説明

グリコサミノグリカンの製造方法

本発明は、グリコサミノグリカンを含む組成物の製造方法を提供するものであって、該方法は、吸収体膜の形でクロマトグラフィのマトリックスを用いるクロマトグラフィに、グリコサミノグリカンを含有する動物性物質[animal material]のホモジネートを供することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコサミノグリカン(GAG)組成物、好ましくは、例えばヘパリン等のような抗凝固GAGを含む組成物の製造方法に関する。特に好ましくは、このグリコサミノグリカンは、例えば魚やオキアミ等のような非哺乳類の海洋動物から抽出されたものである。
【背景技術】
【0002】
グリコサミノグリカンは、2つの亜群、すなわちガラクトサミノグリカンおよびグルコサミノグリカンから構成されている。ヘパリンは、抗凝固特性を有する硫酸化グルコサミノグリカンの部類に与えられた名称である。ヘパリンの他に、他の抗凝固硫酸化グルコサミノグリカン(しばしばヘパリン類縁体と呼ばれる)も公知であり、例えばヘパラン硫酸などが挙げられる。これらも、抗凝固効果または抗オプソニン効果を発揮するために用いられている。しかしながら、ヘパリンが、この群のなかで最も商業的に重要なものである。
【0003】
抗凝固グリコサミノグリカンは、硫酸化二糖類単位を繰り返し有する多糖である。この多糖の構造は、例えば、抗トロンビンに結合することが知られている五糖類単位など、他のオリゴ糖の構造をさらに含んでいてもよい。このように、ヘパリンは、その三硫酸化二糖類繰り返し単位の他に、例えば二硫酸化二糖類などの糖類単位をさらに含んでおり、あるヘパリンは、抗トロンビンに対して親和性が高い結合部位である五糖類を含んでいる。抗トロンビンに対するこの五糖類の結合部位を含むヘパリンは、高親和性ヘパリンとして知られている。
【0004】
種々のグリコサミノグリカンは、糖類間結合および糖類環置換の点で異なる。さらに、特定の動物種においてはその鎖長が多様であるが故、グリコサミノグリカンは特定の分子量よりむしろ分子量分布を有する、すなわち、グリコサミノグリカンは多分散系である。
【0005】
ヘパリンは重合体構造を有するため、ヘパリン組成物は、一般的に、様々な分子量(典型的には3kDaから40kDaまで)を有するヘパリンを含む。この広範囲な分子量を有するヘパリンは、通常、非分画ヘパリン(UFH)と呼ばれる。現在市販されているように、典型的なUFHは、5.0〜40kDaの範囲の分子量を有する。
【0006】
低分子量ヘパリン(LMWH)、すなわち、ヘパリンを含む物質であるが、ヘパリンの分子量が小さく、典型的には8kDa未満であり、特に、少なくともその60モル%が8kDa未満の分子量を有するヘパリン、を含む物質の製造および使用に、近年大きな関心がよせられている。LMWHは、抗Xa因子活性が少なくとも70ユニット/mgの効力を有し、そして抗IIa因子活性に対する抗Xa因子活性の割合が少なくとも1.5を有する。
【0007】
例えば、分画や、化学的または酵素的な切断による脱重合(例として、亜硝酸脱重合,過酸化水素を用いた酸化的脱重合,亜硝酸イソアミルを用いた脱アミノ化切断,ヘパリンのベンジルエステルのアルカリ性β脱離的切断[alkaline beta-eliminative cleavage],Cu2+ および過酸化水素を用いた酸化的脱重合やヘパリナーゼ消化等)など、様々な方法によって、LMWHは、天然の非分画ヘパリンから製造することができる。
【0008】
超低分子量ヘパリン(VLMWH)の合成製造物によせられる関心も増してきている。我々は以前、海洋動物(具体的には魚)から抽出したヘパリンは、生来、LMWHの含有量が高いこと、そして驚くべきことに、超低分子量ヘパリン(VLMWH)(すなわち、3kDa未満の分子量を有するヘパリン)の含有量も高いことを示している(国際公開第2006/120425号パンフレットを参照。この内容は参照することで本明細書に援用される)。
【0009】
異種間ウイルス感染およびプリオン感染する可能性を考慮すると、供給源が哺乳動物に由来するGAGの使用に対して懸念が高まっている。このように、海洋性GAG(例えば、海洋動物から抽出されたヘパリンなど)は、代替案を提供する。海洋性ヘパリンの抽出は、国際公開第02/076475号パンフレットに記載されており、この内容は参照することで本明細書に援用される。
【0010】
GAGを海洋性物質[marine material]から抽出する従来の方法としては、イオン交換クロマトグラフィ,電気泳動分離,様々な有機溶媒での連続沈殿や他の様々な方法が挙げられ、供給源としての動物からの抽出について先行技術に記載された方法も含まれる。これら技術の多くは時間が掛かり非効率的であるから、海産物由来のGAGを製造するための代替法が必要とされている。例えば、AT−セファロース・クロマトグラフィはヘパリンの高親和性部分のみを精製するが、ビーズをベースとした従来のイオン交換系も、例えば脂質などのような不要な化合物と結合する可能性があることを、本出願人は発見している。その上、これらの公知技術では、洗浄を長時間行わなければならず、そしてカラムからGAGを溶出させるために緩衝液を大量に必要とする(これによって処理がさらに面倒となる)。これによって、例えば、酸化や沈殿,そして活性を失うなどの問題が引き起こされる。
【0011】
海洋動物性物質からGAGを抽出する従来法が、例えば、処理時間が実行不可能なほど長いこと(すなわち、数日間に達し、その間に魚廃棄物が腐敗し臭気を発する可能性がある)やその結果得られた産物の全活性が低いことなどのような問題に悩まされるだろうことを、本出願人はさらに確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2006/120425号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/076475号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、現状の抽出法に付随する問題を除き、海洋性ヘパリンの上記利点を考慮して、海産物由来のGAGを製造するための代替法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
非哺乳類の海洋動物性物質からGAGを抽出する際、クロマトグラフィのマトリックス(例えば吸収体膜、特に陰イオン交換吸収体膜など)を用いたクロマトグラフィが、従来の抽出技術の好都合な代替案を提供することを、驚くべきことに、我々は見出している。この技術は拡大化かつ自動化が容易であり、そして、突出した純度および高活性を有する生成物が簡単かつ効率的に製造できることを見出したことは驚くべきことである。
【0015】
このように本発明を一つの側面から見ると、本発明はグリコサミノグリカン組成物の製造方法を提供するものであって、該方法は、好ましくは吸収体膜の形で、クロマトグラフィのマトリックスを用いるクロマトグラフィに、グリコサミノグリカンを含有する非哺乳類の海洋動物性物質のホモジネートを供することを含む。
【0016】
本発明をさらなる側面から見ると、本発明は、グリコサミノグリカンを含有する非哺乳類の海洋動物性物質からグリコサミノグリカンを抽出する方法を提供するものであって、該方法は、該動物性物質をホモジナイズすること、および、好ましくは吸収体膜の形でクロマトグラフィのマトリックスを用いるクロマトグラフィに、該ホモジネートを供することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい側面において、上記ホモジネートを、上記のクロマトグラフィのマトリックスに繰り返しアプライする。
【0018】
好ましくは、クロマトグラフィのマトリックスは吸収体膜である。吸収体膜は、ビーズがベースとなった従来のクロマトグラフィカラムに対する代替案を提供する。吸収体膜は、典型的には、様々なクロマトグラフィのリガンドが共有結合することができる化学的に安定なセルロース膜をベースにしている。この膜は、典型的には、イオン交換クロマトグラフィに類似したやり方で、標的分子の官能基を介して膜のリガンドに標的分子が可逆的に結合することによって分離が達成される。典型的なリガンドのタイプは、強い/弱い陰イオンまたは陽イオン交換リガンド,金属キレート,エポキシおよびアルデヒドのリガンドである。
【0019】
陽イオン交換膜は、例えば−SO3- ,−OPO3- や−COO- などのような陰イオン性官能基(例として、カルボキシメチル(CM),スルホプロピル(SP)およびメチルスルホナート(S)等)を含むリガンドを含む。陰イオン交換膜は、典型的には、例えば−NHR2+ や−NR3+ などのような陽イオン性官能基(例として、ジエチルアミノエチル(DEAE),第四級アミノエチル(QAE)および第四級アンモニウム(Q)等)を有するリガンドを含む。第四級アンモニウム(Q)は、本発明の使用に特に好ましい。
【0020】
吸収体膜はマクロ多孔性であり、吸収体膜の主要な動態学的効果は、対流および急速な膜拡散[film diffusion]であると考えられている。この吸収体は、従来のクロマトグラフィのビーズ/樹脂などで見出された拡散限界がなく、流速の範囲が広い。
【0021】
吸収体膜は、様々なクロマトグラフィに応用することが可能である。現在、医薬用タンパク質からのDNA,ウイルスおよび内毒素の除去ならびに溶液からのウイルス,タンパク質およびペプチドの精製に用いられている。この技術を多糖類に応用することによって発揮される効果は、以前には認められていない。
【0022】
一回使い切り、すなわち使い捨ての吸収体膜が市販されているが、適切に処理した後、再使用できる。本発明の方法に用いられる好適な系は、ザルトリウス社から入手可能なSartobind Membrane Adsorbers(例えばSartobind Anion Directなど)である。本発明による吸収体膜を用いることで、ビーズをベースとしたクロマトグラフィ系に付随する、費用と時間の掛かるカラムのパッキングおよび洗浄バリデーションの必要を取り除く。また、それによって、緩衝液の必要な数と量を最小限に抑えることもできる。クロマトグラフィに吸収体膜を用いることによって、処理時間および緩衝液の使用量を減らすことができる。この吸収体は、流速の範囲が広く、かつ、高い結合能力を有する。この開放的な構造によって、幅広い容量や流速等を用いることができ、そして試料/リガンドの相互作用に対して大きな表面積が与えられる。
【0023】
本発明の方法は、バッチ法であってもカラム法であってもよい。総容積[bed-volume]を変えられることによって、この技術は適応性を高くすることができ、スケールアップを容易にすることができる。吸収体膜を用いて得られる処理量が高いことから、本発明の方法は従来法と比較して生産性がより上がっている。
【0024】
上記ホモジネートは、例えばヒトの食料などとして用いられた動物性物質の廃棄物(例えば、筋肉組織が取り除かれた後の非哺乳類の海洋動物など)から抽出されることが好ましい。
【0025】
非哺乳類の海洋動物性物質とは、淡水魚および海水魚,貝類ならびに,例えばオキアミなどのような甲殻類に由来する物質を含む。
【0026】
哺乳類の食料源として、または、魚粉,魚肉および魚油の原料として用いられる非哺乳類の海洋動物が好ましい。養殖された非哺乳類の海洋動物を用いるのが特に好ましい。
【0027】
好適な非哺乳類の海洋動物の例:プローン[prawn],シュリンプ[shrimp],オキアミ,コイ,バーベル[barbell]および他のコイ科;タラ,メルルーサ,コダラ;カレイ・ヒラメ[flounder];オヒョウ;ソール[sole];ニシン;イワシ;アンチョビ;ジャック[jack];ボラ;サンマ;サバ;スヌーク[snoek];太刀魚;レッドフィッシュ[red fish];バス;ウナギ類(例えばウナギ[river eel]やアナゴなど);ヘラチョウザメ[paddle fish];テラピアおよび他のカワスズメ科;マグロ;カツオ;カジキ;回遊性魚類;などが挙げられる。特に好適な魚の例:カレイ・ヒラメ[flounder],オヒョウ,ソール[sole],タラ,メルルーサ,コダラ,バス,ジャック[jack],ボラ,サンマ,ニシン,イワシ,アンチョビ,マグロ,カツオ,カジキ,サバ,スヌーク[snoek],サメ,エイ,カラフトシシャモ,スプラット,トゲウオ,ブリーム,リング,オオカミウオ[wolf fish],サケ,マス,ギンザケおよびチヌック[chinock]が挙げられる。特に好ましく用いられる非哺乳類の海洋動物は、マス,サケ,タラまたはニシン、さらに特に好ましくはサケまたはオキアミである。オキアミはとりわけ好ましく、例えば、ナンキョクオキアミ(Euphausia superba),太平洋オキアミ(Euphausia pacifica)や北部オキアミ(Meganyctiphanes norvegica)などである。
【0028】
ヘパリン抽出の供給源として用いられる、グリコサミノグリカンを含有する非哺乳類の海洋動物の廃棄物は、典型的には、頭部,皮膚,えら,および内臓器官から選択されるだろう。えら単独の使用,頭部の使用および内臓器官の使用が特に好ましい。魚廃棄物の処理方法は、文献(例えば国際公開第2004/049818号パンフレット等)から公知である。
【0029】
動物性物質のホモジネートは、例えば物理的前処理または化学的前処理など(例として、浸軟や酸処理または塩基処理など,特に破砕または混合)の標準方法によって調製することができる。
【0030】
このホモジネートは、粒子状物質を除去するために、例えば遠心分離および/または濾過などを介して、さらに処理してもよい。しかしながら、このような処理は必ずしも必要でなく、例えば、我々は驚くべきことに、未精製のホモジネートを上記膜に直接アプライすることができることを見出している(一般的に、従来のクロマトグラフィでは、より多くの前処理工程を必要とする)。しかしながら、本発明の方法において、特にその供給源が魚のえらに由来する物質である場合、このホモジネートは、好ましくは遠心分離するか、さもなければ微粒子の除去に供する。
【0031】
特に好ましい態様において、ホモジネート中に存在するタンパク質を消化するため、ホモジネートを上記膜系にアプライする前に、酵素、特に(例えばパパインなどのような)プロテアーゼにより処理する。これに代えて、または、これに加えて、該タンパク質を不活化するために、50〜200℃、好ましくは70〜120℃、特に好ましくは80〜100℃(例えば約80℃など)でホモジネートを加熱してもよい。
【0032】
典型的には、所望するGAGの等電点より少なくともプラスマイナス1.0となるように(それぞれ陰イオン交換または陽イオン交換に対して)、試料のpHを調整すべきである。陰イオン交換が本発明のGAG抽出に好ましく、この場合pHは約5が好ましい。
【0033】
膜のpHは、試料をアプライする前に、例えば平衡緩衝液を用いて安定化してもよい。標準クロマトグラフ分離技術で用いる平衡緩衝液(および他の条件や方法)を、本発明の方法に用いてもよい。例えば、陰イオン交換の場合、好適な緩衝液(例えばNaCl等のような塩を含んでいてもよい)は、NH4Ac/HAc緩衝液,ビス−トリス/HCl緩衝液およびクエン酸塩緩衝液であり、例えば、5mMのNH4Ac/HAc緩衝液,10mMのNaCl/25mMのNH4Ac/HAc緩衝液,10mMのNaCl/25mMのビス−トリス/HCl緩衝液および10mMのNaCl/25mMのクエン酸塩緩衝液などである。陽イオン交換膜を利用する場合、本発明で用いられる好適な平衡緩衝液は;クエン酸塩,ギ酸塩,酢酸塩,マロン酸塩,MES,リン酸塩などである。
【0034】
陰イオン交換の場合、平衡緩衝液のpHは、4.5〜10、好ましくは5〜6.5、例えば約5.5などであろう。陽イオン交換の場合、はるかに低いpHが必要とされ、例えば1〜4など、好ましくは約2である。
【0035】
本発明の方法は、上記試料(ホモジネート)を再循環することができ、ひいては、該試料のマトリックスに対する接触を制御することができる。この再循環は、例えば同じ容器にチューブの入口と出口とを入れるなどによって、都合の良い任意のやり方で達成することができる。したがって、このクロマトグラフィのマトリックスに、このホモジネートを繰り返しアプライすることができる。このホモジネートを再循環することによって、マトリックス(例えば吸収体膜など)にホモジネートを繰り返しアプライすることが好ましい。換言すれば、素通り画分(すなわち、マトリックスに結合していない任意の物質)をマトリックスに再度アプライする、好ましくは吸収体膜を素通りした画分をすぐ後に続けてアプライする(すなわち、溶出液が溶出する前)。特に好ましくは、ホモジネートを再循環する、すなわち、結合した化合物が溶出する前の数分間(例えば4時間までなど)にマトリックスにホモジネートを繰り返しアプライする。アプライする典型的な時間は、5分〜3時間、好ましくは15分〜2時間、より好ましくは30分〜1.5時間、特に好ましくは45分〜1時間である。30分間の再循環モードにおいて2.5mL膜の典型的な滞留時間は、約2.8秒間である。
【0036】
このように、本発明をさらなる側面から見ると、本発明はグリコサミノグリカン組成物の製造方法を提供し、該方法は、クロマトグラフィのマトリックスを用いるクロマトグラフィに、グリコサミノグリカンを含有する非哺乳類の海洋動物性物質のホモジネートを供することを含むものであって、該ホモジネートを該マトリックスに繰り返しアプライする。この態様において、このマトリックスは、好ましくは本明細書に記載されている吸収体膜の形である。
【0037】
試料を膜にアプライした後、単一パスによっても、上記再循環を用いることによっても、結合したGAG化合物を溶出することができる。溶出は、イオン強度の段階的増加および/またはpHの段階的変化、あるいは好適な勾配を用いて達成してもよい。好ましくは、溶出は、好適な溶出緩衝液を用いて実施する。明らかに、これらは固定相の性質に依存するだろう。陰イオン交換の場合、溶出緩衝液のpHは、4.5〜10、好ましくは5〜6.5、例えば約5.5などであろう。
【0038】
本発明による陰イオン交換法において用いられる好適な溶出緩衝液は、移動相の対イオン濃度が上昇した緩衝液である。これは、NaClを平衡緩衝液に加えることによって都合よく達成される。1〜15M、好ましくは2〜20M、例えば3〜4MなどのNaClが、陰イオン交換法に典型的に用いられ、例えば、5mMのNH4Ac/HAc緩衝液における1〜4MのNaCl,25mMのNH4Ac/HAc緩衝液における3MのNaCl,25mMのクエン酸塩緩衝液における10mMのNaCl,3.5MのNaCl/5mMのクエン酸塩緩衝液などの緩衝液である。陽イオン交換膜を利用する場合、本発明に用いられる好適な溶出緩衝液は;クエン酸塩,ギ酸塩,酢酸塩,マロン酸塩,MES,リン酸塩である。いずれの場合においても、pHは、上記平衡緩衝液について概説したものと同様である。
【0039】
本発明の方法の、GAGを含有する組成物を、さらなる操作の前に、濃縮,脱塩および/または乾燥してもよい。凍結乾燥が好ましい。好ましい態様において、例えばNanomax−50フィルタを有するミリポア/アミコン撹拌式セル等を用いて溶出液を脱塩した後に凍結乾燥する。該撹拌式セルが、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)カラム(例えばG−75セファデックスカラム等)にアプライすることになっている再溶解した試料から塩を除去し、該試料の量を最小化するので、非分画生成物(UFH)を分画することになっている場合に、溶出液を脱塩した後に凍結乾燥することが特に有用である。
【0040】
上記膜が再生されるように好適な緩衝溶液中で洗浄することによって、溶出後に膜を再利用することができる。
【0041】
さらに、素通り画分(すなわち、膜にアプライ(たった一回のアプライであろうと、再循環を用いようと)したが結合しなかった物質)を、溶出段階後に再度膜にアプライすることができる。このようにして、実質的にすべての所望するGAGが単離されるまで、同じホモジネートを用いることができる。
【0042】
本発明のさらなる側面において、1以上の吸収体膜を用いることができ、これらは直列または並列に配置することができる。
【0043】
膜容量は、試料の大きさに従って選択することができるため、本発明の方法は、スケールアップするのが容易である。典型的な総容積[bed volume]は5〜2500mLの範囲にある一方、膜面積は典型的には200cm3〜10m3である。
【0044】
本発明は、従来のイオンクロマトグラフィより高い流速を用いることができる。この流速は、膜の容量に依存することになる。2.5mL膜の場合、典型的な流速は、5〜60mL/分,特に10〜50mL,特に好ましくは20〜40mL/分であり、例えば約30mL/分などである。
【0045】
再循環時間および流速は、必要に応じて調整することができる。マトリックスに接触する試料の総量は、再循環時間と流速との積である。
【0046】
膜に対する試料の接触度は、(再循環時間×流速)/マトリックス容積として定義される。例えば、25mL/分で1時間再循環させると、マトリックスに接触するのは1500mLの量となる(60分×25mL/分)。2.5mL膜の場合、これは、接触度の値が600程度に等しい(すなわち、膜1mLにつき600mL)。好ましくは、本明細書で定義されるような接触度は50〜3000、好ましくは200〜1000、特に400〜800、よりとりわけ500〜700、特に約600である。
【0047】
本発明の方法において、望まれないいかなる分解をも回避するために、任意の段階で、酸化防止剤を用いてもよい。
【0048】
典型的な膜の結合容量(cm3)は、強陰イオンに対してBSAで>0.8mgであり、強陽イオンに対してリゾチームで>0.8mgである。
【0049】
典型的な静的結合容量(mg/デバイス容積)は、>72mg/2.5mL、>720mg/25mL、>7200mg/250mL;
イオン容量(cm3)は通常、約4〜6μ当量である。
【0050】
好ましくは、スペーサで分離された膜の層の表面に対して接線方向に、注入流を送る。
【0051】
本発明の方法によって抽出されたグリコサミノグリカン(GAG)は、好ましくはグルコサミノグリカン、特に抗凝固特性を有するグルコサミノグリカン、とりわけヘパリン,ヘパリン類縁体,または低分子量ヘパリンもしくは低分子量ヘパリン類縁体,あるいはその2以上の混合物である。該GAGは、好ましくは、硫酸化GAG、特にヘパリンまたはLMWH、特に好ましくは高親和性GAGである。
【0052】
「抗凝固」とは、GAGが、(例えばゲルマトリックスなどのような基質に固定化されているなどの)抗トロンビン,インター−α−トリプシンイン阻害剤,第Xa因子,および哺乳動物のヘパリンに結合する他のタンパクと結合する能力、および/または、ヒト血漿中の凝固を遅延もしくは防止する能力もしくは哺乳動物(例えばマウスなど)の出血を長引かせる能力を有することを意味する。
【0053】
グリコサミノグリカン、特に抗凝固グリコサミノグリカンまたは抗凝固グルコサミノグリカン、特に好ましくはオキアミから抽出されたヘパリンは、それ自体新規かつ進歩性があるから、本発明のさらなる側面を形成する。好ましくは、これらのグリコサミノグリカンは、本明細書に記載された本発明の方法を介して抽出されるが、任意の好適な抽出法を用いてもよく、それら抽出法は、例えば国際公開第02/076475号パンフレットや国際公開第2006/120425号パンフレットなどに記載されている。
【0054】
上述の、オキアミに由来するGAG生成物および本発明の方法の生成物はともに、本発明のさらなる側面を構成する。これらの生成物はさらなる処理を施してもよく、例えば、得られたUFH組成物に対して、LMWHおよび/またはVLMWH等が濃縮または欠失した組成物となるような処理(例えば分画や脱重合など)を施してもよい。この画分、すなわちLMWHおよび/またはVLMWH等が濃縮または欠失した組成物は、本発明のさらなる側面を形成する。
【0055】
本発明の生成物を、抽出した後に生じたそのままの形で、例えばUFH等として、本発明に従って用いてもよい。一方、本発明の生成物を、代わりに塩形態(好ましくは、生理的に許容できる対イオン(例えば、ナトリウム,カルシウム,マグネシウム,カリウム,アンモニウムやメグルミン等)を有する塩形態)に変えてもよいし、例えばある医療器具の表面に対してその結合を促進する等のために誘導体化してもよいし、(例えば、LMWHの場合、分子量の定義を満たすGAG画分を製造する等のために)分子量分画もしくは脱重合してもよい。本明細書に記載された本発明の方法の生成物と同様、このような誘導体は、好ましくは生理的に許容できるものである。
【0056】
好ましくは、クロマトグラフ処理による生成物は、その後、分画および/または脱重合される。
【0057】
好ましくは、分画は、濾過(例えば膜濾過等)によって達成、または、クロマトグラフ的に達成され、特に好ましくは、サイズ排除クロマトグラフィ,イオン交換クロマトグラフィ,または試料置換クロマトグラフィ[sample displacement chromatography]を用いて達成される。好適な方法は、国際公開第2006/120425号パンフレットに記載されている。
【0058】
本発明の好ましい態様において、例えば分画等のようなさらなる処理の前に、海洋性GAG組成物を濃縮し脱塩する。
【0059】
特に好ましくは、本発明の海洋性GAGを、低分子量成分(例えば、抗トロンビンに結合する五量体(MW 1728Da)の分子量より小さい分子量を有する低分子量成分など)を除去するために膜濾過(典型的には、1kDaカットオフを有する膜(例えば、Filtron/Pall社のOmega−1k Ultrasetteやミリポア社のPellicon 1kDaカットオフなど)を用いて)に供する。また、特に好ましくは、海洋性GAGを、高分子量成分を除去するため、例えば3000Daの分子量カットオフを用いて(例として、Filtron/Pall社のOmega Centramate Suspended Screen OS005C11P1などを用いて)膜濾過に供する。これによって、UFH生成物に加えてLMWH濃縮画分および/またはVLMWH濃縮画分の製造が可能となる。様々な要件を満たすGAG組成物を提供するために、このような画分を別個に、組み合わせて(例えば併用療法等)、または混合して用いることができる。例えば、LWMHまたはVLMWHが濃縮された画分を製造するために、生成物を分画してもよい。残留画分(LMWHまたはVLMWHのいずれかが欠失している)を保持し、単独で用いてもよいし、さらなる非分画生成物に添加してもよい。このようにして、生成物の廃棄物を最小限に抑える。
【0060】
本明細書に記載され、本発明の方法に従って製造された組成物(UFHかそれとも上記分画段階後のものか)を乾燥してもよいし、例えば希釈剤,担体や活性製剤原料などとともに用いて処方してもよいし、(好ましくは液体担体とともに処方した後に)例えばカテーテルやインプラント等の医療器具の表面に対するコーティングとして適用してもよい。このような組成物およびコーティングされた器具は、例えば混合やコーティング等によってこれらを調製する本発明の方法を実施するため、本発明のさらなる側面を形成する。
【0061】
本発明をさらなる側面から見ると、本発明は、本明細書に記載の方法によって製造され、さらに生理的に許容し得る担体もしくは賦形剤および/または製剤原料を任意に含み、任意に基質をコーティングされる、非哺乳類の海洋動物由来グリコサミノグリカン組成物を提供する。医薬または治療法に用いるこのような組成物は、本発明のさらなる側面を形成する。
【0062】
本発明をさらなる側面から見ると、本発明は、本明細書に記載の方法によってオキアミ由来グリコサミノグリカン組成物を提供し、さらに生理的に許容し得る担体もしくは賦形剤および/または製剤原料を任意に含み、任意に基質をコーティングする。医薬または治療法に用いるこのような組成物は、本発明のさらなる側面を形成する。
【0063】
本発明をさらなる側面から見ると、本発明は、本発明の組成物もしくは本発明の方法に従って製造された組成物またはその塩もしくは誘導体の、哺乳動物(特にヒト)の薬物療法(例えば、ヒト被験者もしくはヒト以外の動物の被験者に対する手術,治療,予防や診断に用いるか、または血液接触に対して用いる組成物あるいは器具など)における使用を提供する。本発明の好ましい側面において、例えばVLMWH等の特定の画分が濃縮された組成物を提供するために、上記組成物を(例えば、活性や分子量などに従って)分画する。
【0064】
本発明をさらなる側面から見ると、本発明は、生理的に許容できる担体もしくは賦形剤とともに、および任意で治療製剤原料または予防製剤原料とともに、本明細書に記載の方法によって製造されたオキアミ由来GAGもしくは非哺乳類の海洋動物由来GAGまたはその塩もしくは誘導体を含む医薬組成物を提供する。
【0065】
本発明のGAG組成物は、例えば水(好ましくは注射用蒸留水),エタノール,緩衝液,浸透圧調整剤,防腐剤などの、哺乳動物由来GAG組成物中に慣用されていた非GAG成分をさらに含んでもよい。
【0066】
抗凝固剤としての用途の他に、本発明のGAGは、抗血栓剤,抗アテローム性動脈硬化剤[anti-atherosclerotic],補体阻害剤,抗炎症剤,抗癌剤,抗ウイルス薬,抗認知症薬(例えばアルツハイマー病治療薬など),抗プリオン薬,駆虫薬,オプソニン化阻害剤,生体材料,血管形成調整剤として、そして脈管欠損,損傷や免疫応答障害(例えばAIDSなど)の治療において用いてもよい。本発明のGAGは、経腸的投与または静脈投与(例えば経口投与や皮下投与など)してもよく、組織または循環系に入れる対象もしくは薬物材料に結合してもよい。
【0067】
このような治療上の使用および外科的な使用の他に、本発明のGAGは、診断目的(例えば診断分析など)の使用であっても、ヘパリンが好適な非医療的使用またはヘパリンが現在用いられている非医療的使用であってもよい。このように本発明をさらなる側面から見ると、本発明は、抗凝固剤を含む診断分析キットを提供し、該キットは、抗凝固剤が本発明のグリコサミノグリカンである点で特徴を有する。
【0068】
本発明の方法は、哺乳動物性物質に実施され、本発明の方法が非哺乳類の海洋動物に由来する材料に適用できるのと同様に、哺乳動物性物質に適用できることがわかった。本発明のこの側面に従うヘパリン製造/抽出の供給源として用いる、グリコサミノグリカンを含有する哺乳動物性物質は、好ましくは食肉加工の廃棄物、すなわち食物用の材料から抽出した後の廃棄物である。腸、好ましくはウシの腸またはブタの腸は、それ故に、好ましい供給源である。非哺乳類の海洋動物性物質よりむしろ哺乳動物性物質(好ましくはヒト以外の哺乳動物腸由来の材料)を用いる、上記の方法,生成物および使用は、このように、本発明のさらなる側面を形成する。
【0069】
したがって、本発明をさらなる側面から見ると、本発明は、グリコサミノグリカン組成物の製造方法を提供し、該方法は、吸収体膜の形でクロマトグラフィのマトリックスを用いるクロマトグラフィに、グリコサミノグリカンを含有する哺乳動物の腸のホモジネートを供することを含む。グリコサミノグリカン組成物の製造方法であって、クロマトグラフィのマトリックス(好ましくは吸収体膜)を用いるクロマトグラフィに、グリコサミノグリカンを含有する哺乳動物の腸のホモジネートを供することを含み、該ホモジネートを該マトリックスに繰り返しアプライする該方法も提供する。
【0070】
好ましくは、哺乳動物性物質の由来となる哺乳動物は、ヒト以外の哺乳動物である。好適な哺乳動物としては、例えば、ウシ,ヤギ,ヒツジ,シカ,ブタ[pig],ブタ[swine],イノシシなどが挙げられる。ウシ由来物質およびブタ由来材料が特に好ましい。
【0071】
本明細書において言及された文書は、参照することによって本明細書に援用される。
【実施例】
【0072】
さて、本発明について、以下の実施例を参照してさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。すべての実施例において、溶出の際に、蠕動性ファルマシアP−1ポンプを使用した以外は、ポンプとしてPump MasterFlex I/Pを使用した。使用した膜は、強塩基性陰イオン交換膜である、2.5mLのSartobind(登録商標) Anion Directであった。
【0073】
実施例1−サケ腸の抽出物
サケ腸の抽出物を、ミリQ水中280gのサケ腸をホモジナイズすることによって調製した。カルバゾール法で測定されたGAG(グリコサミノグリカン)の理論量は、98mgと算出された(N.B.カルバゾール試験の結果では、ウロン酸を含むグリコサミノグリカンは赤色/紫色となる)。
【0074】
タンパク質をパパインによって55℃で分解した後、80℃まで加熱することで不活化した。粗粒子を、ナイロンフィルタで濾過することで除去した。その後、抽出物に、0.5Mの酢酸アンモニウム/酢酸(pH5.5)を25mM(酢酸塩の最終濃度)となるまで、およびNaCl(10mMの最終濃度)を加えることによって、pH5.5に調整した。pHを測定したら6.08であった。
【0075】
溶出1:得られた抽出物を、その後、約25mL/分で64分間、膜上で(管の入口と出口とを同じビーカー内に浸すことによって)再循環し、それから150〜200mLの平衡緩衝液(25mMの酢酸塩/酢酸/10mMのNaCl(pH5.5))で洗浄した。次に、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaClを20mL用いて、溶出を実施した(溶出液no.1)。
【0076】
溶出2:この膜を、その後、平衡緩衝液で洗浄し、抽出物(すなわち、溶出1の素通り画分)を再度アプライした。今回45分間であった。その膜を平衡緩衝液(150〜200mL)で洗浄し、一晩中静置しておいた。次に、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaClを20mL用いて、溶出を実施した(溶出液no.2)。
【0077】
溶出3:膜を、約1時間1MのNaOH中に立たせたままにした後、平衡緩衝液で洗浄した。抽出物(すなわち、溶出2の素通り画分)を、55分間再度アプライし、平衡緩衝液で洗浄した後、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaClで溶出した(溶出液no.3)。
【0078】
溶出4:膜を、約1時間1MのNaOH中に立たせたままにした後、平衡緩衝液で洗浄した。抽出物(すなわち、溶出3の素通り画分)を、51分間再度アプライし、平衡緩衝液で洗浄した後、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaClで溶出した(溶出液no.4)。
【0079】
溶出5:その後、平衡緩衝液を、25mMのNH4Ac/HAc(pH5.0)/10mMのNaClに変え、抽出物(すなわち、溶出4の素通り画分)のpHを4.96に調整した(6MのHClを用いた)。これを60分間膜上で循環した後、この膜を200mLの平衡緩衝液で洗浄した。溶出液no.5が、25mMのNH4Ac/HAc(pH5.0)中の3MのNaClを20mL用いて得られた。
【0080】
溶出6:抽出物(すなわち、溶出5の素通り画分)のpHを5.5に調整し(3MのNaOHを用いた)、この膜を25mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)/10mMのNaClで洗浄した。この抽出物を、60分間膜上で再循環した。溶出液no.6が、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaCl(20mL)を用いて得られた。
【0081】
溶出7:この膜を、平衡緩衝液中20%のEtOHの中に一晩中保持した後、約45分間1MのNaOHで処理し、洗浄した。この抽出物(すなわち、溶出6の素通り画分)を、膜上で60分間再循環した。溶出液no.7が、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaCl(20mL)を用いて得られた。
【0082】
これらの結果を、以下の表に集約する:
【0083】
【表1】

【0084】
生物学的試験用に、プールされた溶出液(すなわち、混合した溶出液1〜7)を濃縮し、脱塩した。
【0085】
実施例2−サケ腸の抽出物,第II部
膜上を7回パスしたサケホモジネート(すなわち、実施例1の溶出7の素通り画分)を+4℃に保持し、ビス−トリス(すなわち、ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ−トリス(ヒドロキシメチル)メタン)を用いてpHを6.0に調整した。この膜を、(そのpHが中間の6.0である、25mMのビス−トリス/HCl/10mMのNaClの洗浄緩衝液とともに)1MのNaOHを用いて3回洗浄した後、25mMのビス−トリス/HCl/10mMのNaCl(pH6.0)(平衡緩衝液)で平衡化した。
【0086】
このホモジネートを、25mL/分の流速で60分間、室温で膜上に再循環させた。実施例1のように、入口を下にし出口を上にして、入/出のチューブを同じビーカー内に入れた。平衡緩衝液で洗浄後、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaClを用いて溶出を実施した(前回と同様)。溶出液量は、24.4mLであった。
【0087】
カルバゾール試験で測定されたウロン酸含有GAGの総量は0.933mgであった。
【0088】
実施例3
実施例1の混合した溶出液(1〜7)を、接線流を用いたミリポア社のPellicon 1000 MWCO膜上で濃縮し脱塩した。その後、試料(すなわち、1000Daを超える分子量を有する実施例1の溶出液から得られるすべて)を凍結乾燥した。得られた白い粉末様の残留物の重量は630mgであった。
【0089】
凍結乾燥された溶出液のアリコートについて、比色分析のトロンビン基質を用いるトロンビン/抗トロンビンアッセイにおけるヘパリン活性を試験した。この試験によって、ヘパリン活性が強いことがわかった。凍結乾燥させた溶出液のアリコートについて、定量的なヘパリン活性を決定するためさらに分析した。21.5mgのアリコートは、0.26U/mL(1mLに溶解)を与えた。これは、630mgで計7.62Uに匹敵する。
【0090】
実施例4−サケ腸の抽出物,第III部
膜上を8回パスしたホモジネート(すなわち、実施例2の素通り画分)を、(冷蔵庫で4日間保存した後)再度25mL/分の流速を用いて1時間膜上に再循環させた。その後、このホモジネートを平衡緩衝液(25mMのビス-トリス(pH6.0)/10mMのNaCl)を用いて洗浄した。5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaClを用いて溶出を実施した(前回と同様)。
【0091】
カルバゾール試験から、溶出液中、計3.02mgであることがわかった。実施例3に記載したように溶出液を脱塩し濃縮した。
【0092】
実施例5−サケえらの抽出物
サケえらの抽出物を、ミリQ水中で444.4gのサケえら(軟骨とすじを残して、えらを切り取った)をホモジナイズすることで製造した。タンパク質をパパインによって55℃で分解した後、80℃まで加熱することで不活化した。粗粒子を、ナイロンフィルタを介して濾過することで除去した。ホモジネートのpHを測定したら6.81だった。6MのHClを用いて、ホモジネートのpHを6.0に調整した。
【0093】
ホモジネートを遠心分離した(12,000rpmで30分間)。上清を保存し、各溶出段階より前に、25mL/分の流速を用いて60分間、膜上に再循環した。
【0094】
溶出1:洗浄および溶出(溶出液no.1)を、3MのNaCl/5mMのビス−トリス(pH6.0)を用いて実施した。
【0095】
溶出2:この膜を、(溶出1の素通り画分の)次の再循環の前に、45分間1MのNaOHで処理し、洗浄および溶出を上記のとおりに実施した(溶出液no.2)。
【0096】
溶出3:その後、この膜を1MのNaOHで一晩処理し、溶出2の素通り画分の再循環に続いて、上記のとおり洗浄および溶出を行った(溶出液no.3)。
【0097】
ウロン酸含有グルコサミノグリカンの量を、カルバゾール試験を用いて各溶出液につき三重に決定した:
【0098】
【表2】

【0099】
プールされた抽出物(溶出液1〜3)を脱塩、濃縮し、凍結乾燥した(実施例5に記載されているとおり)。凍結乾燥された試料の重量は、約61mgであった。凍結乾燥された溶出液は、白い綿毛状の粉末であった。活性試験により、61mgで計2.56Uであることがわかった。
【0100】
溶出液1,2,3の後に得られたホモジネートの素通り画分を、第一回の後(すなわち溶出1,2および3の後)6〜7日間膜上に再循環させた。
【0101】
溶出液4,5および6を、上記のようにして得た。溶出液5の後、この膜を45分間1MのNaOHで処理した。その結果を、下記の表に示す:
【0102】
【表3】

【0103】
プールされた溶出液(4〜6)を脱塩、濃縮し、凍結乾燥した。25mMのビス−トリス/10mMのNaCl(pH6.0)を用いて、この膜を平衡化した後、溶出6の素通り画分を25mL/分の流速を用いて1時間膜上に再循環し、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaClを用いて溶出した(溶出液7)。その後、ホモジネート(すなわち溶出液7の素通り画分)を、4MのNH3を用いてpH7.0に調整した。NH4Ac/HAc(pH7.0)を用いて膜を平衡化し、このホモジネートを25mL/分の流速を用いて1時間膜上に再循環した後、上記のように溶出した(溶出液8)。溶出液7および8のカルバゾール試験の結果を以下に示す:
【0104】
【表4】

【0105】
実施例6−活性試験
プールされた腸の抽出物(すなわち混合した実施例1の溶出液1〜7)を、ミリポア社のPellicon 0.5m2 1000 MWCO膜で濃縮し脱塩(接線流)した後、凍結乾燥した。得られた凍結乾燥試料は約630mgの重量を有し、21.5mgのアリコートについて、ノルウェーのアーケル大学病院[Aker University Hospital]の中央検査室[the Central Laboratory]で活性試験に供した。
【0106】
分析によって、総活性が0.26Uを示した。すなわち、バッチ全部では7.6Uで12U/gであった。カルバゾール試験では、1.07U/mgを与える計7.12mgを示した。
【0107】
えらホモジネート溶出液(実施例7で得られた)の2つのプールされた溶出液、すなわち溶出液1,2,3のプールおよび溶出液4,5,6のプールを、1000 MWCO−フィルタを備えるアミコン撹拌式セルで脱塩し濃縮した。
【0108】
分析によって、溶出液1,2,3が5.0mgで0.21Uの活性(すなわち0.042U/mg)を有することがわかった。
計:61mgで2.56U、すなわち0.042U/mg(重量で)。
カルバゾール試験の後:20.4mgで2.56U(0.125U/mg)。
【0109】
分析によって、溶出液4,5,6が2.4mgで0.11Uの活性を有することがわかった。
計:24.5mgで1.12U、すなわち0.046U/mg(重量で)。
カルバゾール試験の後:26mgで1.12U(0.043/mg)。
【0110】
実施例6の溶出液(すなわち、実施例3の腸ホモジネートから得られたものであり、使用しない場合は冷蔵庫に保管)を、1000 MWCOを備えるアミコン撹拌式セルで脱塩、濃縮し、総重量:0.269g,試験したアリコート:0.020gであった。
結果:0.23U/mL、すなわち計3.09U(0.0114U/mg)。
【0111】
実施例5で得られた溶出液7および8ならびに溶出液8の素通り画分を、アミコン撹拌式セルで濃縮、脱塩し、総重量として0.091gを与えた。
【0112】
0.0023gのアリコートを試験に供し、0.1U/mLであった。
総活性:3.95U、すなわち0.0434U/mg。
【0113】
セファデックスG75で分画した、<8000の濃縮物である溶出液(実施例3で得られた)を、アミコン撹拌式セルで脱塩し、総重量として0.161gを与えた。
0.0118gのアリコートは、0.12U/mLであった。
総活性:1.64U、すなわち0.010U/mg。
【0114】
上記のセファデックスG75の画分から得られた>8000のプールを、アミコン撹拌式セルで濃縮、脱塩し、その結果、総重量が0.030gであった。
0.0008gのアリコートは0.53U/mL、すなわち計19.88Uを与えた。これは0.663U/mgに対応する。
【0115】
実施例7−再循環の時間および速度
サケ腸(498g,−20℃で保存)の抽出物を、ブラウン手持ちホモジナイザーを用いて498mLのミリQ水中サケ腸を数分間ホモジナイズすることによって製造した。タンパク質消化を0.5gのパパインを用いて3時間55℃で実施し、続いて1時間80℃で失活させた。
【0116】
室温まで冷却後、ホモジネートをナイロンフィルタで濾過し、この過程で発生した粒子[course particles]を除去した。濾過液のpHを、0.5Mのクエン酸塩緩衝液(pH6.2)を用いて6.2に調整した。最終的な量が1000mLで、それを200mLのアリコート5つに分け、使用しない場合+4℃で保存した。
【0117】
使用と使用との間は、この膜を1MのNaOHで1時間処理した。この実施例に記載されたすべての実験おいて、平衡緩衝液は、25mMのクエン酸塩緩衝液(pH6.2)/10mMのNaClであった。いずれの場合においても、溶出は、25mMのクエン酸塩緩衝液(pH6.2)/10mMのNaClを用いて実施した。
【0118】
緩衝液を用いて平衡化した後、ホモジネートは所定の時間再循環し、それから約100〜120mLの平衡緩衝液で洗浄し、溶出した。
【0119】
溶出液量を測定し、そして標準として3μL(12μg)の非分画ブタヘパリンの3〜4個のアリコートと溶出液の3〜7個のアリコート(200μL)とを用いてカルバゾール試験を実施することで、グリコサミノグリカン(GAG)の量を決定した。
【0120】
ホモジネートの種々のアリコートを各実験に用いた。ホモジネートの入口と出口とを、同じビーカー内に入れた。再循環速度は、22mL/分であった。溶出速度は、1.4mL/分であった。結果を以下の表に示す:
【0121】
【表5】

【0122】
追加実験において、再循環速度は9.7mL/分であり、ファルマシアP−1ポンプおよびホモジネートの最後の200mLのアリコートを用いた。再循環を1時間実施し、溶出速度は上記の通りであった。検出されたGAGの総量は、1.843mgであった。
【0123】
実施例8−粒子の除去およびpHの効果
実施例7で用いた5個のアリコートを、プールして混合し、5個のアリコートとして等しく分けた。アリコート1個の中身を、12000rpm(23975×g)で30分間遠心分離した。脂質層と沈殿物とを避けるように注意深く上清をピペットで取り除いた。
【0124】
その後、この上清を、Sartobind Anion Direct膜上で1時間再循環した(22mL/分)。この膜を、25mMのクエン酸塩緩衝液(pH6.2)/10mMのNaClに対して平衡化した。再循環の後、膜を、平衡緩衝液(110〜120mL)で洗浄し、5mMのクエン酸塩緩衝液(pH6.2)中3.5MのNaClを20mL用いて溶出した。膜を、1MのNaOHで1時間インキュベートした後、pH6.2の平衡緩衝液に対する洗浄を行った。
【0125】
その後、アリコート(遠心分離せず)を膜上で1時間再循環することができた。洗浄および溶出を上記のように実施した。
【0126】
GAGの体積[volume]および量[amount](カルバゾール−試験)を決定した:
【0127】
【表6】

【0128】
この実施例は、腸から得られた未処理で未精製のホモジネートを本発明の方法における吸収体膜にアプライすることができることを示す。対照的に、えらのホモジネートは、理想的には遠心分離しなければならないか、さもなければ粒子を除去しなければならない。
【0129】
このように、この方法のさらなる利点は、未精製のホモジネートまたは粒子を濾過したホモジネートをアプライすることができる点であり、それに対して、従来の陰イオンクロマトグラフィはより膨大な遠心分離または濾過を必要とする。
【0130】
pHの効果についても調べた。実施例9においてpHを調整したのにもかかわらず、ホモジネート−アリコートの3個目のpHを検査したら、6.73であることがわかった。このアリコートのpHを、固形のクエン酸を用いて、5.5に調整した。この膜を、25mMのクエン酸塩緩衝液(pH5.5)/10mMのNaClを用いて、平衡化した。このホモジネートを1時間再循環し(22mL/分)、洗浄(110〜120mL)して、3.5MのNaCl/5mMのクエン酸塩緩衝液(pH5.5)を用いて溶出した。
【0131】
GAGの体積および量(カルバゾール試験)を決定し、1時間再循環した前記の溶出液(実施例7)と並行して比較した。
【0132】
【表7】

【0133】
pH5.5−溶出液は低い収率を与えるように見えるが、pH5.5−溶出液は、pH6.2−溶出液より純度の高い産物を与えた。
【0134】
上記pH5.5溶出液の0.0287gのアリコートおよび上表のpH6.2溶出液の0.0571gの2個目のアリコートを、アーケル大学病院で抗第Xa因子活性について試験し、それぞれ計1.8Uおよび3.1Uを与えた。この試験によって、以下の比活性が得られる:
溶出液 pH5.5:62.71 U/g
溶出液 pH6.2:54.29 U/g
この結果は、pH5.5の溶出液を使用することの有利さを示す。
【0135】
実施例9−再循環時間および再循環の上昇した速度
実施例7の、残っている2個のアリコートを用いた。再循環の速度を44mL/分に調整した。平衡緩衝液は25mMのクエン酸塩緩衝液(pH6.2)/10mMのNaClであり、溶離緩衝液は5mMのクエン酸塩緩衝液(pH6.2)中の3.5MのNaClであった。溶出速度は1.4mL/分であった(実施例7にあるように)。この2個のホモジネートのpHを、固形のクエン酸を用いて、6.2に調整した。
【0136】
第一の実験において、再循環を1時間した後、110〜120mLの平衡緩衝液で洗浄し、最後に溶出した。第二の実験において、再循環を30分間した後、上記のように処理した。
【0137】
体積およびGAGの含有量(溶出液として4×200μLの試料および標準として4×3μLをカルバゾール試験した)を二種の溶出液において決定した。
【0138】
【表8】

【0139】
この開きは、おそらくこの方法の誤差の範囲内であるから、再循環時間はともに同程度の収率を与える。以前の結果(実施例7)をもとに、再循環時間を60分間から30分間に短縮し、かつ再循環速度を22mL/分から44mL/分に上昇する場合も、同程度の収率が得られる。
【0140】
実施例10−温度の効果およびpH溶出の効果
実施例7のサケ腸のホモジネートの残りをプールし、189mLのアリコート5個に分け、使用するまで+4℃で保存した。アリコートno.1を取り出し、固形のクエン酸を用いてpH5.5に調整した。これを、平衡化した(25mMのクエン酸塩緩衝液(pH5.5)/10mMのNaCl)Sartobind Direct Anion膜上に25℃で1時間、22mL/分のポンプ(MasterFlex I/P)速度で再循環した。この膜を、110〜120mLの平衡緩衝液で洗浄した。溶出は、20mLの3.5MのNaCl/5mMのクエン酸塩緩衝液(pH5.5)を用いて実施した。
【0141】
アリコートno.2を取り出し、上記のようにpHを調整した。アリコートを水浴中に保持し、再循環の間、膜上の温度は34℃であった。温度以外は、上記のように実験を行った。
【0142】
アリコートno.3を取り出し、上記のようにpHを調整した。アリコートを水浴中に保持し、再循環の間、膜上の温度は41℃であった。温度以外は、上記のように実験を行った。
【0143】
アリコートno.4を取り出し、上記のようにpHを調整した。Sartobind膜上での再循環を27℃で実施し、上記のように実験を行った。
【0144】
最初に50mMのクエン酸塩緩衝液(pH2.8)を20mL用い、続いて500mMのクエン酸塩緩衝液(pH2.8)を20mL用いて、別々の溶出液として溶出した。
【0145】
GAG含有量を、カルバゾール試験を用いて決定した。下記の表中に記載されているように、溶出液の正確な体積(各々約20mL)を決定した。
【0146】
【表9】

【0147】
より高い温度で収率が上がるようには見えない。2個の溶出液を、活性試験および比活性測定のために提出した(pH5.5およびpH6.2の溶出液)。
【0148】
実施例11−再循環
実施例10の最後のアリコートを、チューブの入口および出口を別々のビーカーに保持することによって膜上に再循環した。入口のビーカーが空になった時点で、出口のビーカーの全内容物を入口のビーカーに移した。これを、22mL/分の速度で1時間(実効時間)27℃で実施した。この膜を、25mMのクエン酸塩緩衝液(pH5.5)/10mMのNaClを用いて調整した。その使用前に、アリコートのpHを5.5に調整した。
【0149】
溶出を、3.5MのNaCl/5mMのクエン酸塩緩衝液(pH5.5)を用いて実施した。この溶出液を、実施例10の25℃の試料と比較した。すべての試料を四重に試験した(特に明記しない限り、これらの実施例において通常通り、溶出液が200μLおよび標準が3μL)。
【0150】
【表10】

【0151】
これらの結果を比較して、この方法は、チューブの入口および出口を同じビーカー内に保持してもよいという利点を有する。これによって、再循環するためにその内容物を移すことが回避される。
【0152】
実施例12−オキアミ由来GAGの製造
オキアミの組織と緩衝液(0.1MのNaCl中の5mMのNH4CO3/NH3(pH9.0))またはミリQ水との等量を、組織グラインダ(ブラウン社の台所実用性タイプ)でホモジナイズする。典型的には、300mLの緩衝液/水中で300gの組織を用いる。このホモジネートを、0.3gのパパインとともに55℃で3時間、その後80℃で1時間インキュベーションし、13000rpmで遠心分離する。この上清をDowex(2×8,陰イオン交換体)上にアプライし、上記緩衝液で平衡化し、同じ緩衝液で洗浄する。グリコサミノグリカンを、同じ緩衝液中の4MのNaClを用いて溶出する。この溶出液を、Nanomax−50フィルタ(MWカットオフ=1000Da)を備える撹拌式セル(アミコン 8400)で濃縮し、脱塩する。濃縮し脱塩された溶出液を凍結乾燥する。
【0153】
実施例13−オキアミおよびクロマトグラフィのマトリックス
オキアミの抽出物を、ミリQ水中で400gの凍結オキアミをホモジナイズすることで製造する。タンパク質をパパインによって55℃で分解し、その後、80℃まで加熱することによって不活化する。粗粒子を、ナイロンフィルタを介して濾過することで除去する。このホモジネートのpHを、6MのHClを用いて6.0に調整する。ホモジネートを遠心分離する(12,000rpmで30分間)。その後、得られた抽出物を、強塩基性の陰イオン交換体膜であるSartobind(登録商標) Anion Direct上に25mL/分で60分間(同じビーカー内にチューブの入口および出口を浸すことによって)再循環し、その後、200mLの平衡緩衝液(25mMの酢酸塩/酢酸/10mMのNaCl(pH5.5))を用いて洗浄する。それから溶出を、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の3MのNaClを20mL用いて実施する。さらなる溶出を上記のように実施する。ウロン酸含有グリコサミノグリカンの量を、カルバゾール試験を用いて決定する。
【0154】
実施例14−ブタGAGの製造
ブタ腸を、食肉解体から得られた生の状態で回収し、氷上で保持した。この腸から内容物を取り出して空にし、水道水で洗浄した。444gの洗浄された腸を、444mLのミリQ水に加え、ホモジナイズした。タンパク質を、パパインを用いて55℃で3時間分解した後、80℃で1時間不活化した。粗粒子を、ナイロンフィルタを介して濾過することで除去した。その後、この抽出物を、0.5Mの酢酸アンモニウム/酢酸(pH5.5)(酢酸塩の最終濃度は25mM)およびNaCl(最終濃度は10mM)に加えた。50%(v/v)の酢酸を加えることによって、pHを5.50に調整した。
【0155】
精製:得られた抽出物を、それから、膜上約25mL/分で45分間(同じビーカー内にチューブの入口および出口を浸すことによって)再循環した後、150〜200mLの平衡緩衝液(25mMの酢酸塩/酢酸/10mMのNaCl(pH5.5))を用いて洗浄した。その後、溶出を、5mMのNH4Ac/HAc(pH5.5)中の4MのNaClを20mL用いて実施した。溶出液中のグリコサミノグリカンの総量は、カルバゾール試験を用いて0.515mgと決定された。この溶出液を、1000 MWCO−フィルタ付アミコン撹拌式セルで脱塩し濃縮した。冷凍乾燥された溶出液を、アーケル大学病院の臨床化学コアユニット[Clinical Chemistry Core Unit]で、Stachrom Heparin Diagnosticaアッセイを用いて、ヘパリン活性について試験した。これによって、計3.7の抗第Xa因子ユニットが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体膜[membrane adsorber]の形でクロマトグラフィのマトリックスを用いるクロマトグラフィに、グリコサミノグリカンを含有する非哺乳類の海洋動物性物質[non-mammalian marine animal material]のホモジネートを供することを含む、グリコサミノグリカン組成物の製造方法。
【請求項2】
クロマトグラフィのマトリックスを用いるクロマトグラフィに、グリコサミノグリカンを含有する非哺乳類の海洋動物性物質のホモジネートを供することを含むグリコサミノグリカン組成物の製造方法であって、
該ホモジネートを該マトリックスに繰り返しアプライする方法。
【請求項3】
上記の非哺乳類の海洋動物性物質が、オキアミ由来物質[krill material]である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記の非哺乳類の海洋動物性物質が、サケ由来物質[salmon material]である請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
吸収体膜の形でクロマトグラフィのマトリックスを用いるクロマトグラフィに、グリコサミノグリカンを含有する哺乳類の腸のホモジネートを供することを含む、グリコサミノグリカン組成物の製造方法。
【請求項6】
クロマトグラフィのマトリックスを用いるクロマトグラフィに、グリコサミノグリカンを含有する哺乳類の腸のホモジネートを供することを含むグリコサミノグリカン組成物の製造方法であって、
該ホモジネートを該マトリックスに繰り返しアプライする方法。
【請求項7】
上記の哺乳類の腸が、ブタの腸またはウシの腸を含む請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
上記マトリックスが、吸収体膜の形である請求項2〜4,6または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
上記組成物が、抗凝固グリコサミノグリカンを含む上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
上記組成物が、ヘパリンを含む上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記のクロマトグラフィのマトリックスが、陰イオン交換膜である上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
さらに、脱重合すること、および/または、分画することを含む上記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
上記請求項のいずれか一項に記載の方法によって得られるグリコサミノグリカン組成物。
【請求項14】
オキアミから抽出された、グリコサミノグリカン、特に抗凝固グリコサミノグリカンまたはグルコサミノグリカン、特に好ましくはヘパリン。
【請求項15】
請求項13または14の生成物の医薬への使用。
【請求項16】
医薬に使用する請求項13または14の生成物。

【公表番号】特表2011−528058(P2011−528058A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517996(P2011−517996)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001784
【国際公開番号】WO2010/007387
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(509176019)
【Fターム(参考)】