説明

ケーブル構造および車両

【課題】ケーブルの断線時に芯線への不用意な接触を防ぐケーブル構造および車両、を提供する。
【解決手段】ケーブル構造は、電流が流れる芯線21と、芯線21を覆う被覆線26とを備える。芯線21は、芯線21の他の部位よりも小さい強度で互いに接合された芯線部22および芯線部23を含む。被覆線26は、被覆線26の他の部位よりも小さい強度で互いに接合された、芯線部22を覆う被覆線部27と、芯線部23を覆う被覆線部28とを含む。被覆線部27,28の先端27p,28pは、それぞれ芯線部22,23の先端22p,23pよりも突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、ケーブル構造および車両に関し、より特定的には、車両駆動用の高圧電流が流れるケーブル構造および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のケーブル構造に関して、たとえば、特開平5−38975号公報には、感電事故や点灯回路の破損を防止することを目的とした車両用放電灯の点灯装置が開示されている(特許文献1)。特許文献1では、絶縁被膜された高圧リード線をアラミド繊維製の保護チューブによって覆うことにより、高圧リード線を断線が起こり難い構造とするとともに、高圧リード線に断線やショートが起きた場合にも、チューブ外に対する電気絶縁を確保する。
【0003】
また、特開2000−92605号公報には、自動車の衝突による破損が生じた場合に高電圧による感電を防止することを目的とした自動車用安全装置が開示されている(特許文献2)。特許文献2では、自動車の衝突時に、衝突検出装置が衝突検出情報を生成する。開閉器制御装置は、この情報に基づき、直流電源セルユニット間の接続を行なう開閉器を開く。
【0004】
また、特開2002−93517号公報には、高圧ケーブル同士の接続部周囲の絶縁性を高めて漏電や放電の危険性を無くし、また高圧ケーブル同士の接続を簡単かつ安全に行なうことを目的とした高圧ケーブルの中間コネクタが開示されている(特許文献3)。特許文献3では、一方の高圧ケーブルの一端に、ジャックを内包する電気絶縁性のスリーブを固定し、他方の高圧ケーブルの一端に、プラグを内包する電気絶縁性のコネクターカバーを固定する。
【特許文献1】特開平5−38975号公報
【特許文献2】特開2000−92605号公報
【特許文献3】特開2002−93517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年ますます高まりつつある省エネ・環境問題を背景に、ハイブリッド自動車(Hybrid Vehicle)や電気自動車(Electric Vehicle)が大きく注目されている。たとえば、ハイブリッド自動車は、エンジンを駆動することによって動力を得るとともに、バッテリからの直流電圧をインバータによって交流電圧に変換し、その変換された交流電圧によりモータを回転させることによって動力を得る。
【0006】
このような構成を備えるハイブリッド自動車においては、バッテリおよびインバータ間ならびにインバータおよびモータ間でそれぞれ直流電流および交流電流を流すためのケーブルが用いられる。しかしながら、外部から車両に衝撃が加わると、ケーブルが断線する場合がある。この場合、ケーブルの芯線が露出し、芯線に不用意に触れられるおそれが生じる。
【0007】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、ケーブルの断線時に芯線への不用意な接触を防ぐケーブル構造および車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に従ったケーブル構造は、車両に用いられるケーブル構造である。ケーブル構造は、電流が流れる芯線と、芯線を覆う被覆線とを備える。芯線は、芯線の他の部位よりも小さい強度で互いに接合された第1芯線部および第2芯線部を含む。被覆線は、被覆線の他の部位よりも小さい強度で互いに接合された、第1芯線部を覆う第1被覆線部と、第2芯線部を覆う第2被覆線部とを含む。第1被覆線部および第2被覆線部の先端は、それぞれ第1芯線部および第2芯線部の先端よりも突出する。
【0009】
このように構成されたケーブル構造によれば、外部から車両に衝撃が加わり、ケーブルに過大な引っ張り力が作用した場合に、他の部位よりも小さい強度で接合された第1芯線部と第2芯線部との間および第1被覆線部と第2被覆線部との間で、ケーブルが断線する。このとき、第1被覆線部および第2被覆線部の先端がそれぞれ第1芯線部および第2芯線部の先端よりも突出するため、芯線が被覆線から露出することがない。このため、ケーブルの断線時に芯線に不用意に触れられることを防止できる。
【0010】
また好ましくは、第1被覆線部および第2被覆線部は、第2被覆線部が第1被覆線部の内側に挿入される形態で互いに接合される。また好ましくは、第1芯線部は、第1芯線部の他の部位よりも小さい断面積を有する第1断面部を含む。第2芯線部は、第2芯線部の他の部位よりも小さい断面積を有する第2断面部を含む。第1芯線部および第2芯線部は、第1断面部と第2断面部とが重なり合った形態で互いに接合される。
【0011】
このように構成されたケーブル構造によれば、第1芯線部と第2芯線部との間および第1被覆線部と第2被覆線部との間でケーブルが断線する構造を、簡易な構成により得ることができる。
【0012】
また好ましくは、ケーブル構造は、第2被覆線部に係止される係止部を含み、第1被覆線部と第2被覆線部との繋ぎ目を覆うカバー部材をさらに備える。係止部が第1被覆線部と第2被覆線部とを離間させる方向の引っ張り力を受けた時に、係止部による係止が解除される。このように構成されたケーブル構造によれば、ケーブルに過大な引っ張り力が作用することのない通常時には、第1被覆線部と第2被覆線部とが接合した状態を、カバー部材によってより確実に維持することができる。また、ケーブルに過大な引っ張り力が作用する負荷時には、係止部による係止が解除されることにより、ケーブルを第1被覆線部と第2被覆線部との間で断線させることができる。
【0013】
この発明に従った車両は、上述のいずれかに記載のケーブル構造が用いられた車両である。車両は、車両駆動用のモータと、バッテリに蓄電された直流電圧を昇圧するとともに交流電圧に変換し、モータに供給する電力制御装置とを備える。芯線に、電力制御装置からモータに供給される交流電流が流れる。このように構成されたケーブル構造によれば、ケーブルの断線時、車両駆動用の高圧電流が流れる芯線に不用意に触れられることを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、この発明に従えば、ケーブルの断線時に芯線への不用意な接触を防ぐケーブル構造および車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、ハイブリッド自動車に搭載された高電圧システムのブロック図である。この発明の実施の形態におけるケーブル構造は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能な2次電池(バッテリ)とを動力源とするハイブリッド自動車に適用されている。
【0017】
図1を参照して、ハイブリッド自動車には、バッテリ51と、モータとしてのモータジェネレータ52と、電力制御装置としてのPCU(power control unit)61とが搭載されている。PCU61は、昇圧コンバータ63およびインバータ62を内蔵する。
【0018】
バッテリ51と昇圧コンバータ63との間は、ケーブル83により接続されている。昇圧コンバータ63とインバータ62との間は、PCU61の内部でケーブル84により接続されている。ケーブル83およびケーブル84は、プラスケーブルとマイナスケーブルとから構成されている。インバータ62とモータジェネレータ52との間は、ケーブル81により接続されている。ケーブル81は、U相、V相、W相の3相ケーブルから構成されている。ケーブル81は、エンジンルーム13内の空間に露出している。
【0019】
図2は、ハイブリッド自動車を示す平面図である。図1および図2を参照して、ハイブリッド自動車には、エンジンルーム13が形成されている。エンジンルーム13には、エンジン11が収容されている。エンジンルーム13は、車両前方に形成されている。エンジンルーム13は、フロントバンパ16とダッシュボードパネル17との間に形成されている。ダッシュボードパネル17は、エンジンルーム13と車両室内との間を区画している。
【0020】
エンジンルーム13には、PCU61およびモータジェネレータ52が収容されている。モータジェネレータ52は、エンジン11と一体となって配置されている。PCU61とモータジェネレータ52とは、互いに距離を隔てて配置されている。PCU61とモータジェネレータ52とは、車両前後方向にずれて配置されている。PCU61は、モータジェネレータ52よりも車両前方に配置されている。PCU61は、フロントバンパ16に隣り合って配置されている。PCU61とモータジェネレータ52とは、車両幅方向にずれて配置されている。PCU61は、ハイブリッド自動車のサイドボディ18に隣り合って配置されている。
【0021】
モータジェネレータ52は、エンジン11の出力を補助し、車両の駆動力を高める働きをしたり、減速時に、回生ブレーキによる発電を行なったりする。バッテリ51は、発進時、加速時、登坂時などに、モータジェネレータ52に電力を供給したり、減速時に、モータジェネレータ52で回生発電した電力を蓄えたりする。バッテリ51は、充放電可能な電池であれば特に限定されず、たとえば、ニッケル水素電池であってもよいし、リチウムイオン電池であってもよい。
【0022】
バッテリ51は、たとえば、車両後方に設けられたラゲージルームに配置されている。バッテリ51は、フロントシートやリヤシートの下、フロントシートの運転席と助手席との間に設置されたセンターコンソールの下等に配置されてもよい。車両が3列シートの場合には、バッテリ51は、セカンドシートやサードシートの下に配置されてもよい。
【0023】
昇圧コンバータ63は、バッテリ51からインバータ62への入力電力を昇圧したり、インバータ62からバッテリ51への入力電圧を降圧したりする。インバータ62は、昇圧コンバータ63で昇圧された直流電流を、モータ駆動用の交流電流に変換したり、モータジェネレータ52で発電された交流電流を、バッテリ51に充電するための直流電流に変換したりする。
【0024】
昇圧コンバータ63による昇圧後の電流、つまりケーブル81および84に流れる電流は、450V以上の電圧を有する。昇圧コンバータ63による昇圧後の電流は、650V以上の電圧を有してもよい。バッテリ51と昇圧コンバータ63との間に流れる電流、つまりケーブル83に流れる電流は、200V以上の電圧を有する。
【0025】
図3は、図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。図4は、図3中のIV−IV線上に沿ったケーブルを示す断面図である。図3および図4を参照して、ケーブル81は、芯線21および被覆線26を含む。
【0026】
芯線21には、電流が流れる。芯線21は、略円形の断面形状を有する。図中では省略されて描かれているが、芯線21は複数本の素線が寄り合わされた多芯の撚り線からなる。芯線21は、導電性材料から形成されている。芯線21は、金属から形成されている。芯線21は、たとえば銅やアルミニウムから形成されている。被覆線26は、筒形状を有する。被覆線26は、芯線21を覆うように設けられている。被覆線26は、絶縁性材料から形成されている。被覆線26は、樹脂から形成されている。被覆線26は、たとえばポリエチレン(PE)やポリアミド(PA)から形成されている。
【0027】
芯線21は、芯線部22および芯線部23を含む。芯線部22と芯線部23とは、芯線21が延びる長手方向においてその両側に分離している。芯線部22と芯線部23とは、互いに接合されている。芯線部22と芯線部23とは、芯線21の他の部位よりも小さい強度で接合されている。すなわち、芯線21にその長手方向に沿った引っ張り力を作用させ、引っ張り力を徐々に増大させた場合に、芯線21は、まず芯線部22と芯線部23との間で断線する。
【0028】
芯線部22および芯線部23は、それぞれ、第1断面部としての断面部24および第2断面部としての断面部25を含む。断面部24および断面部25は、それぞれ、芯線部22および芯線部23の他の部位よりも小さい断面積を有する。断面部24および25は、略半円形の断面形状を有する。芯線部22および芯線部23は、断面部24と断面部25とを重ね合わせた形態で互いに接合されている。重ね合わされた断面部24および断面部25は、略円形の断面形状をなす。
【0029】
被覆線26は、被覆線部27および被覆線部28を含む。被覆線部27および被覆線部28は、それぞれ、芯線部22および芯線部23を覆うように設けられている。被覆線部27と被覆線部28とは、被覆線26が延びる長手方向においてその両側に分離している。被覆線部27と被覆線部28とは、互いに接合されている。被覆線部27と被覆線部28とは、被覆線26の他の部位よりも小さい強度で接合されている。すなわち、被覆線26にその長手方向に沿った引っ張り力を作用させ、引っ張り力を徐々に増大させた場合に、被覆線26は、まず被覆線部27と被覆線部28との間で断線する。
【0030】
被覆線部27および被覆線部28は、被覆線部27の内側に被覆線部28が挿入された状態で互いに接合されている。
【0031】
芯線部22および芯線部23は、それぞれ、先端22pおよび先端23pを含む。被覆線部27および被覆線部28は、それぞれ、先端27pおよび先端28pを含む。先端22pと先端27pとは、芯線部22および被覆線部27が延びる長手方向においてずれて配置されている。先端23pと先端28pとは、芯線部23および被覆線部28が延びる長手方向においてずれて配置されている。先端27pが先端22pよりも突出し、先端28pが先端23pよりも突出する。先端22pは、筒形状を有する被覆線部27の内側に配置され、先端23pは、筒形状を有する被覆線部28の内側に配置されている。
【0032】
図5は、外部から衝撃を受けたハイブリッド自動車の平面図である。図6は、図5中の2点鎖線VIで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。図5および図6を参照して、ハイブリッド自動車が他車に衝突するなどして、フロントバンパ16に外部からの衝撃が加わった場合を想定する。
【0033】
この場合、外部からの衝撃が、フロントバンパ16に隣り合って配置されたPCU61に加わる。PCU61はエンジンルーム13内で車両後方に向けて移動し、これに伴ってケーブル81が引っ張り力を受ける。この際、意図的に他の部位よりも小さい強度で接合された、芯線部22と芯線部23との間および被覆線部27と被覆線部28との間で、ケーブル81が断線する。本実施の形態では、先端27pおよび先端28pがそれぞれ先端22pおよび先端23pよりも突出するように、被覆線26が芯線21に設けられている。このため、芯線部22および芯線部23がそれぞれ被覆線部27および被覆線部28から露出するということがない。
【0034】
この発明の実施の形態1におけるケーブル構造は、車両としてのハイブリッド自動車に用いられるケーブル構造である。ケーブル構造は、電流が流れる芯線21と、芯線21を覆う被覆線26とを備える。芯線21は、芯線21の他の部位よりも小さい強度で互いに接合された第1芯線部としての芯線部22および第2芯線部としての芯線部23を含む。被覆線26は、被覆線26の他の部位よりも小さい強度で互いに接合された、芯線部22を覆う第1被覆線部としての被覆線部27と、芯線部23を覆う第2被覆線部としての被覆線部28とを含む。被覆線部27および被覆線部28の先端27p,28pは、それぞれ芯線部22および芯線部23の先端22p,23pよりも突出する。
【0035】
このように構成された、この発明の実施の形態1におけるケーブル構造によれば、ケーブル81が断線した場合に、芯線部22および芯線部23がそれぞれ被覆線部27および被覆線部28から露出することがない。このため、芯線部22および芯線部23に不用意に触れられることを確実に防止し、安全性を高めることができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、本発明におけるケーブル構造を、PCU61とモータジェネレータ52との間を接続するケーブル81に適用した場合を説明したが、これに限られず、たとえばPCU61とバッテリ51との間を接続するケーブル83に適用してもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、内燃機関とバッテリとを動力源とするハイブリッド自動車に本発明を適用したが、これに限定されず、燃料電池とバッテリとを動力源とする燃料電池ハイブリッド自動車(FCHV:Fuel Cell Hybrid Vehicle)、または電気自動車(EV:Electric Vehicle)に本発明を適用することもできる。本実施の形態におけるハイブリッド自動車では、燃費最適動作点で内燃機関を駆動するのに対して、燃料電池ハイブリッド自動車では、発電効率最適動作点で燃料電池を駆動する。また、バッテリの使用に関しては、両方のハイブリッド自動車で基本的に変わらない。
【0038】
また、化学変化等により自ら電気を創り出すバッテリ51を、外部からの供給により電気を蓄えるキャパシタ等の蓄電装置に置き換えても良い。
【0039】
キャパシタは、活性炭と電解液との界面に発生する電気2重層を動作原理とした電気2重層キャパシタのことである。固体として活性炭、液体として電解液(奇硫酸水溶液)を用いて、これらを接触させるとその界面にプラス、マイナスの電極が極めて短い距離を隔てて相対的に分布する。イオン性溶液中に一対の電極を浸して電気分解が起こらない程度に電圧を負荷させると、それぞれの電極の表面にイオンが吸着され、プラスとマイナスの電気が蓄えられる(充電)。外部に電気を放出すると、正負のイオンが電極から離れて中和状態に戻る(放電)。
【0040】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1において説明した図3中のケーブル構造の各種変形例について説明を行なう。以下、実施の形態1におけるケーブル構造と重複する構造については、説明を繰り返さない。
【0041】
図7は、図3中のケーブル構造の第1変形例を示す図であり、図7(A)は斜視図であり、図7(B)は側面図である。図7を参照して、本変形例では、ケーブル81が巻線31および32を含む。巻線31および巻線32は、それぞれ断面部24および断面部25の周囲に巻回されている。断面部24および断面部25は、それぞれ表面24aおよび表面25aを含む。芯線部22および芯線部23は、表面24aと表面25aとが接触するように接合される。
【0042】
このような構成によれば、巻線31および32によって断面部24および25を巻回することにより、表面24aおよび25aを接合面として確実に成形することができる。これにより、表面24aと表面25aとを面接触させ、両者の間で円滑に電流を流すことができる。
【0043】
図8は、図3中のケーブル構造の第2変形例を示す図であり、図8(A)は斜視図であり、図8(B)は本変形例で使用されるプレート部材を示す側面図である。図8を参照して、本変形例では、ケーブル81がプレート部材33を含む。プレート部材33は、平板形状を有する。プレート部材33は、導電性材料から形成されている。プレート部材33は、折り返し部34mおよび折り返し部34nを含む。折り返し部34mと折り返し部34nとは、互いにプレート部材33の表裏反対側に折り返して形成されている。折り返し部34mは、断面部25に向けて折り返され、折り返し部34nは、断面部24に向けて折り返されている。プレート部材33は、断面部24と断面部25との間に挿入される。折り返し部34mおよび34nは、断面部24および断面部25によって挟持され、プレート部材33から折り返される前の位置まで弾性変形する。
【0044】
このような構成によれば、折り返し部34mおよび34nが元の形状に戻ろうとするばね力が発生する。このばね力が断面部24および断面部25に作用することによって、芯線部22および芯線部23がその接合位置で被覆線部27および被覆線部28に圧迫された状態となる。これにより、芯線部22と芯線部23との接合強度を十分に確保し、ケーブル81に引っ張り力が作用しない通常時の断線を確実に防ぐことができる。
【0045】
図9は、図3中のケーブル構造の第3変形例を示す断面図である。図9を参照して、本変形例では、ケーブル81がカバー部材42を含む。被覆線部28は、ピン41を含む。ピン41は、被覆線部28の外周面から半径方向外側に向けて突出する。カバー部材42は、筒形状を有する。カバー部材42は、たとえば熱溶着によって被覆線部27に固定されている。カバー部材42には、係止部としての係止孔43が形成されている。ピン41が係止孔43に嵌ることにより、カバー部材42と被覆線部28とが係止されている。
【0046】
このような構成によれば、カバー部材42を設けることによって、ケーブル81に引っ張り力が作用しない通常時にケーブル81が断線することを防止できる。また、ケーブル81にある一定以上の引っ張り力が作用した場合には、ピン41が係止孔43から外れることにより、カバー部材42と被覆線部28との係止が解除される。この際、ピン41の強度やピン41が係止孔43に嵌る深さ等を調整することにより、ケーブル81が断線するときの引っ張り力の大きさを制御できる。
【0047】
このように構成された、この発明の実施の形態2におけるケーブル構造によれば、実施の形態1に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ハイブリッド自動車に搭載された高電圧システムのブロック図である。
【図2】ハイブリッド自動車を示す平面図である。
【図3】図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
【図4】図3中のIV−IV線上に沿ったケーブルを示す断面図である。
【図5】外部から衝撃を受けたハイブリッド自動車の平面図である。
【図6】図5中の2点鎖線VIで囲まれた範囲を拡大して示す断面図である。
【図7】図3中のケーブル構造の第1変形例を示す図である。
【図8】図3中のケーブル構造の第2変形例を示す図である。
【図9】図3中のケーブル構造の第3変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
21 芯線、22,23 芯線部、22p,23p,27p,28p 先端、26 被覆線、27,28 被覆線部、33 プレート部材、42 カバー部材、52 モータジェネレータ、61 PCU、81 ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられるケーブル構造であって、
電流が流れる芯線と、
前記芯線を覆う被覆線とを備え、
前記芯線は、前記芯線の他の部位よりも小さい強度で互いに接合された第1芯線部および第2芯線部を含み、
前記被覆線は、前記被覆線の他の部位よりも小さい強度で互いに接合された、前記第1芯線部を覆う第1被覆線部と、前記第2芯線部を覆う第2被覆線部とを含み、
前記第1被覆線部および前記第2被覆線部の先端は、それぞれ前記第1芯線部および前記第2芯線部の先端よりも突出する、ケーブル構造。
【請求項2】
前記第1被覆線部および前記第2被覆線部は、前記第2被覆線部が前記第1被覆線部の内側に挿入される形態で互いに接合される、請求項1に記載のケーブル構造。
【請求項3】
前記第1芯線部は、前記第1芯線部の他の部位よりも小さい断面積を有する第1断面部を含み、前記第2芯線部は、前記第2芯線部の他の部位よりも小さい断面積を有する第2断面部を含み、
前記第1芯線部および前記第2芯線部は、前記第1断面部と前記第2断面部とが重なり合った形態で互いに接合される、請求項1または2に記載のケーブル構造。
【請求項4】
前記第2被覆線部に係止される係止部を含み、前記第1被覆線部と前記第2被覆線部との繋ぎ目を覆うカバー部材をさらに備え、
前記係止部が前記第1被覆線部と前記第2被覆線部とを離間させる方向の引っ張り力を受けた時に、前記係止部による係止が解除される、請求項1から3のいずれか1項に記載のケーブル構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のケーブル構造が用いられた車両であって、
車両駆動用のモータと、
バッテリに蓄電された直流電圧を昇圧するとともに交流電圧に変換し、前記モータに供給する電力制御装置とを備え、
前記芯線に、前記電力制御装置から前記モータに供給される交流電流が流れる、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−37851(P2009−37851A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200859(P2007−200859)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】