説明

ケーブル支持装置

【課題】製造性が良好で耐久性の高いケーブル支持装置を提供すること。
【解決手段】ケーブル支持装置は、ケーブル支持部材と、支持部材挿通路及び支持部材挿通路に並列配置された一又は複数のケーブル挿通路を有する可撓性材料から形成されたチューブ部材とを具備する。ケーブル支持部材が、複数の駒部材及び弾性部材を備え、駒部材は、弾性部材が挿通される弾性部材挿通路を有し、更にケーブル支持部材の両側で隣接する駒部材と互いに接した状態での回動を可能にする関節面を有し、弾性部材は、複数の駒部材の長手方向の弾性部材挿通路に挿通されて複数の駒部材を整列保持するとともに、複数の駒部材に圧縮力を加えており、このケーブル支持部材により、ほぼ直線状の中立状態と曲げ変形された湾曲状態とをとり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルと一体化されて、そのケーブルを支持するケーブル支持装置に関し、例えば機械加工ライン、半導体製造装置、電子部品実装装置等に組み込まれたロボット走行装置等に用いられるケーブルを支持するケーブル支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工ライン、半導体製造装置、電子部品実装装置には、加工材、ウエハ、基板等のワークを把持して搬送するためのロボット走行装置が組み込まれている。ロボット走行装置は、軌道上を往復移動する走行台車に、例えばワークをハンドリングするロボットが搭載されている。このロボットのアームのハンドを動作させることにより、ワークをハンドに把持させ、該ワークを各加工機械に着脱することができる。
【0003】
このようなロボット走行装置の走行台車には、電気ケーブル、光ケーブル、油圧又は空圧動力供給用のチューブ等(以下、「ケーブル類」という)が接続される。走行台車は絶えず往復移動をしてその位置は変化するので、ケーブル類をこの位置の変化に追随させて走行台車とともに無理なく移動させる必要がある。このため、一定長のケーブル類をU字形に湾曲させて支持してU字の対向する辺の長さを変化させることにより、ケーブル類を走行台車の位置の変化に追随させる、例えばケーブルベア(登録商標)と呼ばれる多関節型のケーブル支持部材が知られている。
【0004】
そのようなU字型に湾曲可能なケーブル支持部材が特許文献1に記載されている。特許文献1のケーブル支持部材(多関節支持部材)は、ピン結合により連結された一連の合成樹脂ブロック体から構成されている。また、特許文献1では、ケーブル支持部材は、複数の並列配置管路を備える可撓性ベルト部材にケーブル類とともに挿通されて一体的にクランプされて多関節型ケーブル類保護案内装置が構成される。また支持部材は、そのブロック体の形状に基づいて、所定の曲率半径までの曲げが可能にされる一方で、水平直線状態が重力に抗して維持され、あるいは下に凸に湾曲することが阻止される。
【0005】
U字型に屈曲可能なケーブル支持部材は特許文献2にも記載されており、特許文献2では、ケーブル支持部材は、ベルト状のバネ性を有するステンレス鋼帯(可撓性材料)と、そのステンレス鋼帯に射出成形されて固定された一連の合成樹脂製の駒部材(非連動固形物)とから構成されている。また、そのケーブル支持部材がケーブル類とともに複数の並列配置チャネルに挿通されて一体的にクランプされたケーブル支持構造が特許文献2の図21等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4658221号公報
【特許文献2】特許第4157096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のケーブル支持部材の一連の合成樹脂製ブロック体は、連結に用いられるピンも含めて射出成形により比較的簡単に製造できる一方で、合成樹脂ブロック体を連結するときに、多数の合成樹脂ブロック体の全てのピンをそれに対応する穴に嵌合させることが必要であり、したがって組立性は必ずしも良好とはいえない。また、合成樹脂製ブロック体をピンで互いに連結するために要するスペースにより軸線方向(ケーブル長手方向)の寸法が比較的長くなり、そのため、ケーブル支持部材を湾曲させるときの可能な最小曲率半径及び従って配線のための所要スペースを縮小できないという課題もあった。
【0008】
特許文献2のケーブル支持部材の駒部材(非連動固形物)はステンレス鋼帯に射出成形により固定されているが、この構造の場合、ステンレス鋼帯の駒部材に固定された部分はバネとして有効に働かない。そのことがステンレス鋼帯のばね設計に不利な要因となり、十分な疲労強度が得られなくなることが懸念される。さらに、ステンレス鋼帯に駒部材を射出成形する工程が生産性の低下の要因になると考えられる。
【0009】
また、特許文献1及び2のケーブル支持部材は、一方向にはある範囲まで動くことができるが、その一方向とは反対向きの反対方向にはストッパが働いて全く動かない支持部材となっている。このため、ケーブル支持部材に反対方向の荷重が掛かった場合には、特許文献1のものでは、合成樹脂ブロック体のピン結合部が破壊し、あるいは特許文献2のものではステンレス鋼帯(可携性材料)と駒部材(非連動固形物)とが剥離して破壊するおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、製造性が良好で耐久性の高いケーブル支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、支持すべきケーブル類の長手方向に沿って延びる少なくとも一本のケーブル支持部材と、ケーブル支持部材が挿通される少なくとも一つの支持部材挿通路及びケーブル類が挿通される一又は複数のケーブル挿通路であって、支持部材挿通路に並列配置された一又は複数のケーブル挿通路を有する、可撓性材料から形成されたチューブ部材とを具備するケーブル支持装置であって、ケーブル支持部材が、複数の駒部材及び弾性部材を備え、前記駒部材は、前記弾性部材が挿通される弾性部材挿通路を有し、更に前記ケーブル支持部材の長手方向の両側で隣接する駒部材と互いに接した状態での回動を可能にする関節面を有し、弾性部材は、複数の駒部材の弾性部材挿通路に挿通されて複数の駒部材を整列保持するとともに、複数の駒部材に圧縮力を加えており、前記ケーブル支持部材により、ほぼ直線状の中立状態と曲げ変形された湾曲状態とをとり得ることを特徴とする、ケーブル支持装置を提供する。
【0012】
これによると、ケーブル支持部材の複数の駒部材は、それらを挿通する弾性部材により圧縮荷重を受けて保持されるが、個々には弾性部材と固定されず、また複数の駒部材は互いに関節面で接するだけで互いに例えばピン等で連結されない単純な構造なので、耐久性が高く且つ製造が容易なケーブル支持部材を備えるケーブル支持装置を得ることができる。
【0013】
また、駒部材の前述の単純な構造の故に、駒部材の軸方向(ケーブル長方向)の長さを相当に短くすることも可能であり、そうすることにより最小曲率半径の小さなケーブル支持部材を得ることが可能になる。
【0014】
また、ケーブル支持部材は、前記中立状態から一方向に及び前記一方向とは反対方向に弾性的に曲げ変形可能であるとともに、一定の曲げ荷重を受けたときの、前記反対方向への曲げ変形のたわみ量が前記一方向への曲げ変形のたわみ量より小であるように構成され得る。
【0015】
これによると、ケーブル支持部材は、一方向に比べて曲がり難いとはいえ反対方向にも曲げ変形が可能であるので、ケーブル支持部材に反対方向の不測の大きな荷重がかかった場合にも変形できるので破損が防止される。
【0016】
本発明では、ケーブル類を水平方向に保持したときの、ケーブル支持部材の前記反対方向への自重による曲げ変形のたわみ量を実質的にゼロにすることが可能である。
【0017】
本発明では、ケーブル支持部材が前記一方向に曲げ変形されるときに回動する複数の駒部材のそれぞれの回転軸線に対して弾性部材が直交するように配置されていることが好ましい。
【0018】
本発明では、支持部材の弾性部材を円筒形コイルばねから構成できる。これにより、コイルばねの軸線方向の及び曲げに対する高い弾性変形能力により耐久性の高い支持部材を得ることができる。
【0019】
本発明では、前記一方向へ曲げ変形されたときに外周側に位置するチューブ部材の壁部の厚さが、内周側に位置する壁部の厚さよりも厚いチューブ部材が可能である。このように、チューブ部材の外周側を厚くすることにより、ケーブル支持装置の移動時に、例えばそれを載置する他の部材との接触に起因して発生する振動及び騒音を減衰する効果を高めることが可能になる。
【0020】
本発明では、チューブ部材の並列配置された複数のケーブル挿通路の間、及びケーブル挿通路と支持部材挿通路との間の各接続部が人力により互いに切り離し可能であるように形成され得る。これによれば、固定手段より外端側のチューブ部材のケーブル挿通路を隣接する挿通路から接続部で簡単に分離することが可能になり、その結果、複数のケーブル類の接続先の位置が互いに離れていたとしても、複数のケーブル類をチューブ部材で保護した状態でそれぞれの接続先に接続することが可能になる。
【0021】
本発明では、チューブ部材は、対向する外表面を有する二つの外壁部と、横断面形状が波形の仕切り壁部であって、二つの外壁部の間に設けられて二つの外壁部に前記波形の各頂部で結合している仕切り壁部とを有し、支持部材挿通路及び/又はケーブル挿通路の各々が、仕切り壁部の一つの波形部分と外壁部とによって形成されることが可能である。
【0022】
チューブ部材をこのように形成することにより、長円形、楕円形、或いは紡錘形断面の挿通路を有するチューブ部材に比較して空隙率を低下させて高密度でケーブル類を配線することが可能になる一方で、例えば空隙率の低い矩形断面の挿通路からなるチューブ部材に比較して、チューブ部材の曲げ剛性を低下させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施形態によるケーブル支持装置の斜視図であって、一端側に分解及び部分破断図を含む斜視図である。
【図2】前記ケーブル支持装置のケーブル支持部材の一方の端部側を示す部分的な正面図である。
【図3】前記ケーブル支持部材の駒部材の三面図である。
【図4】一方向にU字状に曲げられたケーブル支持部材を示す正面図である。
【図5】固定手段の止め金具とそれに取付けられたケーブル支持部材の端部を示す斜視図である。
【図6】第2の実施形態によるケーブル支持装置のチューブ部材の横断面図である。
【図7】第3の実施形態によるケーブル支持装置のチューブ部材の部分拡大横断面図である。
【図8】第4の実施形態によるケーブル支持装置の模式的横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施形態によるケーブル支持装置10について説明する。
図1は、第1の実施形態のケーブル支持装置10のU字状に湾曲した状態の斜視図であって、装置の一端側に分解及び部分破断図を含んでいる。このケーブル支持装置10は、支持すべきケーブル類11の長手方向に延びる二本のケーブル支持部材1(図では一本のみが示される)と、可撓性材料から形成され、複数のチューブが並んだチューブ部材9と、チューブ部材9に挿通されたケーブル類11及び前記ケーブル支持部材1をチューブ部材9と共に固定するために両端部に設けられた二つの固定手段5とを具備している。
【0025】
本実施形態におけるチューブ部材9は、ケーブル支持部材1が挿通される、両外側で平行に延びる二本の支持部材挿通路9aと、この支持部材挿通路9aの間に並列配置された、ケーブル類11が挿通される三本のケーブル挿通路9bとを有している。それら挿通路は本実施形態ではいずれも長円形の横断面形状を有するものであって、この長円形の端部で隣接する挿通路と結合されている。また、このようなチューブ部材9は、例えばEPTFEを母材とした2枚のシートを、挿通路の空間を残して接合することにより、あるいはポリ塩化ビニルを材料として溶融押出成形することにより製造することができる。
【0026】
また、図1の実施形態では、チューブ部材9の挿通路の横断面形は長円形であるが、それが紡錘形、楕円形、円形、矩形等である実施形態も本発明において可能である。
【0027】
図2は、本発明に係るケーブル支持部材1の一端側を示す図である。このケーブル支持部材1は、支持すべきケーブル類11のケーブル長方向に沿って延びる長さを有しており、またケーブル長方向に沿って並べられた直方体状の複数の駒部材2と、前記ケーブル長方向に並べられた複数の駒部材2を貫通する円筒形コイルばね3からなる一本の弾性部材3と、図2では一端側の一つしか示されないが、弾性部材3の両端部に固定された二つのスリーブ部材4とを備えている。なお、駒部材2は、直方体状に限らず、円筒形等であってもよい。また、駒部材2を貫通する弾性部材3は一本に限定されるものではなく、二本以上の弾性部材3が駒部材2を貫通する構成としてもよい。
【0028】
駒部材2の材料としては、例えば、液晶ポリマ(LCP)、ポリアセタール(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂材料やアルミ等の金属材料や木製材料等が挙げられる。そして、耐摩耗性を高めるため、樹脂材料にガラスフィラーを混合してもよく、また、低摩擦とするために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合してもよい。また、弾性部材3は、図2の実施形態では、ステンレス鋼線から作られた円筒形コイルばねであるが、弾性部材3は、軸線方向の変形及び曲げ変形に高い弾性変形能力を有するものであればよいので、例えばゴム製の棒状の部材から構成されることも可能である。
【0029】
図3の(A)に示すように、駒部材2には、弾性部材3が貫装されるケーブル長方向に貫通する弾性部材挿通路2aが形成されている。弾性部材挿通路2aは中空の円筒形状に限らず、弾性部材を挿通して保持できる形状であればよく、したがって例えば一部が開放したC型の横断面形状であってもよいし、角形の穴等であってもよい。また、図3の(B)に示すように、駒部材2には、ケーブル長方向の一方の側に第1関節面2k1及び他方の側に第2関節面2k2が形成されている。第1関節面2k1は、半円状の第1凸部2bと、この第1凸部2bに連続する半円状の第1凹部2cのケーブル長方向の端面から構成され、また、第2関節面2k2は半円状の第2凹部2dと、この第2凹部2dに連続する半円状の第2凸部2eのケーブル長方向の端面から構成される。第1関節面2k1と第2関節面2k2は互いに嵌合するように、第1凸部2b、第1凹部2c、第2凹部2dおよび第2凸部2eが、ほぼ同一径で形成されている。
【0030】
複数の駒部材2をケーブル長方向に並べたとき、第1凸部2bは第2凹部2dに嵌まり込み、第2凸部2eは第1凹部2cに嵌まり込むようになっている。そして、第1凸部2bおよび第2凹部2dは、それらの円弧中心Cb,Cdが、図3の(B)で見たとき、弾性部材挿通路2aに貫装された弾性部材3の中心軸線L上に位置するように形成されている。また、第2凸部2eおよび第1凹部2cは、それらの円弧中心Ce,Ccが、中心軸線Lから、図3の(B)の上方に、距離aだけ離間した直線La上に位置するように形成されている。
【0031】
また、第2凹部2dにおける第2凸部2eの形成側とは逆側には、円弧中心Cdを通り、且つ中心軸線Lと直交する直線Lbに対し角度θで傾斜した傾斜部2fが形成されている。一方、第1凸部2bにおける第1凹部2cの形成側とは逆側には、円弧中心Cbを通り、且つ中心軸線Lと直交する直線Lcに対し距離bだけずれた直線部2gが形成されている。複数の駒部材2をケーブル長方向に並べたとき、傾斜部2fと直線部2gとの間には、隙間が形成されるようになっている。
【0032】
また、図3の(C)に示すように、駒部材2には、ケーブル長方向の一方の側に矩形状の凸部2hが形成され、ケーブル長方向の他方の側に矩形状の凹部2iが形成されている。複数の駒部材2をケーブル長方向に並べたとき、凸部2hは凹部2iに嵌り込むようになっている。
【0033】
このように構成された駒部材2は、その第1関節面2k1及び第2関節面2k2を隣接する駒部材2の第2関節面2k2及び第1関節面2k1にそれぞれ接触させた状態で互いに時計回り又は反時計回りに回動することができる。
【0034】
図2に示されるように、弾性部材3の端部には、中空円筒状の円筒部4aと大径のフランジ部4bとを有するスリーブ部材4が固定されている。スリーブ部材4は、本実施形態では、その円筒部4a内に挿入された弾性部材3の端部に圧着固定されている。但し、スリーブ部材が、溶接、ろう付け、ピン固定等の他の固定法により弾性部材に固定される実施形態も可能である。また、スリーブ部材4は、支持部材1の一端側とは反対側の図2で示されない他端側でも同様に弾性部材3に固定されている。
【0035】
また、ケーブル支持部材1は、整列された複数の駒部材2に対して弾性部材3から圧縮力が作用するように構成されている。このため、弾性部材3は、図2の直線状態で、その自由長からある長さだけ引っ張られた伸張状態にあり、弾性部材3の両端に固定された二つのスリーブ部材4の円筒部4aの端面を介して、挟んだ多数の駒部材2に圧縮力を作用している。圧縮力を作用された複数の駒部材2は、図2に示されるように、その関節面同士を接触させて直線状に整列される。
【0036】
図2に示される実施形態では、弾性部材3の伸張状態により発生する力は、スリーブ部材4を介して駒部材2に作用したが、ケーブル支持部材1の両端に位置する駒部材2にピン穴2j(図3参照)を形成し、ピン(図示省略)をそのピン穴2jに通して、両端に位置する駒部材2を弾性部材3に係止し、その二つの駒部材2を介して他の内側に整列した複数の駒部材2に圧縮力を作用してもよい。
【0037】
以上のような構成のケーブル支持部材1によれば、ケーブル支持部材1に弾性部材3から駒部材2へ向かう方向の荷重Pb、すなわち図2に示すように、関節面同士が接触して整列した駒部材2の直線部2g、傾斜部2fが接触する方向へ駒部材2を回動させる方向への荷重(一方向への荷重)が掛かった場合には、ケーブル支持部材1はBb方向に曲がる。このとき、弾性部材3はBb方向に弾性的に曲がり、ケーブル支持部材1のU字状湾曲部を主に作図した図4に示すように、複数の駒部材2は第1凸部2bが第2凹部2d内で回動できるので一方向に折り曲げられ、弾性部材3がU字状に曲がれば複数の駒部材2は弾性部材3の曲げに追従してU字状になる。このとき、U字部分は、傾斜部2fと直線部2gとが当接又は近接しており、U字部分の最小曲率半径Rは、傾斜部2fの角度θ及び駒部材2の軸方向の長さにより決定される。また、駒部材2のこのときの回動の中心は第1凸部2bおよび第2凹部2dの円弧中心Cb,Cdに一致する。
【0038】
一方、ケーブル支持部材1に駒部材2から弾性部材3へ向かう方向の荷重Pa、すなわち、図2に示すように整列した駒部材2の直線部2g、傾斜部2fが離間する方向へ駒部材2を回動させる方向への荷重(反対方向への荷重とする)が掛かった場合には、ケーブル支持部材1はBa方向に曲がる。このとき、弾性部材3はBa方向に弾性的に曲がり、複数の駒部材2は第2凸部2eが第1凹部2c内で回動できるので反対方向に折り曲げられ、弾性部材3がU字状よりも開いた弓状に曲がれば複数の駒部材2は弾性部材3の曲げに追従して弓状になる。このとき、第1凸部2bおよび第2凹部2dの円弧中心Cb,Cdは、弾性部材3の中心軸線L上に位置し、第2凸部2eおよび第1凹部2cの円弧中心Ce,Ccは、中心軸線Lから距離a離間した直線La上に位置しているので、反対方向の折り曲げ力は一方向の折り曲げ力より大きくなる。よって、本実施形態のケーブル支持部材1は、一方向へは曲がり易く、反対方向へは曲がり難いという性質を備える。換言すると、ケーブル支持部材1は、直線状の中立状態から一定の曲げ荷重を受けたときの前記反対方向への曲げ変形のたわみ量が前記一方向へのたわみ量より小であるという性質を備える。
【0039】
これは、第1凸部2bおよび第2凹部2dの円弧中心Cb,Cdは、弾性部材3の中心軸線L上に位置し、第2凸部2eおよび第1凹部2cの円弧中心Ce,Ccは、中心軸線Lから距離a離間した直線La上に位置しているので、一方向へ駒部材2を円弧中心Cb或いはCdを中心に回動させた場合よりも反対方向へ駒部材を円弧中心Ce或いはCcを中心に回動させた場合のほうが同じ回動量であっても弾性部材3の変位量あるいは伸び量は大きくなり、その結果、反対方向への回動のほうが力を要するためである。なお、本実施形態では、円弧中心Cb,Cd、すなわちケーブル支持部材1が一方向へ曲げ変形されるときの複数の駒部材2の回動のそれぞれの回転軸線が、弾性部材3の中心軸線Lにちょうど直交するように配置されているが、一方向への曲がりやすさと反対方向への曲がりやすさを最適にバランスさせるという見地から、前記弾性部材3の中心軸線Lにはかろうじて直交しないが弾性部材3に直交する実施形態、即ち前記回転軸線が弾性部材3に直交するように配置される実施形態も好ましい態様の一つである。
【0040】
また、ケーブル支持部材1の反対方向への曲げに要する荷重は、弾性部材3の中心軸線Lに沿って作用する力(圧縮力)の、前記距離a離れた円弧中心Ce,Ccに関するモーメントに比例的関係を有しているので、反対方向への曲げ剛性の高いケーブル支持部材1が望ましい場合には、前記距離aを長くすること、及び弾性部材3の力を大きくするために例えばその組立時の初期伸張量を増大すること、あるいは弾性部材3のバネ定数を高めることによりそれが実現できる。このようにして得られるケーブル支持部材1の反対方向への曲げ剛性を、水平方向に配置されたときにケーブル類11とケーブル支持装置10の自重によって生じる反対方向への曲げ変形のたわみ量が実質的にゼロになるまで高めることは容易に実現可能であり、必要であればそれ以上高くすることも可能である。
【0041】
また、第1凸部2bおよび第2凹部2dの円弧中心Cb,Cdは、弾性部材3の中心軸線L上に位置していることから、常時は直線状の弾性部材3は、駒部材2を直線状に整列(第1凸部2bおよび第2凹部2dが嵌合)した状態で保持することが可能である。
【0042】
また、複数の駒部材2は、凸部2hが凹部2iに嵌まり込んでいるため、ケーブル支持部材1にねじれ力、すなわち弾性部材3の中心軸線L回りの回転力が掛かっても、複数の駒部材2がずれてしまうような事態を防止することができる。
【0043】
また、矩形状の凸部2hと矩形状の凹部2iは傾斜部2fと直線部2gが接触するまで駒部材2が回動した場合でも嵌合している状態(矩形状の凸部2hが矩形状の凹部2i内に位置している状態)となるように構成されており設計上意図する駒部材2の回転角度(傾斜部2fと直線部2gが接触するまで駒部材が回動した場合)では複数の駒部材2がずれてしまうような事態を防止することができる構成となっている。
【0044】
また、弾性部材3に駒部材2は固定されずに挿通され、弾性部材3から受ける圧縮力により駒部材2は互いに接触して整列を維持する構成であるので、反対方向の荷重が加わった際にも駒部材2や弾性部材3が破損することが防止される。なお、本実施形態では、ケーブル支持部材1の直線状の中立状態において、弾性部材3が駒部材2に圧縮力を作用するように構成されているが、ケーブル支持部材1の中立状態においては、弾性部材3が駒部材2に力を作用しない実施形態も可能である。その場合、直線状態において関節面で互いに嵌合する複数の駒部材2は弾性部材3から力を受けないが、例えば反対方向に曲げ変形されたときに弾性部材3が力を作用する。
【0045】
次に、固定手段5について説明すると、第1の実施形態における固定手段5は一つのケーブル支持装置10の両端部に備えられていて、図1では図の上側の端部における固定手段5はケーブル類11を固定した状態で示されるのに対して、図の下側の端部における固定手段5は分解された状態で示されている。図1で示されるように、固定手段5は、チューブ部材9等を間に挟んで向き合う2枚のプレート部材6と、チューブ部材9の支持部材挿通路9a内に配置されて2枚のプレート部材6の間に挟まれる二つの止め金具7と、8本の固定ネジ8とを具備している。プレート部材6は、金属製のもので、概ね矩形状を呈しているが、矩形の長辺側が凹円弧を描く輪郭を有しており、また、止め金具7へ固定するための4個の穴6aと、例えばロボット走行装置(図示せず)等に固定するための二つの装置固定穴6bを有している。また、プレート部材6は、ケーブル類11の把持固定を確実にするために、内側に突出する3個の小突起6cも有する。
【0046】
図5は、図1の部分拡大斜視図であり、止め金具7とそれに取付けられたケーブル支持部材1の端部の拡大斜視図である。止め金具7は、図5に示されるように、ネジ穴付きの二本のスタッド7aが立設されたスタッド立設部7bと、コの字状部分7cとを有している。止め金具7は、そのコの字状部分7cの内側の空間にスリーブ部材4の円筒部4aが嵌合して、スリーブ部材4のフランジ部4bがコの字状部分7cの端部と隣接するスタッド7aとの間に配置されるように形成されている。
【0047】
このように構成された固定手段5は、チューブ部材9の両外側の二本の支持部材挿通路9aに、止め金具7が両端に取付けられたケーブル支持部材1を各一本配置し、且つチューブ部材9の三本のケーブル挿通路9bにケーブル類11を挿通した状態で、2枚のプレート部材6をチューブ部材9の上から止め金具7のスタッド7aにネジ固定することにより、ケーブル支持部材1とケーブル類11とをチューブ部材9に収容した状態で互いに固定し、ケーブル支持装置10として一体的に取り扱うことを可能にする。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態によるケーブル支持装置について説明する。このケーブル支持装置は、第1の実施形態のものに対してチューブ部材109が異なっているが、他の点については同様の構成を有しているので、異なる点についてのみそのチューブ部材109の横断面図である図6を参照して説明する。
【0049】
第2の実施形態によるケーブル支持装置を図6に示す。この特徴的な変更点は、図の上側の壁部109c1の肉厚t1が図の下側の壁部109c2の肉厚t2より厚くなるように形成されたことである。ここで、図6のチューブ部材109の上側は、ケーブル支持部材1及び従ってチューブ部材109が前記一方向へU字状に曲げられたときの外周側に対応し、下側は内周側に対応している。チューブ部材109の外周側は、ケーブル支持装置をU字形に湾曲させて移動させるときに、それを載せる他の部材(図示せず)に接する側に対応する。したがって、チューブ部材109の外周側を厚くすることにより、ケーブル支持装置の移動時に前記他の部材との接触に起因して発生する振動及び騒音を減衰する効果を高めることが可能になる。更に内周側を薄くする事で柔軟性を確保しつつ、同時に軽量化が可能になる。
【0050】
次に、本発明の第3の実施形態によるケーブル支持装置について説明する。このケーブル支持装置は、第1の実施形態のものに対してチューブ部材209が異なっているが、他の点については同様の構成を有しているので、異なる点についてのみそのチューブ部材209の部分拡大横断面図であって、チューブ部材209の二つの紡錘形のケーブル挿通路209bの間の接続部209dを中心に示す図7を参照して説明する。
【0051】
第3の実施形態によるケーブル支持装置では、チューブ部材209の並列配置された複数のケーブル挿通路209bの間の各接続部209dが人力により互いに切り離し可能であるように形成されている。なお、図示しないが、支持部材挿通路とケーブル挿通路209bとの間の接続部209dも同様に形成されている。この接続部209dには、接続部209dの肉厚を本実施形態では1/2程度まで減ずるような深さのスリット209sが上下両面から形成されている。また、接続部209dのそのように減少された厚さは、ケーブル類11の保持を可能とするが人力により破断可能な厚さとなるように決定されたものである。なお、スリット209sが図の上下どちらか一方の面から形成される実施形態も可能である。また、スリット等は設けずに接続部209d全体の肉厚を壁部209cの肉厚より薄くすることにより接続部209dで分離可能にする実施形態も可能である。
【0052】
第3の実施形態によるケーブル支持装置では、固定手段5より外端側のチューブ部材209のケーブル挿通路209bを隣接する挿通路から接続部209dで簡単に分離することが可能になり、その結果、複数のケーブル類11の接続先の位置が互いに離れていたとしても、複数のケーブル類11をチューブ部材209で保護した状態でそれぞれの接続先に接続することが可能になる。
【0053】
次に、第4の実施形態によるケーブル支持装置について、その横断面図である図8を参照して説明する。このケーブル支持装置は、第1の実施形態のものに対してチューブ部材309が異なっているが、他の点については同様の構成を有しているので、異なる点についてのみ説明する。
【0054】
第4の実施形態によるケーブル支持装置の特徴は、それが図8のような横断面形状を有している点で第1の実施形態と異なっている。したがって、第4の実施形態におけるチューブ部材309は、外表面を有して対向する二つの外壁部309cと、前記二つの外壁部309cの間に形成された横断面形状が波形の仕切り壁部309eとを有していて、仕切り壁部309eは、前記二つの外壁部309cに前記波形の各頂部で結合している。その結果、支持部材挿通路309a及びケーブル挿通路309bの各々が、仕切り壁部309eの一つの波形部分と外壁部309cとによって形成される。
【0055】
チューブ部材309を第4の実施形態のように形成することにより、長円形、楕円形、或いは紡錘形断面の挿通路を有するチューブ部材に比較して空隙率を低下させて高密度でケーブル類11を配線することが可能になる一方で、例えば空隙率の低い矩形断面の挿通路からなるチューブ部材に比較して、チューブ部材の曲げ剛性を低下させることが可能になる。
【0056】
その他の実施形態
第1の実施形態のケーブル支持装置10は、ケーブル支持部材1を二本備えているが、本発明においては、ケーブル支持部材1の本数が一本又は三本以上の実施形態(図示せず)も可能であり、ケーブル支持部材1の配置場所もチューブ部材9の両外側に限定されるわけではなく様々な位置が可能である。同様に、チューブ部材のケーブル挿通路9bが複数ではなく一本の実施形態も可能である。
【0057】
また、第1の実施形態では、ケーブル支持部材1の駒部材2の第1凸部2bおよび第2凹部2dの円弧中心Cb,Cdは、弾性部材3の中心軸線L上に位置し、第2凸部2eおよび第1凹部2cの円弧中心Ce,Ccは、中心軸線Lから距離a離間した直線La上に位置しているが、本発明においては、第1凸部2bおよび第2凹部2dの円弧中心Cb,Cdが、弾性部材3の中心軸線L上に位置しないが、第2凸部2eおよび第1凹部2cの円弧中心Ce,Ccより前記中心軸線Lに近い位置に設けられる実施形態も可能である。このような実施形態でも、ケーブル支持部材は、一方向に曲がりやすく反対方向に曲がり難いという性質を有する。
【0058】
さらに、第1凸部2bおよび第2凹部2dを有するが、第2凸部2eおよび第1凹部2cを有さない駒部材(図示せず)によるケーブル支持部材の実施形態も可能である。この実施形態の場合、ケーブル支持部材の一方向と反対方向への曲げ変形が共に、各駒部材2の第1凸部2bおよび第2凹部2dの円弧中心Cb,Cdを支点にした回動の結果もたらされる。
【0059】
また、ケーブル支持部材1の複数の駒部材2は互いに関節面で接するだけの単純な構造を有するので、駒部材2の軸方向(ケーブル長手方向)の長さを図3の(B)に示されるものより相当に短く、例えば1/2以下にすることも可能である。そのように駒部材2の軸方向の長さを短縮することにより、最小曲率半径の小さなケーブル支持部材1を得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0060】
1 ケーブル支持部材
2 駒部材
2a 弾性部材挿通路
2k1 第1関節面
2k2 第2関節面
3 弾性部材
4 スリーブ部材
5 固定手段
6 プレート部材
7 止め金具
9 チューブ部材
9a 支持部材挿通路
9b ケーブル挿通路
10 ケーブル支持装置
11 ケーブル類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持すべきケーブル類の長手方向に沿って延びる少なくとも一本のケーブル支持部材と、
前記ケーブル支持部材が挿通される少なくとも一つの支持部材挿通路、及び前記ケーブル類が挿通される一又は複数のケーブル挿通路であって、前記支持部材挿通路に並列配置された一又は複数のケーブル挿通路を有する、可撓性材料から形成されたチューブ部材とを具備するケーブル支持装置であって、
前記ケーブル支持部材が、複数の駒部材及び弾性部材を備え、
前記駒部材は、前記弾性部材が挿通される弾性部材挿通路を有し、更に前記ケーブル支持部材の長手方向の両側で隣接する駒部材と互いに接した状態での回動を可能にする関節面を有し、
前記弾性部材が、前記複数の駒部材の前記弾性部材挿通路に挿通されて前記複数の駒部材を整列保持し、前記弾性部材が前記複数の駒部材に圧縮力を加えており、
前記ケーブル支持部材により、ほぼ直線状の中立状態と曲げ変形された湾曲状態とをとり得ることを特徴とする、ケーブル支持装置。
【請求項2】
前記ケーブル支持部材は、前記中立状態から一方向に及び前記一方向とは反対方向に弾性的に曲げ変形可能であるとともに、一定の曲げ荷重を受けたときの、前記反対方向への曲げ変形のたわみ量が前記一方向への曲げ変形のたわみ量より小であるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のケーブル支持装置。
【請求項3】
ケーブル類を水平方向に保持したときの、前記ケーブル支持部材の前記反対方向への自重による曲げ変形のたわみ量が実質的にゼロであることを特徴とする、請求項1または2に記載のケーブル支持装置。
【請求項4】
前記ケーブル支持部材が前記一方向に曲げ変形されるときに回動する前記複数の駒部材のそれぞれの回転軸線に対して前記弾性部材が直交するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブル支持装置。
【請求項5】
前記弾性部材が円筒形コイルばねであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のケーブル支持装置。
【請求項6】
前記一方向へ曲げ変形されたときに外周側に位置する前記チューブ部材の壁部の厚さが、内周側に位置する壁部の厚さよりも厚いことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のケーブル支持装置。
【請求項7】
前記チューブ部材の並列配置された複数の前記ケーブル挿通路の間、及び前記ケーブル挿通路と前記支持部材挿通路との間の各接続部が人力により互いに切り離し可能であるように形成されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のケーブル支持装置。
【請求項8】
前記チューブ部材は、対向する外表面を有する二つの外壁部と、横断面形状が波形の仕切り壁部であって、前記二つの外壁部の間に設けられて前記二つの外壁部に前記波形の各頂部で結合している仕切り壁部とを有しており、前記支持部材挿通路及び/又は前記ケーブル挿通路が、前記仕切り壁部の一つの波形部分と前記外壁部とによって形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のケーブル支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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