説明

ゲッター材料で作られたイオン偏向及び収集装置を有するX線管

少なくとも1つのイオン収集電極(141)を有するイオン操作装置(140)を含むX線管が記載されている。前記イオン収集電極(141)の少なくとも一部はゲッター材料で作られている。前記イオン操作装置(140)は特に、電場の存在しない領域(131)を有する高性能X線管にとって有利である。前記イオン操作装置(140)は、イオン(150)を偏向する電場を発生させる。ゲッター電極に衝突するとき、前記イオン(150)は永続的に収集されるので、当該X線管(100)の真空容器内部から除去される。これにより、当該X線管(100)の電子エミッタへのイオンの衝突が回避される。それに加えて残留ガスによって生じるアーチ率を大幅に減少させることができる。前記ゲッター材料の加熱は、加熱ワイヤによって、又は前記ゲッター材料を有する前記電極(341,342)への散乱電子(322)の明確な衝突によって実現されて良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線管の手段によるX線発生の分野に関する。特に、本発明はイオン操作装置を有するX線管に関する。当該X線管は、該X線管の真空容器内に存在する残留粒子を収集するように備えられている。
【0002】
本発明はさらにX線システムに関し、具体的には医療用X線画像化システムに関する。当該X線システムは上述のX線管を有する。
【0003】
さらに本発明は、特に医療用X線画像化に用いられるX線の発生方法に関する。前記X線は上述のX線管の手段によって発生する。
【背景技術】
【0004】
高性能の次世代X線管は、可変焦点スポット形状、可変焦点スポットサイズ、及び可変焦点スポット位置を提供できることが必要となる。従来のX線管と比較すると、これらの管では、電子源に相当する陰極と、上に焦点スポットが生成される標的である陽極との間の距離が長い。
【0005】
図5は係る高性能X線管500を概略的に図示している。X線管500は、ビーム路に沿って進行して標的である陽極520で終端する電子ビーム515を発生させるように備えられている。その電子は、電子エミッタフィラメント511から放出される。標準的なX線管と比較して、電子源と標的である陽極520との間の距離は相対的に長い。
【0006】
電子源510と標的である陽極520との間には、電場電極530が備えられている。電場電極530は開口部530aを有する。開口部530aによって、電子ビーム515は電場電極530を横切って進行することが可能となる。
【0007】
電子源は高電圧電源512と接続する。高電圧電源512は、電子源510及び電子エミッタフィラメント511をそれぞれ独立に、X線管500の図示されていない筐体に対して負の高電圧(-HV)を帯電する。標的である陽極520及び電場電極530はいずれも接地電圧レベルに接続する。従って電子源510と標的である陽極520との間で延在する領域全体は2つの領域に分割することができる。その2つの領域とは、電子源510と電場電極530との間で延在する第1領域531、及び電場電極530と標的である陽極520との間で延在する第2領域532である。第1領域531は電子加速電場を有する。第2領域532は電場の存在しないすなわちゼロ電場領域を画定する。電場が存在しない領域532では、適切な多極電磁場によって適切に電子ビーム515を集束するため、電子光学系536が備えられている。最適な集束特性を実現するため、電子光学系536の光軸上に電子エミッタ511を設けることが必要である。
【0008】
放出された電子は、電子源510から標的である陽極520へ向かって加速される。それによりその放出された電子は開口部530aを介して進行して、電場の存在しない領域532へ入り込む。電場の存在しない領域532では電子が集束される。焦点スポット521にて標的である陽極520に衝突するとき、1次電子のうちほぼ40%が後方散乱されて、電場の存在しない領域532内部の直線522上を進行する。前記の散乱された電子のエネルギーは図示されていない水冷側壁内に蓄えられる。
【0009】
管内部の真空が不完全であるため、残留ガスの原子及び分子がイオン化してしまう恐れがある。そのようなイオン化した粒子は、高電圧によって、並びに/又は光学系の電磁及び静電レンズによる影響を受ける恐れがある。これらのイオンの一部は電子エミッタへ向かって加速される。前記光学系はこれらのイオンを集束させてしまい、これらのイオンは前記エミッタの表面に小さなスポットで衝突する恐れがある。これによりそのエミッタ構造は損傷を受けることが考えられる。その結果、そのエミッタ構造の寿命が縮まるか、又はそのエミッタ構造が突然故障してしまう。特に高電圧加速領域及びそれに続く電場の存在しない領域を有するX線管は、この振る舞いを示すことを特徴とする。
【0010】
特許文献1は走査電子ビームを用いるコンピュータ断層スキャナの電子ビーム組み立て体を開示している。電子ビームの生成及び制御用組み立て体は、内部ガスが排気される真空封止された-ただし少量の残留ガスは不可避的に存在してしまう-筐体チャンバ内部に電子ビームを生成する。電子ビームはチャンバ内の適切な手段によって生成される。チャンバ内には残留ガスが存在するため、ビームの電子がその残留ガスと相互作用して、正のイオンを生成してしまう。その生成される正のイオンは、電子ビームの空間電荷を中和する効果を有する。これらのイオンの中和効果を減少させるため、イオン洗浄電極が供される。これらの電極は、電子ビームの軸に対して垂直な均一の電場を生成するように備えられている。それらの電極は、電子ビーム領域から正のイオンを除去するため、ポテンシャルの井戸に対して横方向に位置合わせされている。
【0011】
特許文献2は可動X線源について開示している。その可動X線源は、低電力消費の陰極素子、及び、その陰極素子の寿命を延ばすため、電場の存在しない領域を生成する陽極光学系を有する。電場が、排気管の対向する側部にも受けられた陽極と陰極に印加される。陽極は、電子の衝突に応じてX線を発生させる標的材料を有する。陰極は電子を発生させる陰極素子を有する。その電子は、前記陽極と陰極との間の電場に応じて前記陽極へ加速される。陰極素子へ向かう正イオンの加速に抵抗するため、電場の存在しない領域が陽極に設けられて良い。陽極管が、前記陽極と陰極との間に設けられ、かつ前記陽極と電気的に結合して良い。そのように電気的に結合することで、前記陽極及び陽極管は同一の電位を有することで、電場の存在しない領域を形成する。真空封止後に真空管内の残留ガスを除去するため、ゲッター材料がその真空管内に設けられる。そのゲッターはその管の電場の存在しない領域内に設けられて良い。
【0012】
特許文献3はX線管について開示している。そのX線管は真空容器を有する。その真空容器内には、陽極、陰極、及びゲッターシールドが設けられている。その陽極に対して、そのゲッターシールドはその陰極に後方に備えられている。前記ゲッターシールドは、スリーブとキャップを有する。そのキャップは環状の溝を画定する。ゲッター材料はその溝内に堆積されて、有孔性の体積を画定するように焼成される。前記ゲッター材料は、作製中、そのX線管の通常の消耗の間に活性化される。そのX線管の動作中、前記ゲッター材料をポンプ温度にまで昇温させる前記キャップによって廃熱は吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4521900号明細書
【特許文献2】米国特許出願第2003/0021377号明細書
【特許文献3】米国特許第5509045号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
残留原子及び分子の有効な除去を可能にするX線管を供する必要があるものと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記必要性は、独立請求項に記載の主要事項によって満たすことができる。本発明の有利な実施例は従属請求項によって記載されている。
【0016】
本発明の第1態様によると、(a)ビーム路に沿って進行する電子ビームを発生させるように備えられた電子源、(b)前記ビーム路内に備えられていて、かつ前記電子ビームの集束スポットを起源とするX線ビームを発生させるように備えられた標的である陽極、及び(c)前記ビーム路内又は散乱電子が生じる空間内に存在する原子及び分子と前記電子ビームとの衝突から発生するイオンを偏向して収集するように備えられたイオン操作装置、を有するX線管が供される。前記イオン操作装置はコレクタ電極を有する。該コレクタ電極は、前記イオンの少なくとも一部に静電引力を供するために帯電可能であり、かつ少なくとも一部はゲッター材料から作られる。
【0017】
本発明のこの態様は、前記イオン操作装置が、前記イオンを能動的に引き付けて、かつ吸収することができるという考えに基づく。これは、前記の記載されたX線管の真空容器内部で発生するイオンが当該X線管内部の広い領域から有効に除去されうるという効果を有する。通常の電極しか有してなく、前記イオンに対して少なくとも1個の電子を追加又は除去することによって前記イオンを対応する原子及び分子に変換するだけのイオン操作装置と比較して、前記の記載されたX線管は、当該X線管の真空チャンバから前記イオンと対応する原子及び分子の両方を永続的に除去することを可能にする。
【0018】
当該X線管が、排気後永久に密閉される真空容器内部に収容される場合、前記イオンを永続的に除去することは、長期間にわたる前記容器内での低残留圧力の維持に貢献する。
【0019】
さらに前記の残留イオンの永続的除去はアーチ率を減少させる。アーチは、前記イオンが当該X線管の高電圧領域に入り込むときに生じる恐れがある。
【0020】
さらに前記の残留イオンの永続的除去は、電子光学系に不明確となるような影響を及ぼす空間電荷補償を減少させる。
【0021】
さらに前記の残留イオンの永続的除去は、前記電子源-特に前記電子源の電子エミッタフィラメント-の意図しないイオン衝突を減少させる。正に帯電したイオンが、負に帯電した前記電子源に引き付けられ、かつ前記電子エミッタフィラメントに衝突するときに、係る衝突は生じる恐れがある。前記電子エミッタフィラメントは典型的には機械的に非常に敏感な素子であるため、係るイオン衝突は前記電子源の破壊を加速させる恐れがある。それにより当該X線管の寿命は大幅に短くなる恐れがある。
【0022】
当該X線管は、修正されたゲッターポンプと理解しても良い。この態様では、X線の発生に利用される前記電子ビームもまた、当該X線管の真空容器内部に存在する原子及び分子のイオン化に用いられる。このことは、前記電子ビームが残留原子及び分子をイオン化する手段として機能することを意味する。このイオン化効果により、前記原子及び分子を、前記真空チャンバ内部の比較的広い空間領域から引き付けることができる。これとは対照的に、既知のX線管に用いられるゲッター装置は、原子及び分子が前記ゲッター材料に偶然衝突するときに、その原子及び分子をそれぞれ吸収することしかできない。従って前記コレクタ電極の収集効率は、X線管に用いられる既知のゲッター装置と比較して大幅に改善される。
【0023】
前記ゲッター材料は、たとえばチタン及び/又はアルミニウム-ジルコニウム合金のような金属であることが好ましい。従って前記イオンが前記ゲッター材料に接触するとき、前記イオンはすぐに中性化されて、前記収集電極によって永続的に吸収されうる。それにより当該X線管の真空チャンバからの完全な除去が容易に実現可能となる。
【0024】
前記原子及び分子は典型的には、当該X線管の真空容器内部に存在する残留ガスの原子及び分子である。前記残留ガスはたとえば一酸化炭素、窒素、酸素、水、水蒸気、及び/又は特に炭化水素である。
【0025】
本発明の実施例によると、前記イオン操作装置は他の電極を有する。このことは、前記コレクタ電極と前記他の電極との間に厳密に画定された電場を生じさせることができるという利点を供することができる。それにより前記の引き付けられたイオンの偏向路-前記コレクタ電極で終端する-を空間的な信頼性が保証されるように画定することができる。このことは、前記イオン操作装置内部-具体的には前記コレクタ電極と前記他の電極の空間的な配置によって画定される領域内部-で各イオンが取り得る位置について、所定のイオン偏向路が与えられることを意味する。
【0026】
この点では、前記イオン操作装置には3つ以上の電極が備えられていて良いことに留意して欲しい。一般的には前記イオン操作装置は任意の多重電極配置を有して良い。この任意の多重電極配置は、前記イオン操作装置の相互作用領域内に存在する荷電粒子への引力を発生させるように備えられている。
【0027】
本発明の他の実施例によると、前記コレクタ電極は接地電圧に対して負の電圧レベルであり、かつ前記他の電極は接地電圧に対して正の電圧レベルである。これにより、両電極が、前記イオン操作装置の相互作用領域内に存在する荷電粒子への力を発生させるという利点を供することができる。それにより両電極の力は互いに支持し合うように作用する。たとえば負に帯電したイオンについては、前記コレクタ電極は前記イオンに引力を作用させ、かつ前記他の電極は前記負に帯電したイオンに反発力を作用させる。
【0028】
前記の記載した双極子電場を発生させるためには、両電極は接地電圧とは異なる供給電圧と接続しなければならないことに留意して欲しい。このことは、当該X線管には、当該X線管の筐体から前記の2つの電極を絶縁するための2つのアイソレータ素子が供されなければならないことを意味する。この点では、前記標的である陽極は接地レベルであって良い一方で、前記電子源は必要な電子加速電圧を供するために負の高電圧でなければならないことにさらに留意して欲しい。
【0029】
本発明の他の実施例によると、当該X線管はさらに電場電極を有する。該電場電極は、前記電子源と標的である陽極との間に備えられている。それにより(a)前記電子源と電場電極との間を延在する第1領域、及び(b)前記電場電極と標的である陽極との間を延在する第2領域、が画定される。前記電場電極は、前記標的である陽極と実質的に同一な電圧となるように備えられている。
【0030】
この点では、前記電場電極は少なくとも1つの小さな開口部を有することで、前記電子ビームは減衰されることなく前記電場電極を突き抜けて行けることに留意して欲しい。
【0031】
当該X線管の記載された設計では、前記第1領域は、前記電子エミッタから放出される電子を加速するのに必要な電場を有する。前記の加速された電子は前記開口部を介して前記第1領域を飛び出し、電場の存在しない領域を画定する前記第2領域へ入り込む。該第2領域内では、前記電子は前記標的である陽極へ向かって直線状に進行することができる。
【0032】
電場の存在しない領域を供することは、前記第2領域内部に電子ビーム操作装置-たとえば電子ビーム集束光学系及び/又は電子ビーム偏向ユニットのような-を備えることができる、という利点を有する。これらの装置は、それぞれの電子ビーム操作に対して電場及び/又は磁場を用いて良い。前記ビーム集束光学系は、前記電子ビームを前記標的である陽極表面上の集束スポットへ案内するのに用いられて良い。前記集束スポットは所定だが可変である形状、及び所定だが可変であるサイズを有する。前記電子ビーム偏向ユニットは、前記集束スポットの位置を制御するのに用いられて良い。たとえば前記集束スポットは、少なくとも2つの所定の焦点スポット位置の間で直接的に変化して良い。それにより多重焦点スポットX線管が実現される。
【0033】
本発明の他の実施例によると、前記イオン操作装置は前記第2領域内に設けられる。これにより、前記電子加速電場による影響を受けることなく上述のイオン操作を実行することが可能となるという利点を供することができる。従って、当該X線管の真空容器内部に存在するイオンを信頼できるように偏向及び収集するためには、前記加速電圧と比較して相対的に小さな電圧で十分となる。
【0034】
本発明の他の実施例によると、前記イオン操作装置は前記電子ビームの近くに設けられる。
【0035】
この点について、「近く」という語は、前記イオン化位置での前記イオン操作装置の電場が十分に強いために、生成されたイオンが前記イオン操作装置の一の電極へ引き付けられることを意味する。詳細にはこのイオン化位置は前記電子ビーム内である。このことは、前記イオン引力が、典型的には絶対温度に比例する前記イオンの熱ゆらぎを過補償するように備えられていることを意味する。
【0036】
「近く」という語はさらに、前記イオン操作装置と前記ビーム路との間には当該X線管の他の素子が存在しないことをも意味する。
【0037】
前記イオン操作装置が実質的に電場の存在しない前記第2領域内に位置している場合、前記イオン操作装置によって発生する電場は、前記第2領域へ意図せずに入り込む前記電子加速電場の漂遊電場よりも強くなければならない。それにより前記第2領域はあたかも電場が存在しないかのように振る舞う。
【0038】
前記イオン操作装置が2つの電極を有する場合、これらの電極は前記電子ビームの周囲に直接配置されることが好ましい。さらに前記コレクタ電極及び前記他の電極は光学電子ビーム集束素子の近くに設けられて良い。そのことは、イオンは、該イオンが生成される領域-つまり前記電子ビーム付近-及び散乱電子が存在する領域から直接除去され得ることを意味する。これにより、イオンは当該X線管の重要な高電圧第1領域へは入りこまないので、前記アーチ率を大きく減少させることが可能となるという利点を供することができる。
【0039】
本発明の他の実施例によると、当該X線管は前記ゲッター材料の温度を制御するように備えられている。
【0040】
この点について、「制御」という語は広義に解されなければならない。定められた方法で温度を制御するだけではなく、「制御」という語は、前記ゲッター材料の温度に影響を及ぼし、調節し、及び/又は操作するように備えられた任意の手法をも意味する。これにより、所定の温度範囲内に前記コレクタ電極の温度を維持することによって、用いられたゲッター材料の効率を大幅に改善できるという利点を供することができる。
【0041】
本発明の他の実施例によると、前記ゲッター材料は加熱される。通常前記ゲッター材料のイオン捕獲能力を改善する最適温度範囲は、使用中のX線管内部の典型的な平均温度よりも高い。従ってゲッター電極の効率は、前記ゲッター材料と前記イオンコレクタ電極をそれぞれ別個に加熱することによって大幅に改善することができる。
【0042】
本発明の他の実施例によると、当該X線管はさらにヒーター制御ユニットを有する。該ヒーター制御ユニットは、前記ゲッター材料を能動的に加熱するように備えられている。それによりたとえば前記ゲッター材料に、及び/又はその内部に設置された加熱ワイヤの手段によって実現されて良い。
【0043】
前記の記載された能動加熱によって、前記ゲッター電極の温度を非常に厳密に制御することが可能となる。前記温度制御は、適当な温度センサを用いることによって、開ループ又は閉ループのいずれかによって実現されて良い。
【0044】
本発明の他の実施例によると、当該X線管は前記ゲッター材料を受動的に加熱するように設計されている。それにより当該X線管の廃熱-特に前記標的である陽極を起源とする廃熱-によって、前記ゲッター材料と前記イオンコレクタ電極をそれぞれ受動的に昇温させることが実現可能となる。
【0045】
前記の記載されたゲッター材料の受動的加熱により、前記ゲッター材料に、及び/又はその内部に設置された加熱ワイヤに電力を供するのに用いられる追加の電気的接続を前記イオンコレクタ電極に供することなく前記昇温が実現できるという利点を供することができる。そのためさらなるいケーブル接続をしないことによって、当該X線管の全体の構成は相対的に単純になる。それにより当該X線管の製造コストを相対的に低いままに維持することが可能となる。
【0046】
本発明の他の実施例によると、当該X線管は、前記標的である陽極上の集束スポットから主に生じる散乱電子によって前記ゲッター材料を加熱するように設計されている。それにより前記散乱電子は、前記標的である陽極上の焦点スポット内で発生し、前記標的である陽極が前記の実質的には電場が存在しない第2領域内に設けられている場合には、実質的に直進する。前記ゲッター材料表面と前記イオンコレクタ電極にそれぞれ衝突するとき、前記電子はバルク材料中に前記電子のエネルギーを解放する。これにより、当該X線管の動作中に前記イオン収集電極が自動的に加熱される。
【0047】
前記昇温の高さは、当該X線管の冷却面への前記イオンコレクタ電極の熱接触に依存する。従って意識的に設計した小さな熱接触によって、比較的大きな昇温が生じる。換言すると前記イオン収集電極と冷却面との間で適切な熱伝導度を供することによって、前記イオン収集電極の適切な温度範囲を選ぶことができる。
【0048】
散乱電子による前記イオン収集電極の受動的加熱は、当該X線管が動作するとすぐに前記ゲッター材料の加熱が開始されるという利点を有する。
【0049】
本発明の他の実施例によると、当該X線管は、前記散乱電子が衝突する前記コレクタ電極の所定部分を少なくとも覆う遮蔽素子をさらに有する。これにより、前記イオンコレクタ電極及び前記ゲッター材料はそれぞれ過熱から保護されることによって、前記温度が温度上限を超えないという利点を供することができる。係る温度上限より高温では、前記ゲッター材料のイオン吸収効率は減少する。
【0050】
前記イオンコレクタの遮蔽は、前記散乱電子のシャドーイング効果を供する単純な突起の手段によって実現されて良い。前記突起は、前記電子ビーム路を取り囲む管型部材内に形成されて良い。
【0051】
前記遮蔽素子はまた、前記散乱電子の粒子照射量を減少させるような設計であっても良いことに留意して欲しい。換言すると、前記遮蔽素子は、前記コレクタ電極の一部へ導かれる電子を完全には吸収及び/又は反射せず、前記遮蔽素子は前記コレクタ電極に作用する照射量を減らすだけである。これにより、多数の電子衝突によって前記イオンコレクタ電極の全部分が加速度的に劣化又は損傷するのを有効に回避できるという利点を供することができる。
【0052】
本発明の他の実施例によると、当該X線管は、前記標的である陽極を起源として前記ゲッター材料で終端する熱放射及び/又は熱伝導によって加熱されるように設計される。
【0053】
そのため前記熱放射と前記熱伝導はそれぞれ、特に当該X線管内部の最も熱い素子に相当する前記標的である陽極を起源として良い。上ですでに指摘したように、これにより、当該X線管が動作すると前記ゲッター材料の加熱が自動的に開始されるという利点を供することもできる。
【0054】
本発明の他の実施例によると、当該X線管はさらに減衰素子を有する。前記減衰素子は、前記熱放射による照射及び/又は前記熱伝導による加熱から前記コレクタ電極の少なくとも所定部分を保護する。
【0055】
減衰素子を供することで前記コレクタ電極の過熱をも防ぐことができる。そのため温度は温度上限を超えない。従って前記減衰素子は当該X線管内部の任意の適切な位置に備えられても良い。
【0056】
本発明の他の態様によると、X線システム-特にコンピュータ断層撮影システムのような医療用X線画像化システム-が供される。前記の供されたX線システムは、上述した実施例のいずれか1つに記載のX線管を有する。
【0057】
本発明のこの態様は、上述のX線管が様々なX線システム-特に医療診断用X線システム-にとって有利に用いられ得るという考え方に基づく。
【0058】
当該X線システムはまた医療画像化以外の用途にも用いられて良いことに留意して欲しい。たとえば当該X線システムはまた、たとえば手荷物検査装置のような保安システムに用いられても良い。
【0059】
本発明の他の態様によると、X線-特にコンピュータ断層撮影のような医療用X線画像化用のX線-の発生方法が供される。前記の供された方法は、当該X線管に係る上述した実施例のいずれか1つに記載のX線管を使用する手順を有する。
【0060】
本発明の実施例は、それぞれ異なる対象事項を参照して説明されていることに留意して欲しい。特に実施例の中には装置クレームを参照しながら説明されているものがある一方で、別な実施例は方法クレームを参照しながら説明されている。しかし当業者は、上記及び以降の記載から、他に言及がなくても一の種類の対象事項に属する複数の事項同士の組み合わせを行うだけでなく、異なる対象事項-特に装置についての事項と方法についての事項-に係る事項同士の組み合わせをも行うだろう。
【0061】
本発明の上述した態様及び他の態様は以降に記載される実施例から明らかであり、その実施例を参照しながら説明される。本発明は実施例を参照しながら説明されるが、その実施例は本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】電子ビーム路の側方に備えられた2つの電極を有するイオン操作装置が備えられたX線管の断面図を示している。
【図2a】図1に図示されたイオン操作装置の電子ビーム軸に垂直な方向の断面図を示している。
【図2b】図1に図示されたイオン操作装置の断面図を示している。図中、イオン収集電極へ向かう複数のイオン路が示されている。
【図3a】標的である陽極上の集束スポットを起源とする散乱電子によって加熱されるイオン操作装置の断面図を示している。
【図3b】散乱電子の衝突を受ける突起部によって部分的に保護されるイオン操作装置の断面図を示している。
【図4】本発明の実施例によるコンピュータ断層撮影(CT)システムの単純化された概略図を示している。前記CTシステムには多重電子ビームX線管が備えられている。
【図5】電子源と標的である陽極との間での比較的広い距離、及び電場の存在しない領域を有する従来技術に係るX線管を概略的に示している。図中、電子光学系が備えられている。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図面に表された図は概略的なものである。各異なる図中、同様の又は同一の素子には、同一符号又は同一参照符号が与えられている。これらは対応する参照番号のうち第1桁だけが異なっている。
【0064】
図1はX線管100の断面図を示している。当該X線管100は電子エミッタ111を有する電子源110を含む。加熱されることで、電子エミッタ111はビーム路115に沿って進行する電子を放出することができる。簡明を期すため、たとえばウェーネルトシリンダ(Wehnelt cylinder)のような光学系は図1には図示されていない。
【0065】
当該X線管100は、電子源110と接続する高電圧供給体112をさらに有する。前記高電圧供給体は、電子源110を負の高電圧-HVに帯電する。電場電極130は、電子源110と標的である陽極120との間に備えられている。本明細書に記載された実施例によると、電場電極130は、様々な直径を有する円筒形素子である。従って図1に図示された断面図では、電場電極130は、電子源110を部分的に取り囲むかなり洗練された形状を有する。
【0066】
本発明は様々な種類の標的である陽極によって実現されて良いことに留意して欲しい。特に標的である陽極120は回転可能な陽極であっても良いし、又は静止した陽極であっても良い。
【0067】
電場電極130と標的である陽極はいずれも、当該X線管100の図示されていない筐体に対して電気的に接地したレベルに接続する。従って電子源110と標的である陽極120との間で延在する領域全体は2つの領域に分割することができる。その2つの領域とは、電子源110と電場電極130との間で延在する第1領域131、及び電場電極130と標的である陽極120との間で延在する第2領域132である。第1領域131は電子加速電場を有する。第2領域132は電場の存在しないすなわちゼロ電場領域を画定する。電場が存在しない領域132では、適切な多極電磁場によって適切に電子ビーム115を集束するため、電子光学系(図示されていない)が備えられている。それにより明確な集束スポット121となる。
【0068】
放出された電子は、電子源110から標的である陽極120へ向かって加速される。それによりその放出された電子は開口部130aを介して進行して、電場の存在しない領域132へ入り込む。標的である陽極120に衝突するとき、その放出された電子は、集束スポット121を起源とするX線ビームを発生させる。
【0069】
管内部の真空が不完全であるため、残留ガスの原子及び分子が、電子ビーム115、及び集束スポット121から反射される散乱電子によってイオン化してしまう恐れがある。それによりイオン150が生成される。
【0070】
当該X線管のある特定の構成部品の過熱を補償するため、水冷側壁135が供される。本明細書に記載された実施例によると、水冷側壁135は電場電極130と一体化して形成される。
【0071】
記載されたX線管100にはイオン操作装置140が備えられている。そのイオン操作装置140は、イオンコレクタ電極141及び他の電極141の2つの電極を有する。両電極141と142は電子ビーム路115のすぐ隣に配置されている。ここでの「すぐ」とは、電極141と142の各々と電子ビーム路115との間には他に素子が存在しないことを意味する。
【0072】
イオンコレクタ電極141は、接地電圧レベルで図示されていない筐体に対して負の電圧-Vと接続する。他の電極142は接地レベルに対して正の電圧+Vと接続する。それにより、2つの電極141と142との間には双極子電場が発生する。その電場は正のイオン150をイオンコレクタ電極141へ引き付ける。対応するイオン路は参照番号152で示されている。
【0073】
イオン路152の第1部分内では、イオン150は、電子源110と標的である陽極120との間で延在する残留電場によって引き付けられることが可能である。しかしイオン操作装置140の相互作用領域に接近する際、イオン150は2つの電極141と142によって発生する双極子電場の影響を受ける。イオン150の極性に依存して、双極子電場の影響を受けることで、イオンは電極141と142のうちの1つへ向けて偏向される。
【0074】
イオン操作装置140はまた3つ以上の電極を有しても良いし、又は収集電極1つだけを有しても良いことに留意して欲しい。たとえばイオン操作装置140は、単極、四重極、六重極、又は八重極であって良い。一般的には、前記イオン操作装置は任意の多重電極配置を有して良く、その多重配置は、イオン操作装置140の相互作用領域内に存在する荷電粒子への引力を発生させるのに適している。
【0075】
2つの電極141と142はいずれもゲッター材料で作られる。ゲッター材料は、イオン150が各電極に接触するときに、そのイオンを永続的に吸収することができる。ゲッター材料は、たとえばチタン及び/又はアルミニウム-ジルコニウム合金のような金属である。従ってイオン150がゲッター材料と接触すると、そのイオンはすぐに中性化する。これにより、イオン150の永続的な吸収がかなり容易になる。イオン150の永続的除去は、容器内部で低残留圧力を長期間維持するのに貢献する。その結果、第1電子加速領域131へ入り込む原子及び分子によって引き起こされる残留アーチ率(arching rate)もまた減少する。
【0076】
図1から分かるように、イオンコレクタ電極141はヒーター制御ユニット145と電気的に結合する。他の電極142も同様である。しかし図の簡明を期すため、図1では対応するケーブルは省略されている。ヒーター制御ユニット145は、図示されていない熱ワイヤへ熱流を与える能力を有する。その熱流はAC又はDC電流であって良い。
【0077】
熱ワイヤは、電極141と142(内部)に設置されるので、2つの電極のゲッター材料の加熱を可能にする。電極を加熱することによって、ゲッター材料のゲッター効率とゲッター率それぞれ別個に大幅に改善することができる。2つの電極141と142に供給される熱流を能動的に制御することによって、ゲッター材料の有害な過熱を回避することができる。
【0078】
上記とは対照的に、既知のX線管-電場の存在しない領域を有するが記載されたイオン操作装置140を
有していないもの-は、エミッタ構造が加速度的に劣化する危険性を有している。そのような劣化は、電場の存在しない領域内において、たとえば残留原子及び分子と電子ビームとの衝突によって発生するイオンによって引き起こされる恐れがある。これらのイオンの一部は電子エミッタへ向けて加速される。電場の存在しない領域内部に備えられている電子光学系はこれらのイオンを集束させてしまい、これらのイオンは小さなスポットでエミッタ表面に衝突する。これによりそのエミッタ構造は損傷を受けることが考えられる。その結果、そのエミッタ構造の寿命が縮まるか、又はそのエミッタ構造が突然故障してしまう。
【0079】
記載されたイオン衝突によって誘起される電子源の故障はまた、電場の存在しない領域を有する標準的なX線管内部でも起こりうることに留意して欲しい。しかし特に高電圧加速領域及びそれに続く電場の存在しない領域を有するX線管は、この振る舞いを示すことを特徴とする。
【0080】
ここでは、記載されたイオン操作装置140は、高電圧加速領域131へ入り込むイオン150に対する信頼性のあるバリヤと解することができる。
【0081】
記載されたX線管は、そのX線管の定常的な安定動作を維持するためにdenしエミッタへのイオン衝突を回避することが必要なる分野であれば如何なる分野にも適用可能である。それに加えて記載されたX線管は、電子ビーム管において、イオンによって誘起されるアーチ率を減少させるのに適用可能である。
【0082】
図2aは図1に図示されたイオン操作装置140-ここでは参照番号240で表されている-の電子ビーム軸に垂直な方向の断面図を示している。電気的接地レベルと接続する電場電極230は平板形状を有する。第1電極230の間に挟まれるようにして、イオンコレクタ電極241及び他の電極242が備えられている。電極241と242はいずれも弧形状を有する。イオンコレクタ電極241は負の電圧-Vと接続する。他の電極242は正の電圧+Vと接続する。接地された電場電極230とイオンコレクタ電極241の間、及び接地された電場電極230と他の電極242との間でのそれぞれ電位の隔離を可能にするため、絶縁素子243が供される。
【0083】
図2bは図1に図示されたイオン操作装置の断面図を示している。2つの電極241と242の間を延在する双極子電場は、図示されていない電子ビーム及び図示されていない散乱電子によって発生するイオン250に作用する静電力を引き起こす。イオンコレクタ電極241へ向かう複数のイオン路252が示されている。
【0084】
図3aは、本発明の他の実施例によるイオン操作装置340の断面図を示している。上述の実施例によると、イオン操作装置340もまた、水冷側壁335に相当する平板状電場電極330内部に備えられている。イオン操作装置340は、コレクタ電極341と他の電極342の2つの電極を有する。いずれの電極も少なくとも一部がゲッター材料で作られる。
【0085】
上述の実施例とは対照的に、そのゲッター材料は能動的には加熱されない。そのゲッター材料はむしろ受動的な方法で加熱される。特に電極341と342は、電子を含む粒子放射線によって加熱される。本明細書に記載された実施例によると、これらの電子は後方散乱電子によって発生する。その後方散乱電子は、標的である陽極上の集束スポット内で生成され、かつ電場の存在しない領域内部を直線状に進行する。これらの後方散乱電子は→322によって表される。表面に衝突する際、これらの散乱電子は、電極341と342のバルク材料内でそのエネルギーを解放する。
【0086】
電極341と342はまた、熱放射、及び/又は、標的である陽極と電極341,342との間での熱伝導によって加熱されても良い。
【0087】
用いられたゲッター材料に依存する温度限界を超えることで、イオンゲッター率が減少する。従って過熱を回避するのに有利である。
【0088】
図3bは一定の幾何学形状のイオン操作装置340についてエネルギーの解放を制限することが原理的に可能であることを図示している。遮蔽素子337は電極341と342の明確な部分を覆っているので、電極341と342に衝突する電子数が減少する。従って図3aに図示された実施例については、電極341と342の最大温度は減少する。
【0089】
本明細書に記載された実施例によると、遮蔽素子は、平板状電極330に形成された単純な突起である。しかし散乱電子及び/又は熱放射強度を減少させるという同一の技術的効果を実現するためには、他の種類の遮蔽素子が用いられても良いことは明らかである。
【0090】
印加による負荷が完了する前に最大温度に到達してしまうため、散乱電子322による受動加熱は、上述した加熱ワイヤによる能動加熱よりも厳密ではない。しかし加熱を実現する労力は受動的に行われる代替手法の方がはるかに少ない。その受動的に行われる代替手法では、熱放射及び/又は熱伝導によっても実現可能である。
【0091】
図4は、CTスキャナとも呼ばれるコンピュータ断層撮影(CT)装置470を図示している。CTスキャナ470は、回転軸472の周りで回転可能な構台471を有する。構台471はモーター473の手段によって駆動する。
【0092】
参照番号475は、多色放射線477を放出する放射線源-たとえばX線管のような-を示す。X線管475は、任意の上述の実施例に対応するX線管である。
【0093】
CTスキャナ470はアパーチャシステム476をさらに有する。アパーチャシステム476は、X線管475から放出されるX線を放射線ビーム477に整形する。
【0094】
放射線ビーム477-錐体形状又は扇形形状のビーム477であって良い-は、関心領域480aへ入り込むように案内される。本明細書に記載された典型的実施例によると、関心領域は患者480の頭部480aである。
【0095】
患者480はテーブル482上に位置している。患者の頭部480aは構台471の中心領域に位置している。その中心領域はCTスキャナ470の検査領域に相当する。関心領域480aへの進行後、放射ビーム477は放射線検出器485に衝突する。患者の頭部480aによって散乱されて斜めの角度でX線検出器485に衝突するX線を抑制するため、図示されていない散乱防止グリッドが供される。その散乱防止グリッドは検出器485のすぐ前方に設けられることが好ましい。
【0096】
X線検出器485は、X線管475に対向する構台471上に備えられている。検出器485は複数の検出器素子485を有する。各検出器素子485aは、患者480の頭部480aを通り抜けたX線光子を検出することができる。
【0097】
関心領域480aの走査中、X線源475、アパーチャシステム476、及び検出器485は、矢印487によって示された回転方向に構台471と共に回転する。構台471の回転については、モーター473がモーター制御ユニット490と接続する。モーター制御ユニット490自体はデータ処理装置495と接続する。データ処理装置495は、ハードウエア及び/又はソフトウエアの手段によって実現可能な再構成ユニットを有する。再構成ユニットは、様々な観察角度で得られた複数の2D像に基づいて3D像を再構成するように備えられている。
【0098】
さらにデータ処理装置495は、制御ユニットとしても機能する。その制御ユニットは、構台471の移動とテーブル482の移動とを調節するためにモーター制御ユニット490と情報のやり取りを行う。テーブル482の直線的な変位はモーター483によって実行される。モーター483はまたモーター制御ユニット490とも接続する。
【0099】
CTスキャナ470の動作中、構台471が回転し、かつ同時にテーブル482が回転軸472と平行に直線的にシフトする。それにより、関心領域480aの螺旋状走査が行われる。回転軸472に平行な方向には変位せずに構台471を回転軸472の周りに回転させるだけの環状走査を行うことも可能であることに留意して欲しい。それにより頭部480aのスライスを高精度で測定することが可能である。離散的な各テーブル位置について構台を少なくとも半回転させた後に、回転軸472に対して平行な離散的ステップでテーブル482を順次移動させることによって、患者の頭部のより大きな3次元表示を得ることができる。
【0100】
検出器485はプリアンプ488と結合する。プリアンプ488自体はデータ処理装置495と結合する。処理装置494は、様々な投影角度で得られた複数の各異なるX線投影データセットに基づいて、患者の頭部480aの3D表現を再構成することが可能である。
【0101】
患者の頭部480aの再構成された3D表現を観察するため、データ処理装置495と結合するディスプレイ496が供される。それに加えて3D再構成の斜視像の任意のスライスもまた、データ処理装置495とも結合するプリンタ497によって印刷されて良い。さらにデータ処理装置495もまた、医療用画像保存通信システム498(PACS)とも結合して良い。
【0102】
モニタ496、プリンタ497、及び/又はCTスキャナ470内に供される他の装置は、コンピュータ断層撮影装置470に対して局所的に配置されて良い。あるいはその代わりにこれらの構成部品はCTスキャナ470から離れた場所にあっても良い。離れた場所とはたとえば、研究所若しくは病院、又は1つ以上の設定可能なネットワーク-たとえばインターネット、バーチャルプライベートネットワーク等-を介してCTスキャナ470と接続した全く別な場所である。
【0103】
本発明の上述した実施例を要約すると以下のようになる。
【0104】
少なくとも1つのイオンコレクタ電極141を有するイオン操作装置140を含むX線管100が記載されている。前記イオンコレクタ電極141の少なくとも一部はゲッター材料で作られる。前記イオン操作装置140は、電場の存在しない領域131を有する高性能X線管にとって特に有利である。前記イオン操作装置140は、イオン150を偏向する電場を発生させる。ゲッター電極141に衝突するとき、前記イオン150は永続的に収集されるので、当該X線管100の真空容器内部から除去される。これにより、当該X線管100の電子エミッタへのイオンの衝突が回避される。それに加えて残留ガスによって生じるアーチ率を大幅に減少させることができる。前記ゲッター材料の加熱は、加熱ワイヤによって、又は前記ゲッター材料を有する前記電極341,342への散乱電子322の明確な衝突によって実現されて良い。
【符号の説明】
【0105】
100 X線管
110 電子源
112 電子エミッタフィラメント
115 電子ビーム/ビーム路
120 標的である陽極
121 集束スポット
125 X線ビーム
130 電場電極
130a 開口部
131 第1領域/電子加速領域
132 第1領域/電場の存在しない領域
135 水冷側壁
140 イオン操作装置
141 コレクタ電極
142 他の電極
145 ヒーター制御ユニット
150 イオン
152 イオンコレクタ電極141へのイオン路
230 電場電極
240 イオン操作装置
241 コレクタ電極
242 他の電極
243 絶縁素子
250 イオン
252 イオンコレクタ電極241へのイオン路
322 散乱電子
330 電場電極
335 水冷側壁
337 遮蔽素子/突起部
340 イオン操作装置
341 コレクタ電極
342 他の電極
470 医療用X線画像化システム/コンピュータ断層撮影装置
471 構台
472 回転軸
473 モーター
475 X線源/X線管
476 アパーチャシステム
477 放射ビーム
480 関心対象/患者
480a 関心領域/患者の頭部
482 テーブル
483 モーター
485 検出器
485a 検出器素子
487 回転方向
488 プリアンプ
490 モーター制御ユニット
495 データ処理装置
496 モニタ
497 プリンタ
498 医療用画像保存通信システム(PACS)
500 X線管
510 電子源
511 電子エミッタフィラメント
512 高電圧電源
515 電子ビーム/ビーム路
520 標的である陽極
521 集束スポット
522 散乱電子
530 電場電極
530a 開口部
531 第1領域
532 第2領域
536 電子光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーム路に沿って進行する電子ビームを発生させるように備えられた電子源、
前記ビーム路内に備えられていて、かつ前記電子ビームの集束スポットを起源とするX線ビームを発生させるように備えられた標的である陽極、並びに
前記ビーム路内又は散乱電子が生じる空間内に存在する原子及び分子と前記電子ビームとの衝突から発生するイオンを偏向して収集するように備えられたイオン操作装置、
を有するX線管であって、
前記イオン操作装置はコレクタ電極を有し、
該コレクタ電極は前記イオンの少なくとも一部に静電引力を供するために帯電可能であり、かつ
前記コレクタ電極の少なくとも一部はゲッター材料から作られる、
X線管。
【請求項2】
前記イオン操作装置は他の電極を有する、請求項1に記載のX線管。
【請求項3】
前記コレクタ電極は接地電圧に対して負の電圧レベルであり、かつ
前記他の電極は接地電圧に対して正の電圧レベルである、
請求項1に記載のX線管。
【請求項4】
当該X線管はさらに電場電極を有し、
該電場電極は前記電子源と標的である陽極との間に備えられ、
それにより、前記電子源と電場電極との間を延在する第1領域、及び(b)前記電場電極と標的である陽極との間を延在する第2領域、が画定され、
前記電場電極は前記標的である陽極と実質的に同一な電圧となるように備えられる、
請求項1に記載のX線管。
【請求項5】
前記イオン操作装置は前記第2領域内に設けられる、請求項4に記載のX線管。
【請求項6】
前記イオン操作装置は前記電子ビームの近くに設けられる、請求項1に記載のX線管。
【請求項7】
前記ゲッター材料の温度を制御するように備えられている、請求項1に記載のX線管。
【請求項8】
前記ゲッター材料は加熱される、請求項1に記載のX線管。
【請求項9】
前記ゲッター材料を能動的に加熱するように備えられているヒーター制御ユニットをさらに有する、請求項8に記載のX線管。
【請求項10】
前記ゲッター材料を受動的に加熱するように設計されている、請求項8に記載のX線管。
【請求項11】
前記標的である陽極上の集束スポットから主に生じる散乱電子によって前記ゲッター材料を加熱するように設計されている、請求項10に記載のX線管。
【請求項12】
前記散乱電子が衝突する前記コレクタ電極の所定部分を少なくとも覆う遮蔽素子をさらに有する、請求項11に記載のX線管。
【請求項13】
前記標的である陽極を起源として前記ゲッター材料で終端する熱放射及び/又は熱伝導によって加熱されるように設計される、請求項10に記載のX線管。
【請求項14】
前記熱放射による照射及び/又は前記熱伝導による加熱から前記コレクタ電極の少なくとも所定部分を保護する減衰素子をさらに有する、請求項13に記載のX線管。
【請求項15】
請求項1に記載のX線管を有するX線システムであって、特にコンピュータ断層撮影システムのような医療用X線画像化システム。
【請求項16】
請求項1に記載のX線管を使用する手順を有する、X線発生方法であって、特にコンピュータ断層撮影のような医療用X線画像化用のX線の発生方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−507188(P2010−507188A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531964(P2009−531964)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054121
【国際公開番号】WO2008/047267
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)