説明

ゲーム機の施錠装置

【課題】作動杆を不正に動かして行なう不正解錠を防止することができるゲーム機の施錠装置を提供する。
【解決手段】ラッチ部材10は、前扉の閉鎖時に受け具31に押されてラッチ位置に回動した時、ラッチ位置に係止される。シリンダ錠7によりカム部材21を解錠方向に回動させたとき、作動杆4が移動して係止が解除されてラッチ部材10が解錠側に回動する。作動杆4にロック用係止部4hが設けられ、基枠体1の一部に第2シリンダ錠19が取り付けられる。施錠時にロック用係止部4hに係止されて作動杆4の解錠方向への移動を阻止し且つカム部材21と作動杆4との係合を阻止するロック部材18が、第2シリンダ錠19の錠軸に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシンなどのゲーム機の前扉(前面枠)をキャビネット(本体枠)に対し施錠するゲーム機の施錠装置に関し、特に部品点数を削減できると共に、不正解錠を防止することができるゲーム機の施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ機などゲーム機の施錠装置として、基枠体の内側に作動杆が摺動可能に配設され、基枠体の支持板の上部と下部に鉤部材が、作動杆に連結されて傾動可能に枢支され、基枠体の取付板の中間部に、シリンダ錠がその錠軸を取付板に設けた孔から内側に差し込むように固定され、錠軸の先端に作動杆と係合するカム部材が取り付けられた構成の施錠装置が使用されている。
【0003】
この種のゲーム機用施錠装置は、構造が強固で、施錠・解錠動作も確実に行うことができるものの、構造上、前面枠の内側に取付けられた施錠装置の鉤部材が前面枠の内側から突出する。このため、前面枠のアッセンブリーを梱包して搬送する場合、その梱包が難しく、突出した鉤部材が搬送中に他の部分に当たって傷つく等の問題があった。
【0004】
そこで、本発明者らは、従来、前面枠の内側から突出する部分がなく、前面枠を本体枠に対し、円滑且つ確実に施錠・解錠することができるゲーム機の施錠装置を提案した(下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−105417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この施錠装置は、取付板と支持板とを有する基枠体の内側に長尺の作動杆が摺動可能に配設され、取付板の中間部にシリンダ錠が固定され、シリンダ錠の錠軸にカム部材が作動杆に係合可能に取り付けられ、基枠体の取付板が前面枠の内側に取り付けられ、本体枠の内側に受け具が取り付けられる。基枠体の支持板の上部と下部に受け具の進入を許容する開口凹部が形成され、開口凹部内の受け具を拘束する溝状のラッチ凹部を有するラッチ部材が上部と下部の開口凹部の近傍に各々回動可能に枢支される。
【0007】
ラッチ部材には係止ピンが移動可能に取り付けられ、支持板には係止ピンの先端が係合しガイドされるガイド係止孔がロック部を有して形成され、作動杆にはその移動時にラッチ部材の係止ピンに係合してロック部によるロックを外すように動作する作動係合部が設けられ、ラッチ部材を解錠側に付勢するばね部材が内蔵される。
【0008】
そして、この施錠装置は、前面枠を閉じて施錠操作を行なったとき、上部と下部のラッチ部材のラッチ凹部に受け具の係止部が嵌入し、その係止部に押されてラッチ部材がラッチ位置に回動した時、ラッチ部材の係止ピンがガイド係止孔からロック部に移動して、ラッチ部材をラッチ位置にロックし、施錠する。
【0009】
ところで、この種の施錠装置がゲーム機に使用されて、パチンコホールなどに設置された場合、前面枠の隙間から差し込まれた針金等の不正器具を作動杆に引っ掛け、解錠方向に引いた際、不正解錠が可能となる虞があった。
【0010】
また、この種のゲーム機の施錠装置には、ゲームのリセットなどに使用される機能スイッチが取り付けられる場合があり、この場合には、基枠体内にスイッチ用作動杆が摺動可能に配設され、シリンダ錠の操作によりカム部材を解錠側とは反対方向に回動させたとき、カム部材がスイッチ用作動杆に係合してこれを移動させ、機能スイッチをスイッチングさせることができる。
【0011】
しかしながら、このスイッチ用作動杆が基枠体内に配設されると、スイッチ用作動杆をガイド保持するガイド孔やガイドピンなどのガイド部が必要となることに加え、スイッチ用作動杆を非作動方向に付勢するためのばね部材が必要となるなど、部品点数が増大し、組み付けの加工工数も増大するという課題があった。
【0012】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、作動杆を不正に動かして行なう不正解錠を防止することができるゲーム機の施錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の施錠装置は、
取付板と支持板とを有する基枠体の該支持板に沿って長尺の作動杆が摺動可能に配設され、該取付板にシリンダ錠が固定され、該シリンダ錠の錠軸にカム部材が該作動杆と係合可能に取り付けられ、該基枠体の取付板がゲーム機の前扉の内側に取り付けられ、ゲーム機のキャビネットの内側に受け具が取り付けられるゲーム機の施錠装置であって、
該基枠体の支持板の上部と下部に該受け具の進入を許容する開口凹部が形成され、該開口凹部内の受け具を拘束する溝状のロック凹部を有するラッチ部材が上部と下部の該開口凹部の近傍に各々回動可能に枢支され、該ラッチ部材は、前扉の閉鎖時に該ラッチ部材が該受け具に押されてラッチ位置に回動した時、ラッチ位置に係止され、該シリンダ錠によりカム部材を該ラッチ部材の解錠方向に回動させたとき、作動杆が移動して係止が解除されて該ラッチ部材が解錠側に回動するゲーム機の施錠装置において、
該作動杆にロック用係止部が設けられ、該基枠体の一部に第2シリンダ錠が取り付けられ、施錠時に該ロック用係止部に係止されて該作動杆の解錠方向への移動を阻止し且つ前記カム部材と該作動杆との係合を阻止するロック部材が、該第2シリンダ錠の錠軸に固定されたことを特徴とする。
【0014】
この発明の施錠装置によれば、解錠する際、先ず、第2シリンダ錠を操作してロック部材を回動させ、作動杆のロック用係止部に対するロック部材の係止を解除する。次に、シリンダ錠の鍵を解錠方向に回し、カム部材が同方向に回動すると、そこに係合する作動杆が移動し、その作動係合部がラッチ部材の係止ピンに作用し動かす。これにより、係止ピンが支持板のガイド係止孔のロック部から外れ、このとき、ラッチ部材はばね部材の付勢力によって解錠側に回動し、ロックされていた受け具がラッチ部材のラッチ凹部から外れ、開口凹部から押し出され、解錠状態となる。
【0015】
施錠状態においては、ロック部材が作動杆のロック用係止部に係止されて作動杆の解錠方向への移動をロックされる状態にあるため、前扉の隙間から針金などの不正器具を差し込んで作動杆に引っ掛け、これを解錠方向に動かそうとしても不可能であり、作動杆の移動による不正解錠を防止することができる。
【0016】
また、請求項2の発明は、上記請求項1の施錠装置において、前記基枠体に非接触式の機能スイッチが取り付けられ、前記作動杆の一部に該機能スイッチを動作させるためのスイッチ作動部が設けられ、前記シリンダ錠を解錠方向とは逆の方向に回動操作したとき、該作動杆が解錠方向とは逆方向に移動して、該スイッチ作動部が該機能スイッチを動作させるように構成され、前記ロック部材には、前記カム部材が進入可能な開口部が設けられ、該ロック部材が該作動杆の解錠側への移動を阻止する状態で、該カム部材が該作動杆の該開口部に進入して、該作動杆をスイッチ作動方向へのみ移動可能としたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、機能スイッチを動作させる場合、シリンダ錠の鍵を解錠時とは反対方向に回すと、カム部材が同方向に回動し、カム部材に係合して作動杆が移動し、それにより、作動杆に設けたスイッチ作動部が機能スイッチに作用し、機能スイッチがスイッチング動作し、ゲーム機のリセットなどが行なわれる。
【0018】
したがって、作動杆が解錠用とスイッチ作動用に兼用されるため、従来の施錠装置で使用されるスイッチ作動杆は不要となり、部品点数を削減し、組み立て作業を簡単化することができる。また、兼用の作動杆であっても、上記ロック部材により作動杆の解錠方向への移動をロックした状態で、逆方向にシリンダ錠を回したときには、作動杆をスイッチ作動方向へのみ移動させ、スイッチング動作を行なうことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のゲーム機の施錠装置によれば、作動杆を不正に動かして行なう不正解錠を防止することができ、さらに、シリンダ錠の操作に応じて機能する機能スイッチを備えた場合でも、スイッチ用作動杆を不要として部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例を示す施錠装置の左側面図である。
【図2】同施錠装置の右側面図である。
【図3】同施錠装置の背面図(a)と平面図(b)である。
【図4】同施錠装置の分解右側面図である。
【図5】同施錠装置の分解背面図である。
【図6】ラッチ部材の分解斜視図(a)とその背面図(b)である。
【図7】(a)は施錠装置上部のシリンダ錠と第2シリンダ錠を示す正面側からの部分斜視図、(b)は背面側からの部分斜視図である。
【図8】受け具の正面左側からの斜視図である。
【図9】受け具の背面側からの斜視図である。
【図10】受け具の係止部に合成樹脂製被覆部を嵌め込む際の分解斜視図である。
【図11】使用状態を示す前扉開放時の断面付きの右側面図である。
【図12】使用状態を示す前扉閉鎖時の断面付きの右側面図である。
【図13】前扉を閉鎖し第2シリンダ錠をロックした状態の断面付きの右側面図である。
【図14】施錠時のラッチ部材の動きを示す説明図である。
【図15】解錠時のラッチ部材の動きを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1はスロットマシンなどのゲーム機の施錠装置の左側面図、図2は同施錠装置の右側面図、図3は同背面図と平面図を示している。また、図4、図5は同施錠装置の分解右側面図と分解背面図を示している。この施錠装置は、概略的には、受け具31の係止部33,34に係止されるラッチ部材10,10を、支持板3の上部と下部に枢軸5、5を軸に回動可能に枢支し、ラッチ部材10,10の溝状のラッチ凹部15,15内に、係止部33,34の円柱部41を嵌入し拘束して施錠する構造である。
【0022】
施錠装置は、縦長の基枠体1を有し、基枠体1は略コ字状断面を有したチャンネル材状に形成され、その底板を取付板2とし、取付板2に対し直角に曲折された幅広の支持板3を有しており、取付板2には複数の取付孔が穿設される。取付板2の上端部に、拡幅部2aが幅広に形成され、その拡幅部2aにはシリンダ錠7を取り付けるための挿入孔が形成される。シリンダ錠7はその挿入孔に内側から挿入され、そのフランジ7aを拡幅部2aの内側に当てて固定される。また、拡幅部2aの側部の支持板は、分割支持板3aとして分割して形成され、その分割支持板3aの下部に支持ローラ22が回転自在に軸支される。
【0023】
支持板3の上部と下部の背面側に、その支持板3の一部を切り欠くように開口凹部3b、3cが形成され、この上部と下部の開口凹部3b、3cの真下位置に各々、ラッチ部材10,10が枢軸5,5を軸に所定の角度範囲で回動可能に枢支される。このラッチ部材10,10は、施錠時、受け具31の係止部33,34が開口凹部3b、3cに進入し、開口凹部3b、3cの真下位置に枢支されたラッチ部材10が係止部33,34の円柱部41をそのラッチ凹部15内に受け入れながら回動し、係止部33,34を拘束してする構造となっている。更に、図4に示すように、上部と下部の開口凹部3b、3cの少し下方に各々、ラッチ部材10側の係止ピン14をガイドし且つ係止するガイド係止孔8,8が支持板3に形成されている。
【0024】
このガイド係止孔8,8は図4のように略L字状に形成され、支持板3と平行な部分がロック部8a,8aとして形成され、ラッチ部材10、10の係止ピン14が、カバー板12のガイド孔12a,12aを移動し、同時にガイド係止孔8、8からそのロック部8a,8aに進入したとき、ラッチ部材10はラッチ状態となりロックされる。
【0025】
さらに、上部と下部のガイド係止孔8,8の少し上の支持板3に各々、支持凸部9、9が内側つまりラッチ部材10,10側に突出して設けられる。この支持凸部9、9は、図6bに示すように、ラッチ部材10の内側面に形成された円弧状の係合凹部12bに進入し、ばね部材13に当接する。これにより、ラッチ部材10は、施錠時、図14のように、ばね部材13の付勢力に抗して回動し、解錠時に係止ピン14がロック部8aからガイド係止孔8側に外れたとき、ラッチ部材10はばね部材13の付勢力により解錠方向に回動する。
【0026】
図6に示すように、ラッチ部材10には、受け具31の係止部33,34を受け入れて拘束する溝状のラッチ凹部15が形成され、更に、ラッチ部材10内には、ラッチ部材10をラッチ状態に係止するための係止ピン14と付勢用のばね部材13が内蔵される。また、ラッチ部材10は、図6のように、ラッチ本体11とそれを覆うカバー板12とを有して形成され、ラッチ本体11内には空間が形成され、その内部空間にばね部材13と係止ピン14が収納される。
【0027】
ラッチ本体11は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの耐摩耗性の高い硬質合成樹脂を用いて成形され、カバー板12は、補強のために金属板から形成される。ラッチ本体11を成形する成形材料には、二硫化モリブデンなどの滑剤が添加されており、これによって、ラッチ部材10の外面を形成するラッチ本体11に適度な滑性をもたせ、受け具31側の係止部33,34の円柱部41を滑らかに嵌入する形態となっている。また、ラッチ本体11の内側面に金属板のカバー板12を固定ねじ12aで固定することにより、ラッチ部材10の強度を補強している。また、カバー板12は、端部に係止片12dを設け、その係止片12dをラッチ本体11に設けたスリットに差し込んで係止させ、1本の固定ねじ12cで固定できるようにしている。
【0028】
ラッチ部材10に内蔵される係止ピン14は、ラッチ部材10をラッチ位置に回動させたとき、その位置で支持板3のガイド係止孔8のロック部8aに係止させてロックさせるもので、カバー板12に形成されたガイド孔12aから支持板3側に突き出して配設され、ばね部材13により常に外側に付勢されている。
【0029】
ばね部材13は、図6に示す如く、2個の円形コイル部を有する捻りばねであり、その一方の円形コイル部13aをラッチ本体11の枢軸ボス部に嵌合させ、他方の円形コイル部13bをラッチ本体11内の偏倚位置に突設した係止ボス部11aに嵌合させて装着され、ばね部材13の一端で係止ピン14を付勢し、その他端で支持板3の内側に突設した支持凸部9を付勢するように掛止されている。ラッチ部材10のカバー板12に形成された円弧状の係合凹部12bには、支持板3側の支持凸部9が進入して係合され、ラッチ部材10内のばね部材13の他端がその支持凸部9に係合している。つまり、このばね部材13の他端が支持凸部9に係合することにより、ラッチ部材10は相対的に解錠側(図15の時計方向)にばね力を受けて付勢される。
【0030】
図6のように、ラッチ部材10は、内部にばね部材13及び係止ピン14を内蔵してユニット化され、ラッチ本体11内に係止ピン14、ばね部材13を組み込み、カバー板12を固定ねじ12cで固定して、施錠装置の組立工程の前に予め製造しておくことができる。これにより、施錠装置の製造ラインでは、このラッチ部材10を枢軸5で軸支するだけでよく、組付け作業は簡単となる。
【0031】
縦長で帯状の作動杆4が、基枠体1の支持板3の外側及び分割支持板3aの内側に沿って摺動可能に配設される。作動杆4には、図4に示すように、その上部と下部に作動係合部4a,4bが支持板3側で且つラッチ部材10側に向けて突設される。また、作動係合部4a,4bは、上記ラッチ部材10、10の係止ピン14、14が配置されるガイド係止孔8、8のロック部8a,8a近傍に位置しており、解錠時には、その作動係合部4a,4bの先端でロック部8a,8a内の係止ピン14、14を押して、ロックを解除する構造である。なお、作動係合部4a,4bは作動杆4の内側に配置されてその外側が金属板で覆われた形態にあり、ガイド係止孔8,8を通して支持板3の外側の僅かに突出した係止ピン14,14の先端に作用する構造である。
【0032】
また、作動杆4には後述のカム部材21が係合するための係合孔4c、4dが、その対応箇所である上部に形成されている。さらに、作動杆4の作動係合部4a,4bの真下位置にガイド孔4g、4gが形成され、ガイドピン6,6がこのガイド孔4g、4gに挿通されて支持板3に固定され、これにより、作動杆4の上下摺動がガイドピン6,6によりガイドされる。
【0033】
作動杆4は支持板3の外側に沿って且つ分割支持板3aの内側に沿って配設され、1本のばね部材(コイルばね)16により、作動杆4は上下にフローティング状態で支持される。これにより、作動杆4は、カム部材21の可動により上又は下に移動したとき、ばね部材16の付勢力を受けて中立位置に復帰可能となっている。
【0034】
具体的には、図4に示すように、ガイドピン16c、16dが支持板3の内側から、その支持板3に設けたガイド孔3d,3eから挿入される。さらに支持板3の外側に位置する作動杆4のガイド孔4f,4eに、ガイドピン16c、16dの先端が挿通され、作動杆4の外側に突出したその先端に各々ばね掛け部材16a,16bが固定され、両側のばね掛け部材16a,16b間にばね部材16が掛けられる。これにより、作動杆4は図8の中立位置から上方に及び下方にばね部材16の付勢力に抗して移動可能であり、作動杆4がシリンダ錠7によるカム部材21の回動動作によって上方又は下方に移動したとき、移動力の消失により中立位置に戻る構造となっている。
【0035】
また、この作動杆4は、解錠作動用とスイッチ作動用に兼用とされ、作動杆4の下部寄りにスイッチ作動部4eが突設される。一方、スイッチ作動部4eに対応した支持板3の箇所に、機能スイッチ(光電式の非接触スイッチ)17が取り付けられ、作動杆4を下降させたとき、スイッチ作動部4eが機能スイッチ17に作用して機能スイッチ17をスイッチング動作させる。この機能スイッチ17はゲーム機のリセットなどに使用される。
【0036】
このように、解錠用の作動杆4を、解錠作動用とスイッチ作動用に兼用することにより、従来、必要としていた作動スイッチ用の作動杆やそれを付勢するコイルばねが不要となり、部品点数を削減し、施錠装置の構造を簡単化することができる。
【0037】
図5に示すように、基枠体1の取付板2の上部の拡幅部2aに大径孔が形成され、その大径孔に内側から挿入する形態でシリンダ錠7が装着される。シリンダ錠7はフランジ7aを有しそのフランジ7aを取付板2の拡幅部2aにねじ止めして固定される。シリンダ錠7の錠軸は基枠体1の内側に突出し、その先端にカム部材21が固定される。カム部材21には第1の係合凸部21aと第2の係合凸部21bが形成され、その第1の係合凸部21aは、シリンダ錠7の鍵の右回転に応じて作動杆4の係合孔4dと係合し、第2の係合凸部21bはその左回転に応じて作動杆4の係合孔4cに係合する。
【0038】
したがって、シリンダ錠7の鍵を右に回すと、カム部材21が同方向に回動して、カム部材21の係合凸部21aが作動杆4の係合孔4dに係合し、ばね部材16の付勢力に抗して作動杆4を上昇させ、その作動係合部4a,4bによりラッチ部材10,10の係止ピン14を押し上げて、ラッチ部材10,10を解錠動作させる。一方、シリンダ錠7の鍵を左に回すと、カム部材21が同方向に回動して、カム部材21の係合凸部21bが係合孔4cに係合し、ばね部材16の付勢力に抗して作動杆4を下降させ、そのスイッチ作動部4eが機能スイッチ17内に進入し、機能スイッチをスイッチング動作させる。
【0039】
さらに、基枠体1の上部における取付板2の背面側に、第2シリンダ錠19が装着される。この第2シリンダ錠19の錠軸には、ロック部材18が固定され、ロック部材18の先端部は取付板2の拡幅部2aに設けたスリット2c(図5)から基枠体1の内側に進入し、カム部材21と作動杆4の間に挿入され、カム部材21の回動による作動杆4の解錠方向への移動を阻止する。
【0040】
作動杆4は、この第2シリンダ錠19のロック部材18によって、解錠側(上方)への移動が阻止されるが、スイッチ作動方向(下方向)に作動杆4の移動を可能とするために、ロック部材18には、カム部材21のスイッチ作動方向への回動時、その係合凸部21bが進入可能な開口部18aが形成される。これにより、第2シリンダ錠19がロック状態にあっても、カム部材21はスイッチ作動方向に回動可能であり、作動杆4も下方に移動可能である。
【0041】
さらに、このロック部材18は、図1、図2のように、ロック位置にある場合、作動杆4の対応位置に突設したロック用係止部4hに当接して、作動杆4の解錠方向への移動を阻止する。これにより、施錠状態における作動杆4の解錠方向への移動がロックされ、針金などによる不正解錠が防止される。すなわち、図4、図5に示すように、作動杆4におけるロック部材18の近傍位置にロック用係止部4hが内側に突設される。第2シリンダ錠19の錠軸に固定されるロック部材18が、図7のように、第2シリンダ錠19のロック操作によりカム部材21側に回動したロック状態のとき、ロック部材18の先端部がロック用係止部4hに当接して作動杆4の上方への摺動を阻止する。
【0042】
第2シリンダ錠19は、上記のように、シリンダ錠7と共に施錠装置を二重にロックする機能を有し、シリンダ錠7の解錠操作をロックする。したがって、解錠時には、第2シリンダ錠19の鍵により解錠操作した後、さらにシリンダ錠7を解錠操作して、解錠するようにして、セキュリティをより向上させている。また、第2シリンダ錠19は、取付板2の上部背面側に突設した取付座部2bに固定され、第2シリンダ錠19の鍵口は施錠装置本体の右側面に向いて配置され、施錠装置をゲーム機の前扉51に取り付けたとき、その鍵口は前扉51の右側面に現れ、ゲーム機の正面側から目立たないようにしている。
【0043】
次に、施錠装置のラッチ部材10に対応して、ゲーム機のキャビネット50側に固定される受け具31について説明する。受け具31は、図8〜図10に示すように、基本的には、縦長の帯状金属板の上部と下部に係止部33,34を設けて形成され、帯状金属板の部分が取付部32となり、取付部32には複数の固定孔が穿設され、その取付部32の右側面をゲーム機のキャビネット50の右側壁の内側に当てて固定される。
【0044】
上部と下部の係止部33,34は、帯状金属板の一部を矩形に切り起し、正面側に略直角に曲折して係止芯部35,36が形成され、図10に示すように、上部と下部の係止芯部35,36に、合成樹脂製被覆部40が係止芯部35,36の元部側から係止芯部35,36の縁部を被覆する形態で嵌め込まれて構成される。上部と下部の係止部33,34は、略同様な形状、構造を有して形成されている。
【0045】
金属板により矩形板状に形成された係止芯部35,36の先端は、背面側に略直角に曲折された曲げ先端部35a,36aを有している。また、図10に示すように、係止芯部35,36の曲折部となる上下縁部の元部には、嵌入用凹部35b、36bが形成され、合成樹脂製被覆部40をこの元部から係止芯部35、36の両側縁部を挟むように嵌入可能となっている。
【0046】
合成樹脂製被覆部40は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂などの耐摩耗性の高い硬質合成樹脂により成形され、図10に示すように、上端部と下端部に、つまり係止芯部35,36の縁部を被覆する箇所に、略円柱状の円柱部41が形成される。また、この合成樹脂製被覆部40を成形する成形材料には、二硫化モリブデンなどの滑剤が添加されており、合成樹脂製被覆部40の円柱部41は適度な滑性を有し、施錠装置側のラッチ部材のラッチ凹部に対し滑らかに嵌合する形態となっている。
【0047】
円柱部41の外径は、後述の施錠装置におけるラッチ部材のラッチ凹部に密に嵌入可能な寸法に形成されている。上部と下部の円柱部41の間は、係止芯部35,36の背面側を覆う板状部により連続し、その板状部に沿って円柱部41の内側に、溝部42が円柱の軸方向に沿って形成され、上部と下部の溝部42に係止芯部35,36の上下の縁部を嵌入可能に形成されている。図10に示すように、溝部42の挿入側の一端は開口し、他端は閉鎖されている。合成樹脂製被覆部40は、受け具31の右側面側から係止芯部の縁部を両側から挟む形態で、上下の溝部42を縁部に差し込み、係止芯部35、36の元部側から摺動させて嵌め込まれるが、その差し込み先端は係止芯部35,36の先端の曲げ先端部35a,36aに当接し停止する。
【0048】
図10に示す如く、合成樹脂製被覆部40は、係止芯部35,36に対し、受け具31の取付部32の右側面側から、その縁部を溝部42に差し込むように嵌め込むが、この受け具31は、その取付部32の右側面を、ゲーム機のキャビネット内側の被取付部に当てて固定するため、受け具31をキャビネットに固定した後は、合成樹脂製被覆部40を挿入した係止芯部35,36の元部側は閉じられ、合成樹脂製被覆部40が外れない構造となっている。
【0049】
受け具31の取付部32には、段差を付けた段差部37が長手方向に沿った正面側に形成され、取付部32の曲げ強度を向上させている。また、取付部32の上部の係止部33の真上位置に、滑り支持板38が設けられ、ゲーム機の前扉51を閉じる際、施錠装置の支持ローラ22がこの滑り支持板38の上を転動して前扉を支持する。
【0050】
上記構成の施錠装置は、図11、12に示すように、ゲーム機の前扉51の内側の右側端部(自由端側)に、取付板2を介して縦に固定され、キャビネット50内の対向位置(右側壁部内面)に受け具31が取り付けられる。施錠装置のシリンダ錠7の鍵口は、前扉51の前面上部に露出し、第2シリンダ錠19の鍵口は前扉51の右側面の上部に露出する。
【0051】
前扉51をキャビネット50に対し閉じると、図12に示すように、受け具31の上下の係止部33,34が、施錠装置の上部と下部の開口凹部3b、3cからラッチ部材10,10のラッチ凹部15,15内に進入する。このとき、図14に示すように、係止部33,34の合成樹脂製被覆部40の円柱部41がラッチ部材10,10を押し込むようにして、ラッチ部材10,10が図14の反時計方向に回動し、回動端までラッチ部材10,10が回動すると、ラッチ部材10内の係止ピン14がばね部材13の付勢力によりガイド係止孔8内で移動し、これによって、係止ピン14がガイド係止孔8のロック部8aに進入する。
【0052】
このとき、ラッチ部材10,10の回動がロックされ、図14の左端図に示すように、ラッチ部材10,10のラッチ凹部15、15内に受け具31の係止部33,34が拘束され、ラッチ部材10,10がそのラッチ位置に保持され、図12に示すような施錠状態となる。このような施錠時、上述のように、ラッチ部材10のラッチ凹部15とそこに嵌入される受け具31の合成樹脂製被覆部40の円柱部41は、適度な滑性を有した合成樹脂により成形されているため、非常にスムーズに施錠することができ、解錠動作も円滑に行なうことができる。また、耐磨耗性が良好な合成樹脂製のラッチ部材10と受け具31の使用により、当接・接触箇所の摩耗を少なくして、ラッチ部材や受け具を長期にわたり安定して動作させることができる。
【0053】
そして、上記のように前扉51を閉じて施錠状態とした後、さらに、鍵を第2シリンダ錠19に差し込み右に回して施錠する。この操作により、ロック部材18が、図12の状態から図13のように時計方向に回動し、カム部材21と作動杆4の間に進入して、カム部材21の係合凸部21aと作動杆4の係合孔4dの係合を不可能とする。また、このとき、ロック部材18の先端が作動杆4のロック用係止部4hに当接した状態となり、作動杆4の上方への移動(解錠側への移動)が阻止される。したがって、図13に示す施錠状態においては、作動杆4を針金などで解錠側に移動させようとしても、不可能となり、また、仮にシリンダ錠7の錠軸を回してカム部材21を解錠方向に回動させようとしても、カム部材21の回動は阻止され、不正解錠は防止される。
【0054】
一方、ゲーム機のリセットなどを行なうために、機能スイッチ17をスイッチングする場合、シリンダ錠7に鍵を差し込み左に回す。図7に示すように、ロック部材18には開口部18aが設けられているため、シリンダ錠7に差し込んだ鍵を左に回した場合、カム部材21が同方向に回動してその係合凸部21bが開口部18aから進入して作動杆4の係合孔4cに係合し、作動杆4が下方に移動する。これにより、作動杆4のスイッチ作動部4eが機能スイッチ17に作用する。したがって、施錠状態においても、作動杆4を下方に移動させて、機能スイッチ17をスイッチングさせることができる。
【0055】
前扉51を解錠する場合、先ず第2シリンダ錠19に鍵を差し込んで回し、その錠軸のロック部材18を図12,13の反時計方向に回してそのロックを解除し、カム部材21の回動(図3の反時計方向への回動)を許容した状態とする。次に、シリンダ錠7に鍵を挿入しその鍵を右に回すと、カム部材21が同方向に回動し、カム部材21の係合凸部21aが作動杆4の係合孔4dに係合し、作動杆4が上に移動する。これにより、作動杆4の上部と下部の作動係合部4a、4b(支持板3のガイド係止孔8のロック部8aに対向して位置する)が同様に上方に移動し、そのロック部8a内の係止ピン14を図15に示すように、上方に押すように作用する。
【0056】
このとき、係止ピン14は、図15に示すように、ばね部材13による付勢力によって、ロック部8aからガイド係止孔8へと移動し、ラッチ部材10,10のラッチ位置でのロックが外れる。つまり、ラッチ部材10,0はばね部材13の付勢力により、図15の時計方向に回動し、拘束されていた受け具31の係止部33,34の合成樹脂製被覆部40の円柱部41がラッチ部材10,10のラッチ凹部15、15から外れ、開口凹部3b、3cからも押し出されて解錠状態となる。
【0057】
このように、施錠装置の施錠時には、ロック部材18が作動杆4のロック用係止部4hに係止されて作動杆4の解錠方向への移動をロックされる状態にあるため、前扉51の隙間から針金などの不正器具を差し込んで作動杆に引っ掛け、これを解錠方向に動かそうとしても不可能であり、作動杆4の移動による不正解錠を防止することができる。
【0058】
また、シリンダ錠7の鍵を解錠時とは反対方向に回すと、カム部材21が同方向に回動し、そこに係合する作動杆4が解錠時とは反対方向に移動し、作動杆4に設けたスイッチ作動部4eが機能スイッチ17に作用して、機能スイッチ17がスイッチング動作するから、作動杆4は、解錠用とスイッチ作動用に兼用される。このため、従来の施錠装置で使用されるスイッチ作動杆は不要となり、部品点数を削減し、組み立て作業を簡単化することができる。
【0059】
また、作動杆4は、1本のばね部材(コイルばね)16を1対の移動部材(ばね掛け部材16a,16b)間に掛け渡し、1対の移動部材(ばね掛け部材16a,16b)は作動杆4と基枠体1の支持板3に形成した各ガイド孔に上下動可能に係合して配設し、このばね部材16によって、作動杆4を上下両方向にフローティング状態で支持する構造としたから、作動杆4は単純に1本のコイルばねによって、上下両方向に付勢力に抗して移動可能とし、ばね部材などの部品点数を削減して構造を簡単化することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 基枠体
2 取付板
3 支持板
3b、3c 開口凹部
4 作動杆
4a、4b 作動係合部
4c 係合孔
4d 係合孔
4e スイッチ作動部
4h ロック用係止部
5 枢軸
7 シリンダ錠
8 ガイド係止孔
8a ロック部
10 ラッチ部材
14 係止ピン
15 ラッチ凹部
17 機能スイッチ
18 ロック部材
19 第2シリンダ錠
21 カム部材
31 受け具
50 キャビネット
51 前扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付板と支持板とを有する基枠体の該支持板に沿って長尺の作動杆が摺動可能に配設され、該取付板にシリンダ錠が固定され、該シリンダ錠の錠軸にカム部材が該作動杆と係合可能に取り付けられ、該基枠体の取付板がゲーム機の前扉の内側に取り付けられ、ゲーム機のキャビネットの内側に受け具が取り付けられるゲーム機の施錠装置であって、
該基枠体の支持板の上部と下部に該受け具の進入を許容する開口凹部が形成され、該開口凹部内の受け具を拘束する溝状のロック凹部を有するラッチ部材が上部と下部の該開口凹部の近傍に各々回動可能に枢支され、該ラッチ部材は、前扉の閉鎖時に該ラッチ部材が該受け具に押されてラッチ位置に回動した時、ラッチ位置に係止され、該シリンダ錠によりカム部材を該ラッチ部材の解錠方向に回動させたとき、作動杆が移動して係止が解除されて該ラッチ部材が解錠側に回動するゲーム機の施錠装置において、
該作動杆にロック用係止部が設けられ、該基枠体の一部に第2シリンダ錠が取り付けられ、施錠時に該ロック用係止部に係止されて該作動杆の解錠方向への移動を阻止し且つ前記カム部材と該作動杆との係合を阻止するロック部材が、該第2シリンダ錠の錠軸に固定されたことを特徴とするゲーム機の施錠装置。
【請求項2】
前記基枠体に非接触式の機能スイッチが取り付けられ、前記作動杆の一部に該機能スイッチを動作させるためのスイッチ作動部が設けられ、前記シリンダ錠を解錠方向とは逆の方向に回動操作したとき、該作動杆が解錠方向とは逆方向に移動して、該スイッチ作動部が該機能スイッチを動作させるように構成され、前記ロック部材には、前記カム部材が進入可能な開口部が設けられ、該ロック部材が該作動杆の解錠側への移動を阻止する状態で、該カム部材が該作動杆の該開口部に進入して、該作動杆をスイッチ作動方向へのみ移動可能としたことを特徴とする請求項1記載のゲーム機の施錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−24623(P2012−24623A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243977(P2011−243977)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2007−6176(P2007−6176)の分割
【原出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(591016138)中東産業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】