説明

コア/シェル型ナノ粒子蛍光体とその作製方法

【課題】コア/シェル型ナノ粒子蛍光体において、シェルの厚さを適切に制御することにより、コア部発光の外部取り出し効率を著しく向上させたコア/シェル型ナノ粒子蛍光体とその作製方法の提供。
【解決手段】平均最小シェル厚が0.10〜0.50nmであり、平均最大シェル厚が0.15〜1.00nmであることを特徴とするコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。該コア/シェル型ナノ粒子蛍光体は、コア粒子又はコア/シェル型ナノ粒子を高酸素雰囲気下、自然酸化させることによりシェル厚を制御することにより作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア/シェル型ナノ粒子蛍光体とその作製方法に関する。詳しくは、コア/シェル構造を有するナノ粒子蛍光体において、シェル厚を最適に制御することにより、コアからの発光の外部取り出し効率を向上させたコア/シェル型ナノ粒子蛍光体とその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体分野においてスパッタ法とは、従来から無機材料の薄膜形成技術の1つとして広く知られている。
【0003】
そのスパッタ法には、直流、交流、高周波スパッタなどの各手法があり、絶縁物のターゲットをスパッタする方法としては高周波スパッタが利用可能である。その高周波スパッタを用いて、薄膜の形成ではなく、微粒子、さらにはナノ粒子の形成を行うことを目的に研究をされ初めたのは近年のことである。
【0004】
さらに、従来では、コアシェル型の蛍光体微粒子の形成は行っているが、シェル厚のコントロールについての報告はされていなかった。このことにより、同じ作製条件においても発光強度の観点でロッドごとにバラツキが起きてしまうことにより、再現性が取れていなかった。そこで、我々はこのシェル厚のコントロールに着目したことにより、ロッドごとのバラツキが抑えられ、かつ、発光強度の向上が実現できた。
下記に従来の技術について記載する。
【0005】
上記の従来のスパッタ法によるシリコンナノ粒子の作製技術が開示されている特許文献1、特許文献2、及び特許文献3においては、高周波スパッタでシリコンナノ粒子を絶縁物内で形成後、熱処理、絶縁物除去処理を施すことでナノ粒子蛍光体の作製を行い、可視光の発光を得ていると報告されている。
【0006】
しかし、どの実施例からもコアとなるナノ粒子に、量子井戸構造を有するために付与するシェルに対してのシェル厚について議論されていない。シェルの厚さについては、薄すぎる場合であれば量子井戸構造が構築されない恐れがあり、さらに厚過ぎる場合であれば自然酸化で形成されたアモルファス状の酸化シリコンが、コア部からの発光の外部取り出し効率に大きな影響を与えることから、シェル厚は、高輝度なナノ粒子を形成させるためには非常に重要な制御因子であると考えられる。
【0007】
一方、特許文献4に開示されているナノ粒子の製法においては、特許文献1〜3とは異なり、スパッタ法の利用によりナノ粒子の形成を行っていない。また、可視光での発光が確認されていると報告されているが、シェル厚についての考察が全くされていないことから、シェル厚について最適な処理が考慮されていないため、発光強度が弱いと考えられる。
【特許文献1】特開2006−70089号公報
【特許文献2】特開2004−296781号公報
【特許文献3】特開2005−268337号公報
【特許文献4】特開2006−71330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、コア/シェル型ナノ粒子蛍光体において、シェルの厚さを適切に制御することにより、コア部発光の外部取り出し効率を著しく向上させたコア/シェル型ナノ粒子蛍光体とその作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、コア/シェル型ナノ粒子蛍光体において、量子井戸構造ないし量子ドットを構築し、電子の閉じこめによる発光効率の向上を図るという観点等から鋭意検討の結果、シェルの厚さを適切に制御することにより、コア部発光の外部取り出し効率を著しく向上させることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る上記課題は以下の手段により解決される。
【0011】
1.平均最小シェル厚が0.10〜0.50nmであり、平均最大シェル厚が0.15〜1.00nmである(但し、平均最小シェル厚は、常に平均最大シェル厚以下である。)ことを特徴とするコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【0012】
2.平均最小シェル厚が0.10〜0.50nmであり、平均最大シェル厚が0.50〜1.00nmであることを特徴とする前記1に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【0013】
3.平均最小シェル厚が0.10〜0.30nmであり、平均最大シェル厚が0.30〜0.50nmであることを特徴とする前記1に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【0014】
4.平均最小シェル厚が0.10〜0.15nmであり、平均最大シェル厚が0.15〜0.20nmであることを特徴とする前記1に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【0015】
5.前記1〜4のいずれか一項に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体であって、コア部を構成する材料の主成分がシリコンであることを特徴とするコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【0016】
6.前記1〜4のいずれか一項に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体であって、コア部を構成する材料の主成分がゲルマニウムであることを特徴とするコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【0017】
7.前記1〜6のいずれか一項に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体の作製方法であって、コア粒子又はコア/シェル型ナノ粒子を高酸素雰囲気下、自然酸化をさせることによりシェル厚を制御することを特徴とするコア/シェル型ナノ粒子蛍光体の作製方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の上記手段により、コア/シェル型ナノ粒子蛍光体において、シェルの厚さを適切に制御することにより、コア部発光の外部取り出し効率を著しく向上させたコア/シェル型ナノ粒子蛍光体とその作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体は、平均最小シェル厚が0.10〜0.50nmであり、平均最大シェル厚が0.15〜1.00nmである(但し、平均最小シェル厚は、常に平均最大シェル厚以下である。)ことを特徴とする。この特徴は、請求項1〜6に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0020】
なお、本願において、「平均最小シェル厚」とは、本発明のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体の集合体を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し、当該写真により、500個の粒子について、各粒子のシェル部のうち最小の厚さの部分を測定して得られる測定値の平均値をいう。また、「平均最大シェル厚」とは、本発明のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体の集合体を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し、当該写真により、500個の粒子について、各粒子のシェル部のうち最大の厚さの部分を測定して得られる測定値の平均値をいう。
【0021】
(コア/シェル型ナノ粒子蛍光体)
本発明のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体は、蛍光を発することができるナノサイズのコア粒子と当該該コア粒子を被覆するシェル層とで構成されるコア/シェル構造を有するコア/シェル型ナノ粒子蛍光体であることを特徴とする。以下において、コア粒子とシェルについて説明をする。
【0022】
〈コア粒子〉
本発明において、コア粒子を構成する材料としては、II−VI族、III−V族、IV族の元素を含有する無機半導体であることが好ましい。
【0023】
コア粒子には、量子サイズ効果の発現で可視光を得るという観点から、半導体Si、Ge、InN、InP、GaAs、AlSb、CdSe、AlAs、GaP、ZnTe、CdTe、及びInAs等が好ましく適用される。特に、半導体Si、Ge、InN、及びInP等がより好ましく適用される。
【0024】
本発明においては、特にコア部を構成する材料の主成分がシリコン又はゲルマニウムであることが好ましい。
【0025】
コア粒子の平均粒径は、量子ドット構築の観点から20nm以下であることが好ましい。更には、0.5〜10nmであることが好ましい。
【0026】
なお、本発明において、上記コア粒子(ナノ粒子蛍光体)の平均粒径は本来3次元で求める必要があるが、微粒子過ぎるため難しく、現実には二次元画像で評価せざるを得ないため、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて電子顕微鏡写真の撮影シーンを変えて数多く撮影し平均化することで求めることが好ましい。従って、本発明において、当該平均粒径は、TEMを用いて電子顕微鏡写真を撮影し十分な数の粒子について断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径を粒径として求めて、その算術平均を平均粒径とした。TEMで撮影する粒子数としては100個以上が好ましく、500個の粒子を撮影するのが更に好ましい。本願においては、500個の粒子の算術平均を平均粒径とした。
【0027】
〈シェル〉
シェルのを構成する材料としては、II−VI族、III−V族、IV族の元素を含有する材料であることが好ましい。
【0028】
すなわち、シェルのを構成する材料としては、上記の各コア無機材料よりバンドギャップが大きく、格子定数のずれが大きくないものに該当する材料であり、且つ毒性を有さない材料であることが好ましい。特に、半導体Si、Ge、InN、及びInP等の各コア無機材料よりバンドギャップが大きく、格子定数のずれが大きくないものに該当する材料であり、毒性を有さない材料が好ましい。
【0029】
本発明に係る平均シェル厚は、量子井戸構造の構築等の観点から、0.10〜1.00nmであることが好ましい。
【0030】
本発明においては、特に、平均最小シェル厚が0.10〜0.50nmであり、平均最大シェル厚が0.15〜1.00nmである(但し、平均最小シェル厚は、常に平均最大シェル厚以下である。)ことを要する。なお、好ましくは、平均最小シェル厚が0.10〜0.50nmであり、平均最大シェル厚が0.50〜1.0nmである。更に、平均最小シェル厚が0.1〜0.3nmであり、平均最大シェル厚が0.3〜0.5nmであることが好ましい。特に、平均最小シェル厚が0.1〜0.15nmであり、平均最大シェル厚が0.15〜0.2nmである態様が好ましい。
【0031】
〈コア/シェル型ナノ粒子蛍光体の作製方法〉
本発明のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体は、従来公知の種々の方法を用いて作製することができるが、高周波スパッタ、熱処理、フッ酸処理、及び高酸素雰囲気下での自然酸化等の工程を含む態様の方法が好ましい。以下、シリコンナノ粒子の各工程の条件等について説明する。
【0032】
《高周波スパッタ法によるアモルファスSiOx膜の形成》
高周波スパッタリング装置を用いて、シリコン基板などの半導体基板上に、シリコン原子を混入させたアモルファスSiOx膜を形成する。
【0033】
なお、アモルファスSiOx膜内に混入されるシリコン原子の量は、高周波電力やガス圧に強く依存していることが知られている。ここで、高周波電力はシリコン原子の量(数)を広範囲にわたり変化させることができるため、シリコンナノ粒子の結晶サイズの可変に有効である。すなわち、高周波電力を高くした条件で堆積した試料では、シリコン原子の量を高濃度でアモルファスSiOx膜内に混入させることができる。逆に、高周波電力を低くした条件で堆積した試料では、シリコン原子の量(数)を低濃度でしかアモルファスSiOx膜内に混入することができない。
【0034】
このように、高周波電力は条件を調整することで、アモルファスSiOx内に混入するシリコン原子の量(数)を自在に制御することができる。これにより、アモルファスSiOx膜内に混入されるシリコン原子の量が可変できることで、シリコンナノ粒子の結晶サイズを自在に制御することができる。例えば、アモルファスSiOx膜内に高濃度のシリコン原子を混入した場合、シリコンナノ粒子の結晶サイズは大きくなる。逆に、低濃度のシリコン原子をアモルファスSiOx膜内に混入した場合、結晶サイズの小さなシリコンナノ粒子を形成することができる。このときに設定する高周波電力の範囲値としては、100〜500Wである。
【0035】
一方、ガス圧はアモルファスSiOx膜内に混入するシリコン原子の密度を変化させることができるため、シリコンナノ粒子の密度の可変に有効である。すなわち、ガス圧を高くした条件(低真空)で堆積した試料では、シリコン原子を低密度でアモルファスSiOx内に混入させることができる。逆に、ガス圧を低くした条件(高真空)で堆積した試料では、高密度のシリコン原子をアモルファスSiOx膜内に混入することができる。
【0036】
このように、ガス圧は条件を調整することで、アモルファスSiOx膜内に混入するシリコン原子の密度を自在に制御することができる。これにより、アモルファスSiOx膜内に混入されるシリコン原子の密度が可変できることで、シリコンナノ粒子の密度を自在に制御することができる。例えば、アモルファスSiOx膜内に低密度のシリコン原子を混入した場合、シリコンナノ粒子の密度は少なくなる。逆に、高密度のシリコン原子をアモルファスSiOx膜内に混入した場合、高密度のシリコンナノ粒子を形成することができる。このときに設定するガス圧の範囲値としては、約1×10-2〜1×10Paである。
【0037】
また、ガス圧は、堆積時における試料の膜厚の調整や堆積時間の短縮などにも関与している。このため、各種応用用途に適した膜厚での成膜ができたり、短時間での成膜ができるために製造コストの低減を導くことができる。このように、高周波電力とガス圧は、アモルファスSiOx膜内へのシリコン原子の混入量(数)の調整に直接関係しているため、シリコンナノ粒子の結晶サイズや密度を可変することができる。
【0038】
《熱処理》
上記で作製したアモルファス状態の膜をアルゴン、窒素又はヘリウムなどの不活性ガス中内で熱処理を行うと、アモルファスSiOx膜が酸化ケイ素膜に変化する。そして、当該熱処理の途中段階において、アモルファスSiOx膜内に混入していたシリコン原子が酸化ケイ素膜内を激しく動き始めることで、徐々にシリコン原子が凝集し始める。さらに、この状態の膜を不活性ガス内で、熱処理し、その終期段階において、酸化ケイ素膜内にシリコン原子が約1.5nm〜約6.0nmの範囲での結晶サイズを有するシリコンナノ粒子として多数形成される。
【0039】
熱処理の温度としては、約900〜約1200℃の温度範囲内で行われる。好ましくは、約1000〜1100℃である。また、熱処理の処理時間としては、約15〜約100分である。好ましくは、約30〜約80分である。さらに好ましくは、約50〜約60分である。この温度において形成されるシリコンナノ粒子は、酸化ケイ素膜内のいたるところに点在しており、しかも球形で存在している。シリコンナノ粒子の結晶サイズや密度は、膜の堆積時におけるアモルファスSiOx膜内に混入するシリコン原子の量(数)により決定される。
【0040】
《フッ酸処理》
上記で作製したシリコンナノ粒子を含有する酸化ケイ素膜について樹脂容器内に入れたフッ酸水溶液によってフッ酸水溶液処理を行う。当該フッ酸水溶液処理することにより、前記酸化ケイ素膜の表面にシリコンナノ粒子自体を露出させる。これらによって、室温において、低動作電圧でも、鮮明に発光させることができる。
【0041】
なお、フッ酸水溶液の濃度は1〜50質量%とする。好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは、20〜30質量%である。また、フッ酸水溶液処理の処理時間は、約1〜約120分であり、この適宜の時間とフッ酸水溶液の濃度等がシリコンナノ粒子の粒径にも影響する。このようにして、シリコンナノ粒子を製造する。
【0042】
《高酸素雰囲気下での自然酸化》
次に、上記で作製したシリコンナノ粒子の表面上にシェルを形成付与する方法としては、本発明においては、上記高周波スパッタ、熱処理、酸処理後に、得られた粉末を大気雰囲気での自然酸化をさせるのではなく、高酸素雰囲気下、温度20〜40℃において長時間の自然酸化をさせることにより、シェル厚を制御して形成するこよが好ましい。これにより、大気雰囲気での自然酸化により得られる酸化膜より安定した酸化膜の形成が可能となる。
【0043】
ここで、「高酸素雰囲気」とは、雰囲気中の酸素濃度(体積%)が30%以上であること、好ましくは、50%以上であること、更に好ましくは、雰囲気中の酸素濃度が80%以上であることが好ましい。
【0044】
なお、高酸素雰囲気にする際は、密閉容器の中でまずロータリーポンプなどで脱気を行い、余分な気体や埃・チリの除去を行った後に、酸素やその他の気体(例えばN2ガス等の不活性気体)で置換することが望ましい。具体例には、例えば、O2:50%、N2:50%の混合気体の雰囲気にすることが好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
〈比較例1〉
スパッタ法(出力:100W)、熱処理(温度:1200℃、時間:60分)、フッ酸処理(30質量%フッ酸水溶液を気化して照射)によりSi/SiO2コア/シェル型粒子を作製後、高酸素雰囲気下(O2:50%、N2:50%の混合気体)に216時間放置することで自然酸化を促進させた。その形成粒子を用いて、シェル厚をTEM観察、発光強度を蛍光光度計より測定した結果、平均最小シェル厚が1.23nm、平均最大シェル厚が1.52nmの粒子、さらに、コア粒子からの発光強度を得ることができた。この比較例1で得られた粒子の発光強度を、他の作製条件で得られた粒子の発光強度と比較するため比較基準の発光強度と定める。また、この試料を比較例粒子1とする。
【0047】
〈比較例2〉
スパッタ法(出力:100W)、熱処理(温度:1200℃、時間:60分)、フッ酸処理(30質量%フッ酸水溶液を気化して照射)によりSi/SiO2コア/シェル型粒子を作製後、高酸素雰囲気下(O2:50%、N2:50%の混合気体)に48時間放置することで自然酸化を促進させた。その形成粒子を用いて、シェル厚をTEM観察、発光強度を蛍光光度計より測定した結果、平均最小シェル厚が0.02nm、平均最大シェル厚が0.05nmの粒子、さらに、比較例粒子1の形成粒子から得られた発光強度の、0.78倍の発光強度を得ることができた。この試料を比較例粒子2とする。
【0048】
〈比較例3〉
スパッタ法(出力:100W)、熱処理(温度:1200℃、時間:60分)、フッ酸処理(30質量%フッ酸水溶液を気化して照射)によりGe/SiO2コア/シェル型粒子を作製後、高酸素雰囲気下(O2:50%、N2:50%の混合気体)に48時間放置することで自然酸化を促進させた。その形成粒子を用いて、シェル厚をTEM観察、発光強度を蛍光光度計より測定した結果、平均最小シェル厚が0.04nm、平均最大シェル厚が0.08nmの粒子、さらに、比較例粒子1の形成粒子から得られた発光強度の、0.84倍の発光強度を得ることができた。この試料を比較例粒子3とする。
【0049】
〈実施例1〉
スパッタ法(出力:100W)、熱処理(温度:1200℃、時間:60分)、フッ酸処理(30質量%フッ酸水溶液を気化して照射)によりSi/SiO2コア/シェル型粒子を作製後、高酸素雰囲気下(O2:50%、N2:50%の混合気体)に96時間放置することで自然酸化を促進させた。その形成粒子を用いて、シェル厚をTEM観察、発光強度を蛍光光度計より測定した結果、平均最小シェル厚が0.12nm、平均最大シェル厚が0.20nmの粒子、さらに、比較例粒子1の形成粒子から得られた発光強度の、1.81倍の発光強度を得ることができた。この試料を実施例粒子1とする。
【0050】
〈実施例2〉
スパッタ法(出力:100W)、熱処理(温度:1200℃、時間:60分)、フッ酸処理(30質量%フッ酸水溶液を気化して照射)によりSi/SiO2コアシェル粒子を作製後、高酸素雰囲気下(O2:50%、N2:50%の混合気体)に144時間放置することで自然酸化を促進させた。その形成粒子を用いて、シェル厚をTEM観察、発光強度を蛍光光度計より測定した結果、平均最小シェル厚が0.42nm、平均最大シェル厚が0.96nmの粒子、さらに、比較例粒子1の形成粒子から得られた発光強度の、1.36倍の発光強度を得ることができた。この試料を実施例粒子2とする。
【0051】
〈実施例3〉
スパッタ法(出力:100W)、熱処理(温度:1200℃、時間:60分)、フッ酸処理(30質量%フッ酸水溶液を気化して照射)によりGe/SiO2コアシェル粒子を作製後、高酸素雰囲気下(O2:50%、N2:50%の混合気体)に144時間放置することで自然酸化を促進させた。その形成粒子を用いて、シェル厚をTEM観察、発光強度を蛍光光度計より測定した結果、平均最小シェル厚が0.31nm、平均最大シェル厚が0.62nmの粒子、さらに、比較例粒子1の形成粒子から得られた発光強度の、1.42倍の発光強度を得ることができた。この試料を実施例粒子3とする。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示した結果から次のことが言える。
【0054】
比較例1、比較例2、実施例1、及び実施例2の結果から、比較例1のシェル厚では、高酸素雰囲気下の放置時間が長かったため、シェル厚が非常に厚くなったと考えられ、コア部からの発光がうまく取り出せていない結果となっている。同様に比較例2のシェル厚では、高酸素雰囲気下の放置時間が短かったため、シェル厚が薄くなったと考えられ、量子井戸構造が完全に構築されないことから、発光強度も向上していない結果となっていると考えられる。
【0055】
一方シェル厚を制御した実施例1及び2においては、両者とも発光強度が向上していることが見て取れる。このことから、形成されたコア試料に制御されたシェル膜を構築することにより、ある領域において発光強度が向上すると言える。
【0056】
実施例3及び比較例3より、コア/シェル型粒子の組成がGe/SiGeに変わっても、Si/SiO2の組成と同様にシェル厚の変化より発光強度が変化していることが見て取れる。
【0057】
これら上記の結果から、コア/シェル構造のシェルについて、本発明で規定しているシェル厚が、蛍光体ナノ粒子の発光強度の向上に大きな影響を与えていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均最小シェル厚が0.10〜0.50nmであり、平均最大シェル厚が0.15〜1.00nmである(但し、平均最小シェル厚は、常に平均最大シェル厚以下である。)ことを特徴とするコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【請求項2】
平均最小シェル厚が0.10〜0.50nmであり、平均最大シェル厚が0.50〜1.00nmであることを特徴とする請求項1に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【請求項3】
平均最小シェル厚が0.10〜0.30nmであり、平均最大シェル厚が0.30〜0.50nmであることを特徴とする請求項1に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【請求項4】
平均最小シェル厚が0.10〜0.15nmであり、平均最大シェル厚が0.15〜0.20nmであることを特徴とする請求項1に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体であって、コア部を構成する材料の主成分がシリコンであることを特徴とするコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体であって、コア部を構成する材料の主成分がゲルマニウムであることを特徴とするコア/シェル型ナノ粒子蛍光体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のコア/シェル型ナノ粒子蛍光体の作製方法であって、コア粒子又はコア/シェル型ナノ粒子を高酸素雰囲気下、自然酸化をさせることによりシェル厚を制御することを特徴とするコア/シェル型ナノ粒子蛍光体の作製方法。