説明

グラビアオフセット印刷における印刷版及びその製版方法

【課題】高粘度の樹脂を、均一で安定した膜厚で、高精細な細線を印刷することができる版形状を改質するグラビアオフセット印刷における印刷版及びその製版方法を提供することにある。
【解決手段】版面に凹部パターンを備えるグラビアオフセット印刷用印刷版であって、前記凹部パターン101のエッジ部に凹部パターン101におけるインキと転写体105との間に残る空気を凹部パターン101の領域から抜くための通路を形成したグラビアオフセット印刷用印刷版である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷対象物の表面に各種インキ、樹脂、導電ペーストなどの各種の粘度の高い塗布材料を印刷するグラビアオフセット印刷における印刷版及びその印刷版の製版方法に係り、特に、広範囲に高解像力、高寸法精度のある優れた画像を安定的に印刷するための印刷版及びその印刷方法に関する。具体的には、例えば、ICカードアンテナ(コイル状のパターン)や太陽電池バックシート導配線、電磁シールド、タッチパネルITO(酸化インジウムスズ)配線等を印刷目的として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル等のシート上に導電性インキ、導電性ペースト等を広範囲の面積で高細線の印刷する場合にも利用できるグラビアオフセット印刷における印刷版及びその製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材分野、パッケージ分野、出版分野、エレクトロニクス分野等、生活系、電気系、情報系さまざまな分野における工業製品の製造方法として、グラビアオフセット印刷法が利用されている。このグラビアオフセット印刷法は、まず、凹部パターン内にドクターもしくはスクレーパー等で所望のインキを挿入および擦切りして該凹部パターン内をインキで満たした版上にシリコーンもしくはフッ素化合物あるいはその混合体よりなるインキ剥離性の転写層を表面に有する転写体を接触させて転写体上にインキ皮膜を転移させることにより転写体上にインキ皮膜をパターン化する工程と、適当な膜厚分布に応じたインキ皮膜を形成する工程と、該転写体を被印刷体に圧着してころがし、転写体上のインキ皮膜のパターンを被印刷体に転写する工程とを有する。そして、この種の転写印刷法を用いて、印刷対象物の表面に、各種インキ、樹脂、導電ペーストなどの粘度の高い塗布材料を印刷する場合、高解像、高寸法精度で、広範囲に印刷できることが要求されている。
【0003】
これらの要求に応じるためには、グラビアオフセット印刷法は、下記の[1]〜[3]にあげるような機能が必要とされている。
[1]広範囲に均一かつ安定した高精細な細線の印刷を可能にすること。
[2]印刷対象物に印刷された細線が、断線、ショートしないこと。
[3]安定した膜厚の細線を印刷できること。
【0004】
また、量産化のためには、インキ剥離性の転写層を有する転写体上に、所望の凹部パターン内に満たされたインキを同じ形状で確実に転移させることが必要である。
【0005】
そして、広範囲に均一かつ安定した無断線の細線パターンを形成するためには、版の凹部パターン内にドクターもしくはスキージ等でインキを挿入および擦切りした際、凹部パターン内に満たされたインキ面が平滑になり、インキ剥離性の転写層を有する転写体との圧着時、そのインキ面が、転写体に均等に接触する事が必要である。
【0006】
しかし、これまでは、版の凹部パターン内にドクターもしくはスキージ等でインキを挿入および擦切りした際に、ドクターもしくはスキージ等の先端にインキが引っ張られることで、凹部パターン内に満たされたインキ面が、擦切り面より低い状態になることが殆どであった。
このため、インキ剥離性の転写層を有する転写体を、版の凹部パターン上に、圧力をかけながら圧着すると、パターンの形状によっては、凹部パターン内のインキ面が擦切り面より低い状態となり、インキ剥離性の転写層を有する転写体との間に空気溜りが発生し、しかも、その空気溜りにある空気の逃げ場を失い、その結果、時には、空気溜りで圧縮された空気が、インキ剥離性の転写層を有する転写体と擦切り面とのわずかな隙間から爆発的に噴き出ることに伴ってインキも噴き出してしまう現象が起きてしまう。また、空気溜りで圧縮された空気が爆発せずにそのまま留まる時でも、パターン内で空気だけが移動し、剥離性の転写層を有する転写体にインキがうまく転移せずに結果的に断線等の原因となってしまうことがあった。
【0007】
そこで、発明者は、このような現象が発生せずに所望の凹部パターン内に満たされたインキを安定してインキ剥離性の転写層を有する転写体へインキの転移が確実かつ均等に行われ、更に転写体を被印刷体に圧着して転写体上におけるインキ皮膜のパターンを被印刷体に転写することが安定して行われ、しかも、膜厚の細線を可能にするためには、凹部パターンを形成するガラス版や金属版に空気が容易に逃げられる工夫が必要であることに着目した。
【0008】
グラビアオフセット印刷方法では、ドクターもしくはスクレーパー等で所望の凹部パターン内にインキを挿入および擦切りした際にドクターもしくはスクレーパー等の落ち込みおよび凹部パターン上を通過した際に生じる負圧、ドクターもしくはスクレーパー等の分子間引力により、凹部パターンに満たされるべきインキ面が、引っ張り上げられ、その凹部パターンに留まるべきインキが、ドクターもしくはスクレーパーに持ち去られ、その凹部パターンのインキ表面レベルが下がることが分かった。また、インキ粘度、弾性特性によっては、レベリングせずに凹部パターンの一部が、持ち去られて出来たままの窪んだ状態となり、インキ面が平滑にならず、次の工程であるところの、インキ剥離性の転写層を有する転写体への転移が不十分となり、断線を発生する問題が生じる。この現象について、インキの擦切り面のレベルを下げずに空気溜りを少なくする工夫として、ドクターもしくはスクレーパー等の材質を変更するなどして対策を施していたが、パターンによっては殆ど改善されず、これは、特に高精細線や高膜厚の細線を印刷する場合に問題が顕著になるという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭55−5856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来のグラビアオフセット印刷技術において発生していた気泡の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高粘度の樹脂等の印刷用材料を、均一で安定した膜厚で、高精細な細線を印刷することができる版形状を改質するグラビアオフセット印刷における印刷版及びその製版方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、版面に凹部パターンを備えるグラビアオフセット印刷用印刷版であって、前記凹部パターンのエッジ部に凹部パターンにおける印刷用材料と転写体との間に残る空気を凹部パターンの領域から抜くための通路を形成したことを特徴とするグラビアオフセット印刷用印刷版である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用印刷版において、前記通路は、前記エッジ部に選択的に欠けた凹凸加工を施して形成したものであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用印刷版において、前記エッジ部に微細な砂目状の凹凸加工を施して前記通路を形成したものであることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用印刷版において、前記エッジ部の角を取り、前記通路を形成したものであることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のグラビアオフセット印刷用印刷版を用いて細線パターンを形成することを特徴とする製版方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ブラスト加工を施した凹版を使用したグラビアオフセット印刷方法で高粘度樹脂を高細線で安定して印刷することができるようになる。
また、本発明によれば、安定して高細線の印刷が可能になったことで、例えば電子回路の配線パターンを印刷した際に、個々の配線パターンの導電性を示す指標である抵抗値のバラツキを少なくし、断線の発生を抑えることができるようになる。
【0013】
また、エッチング法によって従来形成されていた、金属性回路を導電性インキ、導電性ペーストで置き換えることも容易になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】既存のグラビアオフセット印刷機の外観概略図である。
【図2】既存のグラビアオフセット印刷方式の概略図である。
【図3】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版を固定した定盤上で行う工程概略図である。
【図4】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版を固定した定盤上で行う工程概略図である。
【図5】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版を固定した定盤上で行う工程概略図である。
【図6】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版上で行う工程概略図である。
【図7】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版上で行う工程概略図である。
【図8】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版上で行う工程概略図である。
【図9】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版上で行う工程概略図である。
【図10】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版上で行う工程概略図である。
【図11】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版上で行う工程概略図である。
【図12】既存のグラビアオフセット印刷方式の被印刷体上で行う工程概略図である。
【図13】既存のグラビアオフセット印刷方式の被印刷体上で発生する問題を示す概略図である。
【図14】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版上で行う工程で、空気が高圧に圧縮された状態を示す概略図である。
【図15】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版上で、パターン内を動き、最終的に空気の逃げる場所を失い、高圧状態になっている様子を放射状の矢印で表した概略図である。
【図16】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版上で、発生する問題を示す概略図である。
【図17】既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版パターンの一部を模した概略図である。
【図18】本発明のグラビアオフセット印刷方式の凹版でブラスト加工法によって、選択的に凹パターン部の角を欠けさせたものを示した概略図である。
【図19】本発明の実施形態におけるグラビアオフセット印刷方式の凹版でブラスト加工法によって、全面に細かい凹凸を形成したものを示した概略図である。
【図20】本発明の実施形態におけるグラビアオフセット印刷方式の凹版でブラスト加工法やエッチング加工法によって、凹部パターンの角が滑らかになった状態にしたものを示した概略図である。
【図21】本発明の実施形態における凹部パターンを使用することによって、得られる効果を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、グラビアオフセット印刷方式として知られるグラビアオフセット印刷装置を概略的に示している。このグラビアオフセット印刷装置は、既存のグラビアオフセット印刷方式でも使用するところの、ガラスまたは金属製の平板に複数エッチングまたはレーザー、電鋳法等で幅10μmから数mmおよび深さ5から20μm程度の凹部パターン101を彫刻した凹版102を有し、この凹版102は定盤103上に固定される。凹版102の凹部パターン101の中へ導電性ペーストや樹脂等のインキ110を挿入および擦切りするために鋼製または樹脂製のドクターもしくはスキージ104を備えている。更に、グラビアオフセット印刷装置は、上記凹部パターン101内に挿入および擦切りで満たされたインキ110を一定の圧力で転がしながら安定的に剥離できるようにした転写層を円筒状に有したインキ剥離性の転写体105と、このインキ110の剥離によって転写体105に残るインキ皮膜106を被印刷体107に印刷するために凹版102を固定する定盤103と対峙して上記被印刷体107を固定した定盤108とを備えている。
【0017】
そして、インキ剥離性の転写体105を、定盤108側へ移動して、この転写体105を被印刷体107上に転がし、転写体105に残るインキ皮膜106を一定の圧力で被印刷体107に印刷するようにしている。よって、被印刷体107には凹部パターン101と同じ形状の印刷がなされ、これが図1に示す細線パターン109となる。
【0018】
図2は、図1に示したグラビアオフセット印刷装置を横から観る形で図右から左へインキ剥離性の転写体105を転がす要領での被印刷体107へ印刷する工程を示したものである。すなわち、このグラビアオフセット印刷装置では、凹版102上に転写体105を転がし、凹版102の凹部パターン101に予めドクターもしくはスキージ104で挿入および擦切りされた導電性ペーストや樹脂等のインキ110を、インキ剥離性の転写体105の転写層に転写し、次に、この転写体105を被印刷体107上に転がすことにより転写体105のインキ皮膜106を被印刷体107上に転写する。
【0019】
図3は、図2中右側にある既存のグラビアオフセット印刷方式の凹版102を固定した定盤上で行うインキ挿入擦切りする工程を具体的に示す概略的説明図である。この図3に示すように、定盤103上に固定した凹版102の表面をドクターもしくはスキージ104が図中左から右へ移動し、凹版102に刻まれた凹部パターン101へ、インキ110を挿入するとともに擦切りする。
【0020】
図4は、図3で示したインキ挿入擦切り工程の終了後の状態を示しており、凹部パターン101にインキ110が擦切りで挿入され、このとき、凹部パターン101以外の凹版102表面にはインキ110が殆ど残存していない状態にある。
【0021】
図5は、図4で示した工程の後で、図中右側から左側へ凹版102の上側表面に一定の圧力を加えた状態でインキ剥離性の転写体105を転がすことにより、凹部パターン101内に挿入されていたインキ110が凹版102から剥離し、インキ剥離性の転写体に残るインキ皮膜106となる工程を示している。
【0022】
図6は、図3で示した工程で起きる作用を示している。すなわち、凹版102の凹部パターン101の部分と、凹版102表面に一定の角度、圧力で接するドクターもしくはスキージ104と、ドクターもしくはスキージ104の進行方向側に注入したインキ110の部分との状態を拡大して示している。
【0023】
図7は、図6で示した状態から、図中左側から右側へドクターもしくはスキージ104を動かし、凹版102の表面を擦切りする場合、凹部パターン101上をドクターもしくはスキージ104が通過している途中の状態を示しており、このとき、インキ110の一部がドクターもしくはスキージの先端部701の進行後方に回り込み、先端部701にまとわり付いている状態になっている。
【0024】
図8は、図7で示した状態から、図中右側へドクターもしくはスキージ104が、凹版102の凹部パターン101上を通過し、その通過直後の状態を示しており、インキ110の一部がドクターもしくはスキージ104の先端部701にまとわり付き、インキ110自体の分子間力、ドクターもしくはスキージ104の移動で発生する負圧、または分子間引力によって、そのインキ110の一部分が凹部パターン101の外へ引き上げられ、その結果、凹部パターン101に充填されたインキ110の液面の一部が大きく窪んだ状態の部分801を形成してしまう状態を示している。
【0025】
図9は、図8で示した状態から、ドクターもしくはスキージ104が図中右側へ離れ去った後の状態を示しており、凹版102の凹部パターン101の中に残されたインキ110が、インキ110の粘度が高いためにレベリングせずに窪んだ状態の部分801の付近で溜まり、凹部パターン101の外へあふれたインキ901が凹版102の表面に残された状態を示している。
【0026】
図10は、図9で示した状態にある凹版102上に、上方よりインキ剥離性の転写体105が一定の圧力で接して凹版102の凹部パターン101に溜まったインキ110に密着したときの状態を示している。この場合、凹部パターン101に溜まったインキ110に転写体105が接しているものの、凹部パターン101に溜まったインキ110に窪んだ状態の部分801が存在することによって、インキ剥離性の転写体105とインキ110との間には互いに密着できない部分が発生する。この密着できない部分は、転写体105の押し付け圧力によって強い空気圧を帯びた空洞状態になる。図10は、この強い空気圧を帯びた空洞状態が生じたことを示している。
【0027】
図11は、図10で示す状態から、インキ剥離性の転写体105が、凹版102より離れると同時にそれまで凹部パターン101に溜まっていたインキ110が、凹部パターン101から剥離され、これが転写体に残るインキ皮膜106となり、さらに凹部パターン101の外へ溢れたインキ901もインキ剥離性の転写体105に残るパターン外のインキ皮膜1201となってしまった状態を示している。この状態では、転写体に残るパターン外のインキ皮膜1201までも被印刷体107に転写されるため、異常なパターンとして印刷される原因となる。
【0028】
図12は、その異常な状態、つまり、図11で示したインキ剥離性の転写体105に転写された転写体に残るインキ皮膜106および、転写体に残るパターン外のインキ皮膜1201が、被印刷体107に一定の圧力で密着した状態を示している。
【0029】
図13は、図12で示す状態からインキ剥離性の転写体105が離れ、図12で示す状態の被印刷体107上に転写体に残るインキ皮膜106および転写体に残るパターン外のインキ皮膜1201が印刷されたパターン1301となった異常な印刷状態を示している。
【0030】
以上の如く、既存のグラビアオフセット印刷方式で印刷すると、被印刷体107上に転写された印刷されたパターン1301の断面形状が、窪んだ状態の部分801の形状を残すこととなり、極端な場合、全くインキ110が被印刷体107に印刷されず、断線等の原因となってしまう。
【0031】
図14は、図10で示す場合と同じような状況を示すものではあるが、インキ剥離性の転写体105によって窪んだ状態の部分801に圧力をかけられている状態を示すものであって、窪んだ状態の部分801には高圧に圧縮された空気が残っている。
【0032】
また、この図14で示す窪んだ状態の部分801は、パターン内を動き、最終的に空気の逃げる場所を失い、高圧状態の空気になって残存する。図15はこの様子を示し、図14の矢印で表示すように高い圧力の向きが放射状になっている。
【0033】
図16は、インキ剥離性の転写体105が、少し図に向かって右側へ移動した瞬間に、図向かって左側にわずかに出来たすき間から圧縮された残存空気が瞬時に爆発し、この噴出したインキ111の状態を示している。
【0034】
図17は、通常使用されているグラビアオフセット印刷の凹版102の凹版パターンの一部を模した略図であり、この凹版102はガラスまたは金属等の素材にレーザーまたはエッチングによって形成することができる。
【0035】
次に、本発明のグラビアオフセット印刷用印刷版としての凹版の実施形態について説明する。このグラビアオフセット印刷用凹版では、凹部パターンのエッジ部に空気抜けを発生させるための凹凸部を施す。この凹凸部加工部により、後述の通り、凹凸加工された部分から空気を抜く通路を形成し、凹部パターンにおけるインキと転写体との間に残る空気を凹部パターンの領域から抜き、または過剰な空気を抜き、空気圧を減らすことができる。ここで、凹部パターンのエッジ部とはインキ剥離性の転写体と接触する凹版の表面と凹部パターン101の内側側面とで形成される角部のことをいう。
また、凹凸加工方法としては、ブラスト加工法、エッチング加工法等が挙げられるが、凹部パターンのエッジ部に凹凸加工を施すことができれば、その加工方法は限定されない。
【0036】
図18は、本発明に適用される一例としてのグラビアオフセット印刷用凹版102を示しており、例えば、ガラスビーズまたはアルミナ、弾力性のある樹脂に研磨剤をまぶした粒状の砂をエアー圧で吹き付けるブラスト加工法によって、凹部パターン101のエッジ部121に選択的に欠け123を設ける凹凸部を加工して後述するように凹部パターンのインキ領域から抜くための空気抜き用通路を形成する。
【0037】
図19は、本発明の他の実施形態のグラビアオフセット印刷用凹版102であって、例えば、ガラスビーズまたはアルミナ、弾力性のある樹脂に研磨剤をまぶした粒状の砂をエアー圧で吹き付けるブラスト加工法によって、転写体105を作用させる凹版102の面に0.01から0.1ミクロン程度の細かい凹凸を全面的に形成したものである。このため、凹部パターン101のエッジ部121にも細かい凹凸からなる凹凸部が形成され、この部分で後述する凹部パターンのインキ領域から抜くための空気抜き用通路を形成する。
【0038】
図20は、図19のものに、さらに時間をかけてブラスト加工を加え、全面を削りもしくは腐食を行い、凹部パターン101のエッジ部121の角が滑らかになった状態にしたものである。凹部パターン101のエッジ部121は角が滑らかになった状態の欠けまたは凹部が形成される。この部分で後述する凹部パターンのインキ領域から抜くための空気抜き用通路を形成する。
【0039】
図21は、図18、図19、図20で示した凹部パターン101の凹版102を使用することによって、上方よりインキ剥離性の転写体105が、一定の圧力で接して凹版102の凹部パターン101に溜まったインキ110に密着するときに、窪んだ状態の部分801の部分に強い空気圧を帯びた空気が発生する前に、空気抜き通路を経て凹部パターン101の横から空気が、図21での矢印113で示すように、溜まっていた凹部パターン101の外へ抜け出て、凹部パターン101内の空気または空気圧を減らすことができるようになる。図21は、インキ剥離性の転写体105と凹版102の凹部パターン101に溜まったインキ110がより密着する状態を示している。
【0040】
この空気抜け現象の効果を狙った本発明によれば、従来の空気溜りによる断線および空気の爆発によるインキの滲みによるショート等の軽減が図れる。
【実施例】
【0041】
導線部幅100μmの凹部パターン101を、PET基材上に導電性銀ペーストを使って、本発明のグラビアオフセット印刷方式で印刷を行った。
【0042】
凹版102は、ガラス製の縦120mm×横120mm×高さ3mmの平板に凹部パターン101として、幅100μm長さ500μm深さ15μmの溝をエッチングによって彫刻したものを使用した。
【0043】
ここで凹版102に本発明のブラスト加工を、研磨剤を使って、エアー圧力2kgf、ガン距離100mm、時間20秒で加工を行ったものを使用した。
【0044】
PET基材は、厚さ188μm、縦120mm×横120mmを使用し、導電性銀ペーストは、レオロジー測定装置で角速度10rad/秒で、9.5Pa.sのインキ110を使用し、インキ剥離性の転写体105は、金陽社製のシリコンゴムを主体とするゴム硬さ(JIS A)45°、ゴム厚さ 0.6mmを円筒に巻いたものを使用し、ドクターもしくはスキージ104としてMDC社製ドクターブレードのレギュラータイプを使用した。
【0045】
グラビアオフセット印刷装置は、弊社にて開発した印刷装置を使用し、凹版102を定盤に固定し、被印刷体107であるPET基材をもう一方の定盤に固定し、それぞれインキ剥離性の転写体105との接触幅を10mmに調整し、ドクターによるインキ110の凹部パターン101への挿入および擦切りの速度、インキ剥離性の転写体105の凹版102上を転がる周速度、インキ剥離性の転写体105のPET基材上を転がる周速度をそれぞれ50mm/秒として設定した。
【0046】
この結果、通常の印刷でエアー噛みや空気による爆発でパターンの断線やショートが発生した部分の断線、ショートの発生が抑えられた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、エレクトロニクス用デバイス関連等の配線パターンの安定品質の量産化に利用することが可能である。
【0048】
また、本発明によって、エレクトロニクス用デバイス関連等の導線層、絶縁層、から形成される多層回路形成が、容易に形成できる。
【0049】
さらに、本発明によって、PET等の樹脂基材ロール原反巻きからロール印刷された巻き印刷の連続印刷技術向上の加速が可能である。
【符号の説明】
【0050】
101 … 凹部パターン
102 … 凹版
103 … 凹版を固定した定盤
104 … ドクターもしくはスキージ
105 … インキ剥離性の転写体
106 … 転写体に残るインキ皮膜
107 … 被印刷体
108 … 被印刷体を固定した定盤
109 … 印刷された細線パターン
110 … インキ
111 … インキが噴出した状態
113 … 空気抜けの矢印
701 … ドクターもしくはスキージ先端部
801 … 窪んだ状態の部分
901 … パターン外へ溢れたインキ
1201…転写体に残るパターン外のインキ皮膜
1301…印刷されたパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版面に凹部パターンを備えるグラビアオフセット印刷用印刷版であって、前記凹部パターンのエッジ部に凹部パターンにおける印刷用材料と転写体との間に残る空気を凹部パターンの領域から抜くための通路を形成したことを特徴とするグラビアオフセット印刷用印刷版。
【請求項2】
前記通路は、前記エッジ部に選択的に欠けた凹凸加工を施して形成したものであることを特徴とする請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用印刷版。
【請求項3】
前記エッジ部に微細な砂目状の凹凸加工を施して前記通路を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用印刷版。
【請求項4】
前記エッジ部の角を取り、前記通路を形成したものであることを特徴とする請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用印刷版。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のグラビアオフセット印刷用印刷版を用いて細線パターンを形成することを特徴とする製版方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−71334(P2013−71334A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212587(P2011−212587)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】