説明

ケーブル引留具

【課題】 製造コストの低廉を図れ、やっかいなケーブル支持線の屈曲作業を回避した施工の簡便さ、すなわち、作業性の向上を図れるケーブル引留具を提供する。
【解決手段】 長手方向の一端部を建屋等に設けた受止材に掛止する掛止部3、他端側を挿通切欠4を設けた支持線組付け部5とし、これら掛止部3と支持線組付け部5との間を前記支持線aの末端部を巻付ける固定部7とした、帯状金属板より成る平板状主体1で構成する。該主体1の前記支持線組付け部の長手方向に沿う両端に、該両側間交互にしてケーブル支持線aを挿通する前記挿通切欠4を並設する。そして、各挿通切欠4の、前記長手方向に沿う直線上に位置する内縁部に、該内縁部を打出して断面傾斜状の案内部片10を設け、該案内部片10の、打出し方向の裏面側の傾斜縁を、ケーブル引留め時に前記ケーブル支持線aが前記直線上に位置して接する接触縁101とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーケーブル等の通信ケーブルを幹線から分岐したり、或いは建屋に引込む際に用いるケーブル引留具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長手方向の一端を建屋等に設けた受止部に掛止する係止部とした、帯状金属板より成る引留具主体の前記長手方向に沿う両側に交互にして挿通切欠を並設し、各挿通切欠の奥端部の、ケーブルを係止する大径部を前記長手方向に沿う直線上に配置した構造のものがある(例えば、特許文献1)。また、上記のようなケーブルを直接引留め、支持する従来技術のほか、ケーブル支持線を引留具に巻き付けて通線し、該ケーブル支持線と一体化したケーブルを支持する構造のものも公知である(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−189449号公報
【特許文献2】意匠登録第1397497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の従来構造のものは、挿通切欠に挿通組付けたケーブルに、引留め操作時にテンションをかける(緊張する)と、引留具主体に薄い金属板で構成してあるので、弾性若しくは塑性変形して大径部の縁部と支持線との間に接触抵抗が働き引留め作業を円滑に行うようにしたもので、主体を薄い金属板で構成してあるので、製造コストや施工上の簡便さを図ることができるが、耐荷重性に劣り、従って重量の嵩むケーブルの引留具として用いるに問題がある。また、ケーブル本体に引張応力が直接作用し、ケーブルの損傷を引きおこす可能性がある。この点、特許文献2の従来技術では、ケーブル支持線の方を引っ張って支持するため、外部応力によるケーブルの損傷を効果的に防止することができる。しかしながら、特許文献2のものは、ケーブル支持線の引留具への巻き付け作業が煩雑で、施工の効率性に劣る問題がある。
【0005】
本発明は、斯様な従来技術の課題を解決し、施工時の作業性とケーブル本体の保護性能を両立させたケーブル引留具を提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
長手方向の一端部を建屋等に設けた受止材に掛止する掛止部、他端側を挿通切欠を設けた支持線組付け部とし、これら掛止部と支持線組付け部との間を前記支持線の末端部を巻付ける固定部とした、帯状板より成る平板状主体の前記支持線組付け部の長手方向に沿う両端に、該両側間交互にしてケーブル支持線を挿通する前記挿通切欠を並設し、各挿通切欠の、前記長手方向に沿う直線上に位置する内縁部に、該内縁部を打出して断面傾斜状の案内部片を設け、該案内部片の、打出し方向の裏面側の傾斜縁を、ケーブル引留め時に前記ケーブル支持線が前記直線上に位置して接する接触縁とした構成とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、係止部を受止材(建屋や分線用金物など)に掛止して、係止部側の一端に相対する他端側のものから挿通切欠の大径部に支持線を挿通させてテンションをかけると、支持線は挿通切欠の内縁部で構成する接触縁に接するようにして組付けられ、支持線の引留めが行われる。そして、その際、支持線は、傾斜状とした接触縁に接触して挿通切欠の、エッジのない前記内縁部に接することになるから、風圧などが作用して引張られても影響を受けにくく、支持線の引留めを確実にすることができ、ケーブルの保護を担保できる。また、ケーブルの支持線の引留具への巻き付けは、上記挿通切欠への挿通により、掛止部と支持線組付け部との間の固定部に巻き付けるため、従来技術の煩雑な巻き付け作業を解消し、施工の効率化に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】使用状態の断面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】正面図。
【図4】平面図。
【図5】図4のA−A線断面図。
【図6】図3のB−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面は本発明に係るケーブル引留具の一実施形態を示し、図中、Aは引留具Aを示す。
【0010】
引留具Aは、容易に屈曲しにくい帯状金属板(合成樹脂板でも良い)をプレス加工した平板状主体1で成り、平板状主体1の一端部を、該主体1の長手方向に沿って長い長孔2を設けて、建屋や架線中間部に設けた分線用金物などに掛止する係止部3と成すと共に、該係止部3と挿通切欠4,4,4を設けた支持線組付け部5の間を、前記主体1の長手方向に沿う両側に切欠6,6を設けて支持線aの巻付け部7としたものである。
【0011】
係止部3は長孔2を設けて構成してあるが、要は、建屋などに設けた受止部に引っ掛けられれば良いから、所謂フック状のものでも不都合はない。
【0012】
前記支持線組付け部5は、平板状主体1の前記長手方向に沿う両側に挿通切欠4を交互に配して構成する。実施形態では一側5´に単一な挿通切欠4を配し、他の一側に該挿通切欠4を間において一対の挿通切欠4,4を配して構成し、交互に配置してあるが、これは必要最小限の挿通切欠数(3)としたもので、該実施形態以上の数量の挿通切欠を設けても良いことは勿論である。
【0013】
なお、ここで「交互に配置」とは、ケーブルcの支持線aを相対的に挿通させる際、実施例のように一側側の複数個のものを他の一側側のものを介して挿通し得れば良いことを意味し、例えば、一側側の互いに隣接する複数の挿通孔を介して他の一側側に複数の挿通孔が形成されている場合において、前記隣接する複数個全部又は一部に挿通する場合(他の一側側の複数の挿通孔に挿通して)も含まれる。
【0014】
また、挿通切欠4は、平板状すなわち、支持線組付け部5の長手方向に沿う(一側又は他側の)側の開口縁を拡径状にしてケーブル支持線aを挿通し易くし、奥端部を欠円形状の大径部4Aと成してケーブル支持線との組付け部とし、各挿通切欠4の大径部4Aは、平板状主体1の長手方向に沿う直線a上に配置されるようにしてケーブル支持線の挿通切欠4での相対的な移動を規制するようにしてある。すなわち、大径部4Aは挿通切欠4の開口端側に移動しようとすると、開口端側より大径部4A側の径が大きいから、ケーブル支持線の大径部4Aと前記開口端との間の中間部への移動は、該中間部側との接触抵抗が大きいことになるから前記の相対的な移動を規制することになる。従って、大径部4Aは、挿通切欠4の奥端部に設けることは必ずしも必要ないが、実施例のように奥端部に設ければ、挿通切欠4内をケーブル支持線を手加減せずに相対的に移動させるだけで正位置に配することができるから組付け作業上は好適である。
【0015】
そして、挿通切欠4の前記大径部4Aには、該大径部4Aの前記支持線a上に位置される内縁部に前記支持線組付け部5(平板状主体1)の一方の片面5aから他の一方の片面5a方向に部分的に打ち出して(起立させて)断面傾斜状の案内部片10を設け、該案内部片10の打ち出し方向の裏面側の傾斜縁を前記ケーブル支持線が前記直線上に位置して接する接触縁101としてある。
【0016】
そして、挿通切欠4,4,4に支持線を順次挿通させて支持線を引っ張ると、支持線は案内部片10の接触縁101に接する一方、該接触縁101,101間の支持線組付け部5(主体1)の表面に接し、支持線組付け部5にジグザグ状にして組付けられ、この組付け状態において支持線の末端部を巻付け部7に巻き付けることによって支持線aは引留具Aに固定される。
【0017】
また、引留具Aに対する支持線aの上記組付け操作と相前後して引留具Aを係止部3を利用して建屋や分線金物などに掛止することにより、前記支持線に支持されたケーブルを例えば、建屋に引込むことによりケーブルの引留め作業を終えることができる。
【0018】
なお、平板状主体1の素材を合成樹脂としたときは、射出成形によっても引留具Aを得られる。
【符号の説明】
【0019】
1 平板状主体
3 掛止部
4 挿通切欠
5 支持線組付け部
7 固定部
10 案内部片
101 接触縁
a ケーブル支持線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一端部を建屋等に設けた受止材に掛止する掛止部、他端側を挿通切欠を設けた支持線組付け部とし、これら掛止部と支持線組付け部との間を前記支持線の末端部を巻付ける固定部とした、帯状板より成る平板状主体の前記支持線組付け部の長手方向に沿う両端に、該両側間交互にしてケーブル支持線を挿通する前記挿通切欠を並設し、各挿通切欠の、前記長手方向に沿う直線上に位置する内縁部に、該内縁部を打出して断面傾斜状の案内部片を設け、該案内部片の、打出し方向の裏面側の傾斜縁を、ケーブル引留め時に前記ケーブル支持線が前記直線上に位置して接する接触縁とした、ケーブル引留具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−257393(P2012−257393A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129046(P2011−129046)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(592157076)イワブチ株式会社 (80)
【Fターム(参考)】