説明

コア−シェルポリマー粒子

【課題】水性組成物中での使用に適し、乾燥組成物中で結合機能および有用な水準の不透明度を示すことができる粒子を提供する。
【解決手段】コア、第1シェルおよび第2シェルを含むポリマー粒子であって;コアは乾燥時に少なくとも1つの空隙を含み;第1シェルポリマーは50℃を超える計算ガラス転移温度(Tg)を有し、かつ重合単位として、第1シェルの重量を基準にして15重量%〜60重量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含み;並びに、第2シェルポリマーは−60℃〜50℃のTgを有し;第2シェルポリマー対、ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比が0.5:1から3:1までである;ポリマー粒子が提供される。当該粒子は結合機能並びに乾燥時に不透明性およびエネルギー節約をもたらす。ポリマー粒子を提供する方法および乾燥被膜に不透明性を与える方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性組成物中での使用に適し、並びに乾燥組成物中で結合機能および有用な水準の不透明度を示すことができるコア−シェルポリマー粒子に関する。より詳細には、本発明はコア、第1シェルおよび第2シェルを含むポリマー粒子であって、当該コアが乾燥時に少なくとも1つの空隙を含み;当該第1シェルポリマーは50℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有し、かつ重合単位として第1シェルポリマーの重量を基準にして15重量%〜60重量%の、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含み;並びに、当該第2シェルポリマーは−60℃〜50℃のTgを有し;第2シェルポリマー対、ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比が0.5:1から3:1までである;ポリマー粒子に関する。さらに、本発明は当該ポリマー粒子を形成する方法、および当該ポリマー粒子を含む乾燥組成物に不透明性を与える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第20070043159号はポリマー粒子の水性分散物およびそれを形成するための方法を開示する。その粒子は乾燥時に少なくとも1つの空隙を含む第1ポリマー粒子および当該第1ポリマーを実質的に封入する少なくとも1種の第2ポリマーを含む。そのポリマー粒子を形成する方法は、コアポリマーと第1シェルポリマーとを含む第1ポリマー粒子の存在下で、第1段階シェルポリマーの計算Tgよりも少なくとも30℃低い温度で第2シェルポリマーを形成することを含む。逐次的なプロセスでこのようなポリマー粒子を生じさせるためには、第1シェルプロセスが完了した後でその粒子を冷却するか、またはそれが冷却するまで待つことが必要であった。これは非効率的でコスト高である。より高い温度で、特に第1シェルポリマーのTgより30℃低い温度から100℃までの間でこの様な粒子を形成する方法についての必要性が存在していた。すでに開示された広範囲のコア−シェルポリマーの全てはこの必要性を満たしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0043159号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明においては、この必要性を満たす選択された組成を有するコア−シェルポリマー粒子が提供される。
本発明のポリマー粒子は、組成物、例えば被覆組成物などの中での結合機能を示すことができ、すなわち、粒子を含む膜の一体性に貢献することができ、および乾燥組成物における有用な水準の不透明性を示すことができる。さらに、本発明のポリマー粒子は、乾燥時に少なくとも1つの空隙を含まないポリマー粒子バインダーと比較してエネルギー節約をもたらす、というのはそのポリマーまたはそのボイド空間を典型的に占有する他の物質が幾分かのエネルギー消費を伴って製造されなければならないからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、コア、第1シェル、および第2シェルを含むポリマー粒子であって;前記コアは乾燥時に少なくとも1つの空隙を含み;前記第1シェルポリマーは50℃を超える計算ガラス転移温度(Tg)を有し、かつ重合単位として、前記第1シェルポリマーの重量を基準にして15重量%〜60重量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに前記第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含み;並びに、前記第2シェルポリマーは−60℃〜50℃のTgを有し;前記第2シェルポリマー対、前記ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比が0.5:1から3:1までである;ポリマー粒子が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様においては、コア、第1シェルおよび第2シェルを含むポリマー粒子を形成する方法であって、
重合単位として、前記コアの重量を基準にして5重量%〜100重量%の少なくとも1種の親水性モノエチレン性不飽和モノマーを含む前記コアを形成し;
50℃を超えるTgを有し、かつ重合単位として、前記第1シェルポリマーの重量を基準にして15重量%〜60重量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに前記第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含む前記第1シェルポリマーを、前記コアの存在下で形成し;並びに
−60℃〜50℃のTgを有する前記第2シェルポリマーを、前記第1シェルポリマーの存在下で、前記第1シェルポリマーのTgより30℃低い温度から100℃までの間の温度で形成し;前記第2シェルポリマー対、前記ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比が0.5:1から3:1までである;
ことを含む方法が提供される。
【0007】
本発明の第3の態様においては、
(a)コア、第1シェルおよび第2シェルを含むポリマー粒子を含む組成物であって、前記コアは乾燥時に少なくとも1つの空隙を含み;前記第1シェルポリマーは50℃を超える計算ガラス転移温度(Tg)を有し、かつ重合単位として、前記第1シェルポリマーの重量を基準にして15重量%〜60重量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに前記第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含み;並びに、前記第2シェルポリマーは−60℃〜50℃のTgを有し;前記第2シェルポリマー対、前記ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比が0.5:1から3:1までである組成物を形成し;
(b)前記組成物を基体に適用し;並びに
(c)前記適用された組成物を乾燥させまたは乾燥させておく;
ことを含む、乾燥組成物に不透明性を与える方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明はコア、第1シェルおよび第2シェルを含むコア−シェルポリマー粒子であって;当該コアは乾燥時に少なくとも1つの空隙を含み;当該第1シェルポリマーは50℃を超えるガラス転移温度(Tg)を有し、かつ重合単位として、第1シェルポリマーの重量を基準にして15重量%〜60重量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含み;並びに、当該第2シェルポリマーは−60℃〜50℃のTgを有し;当該第2シェルポリマー対、当該ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比が0.5:1から3:1までである;コア−シェルポリマー粒子に関する。
【0009】
コア−シェルポリマー粒子のコアは、乾燥時に、可視光を散乱することができる、すなわち、それが含まれる組成物に不透明性を提供できる少なくとも1つの空隙(void)を有するコアを含む。乾燥時に1以上の空隙を含むコア−シェル粒子は、例えば、コアポリマーの完全なもしくは部分的な加水分解および溶解によって、コアポリマーの酸、塩基または非イオン性有機物質での膨潤と、限定されたその後の粒子の崩壊による、などにより、ボイドが形成されたことが開示されてきた。好ましい実施形態においては、コア−シェル粒子が水性多段階乳化重合、それに続く塩基での膨潤によって形成される。このような多段階プロセスは米国特許第4,427,836号;第4,468,498号;第4,469,825号;第4,594,363号;第4,677,003号;第4,910,229号;第4,920,160号;第4,970,241号;第5,157,084号;第5,494,971号;第5,510,422号;第6,139,961号;第6,632,531号;および第6,896,905号、並びに欧州特許出願公開第267,726号、第331,421号および第915,108号に開示されている。
【0010】
本発明の好ましい多段階(multistage)ポリマーの段階(stage)は、コア段階ポリマー(「コア」)、第1シェル段階ポリマー(「第1シェル」)および第2シェル段階ポリマー(「第2シェル」)を含む。コアおよびシェルはそれぞれ独立して1より多い段階を含むことができる。1以上の中間段階が存在してもよい。中間段階ポリマーは、存在する場合には、コアを部分的にまたは完全に封入し、かつそれ自体は第1シェルによって部分的にまたは完全に封入される。本明細書において「タイコート(tiecoat)」と称される中間段階は、コアの存在下で乳化重合を行うことにより製造されうる。第1シェルポリマーは部分的にまたは完全にコアポリマーおよび存在する場合にはタイコートポリマーを封入する。第2シェルポリマーは部分的にまたは完全に第1シェルを封入する。第2シェルポリマー対、ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比は0.5:1から3:1までであり;ここでの「ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計」は、任意選択的なシードポリマー、コアポリマー、任意選択的なタイコート、および第1段階ポリマーの合計を意味し、それぞれは、場合によって複数の段階または組成を含む。
【0011】
好ましい多段階ポリマーのコアは、重合単位として、コアの重量を基準にして5重量%〜100重量%、好ましくは20重量%〜60重量%、より好ましくは30重量%〜50重量%の少なくとも1種の親水性モノエチレン性不飽和モノマーと、コア段階ポリマーの重量を基準にして0〜95重量%の少なくとも1種の非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーとを含むエマルションポリマーである。コアポリマーの全重量を基準にして少なくとも5重量パーセントの少なくとも1種の親水性モノエチレン性不飽和モノマーを含むコアは概して、結果として好適な程度の膨潤をもたらすであろう。コアポリマーは単一の段階でもしくは多段階重合の工程で製造されうるか、または逐次的な複数の工程によって製造されうる。この方法は、用語「親水性モノエチレン性不飽和モノマー」に、米国特許第4,880,842号に記載されるような、親水性コアポリマーにおける親水性モノエチレン性不飽和モノマーの代替物としての、疎水性シェルポリマーの重合前、重合中または重合後にコアポリマーに吸収される、少なくとも1つのカルボン酸基を含む非ポリマー系化合物の使用も含み、かつ意図する。さらに、本発明は、用語「親水性モノエチレン性不飽和モノマー」に、米国特許第5,157,084号に記載されるような、親水性モノエチレン性不飽和モノマーを含まないが、親水性コアポリマーへの加水分解時に膨潤可能である、潜在的な親水性コアポリマーの使用を含み、かつ意図する。
【0012】
コアポリマーを製造するのに有用な好適な親水性モノエチレン性不飽和モノマーには、酸官能基を含むモノエチレン性不飽和モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルオキシプロピオン酸、(メタ)アクリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、アコニット酸、マレイン酸もしくは無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチルなどをはじめとする少なくとも1つのカルボン酸基を含むモノマーが挙げられる。アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。少なくとも1つのカルボン酸基を含む好適な非ポリマー系化合物には、C−C12脂肪族または芳香族モノカルボン酸およびジカルボン酸、例えば、安息香酸、m−トルイル酸、p−クロロ安息香酸、o−アセトキシ安息香酸、アゼライン酸、セバシン酸、オクタン酸、シクロヘキサンカルボン酸、ラウリン酸およびフタル酸モノブチルなどが挙げられる。親水性コアポリマーを製造するのに好適な非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーには、スチレン、アルファ−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸の(C−C20)アルキルもしくは(C−C20)アルケニルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
【0013】
単一段階プロセスにより得られるか、または複数の段階を含むプロセスにより得られるかに関わらず、コアは50nm〜1.0ミクロン、好ましくは100nm〜300nmの非膨潤状態での直径の平均粒子サイズを有する。あらかじめ形成されたまたはシードポリマーからコアが得られる場合には、そのシードポリマーは好ましくは30nm〜200nmの平均粒子サイズを有する。
【0014】
コアは場合によって、コアの合計重量を基準にして、0.1重量%〜20重量%、あるいは0.1重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含むこともでき、使用量は、一般的に、使用される親水性モノエチレン性不飽和モノマーの量にほぼ直接比例し;言い換えれば、親水性モノマーの相対量が増加すると、多エチレン性不飽和モノマーの量を増加させることが許容される。あるいは、コアポリマーは、コアポリマーの全重量を基準にして0.1重量%〜60重量%のブタジエンを含むことができる。
【0015】
好適な多エチレン性不飽和モノマーには、少なくとも2つの付加重合可能なビニリデン基を含むコモノマーが挙げられ、および2〜6のエステル基を含む多価アルコールのアルファベータエチレン性不飽和モノカルボン酸エステルがある。このようなコモノマーには、ジアクリル酸およびジメタクリル酸アルキレングリコール、例えば、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸1,3−ブチレングリコール、ジアクリル酸1,4−ブチレングリコール、ジアクリル酸プロピレングリコールおよびジメタクリル酸トリエチレングリコール;ジメタクリル酸1,3−グリセロール;ジメタクリル酸1,1,1−トリメチロールプロパン;ジアクリル酸1,1,1−トリメチロールエタン;トリメタクリル酸ペンタエリスリトール;トリアクリル酸1,2,6−ヘキサン;ペンタメタクリル酸ソルビトール;メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、アクリル酸ビニル、ビニルアセチレン、トリビニルベンゼン、シアヌル酸トリアリル、ジビニルアセチレン、ジビニルエタン、ジビニルスルフィド、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルシアナミド、エチレングリコールジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、ジビニルジメチルシラン、グリセロールトリビニルエーテル、アジピン酸ジビニル;(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル;(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシ;グリコールモノジシクロペンテニルエーテルの不飽和エステル;末端エチレン性不飽和を有するアルファ,ベータ−不飽和モノ−およびジカルボン酸のアリルエステル、例えばメタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリルなどが挙げられる。
【0016】
多段階ポリマーの第1シェルポリマーは50℃を超えるTgを有し、重合単位として、第1シェルポリマーの重量を基準にして15重量%〜60重量%、好ましくは20重量%〜50重量%、より好ましくは20重量%〜40重量%の、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含む。好ましいのは(メタ)アクリロニトリルである。スチレンは好ましいコモノマーである。第1シェルポリマーの形成に使用されうる他の好適なモノマーには、本明細書においてコアポリマーの製造のために開示される親水性および非イオン性のような、モノエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。複数の第1シェル段階が使用される場合には、ここでの第1シェルの組成は全ての第1シェルの全体的な組成としてここで見なされる。第1シェルポリマーは重合単位として、第1シェルの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマー(本明細書において「MEUM」)をさらに含む。好適な多エチレン性不飽和モノマーはコアポリマーにおける任意選択的な使用のために本明細書に開示されるものである。
【0017】
多段階ポリマーの第2シェルポリマーは、−60℃〜50℃、好ましくは−40℃〜30℃、より好ましくは−20℃〜20℃のTgを有する。第2シェルポリマーの製造に適するモノマーには、本明細書においてコアポリマーの製造のために開示される親水性および非イオン性のようなモノエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。第2シェルは、場合によって、重合単位として、第2シェルの重量を基準にして0.05重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーをさらに含むが;量は、実質的に膜形成を損なわないように、すなわちバインダーとしてのポリマー粒子の機能に対する第2段階ポリマーの貢献を実質的に損なわないように選択されなければならない。好適な多エチレン性不飽和モノマーは本明細書においてコアポリマーでの任意選択的な使用のために開示されているものである。
【0018】
本明細書におけるポリマーのTgはフォックス(Fox)式(T.G.Fox,Bull.Am.Physics Soc.,第一巻、発行番号3、123ページ(1956))、すなわち、例えばモノマーM1およびM2のコポリマーのTgを計算するには、
【数1】

式中、Tg(計算)はコポリマーについて計算されたガラス転移温度であり、
w(M1)はコポリマー中のモノマーM1の重量分率であり、
w(M2)はコポリマー中のモノマーM2の重量分率であり、
Tg(M1)はM1のホモポリマーのガラス転移温度であり、
Tg(M2)はM2のホモポリマーのガラス転移温度であり、
全ての温度は°K単位である;
を用いてここで計算されるものである。
【0019】
ホモポリマーのガラス転移温度は、例えば、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」J.BrandrupおよびE.H.Immergut編、Interscience Publishersに認められうる。
【0020】
シェルにおいて使用されるモノマーおよびその相対割合は、それらがコアを膨潤させることができる水性もしくは気体状揮発性または不揮発性塩基性膨潤剤に対して透過性であるようなものであるべきである。シェルは重合単位として、シェルの重量を基準にして0重量%〜35重量%、好ましくは0重量%〜10重量%、より好ましくは0.1重量%〜10重量%の酸官能基を含むモノエチレン性不飽和モノマーの1種以上、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチルなどを含みうる。(メタ)アクリル酸が好ましい。好ましくは、シェルポリマー中での酸官能性モノエチレン性不飽和モノマーの割合はコアポリマーにおけるその割合の1/3を超えない。
【0021】
本発明のポリマー系コア−シェルポリマー粒子を形成する方法においては、水可溶性フリーラジカル開始剤が水性乳化重合において典型的に使用される。好適な水可溶性フリーラジカル開始剤には、過酸化水素;tert−ブチルペルオキシド;過硫酸アルカリ金属塩、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸リチウム;過硫酸アンモニウム;並びにこのような開始剤と還元剤との混合物が挙げられる。還元剤には、亜硫酸塩、例えばピロ亜硫酸アルカリ金属、ヒドロ亜硫酸アルカリ金属および次亜硫酸アルカリ金属;ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム;並びに還元糖、例えばアスコルビン酸およびイソアスコルビン酸が挙げられる。開始剤の量は好ましくはモノマーの全量を基準にして0.01重量%〜3重量%であり、レドックス系においては、還元剤の量は好ましくはモノマーの全量を基準にして0.01重量%〜3重量%である。開始剤の種類および量は、多段階重合の様々な段階において同じであってもよいし、または異なっていてもよい。多段階重合の様々な段階中の温度は、典型的には約10℃〜100℃の範囲である。過硫酸塩系の場合には、その温度は典型的には60℃〜90℃の範囲である。レドックス系においては、その温度は典型的には30℃〜70℃の範囲である。本発明の方法において、第2段階ポリマーの重合中の温度は第1シェルポリマーのTgよりも30℃低い温度から100℃までの間である。「第2段階ポリマーの重合中の温度」は、本明細書においては、第2段階ポリマーの重合中の反応混合物の最大温度を意味する。本発明のポリマー系コア−シェルポリマー粒子を形成する方法によって形成される生成物は本発明の実施形態でもある。
【0022】
1種以上の非イオン性もしくはアニオン性乳化剤、または界面活性剤が単独でまたは一緒に使用されうる。好適な非イオン性乳化剤の例としては、tert−オクチルフェノキシエチルポリ(39)−エトキシエタノール、ドデシルオキシポリ(10)エトキシエタノール、ノニルフェノキシエチル−ポリ(40)エトキシエタノール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール2000、エトキシ化ひまし油、フッ素化アルキルエステルおよびアルコキシラート、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノヤシ油脂肪酸スクロース、ジ(2−ブチル)フェノキシポリ(20)エトキシエタノール、ヒドロキシエチルセルロースポリアクリル酸ブチルグラフトコポリマー、ジメチルシリコーンポリアルキレンオキシドグラフトコポリマー、ポリ(エチレンオキシド)ポリ(アクリル酸ブチル)ブロックコポリマー、プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのブロックコポリマー、30モルのエチレンオキシドでエトキシ化された2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、N−ポリオキシエチレン(20)ラウラミド、N−ラウリル−N−ポリオキシエチレン(3)アミン、並びにポリ(10)エチレングリコールドデシルチオエーテルが挙げられる。好適なアニオン性乳化剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム、ノニルフェノキシエチルポリ(1)エトキシエチル硫酸アンモニウム塩、スチレンスルホン酸ナトリウム、ドデシルアリルスルホコハク酸ナトリウム、亜麻仁油脂肪酸、エトキシ化ノニルフェノールのリン酸エステルのナトリウムもしくはアンモニウム塩、オクトキシノール−3−スルホン酸ナトリウム、ココイルサルコシン酸ナトリウム(sodium cocoyl sarcocinate)、1−アルコキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム、アルファ−オレフィン(C14−C16)スルホン酸ナトリウム、ヒドロキシアルカノールの硫酸塩、N−(1,2−ジカルボキシエチル)−N−オクタデシルスルホスクシナミン酸(octadecylsulfosuccinamate)4ナトリウム、N−オクタデシルスルホスクシナミン酸2ナトリウム、アルキルアミドポリエトキシスルホコハク酸2ナトリウム、スルホコハク酸のエトキシ化ノニルフェノールハーフエステル2ナトリウム、並びにtert−オクチルフェノキシエトキシポリ(39)−エトキシエチル硫酸のナトリウム塩が挙げられる。1種以上の界面活性剤は、概して、多段階ポリマーの重量を基準にして0〜3%の量で使用される。1種以上の界面活性剤はモノマー供給物の添加の前に、モノマー供給物の添加中に、またはその組み合わせで添加されうる。
【0023】
多段階ポリマー粒子の全体のサイズは、非膨潤状態(すなわち、pHを約6以上に上昇させる中和の前)で、典型的には70nm〜4.5ミクロン、好ましくは100nm〜3.5ミクロン、より好ましくは200nm〜2.0ミクロンである。親水性コアポリマーが完全に封入される場合には、それは1時間、室温での分析条件下でアルカリ金属塩基で滴定されない。封入の程度はシェル重合の過程中にサンプルを取出し、水酸化ナトリウムで滴定することにより決定されうる。
【0024】
ラテックスポリマー粒子の空隙は好ましくは、シェルに浸透しコアを膨張させる水性塩基性膨潤剤で、酸含有コアを膨潤させることにより製造される。この膨張はコアの外側表面がシェルの内側表面の孔に部分的に融合すること、またシェルおよび粒子全体の部分的な拡大またはふくれを伴う場合がある。膨潤剤が乾燥により除かれる場合には、コアの収縮がマイクロ空隙(microvoid)を生じさせ、その程度はその従前のサイズへの復元に対するシェルの抵抗性に依存する。コアのための好適な膨潤剤には、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム)、アミノアルコール、揮発性低級脂肪族アミン(例えば、トリメチルアミンおよびトリエチルアミン)、並びにそれらの混合物が挙げられる。膨潤工程はいずれの多段階シェル重合工程中においても、段階的などの重合工程の間でも、または多段階重合方法の終了時でも起こりうる。多段階エマルションポリマーの場合には、モノマーの実質的な重合がない条件下でのモノマーおよび膨潤剤は、米国特許第6,020,435号および第6,252,004号に教示されるように、多段階エマルションポリマーの膨潤の程度を高めうる。
【0025】
コア対、中間段階または存在する場合にはタイコートの重量比は、典型的には、1:0.5から1:10までの範囲、好ましくは1:1から1;7までの範囲である。コア対、第1シェルの重量比は、典型的には、1:5から1:20までの範囲であり、好ましくは1:8から1:15までの範囲である。第2シェル対、ポリマー粒子の全ての従前の段階または従前に形成された構造体の合計、すなわち、例えば任意選択的なシード、コア、任意選択的なタイコート、および第1シェルの合計の重量比は、0.5:1から3:1まで、好ましくは0.75:1から2.5:1までである。第2シェル対、全ての従前の段階の合計の重量比がより低くなると、ポリマー粒子を含む組成物は、存在する追加のバインダーなしで膜を形成するのがより困難になるであろう;膜形成はとりわけ造膜助剤または可塑剤の使用および膜形成プロセス中の温度に影響されるであろうことを当業者は認識するであろう。
【0026】
本発明のある実施形態においては、本発明のポリマー粒子を含む乾燥組成物に不透明性を与える方法が提供される。本発明のある実施形態においては、本発明のコア−シェルポリマー粒子、および場合によっては無機粒子を含む特定の水性組成物が提供され、この組成物は例えば、日焼け止組成物としてまたはコーティング組成物としての有用性を見いだしうる。水性コーティング組成物中に含まれる無機粒子の量は、組成物および無機粒子の合計乾燥体積を基準にして0体積%〜95体積%である。典型的には、コーティング組成物は、乾燥被膜を製造するために使用される場合には、組成物の体積を基準にして、20〜50体積%の範囲の量で固体を有する。このような組成物に好適な粘度範囲は50〜130クレブス(Krebs)単位(KU)、好ましくは70〜120KU、より好ましくは90〜110KUである。
【0027】
無機粒子には、金属酸化物、例えば、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、二酸化チタン;硫化亜鉛、リトポン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、クレイ、焼成クレイ、長石、霞石閃長岩、珪灰石、珪藻土、アルミナケイ酸塩およびタルクが挙げられる。無機粒子は10〜1000nm、好ましくは10〜500nmの粒子サイズを有しうる。1000nm未満の粒子サイズを有する好ましい無機粒子の例には、酸化亜鉛、酸化ケイ素、二酸化チタンおよび酸化鉄が挙げられる。
【0028】
組成物は場合によっては有機顔料粒子を含みうる。好適な有機顔料には、空隙または小胞(vesicle)を含む本発明のものではないマイクロ球体(microsphere)および固体ビーズ顔料のようなプラスチック顔料も挙げられる。固体ビーズ顔料の例としては、ポリスチレンおよびポリ塩化ビニルビーズが挙げられる。マイクロ球体顔料は1以上の空隙を含むポリマー粒子を含み、この例としては、Ropaque(商標)不透明ポリマー並びに、米国特許第4,427,835号、第4,920,160号、第4,594,363号、第4,469,825号、第4,468,498号、第4,880,842号、第4,985,064号、第5,157,084号、第5,041,464号、第5,036,109号、第5,409,776号、および第5,510,422号に開示されるような小胞化ポリマー粒子が挙げられる。他の好適な顔料には、例えば、Expancel(商標)551 DE20 アクリロニトリル/塩化ビニル膨張粒子(ジョージア州、ダルースのExpancel Inc.);Sil−Cell(商標)35/34 ケイ酸ナトリウムカリウムアルミニウム粒子(イリノイ州、ホジキンスのSilbrico Corporation);Dualite(商標)27 CaCOで被覆されたポリ塩化ビニリデンコポリマー(ニューヨーク州、バッファローのPierce and Stevens Corporation);Fillitte(商標)150 セラミック球状粒子(ジョージア州、ノルクロスのTrelleborg Fillite Inc.);Microbeads(商標)4Aソーダ石灰粒子(Cataphote Inc.);Sphericell(商標)中空ガラス粒子(ペンシルベニア州、ヴァレイフォルジのPotter Industries Inc.);Eccosphere(商標)中空ガラス球体(英国、エセックスのNew Metals&Chemicals Ltd.);Z−light(商標)SphereW−1200 セラミック中空球体(ミネソタ州、セントポールの3M);Scotchlite(商標)K46ガラスバブル(ミネソタ州、セントポールの3M);Vistamer(商標)UH1500 ポリエチレン粒子;およびVistamer(商標)HD1800 ポリエチレン粒子(テキサス州、ヒューストンのFluoro−Seal Inc.)が挙げられる。
【0029】
無機粒子を含む組成物はコーティング技術分野で周知の技術によって製造される。まず、無機粒子は、典型的に、カウレス(COWLES(登録商標))ミキサーによって提供されるような高剪断下で媒体中に充分に分散させられる。次いで、低剪断撹拌下でコア−シェルポリマー粒子が、望まれる場合には他のコーティングアジュバントと共に添加される。組成物は、膜形成性または膜非形成性溶液ポリマー並びに従来のコーティングアジュバント、例えば、乾燥剤、可塑剤、硬化剤、中和剤、増粘剤、レオロジー改質剤、殺生物剤、消泡剤、UV吸収剤、蛍光増白剤、光もしくは熱安定化剤、キレート剤、分散剤、着色剤、ワックス、撥水剤および酸化防止剤をさらに含むことができる。
【0030】
従来の被膜適用方法、例えば、はけ塗り、ローリング、および噴霧方法、例えば、空気噴霧スプレー、エアアシストスプレー、エアレススプレー、高体積低圧スプレー、およびエアアシストエアレススプレーなどが本発明の組成物に適用するために使用されうる。さらに、ある系のためには、コークガン、ロールコーターおよびカーテンコーターのような他の適用技術が、組成物を適用するために使用されてもよい。水性ポリマー組成物は、基体、例えば、プラスチック、木材、金属、下塗りされた表面、すでに塗装された表面、風雨にさらされた塗装された表面、ガラス、紙、厚紙、皮革、複合体およびセメント性基体などに有利に適用されうる。乾燥は典型的には周囲条件下、例えば、0℃〜35℃で進行させられうるが、より高温、エアフロー、低湿度、化学線エネルギー、例えば、電子ビーム、紫外線、可視線、赤外線もしくはマイクロ波放射など、または音波エネルギーを用いて加速されうる。
【実施例】
【0031】
略語
SDS=ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(23%)
Fes−32=Disponil Fes−32(30%)
LOFA=亜麻仁油脂肪酸
ALMA=メタクリル酸アリル
DVB=ジビニルベンゼン(80%)
STY=スチレン
AN=アクリロニトリル
AA=アクリル酸
MAA=メタクリル酸
MMA=メタクリル酸メチル
BA=アクリル酸ブチル
EDTA=エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩
t−BHP=tert−ブチルヒドロペルオキシド
IAA=イソアスコルビン酸
NaPS=過硫酸ナトリウム
NH4OH=水酸化アンモニウム(28%)
NaOH=水酸化ナトリウム(水中50%)
DI水=脱イオン水
【0032】
コア1:コアポリマーは米国特許第6,020,435号の実施例1−16の手順に従って製造された。ろ過された分散物は32.0%の固体含有量および135nmの平均粒子サイズを有していた。
コア2:コアポリマーは米国特許第6,020,435号の実施例1−16の手順に従って製造された。ろ過された分散物は31.9%の固体含有量および95nmの平均粒子サイズを有していた。
【0033】
ポリマー1:コア/タイコート/(第1)シェルポリマー粒子の製造。5リットル四つ口丸底フラスコにパドルスターラー、温度計、窒素入口および還流凝縮器を備え付けた。950グラムのDI水をそのケトルに添加し窒素雰囲気下で89℃に加熱した。加熱されたケトル水に、40グラムのDI水に溶解された6.0グラムのNaPSが添加された。この直後に390.6グラムのコア1が続いた。125グラムのDI水、8.3グラムのSDS、125.0グラムのSTY、110.0グラムのMMA、および15.0グラムのMAAを混合することにより製造されたモノマーエマルション(MEI)が、78℃の温度で60分間にわたってケトルに添加された。MEIの完了次第、500グラムのDI水、22.5グラムのSDS、1462.5グラムのSTY、22.5グラムのMAA、7.5グラムのLOFAおよび18.8グラムのDVBを混合することにより第2モノマーエマルション(MEII)が製造された。モノマーエマルションII(MEII)が、90グラムのDI水中に溶解された1.6グラムのNaPSの別個の混合物と共に、60分間にわたってケトルに添加された。反応混合物の温度が92℃に上昇するのを許容した。MEIIおよびコフィード(cofeed)の完了次第、反応混合物は30分間、85℃に保たれ、次いで、室温に冷却され、形成された凝集物を除去するためにろ過された。最終的な中和されていないラテックスは46.2%の固体含有量、375nmの平均粒子サイズおよび2.2のpHを有していた。
【0034】
比較例A:5リットル四つ口丸底フラスコにパドルスターラー、温度計、窒素入口および還流凝縮器を備え付けた。1298.7グラムの第1ポリマー#1が220グラムのDI水と共にケトルに添加され、温度が25℃に調節された。150グラムのDI水、8.0グラムのSDS、208.0グラムのMMA、6.0グラムのMAA、および296.0グラムのBAを混合することによりモノマーエマルション(MEI)が製造された。ケトル温度25℃で、2グラムの1%EDTAと混合された、20グラムの0.1%硫酸第一鉄の溶液がケトルに添加された。次いで、50グラムのDI水と混合された1.90グラムのt−BHPの溶液と、50グラムのDI水と混合された1.3グラムのIAAの別の溶液とであるコフィードが、双方が1.0グラム/分の速度でケトルに添加された。コフィード溶液の開始から2分後に、すでに製造されたMEIが15グラム/分の速度でケトルに添加された。この時点で反応に適用された外部熱はなかった。ケトルの温度はMEI供給の最初の15分にわたってゆっくりと上昇するのを許容した。15分後、ME供給速度は30グラム/分に増加され、外部熱が反応に加えられた。MEI供給の完了次第、コフィードは停止され、反応は5分間保持された。この時点での反応の温度は70℃であった。次いで、300グラムの加熱DI水(90℃)が、5.0グラムのDI水と混合された5.0グラムのNH4OHの混合物と共にケトルに添加された。この時点で、25.0グラムのDI水、2.0グラムのSDS、52.0グラムのBA、38.0グラムのMMA、および2.5グラムの4−ヒドロキシTEMPOを混合することによりあらかじめ形成されていたMEIIがケトルに5分間にわたって供給された。MEII供給が完了した直後に、30グラムのDI水と混合された30.0グラムのNH4OHが2分間にわたってケトルに添加された。NH4OH供給が完了したとき、そのバッチは5分間保持された。次いで、コフィード溶液が1.0グラム/分の速度でその完了まで再開された。次いで、分散物は25℃に冷却され、凝集物を除去するためにろ過された。ろ過された分散物は40.6%の固体含有量を有していた。S/Milは0.81であり、8%の崩壊を伴うと測定された。
【0035】
比較例B:5リットル四つ口丸底フラスコが比較例Aにおけるように装備させられた。560グラムのDI水がケトルに添加され、窒素雰囲気下で89℃の温度に加熱された。加熱されたケトル水に、20グラムのDI水に溶解された2.6グラムのNaPSを添加した。この直後に173.3グラムのコア#1(135nm)が続いた。55.0グラムのDI水、3.7グラムのSDS、55.0グラムのSTY、48.4グラムのMMA、および6.6グラムのMAAを混合することにより製造されたモノマーエマルション(MEI)が、78℃の温度で60分間にわたってケトルに添加された。MEIの完了次第、220.0グラムのDI水、9.9グラムのSDS、643.5グラムのSTY、9.9グラムのMAA、3.3グラムのLOFAおよび8.3グラムのDVBを混合することにより、第2モノマーエマルション(MEII)が製造された。モノマーエマルションII(MEII)は、次いで、40グラムの脱イオン水中に溶解された0.70グラムのNaPSの別個の混合物と共に、60分間にわたってケトルに添加された。反応混合物の温度が92℃まで上昇するのを許容された。MEIIおよびNaPSコフィードの完了次第、反応は60℃に冷却された。ケトル温度が60℃に到達したとき、2グラムの1%EDTAと混合された20グラムの0.1%硫酸第一鉄の溶液がケトルに添加された。次いで、70グラムのDI水と混合された2.6グラムのt−BHPの溶液と、70グラムのDI水と混合された1.8グラムのIAAの別の溶液とであるコフィードが、双方が0.80グラム/分の速度でケトルに添加された。コフィード溶液の開始から2分後に、210グラムのDI水、11.7グラムのSDS、406.5グラムのBA、286.2グラムのMMA、および8.3グラムのMAAを混合することによりすでに製造されていたMEIIIが、何らの外部熱を提供することなしに温度を78℃まで上昇させるのを許容しつつ、60分間にわたってケトルに添加された。MEIIIの完了次第、コフォード溶液は停止され、そのバッチは78℃で5分間保持された。次いで、600グラムの加熱DI水(90℃)と共に、5.0グラムのDI水と混合された5.0グラムのNH4OHの溶液がケトルに添加された。この時点で、37.0グラムのDI水、2.1グラムのSDS、72.0グラムのBA、52.0グラムのMMA、および2.5グラムの4−ヒドロキシTEMPOを混合することによりあらかじめ製造されていたMEIVが7分間にわたってケトルに供給された。MEIV供給が完了した直後に、40グラムのDI水と混合された40.0グラムのNH4OHが2分間にわたってケトルに添加された。NH4OH供給が完了したとき、そのバッチは5分間保持された。次いで、コフィード溶液が1.0グラム/分の速度でその完了まで再開された。次いで、分散物は25℃に冷却され、凝集物を除去するためにろ過された。ろ過された分散物は41.5%の固体含有量を有していた。S/Milは0.84であり、18%の崩壊を伴うと測定された。
【0036】
実施例1:実施例1は、MEIの組成物が55.0グラムのDI水、3.7グラムのSDS、81.4グラムのSTY、22.0グラムのAN、および6.6グラムのMAAから構成されていたこと;およびMEIIの組成物が220.0グラムのDI水、9.9グラムのSDS、521.4グラムのSTY、132.0グラムのAN、3.3グラムのLOFAおよび8.3グラムのDVBから構成されていたことを除き、比較例Bの方法に従って製造された。ろ過された分散物は40.6%の固体含有量を有していた。S/Milは0.70であり、7%の崩壊を伴うと測定された。
【0037】
比較例C:比較例Aにおけるように装備した5リットル四つ口丸底フラスコに、窒素雰囲気下で89℃の温度に加熱された660グラムのDI水が添加された。加熱されたケトル水に、20グラムのDI水に溶解された2.6グラムのNaPSを添加した。この直後に171.8グラムのコア#1(135nm)が続いた。275.0グラムのDI水、13.6グラムのSDS、754.6グラムのSTY、および3.9グラムのLOFAを混合することにより製造されたモノマーエマルション(MEI)が、78℃の温度で40グラム/分の速度で反応器に供給された。MEIの開始から2分後に、40グラムのDI水と混合された7.7グラムのAAの溶液が反応器に添加された。MEI供給の40分後、78℃の温度で、供給速度が9グラム/分に増加され、50グラムのDI水中の0.7グラムのNaPSのコフィード溶液が1.0グラム/分の速度で反応器に開始された。この時点で、9.6グラムのDVBがMEIに添加された。さらに15分後、MEI供給速度が18グラム/分に再度増加され、反応の温度は92℃まで上昇するのを許容した。MEIおよびNaPSコフィードの完了次第、反応は62℃に冷却された。冷却しつつ、2グラムの1%EDTAと混合された20グラムの0.1%硫酸第一鉄の溶液を75℃の温度でケトルに添加した。次いで、70℃の温度で、70グラムのDI水と混合された2.6グラムのt−BHPの溶液と、70グラムのDI水と混合された1.8グラムのIAAの別の溶液とであるコフィードが、双方が0.80グラム/分の速度でケトルに添加された。コフィード溶液の開始から3分後に、210グラムのDI水、11.7グラムのSDS、406.5グラムのBA、286.2グラムのMMA、および8.3グラムのMAAを混合することによりすでに製造されていたMEIIが、何らの外部熱を提供することなしに78℃まで温度が上昇するのを許容しつつ、60分間にわたってケトルに添加された。MEIIの完了次第、コフィード溶液は停止され、そのバッチは78℃で5分間保持された。次いで、500グラムの加熱DI水(90℃)と共に、5.0グラムのDI水と混合された5.0グラムのNH4OHの溶液がケトルに添加された。この時点で、37.0グラムのDI水、2.1グラムのSDS、72.0グラムのBA、52.0グラムのMMA、および2.5グラムの4−ヒドロキシTEMPOを混合することによりあらかじめ製造されていたMEIIIが7分間にわたってケトルに供給された。MEIII供給が完了した直後に、40グラムのDI水と混合された40.0グラムのNH4OHが2分間にわたってケトルに添加された。NH4OH供給が完了したとき、(温度73℃)そのバッチは5分間保持された。次いで、コフィード溶液が1.0グラム/分の速度でその完了まで再開された。次いで、分散物は25℃に冷却され、凝集物を除去するためにろ過された。ろ過された分散物は41.25の固体含有量を有していた。S/Milは0.63であり、54%の崩壊を伴うと測定された。
【0038】
比較例D:比較例Dは、MEIの組成物が275.0グラムのDI水、13.6グラムのSDS、677.6グラムのSTY、77.0グラムのAN、および3.9グラムのLOFAから構成されていたことを除き、比較例Cの方法に従って製造された。ろ過された分散物は41.1%の固体含有量を有していた。S/Milは0.97であり、43%の崩壊を伴うと測定された。
【0039】
実施例2:実施例2は、MEIの組成物が275.0グラムのDI水、13.6グラムのSDS、600.6グラムのSTY、154グラムのAN、および3.9グラムのLOFAから構成されていたことを除き、比較例Cの方法に従って製造された。ろ過された分散物は41.2%の固体含有量を有していた。S/Milは0.87であり、6%の崩壊を伴うと測定された。
【0040】
比較例E:比較例Eは、MEIの組成物が275.0グラムのDI水、13.6グラムのSDS、754.6グラムのSTY、9.6グラムのDVB、および3.9グラムのLOFAから構成されていたことを除き、比較例Cの方法に従って製造された。DVBはMEI組成物に最初に添加され、MEI供給中に添加されなかった。ろ過された分散物は40.75の固体含有量を有していた。S/Milは0.82であり、15%の崩壊を伴うと測定された。
【0041】
実施例3:実施例3は、MEIの組成物が275.0グラムのDI水、13.6グラムのSDS、600.6グラムのSTY、154グラムのAN、9.6グラムのDVB、および3.9グラムのLOFAから構成されていたことを除き、比較例Eの方法に従って製造された。DVBはMEI組成物に最初に添加され、MEI供給中に添加されなかった。ろ過された分散物は41.5%の固体含有量を有していた。S/Milは0.69であり、0%の崩壊を伴うと測定された。
【0042】
実施例4:実施例4は、MEI供給およびコフィードが完了した後に反応が78℃に冷却されたことを除き、実施例3の方法に従って製造された。実施例2におけるMEIIと同じ組成のモノマーエマルション(MEII)が60分間にわたって反応器に供給された。60.0グラムのDI水に混合された2.0グラムのNaPSの溶液は1グラム/分の速度で反応器にコフィードされた。温度は供給中86℃まで上昇上昇するのを許容された。ろ過された分散物は41.7%の固体含有量を有していた。S/Milは0.77であり、0%の崩壊を伴うと測定された。
【0043】
比較例F:比較例Fは、172.4グラムのコア2が使用されたことを除いて、比較例Eの方法に従って製造された。ろ過された分散物は41.2%の固体含有量を有していた。S/Milは0.25であり75%の崩壊を伴うと測定された。
【0044】
実施例5:実施例5は、172.4グラムのコア2が使用されたことを除いて、実施例3の方法に従って製造された。ろ過された分散物は41.4%の固体含有量を有していた。S/Milは0.46であり、9%の崩壊を伴うと測定された。
【0045】
実施例6:比較例A〜Fおよび実施例1〜5における不透明度(S/mil)および空隙の崩壊の評価。7ミルの湿潤膜が黒色のビニルスクラブ(scrub)チャート(Leneta#P121010N)上にドローダウンされた。黒色ビニルスクラブチャートは4つの特定の領域での厚み(ミル単位)について、例えば、マサチューセッツ州ウォルサムのAmes Corporationから入手可能なAmesゲージ(#2−212C)を用いて測定された。膜は低い相対湿度(<30%相対湿度、乾燥中に相対湿度が30%未満の場合には、不透明度は実質的に変化しない)のチャンバーまたは部屋で2時間乾燥させられた。乾燥膜の反射率は、その4つの特定の領域上で、反射率計、Gardner Instrument Reflectometer(メリーランド州、コロンビアのBYK−Gardner)により測定された。Amesゲージを用いてその特定の領域のそれぞれにわたる膜の厚みも決定され、平均がとられた。この手順は、膜が25℃/80%相対湿度で温度/湿度チャンバー(ペンシルバニア州、ワーミンスターのSP Industriesから入手可能なHotpack,Model#417532)内で一晩乾燥され、次いで、低い湿度のチャンバー/部屋内で1時間の間、40%未満の相対湿度で乾燥されたことを除いて繰り返された。
崩壊%は、80%RHでのS/Mil(不透明度)対<30%RHでのS/milの散乱に基づいて計算された。実施例6においては、7.0グラム(固体)の膜形成性バインダーRHOPLEX(商標)AC−264と混合された3.0グラム(固体)ポリマー粒子のブレンドを使用して、S/milが決定された。比較例A〜Fおよび実施例1〜5は、第2シェル対、ポリマー粒子の他の全ての構成物の合計の重量比1:1を有しており、試験条件下ではそれだけ(neat)で膜を形成しない。
【0046】
【表1】

【0047】
比較例Aは米国特許出願公開第20070043159号の方法によって製造された。第2のポリマーシェルは第1のポリマーの存在下で、25−70℃の第2のシェル供給温度で形成され、結果として優れた崩壊、すなわち、空隙体積の優れた保持性を示したポリマー粒子を生じさせた。60−78℃の第2のシェル供給温度での比較例Bは、結果として比較例Aと比べてより多く崩壊、すなわち比較例Aよりも劣った空隙体積保持を示したポリマー粒子を生じさせた。第1ポリマーシェル中に20%のANを組み入れることは、第2ポリマーシェルの重合温度範囲が60−78℃に増加した場合に、結果として比較例Bと対比して優れた耐崩壊性を有するポリマー粒子を生じさせた。
【0048】
【表2】

【0049】
表6.2における実施例および比較例はタイコートなしで、高温範囲(60−78℃)で第2シェルを重合することを伴って形成された。比較例CおよびD(それぞれ、第一ポリマーシェル中に0および10%ANを組み入れた)は劣った耐崩壊性を有していた。第一ポリマーシェル中に20%のANを含む実施例2は比較例CおよびDに対して優れた耐崩壊性を有していた。
【0050】
【表3】

【0051】
比較例Cにおける多エチレン性不飽和モノマー(本明細書において「MEUM」)は第1ポリマーシェルの最後の12部の段階に入れられた。第1ポリマーシェル全体にDVBを添加すること(比較例E)は、比較例Cに対して耐崩壊性を向上させた。1%DVBを全体的に含む第1ポリマーシェルに20%のANを組み入れる実施例3は、結果的に比較例Eに対して優れた耐崩壊性をもたらした。高温(78−86℃)の第2シェル供給温度が使用された場合の実施例4も優れた耐崩壊性を示す。
【0052】
【表4】

【0053】
比較例Fおよび実施例5はコア2(95nm)を用いて製造された。第1段階ポリマー中に20%のANを含む実施例5は比較例Fに対して優れた耐崩壊性を有していた。
【0054】
比較例G:5リットル四つ口丸底フラスコにパドルスターラー、温度計、窒素入口および還流凝縮器を備え付けた。1299.0グラムのポリマー1がケトルに添加され、温度が25℃に調節された。306グラムのDI水、17.0グラムのSDS、416.4グラムのMMA、12.0グラムのMAA、および591.60グラムのBAを混合することによりモノマーエマルション(MEI)が製造された。ケトル温度25℃で、2グラムの1%EDTAと混合された、20グラムの0.1%硫酸第一鉄の溶液がケトルに添加された。次いで、100グラムのDI水と混合された3.7グラムのt−BHPの溶液と、100グラムのDI水と混合された2.6グラムのIAAの別の溶液とであるコフィードが、双方が1.2グラム/分の速度でケトルに添加された。コフィード溶液の開始から2分後に、すでに製造されていたMEIが60分間にわたってケトルに添加された。MEI供給の間中、反応に適用された外部熱はなかった。ケトルの温度は78℃まで上昇するのを許容された。MEI供給の完了次第、コフィードは停止され、反応は5分間保持された。この時点での反応の温度は77℃であった。次いで、400グラムの加熱DI水(90℃)と共に、5.0グラムのDI水と混合された5.0グラムのNH4OHの溶液がケトルに添加された。この時点で、54.0グラムのDI水、3.0グラムのSDS、104.4グラムのBA、75.6グラムのMMA、および2.5グラムの4−ヒドロキシTEMPOを混合することによりあらかじめ製造されていたMEIIがケトルに5分間にわたって供給された。MEII供給が完了した直後に、35グラムのDI水と混合された35.0グラムのNH4OHが2分間にわたってケトルに添加された。NH4OH供給が完了したとき、そのバッチは5分間保持された。次いで、コフィード溶液が1.2グラム/分の速度でその完了まで再開された。次いで、分散物は25℃に冷却され、凝集物を除去するためにろ過された。ろ過された分散物は45.4%の固体含有量を有していた。S/Milは1.88であり、16%の崩壊を伴うと測定された。
【0055】
比較例H:比較例Hは、ポリマー1がケトルに添加された後に温度が60℃に調節されたことを除いて、比較例Gの方法に従って製造された。ろ過された分散物は45.6%の固体含有量を有していた。S/Milは1.66であり、67%の崩壊を伴うと測定された。
【0056】
比較例I:比較例Aにおけるように装備された5リットル四つ口丸底フラスコに、窒素雰囲気下で89℃の温度に加熱された500グラムのDI水を添加した。加熱されたケトル水に、20グラムのDI水に溶解された1.9グラムのNaPSを添加した。この直後に125.0グラムのコア1(135nm)が続いた。200グラムのDI水、10.0グラムのSDS、548.8グラムのSTY、2.8グラムのLOFA、および7.0グラムのDVBを混合することにより製造されたモノマーエマルション(MEI)が3.0グラム/分の速度で、78℃の温度で反応器に供給された。MEIの開始の2分後に、25グラムのDI水と混合された5.6グラムのAAの溶液が反応器に添加された。78℃の温度でのMEI供給の40分後、供給速度は6.5グラム/分に増加させられ、30グラムのDI水中の0.5グラムのNaPSのコフィード溶液が、0.6グラム/分の速度で反応器に供給開始された。さらに15分後、MEI供給速度は13グラム/分まで再度増加させられ、反応の温度は92℃に上昇するのを許容された。MEIおよびNaPSコフィードの完了時に、反応は62℃に冷却された。冷却しつつ、2グラムの1%EDTAと混合された20グラムの0.1%硫酸第一鉄の溶液が75℃の温度でケトルに添加された。次いで、70℃の温度で、100グラムのDI水と混合された3.7グラムのt−BHPの溶液と、100グラムのDI水と混合された2.6グラムのIAAの別の溶液とであるコフィードが、双方が1.20グラム/分の速度でケトルに添加された。コフィード溶液の開始から2分後に、306グラムのDI水、17.0グラムのSDS、591.6グラムのBA、416.4グラムのMMAおよび12.0グラムのMAAを混合することによりあらかじめ製造されていたMEIIが、何らの外部熱を提供することなしに温度を78℃に上昇させるのを許容しつつ、60分間にわたってケトルに添加された。MEIIの完了時に、コフィード溶液は停止させられ、そのバッチは78℃で5分間保持された。次いで、400グラムの加熱DI水(90℃)と共に、5.0グラムのDI水と混合された5.0グラムのNH4OHの溶液がケトルに添加された。この時点で、54.0グラムのDI水、3.0グラムのSDS、104.4グラムのBA、75.6グラムのMMA、および2.5グラムの4−ヒドロキシTEMPOを混合することによりあらかじめ製造されていたMEIIIがケトルに7分間にわたって供給された。MEIII供給が完了した直後に、35グラムのDI水と混合された35.0グラムのNH4OHが2分間にわたってケトルに添加された。NH4OH供給が完了したとき(温度72℃)、そのバッチは5分間保持された。次いで、コフィード溶液が1.2グラム/分の速度でその完了まで再開された。次いで、分散物は25℃に冷却され、凝集物を除去するためにろ過された。ろ過された分散物は45.2%の固体含有量を有していた。S/Milは1.54であり、26%の崩壊を伴うと測定された。
【0057】
実施例7:実施例7は、MEIの組成物が200グラムのDI水、10.0グラムのSDS、464.8グラムのSTY、84.0グラムのAN、7.0グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、比較例Iの方法に従って製造された。ろ過された分散物は41.1%の固体含有量を有していた。S/Milは1.51であり、2%の崩壊を伴うと測定された。
【0058】
実施例8:実施例8は、MEIの組成物が200グラムのDI水、10.0グラムのSDS、436.8グラムのSTY、112.0グラムのAN、7.0グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、比較例Iの方法に従って製造された。ろ過された分散物は45.5%の固体含有量を有していた。S/Milは1.60であり、12%の崩壊を伴うと測定された。
【0059】
実施例9:実施例9は、MEI供給およびコフィードが完了した後で反応が84℃に冷却されたことを除いて、実施例8の方法に従って製造された。90.0グラムのDI水中に混合された3.5グラムのNaPSの溶液は1.7グラム/分の速度で反応器に供給された。実施例12におけるMEIIと同じ組成のモノマーエマルション(MEII)が60分間にわたって反応器に供給された。供給中、温度は86℃まで上昇するのを許容された。ろ過された分散物は46.2%の固体含有量を有していた。S/Milは1.75であり、10%の崩壊を伴うと測定された。
【0060】
比較例J:比較例Jは、MEIの組成物が200グラムのDI水、10.0グラムのSDS、548.8グラムのSTY、7.0グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例9の方法に従って製造された。ろ過された分散物は46.0%の固体含有量を有していた。S/Milは1.59であり、70%の崩壊を伴うと測定された。
【0061】
比較例K:比較例Kは、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、385.0グラムのSTY、168.0グラムのAN、1.4グラムのALMAおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例10の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.6%の固体含有量を有していた。S/Milは1.80であり、24%の崩壊を伴うと測定された。
【0062】
実施例10:実施例10は、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、380.8グラムのSTY、168.0グラムのAN、7.0グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、比較例Iの方法に従って製造された。また、MEIIの組成物は240グラムのDI水、17.0グラムのSDS、591.6グラムのBA、416.4グラムのMMA、および12.0グラムのMAAから構成された。ろ過された分散物は47.4%の固体含有量を有していた。S/Milは1.28であり、2%の崩壊を伴うと測定された。
【0063】
実施例11:実施例11は、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、383.6グラムのSTY、168.0グラムのAN、3.5グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例10の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.2%の固体含有量を有していた。S/Milは1.70であり、7%の崩壊を伴うと測定された。
【0064】
実施例12:比較例G〜Kおよび実施例7〜11における不透明度(S/Mil)および空隙の崩壊の評価。S/Mil(不透明度)は何らのコ−バインダー(co−binder)を使用することなしに、ポリマー粒子を用いて実施例6におけるように決定された。比較例G〜Kおよび実施例7〜11は、ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計:第2シェルの重量比、1:2を有し、試験条件下でそれだけで膜を形成する。
【0065】
【表5】

【0066】
比較例Gは米国特許出願公開第20070043159の方法によって製造された。第2ポリマーシェルが第1ポリマーに25−78℃の温度範囲で添加され、結果として、比較例Hにおけるような60−78℃の第2シェル供給温度で製造されたポリマー粒子と対比して、増加した耐崩壊性を示したポリマー粒子を生じさせた。比較例GおよびHにおける多エチレン性不飽和モノマー(MEUM)は第1ポリマーシェルの最後の12部の段階で用いられた。第1ポリマーシェル全体を通じてDVBを添加すること(比較例I)は、比較例Hと対比して、耐崩壊性を向上させた。しかし、実施例7におけるような第1ポリマーシェル中に15%のANを組み入れることは、結果として、第2ポリマーシェルの重合温度範囲を60−78℃に上昇させた場合に、比較例HおよびIと比べて、優れた耐崩壊性を有するポリマー粒子を生じさせた。
【0067】
【表6】

【0068】
上昇した第2シェル重合温度(84−86℃)において、第1ポリマーシェルに20%ANを組み入れた実施例9は、比較例Jに対して優れた耐崩壊性を示した。
【0069】
【表7】

【0070】
実施例10および11(それぞれ、1%および0.5%DVBを組み入れている)は第1ポリマーシェル中に少量のMEUM(0.25%ALMA)を含んでいた比較例Kに対して、優れた耐崩壊性を示した。
【0071】
実施例13:比較例Aにおけるように装備された5リットル四つ口丸底フラスコに、窒素雰囲気下で89℃の温度に加熱された500グラムのDI水を添加した。加熱されたケトル水に、20グラムのDI水に溶解された1.9グラムのNaPSを添加した。この直後に125.0グラムのコア1(135nm)が続いた。125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、436.8グラムのSTY、112.0グラムのAN、2.8グラムのLOFA、および7.0グラムのDVBを混合することにより製造されたモノマーエマルション(MEI)が3.0グラム/分の速度で、78℃の温度で反応器に供給された。MEIの開始の2分後に、25グラムのDI水と混合された5.6グラムのAAの溶液が反応器に添加された。78℃の温度でのMEI供給の40分後、供給速度は6.5グラム/分に増加させられ、30グラムのDI水中の0.5グラムのNaPSのコフィード溶液が、0.6グラム/分の速度で反応器に供給開始された。さらに15分後、MEI供給速度は13グラム/分まで再度増加させられ、反応の温度は92℃まで上昇するのを許容された。MEIおよびNaPSコフィードの完了時に、反応は72℃に冷却された。冷却しつつ、2グラムの1%EDTAと混合された20グラムの0.1%硫酸第一鉄の溶液が80℃の温度でケトルに添加された。次いで、76℃の温度で、100グラムのDI水と混合された1.9グラムのt−BHPおよび2.6グラムのNaPSの溶液と、100グラムのDI水と混合された2.6グラムのIAAの別の溶液とであるコフィードが、双方が1.20グラム/分の速度でケトルに添加された。72℃の温度での、コフィード溶液の開始から2分後に、240グラムのDI水、17.0グラムのSDS、591.6グラムのBA、416.4グラムのMMAおよび12.0グラムのMAAを混合することによりあらかじめ製造されていたMEIIが、何らの外部熱を提供することなしに温度を80℃に上昇させるのを許容しつつ、60分間にわたってケトルに添加された。MEIIの完了時に、コフィード溶液は停止させられ、そのバッチは80℃で5分間保持された。次いで、400グラムの加熱DI水(90℃)と共に、5.0グラムのDI水と混合された5.0グラムのNH4OHの溶液がケトルに添加された。この時点で、54.0グラムのDI水、3.0グラムのSDS、104.4グラムのBA、75.6グラムのMMA、および2.5グラムの4−ヒドロキシTEMPOを混合することによりあらかじめ製造されていたMEIIIがケトルに7分間にわたって供給された。MEIII供給が完了した直後に、35グラムのDI水と混合された35.0グラムのNH4OHが2分間にわたってケトルに添加された。NH4OH供給が完了したとき(温度72℃)、そのバッチは5分間保持された。次いで、コフィード溶液が1.2グラム/分の速度でその完了まで再開された。次いで、分散物は25℃に冷却され、凝集物を除去するためにろ過された。ろ過された分散物は47.4%の固体含有量を有していた。S/Milは1.52であり、6%の崩壊を伴うと測定された。
【0072】
実施例14:実施例14は、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、380.3グラムのSTY、168.0グラムのAN、7.0グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.3%の固体含有量を有していた。S/Milは1.32であり、4%の崩壊を伴うと測定された。
【0073】
実施例15:実施例15は、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、383.6グラムのSTY、168.0グラムのAN、3.5グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.4%の固体含有量を有していた。S/Milは1.64であり、11%の崩壊を伴うと測定された。
【0074】
比較例L:比較例Lは、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、385.0グラムのSTY、168.0グラムのAN、1.75グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.7%の固体含有量を有していた。S/Milは1.82であり、33%の崩壊を伴うと測定された。
【0075】
実施例16:実施例16は、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、327.6グラムのSTY、224.0グラムのAN、3.5グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.9%の固体含有量を有していた。S/Milは1.32であり、0%の崩壊を伴うと測定された。
【0076】
比較例M:比較例Mは、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、329.0グラムのSTY、224.0グラムのAN、1.75グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.9%の固体含有量を有していた。S/Milは1.63であり、33%の崩壊を伴うと測定された。
【0077】
実施例17:実施例17は、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、271.6グラムのSTY、280.0グラムのAN、3.5グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は48.0%の固体含有量を有していた。S/Milは1.35であり、11%の崩壊を伴うと測定された。
【0078】
比較例N:比較例Nは、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、273.0グラムのSTY、280.0グラムのAN、1.75グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.9%の固体含有量を有していた。S/Milは1.42であり、37%の崩壊を伴うと測定された。
【0079】
比較例O:比較例Oは、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、274.4グラムのSTY、280.0グラムのANおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.9%の固体含有量を有していた。S/Milは1.33であり、49%の崩壊を伴うと測定された。
【0080】
実施例18:実施例18は、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのSDS、243.6グラムのSTY、308.0グラムのAN、3.5グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.6%の固体含有量を有していた。S/Milは1.15であり、9%の崩壊を伴うと測定された。
【0081】
実施例19:実施例19は、MEIの組成物が125グラムのDI水、10.0グラムのFes−32、215.6グラムのSTY、336.0グラムのAN、3.5グラムのDVBおよび2.8グラムのLOFAから構成され、並びにMEIIが240グラムのDI水、17.0グラムのFes−32、591.6グラムのBA、416.4グラムのMMA、および12.0グラムのMAAから構成されたことを除いて、実施例13の方法に従って製造された。ろ過された分散物は47.5%の固体含有量を有していた。S/Milは1.00であり、7%の崩壊を伴うと測定された。
【0082】
実施例20:実施例13〜19および比較例L〜Oにおける不透明度(S/mil)および空隙の崩壊の評価。S/Mil(不透明度)は何らのコ−バインダー(co−binder)を使用することなしに、ポリマー粒子を用いて実施例6におけるように決定された。実施例13〜19および比較例L〜Oは、ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計に対する第2シェルの重量比1:2を有し、試験条件下でそれだけで膜を形成する。
【0083】
【表8】

【0084】
全ての段階の割合は、1部のコアポリマー/14部の第1シェルポリマー//30部の第2シェルポリマーである。全ての第2シェル供給温度範囲は70−80℃である。
【0085】
第1シェルポリマー中に0.5〜1%のMEUMを組み込んでいる実施例13〜19は、0〜0.25%のMEUMを組み込んでいる比較例L〜Oに対して、優れた耐崩壊性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、第1シェルおよび第2シェルを含むポリマー粒子であって;
前記コアは乾燥時に少なくとも1つの空隙を含み;
前記第1シェルポリマーは50℃を超える計算ガラス転移温度(Tg)を有し、かつ重合単位として、前記第1シェルポリマーの重量を基準にして15重量%〜60重量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに前記第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含み;並びに、
前記第2シェルポリマーは−60℃〜50℃のTgを有し;
前記第2シェルポリマー対、前記ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比が0.5:1から3:1までである;
ポリマー粒子。
【請求項2】
ポリマー粒子が多段階水性乳化重合によって形成された、請求項1に記載のポリマー粒子。
【請求項3】
コア、第1シェルおよび第2シェルを含むポリマー粒子を形成する方法であって;
重合単位として、前記コアの重量を基準にして5重量%〜100重量%の少なくとも1種の親水性モノエチレン性不飽和モノマーを含む前記コアを形成し;
50℃を超えるTgを有し、かつ重合単位として、前記第1シェルポリマーの重量を基準にして15重量%〜60重量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに前記第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含む前記第1シェルポリマーを、前記コアの存在下で形成し;並びに
−60℃〜50℃のTgを有する前記第2シェルポリマーを、前記第1シェルポリマーの存在下で、前記第1シェルポリマーのTgより30℃低い温度から100℃の間の温度で形成し;前記第2シェルポリマー対、前記ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比が0.5:1から3:1までである;
ことを含む方法。
【請求項4】
前記粒子が多段階水性乳化重合により形成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(a)コア、第1シェルおよび第2シェルを含むポリマー粒子と、水性媒体とを含む組成物であって;
前記コアは乾燥時に少なくとも1つの空隙を含み;
前記第1シェルポリマーは50℃を超える計算ガラス転移温度(Tg)を有し、かつ重合単位として、前記第1シェルポリマーの重量を基準にして15重量%〜60重量%のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー、並びに前記第1シェルポリマーの重量を基準にして0.3重量%〜10重量%の多エチレン性不飽和モノマーを含み;並びに、
前記第2シェルポリマーは−60℃〜50℃のTgを有し;
前記第2シェルポリマー対、当該ポリマー粒子の他の全ての構造体の合計の重量比が0.5:1から3:1までである、
組成物を形成し;
(b)前記組成物を基体に適用し;並びに
(c)前記適用された組成物を乾燥させまたは乾燥させておく;
ことを含む、乾燥組成物に不透明性を与える方法。
【請求項6】
前記粒子が多段階水性乳化重合により形成される、請求項5に記載の方法。

【公開番号】特開2010−18782(P2010−18782A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−130397(P2009−130397)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】