説明

ケア油による繊維製品の仕上げ方法

本発明は、ケア油による繊維製品の仕上げ方法に関する。本発明によると、20℃で測定したブルックフィールド粘度が200mPas未満であって、(a)水、(b)一以上のケア油、および(c)一以上の乳化剤を含有する水性エマルジョンを繊維製品に適用し、但し、水性エマルジョンを噴霧によって繊維製品に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(皮膚)ケア油による繊維製品の仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維製品に皮膚ケア特性を付与する油混合物を用いた高品質繊維製品の仕上げがますます行われてきている。この油混合物は、織編布を通して取り込まれると保湿、平滑化または再脂化特性を皮膚へ付与し得る。繊維製品を油混合物で工場仕上げを行うためには、油混合物は通常、繊維製品の溶液中でさらに希釈された水性エマルジョンの形態で用いられる。次いで、この水性液を、例えば繊維製品仕上げ用のパジングまたは吸収工程において使用することができる。しかしながら、数回の洗浄サイクル後には、工場仕上げの効果は低減される。
そこで、繊維製品の工場仕上げの特定の性質を回復させる簡易な方法に対する要請がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決すべき課題は、容易に適用でき、かつ皮膚ケア油に関する繊維製品に対する工場仕上げの特定性質を回復する方法を提供することであった。前記課題は、本発明の方法によって、あらゆる点で見事に解決される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
(a)水、
(b)一以上のケア油、および
(c)一以上の乳化剤
を含有するブルックフィールド粘度が200mPas未満(20℃で測定)の水性エマルジョンを繊維製品に適用する、ケア油による繊維製品の仕上げ方法であって、噴霧によって水性エマルジョンを繊維製品に適用することを特徴とする方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
所望により、水性エマルジョンは成分(a)、(b)および(c)のほかに他の成分、例えば粘度調整剤、アニオン性湿潤剤またはマイクロカプセルを含有してよい。ケア油を含む様々な成分を順次マイクロカプセルに充填してよい。さらに、水性エマルジョンは例えば、尿素、グリセロール、カフェイン、メントールまたはフルーツ酸のような特定の保湿性の活性化添加剤を含有してよく、これらはo/wエマルジョンの水相中に溶解する。
【0006】
好適な実施形態では、噴霧によって付与される水性エマルジョンのブルックフィールド粘度は、100mPas未満(20℃で測定)、とりわけ50mPas未満、好ましくは20mPas未満である。
【0007】
本発明に従って噴霧されるべきエマルジョンは、従来どおり製造されるo/wエマルジョン(「マクロエマルジョン」)または当業者に既知の所謂PITエマルジョンまたはマイクロ-またはナノエマルジョンでさえあってよい。
【0008】
ある特定の実施形態では、水性エマルジョンの油含有量は、エマルジョン全体を基準に1〜50重量%の間、好ましくは5〜20重量%の間である。
【0009】
繊維製品上に直接、水性エマルジョンを噴霧する。短い乾燥時間の後、繊維製品はその当初の皮膚ケア特性を示す。
【0010】
これまで、繊維製品を処理するための噴霧は、繊維製品それ自体のケアにおいてのみ知られていた。例えば、微量臭気を除去するため、および香料を適用するための、アイロン助剤としての噴霧が挙げられる。
【0011】
対照的に、本発明による方法は、噴霧によって繊維製品に対してケア油を適用することに関し、この油成分の機能はヒトの皮膚をケアすることである。本発明による方法は、皮膚に隣接して着用される繊維製品をケア油で仕上げるのに、特に適している。繊維製品は、短い乾燥時間の後に、使用、即ち着用することができる。本発明による方法において、噴霧量を通じて皮膚ケア効果を分配することができる。皮膚ケア特性に加えて、噴霧は繊維製品により良好な手触りまたはより大きな滑らかさをも付与することができ、それによって、例えば、ぴったり体に合った衣料品(例えば圧迫ストッキング)の着用がより容易となる。
【0012】
ある実施形態では、本発明は、
(a)水、
(b)一以上のケア油、および
(c)一以上の乳化剤
からなるブルックフィールド粘度が200mPas未満(20℃で測定)の水性エマルジョンを繊維製品に適用する、ケア油による繊維製品の仕上げ方法であって、噴霧によって水性エマルジョンを繊維製品に適用することを特徴とする方法によって特徴付けられる。
【0013】
化合物b)
既述のとおり、成分(b)は皮膚ケア油から構成される。用語「油」は、「トリグリセリド」の化学的な狭義で用いられる。油はむしろ、室温で油状のコンシステンシーを有する成分であると理解される。成分(b)は、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドおよび脂肪酸アルキルエステルからなる群から選択することが好ましい。これらの物質は、天然起源の物質および合成物質のいずれであってもよい。
【0014】
ある実施形態では、油(b)は、皮膚ケア物質それ自体であるのみならず、他の油溶性皮膚ケア物質を溶解状で含有してもよい。
【0015】
適当な油(b)は、例えば、以下の物質群から選択してよい:トリグリセリド、脂肪酸アルキルエステル、脂肪アルキルエーテル、脂肪アルキルカーボネート、分枝状および分枝していない炭化水素。適当な物質の例としては、ヤシ油、スクアラン、ビタミンE、Myritol 318、Cetiol SN、パラフィンおよびホワイトオイルが挙げられる。
【0016】
化合物c)
既述のとおり、化合物(c)は乳化剤である。この乳化剤の機能は、ケア油(b)を水中に乳化することである。基本的に、乳化剤の選択に関して何ら特に限定はない。
【0017】
乳化剤(c)は例えばエトキシル化脂肪アルコールのような通常の合成乳化剤、または例えばレシチンのような天然乳化剤であってよい。HLB値が8〜18の乳化剤は好適である。
【0018】
PITエマルジョンを使用する場合、例えばEmulgade SE−PF (製造業者:Cognis)のような特定の乳化剤混合物は好適である。
【0019】
ある実施形態では、化合物c)は、ポリマー乳化剤、即ち、構造的にポリマーと見なすことができ、ケア油b)への乳化効果を有する化合物である。モノマー単位が天然起源であるポリマー乳化剤c)の例としては、セルロース(例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース)または多糖類(例えばキサンタンガム、ジェランガム、グアーまたはペクチン)に基づくポリマーが挙げられる。モノマー単位が合成起源であるポリマー乳化剤c)の例としては、アクリレート(例えばポリアクリル酸ナトリウム)、メタクリレートまたはアルキルアクリレート(例えばpemulen)が挙げられる。所望により、乳化剤c)を構成するモノマー単位は化学修飾されていてもよい。最も好適な実施形態では、キサンタンガム、ジェランガム、グアー、ポリアクリレートからなる群から選択される化合物を、ポリマー乳化剤c)として使用する。これらの乳化剤は、単独または互いの混合物中で使用してよい。
【0020】
マイクロカプセルm)
本発明において、マイクロカプセルは、基本的に、ある種の三次元構造を有する有機高分子(参照:K.LacasseおよびW.Baumann、Textile Chemicals、Environmental Data and Facts、ベルリン 2004年、468〜482頁)であると理解される。三次元構造に関する限り、マイクロカプセルは、典型的には2〜2,000μm直径および0.1〜200μm、とりわけ0.5〜150μmの外径を有する中空ミクロスフェアである。マイクロカプセルは中空であるため、これを配合剤または活性成分で充満させることができる。
【0021】
充填マイクロカプセル、即ち一以上の配合剤または活性成分を充填したマイクロカプセルは、本発明の目的にとって常に使用される。原則として、配合剤または活性成分は、充填マイクロカプセルで仕上げたテキスタイルの着用中に皮膚上へ通過させることを意図した任意の物質であってよい。そのような物質には、例えば、脂肪、油、植物抽出物、ビタミン、香料、忌避剤、殺虫剤などが含まれる。好適な油は、皮膚ケア特性および健康促進特性を有する植物油、例えばヤシ油、トケイソウ油、シアバター、ローズヒップ種油、ラベンダー油、杏仁油である。好適な植物抽出物は、ロディステロールおよびアロエベラである。本発明の目的にとって特に重要であるのは、皮膚ケア、保湿、刺激性、鎮痛性、蜂巣炎低減性、皮膚安定化、忌避およびリフレッシュ性を有する活性成分または配合剤である。
【0022】
カプセル化物質(以下、コア材料とも称する)は、カプセル化形態で対応する生成物中に組み込まれるべき任意の固体、液体または気体材料から構成されてよい。香油などの香料、または意図する適用分野においてケア効果を有する物質は、コア材料として好適に用いられる。
【0023】
個々の香料化合物を香油または香料として使用してよく、例えば、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコールおよび炭化水素型の合成生成物が挙げられる。エステル型香料化合物の例は、酢酸ベンジル、フェノキシエチルイソブチレート、p−tert.ブチル酢酸シクロヘキシル、酢酸リナリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、グリシン酸エチルメチルフェニル、プロピオン酸アリルシクロヘキシル、プロピオン酸スチラリルおよびサリチル酸ベンジルである。エーテルには、例えばベンジルエチルエーテルが含まれ、アルデヒドには、例えば炭素数8〜18の線状アルカナール、シトラール(ゲラニアール)、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアールおよびブルゲオナールが含まれる。適当なケトンの例は、イオノン、α−イソメチルイオノンおよびメチルセドリルケトンである。適当なアルコールは、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコールおよびテルピネオールである。炭化水素は、リモネンおよびα−ピネンなどのテルペンを主に含む。オイカリプトール(1,8−シネオール)も、香料として使用してよい。しかし、一緒になって心地良い香りを作り出す異なる香料化合物の混合物を使用することが好ましい。そのような香油は天然の香料混合物を含有してもよく、それは例えばパイン、シトラス、ジャスミン、パチョリ、ローズまたはイランイラン油などの植物源からえることができる。他の適当な香油は、セージ油、カモミール油、クローブ油、メリッサ油、ミント油、ユーカリ油、桂皮油、ライムブロッサム油、ジュニパーベリー油、ベチベル油、オリバナム油、ガルバナム油およびラブダナム油および橙花油、ネロリ油、橙皮油および白檀油である。他の適当な香料は、ニトリル、スルフィド、オキシム、アセタール、ケタール、酸、シッフ塩基、ヘテロ環式窒素化合物、例えばインドールおよびキノリン、ピラジン、アミン、例えばアンタニレート、アミド、有機ハロゲン化合物、ローズアセテート、ニトロ化化合物、例えばニトロじゃこう、ヘテロ環式硫黄化合物、例えばチアゾール、およびヘテロ環式酸素化合物、例えばエポキシドであって、これらは全て、香料で有り得るものとして専門家に既知である。
【0024】
ケア成分の例は、ビタミンおよびプロビタミン、例えばビタミンA、ビタミンC、ビタミンE(α−トコフェロール)、ビタミンF(ポリエン脂肪酸)、パンテノール(プロビタミンB5)、β−カロチン(プロビタミンA)およびこれらの誘導体(例えばアスコルビン酸ステアリルなどのエステル)、植物抽出物、生体高分子、フケ防止剤、UV保護剤、エモリエント(整髪油)、シリコーン油である。
【0025】
化粧用途にとって、好適なケア成分はトコフェロールおよびその脂質溶解性誘導体である。適当なトコフェロールは、例えば、天然トコフェロールおよびその混合物並びに合成トコフェロールである。適当な誘導体は、例えば、酢酸トコフェリル、ニコチン酸トコフェロール、アスコルビン酸トコフェリル、レチノイン酸トコフェリル、コハク酸トコフェリル、リノール酸トコフェリルまたは安息香酸トコフェリルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水、
(b)一以上のケア油、および
(c)一以上の乳化剤
を含有するブルックフィールド粘度が200mPas未満(20℃で測定)の水性エマルジョンを繊維製品に適用する、ケア油による繊維製品の仕上げ方法であって、噴霧によって水性エマルジョンを繊維製品に適用することを特徴とする方法。
【請求項2】
エマルジョンは更にマイクロカプセルを含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)水、
(b)一以上のケア油、および
(c)一以上の乳化剤
からなるブルックフィールド粘度が200mPas未満(20℃で測定)の水性エマルジョンを繊維製品に適用する、ケア油による繊維製品の仕上げ方法であって、噴霧によって水性エマルジョンを繊維製品に適用することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−519380(P2009−519380A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544814(P2008−544814)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011648
【国際公開番号】WO2007/068372
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】