説明

クロマトグラフ分離のための極性修飾結合相材料

【課題】クロマトグラフィにおける改良された固定相用組成物とその製造方法を提供するものである。その組成物はバッチごとの再現性にすぐれ、塩基性と酸性の溶離条件下で安定であって、シラノール含有量が少なく、塩基性試料でテーリングを示さない、という点ですぐれている。
【解決手段】式
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
で表わされる少なくとも1種のシランで無機基質を修飾したものを固定相とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般にクロマトグラフィによる分離に役立つ組成物と基質とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィの応用に際し、固定相として使用できる結合相の製作が広く研究されて来た。液体クロマトグラフィにおける結合相を製作するのに、シランは最も普通に使用される表面修飾剤である。シランと色々な表面との化学がよく研究されている。シリカ系のクロマトグラフィ支持材の表面とシランとの反応の一般的議論が、下記非特許文献1に記載されている。シランと多孔性シリカとの反応に関する詳細な追加事項は、下記非特許文献2に開示されている。シランと種々の材料との反応の広汎な記載は、下記非特許文献3に記載されている。
【0003】
1官能性、2官能性及び3官能性シランを使用して結合相を製造することは、下記非特許文献4に既に記載されている。1官能性シランはシリカとただ1個の共有結合を作ることができるだけであるから、安定性の低い結合層を生じる。2官能性シランは、より多くの化学結合を生じる能力を持っているから、幾分安定性の高い結合層を創る。3官能性シランは、原則としてシリカ表面に最大数の結合を作るから、最も安定な結合相を作ることが期待される。1官能性の表面修飾剤の代わりに3官能性シリル化試薬を用いると、配位子表面付着物の混合物が生成する。これらの付着物は、シリカ表面上に2種以上のシラノール、例えば遊離したシラノール(単離している)、隣接しているシラノール(ビシナール)又はジェミナルシラノールのようなものの存在によって影響を受ける。他方で、3官能性シランは、モノー、ビスー、又はトリス−シロキサン結合によって表面に付着することができる。未反応のアルコキシ基は、加水分解されて遊離したシラノールになると、追加の試薬とさらに反応して、第2層を形成することができる。
【0004】
しかし、結合過程の不規則性と立体障害のために、2官能性及び3官能性シランと反応した場合にも、すべての表面シラノールを完全に除去することは可能でないことが知られている。2官能性及び3官能性シランを使用して結合相を作るには、再現性の困難があるために、市販の結合相は大部分1官能性シランを基礎にしている。シリカ表面上又は試薬若しくは溶剤中の少量の水でさえも、表面に付着された結合相の量を実質的に増大させ、その結果バッチごとの結合相の再現性に問題を生じる。下記非特許文献1の115頁を参照。
【0005】
シリカゲルは独特の特性を持っており、そのためにクロマトグラフィの支持体として非常に有用であって、とくに高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の支持体として使用できる。詳述すると、シリカはその表面を色々な配位子で修飾することができ、その結果機械的、熱的、及び化学的安定性のよい結合相を生じるので、HPLC充填材として極めて好評である。シリカゲルは珪酸Si(OH)4の重合体の形であって、その場合、水分子を除くことによって、隣接する珪素原子の間にシロキサン結合が生成される。重合体構造中で破壊が起こると、シラノール基(Si−OH)が存在することになる。シリカゲル上でのシラノール基の表面密度は、約8μモル/m2である。これらのシラノール基はシリル化試薬と反応する。最も活動的なシラン化反応を用いても、立体障害がより高い密度の表面被覆を妨げるので、僅か50%のシラノール基がシリル化された誘導体に変えられるに過ぎない。従って、元のシラノール基の大部分が残っていて、クロマトグラフィによる分離の間、これらは塩基性試料(analyte)(一般にアミン)のような親シラノ性試料と互いに作用し合う。また、未反応シラノール基の存在は、カラム上で塩基性試料の吸着を起こし、結果として試料のテーリング(tailing)と、非対称のピーク又は不可逆吸着さえも起こすことになる。
【0006】
シリカを基材とする結合相のもう一つの欠点は、pHの安定性に関係している。従来のシリカゲルを基材とする充填材は、pH安定性の範囲を限定して来た(2.5−7.5)。低いpHでは、珪素と炭素の結合が分解して結合相の浸食をもたらす。高いpHでは、シリカゲル自体が溶解し、結合相の消失に終る。これら2つの例では、クロマトグラフィの側面に退歩と再現不能とが存在することになる。一般にpHは規定されたpHに維持する必要があり、そうしないと、カラムは混合物の狭いピークと望ましい保持体積とを作ったり、又は混合物の成分を分析したりする能力のような効果と特性とを失って、取り返しのつかない損害を受ける。カラムに対して定められた狭いpH範囲の外での間違った使用がほんの短い時間であっても、この損害は起こることがある。結合相は、pHの両極端で操作されると、数時間の限られた寿命を持ち、温和な条件下で操作されても、数ヶ月までの限られた寿命を持つのが普通である(下記非特許文献3の173ページを参照)。結合相の製作の際の再現性は、特定の分離と分離調書のために結合相の連続した正確さを保証するのに重要であって、その正確さはとくに裁判上の分析又はその他の分析操作において重要である。
【0007】
これらの問題に対する部分的な解決法は既に記載されて来たが、それは例えば、残留しているシラノール残渣を除くために末端にキャップを形成したり、移動相に有機修飾剤を付加したり、低いpH移動相を使用してシラノールをプロトン化したり、シリコン原子にメチル基の代わりにシラン試薬の嵩高い置換基を導入したり、2座配位子を使用したり、シリカとシランのシリコン原子との間の正規のシロキサン結合の代わりにシリコンと炭素の結合を生成させたり、また3官能性シラン混合物を使用したりする、という方法である。しかし、表面シラノールの有害な影響はクロマトグラフを実施する者の満足を得る程に解決されていない。
【0008】
残留するシラノールの問題を部分的に解決するもう1つの方法は、シリカ支持物をカプセル化することである。無極性の線状重合体をシリカの表面に吸着させ、次いでガンマ線を照射して橋かけ結合を開始させる。これによって、恒久性な抽出されない被覆が生成される。そのようにしてカプセル化されたシリカ又はアルミナ支持物は、塩基性の親シラノ化合物に対して高い効率と解決を示す。日本の資生堂社はカプセル化がすぐれた解決に対して責任を果たし得ると考えて、そのS/S−C18逆相充填物上に塩基性アミノ試料を求めて観察したと報告している。しかし、これらの材料の製作には問題がある。
【0009】
試料と相互に作用する残留シラノール基の問題に対する有用な1つの解決法は、静電気及び/又は水素結合の相互作用によってシリカ、シラノールと反応することができる修飾されたシリカ表面上に官能基を創り出すことである。アシルクロライド、活性エステル又はイソシアネートによる結合されたγ−アミノプロピル基の修飾は文献によく記載されている。予め形成されたアミノプロピルシリレイテッドシリカ表面をアシル化して、アシルアミノアルキル鎖を持ったシリカを基礎とする相間移動触媒を作る方法が開発されて来た(下記非特許文献5を参照)。類似の表面修飾手段が、キラル液体クロマトグラフィに適するアシルアミノアルキルシリレイテッドシリカ固定相を作るのに利用されて来た(下記非特許文献6を参照)。多種多様の酸クロライドによるアミノプロピルシリカのアシル化反応はA. Nomuraほかによって広く研究された(下記非特許文献7を参照)。この研究はBuszewskiとその共同研究者によって、広汎な固体状態のNMRとクロマトグラフィによる研究で同様なアシルアミノ誘導体とされたシリカについて追跡され、その著者によって「シリカを保持するペプチド結合」と名付けられた(下記非特許文献8を参照)。Ascahほかは、同様な化学反応を使用してSupelcosil ABZを開発したが、それは最初に市販された極性の埋め込み相であった(下記非特許文献9を参照)。また、アミド部分の代わりにウレタン官能基を保持している類似の官能性を持ったシリカ表面が報告されている(下記非特許文献10を参照)。
【0010】
シリカゲルの表面近くにあるアルキル配位子へ極性官能基を付加することによって、有機修飾体の低い百分率で100%の水のところでも、相は水によって冷媒和された状態にとどまっている。この条件下でアルキル鎖は立体配座の自由を維持して、極性試料と相互作用をすることができる。表面近くに極性官能基が存在することは、未反応のシラノール基の影響を保護するように働く。しかし、この研究方法は2つの個々の結合工程からなるので、その相は、アルキルアミド結合配位子に加えて、未反応のアミノプロピル基の或る留分と、シリカ表面上でのアシルクロライドとシラノールとの反応から来るアルキルエステル結合配位子と、残留シラノールとを含んでいる。誘導された基と誘導されていない基とが混在する可能性は、入り交じった分離方法を潜在させた。さらにこれは希望する固定相合成の副反応であるという事実のために、残留アミノ基のレベルは制御することが困難である。その上に、残留シラノール基の問題、酸及び塩基に対する相の安定性、及び相の製作における再現性は未解決のまま残っている。
【特許文献1】米国特許第6,071,410号明細書
【特許文献2】米国特許第6,645,378号明細書
【特許文献3】米国特許第5,374,755号明細書
【特許文献4】米国特許第5,268,097号明細書
【特許文献5】米国特許第5,234,991号明細書
【特許文献6】米国特許第5,075,371号明細書
【非特許文献1】HPLC Columns: Theory, Technology, and Practice, U. D. Neue, Wiley-VCH, Inc., New York (1997)
【非特許文献2】Characterization and Chemical Modification of Silica Surface, E. F. Vansant, et al., Elsevier Science B. V. New York (1995)
【非特許文献3】Silica Gel and Bonded Phases, Their Production, Properties and Use in LC, R. P. W. Scott, John Wiley & Sons, New York (1993)
【非特許文献4】L. C. Sander et al., (1984) Anal. Chem. 56:504-510
【非特許文献5】P. Tundo et al., (1979) J. Amer. Chem. Soc. 101:6606-6613
【非特許文献6】N. Oi, et al., (1983) J. Chromatogr. 259:487-493
【非特許文献7】A. Nomura, et al., (1987) Anal. Sci. 3:209-212
【非特許文献8】B. Buszewski, et al., (1991) J. Chromatogr. 552:415-427
【非特許文献9】T. Ascah et al., (1990) J. Chromatogr. 506:357-369
【非特許文献10】J. E. O'Gara et al., (1999) Anal. Chem. 71:2992-2997
【非特許文献11】Handbook of Chemistry and Physis, "Table of constant RH Solutions" (Chemical Rubber Co. Press, Cleveland, OH)
【非特許文献12】Li, et al., New Reversed Phase HPLC Columns for Drug Discovery and Pharmaceutical Method Development, presented at Pittcon 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明は、上述の欠陥を、以下が述べるような固定相と製作方法によって大幅に改良するものである。
【0012】
従って、この発明の主たる目的は、1つのバッチから次のバッチへ遥かによく再現できるクロマトグラフィ用の固定相を作ることによって、この技術分野の上述の必要を検討することである。この発明のもう1つの目的は、塩基性及び酸性での溶離条件に安定な結合相を提供することである。さらに、この発明のもう1つの目的は、シラノール含有量が低くて、塩基性試料でテーリングを示さない結合相を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、この発明は次式を持った少なくとも1種のシランで修飾された無機基質からなるクロマトグラフィの固定相用組成物を提供する。
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
上記式中、R1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH3C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立して選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基である。
【0014】
無機基質は、金属酸化物又はメタロイド酸化物、例えばシリカ、アルミナ、ゼオライト、ムライト、ジルコニア、バナジア又はチタニア、又はこれらの混合物又は複合物であり、アルコキシシラン、ヒドロキシシラン、アミノシラン又はハロシランと反応することができる反応性金属酸化物を持ったものであることが好ましい。無機基質の表面をシランで修飾したあとで、シランは酸素結合により無機基質に共有結合で接続される。
【0015】
好ましい具体例では、無機基質はモノリス又は多孔性粒子の形をしている。モノリスはガラス繊維、光学繊維、毛細管又は非多孔性粒子であって、それらは基質表面と連結していてもよい。多孔性粒子は約60Åから約1000Åまでの平均直径の孔を持ち、約3μmから約60μmまでの平均大きさの粒子であることが好ましい。
【0016】
好ましい実施態様では、無機基質はシリカゲルを含んでいる。
別の好ましい実施例では、無機基質は少なくとも1種のシランで修飾される前に、限定された相対湿度の大気中で平衡にされている。平衡時間は変化するが、一般に期間として数日から数週である。限定された相対湿度の大気中での無機基質の平衡は、シリカゲル基質の表面に一定量の水を与え、クロマトグラフィに固定相として用いられるべき修飾された基質のバッチごとの再現性を高める。限定された相対湿度の大気は、弗化セシウム、臭化リチウム、臭化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化リチウム、臭化カルシウム、酢酸カリウム、弗化カリウム、塩化マグネシウム、沃化ナトリウム、炭酸カリウム、硝酸マグネシウム、臭化ナトリウム、塩化コベルト、亜硝酸ナトリウム、沃化カリウム、塩化ストロンチウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、臭化カリウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硝酸ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸カリウム又は硫酸カリウムを含む水和塩又は飽和塩溶液によって与えられる。限定された相対湿度は50%より少ないことが好ましい。特定の具体例では相対湿度は約0%から約10%まで、約10%から約20%まで、約20%から約30%まで、約40%から約50%まで、約50%から約60%まで、約60%から約70%まで、約70%から約80%まで、約80%から約90%まで、又は約90%から約100%までである。1つの好ましい実施例では、飽和塩溶液がLiClであって、LiClは約11%から12%の相対湿度の大気を提供する。
【0017】
一面において、修飾された無機基質は、クロマトグラフィの固定相として使用される場合、1000時間にわたって酸性又は塩基性の溶離状態に露出されても、分離される試料に対して保持時間、ピーク対称性及び保持因子が僅か3%以下変化するに過ぎない。上記固定相上で分離される試料に対する保持時間、ピーク対称性及び保持因子は3000時間にわたって酸性又は塩基性の溶離状態に露出されても、約5%以下変化するだけであることが好ましい。
【0018】
好ましい具体例では、無機基質はシリカゲルであって、少なくとも2種類のシランによって修飾される。1つの具体例では、シリカゲル基質が第1のシランで修飾され、その後にそのシリカゲル基質が第2のシランで修飾される。別の具体例では、第1シラン又は第2シラン又は第1シランと第2シランの両者が、シランの混合物からなる。修飾はトルエン又はキシレンのような不活性の溶剤と、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール又はN,N−ジメチルブチルアミン又はこれらの組み合わせ物のような捕捉剤の存在下で行うことが好ましい。シリカゲル基質の修飾を行うための反応温度は、不活性な溶剤の還流温度であることが好ましい。
【0019】
或る好ましい具体例では、シリカゲル基質はδが0−3の少なくとも1種のシランと、δが0又は1の1種のシランで修飾される。或る他の具体例では、シリカゲル基質はδが0−3の少なくとも2種類のシランで修飾される。
【0020】
或る特定の具体例では、シリカゲル基質は第1のシランで修飾され、そのあとで第2のシランで修飾される。第1のシランはδに対して1−3の値を持ち、第2のシランはδに対して0−3の値を持つことができる。
【0021】
もう1つの具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、αは1であり、βは1−30であり、γは0、1又は2であり、R1は置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qはアミド又はカルバミルであり、第2のシランはδに対して1の値を持ち、αは1であり、βは1−30であり、γは0、1又は2であり、R1は置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qはアミド、カルバミル、シアノ又はグリシドキシである。
【0022】
他の具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、αは1であり、βは1−30であり、γは0、1又は2であり、R1は置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qはカルバマト又はウレタンであり、第2のシランはδに対して1の値を持ち、αは1であり、βは1−30であり、γは0、1又は2であり、R1は置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qはアミド、カルバミル、シアノ又はグリシドキシである。
【0023】
別の具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、αは1であり、βは1−30であり、γは0、1又は2であり、R1は置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qはアミド、カルバメート、ウレタン又はカルバミルであり、第2のシランはδに対して1の値を持ち、αは1であり、βは1−30であり、γは0、1又は2であり、R1は置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qはイソシアナト、ジオール、エトキシ、プロポキシ、カルボニル、カルボキシ又はアセトニルである。
【0024】
他の具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、βは1−30であり、γは0、1又は2であり、R1は置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qはアミド、カルバメート、ウレタン又はカルバミルであり、第2のシランはδに対して1の値を持ち、αは1であり、βは1−30であり、γは0、1又は2であり、R1は置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qはチオ、ジチオ、エーテル、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、硫酸塩、スルホンアミド、アミノ、ニトリル、イソニトリル、エポキシ、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ又はホスフェートである。
【0025】
さらに別の具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、αは1であり、βは1−30であり、γは0、1又は2であり、R1は置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qはアミド又はカルバミルであり、第2のシランはδに対して0、1、2又は3の値を持ち、αは0であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、R1は水素又は置換され若しくは置換されないC1−C6のヒドロカルビルである。
【0026】
もう1つの具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、R1は置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qはアミドであり、第2のシランはδに対して1の値を持ち、R1は置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qはアミド、シアノ又はグリシドキシである。
【0027】
別の具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、αは0であり、βは8−30であり、γは0、1又は2であり、R1は水素であり、第2のシランはδに対して1の値を持ち、R1は置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qはアミド、シアノ又はグリシドキシである。
【0028】
他の具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、αは0であり、βは8−30であり、γは0、1又は2であり、R1は水素であり、第2のシランはδに対して1の値を持ち、R1は置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qはイソシアナト、ジオール、エトキシ、プロポキシ、カルボニル、カルボキシ又はアセトニルである。
【0029】
もう1つの具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、αは0であり、βは8−30であり、γは0、1又は2であり、R1は水素であり、第2のシランはδに対して1の値を持ち、R1は置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qはチオ、ジチオ、エーテル、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、硫酸塩、スルホンアミド、アミノ、ニトリル、イソニトリル、エポキシ、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ又はホスフェートである。
【0030】
さらにもう1つの具体例では、第1のシランはδに対して1の値を持ち、αは0あり、βは8−30であり、R1は水素であり、γは0、1又は2であり、第2のシランはδに対して1の値を持ち、βは1−30であり、αは0又は1であり、R1は若し存在するとすれば水素又は置換され若しくは置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qはアミド、シアノ又はグリシドキシである。
【0031】
さらに他の具体例では、シリカゲル基質は末端キャップ形成シランのような少なくとも1種の追加のシランでさらに修飾される。末端キャップ形成シランはモノシラン、ジシラン、トリシラン又はテトラシラン又はそれらの組み合わせ物であることが好ましい。末端キャップ形成に役立つモノシランは、例えばトリメチルクロロシラン、N,N−ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ジメチルジクロロシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメチルシラノール、トリメチルシリルホスフィン、又はN−トリメチルシリルアセトアミドを含んでいる。末端キャップ形成に役立つジシランは、例えばヘキサメチルジシラザン又は1,3−ジメトキシテトラメチルジシロキサンを含んでいる。末端キャップ形成に役立つトリシランは、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサンを含んでいる。末端キャップ形成に役立つテトラシランは、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンを含んでいる。
【0032】
他面ではこの発明の修飾された無機基質は、クロマトグラフィ用の固定相として使用される。好ましい具体例では、クロマトグラフィの使用は、薄層クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、順相クロマトグラフィ、イオンクロマトグラフィ、イオン対クロマトグラフィ、逆相イオン対クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、疎水性インタラクションクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、キラルレコグニションクロマトグラフィ、パーフュージョンクロマトグラフィ、通電クロマトグラフィ、分配クロマトグラフィ、ミクロカラム液体クロマトグラフィ、毛管クロマトグラフィ、液体−固体クロマトグラフィ、分取クロマトグラフィ、親水性インタラクションクロマトグラフィ、超臨界液体クロマトグラフィ、プレシピテイション液体クロマトグラフィ、結合相クロマトグラフィ、ファスト液体クロマトグラフィ、フラッシュクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ・マススペクトロメトリー、ガスクロマトグラフィ、微細流体素子工学を基礎とする分離、固体相抽出分離又はモノリスを基礎とする分離である。
【0033】
特定の具体例では、Xはハロゲン、アルコキシ、アミノ又はアシルオキシである。或る具体例では、Q、R1又はR2はキラルレコグニション配位子である。キラルレコグニション配位子は光学的に活性で、脂質、アミノ酸、ペプチド、砂糖、ヒドロキシ置換アミン又はヒドロキシ置換酸を含むキラル化合物をさらに含むことができる。或る具体例では、キラルレコグニション配位子は、ヘテロシクロアルキル部分又はシクロデキストリンのような結合されたヘテロシクロアルキル部分である。
【0034】
好ましい具体例では、無機基質はシリカゲル基質であって、次の工程で修飾される。
(a)限定された相対湿度の大気中でシリカゲル基質を平衡にし、
(b)そのシリカゲル基質を少なくとも1種類のシランで修飾し、
(c)そのシリカゲル基質をさらに末端キャップ形成シランで修飾する。
【0035】
他の具体例では、工程(b)のあと又は工程(b)と同時に、第2のシランを使用してさらに修飾が行われる。或る他の具体例では第2のシランに対するδは1であり、第2のシランに対するR1はC1−C6のヒドロカルビルである。特定の具体例では、第2のシランを使用しての修飾工程は、第1のシランを使用しての修飾工程と同時に行われ、さらに他の特定の具体例では、第2のシランを使用しての修飾工程は第1のシランを使用しての修飾工程のあとで行われる。
【0036】
さらに1つの具体例では、この発明は次の工程から成る無機基質を修飾する方法を提供している。
(a)限定された相対湿度の大気中で無機基質を平衡にし、
(b)その無機基質を少なくとも1種類のシランで修飾し、
(c)その無機基質をさらに末端キャップ形成シランで修飾する。
【0037】
上記のシランは式
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
を持つことが好ましく、式中、R1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO,−CHOHCHOH−,−CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH3C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立して選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基である。特定の具体例では、この方法はさらにこの無機基質をδが0−3の第2のシランで修飾する工程を含んでいる。追加の具体例では第2のシランに対するδは0又は1である。或る他の具体例では第2のシランに対するδは1であり、第2のシランに対するR1はC1−C6のヒドロカルビルである。特定の具体例では、第2のシランを用いての修飾工程は、第1のシランを用いての修飾工程と同時に実施されるが、さらに他の具体例では第2のシランを用いての修飾工程は、第1のシランを用いての修飾工程のあとで実施される。
【0038】
好ましい具体例では、無機基質は水和塩又は飽和塩溶液によって与えられる限定された相対湿度の大気中で平衡にされる。水和塩又は飽和塩溶液は、弗化セシウム、臭化リチウム、臭化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化リチウム、臭化カルシウム、酢酸カリウム、弗化カリウム、塩化マグネシウム、沃化ナトリウム、炭酸カリウム、硝酸マグネシウム、臭化ナトリウム、塩化コバルト、亜硝酸ナトリウム、沃化カリウム、塩化ストロンチウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、臭化カリウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硝酸ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸カリウム又は硫酸カリウムを含んでいることが好ましい。特定の具体例では、相対湿度は約0%から約10%まで、約10%から約20%まで、約20%から約30%まで、約40%から約50%まで、約50%から約60%まで、約60%から約70%まで、約70%から約80%まで、約80%から約90%まで、又は約90%から約100%までである。特定の具体例では、限定された相対湿度は50%より小さい。
【0039】
1つの具体例では無機基質は金属又はメタロイド酸化物の基質である。特定の具体例では金属又はメタロイド酸化物は、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ムライト、ジルコニア、バナジア又はチタニア、又はこれらの混合物又は複合物である。
【0040】
好ましい具体例では、この発明は複数の試料を分離する方法を提供するものであって、その方法は、上述のように、少なくとも1種類のシランで修飾された無機基質からなる固定相を使用してクロマトグラフによる分離を実施することを含んでいる。そのクロマトグラフによる分離はガス状又は液状の移動相を用いて実施することができる。1つの具体例では、移動相は0から100%までの水を含んでいる。そのクロマトグラフによる分離は、薄層クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、順相クロマトグラフィ、イオンクロマトグラフィ、イオン対クロマトグラフィ、逆相イオン対クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、疎水性インタラクションクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、キラルレコグニションクロマトグラフィ、パーフュージョンクロマトグラフィ、通電クロマトグラフィ、分配クロマトグラフィ、ミクロカラム液体クロマトグラフィ、毛管クロマトグラフィ、液体−固体クロマトグラフィ、分取クロマトグラフィ、親水性インタラクションクロマトグラフィ、超臨界液体クロマトグラフィ、プレシピテイション液体クロマトグラフィ、結合相クロマトグラフィ、ファスト液体クロマトグラフィ、フラッシュクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ・マススペクトロメトリー、ガスクロマトグラフィ、微細流体素子工学を基礎とする分離、固体相抽出分離又はモノリスを基礎とする分離であることが好ましい。
【0041】
或る好ましい具体例では、この発明の方法は、クロマトグラフィを使用してシリカゲル基質上で試料を分離する改良方法を提供し、その改良は式
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
を持った少なくとも1種類のシランを使用して修飾されたシリカゲル基質を提供するものであって、式中R1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH3C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立して選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基であり、ここではシリカゲル基質は少なくとも1種類のシランを使用して修飾する以前に、限定された相対湿度の大気中で平衡にされ、またここではシリカゲルはδが0−3の少なくとも1種類のシランと、δが0又は1の少なくとも1種類のシランと、末端キャップ形成試薬とで修飾される。
【0042】
他面では、この発明は固定相が上述の修飾された無機基質を含んでいるクロマトグラフィカラムを提供するものである。
【0043】
さらに別の具体例では、この発明は式
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
を持つ無機基質修飾用のシランを提供するものであり、式中R1はハロゲン、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1、βは0−30、γは0、1又は2、δは0−3、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれるものであり、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH3C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立して選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基である。
【0044】
この発明の追加の目的と利点と新規な特徴とを、以下の説明中で部分的に述べるが、一部は以下のことを検討すると当業者には明らかとなるであろうし、又はこの発明の実施によって知ることができよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
この発明は、添付の図面を参照することによって一層よく理解できよう。
【0046】
I.定義と概要
この発明は、詳しく説明する前に、特別にことわりがなければ、アルキル基、アリール基又は極性基が変わるように、特定のアルキル基、アリール基又は極性基に限定されるものでないということは云うまでもない。また、ここで用いる用語は特定の具体例を説明するためだけのもので、この発明の範囲を限定することを意図していないことも云うまでもない。
【0047】
この明細書及び特許請求の範囲で使用している単数形「a」、「and」及び「the」は、前後関係が明らかにそうでないと記載しているのでなければ、複数物を含むことに注意しなければならない。従って、例えば、「1種の溶剤」と云う場合には、これは2種又はそれ以上の溶剤を含んでおり、「シラン」という場合には2種又はそれ以上のシランを含んでおり、以下同様である。
【0048】
或る範囲が数値で規定されている場合に、前後関係が明らかに別様に記載しているのでなければ、その範囲の上限と下限との間の中間にある各値は下限の単位の10分の1までこの発明に含まれ、またその規定されている範囲内で他に記載され又は中間にある値はどのような値もこの発明の中に含まれることは云うまでもない。これら小さい方の範囲の上限と下限は、独立してその小さい方の範囲に含まれ、また記載された範囲内でとくに除かれている限界である場合を除いて、この発明の範囲に包含される。記載されている範囲が限界の一方又は両方を含む場合には、この含まれている限界の一方又は両方を除外している範囲もまたこの発明に含まれる。
【0049】
ここで使用されているカルボニル部分は「C(O)」を示している。
ここで使用されているQは−NHC(O)−(アミド)として定義され、−C(O)NH−(カルバミル),−OC(O)NH−(カルバマト),−NHC(O)O−(ウレタン),−NHC(O)NH−(カルバミド又は尿素),−NCO(イソシアナト),−CHOHCHOH−(ジオール),CH2OCHCH2O−(グリシドキシ),−(CH2CH2O)n−(エトキシ),−(CH2CH2CH2O)n−(プロポキシ),−C(O)−(カルボニル),−C(O)O−(カルボキシ),CH3C(O)CH2−(アセトニル),−S−(チオ),−SS−(ジチオ),−CHOH−(ヒドロキシ),−O−(エーテル),−SO−(スルフィニル),−SO2−(スルホニル),−SO3−(スルホン酸),−OSO3−(硫酸塩),−SO2NH−,−SO2NMe−(スルホンアミド),−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−(アミン),−CN(ニトリル),−NC(イソニトリル),−CHOCH−(エポキシ),−NHC(NH)NH−(グアニジノ),−NO2(ニトロ),−NO(ニトロソ),及び−OPO3−(ホスフェート)として定義されるが、ここでMeはメチレン又はメチルを云い、またここでnは30までの整数であり、一般に10より小さい整数である。注意しなければならないことは、Qが2個以上の極性部分の可能性を規定しているということである。例えば、Qはグリシドキシを含み、グリシドキシはエポキシとエーテルとの官能性を持ち、またQはポリエーテルを含み、これはポリエトキシとポリプロポキシの官能性を持っている。
【0050】
「グリシドキシ」という用語は「グリシデイルオキシ」と交換可能に使用されて、エポキシ官能性CH2OCHCH2O−を示している。
【0051】
ここで使用されている「アルキル結合相」という用語は、この発明に係るシランで修飾された修飾無機基質を指しており、ここでαは0であり、δは0であり、βは少なくとも6であり、結果としてアルキル部分を持った修飾された無機基質である。その代わり、「アルキル結合相」という用語はシランとの修飾体を指し、その場合αは0であり、δは1−3であり、また結果としてアルキル部分を持った修飾された無機基質である。
【0052】
ここで使用されている「極性に修飾された結合相」という用語は、この発明に係る少なくとも1種の極性シランで修飾された修飾無機基質を指しており、その場合δは0−3であり、βは1−30であり、αは1であり、従って結合相は上述のように無機基質の表面近くに位置するアミド、カルバマト、シアナト、エーテル等のような極性のQ部分を提供している。
【0053】
「極性埋没相」という用語は、上に述べたように、少なくとも1種の極性シランで修飾され、極性のQ部分がアルキル部分によって形成された疎水性相中に埋没されているようなアルキル部分を持っている極性に修飾された結合相を云うのである。極性シランは、極性機能とアルキル機能との両者が存在する限り、長い鎖状の極性シラン、又は短い鎖状の極性シラン又はこれら2種類のものの組み合わせであってもよい。
【0054】
「長い鎖状のシラン」という用語は、この発明に係るシランであって、δが0−3であり、βが1−30であり、αが0又は1であり、そのシランが少なくとも7個の炭素からなる炭化水素基を含んでいるようなシランを指している。
【0055】
「短い鎖状のシラン」という用語は、この発明に係るシランであって、δが0−3であり、βが1−30であり、αが0又は1であり、そのシランが6個又はそれより少ない数の炭素からなる炭化水素基を含んでいるようなシランを指している。
【0056】
「ヒドロカルビル」という用語は、その用語がまたアルケニル又はアルキニル部分を含むことがあるが、一般にはアルキル部分を指している。
【0057】
「限定された相対湿度を持った大気」という用語は、塩の飽和溶液又は水和塩の溶液上に現れるような制御された一定の相対湿度を指している。試料はデシケータのような密封された容器内に保持された塩の飽和溶液又は水和塩上で平衡状態にするのが慣習である。
【0058】
ここで用いられているように、「平衡状態」という用語は、それ以上の変化が起こらない定常状態を指している。限定された相対湿度の大気中で無機基質を平衡状態にするには、数日又は数週間を必要として安定状態又は平衡状態に達し、その場合無機基質の表面上の水分量は一定である。比較的高い相対湿度の大気中での平衡状態は、無機基質の表面に大量の水が結合されていることに帰着する。逆に、比較的低い相対湿度の大気中での平衡状態は、無機基質の表面に少量の水が結合されていることに帰着する。
【0059】
「キラルレコグニション配位子」という用語は、試料中の1つの鏡像異性体と試料中の他の鏡像異性体よりも優先的に反応することができるキラル又は光学活性を持った部分を指している。
【0060】
ここで用いられている「非対称」又は「ピーク非対称」という用語は、クロマトグラフィのピークの形状を記載する因子であって、クロマトグラフィ曲線の後側ピーク高さの10%位置とピーク頂点との間の距離、及びその曲線の前側ピーク高さの10%位置とピーク頂点との間の距離の割合として定義される。
【0061】
この発明は、1種又は2種以上のシランが無機基質と反応して、シラノール活性のような最少の残留アニオン交換活性を持ったすぐれたクロマトグラフィ用の収着剤を提供する、表面修飾操作利用の次世代結合相とその製造方法を開示するものである。この発明は、これらの結合相を製造するための改良方法を提供するものであって、最大の被覆に共有結合により結合されたシランを与えている。アニオン交換活性のないことが、これら次世代材料における重要な進歩である。また、結合相は塩基と酸処理に対する著しく改良された安定性、長い寿命、及び再生可能なクロマトグラフィの性能を示している。
【0062】
また、この発明は、修飾されたアルキルと極性結合相を製造するための有用なシランを提供するものである。開示されるシランは、2段階修飾方法よりも有利な単一反応段階で無機基質表面に結合させることのできる望ましい置換基を持っている。また、2種又は3種類以上の異なったシランを有利に無機基質に結合させることができ、しかも単一の反応又は連続した反応で結合させることができる。
【0063】
この次世代固定相を製造する方法は、これまで知られて来た固定相よりも多くの利点を示している。(1)この固定相は逆相特性を維持しており、(2)この相は古典的なアルキル相に比べると、異なった選択性を与え、(3)従来のアルキルカラム上に不充分に保持されていた極性試料が、この新しい相中の極性基と反応し、高められた保持力を作り出し、(4)その極性基が、100%の水性移動相中でも固定相を完全に湿った状態に維持することによって、極性化合物の保持を助け、(5)シラノール活性が抑えられ、それによってピークの形状が良好となり、とくに中間のpH値で塩基性化合物のテーリングが減少し、(6)またこれらの相が有機性に富んだ移動相と共存できる。100%水性から100%有機性までの全範囲の移動相組成物を包含する能力は、極性の大きい分析物と無極性の分析物とを含んだ試料を分析するための傾斜のついた方法を開発するのに有用である。
【0064】
この改良された固定相に用いられる修飾された無機基質とそれを製造する方法をさらに以下に開示する。
【0065】
II.シラン
この発明の組成物を製造するのに用いられるシランは、従来の合成方法、例えばエポキシドの加水分解、アミンとアシルクロライドとの反応、及び炭素と窒素との間の二重結合へのアルコール又はアミンの付加によって作ることができる。例えば、O−アルキル−N−(トリアルコキシシリルアルキル)ウレタンは、Nauほかの上記特許文献1に記載されているようにして作ることができる。追加の極性シランは、Liuほかの上記特許文献2及びNeueほかの上記特許文献3に記載されている。下に記載するQのような極性部分を持ったシランは、有機合成の当業者が容易に合成することができる。極性のシランは、適当なアリルエーテル、アミド、カルバミド等をジメチルエトキシシランと反応させて、望ましいR1δ−Qα−(CH2)β成分を持ったジメチルエトキシシランを生成して容易に作ることができる。
【0066】
1つの具体例では、或るシアンは、式
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
を持った無機基質を修飾するために提供される。式中でR1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH3C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立して選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基である。結合相を作るのに用いられる少なくとも1種のシランに対してはαは1であるのが好ましい。Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO,−CHOHCHOH−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH3C(O)CH2−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN,−NC,−CHOCH−,又は−NHC(NH)NH−であることが好ましい。他の具体例ではQは−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−S−,−SS−,−NO2,−NO,又は−OPO3−である。
【0067】
III.アルキル及び極性結合相
この作業はC8−C18のような比較的長いアルキル鎖の結合とともに、短い鎖状の極性シランを結合させることが、水の多い条件下で極性試料を再生可能に保持することのできる固定相を得るための幸運な開発研究手段になる、という発見に関係している。この短い鎖状の極性又は親水性シランの結合は、シリカ表面を水で湿らせ、また比較的長いアルキル鎖と充分な相互作用をさせる。このタイプの逆相充填を作るために、結合及び末端キャップを形成する方法は最小でも2工程の方法である。1つの具体例では、第1工程においてアルキルシラン又は極性修飾シラン又はそれらの混合物である少なくとも1種の長い鎖状シラン(例えばC8又はC18)が、シリカのような無機基質に結合される。第2の結合工程は短い鎖状シラン又は末端キャップ形成試薬を用いる。末端キャップ形成反応は上記2つの最初の結合工程のあとで同様に行うことができる。表1は、ここに記載した結合相を作るために用いられる例示的なシランを示している。
【0068】
【表1】

【0069】
極性又は親水性の短い鎖状シランは、結合してシラノール基を形成したあとで加水分解される。表面に近いこれらのシラノール基は最終的なアルキル結合相に高度の極性を与えるが、シラノール基は結合されたシリカ基質の表面に見出される残留シラノールよりも酸性が弱く、その結果として親シラン性試料の保持力とテイリングに乏しいものとなる。
【0070】
別の具体例では、第1工程において少なくとも1種の長い鎖状のアルキルシラン又は極性に修飾されたシランが無機基質に結合される。第2の結合工程は短い鎖状の極性修飾シランを用いて実施され、随時にそのあとで末端キャップ形成試薬を用いて第3の結合工程を行う。
【0071】
従って、この発明は、式
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
を持った少なくとも1種のシランで修飾された無機基質からなるクロマトグラフィの固定相用の組成物を提供するものであり、式中でR1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH3C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立に選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基である。
【0072】
固定相の望ましい疎水性と極性は、R1、R2、β及びQの選択によって調整することができる。好ましい具体例では、無機基質がシリカゲルであって、少なくとも2種類のシランで修飾される。1つの具体例ではシリカゲルの基質が第1のシランで修飾され、その後にシリカゲルの基質が第2のシランで修飾される。別の具体例では、第1のシラン、又は第2のシラン、又は第1のシランと第2のシランとの両者がシランの混合物を含んでいる。
【0073】
或る好ましい具体例では、シリカゲルの基質が、δが0−3であるような少なくとも1種のシランで修飾され、またδが0又は1であるような1種のシランで修飾される。或る他の具体例では、シリカゲルの基質は、δが0−3であるような少なくとも2種類のシランで修飾される。
【0074】
特定の具体例では、シリカゲルの基質が第1のシランで修飾され、その後に第2のシランで修飾される。その第1のシランはδの値が1−3であり、第2のシランはδの値が0−3である。
【0075】
もう1つの具体例では、第1のシランが1のδ値を持ち、αが1であり、βが1−30であり、γが0、1又は2であり、R1が置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qがアミド又はカルバミルであり、第2のシランが1のδ値を持ち、αが1であり、βが1−30であり、γが0、1又は2であり、R1が置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qがアミド、カルバミル、シアノ又はグリシドキシである。
【0076】
他の具体例では、第1のシランが1のδ値を持ち、αが1であり、βが1−30であり、γが0、1又は2であり、R1が置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qがカルバマト又はウレタンであり、第2のシランが1のδ値を持ち、αが1であり、βが1−30であり、γが0、1又は2であり、R1が置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qがアミド、カルバミル、シアノ又はグリシドキシである。
【0077】
もう1つの具体例では第1のシランが1のδ値を持ち、αが1であり、βが1−30であり、γが0、1又は2であり、R1が置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qがアミド、カルバメート、ウレタン又はカルバミルであり、第2のシランが1のδ値を持ち、αが1であり、βが1−30であり、γが0、1又は2であり、R1が置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qがイソシアナト、ジオール、エトキシ、プロポキシ、カルボニル、カルボキシ又はアセトニルである。
【0078】
他の具体例では第1のシランが1のδ値を持ち、αが1であり、βが1−30であり、γが0、1又は2であり、R1が置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qがアミド、カルバメート、ウレタン又はカルバミルであり、第2のシランが1のδ値を持ち、αが1であり、βが1−30であり、γが0、1又は2であり、R1が置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qがチオ、ジチオ、エーテル、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、硫酸塩、スルホンアミド、アミノ、ニトリル、イソニトリル、エポキシ、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ又はホスフェートである。
【0079】
さらに他の具体例では第1のシランが1のδ値を持ち、αが1であり、βが1−30であり、γが0、1又は2であり、R1が置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qがアミド又はカルバミルであり、第2のシランが0、1、2又は3のδ値を持ち、αが0であり、βが0−30であり、γが0、1又は2であり、R1が水素又は置換され若しくは置換されないC1−C6のヒドロカルビルである。
【0080】
もう1つの具体例では第1のシランが1のδ値を持ち、R1が置換され又は置換されないC1−C30のヒドロカルビルであり、Qがアミドであり、第2のシランが1のδ値を持ち、R1が置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qがアミド、シアノ又はグリシドキシである。
【0081】
他の具体例では第1のシランが1のδ値を持ち、αが0であり、βが8−30であり、γが0、1又は2であり、R1が水素であり、第2のシランが1のδ値を持ち、R1が置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qがアミド、シアノ又はグリシドキシである。
【0082】
もう1つの具体例では第1のシランが1のδ値を持ち、αが0であり、βが8−30であり、γが0、1又は2であり、R1が水素であり、第2のシランが1のδ値を持ち、R1が置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qがイソシアナト、ジオール、エトキシ、プロポキシ、カルボニル、カルボキシ又はアセトニルである。
【0083】
もう1つの具体例では第1のシランが1のδ値を持ち、αが0であり、βが8−30であり、γが0、1又は2であり、R1が水素であり、第2のシランが1のδ値を持ち、R1が置換され又は置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qがチオ、ジチオ、エーテル、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、硫酸塩、スルホンアミド、アミノ、ニトリル、イソニトリル、エポキシ、グアニジノ、ニトロ、ニトロソ又はホスフェートである。
【0084】
さらにもう1つの具体例では第1のシランが1のδ値を持ち、αが0であり、βが8−30であり、R1が水素であり、γが0、1又は2であり、第2のシランが0又は1のδ値を持ち、βが1−30であり、αが0又は1であり、R1はもし存在するとすれば水素又は置換され若しくは置換されないC1−C6のヒドロカルビルであり、Qがアミド、シアノ又はグリシドキシである。
【0085】
当業者は、上述の具体例が単なる例示であって、シランと末端キャップ形成試剤との追加の組み合わせが、ここに記載した組成物と方法との範囲内に包含されることを認めるであろう。
【0086】
さらに他の具体例では、シリカゲルの基質が、末端キャップ形成シランのような少なくとも1種のシランによって追加的に修飾される。その末端キャップ形成シランはモノシラン、ジシラン、トリシラン又はテトラシラン又はそれらの組み合わせ物であることが好ましい。末端キャップ形成に有用なモノシランは、例えばトリメチルクロロシラン、N,N−ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ジメチルジクロロシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメチルシラノール、トリメチルシリルホスフィン又はN−トリメチルシリルアセトアミドを含んでいる。末端キャップ形成に有用なジシランは、例えばヘキサメチルジシラザン又は1,3−ジメトキシテトラメチルジシロキサンを含んでいる。末端キャップ形成に有用なトリシランは、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサンを含んでいる。末端キャップ形成に有用なテトラシランは、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンを含んでいる。
【0087】
他面では、この発明は、固定相が上述の修飾された無機基質からなる、液体又はガスクロマトグラフィ用のクロマトグラフィカラムを提供するものである。他面では、この修飾された結合相は、以下に説明するように、微細流体素子工学の分野で使用することができる。
【0088】
IV.アルキル及び極性修飾結合相の作製
(a)限定された相対湿度を持った大気中で無機基質を平衡にする工程と、
(b)無機基質を少なくとも1種のシランで修飾する工程と、
(c)さらに無機基質を末端キャップ形成シランで修飾する工程と、
からなる無機基質を修飾する方法は記載されている。
【0089】
上記少なくとも1種のシランは、式
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
を持つことが好ましく、式中R1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボキニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH3C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立に選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基である。
【0090】
特定の具体例では、その方法はさらに上記無機基質を第2のシランで修飾する工程を含んでおり、その場合第2のシランに対するδは0−3である。追加の具体例では第2のシランに対するδは0又は1である。或る他の具体例では、第2のシランに対するδは1であり、第2のシランに対するR1はC1−C6のヒドロカルビルである。特定の具体例では、第2のシランによる修飾工程が、第1のシランによる修飾工程と同時に行われるが、さらに他の具体例では、第2のシランによる修飾工程が第1のシランによる修飾工程のあとで行われる。
【0091】
図1は、極性に修飾された結合相の合成のための例示反応を模型的に示している。結合相の製造の第1工程は、多孔性のシリカゲルと長い鎖状シランとの反応であり、その後に短い鎖状の極性シランによる反応が行われる。2つのシリル化反応が行われるという事実にも拘わらず、少量の反応可能なシラノールがシリカゲルの表面上になお残っている。従って、末端キャップ生成反応が行われて、何等かの望ましくない残留シラノールを吸着性の少ないトリメチルシリル基に変える。これは結合シリカを過剰の末端キャップ形成試薬と接触させることによって行うことが好ましい。これは充分な時間にわたって行ない、接近可能な残存シラノールの完全な処理を確実にしなければならない。
【0092】
図2は、長い鎖状のシラン配位子と短い鎖状のシラン配位子とがシリカゲルの表面シラノールの約半分を修飾している極性に修飾された結合相の構造を模型的に表わしている。残留する表面シラノールは、トリメチルクロロシランのような適当な末端キャップ形成試薬により末端キャップが形成された。
【0093】
修飾はトルエン又はキシレンのような不活性溶剤と、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、又はN,N−ジメチルブチルアミン又はそれらの組み合わせ物のような捕捉剤の存在下で行われることが好ましい。シリカゲル基質の修飾を行うための反応温度は、不活性溶剤の還流温度であることが好ましい。
【0094】
好ましい具体例では、無機基質がシリカゲル基質であり、次の工程によって修飾される。
(a)限定された相対湿度を持った大気中でシリカゲル基質を平衡に保ち、
(b)シリカゲル基質を少なくとも1種のシランで修飾し、
(c)さらにシリカゲル基質を末端キャップ形成シランで修飾する。
【0095】
他の具体例では、工程(b)のあと又は同時に第2のシランを用いてさらに修飾工程が行われる。或る具体例では、第2のシランに対するδは1であり、第2のシランに対するR1がC1−C6のヒドロカルビルである。特殊な具体例では、第2のシランによる修飾工程は第1のシランによる修飾工程と同時に行われ、さらに他の特殊な具体例では、第2のシランによる修飾工程は第1のシランによる修飾工程のあとで行われる。
【0096】
この結合過程で用いられるシランの量は、シリカ表面上のシラノールの数に関係しており、当量から約5倍過剰量の範囲にあることが好ましい。シリカは理論的には1平方メートルの表面あたり約8ミクロモルのシラノール基を持っているので、これはシリカ表面1平方メートルあたり約8/3から約40/3ミクロモルのシラン(シランあたり3個の反応性クロロ又はアルコキシ基を考えて)が好ましいことを意味している。最終的にシリカに結合するシランの量は、加えたシランの量に大きく依存するものではないので、結合過程におけるシランの量は、シリカ表面のシラノールのモル数を基準として約50%過剰であることが好ましい。3官能性シリル化試薬は、シリカ表面1平方メートルあたり約2から約10μモルの割合で、好ましくは約3から6μモル/m2の割合で反応せしめられる。この割合はシリカ表面に親シラノ化合物からの適当な遮蔽を与える。
【0097】
V.基質
この発明で有用な基質は金属及びメタロイド酸化物のような無機基質を含んでおり、例えばチタニア、ジルコニア、バナジア、アルミナ、シリカそれぞれを含んでいる。シリカとシリカ複合物とからなるガラスもまた有用である。この基質は、ムライト、ゼオライト、CaTiO3(ペロフスカイト)、FeTiO3(イルメナイト)、Mg2TiO4(スピネル)のような複合材料を含んでいる。無機基質はシリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコン、及び他の金属酸化物又はそれらの混合物のような多孔性の鉱物材料を含んでいる。無機基質は粒子、モノリスなどの形で存在することができるが、また付加的な無機又は有機の支持材の被覆物又は成分として存在することができる。
【0098】
有機の支持材は、セルロース、澱粉、デキストランのような多糖類、寒天又は親水性合成重合体、例えば置換され又は置換されないポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニル親水性重合体、ポリスチレン、ポリスルホン等から組成することができる。
【0099】
その代わり、無機及び有機の複合材料は、固定支持材としてその上に無機基質を付設して使用することができる。そのような複合材料は無機の支持材と接触している間に、有機支持材の共重合又は生成によって作ることができる。適当な複合材料の例は上記特許文献4、特許文献5及び特許文献6に記載されたような多糖−合成重合体及び/又は多糖−鉱物質及び/又は合成重合体−鉱物質である。
【0100】
無機基質はビーズ、又は大きさが約0.01mmから10mmの直径の揃った又は不揃いの粒子、どのような大きさでもよい繊維(中空でもそうでなくてもよい)、膜、例えば厚さが約0.1mmから約10mmまでの表面物、直径が約ミクロンから数mmまでの孔を持ったフリットのようなスポンジ状材料の形を取っていてもよい。
【0101】
無機基質は、金属酸化物又はメタロイド酸化物であって、例えばシリカ、アルミナ、ゼオライト、ムライト、ジルコニア、バナジア又はチタニア又はそれの混合物又は複合物のように、アルコキシシラン、アミノシラン、ヒドロキシシラン又はハロシランと反応することのできる反応性の金属酸化物を持ったものであることが好ましい。無機基質をシランで修飾したあとでは、シランは酸素結合により無機基質に共有結合で結合されている。
【0102】
好ましい具体例では、無機基質はモノリス又は多孔性粒子の形をしている。モノリスは、ガラス繊維、光学繊維、毛細管又は非多孔性粒子を含み、それらは基質表面と連続していてもよい。多孔性粒子は約60Åから1000Åまでの平均直径の孔を持ち、約3μmから約60μmまでの平均粒子大を持っていることが好ましい。
【0103】
好ましい具体例では、無機基質は孔の平均直径が約60Åから約1000Åであって、平均粒子大が約3μmから約60μmまでのシリカゲル粒子からなるものである。
【0104】
VI.一定の限定された相対湿度の大気中での平衡化
この発明の結合方法は、シリカのような無機基質にシランを共有結合により結合させて、液体又は気体相のクロマトグラフィによる分離のための安定な結合固定相を作ることを含んでいる。若干の水の存在は、一般にアルコキシシラン中の若干のアルコキシル基を加水分解させてシラノールを作るのに一般に必要であって、シラノールはその後無機基質表面上のOH基と反応するために使われ、結果として重合、橋かけ結合、無機基質表面への結合を生成して、結合相の発展をもたらしている。
【0105】
この結合方法に用いられる無機基質は、シランの反応の程度と再現性を一層よく制御するために、修飾工程の前に一定の相対湿度を持った大気の上で平衡状態にされる。無機基質を一定の相対湿度のところに保持して平衡状態にすることは、固定相のバッチごとの再現性と最適な性能のために必要である。
【0106】
シリカのような無機基質上の制御された水量は、色々な飽和塩溶液又は水和塩上で一定の相対湿度を持った大気中の水蒸気と、シリカを平衡状態にすることによって達成される。塩化リチウムの飽和溶液上で約11−12%の相対湿度でシリカを平衡状態にするのが好都合であるが、他の塩の溶液上又は他の方法で得られる他の湿度の高さもまた可能である。平衡状態に到達する限り、平衡状態にする時間は重要でない。1週間から3週間の範囲内の時間が一般に充分である。平衡状態にする温度は、約5℃以下だけ変化させることができ、一般に室温が用いられているが温度は重要ではない。シリカ表面における水の量はバッチごとに一定でなければならず、シリカ表面1平方メートルあたり約10から約40ミクロモルの範囲内にあることが好ましい。
【0107】
限定された相対湿度を持った大気は、水和塩又は飽和塩溶液によって与えられることが好ましく、塩は弗化セシウム、臭化リチウム、臭化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化リチウム、臭化カルシウム、酢酸カリウム、弗化ナトリウム、塩化マグネシウム、沃化ナトリウム、炭酸カリウム、硝酸マグネシウム、臭化ナトリウム、塩化コバルト、亜硝酸ナトリウム、沃化カリウム、塩化ストロンチウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、臭化カリウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、硝酸ストロンチウム、塩化バリウム、硝酸カリウム、又は硫酸カリウムを含んでいる。限定された相対湿度は50%より少ないことが好ましい。特定の具体例では、相対湿度は約0%から約10%までであり、約10%から約20%までであり、約20%から約30%までであり、約40%から約50%までであり、約50%から約60%までであり、約60%から約70%までであり、約70%から約80%までであり、約80%から約90%までであり、約90%から約100%までである。1つの好ましい具体例では、飽和塩溶液がLiClであり、これは相対湿度が11%から12%の大気を与えている。
【0108】
例えば湿度が約10%から20%の相対湿度の大気中で無機基質を平衡状態にするために、11.3%の相対湿度を与えるLiCl溶液を使用することができる。約20%から約30%までの相対湿度の大気中で無機基質を平衡状態にするために、22.5%の相対湿度を与える酢酸カリウム溶液を使用することができる。約30%から40%までの相対湿度の大気中で無機基質を平衡状態にするために、32.8%の相対湿度を与えるMgCl2溶液を使用することができる。約40%から約50%までの相対湿度の大気中で無機基質を平衡状態にするために、43.2%の相対湿度を与えるK2CO3溶液を使用することができる。約50%から約60%までの相対湿度の大気中で無機基質を平衡状態にするために、57.6%の相対湿度を与えるNaBr溶液を使用することができる。約60%から約70%までの相対湿度の大気中で無機基質を平衡状態にするために、68.9%の相対湿度を与えるKI溶液を使用することができる。同様に約70%から約80%の相対湿度の大気中で無機基質を平衡状態にするために、75.3%の相対湿度を与えるNaCl溶液を使用することができる。約80%から約90%までの相対湿度の大気中で無機基質を平衡状態にするために、81.0%の相対湿度を与える硝酸アンモニウム溶液を使用することができる。平衡状態にするために追加の塩溶液を利用して追加の相対湿度を得ることができ、追加の塩溶液は上記非特許文献11から選ぶことができる。
【0109】
VII.クロマトグラフィの実施と使用方法
一面では、修飾された無機基質は、クロマトグラフィの固定相として使用されるとき、酸性と塩基性の状態ですぐれた安定性を示す。好ましい具体例では、修飾された無機基質は酸性又は塩基性の溶離状態に1000時間露出した時でも、分離された試料に対して保持時間、ピーク対称性及び保持係数が僅か約3%の変化率を示すに過ぎない。上記固定相上で分離された試料に対する保持時間、ピーク対称性及び保持係数は、酸性又は塩基性の溶離状態に3000時間露出した時でも僅か約5%だけ変化することが好ましい。
【0110】
この方法は、クロマトグラフィに適用するためにアルキルと極性の結合した固定相を製造する方法であって、他の結合相では大きな問題となっているテイリングとピーク非対称性を全体的になくして、塩基性試料の分析に顕著で劇的な改良を示している。例えば塩基性試料のテイリングがなくてすぐれた分離は実施例19に示されており、そこではアニリン同族体、即ちアニリン、2−エチルアニリン、N−エチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N−プロピルアニリンの分離を記載し、図11Aに実証されている。β−ブロッカー(プラクトロール(ピーク1)、ピンドロール(ピーク2)、ビソプロロール(ピーク3)及びアルプレノロール(ピーク4))の分離が図11Bに実証されている。トリサイクリック抗鬱薬(デスメチルドキセピン(ピーク1)、プロトリプチリン(ピーク2)、デシプラミン(ピーク3)、ノルトリプチリン(ピーク4)、デキセピン(ピーク5)、イミプラミン(ピーク6)、アミトリプチリン(ピーク7)及びトリミプラミン(ピーク8))の分離が図11Cに実証されている。固定相1を充填されたカラムは、顕著な選択性(図11A−C)を持ったすぐれたピーク形を示している。
【0111】
これらの固定相はとくに残留シラノール活性と塩基失活とによって評価するとき、すぐれたクロマトグラフィの作用を示す。例えば、ピリジン/フェノールに対しピーク非対称の割合(As1/As2)は、結合相に対するアルコールに比べて殆ど検出できない塩基の親和性を表わし、試験されたすべての他の固定相よりも比較においてすぐれている(上記非特許文献12を参照)。
【0112】
オクタデシルシラン(“C18”)から作られた純粋なアルキル相に比べると、実施例に記載された極性に修飾された相は、高度に水溶性溶剤中ですぐれた湿潤性と、酸性又は塩基性の移動相に対してすぐれた安定性と、試料の良好な保持性と、良好な疎水選択性と、疎水性と極性に基づく試料間の良好な区別性とを与える。
【0113】
この発明の修飾された無機基質は、クロマトグラフィの応用のための固定相として使用することができ、また上述のような少なくとも1種のシランによって修飾された無機基質からなる固定相を使用して、クロマトグラフィによる分離を行うことからなる複数の試料を分離する方法に使用することができる。クロマトグラフィによる分離はガス又は液体の移動相を用いて行うことができる。1つの具体例では、移動相が0から100%の水を含んでいる。例えばクロマトグラフィの応用又は分離は、薄層クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、順相クロマトグラフィ、イオンクロマトグラフィ、イオン対クロマトグラフィ、逆相イオン対クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、疎水性インタラクションクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、キラルレコグニションクロマトグラフィ、パーフュージョンクロマトグラフィ、通電クロマトグラフィ、分配クロマトグラフィ、ミクロカラム液体クロマトグラフィ、毛管クロマトグラフィ、液体−固体クロマトグラフィ、分取クロマトグラフィ、親水性インタラクションクロマトグラフィ、超臨界液体クロマトグラフィ、プレシピテイション液体クロマトグラフィ、結合相クロマトグラフィ、ファスト液体クロマトグラフィ、フラッシュクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ・マススペクトロメトリー、ガスクロマトグラフィ、微細流体素子工学を基礎とする分離、固相抽出分離又はモノリスを基礎とする分離であって限界がない。
【0114】
好ましい具体例では、この発明の方法は、シリカゲル基質上のクロマトグラフィを使用して試料を分析する改良された方法を提供し、その改良は、式、
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
を持った少なくとも1種類のシランで修飾されたシリカゲルを提供するものであり、式中R1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH3C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,N[(CH2)n]2+−,−CN,−NC,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−であり、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基であり、その場合シリカゲル基質は少なくとも1種のシランで修飾される前に、限定された相対湿度を持った大気中で平衡状態にされており、またその場合シリカゲルはδが0−3の少なくとも1種のシランと、δが0又は1の少なくとも1種のシランと、末端キャップ形成試薬とで修飾されている。特定の具体例では、シリカゲル基質は11%の相対湿度の大気中で平衡状態にされる。Xはハロゲン、アルコキシ、アミノ又はアシルオキシであることが好ましい。
【0115】
或る具体例では、Q、R1又はR2がキラルレコグニション配位子である。キラルレコグニション配位子は光学的に活性で、脂質、アミノ酸、ペプチド、砂糖、ヒドロキシ置換アミン又はヒドロキシ置換酸を含むキラル化合物からなることが好ましい。或る具体例では、キラルレコグニション配位子はヘテロシクロアルキル部分又はシクロデキストリンのような結合されたヘテロシクロアルキル部分である。
【0116】
VIII.毛管クロマトグラフィと微細液流素子工学の応用
液体分離技術をナノ尺度まで小型化することは、小さなカラム内径(内径100ミクロン以下)と移動相の低速度(300nL/分以下)とに関係している。毛管クロマトグラフィ、毛管ゾーン電気泳動(CZE)、ナノ液体クロマトグラフィ、中空液体クロマトグラフィ(OTLC)及び毛管電気クロマトグラフィ(CEC)のような技術が、従来スケールの高速液体クロマトグラフィ(HPLC)よりすぐれた多くの利点を提供している。この利点は高い分離効率、高速分離、小体積の見本の分析、及び2次元技術の結合を含んでいる。
【0117】
ここに記載したようなシランによる無機基質の修飾は、これらの応用においても同様にすぐれたクロマトグラフィの性能を提供することができる。例えば、溶融シリカの毛細管は固定相として用いることができ、上述のように少なくとも1種のシランで修飾され、例えば毛管クロマトグラフィ又は毛管ゾーン電気泳動の応用に使用することができる。外径360ミクロン×内径250ミクロンの大きさの溶融シリカチューブ(Polymicro Technologies, Phoenix Ariz.)はミクロクロマトグラフィ又は微細流体素子工学の応用のためにシラン修飾シリカ毛細管を作るのに適している。
【0118】
毛管電気クロマトグラフィは、液体クロマトグラフィにおいて代表的な固体の固定相が充填された毛管カラム内に電気で駆動される電気泳動分離法の流動特性を利用する混成技術である。それは逆相液体クロマトグラフィの分離力を毛管電気泳動の高能率に結合させている。電気浸透流から生じる流動曲線は、圧力駆動流から生じる放物線状の流動曲線に比べると、分離通路の壁に沿った摩擦抵抗が減少しているために平坦であるから、液体クロマトグラフィよりも毛管電気クロマトグラフィ分離の場合には高能率が得られる。さらに、電気浸透流は背圧が発生しないので、液体クロマトグラフィにおけるよりも毛管電気クロマトグラフィにおいては小さい粒子を使用することができる。毛管電気クロマトグラフィは、液体クロマトグラフィ分離機構を用いて試料がカラム粒子の固定相と移動相との間に分配するために、中性分子を分離することができる。
【0119】
ミクロチップを基礎とする分離装置が多数の見本を迅速に分析するために開発されて来た。他の従来の分離装置に比べると、このミクロチップを基礎とする分離装置は、時間あたりの見本処理量が大きく、見本と試薬の消費が少なく、化学的廃棄物が少ない。ミクロチップを基礎とする分離装置用の液体流速は、大抵の応用の場合1分あたり約1から300ナノリットルの範囲内にある。ミクロチップを基礎とする分離装置の例は毛管電気泳動、毛管電気クロマトグラフィ及び高速液体クロマトグラフィに対するものを含んでいる。そのような分離装置は、他の従来の分析器具に比べると、迅速な分析が可能であり、正確さと信頼性を改善している。
【0120】
モノリス支持構造物(又はポスト)は、反応性のイオンエッチング技術を使用して、ガラス基質中にエッチングを行って作ることができる。エッチング技術は5から20ミクロンの範囲内の特徴をガラス基質に作るのに使用することができる。また、多孔性又は非多孔性の粒子を微細流体素子工学の設計物中に加えることができて、ミクロチップを基礎とする分離装置上のミクロチャンネル内に粒子を付設することができる。微細流体素子工学への応用を目的としてここに記載したシランを使用して、多孔性と非多孔性の粒子とモノリス構造物を有利に修飾することができる。
【0121】
この発明はその好ましい特殊な具体例に関連して記載されて来たが、上記の記載のほかに以下に記載する実施例は、例示を目的とするものであって、発明の範囲を限定することを目的とするものでないことは云うまでもない。この発明の実施は、とくに別様に指示しているのでなければ、普通技術の範囲内にある有機化学、高分子化学、生化学などの従来の技術を使用するものである。この発明の範囲内の他の面、利点及び修飾は、この発明の属する技術に熟達した者には明らかである。そのような技術は、文献に詳しく説明されている。
【0122】
以下の実施例では、使用されている数字(例えば量、温度等)については確実に正確に記載するように努力したが、若干の実験誤差と偏差のあることは申し述べておかなければならない。別様に指示しない限り、温度は℃であり、圧力は大気圧又は大気圧に近い。有機溶剤はすべてJ. T. Baker (Phillipsburg, NJ, USA)から入手した。有機シラン試剤は、Gelest(Tullytown, PA, USA)又はSilar Laboratories(Wilmington, NC, USA)から入手した。シリカゲルはVarian, Inc.(Lake Forest, CA, USA)から、次の明細、即ち200Åの平均直径の孔と180m2/gの表面積を持った5μm直径の粒子として入手したものである。液体クロマトグラフィはAgilent(Palo Alto, Ca, USA)のモデルHP1100シリーズを使用して実施し、化学的に結合したシリカゲルカラムはVarian, Inc.(Lake Forest, CA, USA)から入手した。使用した化学品はSigma-Aldrich, Inc.(Milwaukee, WI, USA)から入手した。HPLCグレードのアセトニトリル、メタノールと水はVWR Scientific Products(San Dimas, CA, USA)から入手した。
【0123】
別様に指示していなければ、反応はすべてアルゴンの不活性雰囲気の下に行った。
略号
k 保持係数、k=(tR−tO)/tO
R 測定されたピークの保持時間
O 保留されない成分の保持時間
mL ミリリットル
【0124】
実施例1
トリメトキシシリルプロピルアセトアミドの調製
機械的攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗つきの三つ口丸底フラスコに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(18グラム、Gelest Inc.)と、トルエン(40mL、Aldrich)と、トリエチルアミン(13グラム、Aldorich)を入れた。攪拌を開始し、塩化アセチル(18mL、Aldrich)のような適当な塩化アシルをフラスコへ滴状添加した。混合物を16時間アルゴン雰囲気下の室温で攪拌した。
【0125】
実施例2
アルキルと極性に修飾された結合相の調製
この実施例は、アルキルと極性に修飾された結合相の一般的な調製方法を具体的に説明するものである。5−μmの粒子大のシリカゲルをデシケータ内で塩化リチウムの飽和水溶液上に3週間放置して平衡状態にした。その平衡状態にしたシリカゲルの見本10グラムを100mLのキシレン中に懸濁し、50%モル過剰の長鎖状3官能性シランとピリジン(シリカゲル表面の平方メートルあたり12μモルの試薬の計算された当量)を加えた。懸濁物を機械的に攪拌し、アルゴンの雰囲気下に24時間還流させた。混合物を濾過し、3官能性シランの脱離基の加水分解を促進させるために、混合物をキシレン、メチルクロライド、テトラヒドロフラン、アセトン及び水とメタノール混合物で洗浄した。
【0126】
その後、アルキル又は極性に修飾された結合相をアセトニトリル/テトラヒドロフラン/水(1対1対1、120mL)で加水分解し、24時間還流させた。反応の終りに、以前に結合工程において記載したように、シリカゲルを濾過し洗浄した。得られた固体材料をオーブン内で80℃で20時間乾燥した。
【0127】
長鎖状シランで官能化された乾燥されたシリカゲル(10グラム)をさきに最初の結合工程に記載したように、短鎖状の極性シランでさらに修飾した。第2の結合工程のあとで、シリカゲルを室温で24時間4対1のメタノールと水の混合溶剤中の0.5%のトリフルオロ酢酸で加水分解した。その材料を最初の結合工程に記載したように濾過し洗浄した。資料を80℃で20時間乾燥した。
【0128】
結合工程のあとで、シリカゲルの表面にある未反応のシラノール基を末端キャップ形成試薬との反応によって封鎖した。簡単に云えば、そのシラノール封鎖反応は、100mLのキシレン中の約10グラムの修飾されたシリカゲルを、例えば20mLのトリメチルクロロシランのような末端キャップ形成試薬の化学量論的に過剰な量と還流させることによって行った。混合物を24時間還流させたあとでシリカゲルを濾過し、キシレン、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、水で繰り返し洗浄し、最後にメタノールで洗浄した。極性結合相を持ったシリカゲルを80℃で20時間乾燥した。低い結合相表面濃度のものを作るために、化学量論的に少量のシラン及び/又は低い温度を利用することができる。
【0129】
クロマトグラフィとしての性能を評価するために、それぞれ長さが150mm、内径が4.6mmの2個のカラムに得られた結合相を充填した。
同様な反応と操作を行って、さらに極性に修飾された結合相を作り、その表面上にある未反応シラノールに末端キャップ形成をし、極性に修飾され結合されたシリカゲルをカラムに充填した。
【0130】
実施例3−11
これらの実施例は、実施例2に記載された操作を使用して相1−9を作ることを具体的に示している。各相を構成するのに用いられたシランは、上記第1表に示されている。各相については、次の例外があるが、実施例2の操作を用いた。
【0131】
実施例3(相1):長鎖のシランがN−(3−トリメトキシシリル)プロピルパルミトアミドであり、短鎖のシランがN−(3−(トリメトキシシリル)プロピルアセトアミドである。
実施例4(相2):長鎖のシランがO−オクチル−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタンであり、短鎖のシランがN−(3−(トリメトキシシリル)プロピルアセトアミドである。
【0132】
実施例5(相3):長鎖のシランがN−(3−トリメトキシシリル)プロピルパルミトアミドであり、短鎖のシランが末端キャップ形成試薬であるトリメチルクロロシランである。
実施例6(相4):長鎖のシランがn−オクタデシルトリクロロシランであり、短鎖のシランが3−グリシドキシトリメトキシシランである。
【0133】
実施例7(相5):長鎖のシランがn−オクチルトリクロロシランであり、短鎖のシランが3−グリシドキシトリメトキシシランである。
実施例8(相6):長鎖のシランがn−オクタデシルトリクロロシランであり、短鎖のシランが3−シアノプロピルジメチルクロロシランである。
【0134】
実施例9(相7):長鎖のシランがn−オクチルトリクロロシランであり、短鎖のシランが3−シアノプロピルジメチルクロロシランである。
実施例10(相8):長鎖のシランがn−オクタデシルトリクロロシランであり、短鎖のシランがN−(3−(トリメトキシシリル)プロピルアセトアミドである。
実施例11(相9):長鎖のシランがn−オクチルトリクロロシランであり、短鎖のシランがN−(3−(トリメトキシシリル)プロピルアセトアミドである。
【0135】
実施例12
この発明の極性に修飾された相とアルキル結合相の不活性と化学的安定性とを、ピリジン、プロカインアミド、アミトリプチリン、プロプラノロール、ソルビン酸、サリチル酸及びナフタリンの保持因子とピーク形状を調べることによって調査した。非対称性はクロマトグラフィのピーク形状を記載する因子であり、ピークの頂点と、クロマトグラフィの曲線の後側と、ピーク高さの10%の位置での曲線の前側との距離の比として定義される。エンゲルハルトテストを実施して結合相の親シラノ活性をさらに評価した。メチレン基の相対的な保持時間と、立体的及び水素結合の相互作用を調査することによって、結合相の疎水選択性を検討した。保持係数は測定されたパラメータで云うと、
k=(tR−tO)/tO
であり、ここでtRは測定されたピークの保持時間であり、tOは保留されない成分の保持時間である。図3A−3D及び図4A−4Dは、それぞれ酸性及び塩基性の状態で、極性に修飾された相とアルキル結合相との化学的安定性を示している。番号8、12、16、20、24、28、32、36.40、44、48、52、56、60、64及び68の付された線は、トルエンに対する保持時間を示し、番号9、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、53、57、61、65及び69の付された線は、それぞれ酸性及び塩基性溶液中でトルエンに対する保持係数を表わしている。番号10、14、18、22、26、30、34、38、42、46、50、54、58、62、66及び70の付された線は、トルエンに対するピーク非対称性を示し、番号11、15、19、23、27、31、35、39、43、47、51、55、59、63、67及び71の付された線は、ピリジンに対するピーク非対称性を示している。
【0136】
図3A−D及び4A−Dに示したように、トルエン及びピリジンに対する保持時間、対称性及び保持係数は、20mMの燐酸ナトリウム緩衝液(pH10)と1%トリフルオロ酢酸(pH1.5)の溶液とにおいて、2ヶ月以上の期間(1500から3000時間)にわたる連続操作の間、殆ど一定であって能力低下を示さなかった。
【0137】
実施例13
抗潰瘍薬とセファロスポリン抗生物質薬との分離を調査することによって、極性に修飾された相とアルキル結合相との比較的な選択力を検討した。pH7.0の燐酸塩緩衝液と移動相としてのメタノールとの混合物を用いて、実施例3に記載したような相1からなる固定相と、C18の固定相とに、ファモチジン(famotidine)(ピーク1)と、ラニチジン(ranitidine)(ピーク2)と、ニザチジン(nizatidine)(ピーク3)と、シメチジン(cimetidine)(ピーク4)の混合物をクロマトグラフィに付した。全溶離時間は10分より少なくそれぞれの固定相上で約14分であった。重要な選択力の相違があるだけでなく、アルキル相と極性に修飾された相の間に試料の溶離順序に逆転がある。そのクロマトグラムを図5に示す。
【0138】
実施例14
セファロスポリン抗生物質の混合物の分離を調査することによって、極性に修飾された相とアルキル結合相との比較的選択力を検討した。pH3.0の燐酸塩緩衝液とメタール混合物を用いて、実施例3に記載したように相1からなる固定相と、C18固定相とに、セファドロキシル(cefadroxil)(ピーク1)と、セファクロル(cefaclor)(ピーク2)と、セファレキシン(cephalexin)(ピーク3)をクロマトグラフィに付した。全溶離時間は約4分であり、それぞれの固定相上で約6分であった。重要な選択力の相違があるだけでなく、アルキル相と極性に修飾された相との間に試料の溶離順序に逆転がある。そのクロマトグラムを図6に示す。
【0139】
実施例15
アルキルカラムと極性に修飾されたカラムは、また図7のパラベン(parabens)のクロマトグラフィによる分析に示すように、中性の緩衝剤のない移動相条件下で、選択力に相違を生じる。C18アルキルの結合相では、内部指標としてのメチルパラベン(ピーク1)と比較して、エチル(ピーク2)、プロピル(ピーク3)及びブチルパラベン(ピーク4)の相対的保持割合は、それぞれ1.94、4.41及び10.73であった。極性に修飾された固定相1では、それぞれの値は1.84、3.94及び9.02であった。メチレン選択力は、ブチルとプロピルパラベンの間の相対的な保持割合から計算すると、C18アルキル結合相に対して2.43であり、極性に修飾された結合相1に対して2.29であった。
【0140】
パラベンは極性に修飾された結合相1上では、固定相と極性の相互作用のために長い時間保留されるが、その相対的保持割合はC18アルキル結合相に対してより高く、その理由は同族のパラベンがメチレン基の数の点でメチルパラベンと異なるだけであり、メチレン基は専ら疎水性機構によって結合相と相互に作用することができるだけだからである。
【0141】
実施例16
この実験は内部基準としてのクロナゼパム(clonazepam)(ピーク1)とともに、抗痙攣薬の混合物を用いて、実施例15に記載したように実施した。クロラゼペイト(clorazepate)(ピーク2)とジアゼパム(diazepam)(ピーク3)に対する相対的な保持割合は、それぞれ図8に示す通りであって、C18アルキル結合相を用いると、2.83と3.34であり、極性に修飾された結合相を用いると、1.98と2.09であった。
【0142】
抗痙攣薬はこの2つの異なった固定相上で保持時間に一層著しい相違を示し、その傾向は実施例15のパラベンの溶出特性に比べると反転している。抗痙攣薬は疎水性機構によって優先的に結合相と相互に作用し、C18アルキル結合相は極性に修飾された結合相よりも疎水性が強いので、抗痙攣薬は極性に修飾された結合相1よりもC18相上に長く保留される。従って、この2つの結合相の間の選択力の相違は、試料がそれらと反応する模様、すなわち、相互作用の機構が疎水性によるか又は極性によるかによるものである。
【0143】
実施例17
風邪治療剤の分離で示されているように、極性に修飾された異なった固定相は試料の選択力に相違を生じる。プソイドエフェドリン(ピーク1)とアセトアミノフェン(ピーク2)とがHPLCカラムに充填されたC18、相3及び相8で組成された固定相上で検討され、15:85のアセトニトリル/25mM第2燐酸カリウム緩衝移動相条件を使用して溶離された。この2つの薬剤の溶離順序は、極性埋没相(相3)上の溶離順序に比べると、アルキルの優勢な固定相(C18及び相8)上で逆転しており、アセトアミノフェンが極性埋没相上に長く保留され、プソイドエフェドリンがアルキル相(図9A)上にさらに優勢に保留されている。この相違は、各薬分子と固定相との相互作用の相違によるものとすることができる。アセトアミノフェンは、その構造内にフェノール性のヒドロキシルとアミド部分とを持ち、極性埋没相の上で極性官能基と強い極性相互作用を示すことができる。他方、プソイドエフェドリンはフェニルリング上にヒドロキシル化されたメチルアミノプロピル鎖を持ち、それが疎水性機構によって優勢に相互作用することができる。移動相の有機成分が増加すると、優勢なアルキル相上の2つの薬剤の溶離順序が変えられる。しかし、極性埋没相上の2つの薬剤の溶離順序は変らないでいる(図9B)。これは固定相の極性の性質の差を明確に示している。
【0144】
実施例18
この発明の極性に修飾された相は、従来のアルキル相に比べると、選択力において差を示し、酸性化合物に対してより良好な分離特性を示す。0.1%の蟻酸とアセトニトリルとの混合物を移動相として用いてC18固定相と極性に修飾された相8上に、4−アミノ安息香酸(ピーク1)と、ソルビン酸(ピーク2)と、安息香酸(ピーク3)との混合物をクロマトグラフィに付した。この2つの相上での全溶離時間は、図10に示したように約15分であった。ソルビン酸と安息香酸との間の完全な分割は極性に修飾された相上でのみ行うことができ、この2つの化合物の分離はこれらの移動相条件を用いてアルキル結合相の上ではできなかった。
【0145】
実施例19
塩基性化合物は、シリカ表面上のシラノールと相互作用を起こすために、アルキル相上でテーリングを起こし易い。このことは、保持時間増加を惹き起こし、作業能率の損失を招くことが多い(ピーク形状)。この発明の極性に修飾された1つの結合相(相1)上で塩基性化合物の複雑な混合物を分離することを検討した。塩基性化合物の3種類の混合物を図11A−Cに示したように分離した。アニリン同族体(アニリン(ピーク1)、O−トルイジン(ピーク2)、2−エチルアニリン(ピーク3)、N−エチルアニリン(ピーク4)、N,N−ジメチルアニリン(ピーク5)及びN−プロピルアニリン(ピーク6))の分離が図11Aに示されている。β−ブロッカー(プラクトロール(ピーク1)、ピンドロール(ピーク2)、ビソプロロール(ピーク3)及びアルプレノロール(ピーク4))の分離が図11Bに示されている。トリサイクリック抗鬱剤(デスメチルドキセピン(ピーク1)、プロトリプチリン(ピーク2)、デシプラミン(ピーク3)、ノルトリプチリン(ピーク4)、デキセピン(ピーク5)、イミプラミン(ピーク6)、アミトリプチリン(ピーク7)及びトリミプラミン(ピーク8))の分離が図11Cに示されている。固定相1を充填したカラムは顕著な選択力を持った優れたピーク形状を示している(図11A−C)。
【0146】
実施例20
新しいアルキル相の多くは、塩基性化合物に対してピーク形状と高いpHでの安定性を改良するように企画された高い結合密度を持っている。しかし、結合密度の改良はこの相の高い疎水性のために100%水性移動相中での保持時間の不安定性をもたらすことが多い。この発明の極性に修飾された結合相は、このジレンマに解決を与えて、100%水性移動相状態における安定な再生可能な試料保持時間を与える。図12Aはヌクレオチド(5’−CTP(ピーク1)、5’−CMP(ピーク2)、5’−GDP(ピーク3)、5’−GMP(ピーク4)、5’−ADP(ピーク5)及び5’−AMP(ピーク6))の分離を示し、図12Bは100%水性移動相条件下で極性に修飾された結合相上でのカテコールアミン類(ノルエピネフリン(ピーク1)、エピネフリン(ピーク2)及びドーパミン(ピーク3))の分離を示している。
【0147】
実施例21
高い有機/水比率を持った移動相は、試料が一層効率よく脱溶媒和し、それによって感度、分析及び質量の正確さを高めるので、LC/MSにとって理想的なものである。この発明の極性に修飾された結合相は、脂肪酸類(図13Aに示したように、リノレン酸(ピーク1)、リノール酸(ピーク2)及びオレイン酸(ピーク3))のすぐれた保持力を実証し、また移動相内の有機溶媒の高い濃度でビタミン類(図13Bに示したように、δ−トコフェロール(ピーク1)、γ−トコフェロール(ピーク2)及びα−トコフェロール(ピーク3))のすぐれた保持力を実証している。従って、この発明の極性に修飾された結合相はLC/MS分析に役立つものであり、最適のMS信号強度を生じる。
【0148】
実施例22
アルキル相と極性に修飾された結合相との選択力をペプチドの分離に対してさらに検討した。Gly-Tyr(ピーク1)、Val-Tyr-Val(ピーク2)、メチオニンエンケファリン(ピーク3)、アンギオテンシンII(ピーク4)及びロイシンエンケファリン(ピーク5)の混合物を0.1%TFAとアセトニトリルの移動相混合物を用いてオクチル相(C8)上でクロマトグラフィに付され、相2(極性埋没C8アルキル)と比較した。全溶離時間は、図14に示したように約12分であった。アルキル相と極性に修飾された相との間には、有意義な選択力の相違が存在するだけでなく、またメチオニンエンケファリンとアンギオテンシンIIの溶離順序に逆転があった。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】極性に修飾されて結合されたシリカゲルを作成するためのシランとシリカゲルとの合成反応を模型的に示している。
【図2】極性に修飾された固定相の構造を模型的に示している。
【図3A】極性に修飾された結合相1と相8の安定性についてのpH1.5の影響を示している。
【図3B】極性に修飾された結合相6と相4の安定性についてのpH1.5の影響を示している。
【図3C】極性に修飾された結合相3と相7の安定性についてのpH1.5の影響を示している。
【図3D】極性に修飾された結合相5と相2の安定性についてのpH1.5の影響を示している。
【図4A】極性に修飾された結合相1と相8の安定性についてのpH10.0の影響を示している。
【図4B】極性に修飾された結合相6と相4の安定性についてのpH10.0の影響を示している。
【図4C】極性に修飾された結合相3と相7の安定性についてのpH10.0の影響を示している。
【図4D】極性に修飾された結合相5と相2の安定性についてのpH10.0の影響を示している。
【図5】抗潰瘍薬の20%メタノール溶液に対するアルキル結合相と極性に修飾された結合相との選択性の差違を示す。
【図6】セファロスポリン抗生物質の20%メタノール溶液に対するアルキル結合相と極性に修飾された結合相との選択性の差違を示す。
【図7】パラベン治療薬に対するアルキル結合相と極性に修飾された結合相との選択性の相違を示す。
【図8】抗痙攣薬に対するアルキル結合相と極性に修飾された結合相との選択性の差違を示す。
【図9A】風邪治療成分に対するアルキル結合相と極性に修飾された結合相の選択性を示す。
【図9B】風邪治療成分に対するアルキル結合相と極性に修飾された結合相の選択性を示す。
【図10】アルキル結合相と極性に修飾された結合相上での抗かび剤のクロマトグラフィによる分離を示す。
【図11A】極性に修飾された結合相上でのアニリン同族体のクロマトグラフィによる分離を示す。
【図11B】極性に修飾された結合相上でのベータブロッカーのクロマトグラフィによる分離を示す。
【図11C】極性に修飾された結合相上でのトリサイクリック抗鬱薬のクロマトグラフィによる分離を示す。
【図12】AとBとは、100%水性移動相状態で極性に修飾された結合相上でヌクレオチドとカテコールアミン類のクロマトグラフィによる分離を示す。
【図13A】有機移動相の高濃度状態においてアルキル結合相と極性に修飾された結合相上での脂肪酸類のクロマトグラフィによる分離を示す。
【図13B】有機移動相の高濃度状態においてアルキル結合相と極性に修飾された結合相上でのビタミン類のクロマトグラフィによる分離を示す。
【図14】アルキル結合相と極性に修飾された結合相を用いて、ペプチド混合物のクロマトグラフィによる分離を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
を持った少なくとも1種のシランで修飾された無機基質からなる組成物であって、式中でR1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO−,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN−,−NC−,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立して選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基であり、その場合上記の無機基質は、上記の少なくとも1種のシランで修飾される前に、限定された相対湿度を持った大気中で平衡にされていることを特徴とする、クロマトグラフィの固定相用組成物。
【請求項2】
前記の無機基質が金属酸化物又はメタロイド酸化物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記の無機基質がモノリス又は多孔性粒子の形状となっている、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記の無機基質がシリカである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記の無機基質が少なくとも2種類のシランで修飾されたシリカゲルを含んでいる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記のシリカゲルが第1のシランで修飾され、その後に前記のシリカゲルが第2のシランで修飾される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記のシリカゲル基質は、δが0から3である少なくとも1種のシランで修飾され、またδが0又は1である少なくとも1種の追加のシランで修飾される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記追加のシランが末端キャップ形成シランである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
Xがハロゲン、アルコキシ、アミノ又はアシルオキシである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
Q、R1又はR2がキラルレコグニション配位子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記のシリカゲルが次の工程、すなわち、
(a)前記シリカゲルを限定された相対湿度を持った大気中で平衡にし、
(b)前記シリカゲルを少なくとも1種のシランで修飾し、
(c)さらに前記のシリカゲルを末端キャップ形成シランで修飾する、
工程によって修飾される、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
(a)限定された相対湿度を持った大気中で無機基質を平衡にして無機基質の表面上に制御された量の水を与える工程と、
(b)前記の無機基質を少なくとも1種のシランで修飾し、さらに無機基質を末端キャップ形成シランで修飾する工程、
とからなる無機基質を修飾する方法。
その場合、前記シランは式、
1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
で表わされ、式中でR1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO−,−CHOHCHOH−,−CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN−,−NC−,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立して選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基である。
【請求項13】
前記の方法が、前記の無機基質をさらに第2のシランで修飾する工程を含み、その場合第2のシランはδが0−3である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記一定の相対湿度が50%より小さい、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記の無機基質が金属又はメタロイド酸化物である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】

1δ−Qα−(CH2)βSiR2γ3-γ
で表わされる少なくとも1種のシランで修飾された無機基質からなる固定相を使用して、クロマトグラフによる分離を行い、その場合上記無機基質は少なくとも1種のシランで修飾される前に、限定された相対湿度を持った大気中で平衡にされていることを特徴とする、複数の試料を分離する方法。
但し、上記式中でR1は水素、C1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、αは0又は1であり、βは0−30であり、γは0、1又は2であり、δは0−3であり、R2はC1−C100の置換され又は置換されないヒドロカルビル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、そこでの置換基はC1−C12のヒドロカルビル、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、スルホ及びカルボニルから選ばれ、Qは−NHC(O)−,−C(O)NH−,−OC(O)NH−,−NHC(O)O−,−NHC(O)NH−,−NCO−,−CHOHCHOH−,CH2OCHCH2O−,−(CH2CH2O)n−,−(CH2CH2CH2O)n−,−C(O)−,−C(O)O−,−OC(O)−,−CH2C(O)CH2−,−S−,−SS−,−CHOH−,−O−,−SO−,−SO2−,−SO3−,−OSO3−,−SO2NH−,−SO2NMe−,−NH−,−NMe−,−NMe2+−,−N[(CH2)n]2+−,−CN−,−NC−,−CHOCH−,−NHC(NH)NH−,−NO2,−NO,−OPO3−から独立して選ばれ、そこでのnは1−30であり、Xは脱離基である。
【請求項17】
前記クロマトグラフィによる分離を、薄層クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、順相クロマトグラフィ、イオンクロマトグラフィ、イオン対クロマトグラフィ、逆相イオン対クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、疎水性インタラクションクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ、キラルレコグニションクロマトグラフィ、パーフュージョンクロマトグラフィ、通電クロマトグラフィ、分配クロマトグラフィ、ミクロカラム液体クロマトグラフィ、毛管クロマトグラフィ、液体−固体クロマトグラフィ、分取クロマトグラフィ、親水性インタラクションクロマトグラフィ、超臨界液体クロマトグラフィ、プレシピテイション液体クロマトグラフィ、結合相クロマトグラフィ、ファスト液体クロマトグラフィ、フラッシュクロマトグラフィ、液体クロマトグラフィ・マススペクトロメトリー、ガスクロマトグラフィ、微細流体素子工学を基礎とした分離、固体相抽出分離又はモノリスを基礎とする分離を使用して行うことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記固定相が、請求項1の修飾された無機基質を含んでいるクロマトグラフィカラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−522476(P2007−522476A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553188(P2006−553188)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/003947
【国際公開番号】WO2005/079975
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(599060928)バリアン・インコーポレイテッド (81)
【Fターム(参考)】