説明

コイル加熱装置

【課題】高周波誘導加熱手段を採用するものでありながら、コアの熱変形等のおそれがなく、簡単な構成により効果的にコイル部を加熱することが可能なコイル加熱装置を提供する。
【解決手段】コアFに巻装されたコイル部Lを高周波誘導加熱手段1のヘッドコイル3で発生する高周波磁束により加熱するコイル加熱装置において、前記ヘッドコイル3は、高周波磁束HA,HBの発生方向が互いに逆方向となる少なくとも一対のループ状部3A,3Bから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばモータや発電機のステータ、トランス等の製造工程において、コアに巻装されたコイル部を加熱するのに使用されるコイル加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータや発電機のステータやトランスの製造工程では、コアに巻装されたコイル部にワニスを含浸したり、樹脂モールドを施すようになっているが、このワニス含浸等が良好に行えるように、ワニス含浸や樹脂モールド等の作業に先立って、コイル部を予備加熱するようになっている。また、コイル部に含浸されたワニス等を乾燥硬化させるために、コイル部を加熱することも行われている。
【0003】
従来、例えば前記ステータの製造工程では、ワニス含浸や樹脂モールド等の作業に先立ってコイル部を予備加熱するために、ステータを加熱炉に搬入して、ステータ全体を加熱していた。
【0004】
ところが、上記した従来の方法では、作業者がステータを加熱炉に挿入し、加熱後に、ステータを加熱炉から取り出して次の工程に送らなければならず、作業効率が悪い他に、加熱時間が比較的長時間となることから、使用電力量が大きくなるという問題があった。
【0005】
また、所定温度まで加熱されたステータを加熱炉から取り出し、次工程に搬送するまでに手間がかかることから、コイル部を所定温度に保ちにくい。そのため、コイル部に塗布したワニスが良好に含浸しにくくなるとか、クラックが生じて樹脂製品の品質を損なうといった問題もある。
【0006】
そこで、作業効率の改善、加熱時間の短縮による電力消費の低減化等を目的として、環状コア内に高周波誘導加熱用ヘッドコイルを配置し、このヘッドコイルによる高周波誘導加熱により、コイル部を加熱することが提案されている。
【0007】
また、高周波誘導加熱方式による加熱に加え、コイル部に通電してコイル部を自己発熱させるようにした技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭60−82050号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記高周波誘導加熱用ヘッドコイルを環状コアの中空部に配置して高周波誘導加熱方式で加熱する方法では、高周波誘導加熱用ヘッドコイルから発生する高周波磁束により、特にコアの外周部の厚さ方向の端部が局部的に加熱されて熱変形を起こしたり、損傷したりするおそれがあるという問題があった。
【0009】
また、コイル部に通電して自己発熱させる技術では、自己発熱温度がばらついたり、通電時に電磁力が発生して、コイル部全体が振動するという問題があった。
【0010】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高周波誘導加熱手段を採用するものでありながら、コアの熱変形等のおそれがなく、簡単な構成により効果的にコイル部を加熱することが可能なコイル加熱装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)コアに巻装されたコイル部を高周波誘導加熱手段のヘッドコイルで発生する高周波磁束を利用して加熱するコイル加熱装置において、前記ヘッドコイルは、高周波磁束の発生方向が互いに逆方向となる少なくとも一対のループ状部から構成されていることを特徴とするコイル加熱装置。
(2)前記各ループ状部の周囲に、各ループ状部によりそれぞれ発生する高周波磁束を前記コイル部に集中的に作用させる磁路をもった磁性体が配置されている前項(1)に記載のコイル加熱装置。
(3)前記ヘッドコイルは、環状コアの厚さ方向の少なくとも一端側に突出状に存在するコイル部に対して、該コアの厚さ方向外方から対向配置されるものとなされており、
各ループ状部は、前記環状のコア及びコイル部に対応して、円弧状に形成されている前項1または2に記載のコイル加熱装置。
(4)前記ヘッドコイルは、一対のループ状部で構成されるとともに、一方のループ状部は、前記コアの一方の略半分に対応して、各基端側から各先端側まで平行状態で略円弧状に延びるとともに、互いに先端同志がUターン部を介して連成された外側及び内側辺部で構成される一方、ヘッドコイルの他方のループ状部は、前記コアの他方の略半分に対応して、各基端側から各先端側まで平行状態で略円弧状に延びるとともに、互いに先端同志がUターン部を介して連成された外側及び内側辺部で構成されており、前記一方のループ状部における外側辺部の基端と他方のループ状部における内側辺部の基端とを一対として、あるいは一方のループ状部における内側辺部の基端と他方のループ状部における外側辺部の基端とを一対として通電端とし、前記一対のループ状部における前記通電端となっていない側の辺部の基端同志を連成してある前項3に記載のコイル加熱装置。
【発明の効果】
【0012】
前項(1)に記載の発明によれば、ヘッドコイルに通電することにより、一方のループ状部と他方のループ状部に互いに逆向きの高周波磁束が発生する。このため、ヘッドコイルの全体から生じる磁束の分布において、遠方にまで及んでから折り返すような磁束の形成が抑制され、もっぱら局所的な磁束、例えばヘッドコイルのコイル線の外側をコイル線の外周に沿って一方向に回って閉じるような局所的な磁束や、あるいはさらに一方のループ状部の経路と他方のループ状部の経路とを周回するような経路で閉じる局所的な磁束が、支配的に生じているものと考えられる。そして、このようなヘッドコイルを、ステータやトランス等のコア部に巻装されたコイル部の近くに配置して駆動することにより、遠方にまで及んでから折り返すような磁束を抑制して、この磁束が存在した場合にコア部に発生する渦電流が抑制され、コア部の発熱が抑制される。一方、ヘッドコイルが近接配置されたコイル部に対しては前記局部的な磁束が作用することにより、コイル部に渦電流を生じさせ、これによりコイル部を発熱させる。このようにして、コアの発熱を抑制しながら、コイル部を効果的に発熱させることができる。
【0013】
前項(2)に記載の発明によれば、各ループ状部によりそれぞれ発生する高周波磁束が、磁性体によりコイル部に集中透過されるから、さらにコイル部を効率的に加熱することができる。
【0014】
前項(3)に記載の発明によれば、環状コアの厚さ方向の少なくとも一端側に突出状のコイル部を有する、例えばモータや発電機のステータのコイル部の加熱等にそのまま適用でき、これにより、コイル部に対する高周波誘導加熱を良好に行わせることができる。しかも、少なくとも一対のループ状部に互いに逆向きの高周波磁束が発生するから、環状コアの中空部を貫く磁束が相殺されることになり、環状コアの中空部を貫く磁束が存在する場合にこの磁束を打ち消すための電流が環状コアの閉回路に流れることによるコアの発熱減少をも防止でき、コアの発熱を抑制しながらコイル部のみを加熱する効果を、益々有効に発揮させることができる。
【0015】
前項(4)に記載の発明によれば、一対のループ状部で構成されたヘッドコイルにおける一方のループ状部が、前記コアの一方の略半分に対応して、各基端側から各先端側まで平行状態で略円弧状に延びるとともに、互いに先端同志がUターン部を介して連成された外側及び内側辺部で構成される一方、他方のループ状部が、前記コアの他方の略半分に対応して、各基端側から各先端側まで平行状態で略円弧状に延びるとともに、互いに先端同志がUターン部を介して連成された外側及び内側辺部で構成されているから、環状コアの厚さ方向の少なくとも一端側に形成された突出状のコイル部を、コアの発熱を抑制しながら確実に加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1及び図2は、それぞれこの発明の一実施形態に係るコイル加熱装置により、モータまたは発電機のステータにおけるコイル部を加熱している状態を示す正面図及び断面図である。
【0018】
図1及び図2において、このコイル加熱装置は、ステータMのコイル部Lにワニスを塗布して含浸するのに先立って、該コイル部Lを予備加熱するために使用される。加熱手段としては、高周波誘導加熱装置1が用いられている。
【0019】
前記ステータMは、多数のケイ素鋼板を厚さ方向で積層してなる環状のコアFにおける内周突部Faに三相のコイル部Lを巻装してあり、コアFの厚さ方向の両端側に、コイル部Lの環状引き回し部Laが突出状態に存在している。また、このコイル部Lには、三相の外部端子Tが設けられている。
【0020】
前記高周波誘導加熱装置1は、例えば、高周波発振部2(図4)と、前記コアFの厚さ方向の外方から前記コイル部Lの引き回し部Laに対向配置された上下一対のヘッドコイル3,3と、各ヘッドコイル3,3をそれぞれ収容した上下の磁性収容体4,4とを備えている。
【0021】
上下のヘッドコイル3,3は同じ構成であり、また、上下の磁性収容体4,4も同じ構成であるから、以下においては、それぞれ一方のヘッドコイル3及び磁性収容体4を代表して説明する。
【0022】
前記ヘッドコイル3は、前記高周波発振部2からの電力供給によって、高周波磁束を発生するものであり、コアFの左半分及び右半分にそれぞれ対応する左右一対のループ状部3A,3Bで構成されている。
【0023】
左側のループ状部3Aは、図3及び図4に示すように、コアFの左半分の略半周分に対応して、各基端側から各先端側まで平行状態で略円弧状に延びるとともに、互いに先端同志がUターン部30aを介して連成された外側及び内側辺部31a,32aにより構成されている。
【0024】
また、右側のループ状部3Bは、前記コアFの右半分の略半周分に対応して、各基端側から各先端側まで平行状態で略円弧状に延びるとともに、互いに先端同志がUターン部30bを介して連成された外側及び内側辺部31b,32bにより構成されている。
【0025】
前記左側のループ状部3Aにおける外側辺部31aの基端310aと右側のループ状部3Bにおける内側辺部32bの基端320bとが前記高周波発振部2に対して接続される一対の通電端として設定されている。そして、この場合、一対のループ状部3A,3Bにおける前記通電端となっていない側の辺部、つまり、左側のループ状部3Aにおける内側辺部32aの基端320aと右側のループ状部3Bにおける外側辺部31bの基端310bとが直接連成されている。なお、左側のループ状部3Aにおける内側辺部32aの基端320aと右側のループ状部3Bにおける外側辺部31bの基端310bとを一対の通電端として設定してもよい。その場合には、一対のループ状部3A,3Bにおける前記通電端となっていない側の辺部、つまり、左側のループ状部3Aにおける外側辺部31aの基端310aと右側のループ状部3Bにおける内側辺部32bの基端320bとが直接連成される。
【0026】
つまり、左側のループ状部3Aと右側のループ状部3Bの各内側辺部32a、32bどうしが連成されたコイルヘッドに対して、左側のループ状部3Aまたは右側のループ状部3Bの一方を180度転位させた位置関係に構成されている。
【0027】
前記左側のループ状部3Aにおいては、前記高周波発振部2からの矢印方向の通電によって、前記外側辺部31aと内側辺部32aとの間に、図3に示す方向の高周波磁束HAが発生し、他方、右側のループ状部3Bにおいては、前記外側辺部31bと内側辺部32bとの間に、図3に示すように、前記高周波磁束HAとは向きが逆となる高周波磁束HBが発生するようになっている。また、左側のループ状部3Aの外側辺部31aの外側、右側のループ状部3Bの外側辺部31bの外側にも相互に逆向きの磁束が発生し、左側のループ状部3Aの内側辺部32aの内側、右側のループ状部3Bの内側辺部32bの内側にも相互に逆向きの磁束が発生するようになっている。従って、左右のループ状部3Aと3Bで囲まれた中央部の空間を貫く磁束は、相互に打ち消されて、総和がゼロないしこれに近い値となっている。しかも、左右のループ状部3A、3Bに発生する磁束は相互に逆向きであるから、ヘッドコイル1には、遠方にまで及んでから折り返すような磁束が発生せず、もっぱら一方向に出てヘッドコイルのコイル線の周りをコイル線の外周に沿って単に戻っていくような局所的な磁束や、一方のループ状部3Aの経路と他方のループ状部3Bの経路とを周回するような経路で閉じる局所的な磁束が、支配的に生じていると考えられる。
【0028】
前記磁性収容体4は、例えば図4及び図5に示すように、本体40が、珪素鋼板のような磁性金属材により折り曲げ状の外周壁部41と内周壁部42を有する平面形状が円形の桶形に成形されており、前記外周壁部41と内周壁部42との空所に前記ヘッドコイル3が水平に収容されるようになっている。
【0029】
前記本体40における外周壁部41と内周壁部42との間に位置して、左側部位には、図4及び図5に示すように、前記左側のループ状部3Aにおける外側辺部31aと内側辺部32aとの間の空間に嵌り込む左側磁路として、円弧状の左側磁性突部4Aが設けられており、また、右側部位には、図4及び図5に示すように、前記右側のループ状部3Bにおける外側辺部31bと内側辺部32bとの間の空間に嵌り込む右側磁路として、円弧状の右側磁性突部4Bが設けられている。
【0030】
なお、前記外周壁部41には、前記ヘッドコイル3における通電端310a,320bの引き出しを妨げない開口部43が形成されている。
【0031】
次に、前記コアFに巻装されたコイル部Lの引き回し部Laにワニスを含浸させるに際し、その作業に先立って予備加熱のための高周波誘導加熱を実施する手順について説明する。
【0032】
まず、前記ヘッドコイル3を図5に示すように前記磁性収容体4に収容する。この収容状態では、前記左側の磁性突部4Aが前記左側のループ状部3Aにおける外側辺部31aと内側辺部32aとの間に嵌り込んだ状態となり、また、前記右側の磁性突部4Bが前記右側のループ状部3Bにおける外側辺部31bと内側辺部32bとの間に嵌り込んだ状態となる(図6参照)。
【0033】
このように磁性収容体4に収容されたヘッドコイル3を、図1,図2及び図6に示すように、磁性収容体4の外周壁部41と内周壁部42とがコイル部Lの引き回し部La側を向く配置で、かつ前記コアFの厚さ方向外方から引き回し部Laに対向する状態に配置してから、高周波発振部2を駆動する。
【0034】
高周波発振部2の駆動によって、前記通電端310a,320bからヘッドコイル3に、例えば図3及び図4に示す方向への通電が行われる。これにより、ヘッドコイル3における左側のループ状部3Aにおける外側辺部31aと内側辺部32aとの間に、図3に示すように、紙面表面側から裏面側に向かう高周波磁束HAが発生する一方、右側のループ状部3Bにおける外側辺部3baと内側辺部32bとの間に、図3に示すように、紙面裏面側から表面側に向かう高周波磁束HBが発生する。
【0035】
ところで、仮に、従来のように、一つのループ状ヘッドコイルのみを使用して高周波磁束を発生させた場合には、該ループ状ヘッドコイルには、遠方にまで及んでから折り返すような高周波磁束が発生し、それによる渦電流によってコアFの端部等に発熱が生じる。しかも、コアFの中空部を厚さ方向に貫通する磁束も生じて、この磁束を打ち消すための電流がコアFに流れてコアFはさらに発熱し、熱変形を起こしたり損傷したりするおそれがある。
【0036】
これに対し、この発明の実施形態では、前述したように、ヘッドコイル3における左側のループ状部3Aで発生する高周波磁束HAと右側のループ状部3Bで発生する高周波磁束HBとが互いに逆向きとなるから、コアFの中空部を通過する磁束は相互に打ち消されて総和がゼロないしそれに近い値となる。このため、中空部を通過する磁束を打ち消すためにコアFを閉回路とする環状電流が流れるのが抑制され、この電流分によるコアFの自己発熱がなくなる。
【0037】
しかも、ヘッドコイル3からは、遠方にまで及んでから折り返すような磁束が発生していないから、この磁束によってコアFに渦電流が発生するのを防止でき、コアFの発熱をさらに少なくすることが出来る。
【0038】
一方、ヘッドコイル3との距離が近いコイル部Lの引き回し部Laには、ヘッドコイル3のコイル線の外側を外周に沿って一方向に回って閉じるような局所的な高周波磁束や、一方のループ状部3Aの経路と他方のループ状部3Bの経路とを周回するような経路で閉じる局所的な高周波磁束が作用し、この高周波磁束によりコイル部Lの引き回し部Laの各素線に渦電流が流れ、引き回し部Laは加熱される。なお、コアFはヘッドコイル3との距離が、ヘッドコイル3とコイル部Lの引き回し部Laとの距離よりも遠いから、前記ヘッドコイル3の局所的な磁束はコアFにはさほど作用せず、コイル部Lのみが効果的に加熱される。
【0039】
ところで、前記左右一対のループ状部3A,3Bで構成されたヘッドコイル3を磁性収容体4に収容せずにそのまま使用することも可能である。しかし、この例では、磁性突部4A,4B、外周壁部41及び内周壁部42が設けられた磁性収容体4を用いるから、前記磁性突部4A,4B、外周壁部41及び内周壁部42がそれぞれ各ループ状部3A,3Bで発生する高周波磁束HA,HBをコイル部Lの引き回し部Laに対して集中的に作用させる磁路となり、該高周波磁束HA,HBの分散が抑制される。つまり、高周波磁束HA,HBの多くを有効にコイル部Lの引き回し部Laに集中させることができ、従って、コイル部Lに対する加熱効率を大幅に高めることができる。
【0040】
上記実施形態では、ヘッドコイル3によりステータMにおけるコイル部Lの引き回し部Laを、高周波誘導加熱する例で説明したが、この例に限られるものではなく、例えばトランス等、コアにコイル部が巻装された各種の装置におけるコイル部の加熱に適用できることは勿論である。
【0041】
また、円弧状の左側のループ状部3Aと右側のループ状部3Bの構成も、前記実施形態に限定されることはなく、例えば図7に示すように、左側のループ状部3Aの外側辺部31aと右側のループ状部3Bの内側辺部32bとを連成するとともに、左側のループ状部3Aの内側辺部32aと右側のループ状部3Bの外側辺部31bとを連成し、右側のループ状部3Bの外側辺部31bと内側側辺部32bをUターン部30bを介して連成し、左側のループ状部3Aの外側辺部31aと内側辺部32aのそれぞれの基端310a、310bを、高周波発振部2に対して接続される一対の通電端として設定しても良い。また、Uターン部30bを左側のループ状部3Aに、通電端を右側のループ状部3Bに設定しても良い。
【0042】
また、円弧状のループ状部は1対でなくても良く、環状のコアF及びコイル部Lの引き回し部Laに沿って、複数対形成しても良い。
【0043】
また、前記ヘッドコイル3を構成している左右一対のループ状部3A、3Bの平面形状についても、実施形態で示した略円弧状のものに限られるものではなく、適用する装置の形態に応じた変形例を採用可能である。例えば、図8に示すように、平面形状が円形であり、相互に発生する磁束の向きが逆のループ状部30A,30Bによりヘッドコイル3を構成しても良い。
【0044】
また、ヘッドコイル3を左右一対のみのループ状部3A、3Bで構成したものに限らず、適用する装置等に応じて変更可能である。例えば、図9に示すように、発生する高周波磁束の向きが交互に逆向きとなるように、複数対のループ状部30A,30B・・・・でヘッドコイル3を構成しても良い。
【0045】
また、上記の実施形態では、コイル部Lのワニス含浸前の予備加熱を行う際に、高周波誘導加熱加熱装置を用いる場合を示したが、加熱の目的は限定されることはなく、含浸されたワニスの乾燥硬化に用いても良く、他の目的の加熱に用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の一実施形態に係るコイル加熱装置を用いて、ステータのコイル部を加熱している状態を示す正面図である。
【図2】同じくコイル部の加熱状態を示す断面図である。
【図3】コイル加熱装置における高周波誘導加熱用ヘッドコイルを示す平面図である。
【図4】同じくヘッドコイル及びヘッドコイル用磁性収容体を示す斜視図である。
【図5】同じくヘッドコイルを磁性収容体に収容した状態を示す平面図である。
【図6】同じくヘッドコイルによる加熱時の動作説明図である。
【図7】同じくヘッドコイルの変形例を示す平面図である。
【図8】同じくヘッドコイルの別の変形例を示す平面図である。
【図9】同じくヘッドコイルのさらに別の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 高周波誘導加熱手段
3 ヘッドコイル
3A(30A),3B(30b) ループ状部
4A,4B 磁路(磁性突部)
30a,30b Uターン部
31a 左側のループ状部における外側辺部
31b 右側のループ状部における外側辺部
32a 左側のループ状部における内側辺部
32b 右側のループ状部における内側辺部
310a 左側のループ状部における外側辺部の基端(通電端)
320a 左側のループ状部における内側辺部の基端
310b 右側のループ状部における外側辺部の基端
320b 右側のループ状部における内側辺部の基端(通電端)
HA,HB 高周波磁束
F コア
L コイル部
M ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアに巻装されたコイル部を高周波誘導加熱手段のヘッドコイルで発生する高周波磁束を利用して加熱するコイル加熱装置において、
前記ヘッドコイルは、高周波磁束の発生方向が互いに逆方向となる少なくとも一対のループ状部から構成されていることを特徴とするコイル加熱装置。
【請求項2】
前記各ループ状部の周囲に、各ループ状部によりそれぞれ発生する高周波磁束を前記コイル部に集中的に作用させる磁路をもった磁性体が配置されている請求項1に記載のコイル加熱装置。
【請求項3】
前記ヘッドコイルは、環状コアの厚さ方向の少なくとも一端側に突出状に存在するコイル部に対して、該コアの厚さ方向外方から対向配置されるものとなされており、
各ループ状部は、前記環状のコア及びコイル部に対応して、円弧状に形成されている請求項1または2に記載のコイル加熱装置。
【請求項4】
前記ヘッドコイルは、一対のループ状部で構成されるとともに、一方のループ状部は、前記コアの一方の略半分に対応して、各基端側から各先端側まで平行状態で略円弧状に延びるとともに、互いに先端同志がUターン部を介して連成された外側及び内側辺部で構成される一方、ヘッドコイルの他方のループ状部は、前記コアの他方の略半分に対応して、各基端側から各先端側まで平行状態で略円弧状に延びるとともに、互いに先端同志がUターン部を介して連成された外側及び内側辺部で構成されており、
前記一方のループ状部における外側辺部の基端と他方のループ状部における内側辺部の基端とを一対として、あるいは一方のループ状部における内側辺部の基端と他方のループ状部における外側辺部の基端とを一対として通電端とし、
前記一対のループ状部における前記通電端となっていない側の辺部の基端同志を連成してある請求項3に記載のコイル加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−228464(P2008−228464A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63994(P2007−63994)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(505361587)株式会社オー・イー・ティー (9)
【Fターム(参考)】