説明

グリルを備えた加熱調理器における加熱容器の位置固定構造

【課題】加熱容器の底面がグリル皿に載置されることによってグリル皿の被膜が剥がれたりグリル皿が損傷するのを防止すると共に、吹きこぼれた煮汁等を拭き掃除する手入れがし易いグリルを備えたグリルを備えた加熱調理器における加熱容器の位置固定構造を提供する。
【解決手段】グリル庫10内に、加熱手段2と、加熱容器3及び該加熱容器3から吹きこぼれる煮汁等を受けるグリル皿4とを備え、加熱容器3の側面を囲む枠部51からなる位置固定部材5をグリル皿4上に載置し、加熱容器3の側面から側方に向けて突設した載置部6を前記位置固定部材5の枠部51上に載置して、加熱容器3とグリル皿4とが接触しない状態で加熱容器3を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルを備えた加熱調理器における加熱容器の位置固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、グリルを備えた加熱調理器が普及しており(例えば特許文献1参照)、このグリルを備えた加熱調理器にあっては、グリル庫内に焼き網を配置すると共に焼き網の下方に煮汁等を受けるグリル皿を配置し、グリル庫内に設けたガスバーナ等の加熱手段によって焼き網上に載置された魚等の調理物の焼き調理を行うことができるようになっている。また、調理物を入れた加熱容器をグリル庫内に入れてオーブン調理を行う加熱調理器も知られており、この加熱調理器にあっては、グリル庫内に煮汁等を受けると共に加熱容器を載置するグリル皿を配置し、調理物を入れた加熱容器を前記グリル皿に載置して、グリル庫内に設けたガスバーナ等の加熱手段によって加熱容器を加熱してオーブン調理を行うものである。
【特許文献1】特開2005−207667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した加熱容器を入れてオーブン調理を行うグリルを備えた加熱調理器にあっては、加熱容器をグリル皿に載置するのであるが、この時、加熱容器のグリル皿に載置する位置が決まっていないと、加熱容器の位置が調理の都度異なってしまい、庫内温度分布・昇温速度が一定にならないといった問題が生じるため、特願2006−288363における発明のようにグリル皿に載置する加熱容器の位置固定手段を備えたものが考えられた。このものにあっては、グリル皿に加熱容器の底面が嵌入される凹部を形成したり、あるいはグリル皿上に複数の線材を並設してなる加熱容器受けを備えてこの加熱容器受けに加熱容器の底面が嵌入される凹部を形成することで、加熱容器の位置固定が行われるものである。しかしながら、前者のグリル皿に加熱容器の底面が嵌入される凹部を形成したものにあっては、加熱容器の底面とグリル皿の上面とが直接接触するものであるため、前記接触を繰り返すうちにグリル皿の表面に施した皮膜が剥がれてしまったりグリル皿が損傷してしまう、という問題があった。
【0004】
そこで、後者のように加熱容器とグリル皿との間に加熱容器受けを介在させることで、加熱容器の底面とグリル皿の上面とが直接接触するのを防止して、グリル皿の表面に施した皮膜が剥がれたりグリル皿が損傷するのを防止することが可能となる。
【0005】
しかしながら、加熱容器とグリル皿との間に加熱容器受けを介在させるものにあっては、加熱容器底面の高さ方向の位置は、グリル皿の煮汁受け部の底面の位置よりも加熱容器受けの線材厚みに相当する寸法ほど高くなって、加熱容器受けの線材厚みに相当する寸法ほど、加熱容器使用時のグリル庫内の有効高さが低くなってしまうものであり、また、加熱容器から吹きこぼれた煮汁等が加熱容器受けの複数の線材に付着してしまい、手入れとして複数の線材を一つずつ拭き掃除によりに清浄にする必要があり、手入れが面倒なものであった。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、加熱容器の底面がグリル皿に載置されることによってグリル皿の被膜が剥がれたりグリル皿が損傷するのを防止すると共に、吹きこぼれた煮汁等を拭き掃除する手入れがし易く、更に、加熱容器使用時のグリル庫内の有効高さが低くなるのを防止することができるグリルを備えた加熱調理器における加熱容器の位置固定構造を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、グリル庫10内に、加熱手段2と、加熱容器3及び該加熱容器3から吹きこぼれる煮汁等を受けるグリル皿4とを備え、加熱容器3の側面を囲む枠部51からなる位置固定部材5をグリル皿4上に載置し、加熱容器3の側面から側方に向けて突設した載置部6を前記位置固定部材5の枠部51上に載置して、加熱容器3とグリル皿4とが接触しない状態で加熱容器3を支持して成ることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、加熱容器3が位置固定部材5を介してグリル皿4に載置されて、グリル皿4と加熱容器3とが直接接触することがなくて、グリル皿4の被膜が剥がれたりグリル皿4が損傷するのを防止すると共に、位置固定部材5に煮汁等が付着しても拭き掃除による手入れがし易いものであり、更に、加熱容器3の側面に載置部6を突設して位置固定部材5の枠部51上に載置することで、加熱容器3の底面の煮汁受け部からの高さが僅かな距離となるように載置部6を設ける高さ位置を調節して、加熱容器使用時のグリル庫10内の有効高さが低くなるのを防止することができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、位置固定部材5の複数箇所から下方に向けて位置決め部55を突設すると共に、グリル皿4に前記位置固定部材5を載置した時に前記位置決め部55が位置する部分に該位置決め部55が挿入される位置決め孔44を形成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
このような構成とすることで、位置固定部材5をグリル皿4に対して位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、加熱容器がグリル皿に直接接触することによってグリル皿の被膜が剥がれたりグリル皿が損傷するのを防止すると共に、吹きこぼれた煮汁等を拭き掃除する手入れがし易いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0013】
本発明の加熱調理器1は本体内部にグリル庫10を備えている。グリル庫10は、内部の天井近傍に上火バーナ21と、左右側面に下火バーナ22とを加熱手段2として備えると共に、グリル皿4と、グリル皿4上に載置される加熱容器3と、を備えている。加熱容器3としては、本実施形態では、厚手の鋳鉄や陶器のような熱容量の大きな材質のものを用いて、加熱容器本体31及び該加熱容器本体31の上開口を閉塞する容器蓋32とを備えた所謂ダッチオーブンとするが、他の容器であってもよい。
【0014】
グリル庫10の前面にはグリル開閉を行うグリル扉11が設けられている。グリル扉11にはグリル皿4を載せるためのグリル皿受け12が一体に取付けられており、グリル扉11を把手13により前方に引出すことにより、グリル皿4上に置かれている加熱容器3を取り出すことができる。グリル扉11中央には、庫内確認用覗き窓14が取り付けられている。
【0015】
下火バーナ22の直上には、下火カバー15が取り付けられている。
【0016】
加熱容器3を使用しないときは、図9に示すようにグリル焼網を導入できるように構成されている。図9中の符号18はグリル皿4上に載置される脚部18aを備えたグリル焼き網、符号19は魚等の調理物である。
【0017】
グリル庫10の後方には排気通路16が設けられており、上下バーナからの燃焼ガスが排気通路16を経由して上方に導かれ、排気口カバー17を通過して外部に排出されるように構成されている。排気通路16の上部、下部には、それぞれ温度センサ(図示せず)が配設されており、各部の排気温度上昇速度を検知して加熱制御を可能とするように構成されている。
【0018】
グリル皿4は、本実施形態では平面視略矩形状をして上方に開口する上下高さの低い箱状をした箱状本体41と、箱状本体41の上端開口縁から外側方へと連設されて外郭が平面視略矩形状となるフランジ部42と、フランジ部42の周縁から下方に垂下される垂下部43とからなり、箱状本体41の底面が煮汁が溜まる煮汁受け部となる。また上述したグリル皿受け12は、線材を平面視において前記グリル皿4の垂下部43よりも若干小さい略矩形の枠状に形成したもので、グリル皿4の箱状本体41を前記枠状のグリル皿受け12内に上方から挿入して、グリル皿4のフランジ部42をグリル皿受け12に載置し、グリル皿4の垂下部43をグリル皿受け12の外周に沿って位置させることで、グリル皿4のグリル皿受け12に対する位置固定が行われる。
【0019】
そして本発明においては、加熱容器3が載置されて該加熱容器3の位置固定を行う位置固定部材5が設けられる。
【0020】
位置固定部材5は、グリル皿4のフランジ部42に載置されると共に加熱容器3が載置される平面視略矩形状をした枠部51で主体が構成されるもので、本実施形態では断面が上下に長い偏平した形状の線材からなり、加熱容器3の側面を外側から囲むことができる寸法形状の略矩形状の枠部51とし、グリル皿4の短辺側のフランジ部42に前記枠部51の短辺側の枠部51aが載置される。また、一方の短辺側の枠部51a(本実施形態では手前すなわちグリル扉11側の枠部51)の内側近傍には、両側の長辺側の枠部51b間に短辺側の枠部51aと平行に該枠部51と同様の線材からなる架設片52が架設してある。そして、もう一方の短辺側の枠部51a(本実施形態では奥側の枠部51)と、架設片52と、両側の長辺側の枠部51bとに、加熱容器3に形成してある載置部6が載置される被載置部53が設けてある。
【0021】
また位置固定部材5には、グリル皿4に対して位置決めを行なう位置決め部55が設けてある。位置決め部55は、枠部51の複数箇所から下方に向けてそれぞれ突出するピン状のもので、グリル皿4のフランジ部42の対応する位置、即ち、グリル皿4の短辺側のフランジ部42に前記位置固定部材5の枠部51の短辺側の枠部51aを載置した時に前記位置決め部55が位置する部分にそれぞれ形成してある位置決め孔44に挿入されて位置決めが行われる。本実施形態では、手前側の短辺側の枠部51aに、該枠部51と同様の線材を側面視において略半円弧状となるように形成した弧状部材54の両端部が枠部51から若干下方に突出するように枠部51の内側に溶接により固定してあり、前記弧状部材54の両端部の枠部51から若干下方に突出する部分が位置決め部55となっていると共に、前記弧状部材54の枠部51よりも上側の部分を把持部56として利用することができ、一つの弧状部材54にて位置決め部55と把持部56とを兼用するものである。
【0022】
なお、位置決め部55は、枠部51から下に突出する部分の長さをそれぞれ異ならせてあり、これにより、位置決め部55が位置決め孔44に正しく挿入されず、位置決め部55の先端がグリル皿4のフランジ部42上に載置された時に、位置固定部材5が傾いて、使用者が誤セットに気付き易いようにしてある。
【0023】
加熱容器3は、本実施形態では平面視略楕円形状をしていて、その長軸が位置固定部材5及びグリル皿4の長辺側に沿うようにして、側面に形成してある載置部6が、位置固定部材5の奥側の短辺側の枠部51a及び架設片52の中央部と、両側の長辺側の枠部51bの前記奥側の短辺側の枠部51aと架設片52との間の中央部とに設けてある被載置部53に載置され、位置決めされた状態で係止される。加熱容器3の載置部6は、加熱容器3の側面から側方に向けて突出していて、その略下方向きの面が位置固定部材5の枠部51に載置される載置面61となるもので、略楕円状をした加熱容器3の長軸及び短軸と交わる部分にそれぞれ形成してある。図中の符号33はそれぞれ加熱容器本体31及び容器蓋32に設けた把手である。
【0024】
この加熱容器3にて調理を行うには、まず、グリル扉11を開いてグリル皿受け12に載せているグリル皿4を引き出し、グリル皿4の位置決め孔44に位置決め部55を挿入してグリル皿4のフランジ部42に載置されている位置固定部材5の枠部51内に、上方より加熱容器本体31を挿入して、加熱容器3の側面に突出する載置部6の載置面61を位置固定部材5の枠部51の被載置部53に載置し、位置固定部材5により加熱容器3を支持して、グリル扉11を閉じてオーブン調理を行うものである。
【0025】
上記のような構成においては、加熱容器3とグリル皿4との間に位置固定部材5が介在することとなって、グリル皿4と加熱容器3とが直接接触することがなくて、グリル皿4の被膜が剥がれたりグリル皿4が損傷するのを防止すると共に、位置固定部材5に煮汁等が付着しても拭き掃除による手入れがし易いものである。
【0026】
また、従来例のようにグリル皿4の煮汁受け部上に加熱容器受けを位置させて該加熱容器受け上に加熱容器3の底面を載置するのではなく、加熱容器3の側面に設けた載置部6を位置固定部材5の被載置部53に載置するものであるため、加熱容器3の底面のグリル皿4の煮汁受け部からの高さ位置は、加熱容器3の側面に設ける載置部6の高さ位置を調節することで任意に設定することができ、加熱容器3の底面の煮汁受け部からの高さを僅かな距離(少なくとも従来の加熱容器受けの線材の厚みより小さい距離)とすることで、加熱容器使用時のグリル庫10内の有効高さが低くなるのを防止することができるものである。
【0027】
なお、グリル庫10内を加熱する熱源は、ガス、電気等特に限定されないものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態の側断面図である。
【図2】同上の正面断面図である。
【図3】同上においてグリル皿上に位置固定部材を介して加熱容器を載置した状態の平面図である。
【図4】同上のグリル皿を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【図5】同上の位置固定部材を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は側面図である。
【図6】同上の加熱容器の斜視図である。
【図7】同上の加熱容器本体を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図8】同上の容器蓋を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図9】グリル皿にグリル焼き網を載置する場合の正面断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 加熱調理器
10 グリル庫
11 グリル扉
12 グリル皿受け
16 排気通路
2 加熱手段
3 加熱容器
31 加熱容器本体
32 容器蓋
4 グリル皿
44 位置決め孔
5 位置固定部材
51 枠部
6 載置部
61 載置面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫内に、加熱手段と、加熱容器及び該加熱容器から吹きこぼれる煮汁等を受けるグリル皿とを備え、加熱容器の側面を囲む枠部からなる位置固定部材をグリル皿上に載置し、加熱容器の側面から側方に向けて突設した載置部を前記位置固定部材の枠部上に載置して、加熱容器とグリル皿とが接触しない状態で加熱容器を支持して成ることを特徴とするグリルを備えた加熱調理器における加熱容器の位置固定構造。
【請求項2】
位置固定部材の複数箇所から下方に向けて位置決め部を突設すると共に、グリル皿に前記位置固定部材を載置した時に前記位置決め部が位置する部分に該位置決め部が挿入される位置決め孔を形成して成ることを特徴とする請求項1記載のグリルを備えた加熱調理器における加熱容器の位置固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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