説明

グリニャール試薬の製法

【解決課題】 従来の方法に比べより効率的なグリニャール試薬の製法を提供すること。
【解決手段】 一般式(VIII):
R−I (VIII)
式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいビシクロ基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個包含する、置換基を有していてもよい複素環式基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す、
で示される化合物を塩素、臭素、塩化水素または臭化水素で処理した亜鉛又はマグネシウムと反応することを特徴とする一般式(IX):
R−X−Y (IX)
式中、Xは、亜鉛又はマグネシウムを表し、Yは、ヨウ素、臭素、塩素を表す、
で示される化合物の製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリニャール試薬、特に、ビオチン合成中間体及びビオチンの製造に有利に使用し得るグリニャール試薬の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビオチンは、飼料添加物、医薬品などとして有用なビタミンであり、その製造方法としては、例えば次式:
【化1】


で示されるチエノイミダゾ−ル化合物を合成中間体として用いる製法(ケミカル・レビューズ(Chemical Reviews),97巻,6号,1755−1792頁,1997年、特公昭49−32551号、特公昭53−27279号、特公平3−66312号、特公平5−9064号)等が知られている。
【0003】
しかしながら、これら公知の製法は、その製造工程が長く、また、その途中の工程で煩雑な光学分割を要するというような欠点がある。
【0004】
本発明の目的は工業的に有利なビオチンの製造に有利に使用できるグリニャール試薬の製造方法を提供することにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
課題を解決するために本発明者等は鋭意研究の結果、新規なグリニャール試薬の製造方法に到達し、このグリニャール試薬は、効率的に化合物(IX)を製造することができ、例えば、ビオチン製造において、化合物(III)から化合物(VI)を製造する際に使用して、安価にビオチンを製造できるため、工業的に優れた製法である。
【0006】
すなわち、本発明は、一般式(VIII):
R−I (VIII)
式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいビシクロ基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個包含する複素環式基(当該複素環式基は置換基を有していてもよい)又は置換基を有していてもよいアリール基を表す、
で示される化合物を塩素、臭素、塩化水素又は臭化水素で処理した亜鉛又はマグネシウムと反応することを特徴とする一般式(IX):
R−X−Y (IX)
式中、Xは、亜鉛又はマグネシウムを表し、Yは、ヨウ素、臭素又は塩素を表す、
で示される化合物の製法に関する。
【0007】
さらに本発明は、一般式(VIII):
R−I (VIII)
式中、Rは、前記と同一意味を表す、
で示される化合物を一般式(X):
M−Y (X)
式中、Mは、金属原子を表し、Yは、前記と同一意味を表す、
で示される塩の存在下、亜鉛又はマグネシウムと反応することを特徴とする一般式(IX):
R−X−Y (IX)
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物の製法に関する。
【発明の効果】
【0008】
化合物(IX)を製造する方法は、ハンドブック・オブ・グリニャアード・リージェンツ(HANDBOOK OF GRIGNARD REAGENTS)53−77頁、1996年、オーガノジンク・リージェンツ・イン・オーガニック・シンセシス(ORGANOZINC REAGENTS in ORGANIC SYNTHESIS)、18−67頁、1996年等に記載されている。
【0009】
本発明においては、これら文献記載の方法と比べて、より効率的に化合物(IX)を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
化合物(IX)は、亜鉛又はマグネシウムを溶媒中に懸濁し、塩素、臭素、塩化水素又は臭化水素を加えた後、化合物(VIII)と反応させて製造することができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン等があげられ、これらの混合溶媒も用いることができる。本反応は、−50℃〜150℃、とりわけ5℃〜80℃で好適に進行する。
【0011】
Rのアルキル基の置換基としては、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニルアルケニル基、アルコキシカルボニルアルキニル基、アルカノイル基、アルキルアミノカルボニル基、アルキニル基、シアノ基、アルコキシカルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジ(アルカノイル)アミノ基、ハロゲン原子、アルカノイルオキシ基、フェニルチオ基、フェノキシチオ基、フェノキシオキシチオ基、ベンゾイルチオ基、ジ(アルコキシ)フォスフォノ基、トリメチルシリル基、ジ(アルコキシ)ボリル基、シクロアルキル基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個包含する複素環式基(当該複素環式基は置換基を有していてもよい)或いは置換基を有していてもよいアリール基等があげられる。これらRのアルキル基の置換基としては、アルコキシカルボル基、シアノ基又はアルコキシアルキル基が好適に用いられる。具体的には、Rが4−アルコキシカルボニルブチル基、4−シアノブチル基、4−アルコキブチル基又は3−アルコキシブチル基であるものが好適に用いられる。
【0012】
Rのアルキル基の置換基である複素環式基としては、飽和もしくは不飽和単環または二環複素芳香環式基が挙げられ、例えば、チエニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、ピラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、プテリジニル基、ピリドピリミジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、テトラヒドロキノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、テトラヒドロキノキサリニル基、ジヒドロフタラジニル基などが挙げられる。当該複素環式基の置換基としては、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキル基またはホルミル基が挙げられる。
【0013】
また、Rのアルキル基の置換基であるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、フェニル基が好適に用いられる。当該アリール基の置換基としては、アルコキシカルボニル基、アルカノイル基、シアノ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシ基、ジ(トリメチルシリル)アミノ基等が挙げられる。
【0014】
Rのビシクロ基としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル基、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン−7−イル基等が挙げられる。また、当該ビシクロ基の置換基としては、アルカノイルアミノ基等が挙げられる。
【0015】
Rのアルケニル基の置換基としては、シクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アルカノイルオキシ基、アルカノイル基、アルキルフェニルスルフォキシ基、フェニルスルフォキシアミノ基、ハロゲノアルキル基等が挙げられる。当該アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、フェニル基が好適に用いられる。当該アリール基の置換基としては、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0016】
Rのアリール基の置換基としては、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルカノイル基、ジアルキルアミノカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。当該アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、フェニル基が好適に用いられる。
【0017】
Rのヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個包含する複素環式基としては、飽和もしくは不飽和単環または二環複素芳香環式基が挙げられ、例えば、チエニル基、フリル基、テトラヒドロフリル基、ピラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、プテリジニル基、ピリドピリミジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、テトラヒドロキノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、テトラヒドロキノキサリニル基、ジヒドロフタラジニル基などが挙げられ、これらのうち、ピリジル基、チエニル基、イミダゾリル基、チアゾール基が好適に用いられる。当該複素環式基の置換基としては、アルキル基、アルコキシカルボニル基、ベンゾイル基、アルカノイル基又はシアノ基等が挙げられる。
【0018】
さらに、本発明の方法においては、Rが置換基を有していてもよいアルキル基であるものが好ましく、当該アルキル基の置換基としては、アルコキシカルボニル基、シアノ基又はアルコキシ基が好ましい。具体的には、Rが4−アルコキシカルボニルブチル基、4−シアノブチル基、4−アルコキシカルボニル基又は3−アルコキシブチル基が好ましい。4−アルコキシカルボニルブチル基としては、4−エトキシカルボニルブチル基が挙げられる。
【0019】
特に、本発明の方法においては、Rがアルコキシカルボルアルキル基、シアノアルキル基又はアルコキシアルキル基であり、亜鉛を用いて臭素の存在下反応するのが好ましい。
【0020】
また、化合物(IX)は、亜鉛又はマグネシウムを溶媒中に懸濁し、塩(X)を加えた後、化合物(VIII)と反応させて製造することができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン等があげられ、これらの混合溶媒も用いることができる。本反応は、−50℃〜150℃、とりわけ5℃〜80℃で好適に進行する。塩(X)の金属原子(M)としては、典型金属又は遷移金属等が挙げられる。典型金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、ケイ素、スズ等が挙げられ、遷移元素としては、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅等が挙げられる。
【0021】
本明細書において、アルキル基又はアルコキシ基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のもの、とりわけ炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。アルカノイル基、アルコキシカルボニル基又はアルキルチオカルボニル基としては、炭素数2〜7の直鎖又は分岐鎖のもの、とりわけ炭素数2〜5の直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。ハロゲノアルキル基としては、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0022】
本発明で得られるグリニャール試薬は、一般的な反応に用いることができ、例えば、以下に記載のビオチン中間体の製造、及びこれを用いるビオチンの製造に有利に用いることができる。
すなわち、本発明で得られるグリニャール試薬は、以下の製法:
一般式(II−a):
【0023】
【化2】

【0024】
式中、R及びRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、ベンゼン環上に置換基を有していてもよいベンジル基、ベンゼン環上に置換基を有していてもよいベンズヒドリル基、又はベンゼン環上に置換基を有していてもよいトリチル基、Rはシアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、又は置換基を有していてもよいカルバモイル基を表す、
で示される化合物又はその塩を、環変換させることを特徴とする一般式(I):
【0025】
【化3】

【0026】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩の製法;
【0027】
上記の方法により一般式(I):
【化4】

【0028】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩を製し、必要に応じて加水分解して、一般式(I−a):
【0029】
【化5】

【0030】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩を製し、次いで得られた化合物(I−a)を環化及びエピ化することを特徴とする、一般式(III):
【0031】
【化6】


式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物の製法;
【0032】
また、一般式(II):
【化7】


式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩を、環変換および環化させることを特徴とする一般式(IV):
【0033】
【化8】


式中、記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物の製法;
【0034】
また、上記の方法により、一般式(IV−a):
【化9】

【0035】
式中、記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物又はその塩を還元し、必要に応じて加水分解して、一般式(I−a):
【化10】


式中、記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物又はその塩を製し、次いで得られた化合物(I−a)を環化及びエピ化することを特徴とする、一般式(III):
【0036】
【化11】

【0037】
式中、記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物の製法;
【0038】
また、一般式(II−b):
【化12】

【0039】
式中、R31は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、又は置換基を有していてもよいカルバモイル基を表し、他の記号は前記と同一意味を有する、
で示される化合物又はその塩を、環変換および環化させることを特徴とする一般式(III):
【0040】
【化13】

【0041】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物の製法;
【0042】
また、一般式(5−a):
【化14】

【0043】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩に、一般式(7):
−NH (7)
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物及びシアン化化合物と反応することを特徴とする一般式(6−a):
【0044】
【化15】


式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩の製法;
【0045】
さらに、一般式(4−a):
【化16】

【0046】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩を酸化し、一般式(5−a):
【化17】

【0047】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩を製し、次いで得られた化合物(5−a)に、一般式(7):
−NH (7)
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物及びシアン化化合物と反応することを特徴とする一般式(6−a):
【0048】
【化18】


式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩の製法;
【0049】
さらに、上記の方法により、一般式(6−a):
【化19】


式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩を製し、得られた化合物(6−a)を加水分解し、一般式(II−c):
【0050】
【化20】

【0051】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物を製し、次いで得られた化合物(II−c)を環変換し、一般式(I−b):
【0052】
【化21】

【0053】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩を製し、さらに得られた化合物(I−b)を加水分解し、一般式(I−a):
【0054】
【化22】


式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩を製し、次いで得られた化合物(I−a)を環化及びエピ化することを特徴とする、一般式(III):
【化23】


式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物の製法;
【0055】
さらに、上記の方法により、一般式(III):
【化24】


式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物を製し、次いで得られた化合物(III)に、一般式(V):
Zn−(CH (V)
【0056】
式中、Xはハロゲン原子、Rはエステル化されたカルボキシル基又はアミド化されたカルボキシル基を表す、
で示される化合物を反応させ、一般式(VI):
【0057】
【化25】

【0058】
式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示される化合物又はその塩を得、次いで得られた化合物(VI)を、還元し、必要であれば加水分解し、さらに必要であればR及び/又はRを水素原子へ変換することを特徴とする、式(VII):
【0059】
【化26】


で示される化合物の製法において、一般式(III)の化合物から一般式(VI)の化合物を製造する際に使用する一般式(V)の化合物として使用できる。
【0060】
さらに、本発明で得られるグリニャール試薬は、一般式(IV):
【化27】


式中、記号は前記と同一意味を表す、
で示されるジ(イミダゾリジニルメチル)ジスルフィド化合物又はその塩に関する。
【0061】
本明細書において用いられる、或いは得られる化合物(I)は化合物(II−a)を、環変換させることにより製造することができる。本反応は、酸素の不存在下、例えば、窒素またはアルゴン等の気流下で実施することができる。本反応は、適当な溶媒中又は無溶媒で実施することができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン又はこれらの混合溶媒を適宜用いることができる。本反応は、0℃〜200℃、とりわけ80℃〜100℃で好適に進行する。
【0062】
本明細書において用いられる、或いは得られる化合物(I)、化合物(I−a)、化合物(I−a’)、化合物(I−b)、化合物(II)、化合物(II’)、化合物(II−a)、化合物(II−b)、化合物(II−c)、化合物(III)、化合物(III−a)、化合物(IV)、化合物(IV−a)、化合物(VI)、化合物(6)及び化合物(6−a)のR及びRにおいて、並びに本明細書において用いられる、或いは得られる化合物(3)、化合物(4)、化合物(4−a)、化合物(5)及び化合物(5−a)のRにおいて、及び化合物(7)のRにおいて、ベンジル基のベンゼン環上の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基が挙げられ、ベンズヒドリル基のベンゼン環上の置換基としては、同一又は異なるハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基が挙げられ、トリチル基のベンゼン環上の置換基としては、同一又は異なるハロゲン原子、アルキル基及びアルコキシ基から選ばれる基が挙げられる。
【0063】
上記のベンジル基、ベンズヒドリル基又はトリチル基における各々のベンゼン環上には、同一又は異なる1〜3個の上記置換基を有していてもよい。
【0064】
本明細書において用いられる、或いは得られる化合物(I)、化合物(II)、化合物(II−a)、化合物(IV)及び化合物(IV−a)のR並びに化合物(II−b)のR31において、カルバモイル基の置換基としては、同一又は異なる1又は2個のアルキル基が挙げられる。
【0065】
本明細書において用いられる、或いは得られる化合物(I)、化合物(I−a)、化合物(I−a’)、化合物(I−b)、化合物(II)、化合物(II’)、化合物(II−a)、化合物(II−b)、化合物(II−c)、化合物(III)、化合物(III−a)、化合物(IV)、化合物(IV−a)、化合物(VI)、化合物(6)及び化合物(6−a)としては、R及びRが共にベンジル基、ベンズヒドリル基又はトリチル基である化合物が好ましい。このうち、R及びRが共にベンジル基である化合物が特に好ましい。また、化合物(I)、化合物(II)、化合物(II−a)、化合物(IV)及び化合物(IV−a)としては、Rがカルボキシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基である化合物が好ましい。
【0066】
本明細書において用いられる、或いは得られる化合物(IV)は化合物(II)を、塩基の存在下、環変換させることにより製造することができる。
【0067】
塩基としては、炭酸アルカリ金属(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、炭酸水素アルカリ金属(炭酸水素ナトリウムなど)、有機酸アルカリ金属塩(酢酸ナトリウムなど)、水酸化アルカリ金属(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、水素化アルカリ金属(水素化ナトリウムなど)、アルカリ金属アミド(ナトリウムアミド、リチウムアミドなど)、アルカリ金属アルコキシド(ナトリウムメトキシドなど)、リン酸アルカリ金属、アルカリ金属(ナトリウムなど)又は有機塩基(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ピペリジン、ジメチルアニリン、ジメチルアミノピリジンなど)等を好適に用いることができる。このうち炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウムが特に好ましい。
【0068】
塩基の使用量は、化合物(II)に対し、0.1モル当量〜100モル当量、とりわけ1モル当量〜3モル当量使用するのが好ましい。
【0069】
本反応は、適当な溶媒中又は無溶媒で実施することができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジン又はこれらの混合溶媒を適宜用いることができる。本反応は、0〜200℃、とりわけ80〜100℃で好適に進行する。
【0070】
本明細書において用いられる化合物(IV)には、不斉炭素に基づく光学異性体が存在し、ラセミ体、光学異性体のいずれであってもよいが、光学的に活性な(+)−ビオチンのみが生物学的に活性であることから、(+)−ビオチンに効率よく導くため、イミダゾリジン環の5位(−CHS−が結合している位置)がR配置の光学活性体が好ましい。
【0071】
本明細書において用いられる、或いは得られる化合物(VI)としては、R及びRが共にベンジル基、ベンズヒドリル基又はトリチル基であり、Rがアルコキシカルボニル基又はアルキルカルバモイル基である化合物が好ましい。このうち、R及びRが共にベンジル基、ベンズヒドリル基又はトリチル基であり、Rがアルコキシカルボニル基である化合物が特に好ましい。
【0072】
化合物(II)及び化合物(II−a)は、ブレティン オブ ケミカル ソサエティ オブ ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan),37巻,2号,242−244頁,1964年、アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry),138巻,449−450頁,1984年、ヘテロサイクルズ(Heterocycles),18巻,259−263頁,1982年等に記載の公知の製法又はそれらに準じた製法によって製造できるが、例えば以下のようにして製造することができる。
【0073】
【化28】

【0074】
式中、Xはハロゲン原子、R32はカルボキシル基又はカルバモイル基を表し、他の記号は前記と同一意味を有する。
【0075】
化合物(1)とクロロギ酸フェニル(又はクロロギ酸アルキル)から化合物(2)を製造する工程は、塩基の存在下、溶媒中又は無溶媒で実施することができる。塩基としては、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属、炭酸水素アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、有機塩基等を好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、水等が挙げられる。本反応は、−30℃〜120℃、とりわけ20℃〜50℃で好適に進行する。
【0076】
化合物(3)においてRが水素原子以外の置換基を有する化合物は、化合物(2)とR−X(Rのクロリド、ブロミド等)とを、塩基及びジメチルスルホキシド等の高極性溶媒の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させて製造できる。塩基としては、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属、炭酸水素アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド、有機塩基等を好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール等が挙げられる。本反応は、−20℃〜120℃、とりわけ15℃〜40℃で好適に進行する。
【0077】
化合物(4)は、化合物(3)を還元剤と、酸又はアルキル化剤の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させて製造できる。還元剤としては、水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム、水素化リチウムアルミニウム、Red−Al(水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム)、ジボラン、ボランメチルスルフィド錯体等を好適に用いることができる。酸としては、硫酸、塩化水素、ルイス酸(トリメチルシリルクロリド、ヨウ素、塩素、ボラントリフルオリドエーテル錯体等)等を好適に用いることができる。アルキル化剤としては、ジメチル硫酸、ヨウ化メチル、ベンジルハライド等を好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、テトラヒドロフラン、エタノール等が挙げられる。本反応は、−30℃〜120℃、とりわけ0℃〜40℃で好適に進行する。
【0078】
化合物(5)は、化合物(4)を酸化剤の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させて製造できる。酸化剤としては、(1)ジメチルスルホキシド、三酸化イオウピリジン錯塩及びアミン(ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン等)からなるもの、(2)ジメチルスルホキシド、オキサリルクロリド及びアミン(ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン等)からなるもの、(3)ジメチルスルフィド、塩素及びアミン(ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン等)からなるもの、(4)次亜塩素酸ソーダ、炭酸水素ナトリウム、臭化ナトリウム、及び4−ヒドロキシテトラメチルピペリジンオキシド若しくはその誘導体(4−アミノテトラメチルピペリジンオキシド、4−カルボキシテトラメチルピペリジンオキシド、4−シアノテトラメチルピペリジンオキシド等)からなるもの、(5)クロム酸及びその塩、(6)金属触媒(白金、パラジウム等)及び酸素、(7)過酸及び過酸化物、或いは(8)ジメチルスルホキシド、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、塩基(ピリジン等)、酸(トリフルオロ酢酸、リン酸等)(Pfitzner−Moffatt酸化)等を好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、水、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。本反応は、−78℃〜100℃、とりわけ−78℃〜25℃で好適に進行する。
【0079】
また化合物(5)は、化合物(3)のカルボキシル基をチオニルクロリド、塩化オキサリル等でハロゲン化した後、金属触媒(白金、パラジウム等)及び水素を用いて接触還元することにより、化合物(4)を経由することなく製造することもできる。
【0080】
化合物(6)は、化合物(5)をR−NHと反応させる工程及びシアン化化合物と反応させる工程を溶媒中又は無溶媒で実施することにより製造できる。化合物(5)とR−NHとの反応は、脱水剤(モレキュラシーブ4A、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム等)の存在下に、シアン化化合物と反応させることにより好適に実施できる。シアン化化合物としては、シアン化を行う際に通常用いられる化合物であり、例えば、青酸、シアン化アルカリ金属又は有機シアニド等が挙げられ、このうちシアン化アルカリ金属が好ましく用いられる。シアン化アルカリ金属化合物としては、例えば、シアン化リチウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等が挙げられ、有機シアニドとしては、例えば、トリメチルシリルシアニド、トリブチルチンシアニド、ジメチルアルミニウムシアニド、テトラエチルアンモニウムシアニド等が挙げられる。
【0081】
溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、ジクロロメタン、トルエン、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。化合物(5)とR−NHとの反応は、−50℃〜100℃、とりわけ0℃〜20℃で好適に進行する。またシアン化化合物と反応させる工程は、−78℃〜100℃、とりわけ−20℃〜20℃で好適に進行する。
【0082】
化合物(II’)は、化合物(6)を用いて以下のように製造することができる。
【0083】
がカルボキシル基である化合物(II)及びR31がカルボキシル基である化合物(II−a)は、化合物(6)を酸又は塩基の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させて製造できる。酸としては、硫酸、塩酸等を好適に用いることができる。塩基としては、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド等を好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、ジクロロメタン、水、テトラヒドロフラン、エタノール等が挙げられる。本反応は、−30℃〜200℃、とりわけ0℃〜100℃で好適に進行する。
【0084】
がカルバモイル基である化合物(II)及びR31がカルバモイル基である化合物(II−a)は、化合物(6)を酸の存在下、溶媒中又は無溶媒中で反応させ、さらに塩基で中和することにより製造することができる。酸としては、過酸化水素、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸等を好適に用いることができる。塩基としては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム等を好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、トルエン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、アセトン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、キシレン、メシチレン、tert−ブチルメチルエーテル等が挙げられる。本反応は、0℃〜100℃、とりわけ30℃〜50℃で好適に進行する。
【0085】
上記反応において、酸として過酸化水素水、塩基として炭酸カリウム及び溶媒としてジメチルスルホキシドの組み合わせが好ましい。
【0086】
本明細書に用いられる化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、化合物(4)、化合物(5)、化合物(6)及び化合物(II’)については、不斉炭素に基づく光学異性体が存在し、ラセミ体、光学異性体のいずれであってもよいが、光学的に活性な(+)−ビオチンのみが生物学的に活性があることから、本方法により(+)−ビオチンに効率よく導くためには、以下の各光学活性体が好ましい。また、化合物(II’−a)のR31がカルボキシル基である化合物は、化合物(II−c)である。
【0087】
【化29】


式中、記号は前記と同一の意味を有する。
【0088】
また化合物(4)は、ヘテロサイクルズ(Heterocycles),18巻,259−263頁,1982年等に記載の公知の製法又はそれらに準じた製法によって製造できるが、例えば以下のようにして製造することもできる。
【0089】
【化30】


式中、記号は前記と同一の意味を有する。
【0090】
化合物(11)は、システインとトリホスゲン(又はホスゲン、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸アルキル等)とを塩基(水酸アルカリ金属、炭酸アルカリ金属、炭酸水素アルカリ金属等)の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させ、さらにエタノールと活性化剤(チオニルクロリド、硫酸、塩化水素、オキサリルクロリド等)の存在下、反応させて製造できる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、水、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等が挙げられる。本反応は、−20℃〜100℃、とりわけ0℃〜40℃で好適に進行する。
【0091】
化合物(12)において、Rが水素原子以外の置換基を有する化合物は、化合物(11)とR−X(Rのクロリド、ブロミド等)とを塩基の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させて製造できる。塩基としては、炭酸アルカリ金属、水素化アルカリ金属、アルカリ金属アミド等を好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。本反応は、−20℃〜100℃、とりわけ15℃〜35℃で好適に進行する。
【0092】
化合物(4)は、化合物(12)を還元剤の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させて製造できる。還元剤としては、水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム、水素化リチウムアルミニウム、Red−Al、DIBAL(ジイソブチルアルミニウムヒドリド)、水素化ほう素カルシウム、水素化ほう素亜鉛等を好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、エタノール、メタノール、水、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。本反応は、−78℃〜50℃、とりわけ−20℃〜20℃で好適に進行する。
【0093】
また化合物(5)は、J.Am.Chem.Soc.,112巻,7050−7051頁,1990年等に記載の公知の製法又はそれらに準じた製法によって製造できるが、例えば以下のようにして製造することもできる。
【0094】
【化31】


式中、記号は前記と同一の意味を有する。
【0095】
化合物(13)は、化合物(3)とエタンチオールとを、活性化剤の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させて製造できる。活性化剤としては、DCC、EDC・HCl(1−〔3−(ジメチルアミノ)プロピル〕−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)、クロロ炭酸エステル類、イソシアヌリッククロリド、CDI(カルボニルジイミダゾール)等を好適に用いることができる。本反応において、さらにDMAP(1,4−ジメチルアミノピリジン)を添加すると反応が迅速に進行するため好ましい。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。本反応は、−50℃〜100℃、とりわけ0℃〜20℃で好適に進行する。
【0096】
化合物(5)は、化合物(13)を還元剤及び触媒の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させて製造できる。還元剤としては、トリエチルシラン、トリクロロシラン、トリフェニルシラン等のシラン類等を好適に用いることができる。触媒としては、水酸化パラジウム、パラジウム炭素、パラジウムブラック等のパラジウム触媒等を好適に用いることができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、ジクロロメタン、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。本反応は、−20℃〜100℃、とりわけ0℃〜20℃で好適に進行する。
【0097】
また最終目的物であるビオチンは、化合物(I)又は化合物(II−a)を化合物(III)へ変換し、次いで特開平8−231553号、特開2000−191665号、ケミカル・レビューズ(Chemical Reviews),97巻,6号,1755−1792頁,1997年等に記載の公知製法又はそれらに準じた製法によって製造できるが、例えば以下のようにして製造することもできる。
【0098】
【化32】

【0099】
式中、Xはハロゲン原子、Rはエステル化されたカルボキシル基又はアミド化されたカルボキシル基を表し、他の記号は前記と同一意味を有する。
【0100】
さらに化合物(I)においてRがシアノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオカルボニル基又は置換基を有していてもよいカルバモイル基である場合、Rのカルボキシル基(化合物(I−a))への変換は、常法により、例えば泉屋信夫他著、「ペプチド合成の基礎と実験」(丸善(株)1985年)や、グリーン他(Greene)著「プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)」第2版(ジョーン・ウィリー・アンド・サンズ社1991年)に記載された方法又はそれらに準じた方法で、加水分解により実施できる。具体的には、例えば、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属アルコキシド等の塩基、鉱酸(塩酸、硫酸等)等の酸を用いた加水分解によって、カルボキシル基に変換することができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、酢酸、水、エタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン等が挙げられる。本加水分解反応は、0℃〜200℃、とりわけ50℃〜80℃で好適に進行する。
【0101】
化合物(III)は、化合物(II−b)を酸素の不存在下、例えば、窒素又はアルゴン等の気流下、溶媒中若しくは無溶媒で環変換及び環化するか、又は化合物(I−a)若しくは化合物(IV−a)を、溶媒中若しくは無溶媒で環化及びエピ化することにより製造できる。
【0102】
化合物(II−b)の環変換及び環化の工程に用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。本反応は、0℃〜200℃、とりわけ80℃〜100℃で好適に進行する。
【0103】
本明細書における化合物(I−a)若しくは化合物(IV−a)の環化及びエピ化は、環化してからエピ化する工程(化合物(III−a)を経由する工程)及びエピ化してから環化する工程(化合物(I−a’)を経由する工程)のいずれの工程も含むものである。
【0104】
化合物(I−a)若しくは化合物(IV−a)の環化工程は活性化剤の存在下、好適に実施することができる製造できる。活性化剤としては、DCC、EDC・HCl、シアヌリッククロリド等を好適に用いることができる。また環化工程は、必要に応じ、下記エピ化工程で用いられる塩基の存在下に実施することができる。エピ化工程は、塩基の存在下、或いは添加物なしで加熱のみにより好適に実施することができる。塩基としては、ピリジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)、トリエチルアミン等の有機塩基等を好適に用いることができる。またエピ化工程は、必要に応じ、酸(p−トルエンスルホン酸、塩化水素等)の存在下に実施することができる。
【0105】
環化及びエピ化工程に用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、ピリジン、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、エタノール等が挙げられる。本反応は、−20℃〜120℃、とりわけ0℃〜70℃で好適に進行する。
【0106】
化合物(VI)は、化合物(III)と化合物(V)を触媒の存在下、溶媒中又は無溶媒で反応させ、その後加水分解させることにより製造できる。触媒としては、水酸化パラジウム、パラジウム炭素、酸化パラジウム、パラジウムブラック、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム等を好適に用いることができる。加水分解反応は、水又は酸(p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸等)の存在下に好適に実施することができる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン等が挙げられる。本反応は、−20℃〜200℃、とりわけ30℃〜50℃で好適に進行する。
【0107】
ビオチン(VII)は、化合物(VI)を溶媒中又は無溶媒で還元後、加水分解し、さらに化合物(VI)のR及び/又はRが水素原子以外の基である場合、該R及び/又はRを水素原子へ変換(保護基の脱保護反応)させることにより製造できる。
【0108】
還元反応は、例えば水酸化パラジウム、パラジウム炭素、パラジウムブラック、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、酸化パラジウム等の触媒の存在下、水素添加することにより好適に実施できる。加水分解反応は、例えば水酸化ナトリウム等の塩基を用いることにより好適に実施できる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。本反応は、0℃〜200℃、とりわけ50℃〜80℃で好適に進行する。
【0109】
さらに化合物(VI)のR及び/又はRが、水素原子以外の基である場合、該R及び/又はRを水素原子へ変換させる工程(保護基の脱保護反応)は、常法により、例えばグリーン他(Greene)著「プロテクティブ グループス イン オーガニックシンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)」第2版(ジョーン・ウィリー・アンド・サンズ社1991年)に記載された方法又はそれに準じた方法により行うことができる。具体例としては、臭化水素酸等のハロゲン化水素酸で処理するか、又はメシチレンと酸(メタンスルホン酸、硫酸、酢酸等)とで処理することにより、好適に実施できる。溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えば、水、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン等が挙げられる。本反応は、0℃〜200℃、とりわけ80℃〜100℃で好適に進行する。
【0110】
本明細書において用いられる、或いは得られる化合物(I)、化合物(I−a)、化合物(I−b)、化合物(II)、化合物(II’)、化合物(II−a)、化合物(II−b)、化合物(II−c)、化合物(III)、化合物(III−a)、化合物(IV)、化合物(IV−a)、化合物(VI)、化合物(6)又は化合物(6−a)で示される化合物の塩としては、例えば、無機塩(塩酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩など)或いは有機酸(酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、蓚酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トシル酸塩など)との塩が挙げられる。さらに本発明の化合物がカルボン酸などの酸性基を有している場合、本発明の化合物は、例えば無機塩基(ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩など)或いは有機塩基(トリエチルアミン塩、リシン塩の如きアミノ酸塩など)との塩を形成していてもよい。遊離体と塩とは、公知の方法或いはそれに準じる方法により相互に変換することができる。
【実施例】
【0111】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0112】
実施例1
(1)亜鉛末92.8gをテトラヒドロフラン180mlとトルエン120mlの混合液にけん濁し、10℃〜37℃にて臭素58gを15分間で加えた後、15分間で50℃まで溶液を昇温した。溶液に5−ヨード吉草酸エチルエステル186.4gを50℃〜55℃で3。5時間で滴下した。
(2)実施例1−(1)で得た溶液を30℃まで冷却した後、トルエン360ml、(3aS,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン176g及びパラジウム触媒(デグサ社製;E 1002 NN/D 10%Pd)4.8gのN,N−ジメチルホルムアミド44mlけん濁液を順次加え、28℃〜40℃で17時間攪拌した。溶液に塩酸(濃塩酸157ml+水184ml)を10℃〜30℃で加え、20℃で1時間攪拌した。溶液をろ過した後、ろ液を40分間で40℃まで昇温し、分液した。有機層を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、亜硫酸ナトリウム水溶液、水の順に洗浄して、濃縮した。残さにトルエンを加え、さらに濃縮した。残渣をメタノール67mlに溶解した後、活性炭6.7gを加え攪拌し、ろ過した。残さをメタノール67mlで洗浄し、ろ液と合して次の工程に用いた。
上記反応で得た生成物を一部けん化して(5Z)−5−[(3aS,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イリデン]ペンタン酸として下記条件にてHPLCで定量することにより、上記反応で得た(5Z)−5−[(3aS,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イリデン]ペンタン酸エチルエステルを220g得たことを確認した。
【0113】
(HPLC条件)
カラム:L−カラムODS(4.6×150mm)(島津製作所社製)、移動層:アセトニトリル/ニ燐酸水素カリウム(pH3)=40/60、流速:1.0ml/min、UV検出:254nm、カラム温度40℃
(3)実施例1−(2)で得たメタノール溶液88mlをメタノール313ml、水110ml、パラジウム触媒(デグサ社製;E 106 NN/W 5% Pd)9.06gを加え、水素圧9khPa、内温110℃で16時間攪拌した。溶液を冷却後、触媒をろ過し、メタノール350mlで洗浄した。ろ液に水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム14.6g+水55ml)を加え、50℃で1時間攪拌した。溶液に30℃以下で10%塩酸をpH7になるまで加えた後、濃縮した。残さにトルエンを加え、さらに濃縮した。残さをトルエン300mlに溶解した後、40℃で加温しながら、10%塩酸、水で洗浄した。有機層を下記条件にてHPLCで定量することにより、上記反応で得た(3aS,4S,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−ペンタン酸を52g得たことを確認した。
【0114】
(HPLC条件)
カラム:L−カラムODS(4.6×150mm)(島津製作所社製)、移動層:アセトニトリル/ニ燐酸水素カリウム(pH3)=40/60、流速:1.0ml/min、UV検出:254nm、カラム温度40℃
(4)実施例1−(3)で得たトルエン溶液を濃縮した後、メシチレンで置換濃縮した。残さをメシチレン166mlに溶解し、メタンスルホン酸108mlを加え、133℃で1時間攪拌した。溶液を80℃まで冷却し、酢酸15mlを加え、当該溶液を精製水1040mlに30℃以下で滴下した。溶液を氷冷1時間後、析出した結晶をろ取し、水及びアセトンで洗浄し、減圧乾燥することにより粗ビオチン25.7gを得た。
粗ビオチン24.6gを水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム4.42g+水330ml)に溶解し、50℃〜60℃にて希塩酸を用いてpH8.5に調整した。溶液に50℃〜60℃にて活性炭16gを加え、10分間攪拌した後、ろ過した。ろ液を90℃〜95℃に加熱して、濃塩酸で溶液をpH1.8−2.2に調整し、中和晶析を行った。同温で30分間攪拌し、育晶する。溶液を徐冷、氷冷後、析出した結晶をろ別した。結晶を50℃で終夜送風乾燥を行うことにより、(+)−ビオチン22.4gを得た。
【0115】
参考例
参考例1
(1)(4R)−3−ベンジル−4−ヒドロキシメチルチアゾリジン−2−オン20gをジメチルスルホキシド45mlに室温下溶解し、ピリジン1.45ml、トリフルオロ酢酸1.38ml、酢酸エチル30mlを順に加えた。25℃にてジシクロへキシルカルボジイミド22.2g及び酢酸エチル15mlを加え、50℃で3時間攪拌する。反応液に酢酸エチル100mlを加え、10℃以下で30分間攪拌し、析出物をろ別した。ろ液を食塩水(飽和食塩水:水=1:1)で洗浄し、水層をさらに酢酸エチルで抽出した。有機層を合し、食塩水(飽和食塩水:水=1:1)で洗浄し、乾燥、濃縮することにより、(4R)−2−オキソ−3−ベンジルチアゾリジン−4−カルバルデヒドを得た。
(2)参考例1−(1)で得た化合物をジクロロメタン50mlに溶解し、20℃〜25℃にて、硫酸マグネシウム5gを加える。5℃以下にて、溶液にベンジルアミン4.89mlを加え、20℃〜25℃で1時間30分攪拌した。溶液を−5℃へ冷却した後、シアン化ナトリウム4.39g及び酢酸5.1mlの水溶液15mlを、−5℃〜0℃で加えた。次いで溶液を20℃〜25℃へ4時間かけて昇温した後、12時間攪拌した。溶液にジクロロメタン50mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び水で洗浄した。有機層を乾燥、濃縮することにより、(4R)−4−[1−(N−ベンジルアミノ)−1−シアノメチル]−3−ベンジルチアゾリジン−2−オンのsyn体及びanti体の混合物13.47gを淡黄色結晶として得た。混合物の光学純度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析してみると、syn体:anti体=14:1の割合であった。
(HPLC条件)
カラム:L−カラムODS(4.6x150mm)〔島津製作所製〕、移動層:0.01M KHPO(pH=3)/アセトニトリル=50/50、流速:0.5ml/minl、UV検出:225nm、カラム温度:40℃。
syn体:
融点:124−125℃
〔α〕25:+46.1°(C=1.0、クロロホルム)
光学純度(HPLC):99%ee
(HPLC条件)
カラム:キラルセルAD−H(4.6x250mm)〔ダイセル化学工業社製〕、移動層:エタノール/n−ヘキサン=10/90、流速:0.8ml/min、UV検出:225nm、カラム温度:40℃
anti体:
MS・APCI(m/z):338[(M+H)]。
(3)参考例1−(2)で得た化合物をトルエン30mlに懸濁し、氷冷下、水1.44ml及び濃硫酸14.8mlを加え、40℃で24時間攪拌した。30℃以下で、溶液に水7ml、アセトン39ml、水45mlを順に加えた。次いで、40℃以下で、溶液に濃アンモニア水45mlを加え、25℃で30分間攪拌した。析出晶をろ取し、アセトン、水、アセトンの順で洗浄し、乾燥することにより、(4R)−4−[(1R)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−カルバモイルメチル]−3−ベンジルチアゾリジン−2−オン12.6gを淡黄色結晶として得た。
融点:194−195℃
ESI・MS(m/z):356(M+1)
〔α〕20:−38.8°(C=0.45、N,N−ジメチルホルムアミド)。
【0116】
参考例2
(4R)−4−[(1R)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−カルバモイルメチル]−3−ベンジルチアゾリジン−2−オン100gをN,N−ジメチルホルムアミド200mlに溶解し、窒素気流下、85℃で5時間攪拌した。90℃〜95℃で、溶液に35%塩酸200mlを滴下し、1時間15分攪拌した。さらに、35%塩酸100mlを滴下し、2時間攪拌した。次いで、85℃で水200mlを滴下した。溶液を氷冷して、析出晶をろ取し、水で洗浄後、50℃で17時間乾燥することにより、(4R,5R)−1,3−ジベンジル−2−オキソ−5−(メルカプトメチル)イミダゾリジン−4−カルボン酸93.1gを無色結晶として得た。
融点:159−160℃
ESI・MS(m/z):357(M+1)
〔α〕20:+48.8°(C=0.62、N,N−ジメチルホルムアミド)。
【0117】
参考例3
(4R,5R)−1,3−ジベンジル−2−オキソ−5−(メルカプトメチル)イミダゾリジン−4−カルボン酸30g、ピリジン22.7g、トリフルオロ酢酸2.6mlのクロロホルム240ml溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド17.4gのクロロホルム60ml溶液を5℃にて30分間で滴下した。溶液を5時間還流した後、減圧濃縮した。酢酸エチルにて2回置換濃縮した後、残渣に酢酸エチル300mlを加え、50℃で30分間攪拌した。25℃まで冷却後、不溶物をろ別した。ろ液を濃縮した後、メタノール85mlを加え加熱溶解した。溶液を冷却後、析出晶をろ取し、冷メタノールにて洗浄した。析出晶を50℃にて送風乾燥することにより、(3aS,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン21.3gを無色結晶として得た。
融点:122−123℃
〔α〕25:+90.5°(C=1.0、クロロホルム)。
【0118】
参考例4
窒素雰囲気下、亜鉛末30.4gをテトラヒドロフラン55mlに懸濁し、トリメチルシリルクロリド3.5mlを加え、15分間攪拌した。40℃に加熱後、5−ヨード吉草酸エチルエステル102.9gの滴下を開始した。滴下と同時に発熱するが、60℃〜65℃を維持するよう滴下を続けた。滴下終了後、テトラヒドロフラン5mlで洗浄し、55℃の外浴に漬け攪拌を続け(滴下と攪拌の総時間:50分間)、高速液体クロマトグラフィーで5−ヨード吉草酸エチルエステルの消失を確認後、23℃まで冷却した。そこへトルエン125ml、(3aS,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン52.5g、10%水酸化パラジウム炭素1.09g、トルエン50ml、N,N−ジメチルホルムアミド11.5mlを順に加えて24℃〜35.5℃で50分間攪拌した。反応液を活性炭12gとセライト32.5gを用いろ過し、テトラヒドロフラン200mlで洗浄した。ろ液および洗液を合し、2M塩酸で洗浄後、水洗し、濃縮した。濃縮残さをトルエン390mlに溶解し、p−トルエンスルホン酸・一水和物2.95gを加え、20℃〜25℃で1時間半攪拌した。40℃〜45℃で溶媒を約100ml留去し、残りを水、チオ硫酸ナトリウム水溶液、水の順に洗浄し、さらに濃縮して、(5Z)−5−[(3aS,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イリデン]ペンタン酸エチルエステル60.6gを油状物として得た。
【0119】
参考例5
精製水400ml、20%水酸化パラジウム炭素(50%ウェット)12.85g、(5Z)−5−[(3aS,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−イリデン]ペンタン酸エチルエステル249.5gのメタノール900ml溶液の順に加え、水素490kPaで3回置換した。さらに6.5℃で627kPa水素圧をかけ、500rpmで攪拌した。加熱開始後50分で92.5℃、843kPa、4時間後には、117℃、921kPa、11時間後には、116℃、853kPaとなっていたので、882kPaまで水素をチャージした。24時間後、115℃、892kPaで反応液を冷却し、メタノールで洗いこみ、触媒をろ過した。濾液を濃縮し、残渣にトルエン400mlを加え置換濃縮を外浴65℃で3回行った。上記残渣にメタノール1206ml、水402ml及び水酸化ナトリウム53.3gを加え、40℃で2時間攪拌した。反応液に10%塩酸水300gを加え、pHを7に中和し、活性炭6gを加え、室温で40分間攪拌した。反応液を活性炭6gでプレコートろ過した。メタノールを減圧留去し、酢酸エチル600mlを加える。10%塩酸水を加え抽出(水層のpHは0.7)し、有機層を10%食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウで乾燥後、ろ過した。抽出液を減圧濃縮し、酢酸エチルが飛ばなくなったらメシチレン170mlで2回置換濃縮し、(3aS,4S,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−ペンタン酸170.1gを無色油状物として得た。
【0120】
参考例6
(3aS,4S,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−2−オキソ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−4−ペンタン酸3.0g及び48%臭化水素酸24mlの混合物を、110℃〜120℃で48時間加熱還流した。トルエン10mlで熱時抽出を4回行い、ベンジルブロミドを除去した。水層を濃縮し、残さに水15ml及び6M水酸化ナトリウム水溶液11.5mlを加え、続いてエトキシカルボニルクロリド3.36gを滴下し、pHを8〜10に保ち、室温で3時間反応を行った。その後、反応液を70℃〜80℃に昇温し、20時間反応を行った(この間、6M水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12に保つ)。16%塩酸7mlでpHを7.4〜7.8に調整し、90℃〜95℃で活性炭1.0gを用いてろ過を行った。ろ液を80℃〜85℃まで加熱し、16%塩酸6mlを用いてpH1.8〜2.2に調整し、中和晶析を行った。冷却後、ろ取して水洗し、50℃で送風乾燥して、(+)−ビオチン1.38gを無色結晶として得た。
【0121】
参考例7
(1)(4R)−3−ベンジル−4−ヒドロキシメチルチアゾリジン−2−オン79.3gを参考例1−(2)と同様に処理して、析出した結晶をろ別した後、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:クロロホルム:酢酸エチル=5:5:1)で精製し、(4R)−4−[(1S)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−シアノメチル]−3−ベンジルチアゾリジン−2−オン9.3gを得た。
融点:131−132℃
〔α〕23:−174.7°(C=1.0、クロロホルム)
MS・APCI(m/z):338[(M+H)]。
(2)(4R)−4−[(1S)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−シアノメチル]−3−ベンジルチアゾリジン−2−オン6.0gを参考例1−(3)と同様に処理することにより、無色油状の(4R)−4−[(1S)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−カルバモイルメチル]−3−ベンジルチアゾリジン−2−オンを得た。次いで、酢酸エチルに溶解し、4M塩化水素−酢酸エチル溶液6mlを加え、析出晶をろ取して、(4R)−4−[(1S)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−カルバモイルメチル]−3−ベンジルチアゾリジン−2−オン塩酸塩4.3gを得た。
ESI・MS(m/z):356(M+1)
〔α〕23:−32.6°(C=1.0、メタノール)。
(3)(4R)−4−[(1S)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−カルバモイルメチル]−3−ベンジルチアゾリジン−2−オン塩酸塩0.541gをN,N−ジメチルホルムアミド10mlに溶かし、窒素気流下100℃で3時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え、水、飽和食塩水で洗浄後、乾燥、濃縮した。残渣をヘキサンで結晶化させ、(3aS,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン342mgを無色結晶として得た。
光学純度(HPLC):>91%ee
(HPLC条件)
カラム:キラルセルAD(4.6x250mm)〔ダイセル化学工業社製〕、移動層:エタノール/ヘキサン=15/85、流速:0.8ml/min、UV検出:225nm、カラム温度:40℃。
【0122】
参考例8
(4R,5R)−1,3−ジベンジル−2−オキソ−5−(メルカプトメチル)イミダゾリジン−4−カルボン酸20gをクロロホルム160mlに溶かし、ピリジン6.2gを加え、氷冷下、ジシクロへキシルカルボジイミド12.7gのクロロホルム40ml溶液を15℃以下で加えた。室温で1時間攪拌し、反応液に酢酸エチルを加えてろ過した。ろ液を、2M塩酸、水、飽和重曹水、および飽和食塩水で洗浄した。有機層を乾燥した後、濃縮した。残渣を酢酸エチルにて再結晶化して(3aR,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン8.0gを得た。
融点:115−116℃
〔α〕26:+10.6°(C=1.0、クロロホルム)。
【0123】
参考例9
(3aR,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン100mgをクロロホルム1mlに溶かし、ピリジン0.5mlを加え、室温で23時間攪拌した。反応液を、2M塩酸、水、飽和重曹水、および飽和食塩水で洗浄した。有機層を乾燥した後、濃縮した。イソプロピルエーテルを加えて析出した結晶をろ別し、(3aS,6aR)−1,3−ジベンジル−ヘキサヒドロ−4H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2,4−ジオン75.1mgを得た。
融点:122−123℃
〔α〕25:+90.5°(C=1.0、クロロホルム)。
【0124】
参考例10
(4R)−4−[(1R)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−カルバモイルメチル]−3−ベンジルチアゾリジン−2−オン14gのN,N−ジメチルホルムアミド39ml溶液に重曹3.96gを加え、80〜85℃にて17時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、濃縮残渣にメタノール40ml及び水20mlを加えて5℃以下で1時間攪拌した。析出晶をろ取し、メタノール80ml及び水40mlの混合液で洗浄後、50℃で17時間送風乾燥することにより、(4S,4’S,5R,5’R)−5,5’−[ジチオビス(メチレン)]ビス(1,3−ジベンジル−2−オキソイミダゾリジン−4−カルボキサミド)12.14gを淡黄色結晶として得た。
融点:208−211℃
ESI・MS(m/z):709(M+1)
〔α〕D20:+55.4 °(C=0.29、N,N−ジメチルホルムアミド)。
【0125】
参考例11
(4S,4’S,5R,5’R)−5,5’−[ジチオビス(メチレン)]ビス(1,3−ジベンジル−2−オキソイミダゾリジン−4−カルボキサミド)497mgを酢酸5mlに溶解し、亜鉛末249mgを加えて、90℃で1.5時間攪拌する。反応液に酢酸エチルを加えてセライトろ過した。ろ液を減圧濃縮後、残渣にエーテルとヘキサンを加えた。析出晶をろ取し、水およびヘキサンで洗浄後減圧乾燥することにより、(4R,5R)−1,3−ジベンジル−2−オキソ−5−(メルカプトメチル)イミダゾリジン−4−カルボキサミド482mgを無色結晶として得た。
融点:119−122℃
ESI・MS(m/z):356(M+1)
〔α〕D20:−1.2 °(C=0.33、N,N−ジメチルホルムアミド)。
【0126】
参考例12
参考例10で得た化合物12gを酢酸24mlに溶解し、亜鉛末7.2gを加えて、55〜60℃で1時間攪拌した。反応液を20℃に冷却後、濃塩酸72mlを加えて80〜90℃で2時間攪拌した。反応液に水120mlを加え、25℃まで1時間かけて冷却後、5℃以下で1時間攪拌した。析出晶をろ取後、水95mlで洗浄し減圧乾燥することにより、(4R,5R)−1,3−ジベンジル−2−オキソ−5−(メルカプトメチル)イミダゾリジン−4−カルボン酸11.05gを無色結晶として得た。
本品の物性値は参考例2のそれと一致した。
【0127】
参考例13
(4R)−4−[(1R)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−シアノメチル]−3−ベンジルチアゾリン−2−オン23.5gをジメチルスルホキシド210mlに溶解し、炭酸カリウム(微紛)1.35gを加え、さらに20℃〜25℃で30%過酸化水素水12mlを滴下した後、室温で1時間攪拌した。溶液に30%過酸化水素水をさらに12ml加え、20℃で13時間攪拌した後、室温で水210mlを加え3時間攪拌した。析出した結晶をろ取し、水及びアセトンで洗浄した後、50℃で終夜送風乾燥することにより、無色粉末の(4R)−4−[(1R)−1−(N−ベンジルアミノ)−1−カルバモイルメチル]−3−ベンジルチアゾリン−2−オン21.8gを得た。本品の物性値は、参考例1−(3)のそれと一致した。
【0128】
参考例1B
(1)水酸化ナトリウム184.0gの水0.88リットル溶液に、L−システイン一塩酸塩・一水和物175.6gを氷冷下溶解し、30℃を超えない範囲でクロロギ酸フェニル313.2gのトルエン0.35リットル溶液を滴下する。室温で2時間攪拌後、静置分液する。水層をトルエン0.35リットルで洗浄し、分液し、水層を濃縮して、(4R)−2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸139.84gを無色結晶として得た。
融点: 168−170℃
MS・APCI(m/z):148[(M+H)
〔α〕25:−62.8°(C=1.0、HO)。
(2)参考例1B−(1)で得た化合物1.47gに氷冷下、水酸化ナトリウム0.6gの水1.5ml溶液とジメチルスルホキシド4.4mlを順次加えた。そこへ室温にてベンジルクロリド2.3mlを加え、15時間攪拌した。希塩酸にて中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、不溶物を濾別し、濃縮することにより、(4R)−2−オキソ−3−ベンジルチアゾリジン−4−カルボン酸2.24gを無色結晶として得た。
融点:95−97℃
MS・APCI(m/z):238[(M+H)
〔α〕25:−102.2°(C=1.0、クロロホルム)。
(3)テトラヒドロフラン32mlに水素化ほう素ナトリウム1.53gを室温下加え、10℃に冷却した。そこへ参考例1B−(2)で得た化合物8.0gを加え、さらに硫酸2.0gのテトラヒドロフラン2ml溶液を加え、40℃〜50℃で3時間攪拌後、反応液を氷冷し、pHが1になるまで2M塩酸を加えた。反応液を酢酸エチルで希釈し、分液した。有機層を水洗、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣をジイソプロピルエーテルで結晶化し、(4R)−3−ベンジル−4−ヒドロキシメチルチアゾリジン−2−オン6.82gを無色結晶として得た。
融点:87−90℃
MS・APCI(m/z):224[(M+H)
〔α〕25:−26.7°(C=1.0、メタノール)
光学純度(HPLC):>99%ee
【0129】
(HPLC条件)
カラム:キラルセルAD(4.6x250mm)〔ダイセル化学工業社製〕、移動層:エタノール/ヘキサン=10/90、流速:0.8ml/min、UV検出:225nm、カラム温度:40℃。
(4)参考例1B−(3)で得た化合物1.0gをジメチルスルホキシド5.0mlに溶解し、室温下ジイソプロピルエチルアミン1.95mlを滴下した。反応混合物を氷冷後、12℃〜20℃で三酸化イオウピリジン錯塩1.78gを加え、同温にて30分間攪拌した。氷水30ml中に反応液を加え、酢酸エチル20mlで抽出した。水層を酢酸エチル10mlで再抽出した。酢酸エチル層を併せて10%クエン酸10mlで2回洗浄後、水10ml、飽和食塩水10mlでそれぞれ洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、(4R)−2−オキソ−3−ベンジルチアゾリジン−4−カルバルデヒド985.9mgを無色油状物として得た。
MS・APCI(m/z):222[(M+H)]。
【0130】
参考例2B
ジメチルスルホキシド2.34gをジクロロメタン22mlに溶解し、そこへ−78℃にて塩化オキサリル1.31mlを加えた。同温にて10分間攪拌後、参考例1B−(3)で得た化合物2.23gのジクロロメタン11ml溶液を−60℃以下で滴下した。−78℃で20分間攪拌後、トリエチルアミン5.58mlを−60℃以下で滴下した。1.5時間かけて反応温度を−20℃まで昇温後、反応混合物を10%クエン酸水中に加え、分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、参考例1B−(4)と同一目的物2.20gを得た。本品物性値は、参考例1B−(4)のそれと一致した。
【0131】
参考例3B
塩素532mgをジクロロメタン11mlに溶解し、−20℃〜−10℃でジメチルスルフィド0.73mlを加えた。同温にて10分間攪拌後、参考例1B−(3)で得た化合物1.12gのジクロロメタン5.5ml溶液を−25℃にて滴下した。−25℃で20分間攪拌後、トリエチルアミン2.79mlを−25〜−18℃で滴下した。−25℃で10分間攪拌後、反応混合物を10%クエン酸水中に加え、分液した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、参考例1B−(4)と同一目的物1.17gを得た。本品物性値は、参考例1B−(4)のそれと一致した。
【0132】
参考例4B
参考例1B−(3)で得た化合物447mg、4−ヒドロキシテトラメチルピペリジンオキシド6.9mg及び臭化ナトリウム206mgをジクロロメタン6ml及び水1mlの混合溶媒中に溶解し、窒素バブリングを行いながら、氷冷下、次亜塩素酸ソーダ水1.49g、重曹491mg及び水5mlの混合物をゆっくりと滴下した。一時間攪拌後、分液し、有機層をヨウ化カリウム16mg、10%硫酸水素カリウム水溶液及びハイポ水でそれぞれ洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮し、参考例1B−(4)と同一目的物147.5mgを得た。本品物性値は、参考例1B−(4)のそれと一致した。
【0133】
参考例5B
(1)水酸化ナトリウム180gの水2リットル溶液に、氷冷窒素気流下、L−システイン一塩酸塩・一水和物175.6gを溶解した。この溶液中にトリホスゲン118.7gの1,4−ジオキサン700ml溶液を25℃〜29℃で1時間30分かけて滴下し、さらに同温で3時間攪拌した。この反応混合物に濃塩酸を加え、弱酸性に調整したのち、溶媒を減圧留去した。濃縮残渣にトルエン200mlを加え再度減圧留去した。この濃縮残渣にエタノール700mlを加えた後、氷冷下で塩化チオニル131gを40分間かけて加え、室温に昇温しながら19時間攪拌した。溶媒を減圧留去後、濃縮残渣を酢酸エチル1リットルに溶解し、水700ml、飽和重曹水300ml、飽和食塩水500mlの順に洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去することにより、(4R)−2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸エチルエステル162gを油状物として得た。
MS・APCI(m/z):176[(M+H)
〔α〕25:−52.7°(C=1.0、クロロホルム)。
(2)臭化ナトリウム1.79g、N,N−ジメチルアセトアミド5ml及びベンジルクロリド1mlを23℃〜26℃で15時間攪拌し、ベンジルブロミドを得た。この溶液中へ、参考例5B−(1)で得た化合物1.27g、N,N−ジメチルアセトアミド2ml及び炭酸カリウム1.1gを加え、23℃〜30℃で93時間反応後、酢酸エチル及び10%クエン酸水を加え、水層を分離した。有機層を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して、残渣2.29gを得た。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製して、(4R)−2−オキソ−3−ベンジルチアゾリジン−4−カルボン酸エチルエステル1.67gを無色油状物として得た。
MS・APCI(m/z):266[(M+H)
〔α〕24:−96.6°(C=1.0、クロロホルム)
光学純度(HPLC):98.1%ee
【0134】
(HPLC条件)
カラム:キラルセルOD(4.6x250mm)〔ダイセル化学工業社製〕、移動層:エタノール/ヘキサン=5/95、流速:0.8ml/min、UV検出:225nm、カラム温度:40℃。
【0135】
参考例6B
(4R)−2−オキソ−3−ベンジルチアゾリジン−4−カルボン酸エチルエステル28.4gをエタノール227mlに溶解し、水素化ほう素ナトリウム2.26gを加え、室温で15時間攪拌した。さらに、水素化ほう素ナトリウム0.76gを追加し、室温で2時間攪拌した。そこへ濃塩酸を加え、pHが6〜7になるように中和したのち、溶液を濃縮した。濃縮残渣を酢酸エチルに溶解し3回水洗し、水層を酢酸エチルで1回逆抽出した。酢酸エチル層を合わせ、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮することにより油状残渣22.6gを得た。この残渣にイソプロピルエーテルを加え結晶化し、さらにろ取後、イソプロピルエーテルで洗浄後、減圧乾燥することにより、(4R)−3−ベンジル−4−ヒドロキシメチルチアゾリジン−2−オン18.4gを無色結晶として得た。本品の物性値は参考例1B−(3)のそれと一致した。
【0136】
参考例7B
(1)(4R)−2−オキソ−3−ベンジルチアゾリジン−4−カルボン酸10gをアセトニトリル200mlに溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド9.2gを室温下、加えた。続いて氷冷下溶液中に、エタンチオール3.3ml、4−ジメチルアミノピリジン670mgの順に加え、室温にて2時間攪拌した。不溶物を濾去し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、(4S)−4−エチルチオカルボニル−3−ベンジルチアゾリジン−2−オン10.8gを油状物として得た。
MS・APCI(m/z):282[(M+H)
〔α〕25:−110.8°(C=1.04、クロロホルム)。
(2)参考例7B−(1)で得た化合物0.5gをジクロロメタン5.0mlに溶解し、窒素気流下、水酸化パラジウム284mgを加えた。室温にてトリエチルシラン0.85mlを加え、同温で3時間攪拌した。不溶物を濾去し、減圧濃縮することにより、(4R)−2−オキソ−3−ベンジルチアゾリジン−4−カルバルデヒド0.5gを油状物として得た。本品の物性値は、参考例1B−(4)のそれと一致した。
【0137】
参考例8B
参考例5で得た化合物35.34g、メシチレン121ml及びメタンスルホン酸116.1gを内温130℃で加熱した。125℃到達を反応開始時間とし、128℃〜133℃で4時間攪拌し、高速液体クロマトグラフィーによりモノベンジルビオチンの消失を確認した。80℃まで反応液を冷却し酢酸30mlを加え、メタンスルホン酸層を精製水710ml中に滴下した。メシチレン層は分離し、氷冷1時間後、粗結晶を濾取し、水200ml、次いで洗液の黒色がなくなるまでメタノールで洗浄した。50℃で終夜送風乾燥することにより粗(+)−ビオチン15.89gを得た。
得られた粗(+)−ビオチンを水酸化ナトリウム2.73gの精製水160ml水溶液に溶解し、90℃〜95℃で希塩酸を用いてpHを7に調整した。90℃〜95℃で炭末4gを系中に加え、10分間攪拌後、炭末プレコートろ過を行った。濾液を90℃〜95℃に再加熱し、再び炭末4gを系中に加え、10分間攪拌後、炭末プレコートろ過を行った。濾液を80℃〜85℃に再加熱し、濃塩酸でpHを1.8〜2.2に調整し中和晶析を行った。同温で1時間攪拌し、育晶する。徐冷、氷冷後、結晶を濾過した。結晶を50℃で終夜送風乾燥を行い、(+)−ビオチン13.86gを無色結晶として得た。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明により一般式(IX)で示されるグリニャール試薬を効率的に製造できる。本発明は、化合物(IV)を合成中間体として経由するビオチンの製法又は上記の製法により製造された化合物(I)及び化合物(III)を合成中間体として経由するビオチンの製法(文献既知の製法と比べ、ビオチンを安価に製造できるため、ビオチンの工業的に有利な製法)において有利に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(VIII):
R−I (VIII)
式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいビシ
クロ基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素
原子及び硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個包含する、置換基を有していてもよ
い複素環式基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す、
で示される化合物を塩素、臭素、塩化水素または臭化水素で処理した亜鉛又はマグネシウムと反応することを特徴とする一般式(IX):
R−X−Y (IX)
式中、Xは、亜鉛又はマグネシウムを表し、Yは、ヨウ素、臭素、塩素を表す、
で示される化合物の製法。
【請求項2】
一般式(VIII):
R−I (VIII)
式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいビシ
クロ基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ヘテロ原子として窒素原子、酸素
原子及び硫黄原子から選ばれる原子を1乃至4個包含する、置換基を有していてもよ
い複素環式基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す、
で示される化合物を一般式(X):
M−Y (X)
式中、Mは、金属原子を表し、Yは、ヨウ素、臭素又は塩素を表す、
で示される塩の存在下、亜鉛又はマグネシウムと反応することを特徴とする一般式(IX):
R−X−Y (IX)
式中、Xは、亜鉛又はマグネシウムを表し、Yは、前記と同一意味を表す、
で示される化合物の製法。

【公開番号】特開2008−56690(P2008−56690A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269951(P2007−269951)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【分割の表示】特願2003−549323(P2003−549323)の分割
【原出願日】平成14年12月4日(2002.12.4)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】