説明

ケーブル操作装置

【課題】ドアなどの移動対象物の移動位置を直接測定し、その移動位置に基づいて移動対象物の移動を制御するケーブル操作装置を提供する。
【解決手段】第1の接触ポイント51と第1ケーブル11の端部がアーム7に接続されている接続点60との間の第1ケーブル11の部分の抵抗値R1と、第2の接触ポイント53と第2ケーブル12の端部がアーム7に接続されている接続点61との間の第2ケーブル12の部分の抵抗値R2と、アーム7の接続点60と接続点61との間の抵抗値R3との合計値(R1+R2+R3)の抵抗値を測定する。スライドドアを開閉すると、第1ケーブル11と第2ケーブル12とは往復動することで、第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53との間のR1、R2、R3の合計の抵抗値が変化する。この変化した抵抗値は、スライドドアの移動位置に対応している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のスライドドアやウインドガラスを開閉する場合にケーブルを牽引するケーブル操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のスライドドアやウインドガラスを開閉する場合、ドラムに巻回されているケーブルを巻き取り、送り出すことでスライドドア等を開閉自在としている。そして、パワースライドドアのドア位置に基づいて開閉を調節するドアの開閉制御をする場合には、従来では、ドアを開閉駆動するためのアクチュエータにモータ回転センサを取り付けて、パルスエンコーダによって駆動量を測定し、ドアのドアの開閉制御を行なっていた。
【0003】
しかし、モータ回転センサを取り付けるためのレイアウトスペースやマグネットに用いるネオジウムなどのレアアースも必要となり、しかもノイズ等によって算出された駆動量と実際の駆動量とに差が生じていた。
この問題を解決するコントロールケーブルとして、例えば、下記に示す特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平1−17689号公報
【0005】
上記特許文献1は、センサ付きコントロールケーブルが提案されており、芯線の表面に被覆された絶縁層と、該絶縁層の表面に被覆された導電層と、該導電層に摺接する導電性のブラシと、該導電層に固着された固着部材とにより、該固着部材と該ブラシとの間の抵抗量、電気抵抗値を測定することによりインナーケーブルの長さ測定をするセンサ付きコントロールケーブルである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この特許文献1のコントロールケーブルでは、インナーケーブル上の導電層に設けられた固着部材と電気的に接続する必要があり、スライドドアなどの移動量の多い装置に用いられるコントロールケーブルに適用した場合には、移動に伴う断線を防止する構成とする必要があり、かえって構成が複雑になるという問題を有している。
【0007】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、ドアなどの移動対象物の移動位置を直接測定し、その移動位置に基づいて移動対象物の移動を制御することができるケーブル操作装置を提供することを目的としているものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のケーブル操作装置では、駆動装置16により第1ケーブル11と第2ケーブル12とを往復駆動させることで移動対象物3を移動させるケーブル操作装置であって、
前記駆動装置16の駆動量を制御する制御装置31を備え、
前記移動対象物3に前記第1ケーブル11及び前記第2ケーブル12の一端がそれぞれ接続され、前記第1ケーブル11及び第2ケーブル12の他端が前記駆動装置16にそれぞれ接続され、前記第1ケーブル11と前記第2ケーブル12とはそれぞれ異なる抵抗率を備えており、前記移動対象物3側の前記第1ケーブル11についての予め設定した部位と、前記第2ケーブル12についての予め設定した部位との間の抵抗値を測定する抵抗値測定手段を備え、前記制御装置31により、前記抵抗値測定手段からの抵抗値データにより前記移動対象物3の移動位置を特定し、前記移動位置に基づいて前記移動対象物3の移動制御を行なうようにしていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
(1)本発明のケーブル操作装置によれば、移動対象物3側の第1ケーブル11についての予め設定した部位と、第2ケーブル12についての予め設定した部位との間の抵抗値を測定する抵抗値測定手段を備え、制御装置31により、前記抵抗値測定手段からの抵抗値データにより前記移動対象物3の移動位置を特定し、前記移動位置に基づいて前記移動対象物3の移動制御を行なうようにしていることで、ドアなどの移動対象物3を直接測定し、その移動位置に基づいて移動対象物3の移動を制御することができる。そのため、従来のモータ回転センサを用いていた場合では、ノイズ等によって影響を受けることがなく、移動対象物3の位置を正確に特定することができる。
また、従来の特許文献1では、移動に伴う断線を防止する構成が必要となり、構成が複雑となっていたが、本実施形態では、かかる構成は不要となり、コストダウンを図ることができる。さらに、従来とは異なり、モータ回転センサを取り付けるためのレイアウトスペースや、マグネットに用いるネオジウムなどの高価なレアアースが不要となり、コストダウンを図ることができる。
【0010】
(2)本発明のケーブル操作装置によれば、前記抵抗値測定手段を、
前記電源線54に流れる電流をアナログ電圧として測定する測定部と、前記測定部からのアナログ電圧をデジタルデータに変換するA/D変換器36と、前記電源線54に流れる電流に予め対応させた抵抗値データを格納している記憶部33と、前記A/D変換器36からの電圧のデジタルデータにより前記記憶部33からの抵抗値データに基づいて前記移動対象物3の移動位置を特定する抵抗値算出用制御部32とで構成していることで、移動対象物3の位置を正確に特定するための抵抗値測定手段を、高価な部品を使用せずに、安価な部品で構成することができ、コストアップを防止することができる。
【0011】
(3)本発明のケーブル操作装置によれば、前記第1ケーブル11の一端と前記第2ケーブル12の一端は、前記移動対象物3に設けられた導電性の連結部にそれぞれ接続されていることで、例えば導電性の金属等を用いることで、連結部を安価に構成でき、また、連結部に接続されている第1ケーブル11の一端と第2ケーブル12の一端との抵抗値も含めて計算できて、抵抗値を正確に測定することができる。
【0012】
(4)本発明のケーブル操作装置によれば、第1ケーブル11の一端と第2ケーブル12の一端とを直接に接続していることで、連結部を不要とし、例えばアーム7とは別の部材にて連結部を形成する場合には、該連結部が不要となって、コストアップを防止することができる。また、抵抗値の計算をする場合、連結部の抵抗値を入れる必要がなく、第1ケーブル11と第2ケーブル12の抵抗値だけで計算できて、一層正確に抵抗値を計算することが可能となる。
【0013】
(5)本発明のケーブル操作装置によれば、前記移動対象物3は、ドアまたはウインドガラスとしていることで、ドアや天井のウインドガラス等を開閉する場合、移動位置に応じた任意の開閉速度制御を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における自動車の要部側面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるケーブル操作装置のブロック構成図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるケーブル操作装置の電気的なブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるケーブルの抵抗値を測定する場合の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるケーブルの異なる抵抗率を用いて抵抗値を測定する場合の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態における全閉状態での抵抗値を測定する場合の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態における全開状態での抵抗値を測定する場合の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態における測定した抵抗値とスライドドアの移動位置を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における電源線に流れる電流から抵抗値を測定する場合のブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態における電源線での電圧から抵抗値を測定する場合のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2に示すケーブル操作装置30は、自動車1の後部のドア枠2に沿って前後にスライド自在に設けられている移動対象物としてのスライドドア3を開閉駆動するものである。なお、本発明の要旨は機構的な構成ではないので、図2では、ケーブル操作装置30の構成をブロック図的に描いている。
【0016】
スライドドア3は、自動車1の側面の上部に設けられているアッパーレール4と、中央部に設けられているセンターレール5と、下部に設けられているロアレール6とによってガイドされる。
アッパーレール4とロアレール6はドア枠の前端の近辺まで延びており、センターレール5はドア枠2の後端の近辺まで延びている。そして、各レール4、5、6も前端の近辺では、図2に示すように車内側に湾曲しており、スライドドア3を閉めた場合に、自動車1の側面とスライドドア3の側面とが面一になるようになっている。
【0017】
スライドドア3にはそれぞれのレール4、5、6に対応したアーム7(図2参照)が車内側に突出して設けられており、それらのアーム7にはレール4、5、6上を転動する走行ローラ8(図1参照)が回転自在に取り付けられている。なお、図2では走行ローラ8は図示省略している。
本実施形態では、ケーブル操作装置30はセンターレール5を転動する走行ローラ8を支持するアーム7を駆動してスライドドア3を開閉制御するようにしている。なお、他のアームを駆動するようにしても良いが、ケーブルと連結される金属製(導電性)のアーム7は、スライドドア3側とは絶縁材を介して該スライドドア3に設けられている。
【0018】
図2において、ケーブルの連結部としてのアーム7の端部には、スライドドア3を前後方向に駆動するための第1ケーブル11と第2ケーブル12の端部が係止されている。すなわち、アーム7の一方の端部にはスライドドア3を後進させる第1ケーブル11の一端が接続され、また、アーム7の他方の端部にはスライドドア3を前進させる第2ケーブル12の一端が接続されて、それぞれのケーブルが移動対象物に接続されている。
第1、第2ケーブル11、12はセンターレール5に沿って配索されており、第1ケーブル11の他方の端部は、方向転換用のガイドプーリ13を介して駆動用のドラム23に巻回されると共に、該ドラム23に連結されている。また、第2ケーブル12の他方の端部は、方向転換用のガイドプーリ14を介して前記ドラム23に巻回されると共に、該ドラム23に連結されている。
【0019】
ここで、上述したようにアーム7は導電性のために第1ケーブル11と第2ケーブル12の一端同士は電気的に導通しており、また、ドラム23は絶縁性の樹脂等で構成していることで、第1ケーブル11の他端と第2ケーブル12の他端とは非導通状態となっている。また、後述するように第1ケーブル11と第2ケーブル12とはそれぞれ異なる抵抗率を有している。
【0020】
また、図1に示すように、スライドドア3の前端には開閉用の把手9が設けられており、この把手9を持って操作した際にオンされる開閉スイッチが設けられている。そして、この開閉スイッチのオン信号によりケーブル操作装置30の制御装置31(図2参照)にて駆動装置16が駆動され、スライドドア3が開閉制御される。
【0021】
この駆動装置16は、正逆転可能なモータ20と、このモータ20の回転を減速させる減速機構21と、この減速機構21の出力を断続する電磁クラッチ22と、このオンした電磁クラッチ22により回転駆動されるドラム23とで構成されている。
なお、駆動装置16を構成しているこれらモータ20、減速機構21、電磁クラッチ22及びドラム23自体は周知であるから、詳細な説明は省略する。
【0022】
図3は本発明のケーブル操作装置30のブロック図を示しており、主に本発明に関連している部分のブロック図を示している。制御装置31は、制御部32、記憶部33、クラッチ駆動部34、モータ速度制御部35、特に本発明に関連しているA/D変換器36及び移動量表示部37等で構成されている。また、スライドドア3の把手9側に設けられている開閉スイッチ41からのオン信号、オフ信号が制御部32へ入力されるようになっている。
【0023】
CPUにて構成される制御部32は、所定のプログラムの手順に沿って全体を制御するものであり、また、記憶部33は、前記プログラムを格納しているROMや、データを一時的に保存するRAM等で構成されている。
クラッチ駆動部34は、制御部32からの信号により駆動されて、電磁クラッチ22をオン、またはオフさせるものである。また、モータ速度制御部35は、PWM回路や、このPWM回路にて駆動されパワー半導体からなるモータ駆動回路等にて構成されている。そして、モータ速度制御部35は、制御部32からの制御信号によりPWM回路のデューティ比を可変させることで、モータ20の回転速度、つまりスライドドア3の開閉速度を制御するようになっている。
【0024】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、第1ケーブル11についての予め設定した部位、例えばガイドプーリ13の溝に位置している第1ケーブル11の表面に摺接可能に接触する第1の接触ポイント51を設け、この第1の接触ポイント51からアース線52を介して接地している。
また、第2ケーブル12についての予め設定した部位、例えばガイドプーリ14の溝に位置している第2ケーブル12の表面に摺接可能に接触する第2の接触ポイント53を設け、この第2の接触ポイント53に電源線54を介して電源(+V)を印加するようにしている。
【0025】
第1の接触ポイント51及び第2の接触ポイント53において第1、第2ケーブル11、12に接触する接触部材としては、例えばモータのブラシを用いている。第1、第2ケーブル11、12が往復動しても、ガイドプーリ13、14は車体に固定されており、また、車体に固定したブラシにより、第1、第2ケーブル11、12の表面にそれぞれブラシを常に安定した状態で接触させることができる。
そして、本実施形態では、第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53との間の第1ケーブル11と第2ケーブル12の抵抗値を測定することで、スライドドア3の移動位置を特定するようにしたものである。そして、この移動位置に基づいてスライドドア3の移動制御を行なうものである。
【0026】
図4は、より詳細に示したものであり、第1の接触ポイント51と第1ケーブル11の端部がアーム7に接続されている接続点60との間の第1ケーブル11の部分の抵抗値R1と、第2の接触ポイント53と第2ケーブル12の端部がアーム7に接続されている接続点61との間の第2ケーブル12の部分の抵抗値R2と、アーム7の接続点60と接続点61との間の抵抗値R3との合計値(R1+R2+R3)の抵抗値を測定する。
なお、アース線52及び電源線54が有する抵抗率は、上記抵抗値R1、R2、R3に対して十分に無視できる値である。図3の左側の部分は、図4を回路的に表現したものである。
【0027】
そして、スライドドア3を開閉すると、第1ケーブル11と第2ケーブル12とは往復動することで、第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53との間のR1、R2、R3の合計の抵抗値が変化する。この変化した抵抗値は、スライドドア3の移動位置に対応したものである。
【0028】
第1ケーブル11、第2ケーブル12等の抵抗値を測定する場合、第1ケーブル11、第2ケーブル12等に流れる電流や、第2ケーブル12の第2の接触ポイント53に接続されている電源線54での電流や電圧を測定するポイントが図2及び図3に示す測定ポイント63である。
この測定ポイント63での電源線54に流れる電流や電圧に応じたアナログデータを制御装置31のA/D変換器36に入力している。記憶部33には、測定した電流や電圧に対応した抵抗値データを予め格納したテーブルを備えており、制御部32がA/D変換器36からのデジタルデータにより記憶部33からの抵抗値データに基づいてスライドドア3の移動位置を特定するようにしている。このような制御において、制御部32は抵抗値算出用制御部として機能する。
【0029】
次に、図5〜図7により上記第1ケーブル11、第2ケーブル12等の抵抗率等について説明する。図5に示すように、第1ケーブル11の抵抗率は、例えば、1kΩ・mとし、第2ケーブル12の抵抗率は、例えば、10kΩ・mとしている。また、アーム7の接続点60、61間の抵抗は例えば、10Ωとしている。
【0030】
図6はスライドドア3を全閉状態とした場合であり、スライドドア3の移動量は0(ゼロ)cmである。この時、第1ケーブル11のアーム7と第1の接触ポイント51との間の距離は150cmであり、また、第2ケーブル12のアーム7と第2の接触ポイント53との間の距離は20cmである。
本実施形態では、ガイドプーリ13、14に設定した2カ所のセンシングポイントである第1、第2の接触ポイント51、53間の抵抗値を測定することで、スライドドア3の位置を検出するものである。
【0031】
スライドドア3の全閉状態を示す図6の場合、
第1ケーブル11の抵抗値=1kΩ×1.5m=1.5kΩ
第2ケーブル12の抵抗値=10kΩ×0.2m=2kΩ
アーム7の接続点60、61の抵抗=10Ω
したがって、第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53間の合計の抵抗値は、3.51kΩとなる。
【0032】
また、スライドドア3の全開状態を示す図7の場合、図6の場合と同様に、
第1ケーブル11の抵抗値=1kΩ×0.2m=0.2kΩ
第2ケーブル12の抵抗値=10kΩ×1.5m=15kΩ
アーム7の接続点60、61の抵抗=10Ω
したがって、第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53間の合計の抵抗値は、15.21kΩとなる。
【0033】
上記のように第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53との間の抵抗値からスライドドア3のドア位置を推測することが可能となる。図8は、図6及び図7からの計算結果によるドア位置と上記抵抗値との関係を示す図であり、横軸をスライドドア3の移動量X(cm)とし、縦軸を抵抗値Y(kΩ)としたものである。
図8からも分かるように、抵抗値からスライドドア3の移動位置を容易に特定することができ、抵抗値からドア位置を特定するために図の直線の傾きmを定数として下記に示す式からドア位置を特定することができる。
【0034】
まず、直線の傾きmは、
m=(15.21−3.51)/(130−0)=0.09(kΩ/cm)
この0.09の傾きmを定数として、ドア移動量X(cm)と抵抗値Y(kΩ)の式で表すと以下の式で示される。
Y=0.09X+3.51
逆に抵抗値からドア移動量の式で表すと以下の式で示される。
X=(100Y−351)/9 ・・・・・・(1)
【0035】
スライドドア3を開閉した際に、途中での第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53との間の抵抗値が、例えば、10kΩとした場合、上記(1)から、
X=(100×10−351)/9
=72.11(cm)
となる。
このように、第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53の間の抵抗値を測定することで、その測定した抵抗値からドア位置を容易に特定することができる。
【0036】
次に、上記抵抗値を測定する手段について説明する。図9は、電源線54に流れる電流から第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53との間の抵抗値を測定するようにしたものである。
電圧(+V)が印加される電源線54にカレントトランス65を介装し、このカレントトランス65の2次側に抵抗Rを並列に接続し、この抵抗Rの両端に発生するアナログ電圧を制御装置31のA/D変換器36へ入力している。なお、このカレントトランス65を介装した箇所が上記測定ポイント63に対応している。
【0037】
また、記憶部33では、電源線54に流れる電流値に予め対応させた抵抗値のテーブルを持っている。電源線54から第2の接触ポイント53を介して第2ケーブル12、アーム7、第1ケーブル11、第1の接触ポイント51を経てアースへと電流が流れる。この電源線54に流れる電流はカレントトランス65を介して流れ、カレントトランス65の2次側の電流は抵抗Rに流れる。
そして、抵抗Rの両端に発生するアナログ電圧をA/D変換器36がデジタルデータに変換し、抵抗値算出用制御部としての制御部32では、A/D変換器36からの電圧のデジタルデータから記憶部33からの抵抗値データに基づいてその時の抵抗値を測定する。抵抗値算出用制御部32は、その測定した抵抗値からスライドドア3のドア位置を特定する。
【0038】
制御部32は、抵抗値を例えばミリセコンドオーダーで測定しており、刻々と変化するにスライドドア3のドア位置を常時特定するようにしている。この制御部32により特定したドア位置のデータに基づいてスライドドア3の開閉制御をドア位置に応じた速度制御を行なうことができる。
また、図3に示す移動量表示部37へ出力し、この移動量表示部37によりスライドドア3の開閉時におけるドア位置を表示するようにしても良い。かかる場合、この移動量表示部37におけるドア位置の絵柄や数値表示により運転者にとってスライドドア3の開閉状態を認識でき、安全性を確保することができる。
【0039】
なお、ここで、図9に示すカレントトランス65、抵抗R、A/D変換器36、記憶部33及び制御部32にて抵抗値測定手段を構成している。
【0040】
このように本実施形態では、制御装置31により、抵抗値測定手段からの抵抗値データによりスライドドア3の移動位置を特定し、この移動位置に基づいてスライドドア3の移動制御を行なうようにしていることで、スライドドア3などの移動対象物を直接測定し、その移動位置に基づいてスライドドア3の移動を制御することができる。そのため、従来のモータ回転センサを用いていた場合では、ノイズ等によって影響を受けることがなく、スライドドア3の位置を正確に特定することができる。
【0041】
また、従来の特許文献1では、移動に伴う断線を防止する構成が必要となり、構成が複雑となっていたが、本実施形態では、かかる構成は不要となり、コストダウンを図ることができる。
さらに、従来とは異なり、モータ回転センサを取り付けるためのレイアウトスペースや、マグネットに用いるネオジウムなどの高価なレアアースが不要となり、コストダウンを図ることができる。
【0042】
また、抵抗値測定手段を、カレントトランス65、抵抗R、A/D変換器36、記憶部33及び制御部32にて構成していることで、スライドドア3の位置を正確に特定するための抵抗値測定手段を、高価な部品を使用せずに、安価な部品で構成することができ、コストアップを防止することができる。
【0043】
次に、上記抵抗値を測定する手段の他の実施形態について説明する。図10は電源線54での電圧を測定して抵抗値を測定するようにしたものである。定抵抗Rを挿入し、この定抵抗Rと第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53との間の抵抗値とで分圧された電圧を測定して、この測定したアナログ電圧をA/D変換器36へ入力している。
ここでは、記憶部33は、電圧に対応した抵抗値のテーブルを予め格納している。
【0044】
図10では、測定ポイント63での電圧値がA/D変換器36に入力されてデジタルデータに変換され、制御部32では、A/D変換器36からの電圧のデジタルデータ記憶部33からの抵抗値データに基づいてそのときの第1の接触ポイント51と第2の接触ポイント53との間の抵抗値を測定する。制御部32は、その測定した抵抗値からスライドドア3のドア位置を特定する。
なお、上記定抵抗R、A/D変換器36、記憶部33及び制御部32等で抵抗値測定手段を構成している。
【0045】
また、本実施形態においても、抵抗値測定手段を、定抵抗R、A/D変換器36、記憶部33及び制御部32にて構成していることで、スライドドア3の位置を正確に特定するための抵抗値測定手段を、高価な部品を使用せずに、安価な部品で構成することができ、コストアップを防止することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では、移動対象物をスライドドア3として説明したが、ドアの窓のウインドガラスや、天井のサンルーフにも本発明を適用できるものである。これにより、ドアや天井のウインドガラス等を開閉する場合、移動位置に応じた任意の開閉速度制御を行なうことができる。また、移動対象物側の第1ケーブルについての予め設定した部位と、前記第2ケーブルについての予め設定した部位とについても、移動対象物とその装置構成に応じて適宜設定することができる。
【0047】
上記実施形態において、第1ケーブル11と第2ケーブル12とを連結する連結部としてのアーム7には、例えば導電性の金属等を用いることで、連結部を安価に構成でき、また、連結部に接続されている第1ケーブル11の一端と第2ケーブル12の一端との抵抗値も含めて計算できて、抵抗値を正確に測定することができる。
【0048】
なお、第1ケーブル11の一端と第2ケーブル12の一端とを直接に接続した構成とすることもできる。かかる場合には連結部を不要とし、例えばアーム7とは別の部材にて連結部を形成する場合には、該連結部が不要となって、コストアップを防止することができる。また、抵抗値の計算をする場合、連結部の抵抗値を入れる必要がなく、第1ケーブル11と第2ケーブル12の抵抗値だけで計算できて、一層正確に抵抗値を計算することが可能となる。また、本発明のケーブル操作装置は、2つのケーブルを介した通電状態をモニタリングしていることから、上記に記載した課題を解決できるのみならず、操作対象物からいずれか一つでもケーブルが外れたとき、またはいずれか一つのケーブルが切れたときについても、検出することができる。このように本発明のケーブル操作装置が通電状態をモニタリングできることから、ケーブルの接続状態を検出できてケーブルの切断・外れなどの不具合を防止することができ、例えばパワースライドドアにおいては、そのドアの危険な状態を乗車者にいち早く通知することができるので、ドアに接続されたケーブルが外れたり切れたりするという車両の危険な状態を回避することができる。
【符号の説明】
【0049】
3 スライドドア(移動対象物)
11 第1ケーブル
12 第2ケーブル
16 駆動装置
30 ケーブル操作装置
31 制御装置
32 制御部
33 記憶部
36 A/D変換器
51 第1の接触ポイント
53 第2の接触ポイント
54 電源線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置(16)により第1ケーブル(11)と第2ケーブル(12)とを往復駆動させることで移動対象物(3)を移動させるケーブル操作装置であって、
前記駆動装置(16)の駆動量を制御する制御装置(31)を備え、
前記移動対象物(3)に前記第1ケーブル(11)及び前記第2ケーブル(12)の一端がそれぞれ接続され、
前記第1ケーブル(11)及び第2ケーブル(12)の他端が前記駆動装置(16)にそれぞれ接続され、
前記第1ケーブル(11)と前記第2ケーブル(12)とはそれぞれ異なる抵抗率を備えており、
前記移動対象物(3)側の前記第1ケーブル(11)についての予め設定した部位と、前記第2ケーブル(12)についての予め設定した部位との間の抵抗値を測定する抵抗値測定手段を備え、
前記制御装置(31)により、前記抵抗値測定手段からの抵抗値データにより前記移動対象物(3)の移動位置を特定し、前記移動位置に基づいて前記移動対象物(3)の移動制御を行なうようにしていることを特徴とするケーブル操作装置。
【請求項2】
前記第1ケーブル(11)についての予め設定した部位をアース電位とすると共に、前記第2ケーブル(12)についての予め設定した部位に電源線(54)を介して電源を印加し、
前記抵抗値測定手段を、
前記電源線(54)に流れる電流をアナログ電圧として測定する測定部と、
前記測定部からのアナログ電圧をデジタルデータに変換するA/D変換器(36)と、
前記電源線(54)に流れる電流に予め対応させた抵抗値データを格納している記憶部(33)と、
前記A/D変換器(36)からの電圧のデジタルデータにより前記記憶部(33)からの抵抗値データに基づいて前記移動対象物(3)の移動位置を特定する抵抗値算出用制御部(32)と
で構成していることを特徴とする請求項1に記載のケーブル操作装置。
【請求項3】
前記第1ケーブル(11)の一端と前記第2ケーブル(12)の一端は、前記移動対象物(3)に設けられた導電性の連結部にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーブル操作装置。
【請求項4】
前記第1ケーブル(11)の一端と前記第2ケーブル(12)の一端は、直接接続されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のケーブル操作装置。
【請求項5】
前記移動対象物(3)は、ドアまたはウインドガラスであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のケーブル操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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