説明

ケーブル鉄道システム

【課題】追加の空間の必要なく、乗降域の乗客が利用可能な車両数を倍増させるケーブル鉄道システムを提供する。
【解決手段】ケーブル鉄道システムは、一つの谷駅と、少なくとも一つの山駅と、を有する。ケーブルカー等の輸送車両は搬送及び移送ケーブルに沿って移動し、駅においてケーブルから切り離され、案内レールに沿って駅を通過する。乗客は、乗降域においてケーブルカーを乗降する。第1群のケーブルカーを第1の案内路に沿い、第2群を第2の案内路に沿って乗降域を選択的に通過させるよう、案内レールの経路沿いにスイッチが配設してある。乗客用の共通の乗降域は二つの車両群に関連付けられ、二つの案内路間に配置されている。第1群の車両の入口及び出口ドアが車両の第1の側に開口しており、第2群の車両の入口及び出口ドアが第2の側に開口していて、それらが共通の乗降域の方を向くようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、谷駅と、少なくとも一つの山駅と、を有するケーブル鉄道システムに関する。搬送及び移送ケーブルは駅間を延び、少なくともその一つが被駆動である偏向プーリによって、駅にまたは駅を案内される。ケーブルカー、チェア式リフト、ゴンドラ等の輸送車両は、駅において搬送及び移送ケーブルから切り離され、案内レールに沿って駅を通って移動することにより、乗客が乗降域でケーブルカーやチェアに乗車し、もしくはそこから降車できるようになっている。案内レールの経路内には少なくとも二個のスイッチが配設されており、それにより第1群の車両が第1の案内路に沿って移動し、第2群の車両が第2の案内路に沿って移動し、駅の少なくとも一つの乗降域をそれぞれ通る。
【0002】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年8月21日に出願されたオーストリア特許出願A1299/2008号の米国特許法第119条に規定する優先権を主張するものであり、この先願は参照用にその全体を本願明細書に取り込むものとする。
【背景技術】
【0003】
本発明の譲受人に譲渡されている特許文献1と対応する特許文献2から公知のこの種のケーブル鉄道システムは、スキーを装着したスキーヤーのための一方の側とスキーを装着していない乗客用の他方の側の、二つの乗降域により実現されている。スキーを装着していない乗客により使用される乗降域を通る際の車両速度は、もう一方の側の乗降域を通って移動する際の速度よりも低速である。この先行技術の鉄道システムの場合、二つの乗降域は互いに空間的に隔てられている。
【0004】
案内路に沿って車両を案内する単一の乗降域しか持たない駅により実現される他の公知のケーブル鉄道システムの場合、乗客が乗降できる複数の車両は乗降域を通って案内され、乗客が利用できるようになっている。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007−0251407号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1849674号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、一般的なタイプのこれまで公知の装置及び方法の前記した欠点を克服し、追加の空間の必要なく、乗降域の乗客が利用可能な車両数を倍増させるケーブル鉄道システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述及び他の目的を視野にいれ、本発明によりケーブル鉄道システムが提供される。本発明のケーブル鉄道システムは、一つの谷駅と、少なくとも一つの山駅と、前記駅間を延びると共に、少なくとも一つの被駆動プーリを含む偏向プーリにより前記駅を案内される搬送及び移送ケーブルと、前記駅に配置された案内レールと、前記搬送及び移送ケーブルに結合されたままで前記駅間の前記搬送及び移送ケーブルに沿って乗客を輸送する車両であって、前記駅において前記搬送及び移送ケーブルから切り離され、前記案内レールに沿って前記駅を通って移動し、前記駅に画成された個々の乗降域において乗客が前記車両に乗降できるようにする入口及び出口ドアが形成された、車両と、前記案内レールの進路に沿って配置された少なくとも2個の転向スイッチであって、第1群の個々の車両を第1の案内路に沿って移動させると共に、第2群の個々の車両を第2の案内路に沿って移動させて、前記駅それぞれの少なくとも一つの前記乗降域を通るよう転向させる、転向スイッチと、を備え、前記乗客の共通の乗降域が前記第1群と第2群の車両に関連付けられており、前記共通の乗降域が前記第1と第2の案内路の間に配置されており、前記第1群の車両の前記ドアがその第1の側に配置され、前記第2群の車両の前記ドアがその第2の側に配置され、前記第1群と第2群の車両の前記ドアが前記共通の乗降域の方を向くようになっている。
【0008】
本発明の別の特徴によれば、車両の一部または全てがその両側にドアを有する。その場合、共通の乗降域の方を向くドアは個々の車両が乗降域を横切る際に開扉される。
【0009】
言い換えれば、本発明の目的は、上記したタイプのケーブル鉄道システムを用いて達成されるものであり、乗客用の共通の乗降域が二群の車両に関連付けてあり、共通の乗降域が二つの案内路間に位置し、第1群の車両の入口及び出口ドアをその第1の側に配置し、第2群の車両の入口及び出口ドアをその第2の側に配置し、それらが乗降域に対向するようにしてあり、もしくは車両の少なくとも一部がその両側にドアをもって実現され、乗降域に対向する個々のドアが開扉される。
【0010】
これにより、ケーブル鉄道システムの移送能力が簡単な方法により増大され、そのために追加の空間を必要とすることなく、2倍の数のケーブルカーが利用可能となるため、乗車プロセスが乗客にとって簡略化されることとなる。
【0011】
二群の複数の車両は、約0.25m/秒の速度で乗降域を同時に通って移動することが好ましい。さらに乗降域では、車両に向かう乗客、または車両から離れる乗客の動きを、車両の動きとは反対を向かせることが好ましい。
【0012】
別の特定の実施形態によれば、駅を通って移動する車両の移動路に沿って、互いに関連する少なくとも3対のスイッチが配設されており、4本の案内路が形成され、2本の案内路に共通の乗降域が関連付けられている。共通の乗降域は第1、第2案内路間と第3、第4案内路間に配置されている。
【0013】
本発明の属性と考えられる他の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。
【0014】
本発明はここではケーブル鉄道システム内にて実施するものとして図示し説明するが、図示の細部に限定する意図はない。本発明の趣旨から逸脱することなくかつ特許請求の範囲の均等物の領域及び範囲内で、種々の改変ならびに構造的変形を行うことができる。
【0015】
しかしながら、本発明の構成ならびに動作方法は、その追加の目的ならびに利点と合わせ、添付図面に関連させて読む具体的実施形態の下記の説明から最も良く理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面の各図をここで詳しく参照する。まず図1及び図1Aを特に参照すると、ケーブル鉄道システムの駅において本発明が実施されている。ケーブルシステムまたはケーブル鉄道とも呼ばれるケーブル鉄道システムは搬送及び移送ケーブル1を含んでおり、偏向プーリ2により駅を案内される。ケーブル鉄道システムの偏向プーリの少なくとも一つは、被駆動プーリである。さらに、ケーブルカー3が配設されている。これらはケーブル鉄道システムの一区画に沿って搬送及び移送ケーブル1に結合されており、第1の駅である例えば谷駅から、第2の駅である例えば山駅へ移動可能となっている。
【0017】
ケーブルカー3は駅において搬送及び移送ケーブル1から切り離され、続いて支持体5が支持する案内レール4に沿って駅を通って移動する。搬送及び移送ケーブル1は、約6m/秒の速度で移動される。駅においてケーブルカー3の速度は減速タイヤ6により減速され、該ケーブルカーは約0.25m/秒の速度で駅内に配設された乗客のための乗降域10を通って移送タイヤ7により移動される。乗降域10を離れた後、ケーブルカー3は加速タイヤ8により6m/秒の速度まで加速され、その速度において再度搬送及び移送ケーブル1に結合され、別の駅へ向け移動させられる。
【0018】
先の二段落に要約した実施形態は、現在の技術水準から一般的に知られているものである。本発明による駅の実施形態は、案内レール4が乗降域10において2本の通路をもって実現される点で先行技術とは異なり、2本の通路の間に乗降域10が位置する。この目的のため、第1の転向器すなわちスイッチ41が案内レール4の経路内に配設され、第1の案内路4aと第2の案内路4bが前記スイッチに接続されており、該二つの案内路4a,4bは乗降域10を過ぎた後に第2のスイッチ42によって案内レール4へ入る。このように、乗降域10は二つの案内路4a,4b間に位置している。スイッチ41を適切な方法で制御することにより、個々のケーブルカー3は、第1の案内路4aまたは第2の案内路4bのいずれかに沿って移動する。乗客が乗降域10内でケーブルカー3を乗降できるよう、ケーブルカー3は、ケーブルカー3の乗降域10に対向する側方にドアを配置して実現されるか、または各側にドアを配置して実現され、動作中のケーブル鉄道システムにおいて個々のドアの開扉は乗降域10に対向するものとなる。
【0019】
ケーブル鉄道システムの駅の本実施形態によって、乗客は公知の駅に比べて2倍の数の乗車可能なケーブルカー3を利用することができ、これにより乗客にとっての乗車プロセスがその達成のために追加の空間を必要とすることなく簡単化される。乗車域10内への乗客の動きの方向は、この場合ケーブルカーの動き方向とは反対の方向となる。乗客はケーブルカーの移動方向とは逆の流れで階段及び/又はエスカレータ等により乗車プラットホームの高さまで上昇する。降車する乗客は、反対側の階段及び/又はエスカレータにより下ることによって、プラットホームを出る。
【0020】
図2及び図2Aに示した特定の実施形態は、3対のスイッチ41a,42a,41b,42b,41c,42cが、全部で4本の案内路4a,4b,4c,4dが形成された案内レール4中に配設され、第1の乗降域10aが第1と第2の案内路4a,4b間に位置し、第2の乗降域10bが第3と第4の案内路4c,4d間に位置している点で、図1と図1Aの具体的実施形態とは異なる。これにより、ケーブル鉄道システムの移送能力がさらに増強できることとなる。
【0021】
ケーブル鉄道システムの動作用にセンサが配設される。これらのセンサによってスイッチや移送タイヤを制御し、個々のケーブルカー間の衝突を回避するようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるケーブル鉄道システムの第1の例示実施形態の平面図である。
【図1A】図1のケーブル鉄道システムの対応側面図である。
【図2】本発明によるケーブル鉄道システムの第2の例示実施形態の平面図である。
【図2A】図2のケーブル鉄道システムの対応側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの谷駅と、
少なくとも一つの山駅と、
前記駅間を延びると共に、少なくとも一つの被駆動プーリを含む偏向プーリにより前記駅を案内される搬送及び移送ケーブルと、
前記駅に配置された案内レールと、
前記搬送及び移送ケーブルに結合されたままで前記駅間の前記搬送及び移送ケーブルに沿って乗客を輸送する車両であって、前記駅において前記搬送及び移送ケーブルから切り離され、前記案内レールに沿って前記駅を通って移動し、前記駅に画成された個々の乗降域において乗客が前記車両に乗降できるようにする入口及び出口ドアが形成された、車両と、
前記案内レールの進路に沿って配置された少なくとも2個の転向スイッチであって、第1群の個々の車両を第1の案内路に沿って移動させると共に、第2群の個々の車両を第2の案内路に沿って移動させて、前記駅それぞれの少なくとも一つの前記乗降域を通るよう転向させる、転向スイッチと、を備えるケーブル鉄道システムであって、
前記乗客の共通の乗降域が前記第1群と第2群の車両に関連付けられており、前記共通の乗降域が前記第1と第2の案内路の間に配置されており、
前記第1群の車両の前記ドアがその第1の側に配置され、前記第2群の車両の前記ドアがその第2の側に配置され、前記第1群と第2群の車両の前記ドアが前記共通の乗降域の方を向くことを特徴とするケーブル鉄道システム。
【請求項2】
前記車両の少なくとも一部はその両側にドアが形成され、前記共通の乗降域の方を向く前記ドアが前記個々の車両が前記乗降域を横切る際に開扉される、請求項1記載のケーブル鉄道システム。
【請求項3】
前記車両がケーブルカーである、請求項1記載のケーブル鉄道システム。
【請求項4】
前記第1群と第2群の複数の車両が、前記乗降域を約0.25m/秒の共通の速度で通って移動する、請求項1記載のケーブル鉄道システム。
【請求項5】
前記乗降域は、前記車両に向かう前記乗客または前記車両から離れる前記乗客の動きが前記乗降域を通る前記車両の移動方向とは反対の方向となるように構成される、請求項1記載のケーブル鉄道システム。
【請求項6】
前記少なくとも2個の転向スイッチは、個々の前記駅を通って移動する前記車両の移動路に沿って配置されると共に第1、第2、第3及び第4案内路を形成するそれぞれ関連付けられた少なくとも3個のスイッチ対に属しており、前記共通の乗降域は前記第1、第2案内路間に配置された第1の共通の乗降域にあり、前記第3、第4案内路間に配置された第2の共通の乗降域を含む、請求項1記載のケーブル鉄道システム。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図2A】
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【公開番号】特開2010−47243(P2010−47243A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300915(P2008−300915)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(500579431)インノヴァ・パテント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (31)