説明

クロムレス張力被膜用処理液およびクロムレス張力被膜の形成方法

【課題】優れた耐吸湿性と十分な張力付与による高い鉄損低減効果を兼ね備えるクロムレス張力被膜を得ることできるクロムレス張力被膜用処理液を提供する。
【解決手段】固形分換算でコロイド状シリカ:20質量部に対して、Mg,Al,Ca,Fe,Ba,Sr,ZnおよびMnのリン酸塩のうちから選んだ1種または2種以上:10〜80質量部と、窒素含有化合物:1〜30質量部とを、被膜中のN/P比が質量比で0.10以上になるように配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロムレス張力被膜用処理液およびかかる処理液を用いたクロムレス張力被膜の形成方法に関し、特に、方向性電磁鋼板表面に、クロムレス張力被膜を被覆する際に、従来、不可避的に発生していた耐吸湿性の低下を効果的に防止して、クロムを含む張力被膜と同等の優れた耐吸湿性を確保しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、方向性電磁鋼板においては、絶縁性、加工性および防錆性等を付与するために表面に被膜を設ける。かかる表面被膜は、最終仕上焼鈍時に形成されるフォルステライトを主体とする下地被膜と、その上に形成されるリン酸塩系の上塗り被膜からなる。
これらの被膜は、高温で形成され、しかも低い熱膨張率を持つことから、室温まで下がったときの鋼板と被膜との熱膨張率の差異により鋼板に張力が付与され、この付与張力が鉄損を低減させる効果がある。そのため、できるだけ高い張力を鋼板に付与することが望まれている。
【0003】
このような要望を満たすために、従来から種々の被膜が提案されている。
例えば、特許文献1には、リン酸マグネシウム、コロイド状シリカおよび無水クロム酸を主体とする被膜が、また特許文献2には、リン酸アルミニウム、コロイド状シリカおよび無水クロム酸を主体とする被膜がそれぞれ提案されている。
【0004】
一方、近年の環境保全への関心の高まりにより、クロムや鉛等の有害物質を含まない製品に対する要望が強まっており、方向性電磁鋼板においてもクロムレス被膜の開発が望まれている。
しかしながら、クロムレス被膜の場合、著しい耐吸湿性の低下や張力付与不足という問題が生じるため、クロムレスとすることができなかった。
【0005】
上述の問題を解決する方法として、特許文献3において、コロイド状シリカとリン酸アルミニウム、ホウ酸および硫酸塩からなる処理液を用いた被膜形成方法が提案された。
この方法により、耐吸湿性の低下や張力付与不足という問題は幾分改善されたとはいえ、この方法のみでは、クロムを含む被膜を形成した場合に比べると、鉄損および耐吸湿性の改善効果は十分とはいえなかった。
【0006】
これを解決するために、例えば、処理液中のコロイド状シリカを増量するなどの試みがなされた。これにより、張力付与不足は解消し鉄損低減効果は増大したものの、耐吸湿性はむしろ低下した。また、硫酸塩の添加量を増すことも試みられたが、この場合は、耐吸湿性は改善されるものの、張力付与不足となって鉄損低減効果はむしろ低下し、いずれの場合も両方の特性を同時に満足させることはできなかった。
【0007】
これら以外にも、クロムレスの被膜形成方法として、例えば特許文献4にはクロム化合物の代わりにホウ素化合物を添加する方法が、特許文献5には酸化物コロイド状物質を添加する方法が、特許文献6には金属有機酸塩を添加する方法が、それぞれ開示されている。
しかしながら、いずれの技術を用いても、耐吸湿性と張力付与による鉄損低減効果の両者を、クロムを含む被膜を形成した場合と同レベルまで引き上げるには至らず、完全な解決策とはなり得なかった。
【0008】
これらの事情から、被膜組成を改良することにとらわれず、下地被膜の性質を特定したり、被膜を二重に形成したりして、耐吸湿性と鉄損低減効果の二つ同時に満足させることが検討された。
その結果、特許文献7において下地被膜の表面粗度を、また特許文献8において酸素目付量を、さらに特許文献9において下地被膜中のTi濃度をそれぞれ最適化する技術が提案された。また、特許文献10では、二重に被覆する技術が提案されている。
これらの技術により、方向性電磁鋼板に対してはクロムを含む被膜とほぼ同じレベルの被膜品質を得るに至った。
【0009】
しかしながら、近年、方向性電磁鋼板の特性改善が進み、従来のようにクロムレス張力被膜に最適化した下地被膜とすることが難しくなってきた。
例えば、方向性電磁鋼板の磁気特性の向上を目的として、下地被膜中のTi量の上昇を防止するために、焼鈍分離剤中に添加するTiO2量を少なくすることが、最近の傾向である。これにより、下地被膜中に含まれるTi濃度が以前の電磁鋼板と比較して低くなってきており、特許文献9に記載のTi濃度範囲を満足させることが難しくなってきている。
また、できるかぎり被膜を薄くして占積率を向上させるという観点から、特許文献10に記載されているような二重被覆は行われなくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭56−52117号公報
【特許文献2】特公昭53−28375号公報
【特許文献3】特公昭57−9631号公報
【特許文献4】特開2000−169973号公報
【特許文献5】特開2000−169972号公報
【特許文献6】特開2000−178760号公報
【特許文献7】特開2004−332072号公報
【特許文献8】特開2006−137972号公報
【特許文献9】特開2006−137970号公報
【特許文献10】特開2005−187924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の実情に鑑み開発されたもので、下地被膜の性状をクロムレス張力被膜に最適化したり、上塗りを二重に施したりすることなしに、優れた耐吸湿性と十分な張力付与による高い鉄損低減効果を兼ね備えるクロムレス張力被膜を得ることができるクロムレス張力被膜用処理液を、この処理液を用いたクロムレス張力被膜形成方法と共に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく、クロムレス被膜で所望の耐吸湿性と張力付与による鉄損低減効果を得るために鋭意調査研究を行った。
そして、酸化物ガラスに窒素を含有させたオキシナイトライドガラスの化学安定性(つまり耐吸湿性)が高いとの下記の文献1,2を基に、さらに研究を進めた結果、方向性電磁鋼板用の張力被膜に適する条件を見出し、本発明を完成させるに到った。
文献1:J.Non-Cryst.Solids 85(1986)186
文献2:J.Non-Cryst.Solids 112(1989)7
【0013】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.固形分換算でコロイド状シリカ:20質量部に対して、Mg,Al,Ca,Fe,Ba,Sr,ZnおよびMnのリン酸塩のうちから選んだ1種または2種以上:10〜80質量部と、窒素含有化合物:1〜30質量部とを、被膜中のN/P比が質量比で0.10以上になるように配合したことを特徴とするクロムレス張力被膜用処理液。
2.前記窒素含有化合物が、Mg,Al,Fe,Bi,Co,Mn,Zn,Ca,Ba,Sr,Ni,BおよびSiのうちから選んだいずれかの窒化物または硝酸塩のうちから選んだ1種または2種以上であることを特徴とする1に記載のクロムレス張力被膜用処理液。
【0014】
3.前記1または2に記載の処理液を、最終仕上焼鈍後の方向性電磁鋼板の表面に塗布し、 最高到達板温:350〜1100℃で焼付けることを特徴とするクロムレス張力被膜の形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クロムレス張力被膜用に下地被膜を特別に最適化する必要なく、また二重被覆とすることによる占積率の低下を招くことなしに、優れた耐吸湿性と十分な鉄損低減効果を兼ね備えたクロムレス張力被膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の基礎となった実験結果について説明する。
まず、試料を次のようにして製作した。
公知の方法で製造された板厚:0.23mmの仕上焼鈍済みの方向性電磁鋼板を、300mm×100mmの大きさにせん断し、未反応の焼鈍分解剤を除去したのち、歪取焼鈍(800℃、2時間)を施した。
【0017】
次に、リン酸で酸洗後、次の3種類の張力被膜用処理液を塗布した。
No.1:リン酸マグネシウム:30質量部およびコロイド状シリカ:20質量部の配合割合になる張力被膜用処理液を、両面で10g/m2塗布した。
No.2:リン酸マグネシウム:30質量部、コロイド状シリカ:20質量部および無水クロム酸:5質量部の配合割合になる張力被膜用処理液を、両面で10g/m2塗布した。
No.3:リン酸マグネシウム:30質量部、コロイド状シリカ:20質量部および窒化アルミニウム:5質量部の配合割合になる張力被膜用処理液(N/P比(質量比):0.27)を、両面で10g/m2塗布した。
次に、これらの張力被膜用処理液を塗布した方向性電磁鋼板を、乾燥炉に装人して乾燥(300℃、1分間)させたのち、平坦化焼鈍と張力被膜の焼付けを兼ねた熱処理(800℃、2分間)を施した。さらにその後、2回目の歪取焼鈍(800℃、2時間)を行った。
【0018】
かくして得られた試料の、張力付与による鉄損低減効果と耐吸湿性について調査した。
鉄損低減効果は、SST試験機(単板磁気試験機)で測定した磁気特性によって評価した。測定は、各試料について張力被膜用処理液の塗布直前、張力被膜の焼付け直後および2回目の歪取焼鈍直後にそれぞれ行った。
また、耐吸湿性は、リンの溶出試験により評価した。この試験は、張力被膜の焼付け直後の鋼板から50mm×50mmの試験片を3枚切出し、これらを100℃の蒸留水中で5分間沸騰することによって張力被膜表面からリンを溶出させ、その溶出量によって張力被膜の水分に対する溶解のし易さを判断するものである。
表1に、磁気特性およびリン溶出量の測定結果を示す。
【0019】
なお、表中の各項目は、次のとおりである。
・塗布前B8(R):張力被膜用処理液塗布前の磁束密度
・塗布後ΔB=B8(C)−B8(R)。但し、B8(C):張力被膜の焼付け後の磁束密度
・歪取焼鈍後ΔB=B8(A)−B8(R)。但し、B8(A):2回目の歪取焼鈍後の磁束密度
・W17/50(R):張力被膜用処理液塗布前の鉄損
・塗布後ΔW=W17/50(C)−W17/50(R)。但し、W17/50(C):張力被膜の焼付け後の鉄損
・歪取焼鈍後ΔW=W17/50(A)−W17/50(R)。但し、W17/50(A):2回目の歪取焼鈍後の鉄損
・リンの溶出量:張力被膜の焼付け後に測定
【0020】
【表1】

【0021】
表1中、No.1は、従来のクロムレス張力被膜用処理液による比較例である。この場合は、耐吸湿性が著しく劣っており、鉄損低減効果も低い。
No.2は、従来のクロムを含む張力被膜用処理液による参考例であり、鉄損低減効果および耐吸湿性に優れている。
これに対し、No.3が発明例であり、クロムレス張力被膜用処理液でも窒化アルミニウムを加えた場合には、No.2の場合と遜色のない鉄損低減効果が得られた。また、耐吸湿性についても、No.2と遜色のない結果を得ることができた。さらに、窒化アルミニウムをその他の金属の窒化物または硝酸塩に変更しても同様の優れた結果が得られることを確認した。
以上の実験結果から、リン酸マグネシウムとコロイド状シリカに窒素含有化合物を加えることが重要であることが判明した。
【0022】
上記の結果について、発明者らは次のように考えている。
処理液の段階では、リン酸塩は、水溶性であるが、処理液を塗布して加熱することにより、溶媒の水を蒸発させるだけでなく、リン酸塩の形態を変化させて、水不溶性にする必要がある。クロム化合物の添加は、この反応を促進しており、クロムレスとした場合、水溶性のリン酸塩が残存し、リン溶出の問題が発生する。
この点、リン酸塩中に窒素含有化合物を導入するとPの耐溶出性が向上する。メカニズムは、明らかではないが、リン酸塩の形態を水不溶性にする反応の進行を促進しているか、結合を強化しているものと思われる。これにより被膜張力が向上し、ひいては鉄損低減効果が高くなるものと考えられる。
【0023】
次に、本発明の各構成要件の限定理由について述べる。
本発明で対象とする鋼板は、方向性電磁鋼板であれば特に鋼種を問わない。通常、かような方向性電磁鋼板は、含珪素鋼スラブを、公知の方法で熱間圧延し、1回または中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延によって最終板厚に仕上げたのち、一次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施すことによって製造される。
【0024】
次に、張力被膜用処理液について述べる。
本発明では、コロイド状シリカと、リン酸塩と、窒素含有化合物の添加を必須とする。
ここに、コロイド状シリカは、鋼板に張力を付与して鉄損を低減するために必要な成分である。また、リン酸塩は、シリカのバインダーとして働くことにより、コーティングの成膜性を向上させ、被膜密着性の向上に有効に寄与する。そして、本発明では、上記のコロイド状シリカとリン酸塩に、さらに窒素を含有する化合物を配合してリン酸塩中にNを含有させるところに最大の特徴があり、これによって、鉄損低減効果と耐吸湿性の向上を図るものである。
【0025】
ここに、各成分の配合比は次のとおりとする。
すなわち、固形分換算でコロイド状シリカ:20質量部に対して、Mg,Al,Ca,Fe,Ba,Sr,ZnおよびMnのリン酸塩のうちから選んだ1種または2種以上を10〜80質量部の割合で配合する。というのは、リン酸塩が、10質量部に満たないと、被膜のクラックが大きくなって、上塗り被膜として重要な耐蝕性が不十分となり、一方リン酸塩が80質量部を超えると、コロイド状シリカが相対的に少なくなるために、張力が低下して鉄損低減効果が小さくなるからである。より好ましくは、コロイド状シリカ:20質量部に対して、リン酸塩:15〜40質量部の範囲である。
【0026】
また、窒素含有化合物を同じく、固形分換算でコロイド状シリカ:20質量部に対して、1〜30質量部の割合で配合する。というのは、上記の窒素含有化合物が、1質量部に満たないと、耐吸湿性、鉄損改善効果が不十分となり、一方30質量部を超えるとコロイド状シリカが相対的に少なくなるために、張力が低下して鉄損低減効果が低くなるだけでなく、過剰な窒素が歪取焼鈍中に張力被膜中から鋼板中に侵入して鉄損を劣化させるからである。より好ましくは、コロイド状シリカ:20質量部に対して、3〜15質量部の範囲である。
【0027】
なお、形成された張力被膜中のN/P比は質量比で0.10以上になるようにする。N/P比が、0.10未満であると、リン溶出性の改善効果が不足するためである。
また、被膜中の窒素量は、30%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがさらに好ましい。被膜中の窒素量が多いと歪取焼鈍中にNが張力被膜から鋼板中に侵入して鉄損を劣化させるからである。
窒素含有化合物については、特に限定されるものではなく、窒化物、硝酸鉛、アンモニウム塩等があげられるが、Mg,Al,Fe,Bi,Co,Mn,Zn,Ca,Ba,Sr,Ni,BおよびSiのうちから選んだいずれかの窒化物または硝酸塩のうちから選んだ1種または2種以上であることが好ましい。
【0028】
その他、シリカやアルミナなどの無機鉱物粒子は、耐スティッキング性の改善に有効なので、併せて使用することが可能である。ただし、添加量については、占積率の低下を避けるために、最大でもコロイド状シリカ:20質量部に対して、1質量部以下とすることが好ましい。
【0029】
上記した処理液を、電磁鋼板の表面に塗布、焼付けて張力被膜を形成する,被膜の目付け量は、両面で4〜15g/m2とすることが好ましい。というのは、4g/m2より少ないと層間抵抗が低下し、一方15g/m2より多いと占積率が低下するためである。
かかる張力被膜の焼付けは、最高到達板温:350〜1100℃で行うことが好ましい。350℃未満であると、所望の張力を得ることができず、1100℃超であると、被膜の劣化が起こるためである。最高到達板温での保持時間は張力被膜の形成には特に必要はないが、平坦化焼鈍を兼ねて700〜950℃の温度範囲で2〜120秒の均熱時間とすることがさらに好ましい。温度が低すぎたり、時間が短すぎると、平坦化が不十分で、形状不良のために歩留りが低下する。一方、温度が高すぎたり、時間が長すぎると、平坦化焼鈍の効果が強すぎ、クリープ変形して磁気特性が劣化する。
【実施例】
【0030】
板厚:0.23mmの仕上焼鈍済みの方向性電磁鋼板を準備した。このときの方向性電磁鋼板の磁束密度B8は1.912Tであった。この方向性電磁鋼板を、リン酸酸洗後、種々のクロムレス張力被膜用処理液を両面当たり10g/m2塗布したのち、850℃、30秒の条件で焼付け処理を行った。その後、800℃、2時間の条件で歪取焼鈍を実施した。なお、クロムレス張力被膜用処理液としては、固形分換算でコロイド状シリカ:20質量部に対して、表2に示す配合比でリン酸塩および窒素含有化合物を加え、さらに耐熱性改善のために微粉末シリカ粒子を0.5質量部添加した組成のものを用いた。
かくして得られたクロムレス張力被膜付きの方向性電磁鋼板の諸特性を調査した。
得られた結果を表2に併記する。
【0031】
なお、各特性の評価は次のようにして行った。
(1) W17/50(R):張力被膜用処理液塗布前の鉄損
(2) 塗布後ΔW=W17/50(C)−W17/50(R)。但し、W17/50(C):張力被膜の焼付け後の鉄損
(3) 歪取焼鈍後ΔW=W17/50(A)−W17/50(R)。但し、W17/50(A):歪取焼鈍後の鉄損
(4) 耐熱性:50mm×50mmの試験片10枚を乾燥窒素雰囲気中にて19.6MPaの圧縮荷重付与下で、800℃×2時間の焼鈍後、500gの分銅を試験片から20cmの高さから落下させ、試験片が全て剥離しなかった場合は、20cmごとに高さをあげて落下を繰り返し、試験片が全て剥離したときの落下高さにより判定。
○:20cm
△:40cm
×:60cm以上
(5) 密着性:非剥離最小曲げ径(mm)
(6) 防錆性:温度:50℃、露点:50℃の空気中に50時間保持後、表面を観察。
○:錆がほとんどない
△:若干錆が発生
×:激しく錆が発生
(7) リンの溶出量:50mm×50mmの試験片3枚を100℃の蒸留水中で5分間煮沸したのち、分析。
【0032】
【表2】

【0033】
表2に示したとおり、本発明に従い、コロイド状シリカ:20質量部に対して、リン酸塩を10〜80質量部、窒素含有化合物を1〜30質量部配合した処理液を用いてクロムレス張力被膜を形成した場合はいずれも、リン溶出量が少なく、また鉄損が良好なものを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形分換算でコロイド状シリカ:20質量部に対して、Mg,Al,Ca,Fe,Ba,Sr,ZnおよびMnのリン酸塩のうちから選んだ1種または2種以上:10〜80質量部と、窒素含有化合物:1〜30質量部とを、被膜中のN/P比が質量比で0.10以上になるように配合したことを特徴とするクロムレス張力被膜用処理液。
【請求項2】
前記窒素含有化合物が、Mg,Al,Fe,Bi,Co,Mn,Zn,Ca,Ba,Sr,Ni,BおよびSiのうちから選んだいずれかの窒化物または硝酸塩のうちから選んだ1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のクロムレス張力被膜用処理液。
【請求項3】
請求項1または2に記載の処理液を、最終仕上焼鈍後の方向性電磁鋼板の表面に塗布し、最高到達板温:350〜1100℃で焼付けることを特徴とするクロムレス張力被膜の形成方法。

【公開番号】特開2012−158799(P2012−158799A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18926(P2011−18926)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】