説明

ケーソンの移動式足場工法

【課題】ケーソン内桝内への足場の設置作業、撤去作業を安全にかつ短時間で行うことができ、しかも足場材の使用数量を大幅に削減できるケーソンの移動式足場工法を提供する。
【解決手段】作業者9の昇降足場2と作業用ステージ1とからなる足場ユニットUを、ケーソン躯体10の頂部に固定された支持梁5からケーソン内桝内に垂下される懸吊ワイヤー3に多段に設けられたアイスプライス(玉掛索)3aを介して懸吊支持し、昇降足場2と作業用ステージ1とを交互に他段のアイスプライス(玉掛索)3aに吊り替えることによって、前記足場ユニットUを上下方向に移設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾工事、例えば岸壁・防波堤の施工に使用されるケーソン(鉄筋コンクリート製の潜函)を構築する際にケーソン内桝内に吊り下げ支持して使用される移動式の足場工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾工事で使用されるケーソンは、縦5〜30m・横7〜30m・高さ7〜30m位で、その内部高さ方向に複数の空洞(内桝)を形成した大規模な鉄筋コンクリート製の構造体である。その製作工事は内型枠と外型枠との内部に鉄筋を配してコンクリートを打設する所謂型枠工法により、一定高さの型枠装置を反復使用して1単位のセグメント(分節)を順次上方へ多数段積み上げ所望の高さに構築して行く方法により行われる。
【0003】
ケーソンの施工に当たっては、ケーソン躯体の構築、すなわち鉄筋工事や型枠工事等の作業を進めるため、ケーソン側壁の外周部や内桝内部に足場を設置する。一般に、ケーソン側壁の外周部の足場は、ケーソンの構築に伴って増設や移設することはないが、ケーソン内桝内部の足場はケーソンのスラブ上に枠組み足場等を1段ずつ組み立てて行き、ケーソンの構築毎に足場を増設して行く。
【0004】
したがって、従来工法では、1単位のコンクリートセグメントの打設を完了した都度、足場を増設する必要があり、内桝内の清掃、補修、Pコン処理、資材の撤去作業等もその都度行っているため、作業者数や工程数が多くなり、かなりの労力や製作時数を要するものであった。そこで、足場を増設することなくケーソンを構築するために、底面部が桁状または床状で、側面部が格子状をした籠状の骨組み構造物の内部に枠組み足場等を組み立てて一体化した吊り足場を予め製作する一方、ケーソン躯体下部の側壁部に予め吊り足場支持用のアンカを埋設しておき、前記吊り足場を吊り下げ部材を介して吊り下げ支持し、ケーソン躯体の構築毎、すなわち1単位のセグメントの構築毎にアンカを新設して行き、新設されたアンカに吊り下げ部材を順次盛り替えることによって吊り足場を上方に移設する技術が提案されている(特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−150570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献所載の従来技術では、打設を完了した後の内桝内の清掃、補修、Pコン処理、資材の撤去などは実際上不可能である。また、労働安全規則上、クレーンで吊った状態での足場作業は禁止されている。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたもので、ケーソン内桝内への足場の設置作業、撤去作業を安全にかつ短時間で行うことができ、しかも足場材の使用数量を大幅に削減できるケーソンの移動式足場工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明のケーソンの移動式足場工法は、作業者の昇降手段が設けられた支持ブラケットと作業用ステージとからなる足場ユニットを、ケーソン躯体の頂部に固定された支持梁からケーソン内桝内に垂下されるワイヤーに多段に設けられたアイスプライス(玉掛索)を介して懸吊支持し、前記支持ブラケットと作業用ステージとを交互に他段のアイスプライス(玉掛索)に吊り替えることによって、前記足場ユニットを上下方向に移設して行くことを第1の特徴とし、支持ブラケット及び作業用ステージが縦横伸縮自在に設けられていることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば次のような優れた効果がある。
(1)ケーソン内桝内での足場の上下移動が可能になり、内桝内の清掃、補修、Pコン処理、資材の撤去作業を容易且つ安全に行うことができる。
(2)ケーソン内桝内への足場の設置作業を短時間で行うことができ、足場材の使用数量を大幅に削減することができる。
(3)作業用ステージ及び支持ブラケットが縦横伸縮自在に設けられているので、既に構築されたケーソン内桝の大きさにも自由に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。図1はケーソン内桝に足場ユニットを設置した状態を示す一部断面側面図、図2はケーソン内桝に足場ユニットを設置した状態を示す平面図、図3及び図4は足場ユニットを順次下方に移設して行く過程を示す一部断面側面図である。
【実施例】
【0011】
本実施例では、ケーソン構築後の内桝内の清掃、補修、Pコン処理、資材の撤去などを行うに当たって足場ユニットUを使用する。この足場ユニットUは、図1乃至図2に示すように、概略、平面中央に矩形の開口1aを空けて鋼材を縦横伸縮自在に井桁状に組立て、周囲に手すり1bを設けた作業用ステージ1と、この開口1aに上下に挿通可能な昇降足場2とから構成されている。ここで、Pコン処理とは、ケーソンの各セグメント10a、10b及び10cの打設の際にコンクリート壁内に埋設されるセパレーター7の端部に螺合されたPコン6と呼ばれる略円錐形碗状のプラスチック製の治具によりコンクリート壁打設後に壁表面に残るPコン6のネジ穴をコンクリートで埋め戻す処理のことである。
【0012】
昇降足場2には、作業者が昇り降りするための階段2aが設けられると共に、その下端には振れ止め用の支持ブラケット4が連結されている。この支持ブラケット4も縦横伸縮自在に鋼管を井桁状に組み合わせて構成される。
【0013】
ケーソン躯体10の頂部に固定された支持梁5には4本の懸吊ワイヤー3が垂下されると共に、懸吊ワイヤー3の所定位置には多段にアイプライス(玉掛索)3aが設けられ、吊りフック(図示せず)を介して、作業用ステージ1並びに昇降足場2が各々懸吊できるようにされている。
【0014】
次に、図1、図3及び図4に基づいて、足場ユニットUの移動方法について説明する。以下、足場ユニットUの下降方法についてのみ説明するが、逆の手順により上昇できることは言うまでもない。まず、図1に示すように、セグメント10c内での作業を終えた後、作業者9は昇降足場2に退避して、作業用ステージ1にクレーン等の荷役装置からの吊りワイヤ8を連結する。次いで、作業用ステージ1と懸吊ワイヤー3との連結を解除する。同時に昇降足場2の上部と懸吊ワイヤー3との連結を解除する。すなわち、現在係止されているアイプライス3aから作業用ステージ1に連結されたフック(図示せず)と、昇降足場2の上部に連結されたフック(図示せず)を外す。この状態で作業用ステージ1を昇降足場2の下端あるいは所望する高さまでクレーンにより下降させる。次いで、作業者9は昇降足場2の階段2aを利用して下方に下りて行き、所望する位置に対応するアイプライス3aに作業用ステージ1を連結する。すなわち、本実施例の場合、当初セグメント10c内に位置した作業用ステージ1をセグメント10b内まで下降させ懸吊ワイヤー3に再度懸吊する。
【0015】
次いで、作業者9は作業用ステージ1に連結されたクレーン等の荷役装置からの吊りワイヤ8を外し、昇降足場2の階段2aを登って、この吊りワイヤ8を昇降足場2の上部に連結する。続いて作業者9は再び作業用ステージ1まで降りて、昇降足場2の下部と懸吊ワイヤー3との連結を解除する。この状態で昇降足場2をクレーンにより下降させ、所望する位置に対応するアイプライス3aに連結する。すなわち、本実施例の場合、当初セグメント10cと10bとの中間に位置した昇降足場2をセグメント10bとセグメント10aとの中間位置まで下降させ懸吊ワイヤー3に再度懸吊する。以上の手順を繰り返して行い、足場ユニットUをさらに下降することができる。
【0016】
尚、本発明の要旨は、作業者9の昇降足場2と作業用ステージ1とからなる足場ユニットUを、ケーソン躯体10の頂部に固定された支持梁5からケーソン内桝内に垂下されるワイヤー3に多段に設けられたアイスプライス(玉掛索)3aを介して懸吊支持し、昇降足場2と作業用ステージ1とを交互に他段のアイスプライス(玉掛索)3aに吊り替えることによって、前記足場ユニットUを上下方向に移設する点にあり、上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ケーソン内桝に足場ユニットを設置した状態を示す一部断面側面図である。
【図2】ケーソン内桝に足場ユニットを設置した状態を示す平面図である。
【図3】足場ユニットを順次下方に移設して行く過程を示す一部断面側面図である。
【図4】足場ユニットを順次下方に移設して行く過程を示す一部断面側面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 作業用ステージ
1a 開口
1b 手すり
2 昇降足場
2a 階段
3 懸吊ワイヤー
3a アイスプライス(玉掛索)
4 支持ブラケット
5 支持梁
6 Pコン
7 セパレーター
8 クレーンの吊りワイヤー
9 作業者
10 ケーソン躯体
10a ケーソンのセグメント
10b ケーソンのセグメント
10c ケーソンのセグメント
U 足場ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の昇降手段が設けられた支持ブラケットと作業用ステージとからなる足場ユニットを、ケーソン躯体の頂部に固定された支持梁からケーソン内桝内に垂下されるワイヤーに多段に設けられたアイスプライス(玉掛索)を介して懸吊支持し、前記支持ブラケットと作業用ステージとを交互に他段のアイスプライス(玉掛索)に吊り替えることによって、前記足場ユニットを上下方向に移設して行くことを特徴とするケーソンの移動式足場工法。
【請求項2】
支持ブラケット及び作業用ステージが縦横伸縮自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載のケーソンの移動式足場工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−316543(P2006−316543A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141426(P2005−141426)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(505176671)大隈仮設有限会社 (1)
【Fターム(参考)】