例1]
実施例1〜6および比較例1〜8の錠剤の作製に使用したクロスポビドンを、エアジェットシーブ200LS(アルピネ社)を用いて、検体量10g、吸引圧3500Paにて3分間篩過し、150μmおよび180μm篩上の残量の検体量に対する割合を求めた。また、実施例1〜6および比較例1〜8で使用したクロスポビドン5gを、50mLメスシリンダーに衝撃を与えることなく入れ、その体積からゆるみかさ密度を算出した。ひきつづいて、タップデンサーKYT−3000(セイシン企業製)により、タッピングストローク10mmで200回タッピングしたときの体積より、かためかさ密度を算出した。表4に示すように、実施例1〜6および比較例6、8で用いたクロスポビドンは、150μm篩上の残量の割合が0.2%以下、180μm篩上の残量の割合が0.0%であった。これに対して比較例1〜5および比較例7で用いたクロスポビドンは、150μm篩上の残量の割合が0.5%以上、180μm篩上の残量の割合が0.2%以上であった。
【0042】
また、実施例1〜4および実施例6の錠剤に使用したクロスポビドンのゆるみかさ密度は0.31〜0.32g/mL、かためかさ密度は0.49〜0.50g/mL、実施例5の錠剤に使用したクロスポビドンのゆるみかさ密度は0.19g/mL、かためかさ密度は0.29g/mLであった。これに対して比較例6〜8の錠剤に使用したクロスポビドンのゆるみかさ密度は0.12〜0.14g/mL、かためかさ密度は0.20〜0.23g/mLと低い値を示した。
【0043】
実施例1〜6および比較例1〜8の錠剤を褐色ガラス瓶に入れ、栓をすることなく25℃75%RH環境下にて保管し、1日後、1週間後、および1箇月後の錠剤3錠について、錠剤片面あたりの直径0.2mm以上の突起物の個数を計数し、その平均値を求めた。実施例1〜4、実施例6および比較例8の錠剤は、いずれも1箇月後まで良好な外観を呈し、直径0.2mm以上の突起物を認めなかった。実施例5の錠剤は、保存1週間後までは直径0.2mm以上の突起物を認めなかったが、1箇月後になってわずかに錠剤片面あたり平均1個の直径0.2mm以上の突起物が認められた。これに対し、比較例1〜5の錠剤は、保存1日後に錠剤片面あたり平均2個以上の直径0.2mm以上の突起物の生成がみられた。また、比較例6および7の錠剤は、保存1日後では良好な外観を呈していたが、保存1週間後には錠剤片面あたり10個以上の突起物が生成した。
【0044】
【表5】

【0045】

[試験例2]
実施例6および比較例8の錠剤を、第十五改正日本薬局方記載の崩壊試験法に従い、37±2℃の水を試験液として崩壊時間を確認した。実施例6の錠剤の崩壊時間は24秒であり、口腔内崩壊錠としても十分な崩壊性を有していたのに対し、比較例8の錠剤は、崩壊時間が87秒で、口腔内崩壊錠としては崩壊性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により、錠剤が高湿下にさらされた場合でも、突起物生成による外観不良を生じないクロスポビドン含有錠剤を提供することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径150μm以上の粒子の割合が0.5重量%未満、または、粒子径180μm以上の粒子の割合が0.2重量%未満であるクロスポビドン。
【請求項2】
ゆるみかさ密度が0.15g/mL以上、または、かためかさ密度が0.25g/mL以上である請求項1に記載のクロスポビドン。
【請求項3】
ゆるみかさ密度が0.20g/mL以上、または、かためかさ密度が0.30g/mL以上である請求項1に記載のクロスポビドン。
【請求項4】
平均粒子径(D50%)が10μmより大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクロスポビドン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のクロスポビドンを含有する錠剤。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のクロスポビドンを含有する素錠。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のクロスポビドンを含有する口腔内崩壊錠。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のクロスポビドンを使用することによる、外観不良が抑制された錠剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のクロスポビドンを使用することによる、クロスポビドンを含有する錠剤の外観不良抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−195518(P2011−195518A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65170(P2010−65170)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】