説明

クロマトグラフィーカラムの性能を評価するための方法

クロマトグラフィーカラム性能を評価および/または監視するための方法が提供される。実施形態は、クロマトグラフィーカラム性能の総合評価を提供するために、プロセスデータだけでなく、遷移解析データにも多変量解析(MVA)方法を適用する。実施形態では、長期間にわたって生成された遷移解析データを、カラム性能を評価するために、プロセスデータとともに解析することができる。さらに、実施形態は、性能評価結果を組み合わせて提示するためのコンパクトで頑強なツールを有効にし、それにより、時間効率の良い性能試験を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、クロマトグラフィーに関する。
【背景技術】
【0002】
生物薬剤産業では、充填層カラムを使用する調製用クロマトグラフィーは、生物学的複合製剤(例えば、遺伝子組換えタンパク質および抗体)の製造において鍵となる要素である。したがって、高い製品品質を保証するように、クロマトグラフィーカラム性能を念入りに監視し上手く制御することが、非常に重要である。例えば、高いカラム充填品質が、効率的なクロマトグラフの操作に必要とされ、理想的な充填カラムからの逸脱は、移動相分散の増加、不十分なタンパク質分離、および潜在的には生成物の拒絶を含む、準最適性能をもたらし得る。
【0003】
成功した調製用クロマトグラフィーの非常に重要な態様は、プロセス監視の最も可能性のある方法を実施する能力に依存する。クロマトグラフィーに基づくプロセス監視は、通常、カラムが予想通りに機能していることを保証することに重点を置く。充填層カラムを使用するクロマトグラフィーにおける懸念の共通領域は、例えば、(1)カラムの完全性が損なわれたことによる、性能の劣化、(2)カラムがその耐用年数に達しつつあるための劣化、(3)障害を引き起こす機器の故障、および(4)経時的なカラム特性の変化を含む。したがって、クロマトグラフィープロセスのプロセス監視の機能は、クロマトグラフィー手順における不適切な性能または望ましくない変化を検出し対処するための最適のシステムを開発し実施するうちの1つである。
【0004】
今日、クロマトグラフィーのプロセス監視は、例えば、パルス入力に基づくHETP(理論段相当高さ)、クロマトグラフのピーク、溶出UVピーク幅、生成物収率の非対称等の単変量パラメータの監視、およびその中の異常を特定しようとして、カラムおよびクロマトグラフィープロフィールの定性目視検査を行うことによって、いくつかの方法を使用して行われる。
【0005】
しかしながら、これらの方法は有用である一方で、カラム性能の変化および劣化を検出するのに、十分に鋭敏で網羅的な手段を提供しない。さらに、タンパク質精製の関連で、本プロセスに関連した本質的な確率的挙動を検出するのみでなく、カラム内の予想外の変化の影響を軽減することが必要である。
【0006】
別の問題は、オンラインパルス検査HETPを計算する従来の技術が、拒絶されるべきであった充填クロマトグラフィーカラムが代わりに合格することを意味する、「偽陽性」をもたらす可能性が高いことである。さらに、従来のパルス検査HETPでは、通常、カラム性能の緩やかな傾向が明らかにならない。その結果、従来のカラムクロマトグラフィー監視技術を使用することによって、価値ある生成物が悪いカラムを通り抜け、浪費される場合がある。反対に、品質カラム(他の点では、正反対の傾向を表していない)は、パルス検査HETP障害が一度生じる時、不必要に再充填される場合がある。
【0007】
したがって、クロマトグラフィーカラム性能を監視および/または評価するための、より定量的で、頑強な、時間のかからない方法およびシステムのニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
クロマトグラフィーカラム性能を監視および/または評価するための方法およびシステムが提供される。
【0009】
本発明の実施形態は、クロマトグラフィーカラム性能の総合評価を提供するように、プロセスデータだけでなく、遷移解析データにも多変量解析(MVA)方法を適用することを含む。
【0010】
本発明の実施形態では、長期間にわたって生成された遷移解析データを、カラム性能を評価するように、プロセスデータとともに解析することができる。さらに、本発明の実施形態は、性能評価結果を組み合わせて提示するためのコンパクトで頑強なツールを有効にし、それにより、時間効率の良い性能試験を可能にする。
【0011】
本発明の実施形態に従い、遷移解析およびプロセスデータに適用されるMVA方法は、(1)カラム充填品質を包括的に監視する、近実時間能力、(2)カラムの完全性の破綻の鋭敏な検出、(3)カラム充填のわずかな変化の鋭敏な検出、(4)カラム充填の異なるタイプの変化の鋭敏な検出、(5)フロンティング/テーリングの鋭敏な検出、および(6)プロセス性能の変化の鋭敏な検出を提供する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態、本発明の特徴および利点だけでなく、本発明の種々の実施形態の構造および操作は、添付の図面を参照の上、以下に詳細に記載される。
【0013】
本明細書に組み込まれ、明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明を例示し、明細書とともに、本発明の原理を説明し、当業者が本発明を行い使用することを可能にするようにさらに機能する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】例示的プロセスのクロマトグラフィーシステムを示す図である。
【図2】クロマトグラフィーカラム性能を評価するための、例示的プロセスを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的多変量解析モジュールを示す図である。
【図6】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的多変量解析モジュールを示す図である。
【図7】クロマトグラフィーデータを処理および提示するように、本発明の実施形態に従う、階層モデルの用途を示す。
【図8】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムの種々のカラム監視能力を示す。
【図9】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムの種々のカラム監視能力を示す。
【図10】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムの種々のカラム監視能力を示す。
【図11】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムの種々のカラム監視能力を示す。
【図12】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムの種々のカラム監視能力を示す。
【図13】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムの種々のカラム監視能力を示す。
【図14】本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムの種々のカラム監視能力を示す。
【図15】連続的なカラムクロマトグラフィー手順(すなわち、カラムの「運転」または「バッチ」)(X軸)から存在する(Y軸;相対ユニット)宿主細胞タンパク質(HCP)の増加する含有量を示す。
【図16】精製ユニット1と精製ユニット2とのカラムの差異を描写するのに利用される、PCA解析を示す。
【図17】標準偏差(SD)制御限界からの遷移解析HETPを示すギャップ分析を示す。
【図18】過去に使われた精製ユニット#1カラムの運転(またはバッチ)と、精製ユニット#2のバッチと、再充填精製ユニット#1カラムからのバッチ11との間の溶出プロフィールの差異を示す、重ね合わせたクロマトグラムを表示する。
【図19】再充填後、精製ユニット1(過去に使われたユニット1カラムとは異なるが)のTMAEカラム性能が、精製ユニット2のカラム性能により近かったことを確認する多変量解析の結果を示す。
【図20】増加したHCP水準(最後のデータ点に先行する全データ点)の傾向に対する、カラム再充填(最後のデータ点)後のHCPの相対的水準を示す。
【図21】イオン交換クロマトグラフィー中の宿主細胞タンパク質を混入する水準を予測するための8つの重要なパラメータが特定されたモデルに対して導出された、その結果得られたパラメータ組を示し、優れた適合性および予測性のモデルが、それぞれ0.76および0.73のR2およびQ2値によって証明される通り獲得された。
【図22】アニオン交換クロマトグラフィー手順に続く精製原薬における、測定および予測された宿主細胞タンパク質混入物濃度の間の優れた相関を示す。
【図23】得られた多変量解析モデルのPCAプロットを示す。楕円体は95%信頼区間を表す一方、曲線の矢印は、予測され測定された不純物濃度には、疎水性相互作用のクロマトグラフィー媒体を繰り返し使用すると、どのような傾向があるのかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、添付の図面を参照の上、説明される。通常、要素が最初に現れる図面は、対応する参照番号の最も左の一桁または複数の桁によって示される。
【0016】
クロマトグラフィーカラム性能を評価および/または監視するための方法およびシステムが、本明細書において提供される。続く本発明を実施するための形態では、「一実施形態」「実施形態」「例示的実施形態」等への参照は、記載する実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含むことができるが、全ての実施形態が特定の特徴、構造、または特性を必ずしも含なくてもよいことを示す。さらに、かかる言い回しは、必ずしも同一の実施形態への参照ではない。さらに、実施形態との関連で記載される時、明示されていてもいなくても、特定の特徴、構造、または特性が、他の実施形態と関連してかかる特徴、構造、または特性をもたらすことは、当業者の知識内であると考えられる。
【0017】
調製用カラムクロマトグラフィーでは、樹脂の十分な充填層が、最適の分離および精製結果を達成するために必要とされる。理想的な充填層の最適の分離および精製結果からの変動は、例えば、移動相分散の増加、不十分なタンパク質の分離、および潜在的には生成物の拒絶を含む、準最適性能をもたらす。種類にかかわらず、クロマトグラフィー性能を最適化するための最高の戦略は、カラム性能を解析および監視するための、最も可能性のあるシステムを実施することを含む。
【0018】
監視における近年の進歩は、遷移解析に適用されるアルゴリズムを通して、クロマトグラフ層の完全性を測定することを含む。これによりカラム床の完全性の数理解析、特に、理論段相当高さ(HETP)の統計学的モーメントに基づく計算を大いに推進してきた。この方法は、理想的な条件を保証するものではなく、カラム床の完全性の基準である、真のHETPを計算する。これらのより近年の取り組みで最も一般的な方法は、一次導関数を取ることによって、破過曲線または洗い出し曲線をピークに変換することであった。その時、分散パラメータは、ピークの位置および形状に由来する。遷移解析は、ステップ遷移からの分散パラメータの推測である。ステップ遷移は移動相の急激な変化であり、好ましくは、例えば、伝導率、pH、タンパク質濃度等の、流体の測定可能な物理的特性によって反映される。調整用クロマトグラフィーでは、ステップ遷移は、破過曲線または洗い出し曲線いずれかの形である。
【0019】
遷移解析がカラム床の完全性を査定するのに有用なツールを提供し、生成物収率がバッチでプロセス性能を査定するのに有用なツールを提供する一方、カラムのゆっくりで緩やかな劣化を査定するために処理されなくてはならない情報の量は、バッチ内の単離されたパラメータを単に見ることでは捕捉されない。加えて、プロセスにおいて生じるわずかな変化は、単変量遷移解析パラメータを見ることによっては特定されない場合がある。対照的に、かかるデータを処理するために、1つのアルゴリズムまたは複数のアルゴリズムを介して、データの多変量の組み合わせを査定することにより、さもなければ、カラム床の完全性および/またはプロセス性能における未確認の望まない逸脱を明らかにすることができる。
【0020】
バッチ間比較を可能にし、次いでユーザが過去のバッチから可動域を定量的に決定することが可能になる点で、多変量情報を処理する方法は、強力な解析能力をユーザに提示する。したがって、本発明の実施形態は、カラムクロマトグラフィープロセス性能の解析能力の強化を達成するための「ツールボックス」を含む。本発明の実施形態は、従来の多変量法(例えば、限定するものではないが、PCAおよびPLS等)に加えて、古典的な統計プロセス制御チャートの組み合わせを使用して、実験による実施例に基づく。
【0021】
主成分分析(PCA)は、多変量統計方法であり、多くの変数を包含するデータ組が、スコア(t)と呼ばれる数個の変数にまで減少される。その成分つまりt‐スコアは、データ組の中の各変数の変動に関する情報、およびデータ組の中の全ての他の変数の相関を包含する。したがって、t‐スコアは、データ組の中の他の観測またはバッチと比較された、データ組の中の各観測またはバッチの変動および相関構造を記載する。PCAプロットは、一般に使用されるPCAのグラフ出力である。PCAプロットは、別の成分に対する1つの成分(t‐スコア)、t1対t2のプロットである。PCAプロットは分布であり、変動および相関構造が、データ組の中の観測またはバッチに対して、どのように比較するかを示す。
【0022】
部分最小二乗法(PLS)回帰(パス)解析は、独立および応答変数のシステムの解析のための多変量回帰技術である。PLSは、多くの独立変数が多重共線性を表す時でも、これらを取り扱うことができる予測技術である。PLSはまた、独立変数組を、複数の従属(応答)変数の1組と関連させることができる。PLSでは、通常、潜在的変数の1組が、顕在的独立変数の組に対して抽出され、潜在的変数の別の組が、顕在的応答(従属)変数の組に対して同時に抽出される。この抽出プロセスは、独立変数および応答変数の両方に関与する、外積行列の分解に基づく。独立潜在変数のXスコアは、Yスコアまたは応答潜在変数を予測するのに使用され、予測されたYスコアは、顕在的応答変数を予測するのに使用される。XおよびYスコアは、XおよびYスコアの連続組の関係ができるだけ強くなるように、PLSによって選択される。PLSの利点は、複数の従属変数だけでなく、複数の独立変数をも型取る能力、独立変数間で多重共線性を取り扱う能力、データのノイズおよび(使用されるソフトウェアによる)欠測データに直面する頑強さ、ならびに応答変数に関与する外積に基づき、直接独立潜在変数を作り出し、より強力な予測値を作成することを含む。
【0023】
PCAプロットのように1つのプロットに多くの変数を表すことの利点は、観測間の差異を表示するために、より容易な方法を提供する一方で、同時に、ユーザが観測間の変数の潜在的原因にまで「掘り下げる」ことが可能になることである。それゆえ、異なるパラメータ間の多変量相互作用を考慮に入れることによって、この用途は、非定型の挙動をより容易に検出することを可能にし、望まない傾向を強調表示するのに役立つ。限定するものではないが、多変量解析査定の一部として監視される場合がある、ほんのいくつかのパラメータの実施例は、タンパク質濃度(または力価)、タンパク質アイソフォーム(例えば、変動するpI)、目標生成物より高いまたは低い分子量を伴う化合物の不純物水準、生物活性、相対的効力、翻訳後修飾(例えば、糖鎖付加/ガラクトシル化等の炭水化物修飾)、宿主細胞タンパク質含有量、生成物の凝集、半抗体含有量、タンパク質分解、重量モル浸透圧濃度、pH、カラム成分の浸出等の変化を含む。
【0024】
本発明の実施形態では、多変量クロマトグラフィープロセス監視用の解析「ツールボックス」は、以下を含むことができる。
互いにクロマトグラムを重ね合わせる能力を提供するオンラインシステム。かかるシステムにより、カラム性能(プロセス性能に影響を与える場合がある)の差異を隔離する、パターン認識方法の使用が可能になる。複数のクロマトグラムを「判断基準」つまり理想的な基準と比較する能力により、プロセス「稼動」中に非定型のカラム挙動を検出する強化能力を、ユーザに提供する。加えて、クロマトグラフィー曲線の上昇傾斜(例えば、溶出中、洗浄中等)等の非定型の比較および査定により、クロマトグラムを評価するための定量的手段を提供し、それによって、バッチで所与のカラム性能を査定する際の操作者の主観性を減少する。
遷移解析パラメータが、プロセスの中の特定の遷移のために算出され、それによって、カラム床の完全性問題を瞬間的に検出するのに使用することができる、単変量遷移解析パラメータを提供するシステム。
相互に関連して、プロセスの中の観測の分布をグラフで描写する、多変量モデルであって、プロセスの中で観測されたパラメータ(遷移解析出力、生成物の収率、サイクル回数等を含む)のそれぞれを使用する。例えば、PCA技術を使用して、多変量パラメータは、観測間の変動をグラフで表示して、ギャップ解析が容易に実施されるのを可能にするモデルを構築するように使用することができる。
【0025】
したがって、これら3つのツールは、統合されたデータ解析パッケージに組み合わせられる時、例えば、以下の(1)〜(6)に限定するものではないが、(1)感度を増加させて、近実時間でカラム床の完全性の問題を監視および検出し、(2)カラム重点剤および性能のゆっくりとした、緩やかなおよび/またはわずかな変化を検出し、(3)最適なカラム耐用年数を決定し、(4)クロマトグラムおよびプロセス性能を評価する時に主観性を除去し、(5)種々の異なるタイプの最適なカラム充填および性能の変化または障害(例えば、空隙、チャネリング、気泡、目詰まり)の種々の異なるタイプへの感度の増加を提供し(6)フロンティング/テーリングへの感度の増加を提供する能力を提供する。
【0026】
それゆえ、種々の監視手段(遷移解析HETP、収率、およびクロマトグラムの目視監視)が有用である一方、単離して(すなわち、単変量パラメータとして)見る時、かかる方法は、カラム性能の変化または緩やかな劣化を検出する、最適感度および能力を提供しない。対照的に、相乗値は、これらの単変量のツールの使用を多変量様式で適用する時に、達成することができる。したがって、本発明の実施形態は、カラムクロマトグラフィーパラメータを収集し、提示し、傾向を有する多変量法を適用することにより、カラムの完全性および性能を測定し監視する、著しくより強力で頑強な方法を提供することを示すように、実験による実施例の適用を通して実証される。さらに、本明細書に記載する方法は、例えば、カラムの再充填、再生成、または処分はいつ行われるべきかを決定あるいは予測する時、準最適プロセス性能の原因および条件を特定し修正する時、ならびに数々のプロセスパラメータ平均の許容可能な範囲に含まれるプロセス性能パラメータの理想モデルを開発する時といった、種々の用途を有する。
【0027】
図1は、例示的プロセスクロマトグラフィーシステム100を示す図である。システム100は、複合混合物の中の生体分子を分離し、単一の生体分子を単離し、および/または混入物質を排除するのに使用することができる。図1に示す通り、システム100は、クロマトグラフィーカラム102および検出器110を含む。
【0028】
クロマトグラフィーカラム102は、移動相の中に沈む、透過性、半透過性、または不透過性固体基質で満たされる。概して、タンパク質溶液104は、クロマトグラフィーカラム104の最上部に適用される。次いで、移動相106は、クロマトグラフィーカラム102を通って継続的に汲み出される。タンパク質混合物102の中の異なるタンパク質は、クロマトグラフィーカラム102の中の固体基質と相互に異なって作用するため、クロマトグラフィーカラム102の出力108で、別々に収集することができる。
【0029】
検出器110は、クロマトグラフィーカラム102の出力108に連結される。したがって、検出器110は、クロマトグラフィーカラム102からの流れを監視し、プロセスデータ112を生成する。プロセスデータ112は、プロセスパラメータを含む、クロマトグラフィーカラム102の性能に関する情報を推測するのに使用することができる、データを含む。
【0030】
例えば、プロセスデータ112は通常、移動相のバッチ内のプロセス性能の指標を提供する、段階収率等の流出情報を含む。本発明の実施形態では、検出器110は、クロマトグラフィーカラム102の効率および/または充填剤品質に関連する、プロセスの性質を監視することができる、どんなタイプの検出器でもあり得る。例えば、限定するものではないが、検出器110は、電気伝導率検出器、紫外線(UV)検出器、蛍光検出器、屈折検出器、またはpH検出器である場合がある。
【0031】
図2は、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための、例示的プロセス200を示す図である。特に、プロセス200は、プロセスデータ202からの追加性能パラメータ210の推定を示す。
【0032】
図1では上記の通り、プロセスデータ202は、クロマトグラフィーカラムの出力に連結された検出器によって生成することができる。プロセスデータ202は、クロマトグラフィーステップ遷移に対応する、破過曲線つまり洗い出し曲線の形で表わすことができる、他の移動相パラメータの段階収率および測定値を含む。本明細書で使用される通り、クロマトグラフィーのステップ遷移は、限定するものではないが、例えば、伝導率、pH、塩濃度、光吸収、適する波長の光による励起後の蛍光、屈折率、電気化学応答、および質量分光分析によって生成されるデータといった、測定可能な物理的特性の変化によって反映される、クロマトグラフィーカラムの中の移動相の比較的急激な変化である。
【0033】
ステップ遷移は、通常、継続的に流れている様態におけるある別の移動相液体(溶液)による、1つの移動相液体(例えば、溶液)の置換のためである。概して、ステップ遷移は、3つの相(例えば、ベースライン相、遷移相、および飽和またはプラトー相)を有すると考えることができ、パルスまたは勾配とは異なる。
【0034】
例示的プロセス200は、曲線206を生成するように、プロセスデータ202を処理することを含む、ステップ204から開始する。通常、ステップ204は、曲線206を生成するように、破過曲線つまり洗い出し曲線の一次導関数を取ることを含む。概して、曲線206はピークによって特徴付けられ、クロマトグラフィーカラムの性能についてのさらなる情報を推測するように、形状および位置に基づき解析することができる。
【0035】
したがって、続いてステップ208では、プロセス200は、性能パラメータ210を生成するように、曲線206を解析することを含む。特に、ステップ208は、性能パラメータ210を生成するように、曲線206に遷移解析を行うことを含む。遷移解析を通して生成される性能パラメータ210は、例えば、分散パラメータを含む。
【0036】
図2を参照して上に記載した通り、プロセスデータ解析は、移動相バッチ内のプロセス性能に関する情報に、有用なツールを提供する。図3を参照して上に記載した通り、遷移解析は、バッチ内のカラムの完全性に関する情報に、優れたツールを提供する。しかしながら、単離におけるいかなるタイプの解析も、経時的なカラムのゆっくりで進行性の緩やかな劣化(概して、いくつかのバッチ上で生じる)を捕捉することはできない。加えて、遷移解析は、ステップ遷移データの単変量試験に基づくため、遷移解析データ(すなわち、遷移解析性能パラメータ)がプロセスにおけるわずかな変化を捕捉しないことは、しばしば事実である。
【0037】
本発明の実施形態は、プロセスデータ解析および遷移解析の上記欠陥に対処する。特に、本発明の実施形態は、クロマトグラフィーカラム性能の総合評価を提供するように、プロセスデータだけでなく遷移解析データにも多変量解析(MVA)方法を適用する。
【0038】
本発明の実施形態では、長期間にわたり生成された遷移解析データは、カラム性能を評価するために、プロセスデータとともに解析することができる。さらに、本発明の実施形態は、性能評価結果を組み合わせて提示するためのコンパクトで頑強なツールを有効にし、それにより、時間効率の良い性能試験を可能にする。
【0039】
本発明の実施形態では、遷移解析データおよび/またはプロセスデータは、その値の中に存在するノイズが抑制される変換値を形成するように、変換される(例えば、フィルタリングによっておよび/または平滑化によって)。カラム性能パラメータは、変換値に基づいて計算される。それゆえ、本発明の実施形態は、1)複数のプロセス値および/または遷移解析値のフィルタリング、(2)複数のプロセス値および/または遷移値の平滑化、および3)複数のプロセス値および/または遷移解析値に対する移動平均の計算を含む。
【0040】
本発明の実施形態に従い、遷移解析およびプロセスデータに適用されるMVA方法は、(1)カラム充填品質を包括的に監視する、近実時間の能力、(2)カラムの完全性の変化の鋭敏な検出、(3)カラム充填のわずかな変化の鋭敏な検出、(4)カラム充填の異なるタイプの変化の鋭敏な検出、(5)フロンティング/テーリングの鋭敏な検出、および(6)プロセス性能の変化の鋭敏な検出を提供する。いくつかの例示的なカラムクロマトグラフィー問題は、試料の詰め過ぎ、目詰まり、空隙、チャネリング、および移動相の中の気泡を含むが、それらに限定されない。
【0041】
図3は、本発明の実施形態に従う、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システム300を示す図である。図3に示す通り、例示的システム300は、解析ツールボックス302を含む。解析ツールボックス302は、プロセスデータ308、遷移解析データ304、およびユーザ入力306を受信し、クロマトグラフィーカラムの性能を代表するグラフ出力310を生成する。
【0042】
本発明の実施形態では、システム300は、図1を参照しながら上に記載した検出器110等の検出器に連結される。検出器は、クロマトグラフィーカラム監視の結果として生成されたプロセスデータ308を、解析ツールボックス302に提供する。例えば、検出器は、プロセスパラメータの形で、解析ツールボックス302のプロセスデータを提供する。
【0043】
本発明の実施形態では、システム300は、遷移解析データを生成することができる遷移解析モジュールに連結される。遷移解析モジュールは、図2を参照して上に記載したプロセス200等のプロセスを行い、システム300に遷移解析データ304を提供する。例えば、遷移解析モジュールは、解析ツールボックス302に、遷移解析パラメータの形である遷移解析データを提供する。
【0044】
本発明の実施形態では、システム300は、ユーザ入力306を受信するためのユーザインターフェースに連結される。ユーザ入力306は、行われる解析のタイプ、試験される特定の性能パラメータだけでなく、提示される性能結果に使用されるグラフ表示のタイプを示す、入力を含むことができる。
【0045】
本発明の実施形態では、解析ツールボックス302は、プロセスデータ308、遷移解析データ304、およびユーザ入力306に基づいて、グラフ出力310を生成する。
【0046】
本発明の実施形態では、図4の実施形態400に示す通り、例えば、解析ツールボックス302は、多変量解析(MVA)モジュール402および多変量グラフモジュール404を含む。
【0047】
図4に示す通り、MVAモジュール402は、プロセスデータ308および遷移解析データ304を受信し、性能評価出力406を生成する。本発明の実施形態では、性能評価出力406は、プロセスデータ308および遷移解析データ304にMVA方法を適用することによって生成される。MVA方法は、概して、単変量解析方法を網羅することに留意されたい。したがって、解析ツールボックス302は、プロセスパラメータから推測されるプロセス性能評価、および遷移解析パラメータによって概して有効化される、カラムの完全性問題の検出を可能にする。
【0048】
多変量グラフモジュール404は、MVAモジュール402から性能評価出力406を受信し、そこからグラフ出力310を生成する。本発明の実施形態では、グラフ出力404は、ユーザ入力306に従って適応し、例えば、チャート、ヒストグラム、プロットを含むがそれらに限定されない、種々のグラフ表示の選択肢を含むことができる。
【0049】
本発明の実施形態では、グラフモジュール404は、精製プロセスにおいて関心の対象となるパラメータの一覧に基づき、先験的に構築されるモデルに基づいて動作する。
【0050】
本発明の実施形態では、多変量グラフモジュール404は、プロセス観測分布のグラフによる説明を可能にする。本発明の実施形態では、そのグラフによる説明は、例えば、遷移解析データ、プロセスデータ、収率、サイクル回数を含む、プロセスにおける全パラメータを網羅する。本発明の別の実施形態では、グラフモジュール404は、観測変動のグラフ表示を可能にし、ギャップ解析を容易に行うことを可能にする。
【0051】
図5は、本発明の実施形態に従う、MVAモジュール402の例示的実施形態500を示す図である。特に、例示的実施形態500は、クロマトグラフィーカラムの耐用年数のうちのそれぞれの時期的瞬間に対応する、複数のデータ組を処理するように、MVAモジュール402の能力を示す。したがって、MVAモジュール402によって生成される性能評価結果により、カラム性能のゆっくりとした、わずかな進行性の変化の表示を提供することができる。
【0052】
図5に示す通り、MVAモジュール402は、遷移解析データ502およびプロセスデータ504の複数組を受信する。これらの組は、全て一度に、または生成される実時間に、MVAモジュール402によって受信することができる。
【0053】
本発明の実施形態では、受信データ502および504は、複数のクロマトグラフィーカラムの時間にともなうそれぞれの出力に対応する複数のクロマトグラムを含む。実施形態では、MVAモジュール402は、クロマトグラムを重ね合わせる能力を提供し、時間とともにカラム性能の差異を隔離するのに、パターン認識方法を使用することを可能にする。さらに、MVAモジュール402は、複数のクロマトグラムを「判断基準」と比較する能力を提供し、それにより、プロセス中の非定型カラム挙動の検出を著しく容易にする。加えて、MVAモジュール402は、クロマトグラフィー曲線(例えば、溶出、洗浄)に適用することができる、定量解析方法(例えば、上昇の傾斜)を提供し、そうして、操作者がバッチでカラムの性能を評価する、客観的手法を提供する。
【0054】
図6は、本発明の実施形態に従う、MVAモジュール402の別の例示的実施形態600を示す図である。特に、例示的実施形態600は、例えば、主成分分析(PCA)方法602、部分最小二乗法(PLS)回帰方法604だけでなく、他の従来の統計データ解析方法606も含む、MVAモジュール402のいくつかの異なる可能なデータ解析方法を示す。
【0055】
主成分分析(PCA)は、多次元データ組が、解析のためにより低次元に減少させられた、多変量統計解析方法である。PCAの結果は、概して、成分またはt‐スコアと呼ばれる。成分つまりt‐スコアは、データ組の中の各変数の変動に関する情報だけでなく、データ組の中の全ての他の変数との相関を包含する。
【0056】
本発明の実施形態に従い、PCAが、クロマトグラフィーカラムからの複数の観測を含むデータ組に適用される時、その結果得られるt‐スコアは、複数の観測内および観測間の変数を記載する、相関行列を作り出す。したがって、相関行列は、データ組の中の各観測またはバッチを記載する情報(自動相関情報)、およびデータ組の中のいずれか2つの観測またはバッチ間の変動を記載する情報(相互相関情報)を含む。
【0057】
PCAプロットは、一般的に使用されるPCAのグラフ出力である。PCAプロットは、別の成分またはt‐スコアに対する、1つの成分またはt‐スコアのプロットである。本発明の実施形態に従い、多変量グラフモジュール404は、MVAモジュール402によって生成されるPCA結果に従い、PCAプロットを表示するように使用することができる。多くの成分/変数を、PCAプロット等の1つのプロットに表す1つの利点は、観測間の差異を定量的に表示する効率的な手段を提供することである一方、同時に、ユーザが観測間の潜在的原因にまで「掘り下げる」ことが可能になることに留意されたい。
【0058】
部分最小二乗法(PLS)回帰解析は、独立変数および従属(応答)変数のシステム解析用の多変量回帰技術である。PLSは、変数が多重共線性を表示する時でさえ、複数の独立変数を処理するのに使用することができる予測技術である。概して、PLSは、独立変数の組を複数の応答変数の組に関連させることによって動作する。次いで、1組の独立潜在的変数が、(顕在的)独立変数の組に対して抽出され、潜在的応答変数の別の組が、(顕在的)応答変数の組に対して同時に抽出される。この抽出プロセスは、独立変数および応答変数の両方に関与する、外積行列の分解に基づく。続いて、独立潜在変数のXスコアは、Yスコアまたは応答潜在変数を予測するのに使用され、予測されたYスコアは、顕在的応答変数を予測するのに使用される。XおよびYスコアは、XおよびYスコアの連続組の関係ができるだけ強くなるように、PLSによって選択される。
【0059】
PLSの利点は、複数の従属変数だけでなく、複数の独立変数をも型取る能力、独立変数間で多重共線性を取り扱う能力、データのノイズおよび(使用されるソフトウェアによる)データ損失に対する頑強さ、および一つもしくは複数の応答変数に関与する外積に基づき、直接独立潜在変数を作り出し、より強力な予測値を作成することを含む。
【0060】
本発明の実施形態に従い、MVAモジュール402によって使用されるデータ解析方法は、大量のクロマトグラフィーデータを、実時間に統合形式で処理し表すことを可能にする、階層モデルによる。これは、主な短所が、大量の情報を処理する能力の欠如/効率の悪さを含む、従来の解析方法に勝る、本発明の実施形態の1つの利点である。例えば、遷移解析モジュールは、典型的な4つのカラム、4相稼動に対して、1相、1カラムごとに8つのパラメータを戻す。これにより、1バッチごとに、処理され得る128個のパラメータがもたらされる。従来の解析方法は、測定間の差異を隔離し、潜在的な非定型挙動を検出するように、所定の警報限界および/または単変量解析方法の組み合わせを使用する。しかしながら、従来の方法は、利用可能である全情報を完全におよび/または効率的に利用するのに失敗する。例えば、1つの極限からは、警報限界のみが処理限界からの個別の可動域を示し、データの中の望ましくない傾向に関する最低限の情報を与える、または全く与えない。別の極限からは、単変量解析方法は、ユーザを圧倒し、処理するのに過剰な量の時間がかかる、大量の情報を生成し得る。
【0061】
よって、階層モデル(本発明の実施形態)は、バッチである大量のパラメータを、監視して単一プロット(または少数のプロット、ユーザの好みによる)の中に効率的に提示することが可能になる、「階層型」または「親」PCAプロットを使用することによって、上記欠陥を解決する。本発明の実施形態は、本明細書に記載する階層解析モデルの使用を含み、バッチで監視されるパラメータの数は、約10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、あるいはそれ以上に等しいもしくはそれより多い場合がある。
【0062】
本発明の実施形態では、親PCAプロットを構築することは、ユニット動作水準でサブモデルPCAプロットを構築すること(例えば、実施形態では、PCAプロットは、含まれる各単変量パラメータ用のデータを伴う、各カラムに対して生成される)と、次いで、親PCAプロットを生成するように、サブモデルPCAプロットに加重値を与えることとを含む。したがって、親PCAプロットは、サブモデルを変数として使用し、観測をサブモデルベースで比較することを可能にする。
【0063】
図7は、クロマトグラフィーデータを処理して提示するように、本発明の実施形態に従う階層モデルの適用を示す。特に、図7は、従来のパルス検査HETPシステム(プロット708)の出力と比較した、本発明の実施形態に従う例示的システムのグラフ出力(プロット702、704、および706)を示す。例えば、グラフ出力は、図4で上に記載した、多変量グラフモジュール404等のグラフモジュールを使用して生成することができる。
【0064】
プロット702は、本発明の実施形態に従う階層モデルに従って構築された、親PCAプロットである。プロット702の各データ点は、プロセスの中のそれぞれのバッチに対応する。プロット702に示す通り、非定型バッチが、データ点710等の外れ値データ点として現れる。本発明の実施形態に従い、ユーザは、そのサブモデル成分を観測することによって、親PCAプロットの中の外れ値データ点の原因を検証することができる。例えば、図7に示す通り、ユーザは、外れ値データ点710のサブモデル成分を示す、ヒストグラムプロット704を見ることができる。次いで、ユーザは、どのサブモデルが傾向から外れ得るかを判定する(すなわち、どのサブモデルが傾向から外れるかを特定するように、モデルを掘り下げる)ことができる。加えて、本発明の実施形態に従い、ユーザは、その成分パラメータをさらに検証することによって、なぜ特定のサブモデルが傾向から外れるのかをさらに特定することができる。例えば、図7に示す通り、ユーザは、ヒストグラムバー712のパラメータ成分を示す、ヒストグラムプロット706を見ることができる。これにより、ユーザが、異常値を有する場合がある、1つもしくは複数のパラメータを決定することが可能になる。
【0065】
対照的に、プロット708は、従来のパルス検査HETPの出力を示す。示される通り、プロット708の単変量図は、データの中のあらゆる傾向を示すのに失敗し、それゆえ、本発明の実施形態に従うグラフ出力より著しく劣る。
【0066】
以下に記載される図8〜14は、本発明の実施形態に従い、クロマトグラフィーカラム性能を評価するための例示的システムの能力を監視する、種々のカラムを示す。例示的システムは、上記の1つもしくは複数のデータ解析方法、および本発明の実施形態に従う階層データモデルを使用する。特に、階層モデルは、データの15個のバッチに基づき、以下表1に示すパラメータを使用して構築された。
【0067】
【表1】

さらに、モデルが鋭敏で、ノイズにさらされなかったことを保証するために、各カラムは別々にモデル化された。モデルはデータの15個の「良い」バッチに基づいて構築され、既知の障害はモデルの中の外れ値として目立つようにモデル化された。商業プロセス上のrProteinA、TMAE、またはフェニルカラムに適用した時、これらのモデルは、カラムの耐用年数にわたって性能のドリフトを検出し、非定型器具の性能を検出し、溶出条件における差異を検出し、再充填の安定性を実験的に判断し、生成物関連の不純物を検出し、プロセス関連の不純物を検出することができた。これらのような用途は、本明細書に提供する図および説明の中で例証される。
【0068】
図8および9は、機械的な問題を検出する、例示的システムの能力を示す。特に、図8は、rProteinAカラム用のモデルのPCAプロット800を示す。バッチが受容されると、入力パラメータがモデルの中に追加され、多変量比較が、観測間の差異を隔離するように、全パラメータで行われる。PCAプロット800は、単一カラム用であるため、上記階層モデルとの関連でサブモデルに対応し得ることに留意すべきである。図8に示す通り、rProteinAカラム用のサブモデルは、観測(バッチ)が、外れ値データ点802に対応する1つのバッチを例外として、95%信頼楕円内に良く分布することを示す。
【0069】
上記の通り、本発明の実施形態に従い、モデルは、どのパラメータが、PCAプロットの中に外れ値データ点をもたらしているかを判定する能力を提供する。この実施例では、さらなる試験の時、外れ値バッチの中の伝導率が、その過去使われた平均値から離れた、3つの標準偏差(SD)であったことが判定された。この発見を確かめるために、外れ値バッチに対する溶出中の伝導率の単変量傾向を、図9に示す通り、他のバッチで重ね合わせた。これにより、外れ値バッチと他のバッチとの間の差異を確認した。続いて、研究の時、伝導率メータが誤っており、交換しなくてはならなかったと判定された。通常、このような事象を検出することは、関与するデータ解析の複雑さから比較的困難である。実際のところ、この種の事象を検出するために、データ管理システムは、パターン認識を行う能力を有する必要があるであろう。しかしながら、上記の通り、本事象は本発明の実施形態を使用して、かなり容易に検出された。これは、単変量パラメータを通して必ずしもパース(解析)する必要がないように、大量の情報を処理し、バッチ間の差異を隔離する時に、多変量モデルの有用性をさらに実証する。
【0070】
図10および11は、バッチ間の溶出条件の差異を判定する、例示的システムの能力を示す。例えば、図10では、外れ値バッチは、その対応するデータ点が、PCAプロット1000上に外れ値データ点1002として現れる時に検出される。続いて、図11に示す通り、さらなる試験の時に、バッチの重量モル浸透圧濃度が、他のバッチに対するより著しく高いと判定される。この観測は、過去使われた値と比較された、このバッチの収率の差異を説明した。伝統的な解析方法は概して収率に焦点を置き、より低い収率を検出することにより、バッチの差異を特定するように、入力パラメータを検査する一方で、本発明の実施形態は、出力の点でそれ自体を顕在化させる前に、変数を特定するように多変量様式の入力を検査することに留意されたい。したがって、本発明の実施形態は、バッチの差異のより迅速な検出をもたらす。
【0071】
図12および13は、時間とともに性能のわずかで緩やかな変化を検出する、例示的システムの能力を示す。特に、図12は、プロセスの中の最後の10個のバッチに対応するデータを伴う、PCAプロットである。図12に示す通り、より低サイクルのバッチに対応するデータ点は、より高サイクルのバッチに対応する、データ点から容易に区別することができる。したがって、経時的な性能変動を容易に検出することができる。
【0072】
代替として、本発明の実施形態に従い、PLS方法を使用することができ、関心の対象となるパラメータ(例えば、クロマトグラム特性、段階収率、遷移解析パラメータ)は、PLS回帰の中にYベクトルとして設定することができる。したがって、パラメータ観測は、観測時に、変動入力の影響を反映する分布をもたらす。この手法の利点は、カラム耐用年数が出力の変動に基づくのとは対照的に、カラム内のパラメータの時間変動の実験による試験に基づき決定することができることである。したがって、例えば、出力の中に現れる問題/異常性より先に、再充填カラムに関して決定することができる。例として、本発明の実施形態に従うモデルは、その最後の20サイクルにわたって、フェニルカラムに適用され、関心の対象となるパラメータが、遷移解析プロフィールであった。図13に示す通り、異なるサイクル回数を伴う観測用の遷移解析プロフィールは、サイクル回数進行と並ぶ分布をもたらした。さらなる解析時には、遷移解析パラメータのわずかなシフトがあった(この場合、非ガウスHETP)と判定され、それは時間とともに、カラムの耐用年数の終了に近づくと、増加していった。
【0073】
本発明の実施形態に従う多変量モデルはまた、再充填カラムの品質を判定するのに使用することもできる。本発明の実施形態では、これは、再充填カラムが、確立されたプロセスの痕跡に適合するかどうかを判定することによって、なすことができる。例として、これは、図14に図示する通り、フェニルカラムに適用された。図14に示す通り、15個の鍵となるクロマトグラフィーパラメータの多変量図は、PCAプロット1400の中心に、再充填カラムからの第1のバッチに対応するデータ点を配置したことが観測された。これにより、再充填カラムは、その早期サイクルで古いカラムと同様に機能していたことが確認された。
【0074】
本発明の実施形態は、クロマトグラフィー方法のいかなるタイプへの、本明細書に記載の方法の適用を含む。かかるクロマトグラフィー方法は、例えば、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー(例えば、高性能液体クロマトグラフィー)、アフィニティークロマトグラフィー、超臨界流体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、二次元クロマトグラフィー、高速タンパク質(FPLC)クロマトグラフィー、向流クロマトグラフィー、キラルクロマトグラフィー、水性順相(ANP)クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、擬似アフィニティークロマトグラフィーを含むが、それらに限定されない。
【0075】
本発明の実施形態は、マクロおよびミクロ生物学的、ならびに薬理学的化合物の単離のためのクロマトグラフィー方法の使用における、本明細書に記載の方法の適用を含む。かかる化合物は、例えば、タンパク質(例えば、抗体およびそれらの断片を含む)、核酸、炭水化物、脂質、有機小分子、非有機小分子、ウイルス、リポソーム、およびいずれのかかる化合物のハイブリッドまたは改変体形態を含むことができるが、それらに限定されない。
【0076】
本発明の実施形態は、遷移および/またはプロセスデータの多変量解析によって生成される、性能データ値のグラフ表示を含む。例えば、性能データのグラフ表示は、コンピュータのモニタ上に提示することができる。グラフ表示は、ユーザが観測および解析用の特定の性能データ値を選択することを可能にする、相互作用のユーザインターフェースを含むことができる。この相互作用ユーザインターフェースは、観測間の差異を定量的に表示する効率的な手段を提供することができる一方、同時に、異常な性能値の根本原因を漸進的に絞り込むことによって、ユーザが観測間の変動の原因を調査して明らかにすることを可能にする。
【0077】
本発明の実施形態は、いつクロマトグラフィー媒体を交換または再充填すべきかを決定するのに使用するための、遷移および/あるいはプロセスデータの多変量解析を含む。
【0078】
本発明の実施形態は、いつクロマトグラフィー媒体を交換または再充填すべきかを予測するのに使用するための、遷移および/あるいはプロセスデータの多変量解析を含む。
【0079】
本発明の実施形態は、容認できないクロマトグラフィー性能の源を特定するのに使用するための、遷移および/またはプロセスデータの多変量解析を含む。
【0080】
本発明の実施形態は、1つもしくは複数の性能パラメータが、値の特定範囲外である場合、クロマトグラフィー性能の品質は容認できないと判定することを含む。一実施形態では、自動警告システムは、ユーザにその判定を通知するように誘起される。
【実施例】
【0081】
実施例
実施例1:宿主細胞タンパク質混入における上昇傾向の検出
タンパク質の調整規模生産中(複数の別個のカラムクロマトグラフィー「運転」を介して)、哺乳類の宿主細胞タンパク質(HCP)混入の上昇傾向が観測された(図15)。しかしながら、混入増加の原因は、利用可能なパラメータの単変量解析に基づいても容易には明らかにはならなかった。最初の仮説は、増加したHCP水準は、増加した産生出力全体(すなわち、増加した産生力価)によってもたらされていたというものだった。しかしながら、研究によって、より低い産生力価でのクロマトグラフィー運転が、類似の上昇HCP傾向を示していたため、これは唯一の根本原因ではあり得ないことが明らかになった。さらに、原因の特定を悪化させたのは、バッチは2つの別々のユニット(ユニット1およびユニット2)で生成されており、新しい細胞バンクがこの特定のユニット1で使用されていたため、より高力価バッチが、ユニット1に生成されていたという事実であった。それゆえ、細胞培養の差異に基づき、または精製プロセスの逸脱に基づき、増加するHCP傾向を分離することは、これらプロセスの中の数々の変数のために、非常に複雑であった。
【0082】
増加するHCPの原因を特定しようとして、高対低産生力価バッチに基づきデータを分離すること、およびユニット1による精製対ユニット2による精製に基づき、データを分離することによって、一方向解析が全HCPデータに対して行われた。一方向プラットフォームは、連続型Y変数(この場合、HCP含有量)の分布が、カテゴリーx変数(バッチ)によって画定される群(例えば、より高力価対より低力価調整、およびユニット1対ユニット2調整)にわたって、どのように異なるのかを解析する。データ組の2つの平均値を比較する別の手法(同一の解析を使用する)では、実際の差異がそれらの最小有意差(LSD)より大きいかどうかを判定する。この最小有意差は、2つの平均値の差異の標準誤差によって乗じられたスチューデントのt統計量である。この一方向解析は、より高力価バッチがより低力価バッチより著しく高い平均HCP含有量を有する(それぞれ、2.87対1.06)ことを示した。加えて、ユニット1およびユニット2は、著しく異なる平均HCP含有量(それぞれ、1.46対0.85)を有することも観測された。しかしながら、これにより、高対低力価の影響から精製ユニットの差異は分離されなかった。それゆえ、根本原因を特定するために、解析用の多変量モデルを適用することが決定された。
【0083】
細胞培養および精製サブモデルに基づき、多変量モデルを使用すると、TMAEクロマトグラフィーサブモデルが、HCP水準の変動に寄与する最大の影響を有する(または、最も有意なサブモデルである)と判定された。(TMAE=トリメチルアミノエチル(吸着クロマトグラフィーで使用される四級アンモニア残基))TMAE精製サブモデル用のPCAプロットを解析すると、精製ユニット1対ユニット2の観測間にはっきりした差異があったことが明確になった(図16)。
【0084】
TMAEサブモデルにおけるギャップ解析の概説により、2つの精製ユニットの中のカラムに対する非ガウスHETPの値が、著しく異なることを確認した(図17)。加えて、両方の精製ユニットからのクロマトグラフィー溶出プロフィールが重なった時、TMAEカラム性能の差異がさらに確認された(図18)。
【0085】
上記の解析により、異なる精製ユニットの中のTMAEカラムが、異なって機能していることが確認された一方で、性能の差異が、実際に、HCP含有量の差異に貢献していたことを、依然として突き止める必要があった。したがって、多変量解析が、HCP含有量を関心の対象となるベクトルとして使用して、62個のプロセス中の変数に行われた。モデルが、利用可能なデータに基づき、HCPの変動を説明するために作り出された。その多変量モデルは、モデルの中で最高にランクされる2つのVIP(予測における重要な変数)が、TMAEサイクル数と関連付けられることを明らかにした。これらのVIPは、モデルに寄与する各主成分(PC)の相対的重要性を与え、より高いVIPスコアを伴うPCはモデルにより関連する。したがって、この場合には、TMAEサイクル数は、NSO‐HCPにおける上昇傾向へ最大の影響を与えるように見られた。開発モデルが有効であることをさらに確認するために、残留物の結果(RおよびQ)が、該解析の適用性を確認するために使用された。Rはモデルが所与の変数をどの程度上手く説明するかという基準を提供し、Qはモデルの予測力を測定する。生物製剤産業では、約0.4もしくはそれ以上のQ値は、かなり有効なモデルを示すとみなされる。この特定の解析に対して、開発された多変量モデルと関連付けられるQ値は、優れた予測性を示す0.827であった。3日目のHCP、TMAEサイクル数、およびオフラインpH(多変量解析において重要な変数とも決定された)に対する応答表面プロットにより、相関は、増加したHCP含有量およびカラムサイクル回数(データは図示せず)間で最強であるとさらに確認された。精製ユニット1の中のTMAEカラムは、非ガウスHETP値がTMAEサイクル回数に対してプロットされた(データは図示せず)時、最適に機能していないことが明らかになった。
【0086】
それゆえ、多変量解析に基づき、カラムを新しい樹脂で再充填することが決定された。多変量モデルにより、再充填後、精製ユニット1の中のTMAEカラム性能は、過去使われたユニット1のカラム運転とは異なるが、性能は精製ユニット2のそれにより近い(図18および19)ことが確認された。実際、再充填は、HCP含有量の著しい減少をもたらした(図20)。それゆえ、本明細書に記載の原理を適用することによって、多変量解析は、クロマトグラフィー性能の望ましくない傾向の根本原因を特定し、それによって修正するように使用された。
【0087】
実施例2:プロセス関連不純物の原因の解析
最終原薬(DS)の宿主細胞タンパク質(HCP)濃度の解析は、いくつかの製造バッチにわたって実質的な変動を示した(HCPは0.5から7.9ppm)。根本原因解析の主な疑いは、主な仮説が、固定相(すなわち、AIEX媒体)の繰り返しの使用により、段階の性能が下がったとして、精製手順におけるアニオン交換クロマトグラフィー(AIEX)段階を指し示した。この仮説を試験するために、280nmでのUV吸収の連続トレースだけでなく、伝導トレースも解析された。その目的は、多変量プロセスモデルを組み立てて、連続データの定量解析をオフライン品質属性テストと関連付けることであった。MVAモデルは、58個のプロセス変数の最初の組で組み立てられた。最重要変数をランク付けた後、AIEXクロマトグラムのUVトレースから抽出された、14個のパラメータを伴う減少モデルを得た。これが、原薬の中の宿主細胞タンパク質の水準を予測するために、8個の重要パラメータを伴うモデルにまで、さらに減らされた。図21は、その結果得られたパラメータ組を示す。それぞれ0.76および0.73のR2値およびQ2値によって証明される通りに、優れた適合および予測性のモデルを得た。図22は、原薬中の測定および予測HCP濃度の間の優れた相関を示す。それゆえ、HCP含有量の変動は、長期の使用サイクルにわたる、AIEX段階の性能減少の結果であったことが確認された。
【0088】
実施例3:生成物に関連する不純物の原因の解析
生成物に関連する不純物の濃度は、いくつかの製造バッチにわたって増加するように観測された(0.9から1.9%)。研究により、1)細胞培養条件によって導入される不純物の潜在的な変動、および2)不純物の除去を担う疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)段階の充填の劣化という2つの主な疑いが明らかになった。
【0089】
異なる細胞培養バッチにわたる複数のクロマトグラムからの連続信号、および複数のカラム充填が、280nmでのUV吸収を使用して、および伝導率信号を解析することによって分析された。その時、その目的は、多変量プロセスモデルを組み立て、オフライン品質属性テストと相関させることであった。その結果得られたPCAモデルは、UVトレースの解析に由来する17個のパラメータ、伝導トレースの解析に起因する7つのパラメータ、および固定相の連続使用の数からの1つのパラメータ(すなわち、25番目の最終パラメータ)の25個のパラメータを使用した。相当な正確性のモデルが得られ、それぞれ0.4および0.5のR2およびQ2によって表された。
【0090】
図23は、その結果得られたPCAプロットを示す。楕円体は、95%信頼区間を表す一方、曲線の矢印は、繰り返し使用すると、予測および測定される不純物濃度はどのような傾向があるかを示す。したがって、これらのツールの使用により、クロマトグラフィー段階の分離効率へのHICカラム充填品質の影響、およびクロマトグラフィー段階の不純物負荷の寄与体としての細胞培養可変性を区別することが可能になった。
【0091】
つまり、これらの実施例は、特に、本明細書に記載する解析「ツールボックス」と併用する、カラムクロマトグラフィー監視に対する多変量解析手法の利用性および適用性を実証する。本方法論を適用しなければ、調整および精製プロセスのどの段階が、精製手順において許容できない逸脱の一因であったかを決定するのが、(実験の観点から)非常に困難であっただろう。したがって、本明細書で提供した実施例は、とりわけ以下を実証する。
●階層親モデルの使用により、プロセス操作者が、非常に重大な関心の対象となる1つまたは複数のサブモデルを特定することが可能になる。
●遷移解析を多変量モデル解析の一部として使用することにより、損なわれたカラム性能を特定する、鋭敏な解析の適用を可能にする。
●多変量法の使用は、完全に別個のカラムの性能間の差異の隔離を可能にする。
●多変量モデル解析の使用は、緩やかなカラムの劣化に起因する(例えば、カラムサイクル回数の増加に起因する)性能の減少の原因の隔離および特定を可能にする。
●多変量モデル解析は、カラム再充填結果の効率的な解析を可能にする。
●多変量モデル解析は、プロセスおよび生成物関連不純物の根本原因の効率的な検出を可能にする。
【0092】
したがって、これらの実施例は、クロマトグラフィー段階からの遷移解析データを使用して、多変量解析方法の適用により、カラム性能を評価する効率的で包括的な手段を提供することを実証する。多変量解析において複数の遷移解析計算を使用することによって、カラム性能に関する相当量の情報を、コンパクトな形で組み合わせ提示することができ、それによって、クロマトグラフィー性能を評価するための頑強なツールを提供する。それゆえ、単に単変量傾向を観測するだけとは対照的に、多変量の形での遷移解析パラメータの使用を、例えば、「許容可能なモデル樹脂」の痕跡を算出し、確立した痕跡に対するカラムの実性能を追跡することによって、カラムの耐用年数を検出するように、使用することができる。さらに、本明細書に記載する方法は、とりわけ、精製プロセス内でカラムの性能の痕跡を判定するのに使用することができる解析の多変量ツールボックスを提供する。
【0093】
特定の実施形態の前述の記載は、当業者が、当該分野の技能内の知識を適用することによって、過渡の実験をせず、本発明の一般的概念から逸脱することなく、特定の実施形態のような種々の用途を容易に修正および/または用途に適合させることができるという、本発明の一般的性質を明らかにする。そのため、かかる適応および修正は、本明細書に提示した教示および指導に基づき、開示する実施形態の同等物の意味および範囲内であるように意図される。本明細書の中の表現または用語は、本明細書の用語または表現が、教示および指導を踏まえ当業者によって解釈されるように、説明のためであって、限定するものではないことが理解されるべきである。
【0094】
本明細書に記載の例示的特長の多くが、クロマトグラフィーの漸増する遷移を参照する一方、本発明は、漸増および漸減する遷移の両方に対して等しく良く機能することに留意すべきである。さらに、本発明は、特定の機能およびそれらの関係の実装を説明する機能的構成要素を用いて、上に記載されている。これらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜上、本明細書では任意に画定されている。特定の機能およびそれらの関係が、適切に行われる限りにおいて、代替の境界を画定することができる。
【0095】
本発明の広さと範囲は上述の例示的実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物に従ってのみ定義されるべきである。加えて、発明の概要および要約セクションではなく、発明を実施するための形態は、特許請求の範囲を解釈するのに使用されることを意図していることが理解されるべきである。発明の概要および要約セクションは、発明者(ら)によって熟慮されたように、本発明の全ての例示的実施形態ではなく、1つもしくは複数の例示的実施形態を述べることができ、決して本発明および添付の特許請求の範囲を限定することを意図しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーカラムの性能を監視するための方法であって、
a)それぞれの出力観測に対応する複数のプロセスデータ値を生成するように、前記クロマトグラフィーカラムの出力を監視することと、
b)複数の遷移データ値を生成するように、前記複数のプロセスデータ値に遷移解析を行うことと、
c)前記出力観測に対応する、複数の性能値を生成するように、階層モデルにより、1つもしくは複数の多変量統計解析方法を前記プロセスデータ値および遷移データ値に適用することと、
d)前記性能データ値をグラフで表示することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記監視される出力は、
a)伝導率と、
b)pHと、
c)塩濃度と、
d)光吸収と、
e)適する波長の光による励起後の蛍光と、
f)屈折率と、
g)電気化学応答と、
h)質量分析データと、から成る群より選択される、パラメータを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(d)において計算された性能値が、値の特定範囲外である場合、前記クロマトグラフィー性能は容認できないと判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記判定が、ユーザに前記判定を通知するように、自動警告システムを誘起する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(d)において計算された性能値が、値の特定範囲内である場合、前記クロマトグラフィー性能は容認できると判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記クロマトグラフィーカラム性能は、生体分子または薬理化合物の分離中に監視される、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体分子または薬理化合物は、
a)タンパク質と、
b)核酸と、
c)炭水化物と、
d)脂質と、
e)薬理活性小分子と、
f)a)からe)のうちのいずれか1つのハイブリッドまたは改変体形態と、から成る群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
行われる前記クロマトグラフィーの方法は、
a)ガスクロマトグラフィーと、
b)液体クロマトグラフィーと、
c)アフィニティークロマトグラフィーと、
d)超臨界流体クロマトグラフィーと、
e)イオン交換クロマトグラフィーと、
f)サイズ排除クロマトグラフィーと、
g)逆相クロマトグラフィーと、
h)二次元クロマトグラフィーと、
i)高速タンパク質(FPLC)クロマトグラフィーと、
j)向流クロマトグラフィーと、
k)キラルクロマトグラフィーと、
l)水性順相(ANP)クロマトグラフィーと、
m)混合モードクロマトグラフィーと、
n)擬似アフィニティークロマトグラフィーと、から成る群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法によって生成される、前記性能データ値のグラフ表示。
【請求項10】
前記表示は、コンピュータのモニタである、請求項9に記載のグラフ表示。
【請求項11】
前記監視することは、前記クロマトグラフィーカラムをいつ交換または再充填するべきかを決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記監視することは、前記クロマトグラフィーカラムをいつ交換または再充填するべきかを予測することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記監視することは、容認できないクロマトグラフィー性能の源を特定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記監視することは、
a)主成分分析(PCA)と、
b)部分最小二乗法(PLS)と、
c)最小有意差(LSD)と、から成る群より選択される、統計解析方法の使用を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
a)前記それぞれの出力観測に対応する、複数のクロマトグラムを生成することと、
b)前記複数のクロマトグラムを互いに重ね合わせることと、
c)前記複数のクロマトグラムに基づき、カラム性能の差異を決定するように、パターン認識方法を適用することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
a)前記それぞれの出力観測に対応する、複数のクロマトグラムを生成することと、
b)理想的なクロマトグラフィー標準を生成することと、
c)非定型のカラム挙動を検出するように、前記複数のクロマトグラムを、前記理想的なクロマトグラフィー標準と比較することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−500390(P2012−500390A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523182(P2011−523182)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/053773
【国際公開番号】WO2010/019814
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)