説明

グラブバケット

【課題】吊持体に対するバケット本体の吊持姿勢を変更可能に構成することにより、作業対象面が水平面、または斜面であっても平滑な面に浚渫、あるいは掘削を行うことができるグラブバケットを提供する。
【解決手段】メインワイヤ2で吊持される吊持体4と、吊持体4で支持されるバケット本体5とを備えている。バケット本体5と吊持体4とは、両者の間に設けた揺動軸13と、揺動軸13で支持される吊持ブラケット14を介して相対回転自在に連結されている。バケット本体5の上フレーム6には、吊持ブラケット14を連結するための複数組の角度調整穴44が設けられている。吊持ブラケット14の複数組の角度調整穴44に対する連結位置を変更して、バケット本体5の吊持姿勢を、バケットシェル9の下端縁が水平になる水平姿勢と、水平姿勢から傾斜する傾斜姿勢とに変更できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、海底等に堆積した沈泥や土砂を浚渫し、あるいは掘削する際に用いるグラブバケットに関する。本発明のグラブバケットは、作業対象面が水平面だけでなく、斜面であっても平滑面状に浚渫し、あるいは掘削することができる。
【背景技術】
【0002】
グラブバケットを用いて海底等を浚渫する作業においては、作業対象面は水平面だけではなく、法面等の斜面の場合もある。このように、作業対象面が斜面の場合でも、該斜面を平滑面状に浚渫できる浚渫装置は、例えば特許文献1に公知である。
【0003】
特許文献1に記載の浚渫装置は、支軸を中心に回動し開閉する一対のバケットシェルを有するグラブバケットと、バケットシェルを吊り下げて昇降する一対の昇降用チェーンと、水平に保持される吊り部材とを含む昇降手段と、バケットシェルの開閉操作を行うための開閉用ワイヤを含む開閉手段とを備えている。バケットシェルが、一対の昇降用チェーンだけで吊り下げられる場合には、バケットシェルは、その刃先が水平となる姿勢(以下、水平姿勢という。)に吊り下げられる。また、いずれか一方の昇降用チェーンに吊り長さ調整用チェーンを接続して吊り下げられる場合には、バケットシェルは、その刃先が水平から傾斜する姿勢(以下、傾斜姿勢という。)に吊り下げられる。吊り部材の両端部にはグラブバケットの全体を支持して昇降操作する2本の昇降用ワイヤが接続されており、バケットシェルにはバケットシェルを開閉操作する開閉用ワイヤが接続されている。昇降用ワイヤおよび開閉用ワイヤをウインチで巻上げあるいは巻下げ操作することにより、グラブバケットを昇降操作、およびバケットシェルを開閉操作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−58167号公報(段落番号0013、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の浚渫装置では、一対の昇降用チェーンのいずれか一方に接続した吊り長さ調整用チェーンの長さを変更するだけで、一対のバケットシェルを水平姿勢、あるいは傾斜姿勢に吊り下げることができる。したがって、作業対象面が水平面あるいは斜面にかかわらず階段状に浚渫されることなく、勾配に対応した平滑面状に浚渫することができる。上記浚渫装置では、浚渫時にはクレーン先端から昇降用ワイヤ、および開閉用ワイヤで吊り下げられたグラブバケットは、その重心位置がワイヤの垂下始端であるクレーン先端の真下に位置しようとする。グラブバケットの水平面上の重心位置は、グラブバケットのほぼ中心にあるので、各ワイヤはクレーン先端からほぼ垂直に垂下した状態でグラブバケットを吊り下げている。
【0006】
しかし、バケットシェルが海底の堆積物をつかみ取ったとき、その堆積物の内容によってグラブバケットの重心位置が中心からずれることがある。重心位置がずれた状態で各ワイヤを巻上げ操作すると、グラブバケットの重心位置がクレーン先端の真下に移動するのでグラブバケット全体が遥動し、各ワイヤが垂直でない状態で吊り下げることになる。この状態においては、各ワイヤ、とくに2本の昇降用ワイヤに作用する荷重が不均一になることにより、2台のウインチに作用する負荷が同一でなくなるので、安定した巻上げ操作を行うことができない。また、斜めの状態で巻き上げられる各ワイヤによって、クレーン先端のワイヤの垂下始端にねじれが発生し、グラブバケットが大きく揺れるおそれもある。さらに、バケットシェルは、吊り部材に対して昇降用チェーン及び調整用チェーンで吊り下げられただけであるので、吊り部材に対して自由に姿勢変化することができる。このため、グラブバケットが水中を下降する際に、水の抵抗を受けたバケットシェルが吊り部材に対して不規則に揺れ動くおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、吊持体に対するバケット本体の吊持姿勢を変更可能に構成することにより、作業対象面が水平面、または法面等の斜面であっても、これら作業対象面を平滑な面に浚渫、あるいは掘削を行うことができるグラブバケットを提供することにある。本発明の目的は、つかみ取った堆積物の内容によりバケット本体の重心位置が中心位置からずれた場合でも、グラブバケットを吊持するクレーン、および昇降操作するウインチに偏った負荷を与えることのないグラブバケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明グラブバケットは、メインワイヤ2で吊持される吊持体4と、吊持体4で支持されるバケット本体5とを備えている。バケット本体5と吊持体4とは、両者の間に設けた揺動軸13と、揺動軸13で支持される吊持ブラケット14を介して相対回転自在に連結されている。バケット本体5の上フレーム6には、吊持ブラケット14を連結するための複数組の角度調整穴44が設けられている。そして、吊持ブラケット14の複数組の角度調整穴44に対する連結位置を変更して、バケット本体5の吊持姿勢を、バケットシェル9の下端縁が水平になる水平姿勢と、水平姿勢から傾斜する傾斜姿勢とに変更できることを特徴とする。
【0009】
バケット本体5の下フレーム7が、開閉ワイヤ3で下シーブユニット22を介して支持されている。下フレーム7と下シーブユニット22とが支持軸28を介して相対回転自在に連結されている。
【0010】
下フレーム7に設けた上下に貫通する開口21の内部に下シーブユニット22が配置されている。下フレーム7に設けられて下向きに突出するベース支持部27と、下シーブユニット22とが、支持軸28を介して連結されている。
【0011】
上フレーム6と、バケット本体5のバケットシェル9とはアーム10を介して連結されている。上フレーム6は、左右枠37・38と、左右枠37・38の両端部をそれぞれ連結する前後枠40・41とで四角枠状に形成されている。左右枠37・38には、アーム10を連結するためのアームブラケット39と、アームブラケット39よりも上側に配置される取付ベース43とが設けられている。取付ベース43に複数組の角度調整穴44が形成してある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るグラブバケットは、メインワイヤ2で吊持される吊持体4と、吊持体4で支持されるバケット本体5とを、両者の間に設けた揺動軸13と、揺動軸13で支持される吊持ブラケット14を介して相対回転自在に連結するようにした。さらに、バケット本体5の上フレーム6に、吊持ブラケット14を連結するための複数組の角度調整穴44を設け、吊持ブラケット14のバケット本体5に対する連結位置を変更できるようにした。
【0013】
上記のように、吊持ブラケット14のバケット本体5に対する連結位置を変更できるようにすると、吊持体4に対するバケット本体5の吊持バランスを変更することができる。詳しくは、吊持軸13で連結されたバケット本体5の重心位置は、常に吊持軸13の中心を通る垂直軸線上に位置しようとする。そのため、吊持ブラケット14とバケット本体5との連結位置を変更すると、バケット本体5は吊持バランスに応じた姿勢に吊持軸13を中心にして回転する。これより、バケット本体5の重心位置が吊持軸13の中心を通る垂直軸線上からずれている場合には、バケット本体5は吊持軸13を中心に回転して傾斜姿勢に吊持される。したがって、吊持ブラケット14のバケット本体5に対する連結位置を変更して吊持バランスを変更することで、バケット本体5の吊持姿勢を水平姿勢と傾斜姿勢とに変更して、作業対象面が水平面、または斜面であっても平滑な面に浚渫、あるいは掘削を行うことができる。
【0014】
また、浚渫時につかみ取った堆積物の内容により、バケット本体5の重心位置が中心位置からずれた場合でも、バケット本体5は吊持体4に対して吊持軸13で回転することができるので、吊持体4に作用する荷重の方向を常に一定にすることができる。したがって、吊持体4を吊持するメインワイヤ2に作用する荷重の方向を常に一定にすることができ、グラブバケット1を吊持するクレーン、および昇降操作するウインチに偏った負荷を与えることがない。加えて、バケット本体5を吊持体4に軸支した吊持ブラケット14で連結するので、昇降用チェーン及び調整用チェーンでバケット本体を支持する特許文献1の浚渫装置とは異なり、グラブバケット1が水中を下降する際に、水の抵抗を受けたバケット本体5が吊持体4に対して不規則に揺れ動くこともない。
【0015】
下フレーム7と下シーブユニット22を支持軸28を介して相対回転自在に連結すると、例えば、バケット本体5の姿勢が図6に示すように傾斜する場合に、下シーブユニット22がバケット本体5に追随して傾斜するのを防止できる。したがって、開閉ワイヤ3による下フレーム7の支持を、下シーブユニット22が常に最適な方向に指向した状態で行うことができ、下フレーム7の昇降操作をスムーズに行える。また、下シーブユニット22に巻き掛けられる開閉ワイヤ3の巻上げあるいは巻下げ操作をするウインチに余分な負荷を与えることもない。
【0016】
下フレーム7に設けた上下に貫通する開口21の内部に下シーブユニット22を配置し、下フレーム7に設けられて下向きに突出するベース支持部27と、下シーブユニット22とを支持軸28を介して連結するようにした。このように、下フレーム7が占める空間を利用して、下シーブユニット22を下フレーム7の下部側に連結すると、バケットシェル9を閉じた状態における上フレーム6と下フレーム7との対向間隔を小さくできる。したがって、バケット本体5の全高が高くなるのを抑えることができるので、グラブバケット1が大型化するのを防止できる。加えて、バケット本体5の全高が高くなるのを抑えることにより、バケット本体5のアーム10の長さが長大化するのを防止でき、グラブバケット1の製造コストを抑えることができる点でも有利である。
【0017】
左右枠37・38と前後枠40・41とで上フレーム6を構成し、左右枠37・38にアームブラケット39を設け、同ブラケット39よりも上側に設けた取付ベース43に複数組の角度調整穴44を形成すると、吊持ブラケット14の着脱を簡便に行える。詳しくは、複数組の角度調整穴44に対する吊持ブラケット14の連結位置を変更するときに、アームブラケット39に邪魔されることもなく、吊持ブラケット14の着脱作業を行って、素早く吊持姿勢の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るグラブバケットの側面図である。
【図2】グラブバケットの縦断正面図である。
【図3】吊持体とバケット本体を切り離した状態を示す側面図である。
【図4】グラブバケットの平面図である。
【図5】下フレームの平面図である。
【図6】バケット本体が傾斜姿勢の状態でバケットシェルを閉じた状態を示す縦断側面図である。
【図7】バケット本体が傾斜姿勢の状態でバケットシェルを開いた状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態) 図1から図7に、本発明に係るグラブバケットの実施形態を示す。グラブバケットは、海底等に堆積した沈泥や土砂を浚渫し、あるいは掘削する際に適用される。本発明における前後、左右、上下とは、図中に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図1および図2に示すように、グラブバケット1は、図示しない起重機船のクレーンから垂下される2本のメインワイヤ2で吊持されるハンガー(吊持体)4と、ハンガー4に着脱自在に連結固定されて、海底の堆積物をつかみ取るバケット本体5とで構成されている。
【0020】
バケット本体5は上フレーム6と、上フレーム6で開閉ワイヤ3を介して吊持した下フレーム7と、下フレーム7に設けたシェル軸8で開閉自在に支持した左右一対のバケットシェル9と、上フレーム6と左右のバケットシェル9との間に設けた左右一対のアーム10などで構成されている。メインワイヤ2および開閉ワイヤ3は、それぞれクレーンを介してウインチに接続されており、ウインチを巻上げあるいは巻下げ操作することにより、グラブバケット1の昇降操作、およびバケットシェル9の開閉操作を行うことができる。
【0021】
図3および図4に示すように、ハンガー4は2本のメインワイヤ2が接続される吊持フレーム12と、吊持フレーム12に吊持軸13を介して遥動自在に連結される左右一対の吊持ブラケット14とからなる。吊持フレーム12はフレームベース15とフレームベース15の前後縁中央部から上方に向かってそれぞれ突設されるワイヤ接続台16とで構成されており、フレームベース15の前後方向中央位置に吊持軸13が設けられている。フレームベース15の下面には、後述する上シーブボックス50が一体に固定されている。メインワイヤ2が各ワイヤ接続台16に接続されて、フレームベース15は水平に吊持されている。吊持ブラケット14は、逆T字状に形成されており、その前後端部には上フレーム6と連結固定するための連結穴17がそれぞれ貫通状に形成されている。
【0022】
図1、図2および図5に示すように、下フレーム7は平面視で四角枠状のフレームベース19と、フレームベース19の前後壁と一体に形成されるアームブラケット20とからなる。フレームベース19には、上下に貫通する開口21が形成されており、開口21内に下シーブユニット22が配置されている(図5参照)。下シーブユニット22は、下シーブボックス23と下シーブボックス23が固定されるボックスベース26とからなる。下シーブボックス23には、4個の下シーブ24が下シーブ軸25で回転可能に軸支されている。フレームベース19の左右枠の下面には、ベース支持部27が下向きに突設されており、このベース支持部27に支持軸28を介してボックスベース26を軸支することにより、下シーブユニット22は下フレーム7に対して相対回転自在に連結されている。開口21の前後壁部分は、フレームベース19と下シーブボックス23との干渉を避けるために、下窄まり状のテーパー面に形成されている(図6参照)。このように、下フレーム7が占める空間を利用して、下シーブユニット22を下フレーム7の下部側に連結すると、バケットシェル9を閉じた状態における上フレーム6と下フレーム7との対向間隔を小さくできる。これにより、バケット本体5の全高が高くなるのを抑えることができるので、グラブバケット1が大型化するのを防止できる。
【0023】
バケットシェル9は、シェル30と、シェル30を下フレーム7に連結するためのシェルアーム31と、アーム10の下端をピン32を介して連結するためのアームブラケット33とで構成されている。シェル30は、円弧状の底壁30aと、底壁30aの上端縁から伸びる略く字状の上壁30bと、各壁30a・30bの前後を塞ぐ一対の前後壁とを備えており、底壁30a、上壁30b、および前後壁の縁部で矩形状のすくい込み口が構成されている。左右のバケットシェル9のシェルアーム31はシェル軸8を介して下フレーム7のアームブラケット20に回転自在に軸支されている。底壁30aの縁部とシェル軸8の回転中心軸とは平行になっており、バケット本体5が水平姿勢のときには、底壁30aの縁部が水平となるように構成されている。
【0024】
図2および図4に示すように、上フレーム6は平面視で上下に貫通する開口36が形成された四角枠状であり、前後方向に延びる左右枠37・38と、左右枠37・38の両端部をそれぞれ連結する前後枠40・41とで構成されている。左右枠37・38には、アームブラケット39がそれぞれ4ヶ所、計8ヶ所に形成されており、左右一対のアーム10の上端側がピン42を介してアームブラケット39に連結されている。図1および図3に示すように、左右枠37・38のそれぞれには、アームブラケット39の上端よりも上側に、側面視で等脚台形状の取付ベース43が形成されており、この取付ベース43に複数組の角度調整穴44が、前後方向の異なる位置に貫通状に形成されている。
【0025】
一組の角度調整穴44は、バケット本体5の姿勢を水平姿勢にするための角度調整穴44aと、傾斜姿勢にするための角度調整穴44b・44c・44d・44eとが設けられている。ハンガー4とバケット本体5とは、前後の吊持ブラケット14の連結穴17と、いずれか一組の角度調整穴44とを連結具46で4ヶ所連結固定することにより、一体化することができる。連結具46は、連結穴17と角度調整穴44とに挿通されるボルト47と、ボルト47のねじ軸に螺合するナット48とで構成する。
【0026】
ハンガー4に対するバケット本体5の吊持姿勢は、吊持ブラケット14を角度調整穴44aに固定した場合には、バケット本体5の重心位置が吊持ブラケット14の吊持位置である吊持軸13の中心を通る垂直線上に位置するので、バケット本体5は傾斜することなく水平状態に吊持される(図1参照)。角度調整穴44b・44c・44d・44eのいずれかに吊持ブラケット14を固定した場合には、バケット本体5の重心位置が吊持軸13の垂直線上からずれることになる。バケット本体5は吊持軸13で軸支されているので、バケット本体5の重心位置が吊持軸13の垂直線上に位置するように吊持軸13を中心に回転することにより、バケット本体5がハンガー4に対して傾斜姿勢に吊持される(図6参照)。吊持軸13は、2本のメインワイヤ2が接続された略中間位置に配置されているため、バケット本体5の姿勢に関係なく、その荷重は2本のメインワイヤ2に均等に作用する。したがって、グラブバケット1を吊持するクレーン、および昇降操作するそれぞれのウインチに偏った負荷を与えることがない。本実施形態では、角度調整穴44bに連結固定した場合の傾斜角度は勾配が1/6に、角度調整穴44cでは勾配が1/5に、角度調整穴44dでは勾配が1/4に、角度調整穴44eでは勾配が1/3になるように各角度調整穴44b〜44eの穴位置を決定した。
【0027】
図2および図3に示すように、フレームベース15の下面には、上シーブボックス50が固定されている。上シーブボックス50は、2個の上シーブ51が上シーブ軸52で回転可能に軸支されている。クレーンから垂下される2本の開閉ワイヤ3は、フレームベース15の上面に設けられたワイヤガイド53にそれぞれ挿通され、下シーブ24、上シーブ51さらに下シーブ24に巻き掛けられたのち、開閉ワイヤ3の先端が上シーブボックス50に固定される。これら、開閉ワイヤ3と、両シーブ24・51とで、倍力機構が構成されている。これにて、開閉ワイヤ3を巻上げると、下シーブユニット22が上シーブボックス50に引き寄せられるので、下フレーム7が上方に移動して左右のバケットシェル9を閉じ操作することができる。逆に、開閉ワイヤ3を巻下げると、下フレーム7は自重で下シーブユニット22と共に下方に移動して左右のバケットシェル9を開き操作することができる。
【0028】
このとき、下シーブユニット22は、下フレーム7に支持軸28で相対回転自在に軸支されているので、バケット本体5が、図1に示す水平姿勢、あるいは図6に示す傾斜姿勢のいずれにおいても、下シーブ軸25と上シーブ軸52との距離が最短となる方向に下シーブユニット22を指向させることができる。さらに、図6および図7に示すように、バケットシェル9が閉じ姿勢の状態と開き姿勢の状態とで、底壁30aの縁部の傾斜が異なる場合であっても、下シーブ軸25と上シーブ軸52との距離が最短となる方向に下シーブユニット22を指向させることができる。これにより、下シーブユニット22がバケット本体5に追随して傾斜するのを防止できるので、開閉ワイヤ3による下フレーム7の支持を、下シーブユニット22が常に最適な方向に指向した状態で行うことができ、下フレーム7の昇降操作をスムーズに行える。また、下シーブユニット22に巻き掛けられる開閉ワイヤ3の巻上げあるいは巻下げ操作をするウインチに余分な負荷を与えることもない。
【0029】
上記のように、本実施例では、バケットシェル9が閉じ姿勢の状態と開き姿勢の状態とでは、底壁30aの縁部の傾斜が異なる。これは、閉じあるいは開き姿勢の状態のバケット本体5の重心位置が若干異なるためである。この角度差は浚渫作業の誤差の範囲内に収められているので作業に問題が生じることはない。傾斜角度を同一にするには、閉じあるいは開き姿勢でのバケット本体5の重心位置が同一位置になるように、グラブバケット1の設計を行えばよい。
【0030】
次に、角度調整穴44eに吊持ブラケット14を連結固定して、海底の浚渫作業を行う際の動作説明をする。角度調整穴44eを使用すると、バケットシェル9が閉じ状態のときにシェル30の底壁30aの縁部の傾斜が1/3となる傾斜姿勢でバケット本体5を吊持することができる(図6参照)。起重機船上にバケット本体5を着床させた状態でハンガー4と取付ベース43の角度調整穴44eとをおおよそ位置合わせしたのち、連結穴17と角度調整穴44eとにボルト47を挿通し、ナット48をねじ込んで固定し一体化する。このとき、角度調整穴44eは、アームブラケット39より上側に位置しているので、アームブラケット39に邪魔されることもなく、連結具46の締緩作業を行うことができる。4ヶ所の連結具46を固定したのち各ワイヤ2・3を巻き上げると、先に説明したように、バケット本体5はその重心位置が吊持軸13の垂直線上に移動するように揺動するので、バケット本体5を勾配が1/3の傾斜姿勢で吊持することができる(図6参照)。
【0031】
浚渫作業位置の直上にグラブバケット1を移動させて、開閉ワイヤ3を巻下げてバケットシェル9を開き姿勢にする(図7参照)。さらに、メインワイヤ2を巻下げて、海中の浚渫作業位置までグラブバケット1を降下させる。このとき、バケット本体5は吊持体4に軸支された吊持ブラケット14で連結されているので、グラブバケット1が水中を下降する際に、水の抵抗を受けたバケット本体5が吊持体4に対して不規則に揺れ動くこともない。グラブバケット1を浚渫作業位置に停止させた状態で、開閉ワイヤ3を巻上げることにより、バケットシェル9は海底の堆積物をつかみ取りながら閉じ操作される。バケットシェル9が堆積物をつかみ取ったのち、開閉ワイヤ3が緩むことがないように、メインワイヤ2および開閉ワイヤ3を同時に巻き上げてグラブバケット1を海上へと引き上げる。引き上げたグラブバケット1を運搬船上に移動し、開閉ワイヤ3を巻下げてバケットシェル9を開き操作し、つかみ取った堆積物を運搬船に積載する。順次、浚渫位置を変更しながら、上記作業を繰り返すことによって浚渫作業を行う。
【0032】
以上のように、吊持ブラケット14のバケット本体5に対する連結位置を変更できるようにすると、吊持体4に対するバケット本体5の吊持バランスを変更することができる。詳しくは、吊持軸13で連結されたバケット本体5の重心位置は、常に吊持軸13の中心を通る垂直軸線上に位置しようとする。そのため、吊持ブラケット14とバケット本体5との連結位置を変更すると、バケット本体5は吊持バランスに応じた姿勢に吊持軸13を中心にして回転する。これより、バケット本体5の重心位置が吊持軸13の中心を通る垂直軸線上からずれている場合には、バケット本体5は吊持軸13を中心に回転して傾斜姿勢に吊持される。したがって、吊持ブラケット14のバケット本体5に対する連結位置を変更して吊持バランスを変更することで、バケット本体5の吊持姿勢を水平姿勢と傾斜姿勢とに変更して、作業対象面が水平面、または斜面であっても平滑な面に浚渫、あるいは掘削を行うことができる。
【0033】
また、浚渫時につかみ取った堆積物の内容により、バケット本体5の重心位置が中心位置からずれた場合でも、バケット本体5は吊持体4に対して吊持軸13で回転することができるので、吊持体4に作用する荷重の方向を常に一定にすることができる。したがって、吊持体4を吊持するメインワイヤ2に作用する荷重の方向を常に一定にすることができ、グラブバケット1を吊持するクレーン、および昇降操作するウインチに偏った負荷を与えることがない。加えて、バケット本体5を吊持体4に軸支した吊持ブラケット14で連結するので、昇降用チェーン及び調整用チェーンでバケット本体を支持する特許文献1の浚渫装置とは異なり、グラブバケット1が水中を下降する際に、水の抵抗を受けたバケット本体5が吊持体4に対して不規則に揺れ動くこともない。
【0034】
上記の実施形態では、海底の浚渫に適用した形態で説明したが、船上からの積荷の荷役作業にも使用することができる。バケットシェル9は1つのシェル軸8で支持するようにしたが、その必要はなく、左右のバケットシェル9・9をそれぞれ異なるシェル軸8・8で支持するようにしてもよい。バケット本体5を吊持する傾斜角度は整数比に設定したが、その必要はなく、使用する作業面に応じて任意に設定することができ、位置あるいは数においても設計時に自由に選択し設定することができる。上シーブボックス50および下シーブボックス23は、それぞれフレームベース15およびボックスベース26に着脱自在に取付けることができる。この場合には、それぞれにブラケットを設けて着脱自在のピンで固定することにより、上シーブボックス50および下シーブボックス23は、ハンガー4および下フレーム7と分離することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0035】
2 メインワイヤ
3 開閉ワイヤ
4 吊持体(ハンガー)
5 バケット本体
6 上フレーム
7 下フレーム
9 バケットシェル
10 アーム
13 吊持軸
14 吊持ブラケット
28 支持軸
21 開口
22 下シーブユニット
27 ベース支持部
28 支持軸
37 左枠
38 右枠
39 アームブラケット
40 前枠
41 後枠
43 取付ベース
44 角度調整穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインワイヤ(2)で吊持される吊持体(4)と、吊持体(4)で支持されるバケット本体(5)とを備えており、
バケット本体(5)と吊持体(4)とは、両者の間に設けた揺動軸(13)と、揺動軸(13)で支持される吊持ブラケット(14)を介して相対回転自在に連結されており、
バケット本体(5)の上フレーム(6)には、吊持ブラケット(14)を連結するための複数組の角度調整穴(44)が設けられており、
吊持ブラケット(14)の複数組の角度調整穴(44)に対する連結位置を変更して、バケット本体(5)の吊持姿勢を、バケットシェル(9)の下端縁が水平になる水平姿勢と、水平姿勢から傾斜する傾斜姿勢とに変更できることを特徴とするグラブバケット。
【請求項2】
バケット本体(5)の下フレーム(7)が、開閉ワイヤ(3)で下シーブユニット(22)を介して支持されており、
下フレーム(7)と下シーブユニット(22)とが支持軸(28)を介して相対回転自在に連結してある請求項1に記載のグラブバケット。
【請求項3】
下フレーム(7)に設けた上下に貫通する開口(21)の内部に下シーブユニット(22)が配置されており、
下フレーム(7)に設けられて下向きに突出するベース支持部(27)と、下シーブユニット(22)とが、支持軸(28)を介して連結してある請求項2に記載のグラブバケット。
【請求項4】
上フレーム(6)と、バケット本体(5)のバケットシェル(9)とがアーム(10)を介して連結されており、
上フレーム(6)は、左右枠(37・38)と、左右枠(37・38)の両端部をそれぞれ連結する前後枠(40・41)とで四角枠状に形成されており、
左右枠(37・38)には、アーム(10)を連結するためのアームブラケット(39)と、アームブラケット(39)よりも上側に配置される取付ベース(43)とが設けられており、
取付ベース(43)に複数組の角度調整穴(44)が形成してある請求項1から3のいずれかひとつに記載のグラブバケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−229517(P2012−229517A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96554(P2011−96554)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【特許番号】特許第4851634号(P4851634)
【特許公報発行日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(395023875)ミノツ鉄工株式会社 (6)
【Fターム(参考)】