説明

クロマトグラフ用データ処理装置

【課題】分析者による面倒な操作なしに、分析クロマトグラムと比較するのに適切な参照クロマトグラムを背景画像として表示する。
【解決手段】再解析処理する分析データファイルが指定されると(S1)、データ処理部は分析データファイルを読み込み(S2)、そのクロマトグラムデータを取得した際のGC分析に用いられたメソッドファイルのファイル名を抽出する(S3)。そのファイル名を持つ参照データファイルをデータ保存部の中から検索し(S4)、ファイルがあれば(S5でYes)該ファイルを読み込んで標準サンプルのデータから参照クロマトグラムを作成し、分析クロマトグラムと重ねて表示する(S6)。同種の複数の未知サンプルをGC分析するに適切なメソッドファイルと同じファイル名を、それら未知サンプルに対応した標準サンプルの参照データファイルに付与しておきさえすれば、自動的に適切な参照クロマトグラムが表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ(GC)や液体クロマトグラフ(LC)などのクロマトグラフで収集されたデータを処理するデータ処理装置に関し、さらに詳しくは、収集されたデータに基づく表示を行うデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフや液体クロマトグラフでは、分析により収集されたデータに基づいて、横軸が時間軸、縦軸が強度軸であるクロマトグラムが作成される。こうしたクロマトグラフ用のデータ処理装置(通常はパーソナルコンピュータ)において、分析中に順次収集されるデータに基づくクロマトグラムを表示画面上に描画する際に、その背景画像に参照クロマトグラムを表示することにより、分析により新たに得られるクロマトグラムと参照クロマトグラムとを比較可能とした装置が従来知られている(特許文献1など参照)。こうした装置によれば、分析中に両クロマトグラムを比較することで、その時点で実行している分析の条件が適切であるか否かを判断し、適切でない場合には分析を途中で打ち切るといった作業を行うことができる。
【0003】
上記従来技術で参照クロマトグラムを背景画像として表示させるためには、分析者自身が、データ処理装置に蓄積されたデータの中から表示したい参照クロマトグラムのファイル名を入力したり選択したりする操作を行う必要があった。多くの場合、データ処理装置には、日々の分析で収集されたクロマトグラムデータが多数蓄積されており、そうした膨大なデータの中から参照用として表示すべき適切なクロマトグラムを選択するのはかなり面倒で手間が掛かる作業である。
【0004】
また、複数の試料を連続的に分析する際に分析中に取得されるクロマトグラムとともに参照クロマトグラムを表示する場合、試料毎に異なる参照クロマトグラムを表示したければ、異なる試料の分析毎に新たな参照クロマトグラムを選び直す操作が必要になる。そうした操作を行わないと、参照用として適切でない参照クロマトグラムが背景画像に表示されたままとなり、参照とするに適さないのみならず、分析により取得されたクロマトグラムの観察の邪魔となることさえあり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−304787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、分析者が特段の操作を行うことなく、解析対象であったり分析中であったりするクロマトグラムと比較するのに適切な参照クロマトグラムを選択して表示することができるクロマトグラフ用データ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために成された本発明は、クロマトグラフ分析により取得したデータを基に作成されたクロマトグラムを表示手段の画面上に表示するクロマトグラフ用データ処理装置において、
a)クロマトグラフ分析を遂行するための分析条件が記述されたメソッドファイルと関連付けて、参照クロマトグラムを構成するデータがそれぞれファイル形式で保存される参照データ記憶手段と、
b)既に終了した分析によって収集されたデータ又は分析中で収集されつつあるデータに基づいて分析クロマトグラムを作成するクロマトグラム作成手段と、
c)前記分析クロマトグラムを構成するデータを収集するための分析に用いられるメソッドファイルを特定し、該メソッドファイルに関連付けられた参照データファイルを前記参照データ記憶手段に保存されているデータの中から検索する参照データ検索手段と、
d)前記参照データ検索手段により参照データファイルが見つかった場合に、該ファイルに格納されているデータに基づく参照クロマトグラムを前記分析クロマトグラムの背景画像として、両クロマトグラムを前記表示手段の同一画面上に表示させる表示処理手段と、
を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の第1態様としてのクロマトグラフ用データ処理装置は、
メソッドファイルと参照データファイルとの前記関連付けが同一のファイル名を付与することで行われ、
前記参照データ検索手段は、前記分析クロマトグラムを構成するデータを収集するための分析に用いられたメソッドファイルのファイル名を取得し、それと同一のファイル名が付与された参照データファイルを前記参照データ記憶手段に保存されているデータの中から検索する構成とすることができる。
なお、ここでいうファイル名とは、少なくともファイルの種類を表す拡張子を除く(つまり拡張子が相違していても、同一ファイル名とみなす)ものとする。
【0009】
また本発明の第2態様としてのクロマトグラフ用データ処理装置は、
メソッドファイルと参照データファイルとの前記関連付けがメソッドファイル内に参照データファイルのファイル名を格納することで行われ、
前記参照データ検索手段は、前記分析クロマトグラムを構成するデータを収集するための分析に用いられたメソッドファイルのデータから参照データファイルのファイル名を抽出し、該ファイル名が付与された参照データファイルを前記参照データ記憶手段に保存されているデータの中から検索する構成とすることができる。
【0010】
一般に、クロマトグラフ分析を遂行するために用いられる各種の分析パラメータ(例えばガスクロマトグラフであれば、キャリアガス流量(流速)、試料注入量、スプリット比、試料気化室温度、カラム温度プロファイル、など)が格納されているメソッドファイルは、それを用いて分析が行われる複数の同種の又は類似したサンプルを含むサンプルグループ毎に作成されることが多い。一方、参照クロマトグラムとしては、サンプルグループ毎にそれぞれ選択される標準サンプルをクロマトグラフ分析して得られるクロマトグラムが使用されることが多い。そのため、1つのメソッドファイルに或る1つの標準サンプルを割り当てておき、そのメソッドファイルを利用したクロマトグラフ分析が実行される際に又は該クロマトグラフ分析で収集されたデータの再解析が実行される際に、割り当てられた上記標準サンプルによるクロマトグラムを参照クロマトグラムとすれば、多くの場合、分析クロマトグラムと比較するのに適切な参照クロマトグラムを表示することができる。
【0011】
第1態様によるクロマトグラフ用データ処理装置では、標準サンプルをクロマトグラフ分析する際に、その分析結果として得られるデータを格納するファイル(つまり参照データファイル)のファイル名を該分析に用いるメソッドファイルと同一としておくことで、互いに対応するメソッドファイルと参照データファイルとが同一のファイル名となる。参照データファイルのファイル名を分析者が入力設定する必要がある場合でも、参照データファイルを新規に作成する際に、分析に用いるメソッドファイルのファイル名がデフォルトとして表示されるようにしておくことで、ファイル名を入力する分析者の手間を軽減することが可能である。
【0012】
第1態様のクロマトグラフ用データ処理装置によれば、或るサンプルグループに属する試料のクロマトグラフ分析を行う際に、該分析で用いられるメソッドファイルと同じファイル名を持つ参照データファイルに格納されているデータに基づくクロマトグラムが、参照クロマトグラムとして表示手段の画面上に表示される。即ち、試料が属するサンプルグループに対して選定された標準サンプルのクロマトグラムが、参照クロマトグラムとして自動的に、つまり分析者が参照データファイルやクロマトグラムの指定を行うことなく表示される。また、異なる種類の、つまり異なるサンプルグループに属する試料を連続的に分析する場合には、分析に使用されるメソッドファイルの変更に合わせて、表示される参照クロマトグラムも自動的に変更される。したがって、常に適切な参照クロマトグラムを分析クロマトグラムと同一画面上に表示させることができる。
【0013】
第2態様のクロマトグラフ用データ処理装置によれば、或るサンプルグループに属する試料のクロマトグラフ分析を行う際に、該分析で用いられるメソッドファイル内に記述されているファイル名を持つ参照データファイルに格納されているデータに基づくクロマトグラムが、参照クロマトグラムとして表示手段の画面上に表示される。即ち、この場合にも、試料が属するサンプルグループに対して選定された標準サンプルのクロマトグラムが、参照クロマトグラムとして自動的に、つまり分析者が参照データファイルやクロマトグラムの指定を行うことなく表示される。また、異なる種類の、つまり異なるサンプルグループに属する試料を連続的に分析する場合には、分析に使用されるメソッドファイルの変更に合わせて、表示される参照クロマトグラムも自動的に変更される。したがって、常に適切な参照クロマトグラムを分析クロマトグラムと同一画面上に表示させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るクロマトグラフ用データ処理装置によれば、分析者自身が参照クロマトグラムのデータファイル名を入力したり選択したりする手間が省けるとともに、入力ミス等により誤った参照クロマトグラムが表示されることを回避し、分析クロマトグラムと不適切な参照クロマトグラムとの比較を行ってしまうことを防止できる。また、異なる種類の試料を連続分析する際に、比較に不適切である、1回前の分析の参照クロマトグラムが表示されたままになることを回避することができ、分析クロマトグラムと不適切な参照クロマトグラムとの比較を行ってしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例によるデータ処理装置を備えたガスクロマトグラフの概略構成図。
【図2】本実施例のデータ処理装置におけるファイルの対応関係を示す概念図。
【図3】本実施例のデータ処理装置における表示処理手順を示すフローチャート。
【図4】本実施例のデータ処理装置における表示状態の一例を示す模式図。
【図5】本発明の他の実施例のデータ処理装置におけるファイルの対応関係を示す概念図。
【図6】他の実施例のデータ処理装置における表示処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るGC用データ処理装置の一実施例を、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例によるデータ処理装置を備えたGCの概略構成図である。
【0017】
試料導入部1において微量の液体試料が注入されると、該試料は短時間で気化しキャリアガス流に乗ってカラム2に導入される。カラム2を通過する間に試料中の各種成分は時間方向に分離され、時間差をもってカラム2から流出し、検出器3にて検出される。検出器3は順次導入される試料成分の濃度に応じた強度信号を出力し、この信号はA/D変換器4でデジタルデータに変換されてデータ処理部10に入力される。操作部6が接続された制御部5は、上記各部の動作を制御する機能を有する。
【0018】
データ処理部10は、参照データ保存部15、分析データ保存部16、メソッド保存部17などを含むデータ保存部14と、参照データ検索部11と、クロマトグラム作成部12と、表示処理部13とを、機能ブロックとして備え、表示処理部13は表示データを表示部7に出力する。参照データ保存部15には、例えば標準サンプル(含有成分と含有濃度が既知であるサンプル)をGC分析することで収集されたクロマトグラムデータが、標準サンプル毎にそれぞれ別のファイルに格納されて保存されている。また、分析データ保存部16には、未知サンプルをGC分析することで収集されたクロマトグラムデータが、未知サンプル毎にそれぞれ別のファイルに格納されて保存されている。メソッド保存部17には、GC分析に必要な各種の分析条件、分析パラメータなどが、分析毎にそれぞれ別のファイルに格納されて保存されている。
【0019】
データ処理部10や制御部5の機能の全て又は一部は、パーソナルコンピュータにインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアを実行することにより達成する構成とすることができる。もちろん、データ処理部10は専用の処理装置とすることもできる。
【0020】
図2はデータ保存部14に保存されるデータファイルの概要と相互の関係を示す概念図である。分析データ保存部16に保存される分析データファイルは、分析結果であるクロマトグラムデータのほかに、少なくともそのデータを取得する際のGC分析で用いられたメソッドファイルのファイル名(この例では[aaa])をデータとして含む。メソッド保存部17に保存されるメソッドファイルは、分析条件パラメータなどをデータとして含む。参照データ保存部15に保存される参照データファイルは、標準サンプルなどのサンプルに対する分析結果であるクロマトグラムデータを含み、通常は、そのデータを取得する際のGC分析で用いられたメソッドファイルのファイル名(この例では[aaa])もデータとして含む。
【0021】
一般に、同種類である異なる未知サンプルは同一のメソッドファイルを用いてGC分析される。例えばサンプルグループAに属する未知サンプルA1、A2、…は、全てファイル名が[aaa]であるメソッドファイルを用いてGC分析される。このサンプルグループAに属する未知サンプルA1、A2、…を評価したりクロマトグラムの比較を行ったりするのに適切な標準サンプルを、ファイル名が[aaa]であるメソッドファイルを用いてGC分析し、これにより得られるクロマトグラムデータを格納する参照データファイルのファイル名をメソッドファイルのファイル名と同じに定めるようにする。但し、図2に示すように、参照データファイルのファイル名とメソッドファイルのファイル名とでは拡張子は異なる。
【0022】
標準サンプルをGC分析する際に、そのGC分析結果であるクロマトグラムデータを格納する参照データファイルのファイル名については、分析者が自由に設定できる。したがって、上述したようにサンプルグループAに属する未知サンプルに対応した標準サンプルの参照データファイルのファイル名をメソッドファイルのファイル名と同一にするためには、分析者がそのように入力設定を行う必要がある。但し、参照データファイルのファイル名を入力設定するための画面において、GC分析に使用するメソッドファイルのファイル名をデフォルトとして表示するようにしておけば、分析者が参照データファイルのファイル名を書き換える操作をしない限り、メソッドファイルのファイル名と参照データファイルのファイル名とは一致することになり、分析者の手を煩わせずに済む。
【0023】
次に、未知サンプルの分析データファイルと標準サンプルの参照データファイルとがいずれもデータ保存部14に保存されている状態で、分析データファイル中のデータに対し再解析処理を行う場合の表示処理手順を図3のフローチャートに従って説明する。
【0024】
まず分析者は操作部6により再解析処理を行う分析データファイルを指定する(ステップS1)。すると、データ処理部10においてクロマトグラム作成部12は、指定された分析データファイルを分析データ保存部16から読み込む(ステップS2)。上述したように、その分析データファイル中にはGC分析に使用されたメソッドファイルのファイル名が含まれる。参照データ検索部11はこのメソッドファイル名を抽出し(ステップS3)、参照データ保存部15に保存されている参照データファイルの中で、上記抽出されたメソッドファイル名(拡張子は異なる)を持つ参照データファイルを検索する(ステップS4)。例えば、図2に示したように、読み込んだ分析データファイルに含まれるメソッドファイル名が[aaa]である場合、ファイル名が[aaa]である参照データファイルが検索される。
【0025】
ステップS4のファイル検索で参照データファイルが見つかった場合には、その結果を受けたクロマトグラム作成部12がその参照データファイルを読み込み、分析クロマトグラムと参照クロマトグラムとをそれぞれ作成する。表示処理部13は、参照クロマトグラムを背景画像として分析クロマトグラムを手前に重ねて表示する表示データを作成し、これを表示部7に出力して表示部7の画面上に表示させる(ステップS6)。これにより、例えば図4(a)に示すような2つのクロマトグラムが重なって表示される。
【0026】
上記ステップS4のファイル検索において参照データファイルが見つからなかった場合には、その結果を受けたクロマトグラム作成部12は分析クロマトグラムのみを作成し、表示処理部13は分析クロマトグラムを表示部7の画面上に表示させる(ステップS7)。これにより、例えば図4(b)に示すような1つのみのクロマトグラムが表示される。
【0027】
図4(a)は参照クロマトグラムと分析クロマトグラムとを同一の縦軸及び横軸のグラフに描出したものであり、このとき両クロマトグラムは例えば異なる線色が選ばれる。もちろん、両クロマトグラムの線色を変えて表示する以外に、線種等のそのほかの属性を変えて表示するようにしてもよい。また、両クロマトグラムを同一の縦軸及び横軸のグラフに描出するのではなく、縦方向や横方向に並べて表示してもよい。また、参照クロマトグラムを分析クロマトグラムとは別のレイヤ上に載せ、参照クロマトグラムを例えばマウスによるドラッグ操作などにより画面上の任意の位置に移動可能として、分析クロマトグラムと重ねて表示したり、分析クロマトグラムとは重ならないようにずらして表示したりできるようにしてもよい。
【0028】
上記説明は既に収集されたクロマトグラムデータの再解析処理を行う場合の表示処理手順であるが、未知サンプルの分析実行時に表示処理を行う場合には、上記手順を次のように変更すればよい。即ち、上記ステップS1、S2を省略し、ステップS3において、参照データ検索部11はこれから行うGC分析に使用されるメソッドファイル名を制御部5から受け取る。そして、このメソッドファイルと同名の参照用データファイルを参照データ保存部15の中から検索し、それが見つかったならば、このファイルに基づいて作成される参照クロマトグラムを、分析遂行により逐次描画される分析クロマトグラムの背景画像とする。
【0029】
上記実施例では、分析クロマトグラムのデータ収集の際のGC分析に用いたメソッドファイルと同じファイル名をもつ参照データファイルを自動的に探して、そのファイルに基づく参照クロマトグラムを表示するようにしていたが、メソッドファイル内に参照データファイルのファイル名をデータとして格納するようにしてもよい。
【0030】
この変形例によるデータ処理装置について、図5、図6により説明する。図5はこの変形例のデータ処理装置においてデータ保存部14に保存されるデータファイルの概要と相互の関係を示す概念図である。メソッド保存部17に保存されるメソッドファイルは、分析条件パラメータなどをデータとして含むほか、そのメソッドファイルを用いた標準サンプルに対するGC分析の結果得られたクロマトグラムデータを格納する参照データファイルのファイル名をデータとして含む。つまり、この場合には、このファイル名によって、参照データ保存部15に保存されているデータの中で関連付けられた参照データファイルが特定される。
【0031】
図6は、この変形例によるデータ処理装置において、分析データファイル中のデータに対し再解析処理を行う場合の表示処理手順を示すフローチャートである。図3に示した表示処理手順と同じ処理については同じステップ番号を付している。
【0032】
即ち、クロマトグラム作成部12が指定された分析データファイルを読み込み、参照データ検索部11がメソッドファイル名を抽出した後に、そのファイル名をもつメソッドファイルをメソッド保存部17から読み込む(ステップS41)。図5に示したようにメソッドファイル中には参照データファイル名が含まれるから、参照データ検索部11はその参照データファイル名を抽出する(ステップS42)。参照データファイル名が抽出できればステップS5でYesと判断し、ステップS6に進んで参照クロマトグラムと分析クロマトグラムとが重なった表示を表示部7の画面上に行う。一方、メソッドファイルから参照データファイル名が抽出できなかった場合には、ステップS5でNoと判断し、ステップS7に進んで分析クロマトグラムのみを表示部7に表示する。
【0033】
なお、上記説明はいずれも本発明によるデータ処理装置をガスクロマトグラフに適用したものであるが、液体クロマトグラフにおけるクロマトグラムを表示する際に本発明を適用できることは当然である。
【0034】
また、上記実施例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜修正や変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1…試料導入部
2…カラム
3…検出器
4…A/D変換器
5…制御部
6…操作部
7…表示部
10…データ処理部
11…参照データ検索部
12…クロマトグラム作成部
13…表示処理部
14…データ保存部
15…参照データ保存部
16…分析データ保存部
17…メソッド保存部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフ分析により取得したデータを基に作成されたクロマトグラムを表示手段の画面上に表示するクロマトグラフ用データ処理装置において、
a)クロマトグラフ分析を遂行するための分析条件が記述されたメソッドファイルと関連付けて、参照クロマトグラムを構成するデータがそれぞれファイル形式で保存される参照データ記憶手段と、
b)既に終了した分析によって収集されたデータ又は分析中で収集されつつあるデータに基づいて分析クロマトグラムを作成するクロマトグラム作成手段と、
c)前記分析クロマトグラムを構成するデータを収集するための分析に用いられたメソッドファイルを特定し、該メソッドファイルに関連付けられた参照データファイルを前記参照データ記憶手段に保存されているデータの中から検索する参照データ検索手段と、
d)前記参照データ検索手段により参照データファイルが見つかった場合に、該ファイルに格納されているデータに基づく参照クロマトグラムを前記分析クロマトグラムの背景画像として、両クロマトグラムを前記表示手段の同一画面上に表示させる表示処理手段と、
を備えることを特徴とするクロマトグラフ用データ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクロマトグラフ用データ処理装置であって、
メソッドファイルと参照データファイルとの前記関連付けが同一のファイル名を付与することで行われ、
前記参照データ検索手段は、前記分析クロマトグラムを構成するデータを収集するための分析に用いられたメソッドファイルのファイル名を取得し、それと同一のファイル名が付与された参照データファイルを前記参照データ記憶手段に保存されているデータの中から検索することを特徴とするクロマトグラフ用データ処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のクロマトグラフ用データ処理装置であって、
メソッドファイルと参照データファイルとの前記関連付けがメソッドファイル内に参照データファイルのファイル名を格納することで行われ、
前記参照データ検索手段は、前記分析クロマトグラムを構成するデータを収集するための分析に用いられたメソッドファイルのデータから参照データファイルのファイル名を抽出し、該ファイル名が付与された参照データファイルを前記参照データ記憶手段に保存されているデータの中から検索することを特徴とするクロマトグラフ用データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−230639(P2010−230639A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81625(P2009−81625)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)