説明

ケーブル用ケース

【課題】閉塞部材から引き出すケーブルの本数の限界を分岐可能な本数などで制限することなく、また、回線停止などを行うことなく、引出ケーブルを増設できるようにすることにより、引出ケーブルの敷設先以外に迷惑を掛けることなく、その引出ケーブルの増設作業を同一の閉塞部材を用いて容易にできるようにするケーブル用ケースを提供すること。
【解決手段】ドロップクロージャー10のスリーブ11の両端部11aを閉塞する閉塞部材12に、上端面に開口して内方に延在する上方挿通スリット31、および、下端面に開口して内方に延在する下方挿通スリット32のそれぞれを複数本並列させるとともに、これら挿通スリット31、32は、ドロップケーブルfの直径と略同一幅で開口することにより挿通状態にして外部に引出可能にし、充填材35を詰めることにより液密性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル用ケースに関し、詳しくは、引き出すケーブル本数の制限をなくすことのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に架設するケーブルの接続箇所や分岐箇所には、そのケーブルの接続部や部品などが雨水などにより侵食されてしまわないように、ケース内に内装することが行われている。
【0003】
この種のケーブル用ケースとしては、例えば、近年に増加している光ファイバーケーブルの分岐箇所にドロップクロージャー(ケーブル用ケース)が設けられており、その内部から光ファイバーケーブルを分岐したドロップケーブルを引き出して敷設することにより、各家庭などに光ファイバーを提供することが行われている。その光ファイバーの提供先が増える場合には、適宜、ドロップケーブルを増設して家庭などの提供先まで敷設することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−163718号公報
【特許文献2】特開平10−10390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来のケーブル用ケースでは、ケーブルを外部に引き出すための開口部を閉塞する閉塞部材に、予め規定本数分の引出ケーブルを挿通して引出可能に貫通孔が準備されている。例えば、図12に示すように、ドロップクロージャー100の場合には、スリーブ101の両端部を閉塞する閉塞部材102にドロップケーブルを挿通可能な複数個の貫通孔111が準備されている。
【0005】
しかしながら、このような閉塞部材100にあっては、引き出す必要のあるドロップケーブルの本数が予想よりも増加した場合には、その貫通孔111の開口数の多い種別に交換する必要があり、この場合には、該当経路の光ファイバー回線を停止しなければならない、という問題があった。
【0006】
さらに、このような閉塞部材100の構造では、既存の閉塞部材100に準備されている貫通孔111の開口数が足りなくなる度に、この交換作業を行わなければならず、その都度、該当経路の光ファイバー回線を停止しなければならない、という問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、閉塞部材から引き出すケーブルの本数の限界を分岐可能な本数などで制限することなく、また、回線停止などを行うことなく、引出ケーブルを増設できるようにすることにより、引出ケーブルの敷設先以外に迷惑を掛けることなく、その引出ケーブルの増設作業を同一の閉塞部材を用いて容易にできるようにするケーブル用ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第1の発明は、架設するケーブルの接続箇所や分岐箇所に設置されるケースであって、ケーブルを外部に引き出すための開口部と、該開口部を閉塞する閉塞部材と、を備えており、閉塞部材には、引出ケーブルを挿通状態にして引き出す経路空間が、該引出ケーブルの1本を挿通させるのに必要な開口面積よりも数倍以上に開口可能に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この発明では、開口部を閉塞する閉塞部材に、引出ケーブルの断面積の数倍以上で開口させることのできる経路空間が準備されており、引出ケーブルを1本ずつ挿通するのではなく、複数本を一遍にケース内から引き出すことができる。したがって、分岐可能な本数以上のケーブルを引き出すことができ、閉塞部材の交換を行うことなく、言い換えると、該当ケーブル系統を停止することなく、引出ケーブルを増設することができる。
【0010】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第2の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記閉塞部材には、引出ケーブルの経路空間として、複数の引出ケーブルの挿通可能なスリットが1つまたは2本以上形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
この発明では、閉塞部材のスリットに複数本の引出ケーブルを並列させた状態にしてケース内から引き出すことができる。したがって、分岐可能な本数以上のケーブルをスリットから引き出すことができ、引出ケーブルを適宜増設することができる。
【0012】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第3の発明は、上記第2の発明の特定事項に加え、前記スリットは、閉塞部材の外周端辺から内方に延在して、引出ケーブルを閉塞部材の外周端辺から進入可能に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
この発明では、閉塞部材のスリットの外周端辺の開口端部から複数本の引出ケーブルを並列させるように差し込んで挿通状態にすることによりケース内から引き出すことができる。したがって、既設のケーブルを含めて、分岐可能な本数以上の引出ケーブルをスリットから引き出すことができ、該当ケーブル系統を停止することなく、既設ケーブルを従来の閉塞部材からカッターなどにより外してスリット内に差し込んで挿通状態にしケース内から引き出すことができる。
【0014】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第4の発明は、上記第2または第3の発明の特定事項に加え、前記閉塞部材は、スリットが引出ケーブルの略線径幅で開口しており、該スリットには、引出ケーブルに隣接して隙間埋め材料が進入されていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明では、引出ケーブルを差し込んで挿通状態にした閉塞部材のスリットの隙間を隙間埋め材料を進入させて閉塞することができる。したがって、スリットの隙間からケース内に雨水などが無制限に浸入して内部の部品などが侵食されてしまうことを防止することができる。
【0016】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第5の発明は、上記第2または第3の発明の特定事項に加え、前記閉塞部材は、弾性変形材料により作製されており、前記スリットとして、当該スリットを形成する対面同士が密接していることを特徴とするものである。
【0017】
この発明では、引出ケーブルを差し込んで挿通状態にした閉塞部材のスリットを画成する壁面(対面)がその引出ケーブルの周面やその対面間同士で密接して、そのスリットを閉塞することができる。したがって、スリットの壁面間に隙間が形成されてケース内に雨水などが無制限に浸入し内部の部品などが侵食されてしまうことを防止することができる。
【0018】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第6の発明は、上記第2から第5のいずれかの発明の特定事項に加え、前記スリットの底部は、外部側に向かって傾斜するように形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
この発明では、引出ケーブルを挿通状態にすることのできる閉塞部材のスリット内に侵入した雨水などは、そのスリットの傾斜する底部を伝って外部に流出させることができる。したがって、スリットの壁面間に侵入した雨水などが底面を伝ってそのままケース内に流れ込んでしまうことをなくすことができる。
【0020】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第7の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記閉塞部材は、引出ケーブルの経路空間として、複数の引出ケーブルが挿通可能に開口するサブ開口部を有しており、該サブ開口部には、引出ケーブルの挿通可能な空間を絞る方向に閉塞する布状部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
この発明では、閉塞部材のサブ開口部内の布状部材により絞られている(開口している)空間内に複数本の引出ケーブルを通してケース内から引き出すことができる。したがって、分岐可能な本数以上のケーブルを布状部材による絞り空間から引き出すことができ、引出ケーブルを適宜増設することができる。
【0022】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第8の発明は、上記第7の発明の特定事項に加え、前記布状部材には、サブ開口部に面する箇所から引出ケーブルを挿通させる絞り空間まで連続する引出ケーブルの進入経路が形成されており、前記閉塞部材には、外周端辺からサブ開口部まで連続する引出ケーブルの進入経路が形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
この発明では、閉塞部材の外周端辺に位置する進入経路の開口端部から複数本の引出ケーブルを差し込んでサブ開口部内に位置させることができ、さらに同様に、そのサブ開口部内の布状部材の進入経路内に差し込んで布状部材による絞り空間内に位置させることにより、引出ケーブルを挿通状態にしてケース内から引き出すことができる。したがって、既設のケーブルを含めて、分岐可能な本数以上の引出ケーブルを布状部材の絞り空間から引き出すことができ、該当ケーブル系統を停止することなく、既設ケーブルを従来の閉塞部材からカッターなどにより外して布状部材の絞り空間を介してケース内から引き出すことができる。
【0024】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第9の発明は、上記第1の発明の特定事項に加え、前記閉塞部材は、引出ケーブルの経路空間として、複数の引出ケーブルが挿通可能に開口するサブ開口部を有しており、該サブ開口部には、当該サブ開口部に面する箇所から内方に向かって周回することにより、該内方に引出ケーブルを挿通可能な空間を画成する弾性変形可能な線状材料よりなる周回部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0025】
この発明では、閉塞部材のサブ開口部に設置されている周回部材の開口空間内に、その周回部材の線状材料を変形させるなどして複数本の引出ケーブルを通してケース内から引き出すことができる。したがって、分岐可能な本数以上のケーブルを周回部材内の開口空間から引き出すことができ、引出ケーブルを適宜増設することができる。
【0026】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第10の発明は、上記第9の発明の特定事項に加え、前記閉塞部材には、外周端辺からサブ開口部まで連続する引出ケーブルの進入経路が形成されていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明では、閉塞部材の外周端辺に位置する進入経路の開口端部から複数本の引出ケーブルを差し込んでサブ開口部内に位置させることができ、さらに、そのサブ開口部の周回部材の線状材料を弾性変形させつつその線状材料間に差し込んでその周回部材内の開口空間内に進入させて位置させることにより、引出ケーブルを挿通状態にしてケース内から引き出すことができる。したがって、既設のケーブルを含めて、分岐可能な本数以上の引出ケーブルを周回部材内の開口空間から引き出すことができ、該当ケーブル系統を停止することなく、既設ケーブルを従来の閉塞部材からカッターなどにより外して周回部材内の開口空間を介してケース内から引き出すことができる。
【0028】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第11の発明は、上記第9または第10の発明の特定事項に加え、前記周回部材は、帯状の線状材料により構成されて外周側領域が内側に位置するように周回することによって内方空間側ほど突出する円錐台形状に形成されており、該帯状線状材料は、外周側の外周側領域の外面が内周側の内周側領域の内面に面接触するように形成されていることを特徴とするものである。
【0029】
この発明では、周回部材の帯状線状材料が互いに面接触しつつ内側ほど突出することにより、例えば、閉塞部材が側面に設置されている場合には、面接触する帯状線状材料間から雨水などを無制限にケース内に侵入させることなく、外周面を伝わせて外部に滴下させることができる。したがって、周回部材の線状材料間から雨水などがケース内に無制限に浸入して内部の部品などが侵食されてしまうことを防止することができる。
【0030】
上記課題を解決するケーブル用ケースの第12の発明は、上記第1から第11のいずれかの発明の特定事項に加え、前記閉塞部材の内側には、対面する遮蔽部材が配設されているとともに、該遮蔽部材との間の下面に雨水の抜き穴が開口しており、遮蔽部材には、引出ケーブルを挿通させる開口部が形成されていることを特徴とするものである。
【0031】
この発明では、閉塞部材よりも外部に引き出すケーブルを遮蔽部材の開口部内にも挿通状態にして引き出すことができ、その閉塞部材よりも内側に侵入した雨水などがさらに内部に侵入しようとするのを遮蔽部材により防止するとともに、その雨水などを遮蔽部材との間の抜き穴から流出させることができる。したがって、閉塞部材よりも内側に侵入した雨水などがさらにケース内に浸入して内部の部品などを侵食してしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
このように本発明によれば、閉塞部材のスリットやサブ開口部から引出ケーブルの複数本を一遍にケース内から引き出すことができ、分岐可能な本数以上のケーブルをケース内から引き出すことができる。したがって、閉塞部材の交換のためにケーブル系統を停止するなど、既設のケーブルのユーザに迷惑を掛けることなく、その引出ケーブルの増設作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は本発明に係るケーブル用ケースの第1実施形態を適用したドロップクロージャーの一例を示す図である。
【0034】
図1において、ドロップクロージャー10は、例えば、電柱間に架設する光ファイバーケーブルF(図2、図3を参照)を内部に収装するとともに、その光ファイバーケーブルFから分岐させたドロップケーブルf(図2、図3を参照)を外部に引き出すことができるように設計されており、そのドロップケーブルfを敷設することにより各家庭などに光ファイバーを提供するために設置するものである。すなわち、ドロップケーブルfが引出ケーブルを構成している。
【0035】
このドロップクロージャー10は、角型の筒状に形成されたスリーブ11と、このスリーブ11の両端部(開口部)11aを閉塞する閉塞部材12と、この閉塞部材12間に位置して各種部品を設置する基台として機能するベース金具13と、内部に引き込む光ファイバーケーブルFを把持して固定する把持金具14と、電柱間に架設した吊線に引っ掛けて吊り下げ支持させる吊金具15と、を備えており、スリーブ11下面の中央部に長さ方向に延在する開閉スリット21が形成されることにより、内部を開閉可能に設計されているとともに、その開閉スリット21の側辺を下方に垂下させた対面部22をボルト23とナット24により密接させた状態にして閉止するようになっている。なお、ボルト23は、対面部22に形成されている貫通穴22aに挿通させることによりナット24に螺合させることができる。また、スリーブ11は、対面部22間にパッキン25を挟み込むことにより開閉スリット21を液密に閉塞するようになっており、閉塞部材12の周囲には不図示のパッキンを介装することにより液密に閉塞している。
【0036】
ここで、ドロップクロージャー10は、ベース金具13上に融着トレイ27と光カプラトレイ28が固定されており、把持金具14が把持固定する光ファイバーケーブルFの心線(光ファイバー)とドロップケーブルfの心線とを融着トレイ27で融着・接続するとともに、光カプラトレイ28で光ファイバーケーブルFの心線を不図示の光カプラで分岐することによりドロップケーブルfを増設することができるように準備されている。
【0037】
そして、このドロップクロージャー10の閉塞部材12は、図2および図3に示すように、上端面に開口して下方に延在する上方挿通スリット31が複数本(本実施形態では8本)並列しているとともに、下端面に開口して上方に延在する下方挿通スリット32が複数本(本実施形態では6本)並列しており、この挿通スリット31、32は、ドロップケーブルfの直径と略同一幅で開口している。
【0038】
これにより、挿通スリット31、32は、ドロップケーブルfの挿通に必要な開口面積の数倍で開口しており、複数本のドロップケーブルfを隣接する状態で一遍に挿通させることができる。また、この挿通スリット31、32は、光ファイバーケーブルFから分岐可能な本数より多くのドロップケーブルfを、閉塞部材12の外周面側の開口から内部に差し込んで挿通させた状態にすることによりドロップクロージャー10内から外部に引き出すことができ、光カプラトレイ28により分岐して増設したドロップケーブルfも同様にドロップクロージャー10内から外部に引き出すことができる。
【0039】
このため、ドロップクロージャー10は、閉塞部材12を交換することなく、言い換えると、既設のドロップケーブルfを一旦外すことなく(停止することなく)、必要なドロップケーブルfを増設するとともに、そのドロップケーブルfを空いている挿通スリット31、32に挿通して外部に引き出すことができる。
【0040】
また、この閉塞部材12は、下方挿通スリット32の真ん中に平行に形成されて、同様に、下端面に開口して上方に延在する幹ケーブル用挿通スリット33が形成されており、この幹ケーブル用挿通スリット33は、光ファイバーケーブルFの直径と略同一幅で開口している。
【0041】
これにより、幹ケーブル用挿通スリット33は、既設の光ファイバーケーブルFでも閉塞部材12の外周面の開口から内部に差し込んで挿通させた状態にすることにより外部に引き出すことができる。
【0042】
よって、例えば、図12に示す既設のドロップクロージャー100の場合でも、その閉塞部材102をカッターなどで切断するなどして貫通孔111、112から既設のドロップケーブルfや光ファイバーケーブルFを外すことにより、閉塞部材12の挿通スリット31〜33に挿通状態にして外部に引き出すことができ、光ファイバーの系統を停止することなく、既設と増設に関係なくドロップケーブルfを挿通スリット31、32から外部に引き出すことができる。なお、ドロップクロージャー10、100は、スリーブ11が共通である場合には、閉塞部材102を本実施形態の閉塞部材12に交換するだけでよい。
【0043】
さらに、挿通スリット31〜33は、開口空間を例えば、パテ(putty)などの充填材(隙間埋め材料)35を詰める(進入させる)ことにより雨水などが無制限にドロップクロージャー10内に侵入してしまわないように液密性を確保している。なお、この挿通スリット31〜33は、充填材35に代えて、内部空間と略同一形状(ドロップケーブルfと同一幅)のゴム材料からなる密閉部材を詰めることにより液密性を確保してもよいことは言うまでもない。
【0044】
また、この上方挿通スリット31は、底面31aが外部側に向かって降下する傾斜面に形成されており、充填材35との間に雨水などが侵入したとしても外部に向かって伝わせて滴下するようにすることにより液密性が高められている。なお、下方挿通スリット32や幹ケーブル用挿通スリット33でも、充填材35との間に雨水などが侵入したとしてもスリーブ11の下面で外部に向かって伝わせて滴下させることができる。
【0045】
これにより、このドロップクロージャー10でも、内部に雨水などが侵入して融着トレイ27や光カプラトレイ28などが侵食されてしまうことを防止することができ、従来のドロップクロージャー100と同等に取り扱うことができる。
【0046】
このように本実施形態においては、閉塞部材12の挿通スリット31、32にドロップケーブルfの複数本を一遍に挿通させてドロップクロージャー10内から引き出すことができるとともに、幹ケーブル用挿通スリット33に光ファイバーケーブルFを挿通させてドロップクロージャー10内から引き出すことができ、この光ファイバーケーブルFから分岐可能な本数以上のドロップケーブルfを同様にドロップクロージャー10内から引き出すことができる。したがって、閉塞部材12を用いることにより、閉塞部材の交換などのために光ファイバーケーブルFの系統全体を停止する必要がなく、既設のドロップケーブルfのユーザに迷惑を掛けることなく、適宜ドロップケーブルfの増設作業を行うことができる。
【0047】
次に、図4および図5は本発明に係るケーブル用ケースの第2実施形態を適用したドロップクロージャーの一例を示す図である。ここで、本実施形態は、上述実施形態と略同様に構成されていることから同様の構成には同一の符号を付して特徴部分を説明する(以下で説明する他の実施形態においても同様)。
【0048】
図4および図5において、閉塞部材40は、上述実施形態の閉塞部材12と同様に、ドロップクロージャー10のスリーブ11の両端部11aを閉塞するように設置されており、この閉塞部材40は、例えば、弾性変形性能を有する不連続気泡のスポンジなどにより作製することにより、切断面などを圧接する部材の表面形状に倣わせることができるとともに、表裏に水分が通過することがないように閉塞空間を画成することができる。
【0049】
この閉塞部材40には、幹ケーブル用挿通スリット33と共に、互いに対面する壁面同士が密接して内方から上端面に至る上方挿通スリット41と、同様に、互いに対面する壁面同士が密接して内方から下端面に至る下方挿通スリット42と、がそれぞれ複数本並列している。
【0050】
これにより、この挿通スリット41、42は、ドロップケーブルfの複数本を挿通させることのできる面積で開口可能であり、上述実施形態の閉塞部材12と同様に、複数本のドロップケーブルfを隣接する状態で一遍に挿通させてドロップクロージャー10内から外部に引き出すことができ、さらに、光ファイバーケーブルFから分岐可能な本数より多くのドロップケーブルfを増設して、また、既設のドロップケーブルfなどを停止することなく、既設の閉塞部材102などと交換して、ドロップクロージャー10内から外部に引き出すことができる。
【0051】
また、この挿通スリット41、42は、互いに対面する壁面がドロップケーブルfの周面に圧接して倣うように変形することにより隙間を埋めるように密接することができ、さらに、上方挿通スリット41は、最下の切れ端辺41aが外部側に向かって降下する壁面に形成されている。
【0052】
これにより、挿通スリット41、42は、対面する壁面間などに雨水などが無制限に侵入することがなく、また、侵入する雨水などは外部に向かって伝わせて滴下させることができ、液密性が確保されている。
【0053】
このように本実施形態においては、上述実施形態と同様の作用効果を得ることができ、これに加えて、挿通スリット41、42の壁面間に充填材などを詰めることなく、ドロップクロージャー10の液密性を確保することができる。したがって、ドロップケーブルfの増設作業をより容易に行うことができる。
【0054】
ここで、上述実施形態の他の態様としては、上下方向に延在する挿通スリット31〜33、41、42を閉塞部材12、40に形成する場合を一例に説明するが、これに限るものではなく、例えば、両側端面に開口して側方に延在する側方挿通スリットが複数本並列するように形成してもよく、この側方挿通スリットの場合でも外部側に向かって降下する形状に形成する方が好ましい。
【0055】
次に、図6〜図8は本発明に係るケーブル用ケースの第3実施形態を適用したドロップクロージャーの一例を示す図である。
【0056】
図6および図7において、ドロップクロージャー50は、上述実施形態と同様に、スリーブ11の両端部11aを閉塞するように閉塞部材52が設置されており、この閉塞部材52には、光ファイバーケーブルFを挿通して充填材35により液密性を確保しつつドロップクロージャー50から引き出すことのできる幹ケーブル用挿通スリット33が形成されているとともに、この幹ケーブル用挿通スリット33の上部に位置して複数本のドロップケーブルfを挿通・引出可能に大面積で開口するサブ開口部55が形成されている。
【0057】
このサブ開口部55には、図8に示すように、巾着布の構造に作製されて開口する布部材56が設置されており、この布部材56は、開口面積を調整する紐57を引いて結んでおくことによりドロップケーブルfの挿通・引出本数に応じた開口空間Sに絞ることができる。この布部材56には、外周に弾性リング56aが内装される一方、サブ開口部55には、内周面の外側2箇所にこの弾性リング56aを嵌め込み可能に内方に突出するリブ形状55a、55bが形成されており、弾性リング56aをリブ形状55a、55bの間に嵌め込んで位置させることにより、そのサブ開口部55内に布部材56を設置することができる。
【0058】
また、閉塞部材52は、上端面から下方に向かってサブ開口部55に至るように形成されて壁面同士の密接する第1連通スリット58を備えており、そのサブ開口部55の布部材56と弾性リング56aにも外周から連続して開口空間S内に連通する第2連通スリット59が形成されている。
【0059】
これにより、この閉塞部材52は、サブ開口部55から布部材56を外して紐57を解くことにより、その外周から連通スリット58、59を経て布部材56内の開口空間S内にドロップケーブルfを進入させて挿通させた状態にすることができ、この後に、再度、サブ開口部55に布部材56を嵌め込むとともにその開口空間Sを紐57で絞ることによりドロップクロージャー50内から外部にドロップケーブルfを引き出す状態にすることができる。すなわち、連通スリット58、59がドロップケーブルfの進入経路を構成している。
【0060】
このため、ドロップクロージャー50は、閉塞部材52を交換することなく、言い換えると、既設のドロップケーブルfを一旦外すことなく(停止することなく)、必要なドロップケーブルfを増設するとともに、そのドロップケーブルfをサブ開口部55の布部材56内の開口空間Sに挿通して外部に引き出すことができる。
【0061】
また、このドロップクロージャー50には、閉塞部材52の内側にスリーブ11の両端部11aを閉塞する遮蔽部材62が設置されており、この遮蔽部材62は、閉塞部材52と同様に、光ファイバーケーブルFを挿通して充填材35により液密性を確保する幹ケーブル用挿通スリット33と、この幹ケーブル用挿通スリット33の上部に位置して複数本のドロップケーブルfを挿通可能に大面積で開口するサブ開口部65と、上端面から下方に向かってサブ開口部65に至る壁面同士の密接する第1連通スリット68と、が形成されているとともに、この閉塞部材52と遮蔽部材62の間には、侵入した雨水などを流出させるドレイン口(抜き穴)66がパッキン25を切り欠いて形成されている。
【0062】
ここで、閉塞部材52は、サブ開口部55の内周面のリブ形状55a、55bが周方向に分割されており、特に、最下の箇所が離隔されることにより、布部材56の内側のサブ開口部55内に侵入した雨水などを外部に流出させることができる。また、その布部材56は、第2連通スリット59が重なるように作製された布材料56bの間に形成されており、その間に接合・離隔可能の面ファスナを設けて隙間が開口してしまうことを防止するようにしてもよい。
【0063】
これにより、閉塞部材52は、第1連通スリット58の壁面間が密接するとともに、サブ開口部55の布部材56の第2連通スリット59が重なる状態に閉止されていることから、雨水などが浸入することをある程度防止することができるのに加えて、多少侵入してきた雨水が内部に侵入してしまうことを遮蔽部材62により確実に防止してドレイン口66などから滴下させることができる。
【0064】
このように本実施形態においては、上述実施形態と同様に、連通スリット58、59、68を介して、閉塞部材52のサブ開口部55に設置する布部材56の開口空間S内や遮蔽部材62のサブ開口部65内にドロップケーブルfの複数本を挿通させた状態にして一遍にドロップクロージャー50内から引き出すことができ、その布部材56の開口空間Sを紐57により絞って不必要な開口部分を絞ることができる。したがって、閉塞部材52と遮蔽部材62を用いることにより、閉塞部材の交換などのために光ファイバーケーブルFの系統全体を停止する必要がなく、既設のドロップケーブルfのユーザに迷惑を掛けることなく、その適宜ドロップケーブルfの増設作業を行うことができる。
【0065】
次に、図9〜図11は本発明に係るケーブル用ケースの第4実施形態を適用したドロップクロージャーの一例を示す図である。
【0066】
図9および図10において、閉塞部材72は、上述実施形態の閉塞部材52と同様に、ドロップクロージャー50のスリーブ11の両端部11aを閉塞するように遮蔽部材62と共に設置されており、この閉塞部材72には、光ファイバーケーブルFを挿通して充填材35により液密性を確保しつつドロップクロージャー50から引き出すことのできる幹ケーブル用挿通スリット33が形成されているとともに、この幹ケーブル用挿通スリット33の上部に位置して複数本のドロップケーブルfを引出可能に大面積で開口するサブ開口部55に、円錐台形状に周回することにより開口空間Sの面積を絞ることのできる周回部材76が設置されている。
【0067】
この周回部材76は、図11に示すように、弾性変形可能な帯状材料(線状材料)76aを螺旋状に周回させることにより、内方にドロップケーブルfを挿通可能な開口空間Sを画成しており、帯状材料76aの外周側領域76bが内周側領域76cの内側に入り込んで面接触するように形成されることにより、螺旋状に周回して内方側が突出する円錐台形状に形成されている。
【0068】
これにより、周回部材76は、その外周端部から連続する周回スリット79内に(帯状材料76a間に)、その帯状材料76aを多少の弾性変形をさせつつドロップケーブルfを差し込んで内方に進入させることにより、その中央付近に画成する開口空間S内に挿通させた状態にすることができる。
【0069】
このため、閉塞部材72は、サブ開口部55から周回部材76を外して、その外周端部からドロップケーブルfを内部の開口空間S内に進入させて挿通状態にした後に、再度、サブ開口部55にその周回部材76を嵌め込むことにより、ドロップクロージャー50内からドロップケーブルfを外部に引き出す状態にすることができる。このとき、周回部材76の画成する開口空間S内に大量のドロップケーブルfを挿通させている場合には、その帯状材料76aがそのドロップケーブルfの外周面に接することにより、開口空間Sを拡開してドロップケーブルfを挿通させる状態を維持することができる。
【0070】
よって、ドロップクロージャー50は、閉塞部材72を交換することなく、言い換えると、既設のドロップケーブルfを一旦外すことなく(停止することなく)、必要なドロップケーブルfを増設するとともに、そのドロップケーブルfをサブ開口部55の周回部材76内の開口空間Sに挿通して外部に引き出すことができる。
【0071】
ここで、周回部材76は、帯状材料76aが内周側領域76cを外周側領域76bに重ねる状態で周回していることから、雨水などが無制限に浸入することをある程度防止することができるとともに、多少侵入してきた雨水が内部に侵入してしまうことを遮蔽部材62が確実に防止してドレイン口66などから滴下させることができる。
【0072】
このように本実施形態においては、上述実施形態と同様の作用効果を得ることができ、閉塞部材72と遮蔽部材62を用いることにより、既設のドロップケーブルfのユーザに迷惑を掛けることなく、適宜ドロップケーブルfの増設作業を行うことができる。
【0073】
ここで、本実施形態では、閉塞部材72のサブ開口部55に、帯状材料76aを重ねるように周回させた周回部材76を設置しているが、これに限るものではなく、ドレイン口66などを有することから、一般的な丸棒状の弾性線材材料を周回させて円錐台形状に形成したものを設置してもよい。ただし、その弾性線材材料間のスリットの距離が長くなるので、本実施形態のように構成するのが有利である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係るケーブル用ケースの第1実施形態を適用したドロップクロージャーの一例を示す図であり、その概略構成を示す透視正面図である。
【図2】その要部の閉塞部材の構成を示す平面図である。
【図3】その要部の閉塞部材の構成を示す断面拡大正面図である。
【図4】本発明に係るケーブル用ケースの第2実施形態を適用したドロップクロージャーの一例を示す図であり、その要部の閉塞部材の構成を示す平面図である。
【図5】その要部の閉塞部材の構成を示す断面拡大正面図である。
【図6】本発明に係るケーブル用ケースの第3実施形態を適用したドロップクロージャーの一例を示す図であり、その要部の閉塞部材の構成を示す平面図である。
【図7】その要部の閉塞部材の構成を示す断面拡大正面図である。
【図8】その閉塞部材に設置する要部部品を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は閉塞部材に取り付けた状態を示す一部縦断面図である。
【図9】本発明に係るケーブル用ケースの第4実施形態を適用したドロップクロージャーの一例を示す図であり、その要部の閉塞部材の構成を示す平面図である。
【図10】その要部の閉塞部材の構成を示す断面拡大正面図である。
【図11】その閉塞部材に設置する要部部品を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は閉塞部材に取り付けた状態を示す一部縦断面図である。
【図12】その従来技術を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
10、50……ドロップクロージャー 11……スリーブ 11a……両端部 12、40、52、72……閉塞部材 13……ベース金具 14……把持金具 15……吊金具 21……開閉スリット 22……対面部 27……融着トレイ 28……光カプラトレイ 31、41……上方挿通スリット 31a……底面 32、42……下方挿通スリット 33……幹ケーブル用挿通スリット 35……充填材 41a……切れ端辺 55、65……サブ開口部 55a、55b……リブ形状 56a……弾性リング 56……布部材 57……紐 58、59、68……連通スリット 62……遮蔽部材 66……ドレイン口 76……周回部材 76a……帯状材料 76b……外周側領域 76c……内周側領域 79……周回スリット F……光ファイバーケーブル f……ドロップケーブル S……開口空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架設するケーブルの接続箇所や分岐箇所に設置されるケースであって、
ケーブルを外部に引き出すための開口部と、該開口部を閉塞する閉塞部材と、を備えており、
閉塞部材には、引出ケーブルを挿通状態にして引き出す経路空間が、該引出ケーブルの1本を挿通させるのに必要な開口面積よりも数倍以上に開口可能に形成されていることを特徴とするケーブル用ケース。
【請求項2】
前記閉塞部材には、引出ケーブルの経路空間として、複数の引出ケーブルの挿通可能なスリットが1つまたは2本以上形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル用ケース。
【請求項3】
前記スリットは、閉塞部材の外周端辺から内方に延在して、引出ケーブルを閉塞部材の外周端辺から進入可能に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のケーブル用ケース。
【請求項4】
前記閉塞部材は、スリットが引出ケーブルの略線径幅で開口しており、
該スリットには、引出ケーブルに隣接して隙間埋め材料が進入されていることを特徴とする請求項2または3に記載のケーブル用ケース。
【請求項5】
前記閉塞部材は、弾性変形材料により作製されており、
前記スリットとして、当該スリットを形成する対面同士が密接していることを特徴とする請求項2または3に記載のケーブル用ケース。
【請求項6】
前記スリットの底部は、外部側に向かって傾斜するように形成されていることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のケーブル用ケース。
【請求項7】
前記閉塞部材は、引出ケーブルの経路空間として、複数の引出ケーブルが挿通可能に開口するサブ開口部を有しており、
該サブ開口部には、引出ケーブルの挿通可能な空間を絞る方向に閉塞する布状部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル用ケース。
【請求項8】
前記布状部材には、サブ開口部に面する箇所から引出ケーブルを挿通させる絞り空間まで連続する引出ケーブルの進入経路が形成されており、
前記閉塞部材には、外周端辺からサブ開口部まで連続する引出ケーブルの進入経路が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のケーブル用ケース。
【請求項9】
前記閉塞部材は、引出ケーブルの経路空間として、複数の引出ケーブルが挿通可能に開口するサブ開口部を有しており、
該サブ開口部には、当該サブ開口部に面する箇所から内方に向かって周回することにより、該内方に引出ケーブルを挿通可能な空間を画成する弾性変形可能な線状材料よりなる周回部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル用ケース。
【請求項10】
前記閉塞部材には、外周端辺からサブ開口部まで連続する引出ケーブルの進入経路が形成されていることを特徴とする請求項9に記載のケーブル用ケース。
【請求項11】
前記周回部材は、帯状の線状材料により構成されて外周側領域が内側に位置するように周回することによって内方空間側ほど突出する円錐台形状に形成されており、
該帯状線状材料は、外周側の外周側領域の外面が内周側の内周側領域の内面に面接触するように形成されていることを特徴とする請求項9または10に記載のケーブル用ケース。
【請求項12】
前記閉塞部材の内側には、対面する遮蔽部材が配設されているとともに、該遮蔽部材との間の下面に雨水の抜き穴が開口しており、
遮蔽部材には、引出ケーブルを挿通させる開口部が形成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のケーブル用ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−176106(P2008−176106A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10088(P2007−10088)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(503320061)株式会社エネルギア・コミュニケーションズ (92)
【Fターム(参考)】