説明

クロロプレンゴム組成物及びその加硫物並びに成形体

【課題】圧縮永久歪が良好で、機械的強度にも優れるクロロプレンゴム組成物及びその加硫物並びに成形体を提供するクロロプレンゴム組成物及びその加硫物並びに成形体を提供する。
【解決手段】クロロプレンゴム及び天然ゴム:合計で100質量部と、スチレンとブタジエンとの共重合体:0.1〜10質量部と、エチレンチオウレア:0.1〜3.0質量部と、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド:0.1〜3.0質量部と、を含有するクロロプレンゴム組成物を、成形後又は成形時に加硫して加硫成形体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレンゴム組成物及びその加硫物、並びにこれらを使用した成形体に関する。より詳しくは、ワイパーブレードや防振材などのゴム成形体に使用されるクロロプレンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムは、耐熱性、耐候性、耐オゾン性及び耐薬品性などに優れており、一般的工業用ゴム製品、自動車用部品及び接着剤などの幅広い分野で使用されている。このようなクロロプレンゴム成形品は、一般に、クロロプレンゴムに、加硫剤、加硫促進剤及び充填剤などを配合したクロロプレンゴム組成物を、所定形状に成形した後、加硫することにより、製造される。
【0003】
その際使用される加硫促進剤としては、例えば、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤及びグアニジン系加硫促進剤などが挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。例えば、特許文献1に記載のクロロプレンゴム組成物では、チオウレア系加硫促進剤とチウラム系加硫促進剤を併用することにより、スコーチ安定性と圧縮永久歪み特性の両方の改善を図っている。
【0004】
また、天然ゴムとクロロプレンゴムとをブレンドし、天然ゴムのみを加硫させることにより、減衰特性を改善した高減衰ゴム組成物も提案されている(特許文献2参照)。更に、従来、加硫物の耐熱性及び圧縮永久歪を改善するため、非硫黄変性タイプのクロロプレンゴムを、有機過酸化物と共架橋剤とを使用して加硫する技術も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−279621号公報
【特許文献2】特開平11−153169号公報
【特許文献3】特開平7−145269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来のクロロプレンゴム組成物には、低温又は高温のいずれかの圧縮永久歪が劣るという問題点がある。このため、低温域から高温域の幅広い温度範囲に亘って圧縮永久歪が良好で、かつ機械的強度にも優れたクロロプレン組成物が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、圧縮永久歪が良好で、機械的強度にも優れるクロロプレンゴム組成物及びその加硫物並びに成形体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るクロロプレンゴム組成物は、クロロプレンゴム及び天然ゴム:合計で100質量部と、スチレンとブタジエンの共重合体:0.1〜10質量部と、エチレンチオウレア:0.1〜3.0質量部と、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド:0.1〜3.0質量部と、を含有するものである。
本発明においては、相溶化剤として作用するスチレンとブタジエンの共重合体を特定量配合しているため、クロロプレン中に天然ゴムが微分散した状態で、これらを共加硫することができる。これにより、機械的強度を低下させずに、低温下又は高温下における圧縮永久歪を向上させることができる。
この組成物では、スチレンとブタジエンのブロック共重合体として、スチレンとブタジエンの質量比(スチレン/ブタジエン)が、25/75〜45/55のものを使用することができる。
また、クロロプレンゴムには、2,3−ジクロロブタジエン単位を5〜20質量%含有するものを使用してもよい。
更に、クロロプレンゴムと天然ゴムとの配合比(クロロプレンゴム/天然ゴム)を、例えば、質量比で、60/40〜95/5とすることもできる。
【0009】
本発明に係る加硫物は、前述したクロロプレンゴム組成物を加硫したものである。
本発明においては、スチレンとブタジエンの共重合体を特定量配合したクロロプレンゴム組成物を使用し、クロロプレンゴムと天然ゴムとを共加硫しているため、高温下での圧縮永久歪及び耐熱性に優れる。
【0010】
本発明に係る成形体は、前述したクロロプレンゴム組成物を、成形後又は成形時に加硫して得たものである。
この成形体は、例えば、ワイパーブレード又は防振材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、クロロプレンゴムと天然ゴムとのブレンドゴムに、スチレンとブタジエンとの共重合体を特定量配合しているため、低温域から高温域の幅広い温度範囲において圧縮永久歪が良好で、機械的強度にも優れる加硫成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は実施例2のクロロプレンゴム組成物のSPM測定結果であり、(b)は比較例8のクロロプレンゴム組成物のSPM測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係るクロロプレンゴム組成物について説明する。本実施形態のクロロプレンゴム組成物は、ゴム成分として、クロロプレンゴムと天然ゴムとを含有するブレンドゴム組成物である。そして、これらゴム成分(クロロプレンゴム及び天然ゴム)100質量部に対して、スチレンとブタジエンとの共重合体を0.1〜10質量部、エチレンチオウレアを0.1〜3.0質量部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドを0.1〜3.0質量部含有している。
【0015】
[ゴム成分]
本実施形態のクロロプレンゴム組成物に配合されるクロロプレンゴムは、特に限定されるものではないが、クロロプレンゴム(2−クロロ−1,3−ブタジエン)と、2,3−ジクロロブタジエンとの共重合体を使用することが好ましい。また、その場合、クロロプレン中の2,3−ジクロロブタジエン単位が5〜20質量%であることがより好ましい。
【0016】
クロロプレンゴム中の2,3−ジクロロブタジエン単位の量は、クロロプレンゴム組成物を加硫して加硫物や成形体としたときに、その耐結晶性や脆化温度に影響する。そして、2,3−ジクロロブタジエン単位が5〜20質量%のクロロプレンを使用することにより、耐熱性だけでなく、低温特性も向上させることが可能となるため、低温域から高温域に亘って、幅広い温度で特性に優れた加硫物及び加硫成形体が得られる。
【0017】
なお、本実施形態のクロロプレンゴムで使用するクロロプレンゴムには、前述した2,3−ジクロロブタジエン以外の単量体が共重合されていてもよい。クロロプレンに共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸のエステル類や、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸のエステル類や、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレート類や、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0018】
一方、本実施形態のクロロプレンゴム組成物に配合される天然ゴムは、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。このように、クロロプレンゴムに天然ゴムをブレンドすることにより、低温特性の改善、特に低温下での永久圧縮歪を向上させることができる。
【0019】
その際、クロロプレンゴムと天然ゴムとの配合比(クロロプレンゴム/天然ゴム)は、質量比で、60/40〜95/5とすることが望ましい。これにより、低温特性に加えて、耐熱性及び高温下での圧縮永久歪も向上することができる。
【0020】
[スチレンとブタジエンとの共重合体:0.1〜10質量部]
スチレンとブタジエンとの共重合体は、相溶化剤であり、ゴム成分であるクロロプレンゴムと天然ゴムで形成される海島構造の界面に作用し、マトリクス側であるクロロプレンゴムに対して、天然ゴムを微分散する効果がある。しかしながら、スチレンとブタジエンとの共重合体の配合量が、ゴム成分100質量部あたり0.1質量部未満の場合、クロロプレンゴムと天然ゴムの界面に対して過小となり、十分な分散効果が得られず、圧縮永久歪や機械的強度が低下する。これは、クロロプレンゴムと天然ゴムとの界面が減少すると、共加硫が良好に進行しないためと推定される。
【0021】
一方、スチレンとブタジエンとの共重合体の配合量が、ゴム成分100質量部あたり10質量部を超えると、クロロプレンゴムと天然ゴムとの界面に対して過大となり、低温特性及び機械的強度が低下する。これは、スチレンとブタジエンとの共重合体が、クロロプレンゴムからなるマトリクス中に、天然ゴムとは別に島構造を形成するためと推定される。よって、スチレンとブタジエンとの共重合体の配合量は、ゴム成分100質量部あたり0.1〜10質量部とする。これにより、圧縮永久歪及び機械的特性の両方を向上させることができる。
【0022】
また、本実施形態のクロロプレンゴム組成物に配合される「スチレンとブタジエンとの共重合体」は、スチレンとブタジエンの質量比(スチレン/ブタジエン)が25/75〜45/55であることが好ましい。スチレンとブタジエンの質量比がこの範囲から外れると、クロロプレンゴム及び天然ゴムの相溶化剤としての効果が低くなることがある。なお、スチレンとブタジエンとの共重合体におけるスチレンとブタジエンの質量比のより好ましい範囲は、30/70〜40/60であり、これにより、マトリクス側であるクロロプレンゴムに対して、天然ゴムを微分散する効果をより高めることができる。
【0023】
更に、本実施形態のクロロプレンゴム組成物に配合される「スチレンとブタジエンとの共重合体」の種類は、特に限定されるものではないが、例えば、これらのクロス共重合体、ブロック共重合体及びブロックランダム重合体などが挙げられる。また、これらの共重合体の中でも、特に、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体が好ましい。
【0024】
[エチレンチオウレア:0.1〜3.0質量部]
エチレンチオウレアは、加硫促進剤であり、クロロプレンゴムの加硫密度を上げ、機械的向上を向上させる効果がある。しかしながら、エチレンチオウレア添加量が、ゴム成分100質量部あたり0.1質量部未満の場合、十分な架橋密度が得られず、圧縮永久歪や機械的強度が低下する。
【0025】
一方、エチレンチオウレア添加量が、ゴム成分100質量部あたり3.0質量部を超えると、加硫速度が速くなり、成形時における加工特性が低下する。ここで、加工特性とは、「加工安全性」とも言われ、スコーチタイムにより評価される。加工特性は、不良発生率に大きく影響し、例えばスコーチタイムが短いと、高温での成形中に未加硫配合物が加硫されて成形不良が発生する頻度が高くなる。よって、エチレンチオウレア添加量は、ゴム成分100質量部あたり、0.1〜3.0質量部とする。
【0026】
[ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド:0.1〜3.0質量部]
ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドも加硫促進剤であり、クロロプレンと天然ゴムを共加硫させ、機械的強度を向上させると共に、低温下における圧縮永久歪を改善する効果がある。しかしながら、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド添加量が、ゴム成分100質量部あたり0.1質量部未満の場合、十分な架橋密度が得られず、圧縮永久歪や機械的強度が低下する。また3.0質量部を超えると、加硫速度が速くなり十分な加工特性が確保できなくなる。よって、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド添加量は、ゴム成分100質量部あたり、0.1〜3.0質量部とする。
【0027】
本実施形態のクロロプレンゴム組成物では、クロロプレンゴムに天然ゴムを配合しているため、低温特性が向上する。また、これらのゴム成分(クロロプレンゴム、天然ゴム)100質量部に対して、スチレンとブタジエンとの共重合体を0.1〜10質量部配合しているため、クロロプレンゴム中に天然ゴムを微分散することが可能となる。
【0028】
更に、加硫促進剤として、エチレンチオウレアと、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドを併用し、その添加量を、ゴム成分100質量部に対してそれぞれ0.1〜3.0質量としているため、分散状態を維持しつつクロロプレンゴムと天然ゴムとを共加硫することができる。そして、これらの加硫促進剤を使用することで、加工特性も向上する。
【0029】
その結果、本実施形態のクロロプレンゴム組成物は、低温域から高温域に亘り幅広い温度範囲で圧縮永久歪が良好で、かつ、優れた機械的強度及び加工特性が得られる。なお、前述した特許文献2に記載の組成物にも天然ゴムが配合されているが、この組成物の構成では、クロロプレンマトリクス中に天然ゴムを微分散することはできないため、本実施形態のクロロプレンゴム組成物に比べて、圧縮永久歪及び機械的強度に劣る。
【0030】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る加硫物について説明する。本実施形態の加硫物は、前述した第1の実施形態のクロロプレンゴム組成物に、加硫剤を配合し、加硫温度以下の温度で混練した後、加硫したものである。その際の加硫温度は、クロロプレンゴム組成物の組成や加硫剤の種類によって適宜設定することができるが、通常は140〜190℃の範囲が好ましく、150〜180℃の範囲がより好ましい。
【0031】
本実施形態のクロロプレンゴム組成物に添加可能な加硫剤としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、ゲルマニウム、チタニウム、錫、ジルコニウム、アンチモン、バナジウム、ビスマス、モリブデン、タングステン、テルル、セレン、鉄、ニッケル、コバルト、オスミウムなどの金属単体、及びこれらの酸化物や水酸化物などを使用することができる。これら金属化合物のなかでも、特に、酸化カルシウムや酸化亜鉛、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酸化マグネシウムが、加硫効果が高いため好ましい。なお、これらの加硫剤は2種以上を併用して用いてもよい。
【0032】
本実施形態の加硫物には、必要に応じて、軟化剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、老化防止剤、安定剤、シランカップリング剤などが配合されていてもよい。
【0033】
本実施形態の加硫物に配合される充填剤及び補強剤は、通常のクロロプレンゴム用途に使用されているものを用いることができ、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0034】
また、可塑剤も、通常のクロロプレンゴム用途に使用されている可塑剤を用いることができ、例えば、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートなどが挙げられる。
【0035】
老化防止剤としては、通常のクロロプレンゴム用途に使用されている老化防止剤を用いることができる。具体的には、アミン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、フェノール系老化防止剤、ワックスなどを使用することができ、これらは単独のみならず併用することもできる。特に、これらの老化防止剤のなかでも、アミン系老化防止剤である4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミンなどを用いると、ポリクロロプレンエラストマー組成物の耐熱性を向上させることができる。
【0036】
軟化剤としては、通常のクロロプレンゴム用途に使用されている軟化剤を用いることができる。具体的には、潤滑油、プロセスオイル、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、石油アスファルトなどの石油系軟化剤、ナタネ油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油などの植物油系軟化剤を使用することができ、これらの単独のみならず併用することもできる。
【0037】
本実施形態の加硫物は、前述した第1の実施形態のクロロプレンゴム組成物を使用しているため、低温域から高温域の幅広い温度範囲において圧縮永久歪が良好で、機械的強度にも優れる。
【0038】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る成形体について説明する。本実施形態の成形体は、前述した第1の実施形態のクロロプレンゴム組成物を、成形後又は成形と同時に加硫して得たものである。その成型方法は、特に限定されるものではないが、プレス成形、射出成形及び押出成形などを適用することができる。そして、例えば、成形体がワイパーブレード又は自動車用防振ゴムや産業用防振ゴムなどの防振材である場合は、プレス成形や射出成形により形成することができる。
【0039】
本実施形態の成形体は、前述した第1の実施形態のクロロプレンゴム組成物を使用しているため、耐熱性を低下させずに、クロロプレンゴムと天然ゴムを共加硫することができ、低温下及び高温下のいずれにおいても圧縮永久歪が良好で、かつ機械的強度も優れている。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、相溶化剤(スチレンとブタジエンの共重合体)として、旭化成株式会社製「タフプレンA(登録商標)」を使用し、下記表1及び表2に示す配合で、実施例1〜4及び比較例1〜7のクロロプレンゴム組成物を作製し、その特性について評価した。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
次に、これら実施例及び比較例の各クロロプレンゴム組成物を、以下に示す方法及び条件で評価した。
【0044】
(硬さ)
JIS K 6250に基づいてテストピースを作製し(加硫条件:160℃×10分間)、JIS K 6253に基づいて、各加硫物(加硫ゴム)の硬度測定を行った。
【0045】
(加工特性)
実施例及び比較例の各クロロプレンゴム組成物について、JIS−K 6300に基づいて、125℃におけるスコーチタイムを測定した。なお、本実施例においては、スコーチタイムが7分以上のものを、加工特性が良好とした。
【0046】
(引張強度)
JIS K 6250に基づいてテストピースを作製し(加硫条件:160℃×10分間)、JIS K 6253に基づいて引張試験を行い、各加硫物(加硫ゴム)の強度及び伸びを測定した。
【0047】
(圧縮永久歪)
実施例及び比較例の各クロロプレンゴム組成物を、160℃で15分間加硫したものについて、JIS K 6262に基づいて、120℃の温度条件下で70時間試験したときの圧縮永久歪を測定した。
【0048】
(低温圧縮永久歪)
実施例及び比較例の各クロロプレンゴム組成物を、160℃で15分間加硫したものについて、JIS K 6262に基づいて、−10℃の温度条件下で70時間試験したときの圧縮永久歪を測定した。
【0049】
(ゲーマンT10)
実施例及び比較例の各ポリクロロプレンゴム組成物を、160℃で10分間加硫したものについて、JIS K 6261に基づいて、ゲーマンねじり試験を実施した。そして、常温における180°ねじりモジュラスの10倍になる温度(T10)を求め、この値により各ポリクロロプレンゴム組成物の低温特性を評価した。
【0050】
以上の結果を下記表3にまとめて示す。
【0051】
【表3】

【0052】
上記表2に示すように、スチレンとブタジエンの共重合体が0.1質量部未満である比較例1は、低温特性が劣っていた。一方、スチレンとブタジエンの共重合体の配合量が10質量部未満を超えている比較例2は、機械的強度と圧縮永久歪みが劣っていた。
【0053】
また、エチレンチオウレアを添加せず、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドのみ添加した比較例3及びエチレンチオウレア添加量が0.1質量部未満の比較例4は、いずれも圧縮永久歪と機械的強度が劣っていた。一方、エチレンチオウレアの添加量が3.0質量部を超えている比較例5は、加工特性が著しく低下し、更に伸びも十分でないなど機械的強度も劣っていた。
【0054】
更に、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドの添加量が、0.1質量部未満である比較例6は、低温下における圧縮永久歪と機械的強度が劣っていた。一方、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドの添加量が3.0質量部を超えている比較例7は、十分な加工特性が得られず、更に圧縮永久歪及び機械的強度も劣っていた。
【0055】
これに対して、ゴム成分100質量部に対して、スチレンとブタジエンの共重合体を0.1〜10質量部、エチレンチオウレアを0.1〜3.0質量部、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドを0.1〜3.0質量部配合した実施例1〜4では、十分な加工特性の下、優れた圧縮永久歪及び機械的強度が得られ、更に、天然ゴムを配合したことによる低温特性の改良効果も発現していた。
【0056】
更にまた、実施例2のクロロプレンゴム組成物、及びスチレンとブタジエンの共重合体を添加せずに、それ以外は実施例2と同様にして作製した比較例8のクロロプレン組成物のモルホロジー観察を行った。具体的には、JIS K 6250に基づいて作製した各ポリクロロプレンゴム組成物からなるテストピース(加硫条件:160℃×10分間)から観察用試料を切り出し、走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)を用いて測定した。
【0057】
図1(a)は実施例2のクロロプレンゴム組成物のSPM測定結果であり、図1(b)は比較例8のクロロプレンゴム組成物のSPM測定結果である。図1に示すように、スチレンとブタジエンの共重合体を添加した実施例2のクロロプレンゴム組成物では、比較例8のクロロプレンゴム組成物に比べて、クロロプレンゴム中に天然ゴムが、より細かく、均一に、分散していた。
【0058】
以上の結果から、本発明によれば、低温域から高温域の幅広い温度範囲において圧縮永久歪が良好で、機械的強度にも優れる加硫成形体が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴム及び天然ゴム:合計で100質量部と、
スチレンとブタジエンのブロック共重合体:0.1〜10質量部と、
エチレンチオウレア:0.1〜3.0質量部と、
ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド:0.1〜3.0質量部と、
を含有するクロロプレンゴム組成物。
【請求項2】
スチレンとブタジエンのブロック共重合体は、スチレンとブタジエンの質量比(スチレン/ブタジエン)が、25/75〜45/55であることを特徴とする請求項1に記載のクロロプレンゴム組成物。
【請求項3】
前記クロロプレンゴムは、2,3−ジクロロブタジエン単位を5〜20質量%含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のクロロプレンゴム組成物。
【請求項4】
クロロプレンゴムと天然ゴムとの配合比(クロロプレンゴム/天然ゴム)が、質量比で、60/40〜95/5であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクロロプレンゴム組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクロロプレンゴム組成物を加硫した加硫物。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクロロプレンゴム組成物を、成形後又は成形時に加硫して得た成形体。
【請求項7】
ワイパーブレード又は防振材であることを特徴とする請求項6に記載の成形体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−111899(P2012−111899A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263795(P2010−263795)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】