説明

クロムを含まない金属表面処理液

【課題】マグネシウム部材及びアルミニウム部材等の金属部材の表面に電磁波シールド性を実現できる低電気抵抗性と高耐食性とを付与することのできるクロム非含有処理液を提供する。
【解決手段】バナジウムイオン及び/又はバナジルイオンと、有機酸イオンと、硝酸イオン、硫酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオンからなる群から選ばれる一種以上とを含有し、クロムを含有しない酸性の金属表面処理液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネシウム部材、マグネシウム合金部材(特に断らない限りこれ以下を単に「マグネシウム部材」と称する)及びアルミニウム部材、アルミニウム合金部材(特に断らない限りこれ以下を単に「アルミニウム部材」と称する)等の金属部材の表面に耐食性が優れ、且つ電気抵抗性の低い皮膜を形成するための、環境に有害なクロムを含まない処理液に関する。また、本発明は該処理液を用いた金属部材の表面処理方法に関する。更に、本発明は該表面処理方法によって得られた金属部材にも関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材は各種の工業製品に使用されている。特にマグネシウム部材及びアルミニウム部材は軽量で比強度が高く、機械加工性、リサイクル性が優れることから、自動車部品、携帯電話やパソコン等の電気製品の部品、航空機部品等に多用されている。その際、金属部材を腐食防止や塗装密着性向上等の目的で表面に保護皮膜を設けることが一般的であるが、近年では電磁波による通信障害や人体への悪影響が問題視されており、電磁波シールド性の対策のため、保護皮膜は低い電気抵抗性を併せて求められることも多い。
【0003】
マグネシウム部材やアルミニウム部材等の金属部材の表面に保護皮膜を形成するための方法はクロメート処理の他に各種処理方法が報告されているが、地球環境に有害なクロムを含む処理方法は敬遠されている。そこで、クロムを使用しない処理方法がこれまでにも提案されており、例えば、以下の特許文献に記載された技術が知られている。
【0004】
具体的には、特許文献1には、マグネシウム含有金属材に対して、酸及び/又は弱アルカリ溶液によるエッチング処理後に、高アルカリ溶液による処理を行い、しかる後にカルシウムイオン、マンガンイオン及びリン酸イオンを含み、さらに酸化処理剤を含有する化成処理剤溶液による化成処理を行う工程を含むことを特徴とする低電気抵抗性皮膜を有するマグネシウム含有金属表面の処理方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、マグネシウム及び/又はマグネシウム合金製部品を、(A)リン酸塩を含有する表面処理剤により処理した後、(B)防錆前処理剤で処理することを特徴とする処理されたマグネシウム及び/又はマグネシウム合金製部品の製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献3には、a)バナジン酸塩イオン源、
( b )燐含有材料、および
( c )硝酸塩イオン源を含んで成り、
ここで、バナジン酸塩イオン、燐含有材料および硝酸塩イオンは水溶液中に溶解しており、組成物のpHは1〜4であることを特徴とするマグネシウム化成被覆組成物が記載されている。
【0007】
特許文献4には、アルミニウム基体の表面に耐食性を付与する方法であって、該アルミニウム基体の表面を、
水、及び以下の成分( A )及び( B ):
( A )0.1〜20mM/kgの、テトラフルオロホウ酸、テトラフルオロホウ酸を部分的にもしくは全体的に中和した水溶性塩、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸を部分的にもしくは全体的に中和した水溶性塩、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロチタン酸を部分的にもしくは全体的に中和した水溶性塩、ヘキサフルオロジルコニウム酸、ヘキサフルオロジルコニウム酸を部分的にもしくは全体的に中和した水溶性塩、ヘキサフルオロハフニウム酸、ヘキサフルオロハフニウム酸を部分的にもしくは全体的に中和した水溶性塩、及びこれらの混合物よりなる群から選ばれるフッ素含有化合物( 該溶液中に含有される塩の濃度は対応する酸と化学量論的に当量であるとして測定される);及び( B )バナジウム原子と化学量論的に当量であるとして測定した、0.40〜95mM/kgのバナジン酸アニオン
を含有する液体処理溶液と接触させることを特徴とする方法が記載されている。
【0008】
特許文献5には、金属表面における被膜形成方法であって、
( a )タングステン酸イオン供給源、および( b )ジルコニウム含有可溶性材料を含む水性表面処理剤による金属表面処理工程と、
表面処理した金属表面に対して、乾燥処理および/ またはベーキング処理を実施するための処理工程と、
を順次含むことを特徴とする被膜形成方法が記載されている。
【0009】
これらの処理方法によって得られる金属部材は、電気抵抗性が比較的低いものもあるが、充分な耐食性が得られない上に、特許文献1〜4では適用可能な金属材料がマグネシウム部材又はアルミニウム部材の何れかに限定されていた。また、特許文献5の水性表面処理剤をマグネシウム部品に適用すると、本来の目的である低い電気抵抗性と充分な耐食性を有しないことが分かった。
【特許文献1】特開2000−96255号公報
【特許文献2】特開2002−12980号公報
【特許文献3】特表2006−511698号公報
【特許文献4】特表2004−510882号公報
【特許文献5】特表2005−520047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明はマグネシウム部材及びアルミニウム部材等の金属部材の表面に電磁波シールド性を実現できる低電気抵抗性と高耐食性とを付与することのできるクロム非含有処理液を提供することを課題とする。また、本発明は該処理液を用いた金属部材の表面処理方法を提供することを別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、バナジウムイオン及び/又はバナジルイオンと、有機酸イオンと、硝酸イオン、硫酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオンからなる群から選ばれる一種以上とを含有する酸性の処理液にマグネシウム部材やアルミニウム部材等の金属部材を接触させることにより、金属部材に対して低電気抵抗性を維持しつつも優れた耐食性を付与することができることを見出した。
【0012】
更にこの処理液中にアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、銀、コバルト、ジルコニウム、チタン、鉄、タングステン、銅、ニッケル、マンガン及びモリブデンの化合物からなる群から選ばれる一種以上を含有させ、及び/又は硼素、ケイ素、ジルコニウム、チタン、ハフニウムのフッ素化合物イオン、フッ化物イオンからなる群から選ばれる一種以上を含有させ、及び/又はアミン化合物、アルコール類、界面活性剤からなる群から選ばれる一種以上を含有させることにより、更に電気抵抗性の低下と耐食性の向上が図れることを見出した。
【0013】
また、金属部材を上記処理液と接触させる前に、洗浄液、活性化液、及び表面調整液と接触させることにより、低電気抵抗性の保護皮膜の密着性や外観の均一性を向上させることができることも見出した。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、有害なクロムを使用することなく、低電気抵抗性で耐食性の優れた、すなわち優れた電磁波シールド性と耐食性を兼ね備えたマグネシウム部材やアルミニウム部材等の金属部材を得ることができる。これまでクロムを使用しない方法では、高耐食性と低電気抵抗性の両立が困難であるという問題があったが、本発明はこの問題を一挙に解決できる画期的なものである。更に、従来のクロメート処理施設が一般的に有している既存設備をそのまま使用でき、生産性やコスト面でも利点を有する。
本発明はこのように、従来技術が抱えていた問題点を解決することができるため、今後は金属部材に対して電磁波シールド性及び耐食性を要求する幅広い分野に利用されると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は一実施態様において、
(1)バナジウムイオン及び/又はバナジルイオンと、
(2)有機酸イオンと、
(3)硝酸イオン、硫酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオンからなる群から選ばれる一種以上と
を含有し、且つ、クロムを含有しない酸性の金属表面処理液である。
【0016】
本発明に係る処理液は一実施態様において、各成分の水溶液として提供される。
【0017】
本発明に係る処理液が対象とする金属の種類には特に制限はないが、例えばマグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、及びこれらの合金等が挙げられる。その中でも特にマグネシウム、アルミニウム及びこれらの合金への適用が典型的である。
また、本発明に係る処理液が対象とする金属部材の形状にも特に制限はなく、種々の形状に加工された金属部材であってよい。
【0018】
本発明に係る処理液の成分のうち、陽イオン性であるバナジウムイオン及びバナジルイオンは金属部材に対して低電気抵抗性と耐食性を付与するための基本成分と考えられる。中でもバナジウムの酸化数が4であるバナジルイオン(VO2+)及びバナジウムイオン(V4+)が好ましい。この供給源としては、各種の無機又は有機バナジウム化合物が使用でき、限定的ではないが例えばフッ化バナジウム(VF2、VF3、VF4、及びVF5)、塩化バナジウム(VCl2、VCl3、及びVCl4)、塩化バナジル(VOCl2)、臭化バナジウム(VBr2、VBr3)、ヨウ化バナジウム(VI2、VI3)、硫酸バナジウム(VSO4、V2(SO43)、硫酸バナジル(VOSO4)、硝酸バナジウム(V(NO32、 V(NO33)、燐酸バナジウム(V3(PO42、VPO4)、及び酢酸バナジウム(V(CH3COO)2、V(CH3COO)3)等が挙げられる。
処理液には該イオン供給源を所望の効果が達成されるような濃度で処理液に添加すればよく、特に濃度制限はないが、通常は処理液中の濃度が全体で0.01〜45g/L、好ましくは0.1〜15g/Lとなるように添加する。これより少ないと効果が不十分となる傾向が強くなり、多くなると処理過剰や経済的損失等の問題が生ずる。
【0019】
一方、陰イオン性であるバナジン酸イオン(VO3-、VO43-、V274-:供給源としては五酸化バナジウム、バナジン酸又はその塩等が挙げられる。)では溶解性が低く形成される保護皮膜も薄くなる傾向にあるため、低電気抵抗性と耐食性の両立は困難である。
【0020】
また、本発明に係る処理液の成分のうち、有機酸イオンは二次的に耐食性を付与する成分と考えられる。上記のバナジウムイオン及びバナジルイオンのみでは充分な効果は得られない。この供給源としては、各種のカルボン酸(RCOOH;Rは有機基)やスルホン酸(RSO3H;Rは有機基)があり、限定的ではないが例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、グルコン酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、酒石酸、グリコール酸、ジグリコール酸、乳酸、グリシン、クエン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びこれらの塩等が挙げられる。
処理液には該有機酸イオン供給源を所望の効果が達成されるような濃度で処理液に添加すればよく、特に濃度制限はないが、通常は処理液中の濃度が全体として0.01〜30g/L、好ましくは0.05〜10g/Lとなるように添加することで、高い効果が得られる。
【0021】
また、本発明に係る処理液の成分のうち、硝酸イオン、硫酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、及び塩素の酸素酸イオンは皮膜の均一性と増膜性に寄与する成分と考えられる。これらの供給源は、酸の形態の他、アルカリ金属(Li、Na、K等)塩、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba等)塩、又はアンモニウム塩の形態とするのが好ましいが、この他の金属塩も使用できる。
好ましい燐の酸素酸イオンの供給源としてはリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸及びこれらの塩等が挙げられ、好ましい硼素の酸素酸イオンの供給源としては硼酸、過硼酸及びこれらの塩等が挙げられ、好ましい塩素の酸素酸イオンの供給源は過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸及びこれらの塩等が挙げられる。
また、処理液には該イオン供給源を所望の効果が達成されるような濃度で処理液に添加すればよく、特に濃度制限はないが、通常は処理液中の濃度が0.1〜150g/L、好ましくは1〜70g/Lとなるように添加することで、高い効果が得られる。
【0022】
本発明に係る処理液は金属部材に対して均一な保護皮膜を所要の厚みで形成する観点から酸性とし、好ましくはpH0.5〜6.5、より好ましくはpH1〜5.5の範囲で処理する。
【0023】
また、本発明の好ましい態様では、上述の処理液は、アルカリ金属(Li、Na、K等)、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba等)、アルミニウム、亜鉛、銀、コバルト、ジルコニウム、チタン、鉄、タングステン、銅、ニッケル、マンガン及びモリブデンの化合物からなる群から選ばれる一種以上の金属化合物を含むこともできる。これらを含むことにより、耐食性や外観の向上を図ることが出来る。これらの金属化合物は、限定的ではないが例えば、酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、硼酸塩、炭酸塩、酸素酸塩、有機酸塩等として与えることができる。
処理液には該金属化合物を所望の効果が達成されるような濃度で処理液に添加すればよく、特に濃度制限はないが、有効に作用させるためには、通常は処理液中にアルカリ金属とアルカリ土類金属の化合物では全体として1〜150g/L、好ましくは5〜80g/L含むことが望ましく、他の金属の化合物では全体として0.05〜50g/L、好ましくは0.1〜30g/L含むことが望ましい。これより少ないと効果が不十分となる傾向が強くなり、多くなると処理過剰や経済的損失等の問題が生ずる。
【0024】
更にまた、本発明の好ましい態様では、上記の処理液は硼素、ケイ素、ジルコニウム、チタン及びハフニウムのフッ素化合物イオン、並びにフッ化物イオンからなる群から選ばれる一種以上を含むことができる。これらを含むことにより、皮膜の均一性や耐食性を向上できる。これらの供給源は、限定的ではないが例えば、硼フッ酸、珪フッ酸、フッ化ジルコニウム酸、フッ化チタン酸、フッ化ハフニウム酸及びフッ酸等の酸並びにこれらの塩が挙げられる。塩としては、限定的ではないが例えば、アルカリ金属(Li、Na、K等)塩、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba等)塩、アンモニウム塩が挙げられる。この他の金属塩も使用できる。
処理液には該供給源を所望の効果が達成されるような濃度で処理液に添加すればよく、特に濃度制限はないが、有効に作用させるためには、通常は処理液中に全体として0.01〜35g/L、好ましくは0.1〜20g/L含むことが望ましい。
【0025】
更にまた、本発明の好ましい態様では、上記の処理液はアミン化合物、アルコール類及び界面活性剤からなる群から選ばれる一種以上含むことが出来る。これらを含むことにより、耐食性や外観を向上できる。処理液にはこれらを所望の効果が達成されるような濃度で処理液に添加すればよく、特に濃度制限はないが、有効に作用させるためには全体として、0.001〜50g/L、好ましくは0.01〜10g/L含むことが望ましい。これより少ないと効果が不十分となる傾向が強くなり、多くなると処理過剰や経済的損失等の問題が生ずる。
【0026】
好ましいアミン化合物としては、限定的ではないが例えば、少なくとも1個のアミノ基を有する脂肪族又は芳香族のアミン、それらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩、(ポリ)アルキレンポリアミン、アルカノールアミンが挙げられる。具体的にはメチルアミン、エチルアミン、プロピレンアミン、イソプロピレンアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N−メチルエチルアミン、N−エチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチルプロピルアミン、トリメチルアミン等の第一、第二及び第三アミン;塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム塩;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の(ポリ)アルキレンポリアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−1−ブタノール、エチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;コリン、アニリン、トルイジン、メチルアニリン、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン等の芳香族アミンが挙げられる。
【0027】
好ましいアルコール類としては、限定的ではないが例えば、少なくとも1個以上の水酸基を有する脂肪族又は芳香族の一価、二価、三価アルコール及び多価アルコールが挙げられる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、N−ブチルアルコール、アリルアルコール、プロパギルアルコール、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール等の脂肪族又は芳香族の一価アルコール;エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、3−ブテン1,2−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、カテコール等の脂肪族又は芳香族の二価アルコール;グリセリン、ピロガロール等の脂肪族又は芳香族の三価アルコール;エリトリット、アドニット、D−マンニット、D−ソルビット等の脂肪族多価アルコールが挙げられる。
【0028】
界面活性剤としては、各種(ノニオン、カチオン、アニオン、両性)の界面活性剤が使用可能であるが、特にノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が好ましく、更にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、フェノールスルホン酸のホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物が好ましい。これらの界面活性剤は、アデカトール、アデカプルロニック(以上商品名、旭電化工業(株)製)、ノニオン(以上商品名、日本油脂(株)製)、エマルゲン、デモール(以上商品名、花王(株)製)等として市販されている。
【0029】
本発明は別の一実施態様において、本発明に係る処理液に金属部材を接触させることを含む金属部材の表面処理方法である。
該処理液の温度としては、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜70℃である。
処理時間は好ましくは5秒〜30分、より好ましくは10秒〜10分である。これより少ないと効果が不十分となる傾向が強くなり、多いと処理過剰の不具合やコスト増加という問題が生ずる。
【0030】
本発明の好ましい態様では、金属部材を洗浄液に接触させた後、或いは金属部材を洗浄液及び活性化液に順に接触させた後、或いは金属部材を洗浄液、活性化液及び表面調整液に順に接触させた後、上記処理液に金属部材を接触させることができる。これにより、バナジウムの付着量、低電気抵抗性の保護皮膜の密着性、更には外観の均一性を向上させることができる。洗浄液により金属部材の表面は汚れが除去され清浄になり、活性化液により洗浄液で清浄化しきれなかった汚れや後の処理の反応阻害因子が除去される。表面調整液は活性化液で金属部材の成分である残渣が発生した場合に使われる。
【0031】
洗浄液としては金属表面の汚れを除去することができるとして当業者に知られた公知の洗浄液を使用することができるが、界面活性剤、有機酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、フッ化物イオン、アミン化合物及びアルコールからなる群から選ばれる1種以上を含有すると効果的である。
界面活性剤が洗浄液中に含まれる場合、その全体の濃度は好ましくは0.001〜50g/L、より好ましくは0.01〜10g/Lである。有機酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、フッ化物イオン、アミン化合物及びアルコールが洗浄液中に含まれる場合、その供給源の全体の濃度は好ましくは0.01〜350g/L、より好ましくは0.1〜200g/Lである。
また、洗浄液の温度は好ましくは10〜90℃、より好ましくは30〜70℃であり、処理時間としては好ましくは10秒〜30分、より好ましくは30秒〜10分である。
洗浄液のpHは金属の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0032】
活性化液としては金属表面に保護皮膜が形成されるのを阻害する物質を除去することができるとして当業者に知られた公知の活性化液を使用することができるが、有機酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、フッ化物イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオン、アミン化合物及び界面活性剤からなる群から選ばれる一種以上を含有すると効果的である。
有機酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン及びフッ化物イオンが活性化液中に含まれる場合、その供給源の全体の濃度は好ましくは0.1〜600g/L、より好ましくは1〜300g/Lである。燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン及び塩素の酸素酸イオンが活性化液中に含まれる場合、その供給源の全体の濃度は好ましくは10〜850g/L、より好ましくは25〜700g/Lである。アミン化合物及び界面活性剤が活性化液中に含まれる場合、その全体の濃度は好ましくは0.01〜100g/L、より好ましくは0.1〜30g/Lである。
活性化液は好ましくは酸性、より好ましくはpH6.0以下、更により好ましくはpH4.5以下である。
また、活性化液の温度は好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜60℃であり、処理時間としては好ましくは10秒〜30分、より好ましくは30秒〜10分である。
【0033】
表面調整液としては金属表面の残渣を除去することができるとして当業者に知られた公知の表面調整液を使用することができるが、水酸化物イオンに加えて、有機酸イオン、硝酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオン、アミン化合物、界面活性剤及びアルコール類からなる群から選ばれる一種以上を含有すると効果的である。これに使用する水酸化物イオンの供給源はアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等)の水酸化物、周期表第3族〜第11族の金属元素の水酸化物(例:水酸化マンガン)でもよく、更には第12族〜第16元素の水酸化物(例:水酸化アンモニウム)でも良く、特に制限はないが、水溶性であるのが好ましい。
水酸化物イオンが表面調整液中に含まれる場合、その供給源の全体の濃度は好ましくは3〜600g/L、より好ましくは50〜500g/Lである。有機酸イオン、硝酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオン、アミン化合物、界面活性剤及びアルコール類が表面調整液中に含まれる場合、その供給源の全体の濃度は好ましくは0.01〜100g/L、より好ましくは0.1〜50g/Lである。
表面調整液のpHは好ましくは11以上、より好ましくは13以上である。
また、表面調整液の温度は好ましくは20〜95℃、より好ましくは50〜90℃であり、処理時間としては好ましくは10秒〜30分、より好ましくは20秒〜10分である。
【0034】
なお、洗浄液、活性化液及び表面調整液に使用される界面活性剤、有機酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、アミン化合物、アルコール等は前述した本発明に係る処理液における定義と同様である。
【0035】
本発明において、処理液、洗浄液、活性化液及び表面調整液を金属部材に接触させるための方法は特に制限されないが、スプレー、塗布、浸漬が好ましく、特に浸漬が好ましく、揺動や液撹拌を伴った浸漬が更に好ましい。
【0036】
本発明により処理された金属部材の表面には好ましくは0.01〜1.5g/m2、より好ましくは0.05〜1.1g/m2のバナジウムが付着している。これより少ないと耐食性が不充分となる傾向にあり、多いと皮膜の金属部材表面への密着性や電気抵抗性に不具合が発生する虞がある。
【0037】
本発明は更に別の一実施態様において、本発明に係る表面処理方法を使用して得られた金属部材である。該金属部材は自動車部品、携帯電話やパソコン等の電気製品の部品、航空機部品等の各種工業製品の部品として使用することができ、特に電磁波シールド性及び耐食性の両立が要求される用途に好適である。
【実施例】
【0038】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
一般的手順
試験片として、寸法30×30×0.5mmのマグネシウム合金(ASTM AZ91D:JIS MD1D相当)又はアルミニウム合金(JIS ADC12)を用意し、脱脂等の適切な前処理を行った後、本発明に係る処理又は比較用の処理を行い、金属部材を得た。
耐食性の評価はJIS Z 2371に従う塩水噴霧試験を行った。
電気抵抗は三菱化学(株)製ロレスタ−EP(2探針法)で測定した。
バナジウム付着量はエネルギー分散型蛍光X線分析装置(日本電子データム(株)製JSX−3600M)で測定した。
【0039】
実施例1
硫酸バナジル25g/L、リンゴ酸3g/L、硼酸15g/LのpH2.0の処理液に試験片のマグネシウム合金を25℃、1分の処理条件で緩い撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させて金属部材を得た。
【0040】
実施例2
実施例1の処理液に更に硫酸マンガン30g/Lを加えた以外は実施例1と同様にして金属部材を得た。
【0041】
実施例3
実施例2の処理液に更にフッ化チタン酸アンモン20g/Lを加えた以外は実施例1と同様にして金属部材を得た。
【0042】
実施例4
実施例3の処理液に更にトリエタノールアミン0.1g/Lを加えた以外は実施例1と同様にして金属部材を得た。
【0043】
実施例5
実施例4の処理液に更にグリセリン29g/Lを加えた以外は実施例1と同様にして金属部材を得た。
【0044】
実施例6
実施例5の処理液に更にエマルゲン810(商品名、花王(株)製界面活性剤、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)1g/Lを加えた以外は実施例1と同様にして金属部材を得た。
【0045】
実施例7
フッ化バナジウム13g/L、硫酸バナジル32g/L、シュウ酸0.05g/L、過塩素酸ナトリウム1.2g/LのpH3.0の処理液に試験片のマグネシウム合金を20℃、1分の処理条件で緩い撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させて部材を得た。
【0046】
実施例8
実施例7の処理液に更にモリデン酸アンモン0.1g/Lを加えた以外は実施例7と同様にして金属部材を得た。
【0047】
実施例9
実施例8の処理液に更にフッ化ジルコニウム酸アンモン0.1g/Lを加えた以外は実施例7と同様にして金属部材を得た。
【0048】
実施例10
硫酸バナジル5g/L、グリシン1g/L、燐酸70g/L、フッ化チタン酸アンモン10g/LのpH1.0の処理液に試験片のマグネシウム合金を25℃、10秒の処理条件で緩い撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させて部材を得た。
【0049】
実施例11
硫酸バナジル10g/L、酒石酸カリウム2g/L、硝酸ナトリウム2g/LのpH4の処理液に試験片のアルミニウム合金を40℃、10分の処理条件で緩い撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させて金属部材を得た。
【0050】
実施例12
実施例11の処理液に更に硫酸亜鉛7g/Lを加えた以外は実施例11と同様にして金属部材を得た。
【0051】
実施例13
実施例12の処理液に更にフッ化ジルコニウム酸アンモン1g/L、硼フッ化カリウム0.2g/Lを加えた以外は実施例11と同様にして金属部材を得た。
【0052】
実施例14
実施例13の処理液に更にモノエタノールアミン0.1g/Lを加えた以外は実施例11と同様にして金属部材を得た。
【0053】
実施例15
実施例14の処理液に更にプロピレングリコール1g/Lを加えた以外は実施例11と同様にして金属部材を得た。
【0054】
実施例16
実施例15の処理液に更にデモールN(商品名、花王(株)製界面活性剤、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)0.1g/Lを加えた以外は実施例11と同様にして金属部材を得た。
【0055】
実施例17
硫酸バナジル8g/L、乳酸3g/L、硝酸ナトリウム2g/L、硫酸亜鉛10g/L、硫酸マンガン15g/L、フッ化ジルコニウム酸アンモン3g/LのpH5.5の処理液に試験片のアルミニウム合金を70℃、5分の処理条件で緩い撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させて金属部材を得た。
【0056】
実施例18
試験片のマグネシウム合金をノニオンP−210(商品名、日本油脂(株)製界面活性剤、ポリオキシエチレンセチルエーテル)0.1g/L、ホウ酸ナトリウム28g/Lの洗浄液に60℃で5分浸漬後、硫酸バナジル18g/L、メタンスルホン酸8.5g/L、硝酸アンモニウム35g/L、グルコン酸カルシウム1.5g/L、アデカプロニックL(商品名、旭電化工業(株)製界面活性剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物)0.1g/LのpH2.5の処理液に25℃、3分の処理条件で緩い撹拌を伴いながら浸漬し、その後乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させて金属部材を得た。
【0057】
実施例19
試験片のマグネシウム合金をノニオンP−210(商品名、日本油脂(株)製界面活性剤、ポリオキシエチレンセチルエーテル)0.1g/L、燐酸ナトリウム50g/Lの洗浄液に60℃で5分浸漬し、更にシュウ酸10g/L、エマルゲンL−40(商品名、花王(株)製界面活性剤、ポリオキシエチレン誘導体)0.1g/LのpH2.0の活性化液に40℃で30秒浸漬後、硫酸バナジル18g/L、パラトルエンスルホン酸3g/L、塩素酸ナトリウム10g/L、燐酸カルシウム0.5g/L、アデカプロニックL(商品名、旭電化工業(株)製界面活性剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物)0.1g/LのpH2.5の処理液に25℃、3分の処理条件で緩い撹拌を伴いながら浸漬し、その後乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させて金属部材を得た。
【0058】
実施例20
実施例19の活性化液に浸漬後、処理液に浸漬する前に水酸化ナトリウム125g/Lの表面調整液に80℃で1分浸漬する以外は実施例19と同様にして金属部材を得た。
【0059】
実施例21
試験片のアルミニウム合金をノニオンP−210(商品名、日本油脂(株)製界面活性剤、ポリオキシエチレンセチルエーテル)1g/L、クエン酸3g/L、リン5g/L、酸性フッ化アンモニウム1g/Lの洗浄液に40℃で5分浸漬後、硫酸バナジル2g/L、リンゴ酸0.5g/L、硝酸ナトリウム35g/L、フッ化ジルコニウム酸アンモン3g/L、硫酸亜鉛3.5g/LのpH5.0の処理液に25℃、10分の処理条件で緩い撹拌を伴いながら浸漬し、その後乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させて金属部品を得た。
【0060】
実施例22
実施例21の洗浄液に浸漬後、処理液に浸漬する前にリン酸500g/L、酸性フッ化アンモニウム50g/LのpH0.5以下の活性化液に20℃で30秒浸漬する以外は実施例21と同様にして金属部材を得た。
【0061】
比較例1
マグネシウム合金を燐酸2水素アンモニウム100g/L、過マンガン酸カリウム20g/Lの燐酸でpH3.5に調整した水溶液に40℃で5分緩やかな撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させ金属部材を得た。本比較例は特許文献2に記載の処理に相当する。
【0062】
比較例2
比較例1で作製した試験片をm−トルイル酸1.5重量%、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール1.5重量%、イソプロパノールアミン1.5重量%の水溶液に室温で1分、緩やかな撹拌を伴いながら浸漬後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させ金属部材を得た。本比較例は特許文献2に記載の処理に相当する。
【0063】
比較例3
マグネシウム合金を硝酸カルシウム4水塩15.2g/L、炭酸マンガン2.1g/L、リン酸25.6g/L、塩素酸ナトリウム0.4g/LのpH1.7の水溶液に70℃で5分、緩やかな撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させ金属部材を得た。本比較例は特許文献1に記載の処理に相当する。
【0064】
比較例4
マグネシウム合金をバナジン酸アンモニウム20g/L、硼フッ化ナトリウム20g/L、珪フッ酸10g/L、亜リン酸ナトリウム100g/L、硝酸100g/L、トリエタノールアミン20g/LのpH2.0の水溶液に23℃で5分、緩やかな撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させ金属部材を得た。本比較例は特許文献3に記載の処理に相当する。
【0065】
比較例5
アルミニウム合金をバナジン酸アンモニウム0.5g/L、フッ化ジルコニウム酸アンモン0.2g/LのアンモニアでpH4.0に調整した水溶液に60℃で6分、緩やかな撹拌を伴いながら浸漬後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させ金属部材を得た。本比較例は特許文献4に記載の処理に相当する。
【0066】
比較例6
アルミニウム合金をタングステン酸カリウム1.0g/L、フッ化ジルコニウム酸アンモン0.5g/LのpH4の水溶液に30℃で5分、緩やかな撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させ金属部材を得た。本比較例は特許文献5に記載の処理に相当する。
【0067】
比較例7
アルミニウム合金を無水クロム酸10g/L、リン酸4g/L、酸性フッ化ナトリウム3g/Lを含む水溶液に40℃で60秒、緩やかな撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させ金属部材を得た。本比較例は公知文献(金子英昭、“アルミニウムの化成処理”、カロス出版、2003年3月18日第1刷発行、p60)に記載の処理に相当する。
【0068】
比較例8
マグネシウム合金を硫酸バナジウム1g/Lを含む水溶液に25℃で1分、緩やかな撹拌を伴いながら浸漬した後、乾燥炉に入れ、60〜80℃で5分間乾燥させ金属部材を得た。
【0069】
評価結果を表1に示す。
【表1】

<耐食性評価基準>
◎ : 48時間以上発錆無し
○ : 48時間発錆無し
× : 24時間未満で発錆
××: 8時間未満で発錆
<電気抵抗評価基準>
○ : 0.3Ω未満
× : 0.3Ω以上3.0Ω未満
××: 3.0Ω以上
<バナジウム付着量評価基準>
○ : 0.01〜1.1g/m2
××: 0.01g/m2未満

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)バナジウムイオン及び/又はバナジルイオンと、
(2)有機酸イオンと、
(3)硝酸イオン、硫酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオンからなる群から選ばれる一種以上と、
を含有し、且つ、クロムを含有しない酸性の金属表面処理液。
【請求項2】
更に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、銀、コバルト、ジルコニウム、チタン、鉄、タングステン、銅、ニッケル、マンガン及びモリブデンの化合物からなる群から選ばれる一種以上を含有する請求項1記載の金属表面処理液。
【請求項3】
更に、硼素、ケイ素、ジルコニウム、チタン及びハフニウムのフッ素化合物イオン、並びにフッ化物イオンからなる群から選ばれる一種以上を含有する請求項1又は2記載の金属表面処理液。
【請求項4】
更に、アミン化合物、アルコール類及び界面活性剤からなる群から選ばれる一種以上を含有する請求項1〜3何れか一項記載の金属表面処理液。
【請求項5】
前記(1)の供給源の処理液中における濃度が全体として0.01〜45g/Lであり、前記(2)の供給源の処理液中における濃度が全体として0.01〜30g/Lであり、前記(3)の供給源の処理液中における濃度が全体として0.1〜150g/Lである請求項1〜4何れか一項記載の金属表面処理液。
【請求項6】
処理される金属がマグネシウム、アルミニウム又はこれらの合金である請求項1〜5何れか一項記載の金属表面処理液。
【請求項7】
請求項1〜6何れか一項記載の処理液に金属部材を接触させることを含む金属の表面処理方法。
【請求項8】
金属部材を洗浄液に接触させた後、或いは金属部材を洗浄液及び活性化液に順に接触させた後、或いは金属部材を洗浄液、活性化液及び表面調整液に順に接触させた後に、請求項1〜6何れか一項記載の処理液に金属部材を接触させることを含む金属の表面処理方法。
【請求項9】
洗浄液が界面活性剤、有機酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、フッ化物イオン、アミン化合物及びアルコールからなる群から選ばれる1種以上を含有し、
使用する場合には活性化液が有機酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、フッ化物イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオン、アミン化合物及び界面活性剤からなる群から選ばれる一種以上を含有し、
使用する場合には表面調整液が水酸化物イオンに加えて、有機酸イオン、硝酸イオン、燐の酸素酸イオン、硼素の酸素酸イオン、塩素の酸素酸イオン、アミン化合物、界面活性剤及びアルコール類からなる群から選ばれる一種以上を含有する請求項8記載の表面処理方法。
【請求項10】
請求項7〜9何れか一項に記載の表面処理方法によって得られた金属部材。
【請求項11】
表面に0.01〜1.5g/m2のバナジウムが付着している請求項10記載の金属部材。

【公開番号】特開2008−174807(P2008−174807A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10321(P2007−10321)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000232656)日本表面化学株式会社 (29)
【Fターム(参考)】