説明

コイル及びコイルセット

【課題】コイルの成形工程の簡素化やコイルエンド部が占有する空間の低減化が可能なコイル、及び当該コイルを備えたコイルセットを提供する。
【解決手段】一本の線状導体により4ターン分が連続成形され、軸方向配列部40において軸方向に配列された4本の線状導体部のそれぞれを、軸方向における電機子コア側から順に、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、第四導体部44とした場合に、第一導体部41及び第二導体部42は、第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列され、第三導体部43及び第四導体部44は、第一スロット位置S1に対して周方向一方側に隣接した第三スロット位置S3、及び第二スロット位置S2に対して周方向他方側に隣接した第四スロット位置S4において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のコア基準面の軸方向及び径方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されてなる電機子コアに対して波巻又は同心巻により巻装されるコイル、及び当該コイルを備えたコイルセットに関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状のコア基準面の軸方向及び径方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されてなる電機子コアに対して、周方向に隣接する2つのスロットに同相のコイルを構成する線状導体が並行に配置されるように、コイルを波巻又は同心巻により巻装する構成が知られている。例えば、下記の特許文献1の図3には、同相のコイルを構成する2つの線状導体のそれぞれを波巻により電機子コアに巻装し、一方の線状導体と他方の線状導体とが周方向に隣接した2つのスロットにそれぞれ配置される構成が開示されている。コイルエンド部にて周方向位置が異なる2つのスロット間を周方向につないでコイル辺部同士を接続する導体部をコイル辺部間接続部とすると、この構成では、2つの異なるスロット組(以下、2つのスロット組のそれぞれを、「第一スロット組」及び「第二スロット組」という。)に対応する2つのコイル辺部間接続部が周方向に重複する位置関係で配置される。そして、特許文献1の図3に示されているように、これら2つのコイル辺部間接続部は、コイルエンド部において互いに交差しない構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−539747号公報(図2、図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の図2にも示されているように、電機子コアの各スロットの内部には、同相のコイルを構成する複数の線状導体が径方向に隣接して複数層配置される場合がある。このような複数層巻のコイルが採用される場合、上記特許文献1の図3に示されるような構成では、コイルエンド部において、第一スロット組に対応する複数のコイル辺部間接続部と、第二スロット組に対応する複数のコイル辺部間接続部とが、周方向に重複する位置関係で配置されることになる。なお、コイルエンド部は、コイルの生産工程の簡素化やコイルエンド部が占有する空間の低減化の観点からその形状を定めることが望ましいが、上記特許文献1には、2つの異なるスロット組の夫々に対応してコイル辺部間接続部が複数存在する場合に、コイルエンド部においてこれらのコイル辺部間接続部をどのように配置するかについての具体的な記載はない。
【0005】
そこで、周方向に隣接する複数のスロットに同相のコイルを構成する線状導体が並行に複数層配置される構成において、コイルの成形工程の簡素化やコイルエンド部が占有する空間の低減化が可能なコイル、及び当該コイルを備えたコイルセットの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、円筒状のコア基準面の軸方向及び径方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されてなる電機子コアに対して波巻又は同心巻により巻装されるコイルの特徴構成は、一本の線状導体により4ターン分が連続成形され、前記電機子コアに巻装された巻装状態において前記スロット内に配置されるコイル辺部と、周方向位置が異なる2つの前記コイル辺部の間を接続するように周方向に延びるとともに前記巻装状態において前記電機子コアの軸方向外側に突出して配置されるコイルエンド部と、を備え、軸方向一方側の前記コイルエンド部が、周方向に延びる4本の線状導体部を同じ径方向位置で軸方向に積み重ねるように配列してなる軸方向配列部を有し、前記軸方向配列部において軸方向に配列された4本の線状導体部のそれぞれを、軸方向における前記電機子コア側から順に、第一導体部、第二導体部、第三導体部、第四導体部とした場合に、前記第一導体部及び前記第二導体部は、一つのスロットの位置である第一スロット位置において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列され、前記第一スロット位置に対して周方向他方側に離間したスロットの位置である第二スロット位置において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列され、前記第三導体部及び前記第四導体部は、前記第一スロット位置に対して周方向一方側に隣接したスロットの位置である第三スロット位置において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列され、前記第二スロット位置に対して周方向他方側に隣接したスロットの位置である第四スロット位置において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列された点にある。
【0007】
上記の特徴構成によれば、軸方向一方側のコイルエンド部が有する軸方向配列部が、4本の線状導体部を同じ径方向位置で軸方向に積み重ねるように配列してなるため、軸方向一方側のコイルエンド部の軸方向幅は、線状導体の幅の4倍の値に概ね定まり、当該コイルエンド部の径方向幅は、線状導体の幅に概ね定まる。よって、コイルエンド部の径方向幅を最小限に抑えることができるとともに、コイルエンド部が占有する空間の低減を図ることができる。
また、この特徴構成によれば、第一導体部及び第二導体部のそれぞれの周方向両側のコイル辺部が配置される第一スロット位置及び第二スロット位置のスロット位置の組(以下、「第一スロット位置組」という。)の周方向両外側に、第三導体部及び第四導体部のそれぞれの周方向両側のコイル辺部が配置される第三スロット位置及び第四スロット位置のスロット位置の組(以下、「第二スロット位置組」という。)が位置する。すなわち、第一スロット位置組を構成する各スロット位置により周方向両外側の境界が定まる周方向範囲は、第二スロット位置組を構成する各スロット位置により周方向両外側の境界が定まる周方向範囲に含まれることになる。そして、軸方向配列部において、第一導体部及び第二導体部は、第三導体部及び第四導体部に対して軸方向における電機子コア側に配置される。よって、コイルエンド部において、第一導体部及び第二導体部の組と、第三導体部及び第四導体部の組とが交差しないように各線状導体部を配置することが可能となり、コイルエンド部の径方向幅を小さく抑えることが容易となる。
そして、一本の線状導体を用いて波巻又は同心巻により4ターン分を連続成形する際に、第一スロット位置組に対応する線状導体部の組(第一導体部及び第二導体部の組)と、第二スロット位置組に対応する線状導体部の組(第三導体部及び第四導体部の組)とのいずれか一方の組の2本の線状導体部を先に連続して成形した後に、他方の組の2本の線状導体部を連続して成形する構成とすることが容易となり、コイルの成形工程を簡素なものとすることができる。
【0008】
ここで、前記一本の線状導体の何れか一方の端部から他方の端部に向かって、前記第一導体部、前記第二導体部、前記第三導体部、前記第四導体部の順に形成されていると好適である。
【0009】
この構成によれば、一本の線状導体の一方の端部から他方の端部に向かって、又は、他方の端部から一方の端部に向かって、軸方向配列部を形成するための屈曲加工を順次行う構成とした場合に、軸方向配列部を構成する各線状導体部を軸方向に沿う順に順次成形することができる。よって、コイルを容易に形成することが可能となる。
【0010】
また、前記第一導体部及び前記第二導体部のそれぞれが、前記第一スロット位置及び前記第二スロット位置の各スロット位置に対応して、当該各スロット位置に配置された前記コイル辺部を構成する部分と、前記軸方向配列部を構成する部分との間を接続する接続部を備え、前記第三導体部及び前記第四導体部のそれぞれが、前記第三スロット位置及び前記第四スロット位置の各スロット位置に対応して、当該各スロット位置に配置された前記コイル辺部を構成する部分と、前記軸方向配列部を構成する部分との間を接続する接続部を備え、前記各スロット位置に対応する前記接続部に関し、当該各スロット位置において径方向に互いに隣接するように配列された2本の線状導体部の内の一方の線状導体部の前記接続部が周方向オフセット屈曲部を備えた周方向オフセット接続部とされ、他方の線状導体部の前記接続部が径方向オフセット屈曲部を備えた径方向オフセット接続部とされ、前記周方向オフセット屈曲部は、前記周方向オフセット接続部の中心線の位置を、前記コイル辺部側から前記軸方向配列部側に向かうに従って、径方向視にて前記径方向オフセット接続部の中心線と略一致する周方向位置から、当該径方向オフセット接続部の中心線に対して周方向にオフセットさせるための屈曲部であり、前記径方向オフセット屈曲部は、前記径方向オフセット接続部の中心線の位置を、前記軸方向配列部側から前記コイル辺部側に向かうに従って、周方向視にて前記周方向オフセット接続部の中心線と略一致する径方向位置から、当該周方向オフセット接続部の中心線に対して径方向にオフセットさせるための屈曲部であると好適である。
【0011】
なお、本願において「中心線」とは、線状導体の延在方向に直交する断面における中心点を延在方向に沿って連続的に結んだ線を意味する。
【0012】
この構成によれば、各スロット位置に対応する2つの接続部に関し、一方の接続部(周方向オフセット接続部)に周方向オフセット屈曲部を形成し、他方の接続部(径方向オフセット接続部)に径方向オフセット屈曲部を形成することで、各スロット位置において径方向に互いに隣接するように配列された2本の線状導体部を、軸方向配列部において同じ径方向位置で軸方向に積み重ねるように配列させることができる。すなわち、1つの接続部に形成する屈曲部の個数を抑制することができ、コイルエンド部が占有する空間の低減を図ることが容易となるとともに、コイルの成形工程を簡素なものとすることができる。
【0013】
また、前記各スロット位置に対応する2つの前記接続部に関し、一方の前記接続部が前記周方向オフセット接続部とされ、他方の前記接続部が前記径方向オフセット接続部とされている構成において、前記周方向オフセット接続部と前記径方向オフセット接続部とのいずれかの分類、及び各接続部が備える前記周方向オフセット屈曲部又は前記径方向オフセット屈曲部のオフセット方向に関し、前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部と前記第三導体部の前記第三スロット位置に対応する前記接続部とが一致するとともに、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部と前記第四導体部の前記第三スロット位置に対応する前記接続部とが一致し、前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部と前記第三導体部の前記第四スロット位置に対応する前記接続部とが一致するとともに、前記第二導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部と前記第四導体部の前記第四スロット位置に対応する前記接続部とが一致すると好適である。
【0014】
この構成によれば、第一導体部及び第二導体部の組と、第三導体部及び第四導体部の組との間で、接続部の形状が類似したものとなる。よって、各線状導体部を容易に配置することができ、コイルの成形工程を簡素なものとすることができる。
【0015】
また、前記第一導体部、前記第二導体部、前記第三導体部、及び前記第四導体部のそれぞれは、軸方向他方側の前記コイルエンド部において周方向に延びる部分を備え、当該周方向に延びる部分のそれぞれが、軸方向における前記電機子コア側から前記第三導体部、前記第四導体部、前記第一導体部、前記第二導体部の順となるように同じ径方向位置で軸方向に積み重なるように配列されて、軸方向他方側における軸方向配列部を構成していると好適である。
【0016】
この構成によれば、軸方向他方側においても、コイルエンド部の径方向幅を最小限に抑えることができるとともに、コイルエンド部が占有する空間の低減を図ることができる。
【0017】
本発明に係るコイルセットの第一の特徴構成は、上述したような構成のコイルを3つ備えると共に、それぞれ第一相コイル、第二相コイル、第三相コイルとし、前記第一相コイル、前記第二相コイル、及び前記第三相コイルは、前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、周方向他方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部及び前記第二スロット位置に対応する前記接続部の双方が、径方向一方側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた前記径方向オフセット接続部である点にある。
【0018】
上記の特徴構成によれば、3相のコイルの全てについて、接続部のオフセット方向に関する構成が同じであるため、コイルの生産性を向上することができる。また、周方向オフセット接続部と径方向オフセット接続部とのいずれかの分類に関し、第一導体部、第二導体部、第三導体部、及び第四導体部の全てについて、軸方向配列部に対して周方向一方側の該当するスロット位置に対応する接続部と、当該軸方向配列部に対して周方向他方側の該当するスロット位置に対応する接続部とが一致するため、コイルセットを構成する各コイルの成形工程を簡素なものとすることができる。
【0019】
本発明に係るコイルセットの第二の特徴構成は、上述したような構成のコイルを3つ備えると共に、それぞれ第一相コイル、第二相コイル、第三相コイルとし、前記第一相コイルは、前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、周方向他方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部及び前記第二スロット位置に対応する前記接続部の双方が、径方向内側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた前記径方向オフセット接続部であり、前記第二相コイルは、前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、径方向外側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた前記径方向オフセット接続部であり、前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、径方向内側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた前記径方向オフセット接続部であり、前記第三相コイルは、前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、周方向他方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部及び前記第二スロット位置に対応する前記接続部の双方が、径方向外側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた点にある。
【0020】
この構成によれば、周方向オフセット接続部が径方向に屈曲しない構成とした場合に、第一相コイルを、径方向に隣接する2つのコイル辺部の内の径方向内側のコイル辺部が軸方向配列部に対して径方向内側に突出したものとし、第三相コイルを、径方向に隣接する2つのコイル辺部の内の径方向外側のコイル辺部が軸方向配列部に対して径方向外側に突出したものとすることができる。また、第二相コイルを、軸方向配列部に対して周方向一方側では、径方向に隣接する2つのコイル辺部の内の径方向外側のコイル辺部が軸方向配列部に対して径方向外側に突出したものとするとともに、軸方向配列部に対して周方向他方側では、径方向に隣接する2つのコイル辺部の内の径方向内側のコイル辺部が軸方向配列部に対して径方向内側に突出したものとすることができる。よって、これら3相のコイルの内の2つの軸方向配列部が周方向に重複して配置される構成とした場合に、径方向内側に配置される軸方向配列部から径方向外側に突出するコイル辺部を、径方向外側に配置される軸方向配列部に対して径方向に重複させるとともに、径方向外側に配置される軸方向配列部から径方向内側に突出するコイル辺部を、径方向内側に配置される軸方向配列部に対して径方向に重複させる構成をとることが可能となる。よって、軸方向配列部が位置する径方向範囲と、コイル辺部が位置する径方向範囲とが径方向に重複する割合を高めることができ、コイルエンド部が占有する空間の径方向幅を小さく抑えることができる。
【0021】
上記第一の特徴構成又は上記第二の特徴構成を備えるコイルセットにおいて、前記第二相コイルは、前記軸方向配列部における周方向の所定位置に、周方向一方側を周方向他方側に対して径方向内側にオフセットするための径方向段差部を備え、前記第一相コイルの前記軸方向配列部における周方向一方側部分が、前記第三相コイルの前記軸方向配列部における周方向他方側部分の径方向外側に、当該周方向他方側部分に対して周方向に重複するように配置され、前記第二相コイルの前記軸方向配列部における前記径方向段差部に対して周方向一方側部分が、前記第三相コイルの前記軸方向配列部と同じ径方向位置に配置されるとともに、前記第一相コイルの前記軸方向配列部における周方向他方側部分の径方向内側に、当該周方向他方側部分に対して周方向に重複するように配置され、前記第二相コイルの前記軸方向配列部における前記径方向段差部に対して周方向他方側部分が、前記第一相コイルの前記軸方向配列部と同じ径方向位置に配置されるとともに、前記第三相コイルの前記軸方向配列部における周方向一方側部分の径方向外側に、当該周方向一方側部分に対して周方向に重複するように配置されていると好適である。
【0022】
なお、本願において、2つの部材の配置に関して、ある方向に「重複」とは、2つの部材のそれぞれが、当該方向の配置に関して同じ位置となる部分を少なくとも一部に有することを指す。
【0023】
この構成によれば、第一相コイル及び第三相コイルのそれぞれの軸方向配列部が位置する径方向範囲と、第二相コイルの軸方向配列部が位置する径方向範囲とが径方向に重複する割合を高めることができる。よって、コイルエンド部が占有する空間の径方向幅を小さく抑えることができる。
また、一般に3相のコイルは、コイル辺部の周方向位置を互いにずらして周方向に沿って順に配置されるため、このようなコイルエンド部の配置としても、コイル辺部を適切に電機子コアのスロットに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るステータを示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係るコイルセットを示す斜視図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るU相コイルを示す斜視図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係るV相コイルを示す斜視図である。
【図5】図3の一部拡大図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係るコイルセットを示す斜視図である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係るU相コイルを示す斜視図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係るV相コイルを示す斜視図である。
【図9】本発明の第二の実施形態に係るW相コイルを示す斜視図である。
【図10】図7の一部拡大図である。
【図11】図8の一部拡大図である。
【図12】図9の一部拡大図である。
【図13】本発明の第二の実施形態に係るコイルセットにおける軸方向配列部及びコイル辺部の周方向及び径方向の位置関係を説明するための説明図である。
【図14】本発明の別実施形態に係るステータを示す斜視図である。
【図15】本発明の別実施形態に係るU相コイルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.第一の実施形態
本発明に係るコイル及びコイルセットの第一の実施形態について、図面を参照して説明する。図1、図2に示すように、本実施形態においては、コイルセット3は、3相のコイル20(U相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20w)を備え、各コイル20は、波巻によりステータコア1に巻装される形状に形成されている。本実施形態に係るコイルセット3は、U相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wのそれぞれが、接続部50(図3から図5参照)のオフセット方向に関して同じ構成を有する点に特徴を有する。これにより、コイルの生産性の向上を図ることが可能となっている。以下、本実施形態に係るコイル20及びコイルセット3の構成について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、「軸方向」、「周方向」、「径方向」は、後述する円筒状のコア基準面の軸心を基準として定義している。また、コイルセット3や各相のコイル20についての各方向は、コイルセット3やコイル20がステータコア1に巻装された状態での方向として規定している。さらに、本明細書においては、U相コイル20u、V相コイル20v、W相コイル20wを特に区別する必要がない場合には、単にコイル20という。
また、本実施形態では、ステータコア1、U相コイル20u、V相コイル20v、W相コイル20wが、それぞれ、本発明における「電機子コア」、「第一相コイル」、「第二相コイル」、「第三相コイル」に相当する。
【0026】
1−1.ステータの全体構成
図1に示すように、ステータ100は、ステータコア1及びコイルセット3を備えている。ステータコア1は、磁性材料を用いて形成されており、コイルセット3を巻装可能とすべく、円筒状のコア基準面の軸方向L及び径方向Rに延びるスロット10が当該コア基準面の周方向Cに複数分散配置されてステータコア1が形成されている。ここで、「円筒状のコア基準面」とは、スロット10の配置や構成に関して基準となる仮想的な面である。本実施形態では、図1に示すように、ステータコア1に対して、互いに周方向Cに隣接するスロット10間に設けられたティース70の径方向内側R1の端面を含む仮想的な円筒状の面であるコア内周面を定義することができ、この円筒状のコア内周面を本発明における「円筒状のコア基準面」とすることができる。また、円筒状のコア内周面と同心であって、軸方向視における断面形状が当該コア内周面の軸方向視における断面形状と相似の関係にある円筒状の面(仮想面を含む)も、本発明における「円筒状のコア基準面」になり得る。例えば、本実施形態では、図1に示すようにステータコア1は円筒状に形成されているため、ステータコア1の外周面を「円筒状のコア基準面」とすることもできる。
【0027】
ステータコア1は、上記の円筒状のコア内周面に、周方向Cに分散配置された複数のスロット10を有する。複数のスロット10は、所定の周方向間隔で配置されており、軸方向L及び径方向Rに延びるように設けられている。本実施形態では、ステータコア1には、その全周で計48個のスロット10が設けられている。よって、本例では上記所定の周方向間隔は、円周を360度とした場合の7.5度に相当する周方向間隔となる。そして、各スロット10は、軸方向Lに直交する断面が互いに同じ断面形状(本例では矩形状断面)に形成されている。また、本例では、ステータコア1のスロット10はオープンスロットであり、径方向内側R1に開口する開口部の周方向幅が、コイル20が装着される部分の周方向幅と同等以上(本例では同等)であるスロットとされている。
【0028】
コイルセット3は、U相コイル20u、V相コイル20v、W相コイル20wを備えており、図1に示すように、各コイル20は波巻・分布巻の形態でステータコア1に巻装される。そして、軸方向Lの両側に、コイルエンド部31がステータコア1の軸方向外側に突出して形成される。図1に示すように、本実施形態では、軸方向一方側L1のコイルエンド部31が、リード線と接続される側のコイルエンド部31とされている。なお、図1では、5個のコイルセット3がステータコア1に巻装される場合を例として示している。詳細は後述するが、1つのコイルセット3は、各スロット位置に対応して、2つのコイル辺部30を径方向Rに互いに隣接するように備えている。よって、図1に示す例では、各スロット10の内部に、10本のコイル辺部30が径方向Rに積み重なるように、一列に整列配置されることになる。なお、当然ながら、ステーコア1に巻装するコイルセット3の個数は、適宜変更可能である。
【0029】
本実施形態では、各相のコイル20は、長手方向(通電方向に等しい)に直交する面における断面形状が矩形状の線状導体で構成されている。この線状導体を構成する材料は、例えば銅やアルミニウム等とすることができる。線状導体の表面は、軸方向一方側L1のコイルエンド部31におけるコイル接続部36(図2参照)のような接合が必要となる接続部位を除き、樹脂等からなる絶縁被膜により被覆されている。そして、各相のコイル20には、各相の接続端子T(U相接続端子Tu、V相接続端子Tv、W相接続端子Tw)から互いに所定の位相差(例えば、120度の位相差)を有する三相の励磁電流がそれぞれ供給され、ステータコア1から回転磁界が発生する。なお、コイル接続部36は、同相のコイル20同士を電気的に接続する際や、コイル20と接続端子T等とを電気的に接続する際の接続部として機能する。
【0030】
図示は省略するが、ステータコア1の径方向内側R1には、永久磁石を備えた界磁としてのロータが、ステータコア1の軸心が回転軸と一致するように、ステータコア1に対して相対回転可能に支持されて配置される。そして、ステータコア1から発生した回転磁界によりロータが回転する。このように、本実施形態におけるコイル20は、電機子としてのステータと界磁としてのロータとを備えたインナーロータ型の回転電機用のコイルとされている。なお、本願では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0031】
1−2.コイルの構成
図3は、ステータコア1に巻装される形状に形成されたU相コイル20uを示す斜視図である。図4は、ステータコア1に巻装される形状に形成されたV相コイル20vを示す斜視図である。なお、本実施形態では、W相コイル20wはU相コイル20uと同様の構成を有しているため、図示は省略している。これらの図からわかるように、U相コイル20u、V相コイル20v、W相コイル20wのそれぞれは、一本の線状導体により4ターン分が連続成形されるものであり、全体として円筒状の波形形状を有する。
【0032】
各相のコイル20は、ステータコア1に巻装された状態(図1参照。以下、単に「巻装状態」という。)においてスロット10内に配置されるコイル辺部30と、周方向C位置が異なる2つのコイル辺部30の間を接続するように周方向Cに延びるとともに、巻装状態においてステータコア1の軸方向L外側に突出して配置されるコイルエンド部31と、を備えている。コイル辺部30は、スロット10の内部の形状に対応して軸方向Lに沿って延びるように直線状に形成されている。
【0033】
本実施形態では、各相のコイル20は、軸方向Lに延びて複数のスロット10に順次配置される各コイル辺部30を、軸方向一方側L1のコイルエンド部31と軸方向他方側L2のコイルエンド部31とで交互に接続して、周方向Cに巡回する波形状に形成されている。具体的には、コイル辺部30のそれぞれが対応するスロット10内に配置された状態でステータコア1に対して波巻で巻装されるように、コイル20が形成されている。
【0034】
また、各相のコイル20は、同じスロット10内に配置される2本のコイル辺部30を一組として形成される。2本一組のコイル辺部30は、連続する一本の線状導体を、周方向Cに二巡回させて形成されている。また、同相のコイル20を構成する2本一組のコイル辺部30の二組が、互いに隣接するスロット10内に配置されるように周方向Cに並列して配置されている。すなわち、本例では、各相のコイル20は、巻装状態において、周方向Cに隣接する複数(本例では2つ)のスロット10に同相のコイル20を構成する線状導体が並行に複数層(本例では2層)配置されるような形状を有している。そして、当該二組のコイル辺部30は、コイルエンド部31の所定位置で連続するように接続されている。したがって、コイル20は、連続する一本の線状導体を、周方向Cを四巡回させて形成されている。
【0035】
軸方向一方側L1のコイルエンド部31は、図3、図4に示すように、周方向に延びる4本の線状導体部を同じ径方向R位置で軸方向Lに積み重ねるように配列してなる軸方向配列部40を有している。よって、軸方向一方側L1のコイルエンド部31の軸方向L幅は、軸方向配列部40における線状導体の軸方向L幅の4倍の値に概ね定まる。また、軸方向一方側L1のコイルエンド部31の径方向R幅は、軸方向配列部40における線状導体の径方向R幅に概ね定まる。よって、コイルエンド部31の径方向R幅を最小限に抑えることができるとともに、コイルエンド部31が占有する空間の低減が図られている。
【0036】
ここで、軸方向一方側L1の軸方向配列部40のそれぞれについて、軸方向配列部40において軸方向Lに配列された4本の線状導体部のそれぞれを、軸方向Lにおけるステータコア1側から順に、すなわち、軸方向一方側L1に向かって、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、第四導体部44とする。
【0037】
なお、図3、図4より明らかなように、V相コイル20vは、軸方向配列部40における周方向の所定位置(本例では、軸方向配列部40の周方向Cにおける中心位置近傍)に、軸方向配列部40の周方向一方側C1部分を当該軸方向配列部40の周方向他方側C2部分に対して径方向内側R1にオフセットするための径方向段差部34を備えているが、この点を除けば、V相コイル20vはU相コイル20uと同様の構成となっている。また、上記のように、W相コイル20wは、U相コイル20uと同様の構成を有している。よって、以下では、U相コイル20uについてのみ詳細に説明する。
【0038】
図5は、図3における軸方向一方側L1の軸方向配列部40の一つの近傍の部分拡大図である。図5に示すように、第一導体部41及び第二導体部42は、一つのスロット10の位置(周方向C位置)である第一スロット位置S1において軸方向Lに延びると共に径方向Rに互いに隣接するように配列され、第一スロット位置S1に対して周方向他方側C2に離間したスロット10の位置(周方向C位置)である第二スロット位置S2において軸方向Lに延びると共に径方向Rに互いに隣接するように配列されている。本例では、第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2の双方において、第一導体部41が第二導体部42に対して径方向外側R2に配置されている。すなわち、第一導体部41と第二導体部42との各スロット位置(第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2)における径方向Rの位置関係は同一となっている。
【0039】
また、第三導体部43及び第四導体部44は、第一スロット位置S1に対して周方向一方側C1に隣接したスロット10の位置(周方向C位置)である第三スロット位置S3において軸方向Lに延びると共に径方向Rに互いに隣接するように配列され、第二スロット位置S2に対して周方向他方側C2に隣接したスロットの位置(周方向C位置)である第四スロット位置S4において軸方向Lに延びると共に径方向Rに互いに隣接するように配列されている。本例では、第三スロット位置S3及び第四スロット位置S4の双方において、第三導体部43が第四導体部44に対して径方向外側R2に配置されている。すなわち、第三導体部43と第四導体部44との各スロット位置(第三スロット位置S3及び第四スロット位置S4)における径方向Rの位置関係は同一となっている。
【0040】
ここで、スロット位置に関して「周方向Cに隣接する」とは、周方向Cに隣り合う2つのスロット10同士の周方向Cにおける位置関係を意味する。よって、第一スロット位置S1と第三スロット位置S3との周方向C位置の差、及び、第二スロット位置S2と第四スロット位置S4との周方向C位置の差は、共に、周方向Cに隣り合う2つのスロット10の周方向C位置の差、すなわち、スロット10の配設ピッチと等しくなる。
【0041】
以上のように、第一導体部41及び第二導体部42のそれぞれの周方向C両側のコイル辺部30が配置される第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2のスロット位置の組(第一スロット位置組)の周方向C両外側に、第三導体部43及び第四導体部44のそれぞれの周方向C両側のコイル辺部30が配置される第三スロット位置S3及び第四スロット位置S4のスロット位置の組(第二スロット位置組)が位置する。すなわち、第一スロット位置組を構成する各スロット位置により周方向C両外側の境界が定まる周方向C範囲は、第二スロット位置組を構成する各スロット位置により周方向C両外側の境界が定まる周方向C範囲に含まれることになる。そして、軸方向配列部40において、第一導体部41及び第二導体部42は、第三導体部43及び第四導体部44に対して軸方向Lにおけるステータコア1側に配置される。すなわち、第一導体部41及び第二導体部42の周方向C及び軸方向Lの外側を囲むように、第三導体部43及び第四導体部44が配置される。よって、コイルエンド部31において、第一導体部41及び第二導体部42の組と、第三導体部43及び第四導体部44の組とが交差しないように各線状導体部を配置することが可能となり、コイルエンド部31の径方向R幅を小さく抑えることが容易となっている。
【0042】
従って、一本の線状導体を用いて波巻により4ターン分を連続成形する際に、第一スロット位置組に対応する線状導体部の組(第一導体部41及び第二導体部42の組)と、第二スロット位置組に対応する線状導体部の組(第三導体部43及び第四導体部44の組)とのいずれか一方の組の2本の線状導体部を先に連続して成形した後に、他方の組の2本の線状導体部を連続して成形する構成とすることが容易となり、コイルの成形工程を簡素なものとすることが可能となっている。
【0043】
本例では、図3に示すように、一本の線状導体の何れか一方の端部(図3に示す例ではコイル接続部36)から他方の端部(図3に示す例ではコイル接続部36)に向かって、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、第四導体部44の順に形成されている。よって、例えば、図3中における左側のコイル接続部36からコイル20uを順次成形していく場合には、第一導体部41が第一ターンとなり、第二導体部42が第二ターンとなり、第三導体部43が第三ターンとなり、第四導体部44が第四ターンとなる。また、図3中における右側のコイル接続部36からコイル20uを順次成形していく場合には、第四導体部44が第一ターンとなり、第三導体部43が第二ターンとなり、第二導体部42が第三ターンとなり、第一導体部44が第四ターンとなる。よって、一本の線状導体の一方の端部から他方の端部に向かって、又は他方の端部から一方の端部に向かってコイル20uを成形していく構成とすると、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、第四導体部44の順、又は、第四導体部44、第三導体部43、第二導体部42、第一導体部41の順に屈曲成形することができる。よって、軸方向一方側L1の軸方向配列部40について、当該軸方向配列部40を構成する4本の線状導体部を軸方向Lに沿う順に順次成形することができ、コイル20uを容易に成形することができる。
【0044】
ところで、第一導体部41及び第二導体部42のそれぞれは、第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2の各スロット位置に対応して、当該各スロット位置に配置されたコイル辺部30を構成する部分と、軸方向配列部40を構成する部分との間を接続する接続部50を備えている。また、第三導体部43及び第四導体部44のそれぞれは、第三スロット位置S3及び第四スロット位置S4の各スロット位置に対応して、当該各スロット位置に配置されたコイル辺部30を構成する部分と、軸方向配列部40を構成する部分との間を接続する接続部50を備えている。ここで、第一導体部41の軸方向配列部40に対して周方向一方側C1及び周方向他方側C2の接続部50を、それぞれ第一接続部51及び第二接続部52とする。また、第二導体部42の軸方向配列部40に対して周方向一方側C1及び周方向他方側C2の接続部50を、それぞれ第三接続部53及び第四接続部54とする。また、第三導体部43の軸方向配列部40に対して周方向一方側C1及び周方向他方側C2の接続部50を、それぞれ第五接続部55及び第六接続部56とする。そして、第四導体部44の軸方向配列部40に対して周方向一方側C1及び周方向他方側C2の接続部50を、それぞれ第七接続部57及び第八接続部58とする。
【0045】
本実施形態では、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、及び第四導体部44のそれぞれは、軸方向配列部40において周方向Cに沿って延びる周方向導体部35を備えている。図5に示すように、周方向導体部35は、軸方向Lの位置が一様になるように形成されている。そして、4つの周方向導体部35が同じ径方向R位置で軸方向Lに積み重ねられることで軸方向配列部40が形成されている。よって、本実施形態では、接続部50は、周方向導体部35とコイル辺部30とを接続する部分である。
【0046】
具体的には、接続部50は、軸方向Lに沿って延びるコイル辺部30と、周方向に延びる周方向導体部35とを接続すべく、コイル辺部30との境界側から周方向導体部35との境界側に向かって、コイル辺部30との境界部からコイル辺部30の延在方向(軸方向L)に沿って軸方向一方側L1に延出した後、周方向Cに屈曲する形状を有している。なお、本実施形態では、軸方向配列部40は、コイル辺部30の径方向R位置に対して径方向外側R2に位置するように構成されている。このような構成を実現すべく、図5に示すように、接続部50は、周方向導体部35との境界部をコイル辺部30との境界部に対して径方向外側R2にオフセットさせるため2つの屈曲部62、63を有している。なお、図5では、第七接続部57にのみ符号62、63を付しているが、接続部51〜58の全てに同様の屈曲部が形成されている。具体的には、接続部50であってこれら2つの屈曲部62、63の間に挟まれる部分の延在方向が軸方向Lに対して交差する方向となり、接続部50であってこれら2つの屈曲部62、63の間に挟まれない部分(コイル辺部30との境界側の部分及び周方向導体部35との境界側の部分)の延在方向が軸方向Lに対して平行な方向となるように、屈曲部62、63が形成されており、周方向C視における接続部50の形状は、全体としてクランク状となっている。なお、本明細書では、「クランク状」は、屈曲角が直角ではない緩やかな形状のクランク形状を含む概念として用いている。
【0047】
ところで、図5に示すように、各スロット位置において径方向Rに互いに隣接して配置されている2つのコイル辺部30に対応する2つの線状導体部は、軸方向配列部40において同じ径方向R位置で軸方向Lに積み重なるように配置されている。このような構成を実現するための接続部50の構成について、以下説明する。
【0048】
第一スロット位置S1、第二スロット位置S2、第三スロット位置S3、及び第四スロット位置S4の各スロット位置に対応する接続部50に関し、当該各スロット位置において径方向Rに互いに隣接するように配列された2本の線状導体部の内の一方の線状導体部の接続部50が周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32とされ、他方の線状導体部の接続部50が径方向オフセット屈曲部61を備えた径方向オフセット接続部33とされている。すなわち、第一接続部51及び第三接続部53の組、第二接続部52及び第四接続部54の組、第五接続部55及び第七接続部57の組、第六接続部56及び第八接続部58の組のそれぞれについて、一方の接続部50が周方向オフセット接続部32とされ、他方が径方向オフセット接続部33とされる。
【0049】
周方向オフセット屈曲部60は、図5に示すように、周方向オフセット接続部32の中心線の位置を、コイル辺部30側から軸方向配列部40側に向かうに従って、径方向R視にて径方向オフセット接続部33の中心線と略一致する周方向C位置から、当該径方向オフセット接続部33の中心線に対して周方向Cにオフセットさせるための屈曲部である。本例では、周方向オフセット屈曲部60は、径方向R視でクランク状となるように形成されている。また、周方向Cに沿った方向のオフセット幅は、軸方向配列部40側において、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とが、同一の径方向R位置において周方向Cに沿って並ぶことができるような値に設定される。具体的には、周方向Cに沿った方向のオフセット幅は、コイル辺部30における線状導体の周方向C幅と同一かそれ以上の値(例えば、当該周方向C幅の2倍以下の値)に設定される。
【0050】
また、径方向オフセット屈曲部61は、図5に示すように、径方向オフセット接続部33の中心線の位置を、軸方向配列部40側からコイル辺部30側に向かうに従って、周方向C視にて周方向オフセット接続部32の中心線と略一致する径方向R位置から、当該周方向オフセット接続部32の中心線に対して径方向Rにオフセットさせるための屈曲部である。本例では、径方向オフセット屈曲部61は、周方向C視でクランク状となるように形成されている。また、径方向Rに沿った方向のオフセット幅は、コイル辺部30側において、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とが、同一の周方向C位置において径方向Rに沿って並ぶことができるような値に設定される。具体的には、径方向Rに沿った方向のオフセット幅は、周方向オフセット接続部32及び径方向オフセット接続部33の双方が軸方向Lに沿って延びている部分(本例では、屈曲部63より軸方向他方側L2部分)における、周方向オフセット接続部32の中心線と径方向オフセット接続部33の中心線との径方向Rに沿った間隔が、コイル辺部30における線状導体の径方向R幅と同一かそれ以上の値(例えば、当該径方向R幅の2倍以下の値)となるように設定される。
【0051】
なお、中心線に関して「略一致」とは、製造誤差の範囲のずれを含む概念として用いている。また、径方向R視における中心線に関して「略一致」とは、比較の対象となる2つの中心線に対応する2つの線状導体部を1つのスロット10内に挿入可能な範囲のずれを含む概念として用いている。
【0052】
なお、上記のように、本実施形態では、接続部50は、周方向導体部35との境界部をコイル辺部30との境界部に対して径方向外側R2にオフセットさせるため2つの屈曲部62、63を有している。そして、上記の周方向オフセット屈曲部60や径方向オフセット屈曲部61は、接続部50における当該2つの屈曲部62、63に挟まれた部分に形成されている。なお、本例では、図5に示すように、屈曲部62は径方向オフセット屈曲部61と協働して、上記の径方向Rにおけるオフセットを実現している。
【0053】
このように、各スロット位置に対応する2つの接続部50に関し、一方の接続部である周方向オフセット接続部32に周方向オフセット屈曲部60を形成し、他方の接続部である径方向オフセット接続部33に径方向オフセット屈曲部61を形成することで、各スロット位置において径方向Rに互いに隣接するように配列された2本の線状導体部を、軸方向配列部40において同じ径方向R位置で軸方向Lに積み重ねるように配列させることが可能となっている。このような構成を備えることで、1つの接続部50に形成する屈曲部の個数を抑制することができ、コイルエンド部31が占有する空間の低減を図ることが容易となるとともに、コイル20の成形工程を簡素なものとすることが可能となっている。
【0054】
補足説明すると、1つの接続部50に周方向オフセット屈曲部60と径方向オフセット屈曲部61との双方を設ける構成とすると、一般に、これらの屈曲部を設けるために必要となる線状導体の延在方向に沿った長さは、何れか一方の屈曲部のみを形成する場合に比べ大きくなる。そして、各スロット位置に対応する2つの接続部50の一方が長くなると、他方も長くする必要がある。この点に関し、本願発明によれば、全ての接続部50に対して、周方向オフセット屈曲部60及び径方向オフセット屈曲部61の何れか1つのみを形成すれば良く、各接続部50の延在方向に沿った長さを短く抑えることができる。これにより、コイルエンド部31が占有するスペースの低減を図ることが可能となっている。
【0055】
ところで、本実施形態では、図3及び図4から明らかなように、U相コイル20uとV相コイル20vとW相コイル20wとは、接続部50のオフセット方向に関する構成が同じとなっている。これにより、コイル20の生産性を向上することが可能となっている。具体的には、U相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wの全てについて、以下のような構成となっている。すなわち、第一導体部41の第一スロット位置S1に対応する第一接続部51は、周方向他方側C2にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32である。また、第一導体部41の第二スロット位置S2に対応する第二接続部52は、周方向一方側C1にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32である。また、第二導体部42の第一スロット位置S1に対応する第三接続部53及び第二スロット位置S2に対応する第四接続部54の双方は、径方向内側R1にオフセットする径方向オフセット屈曲部61を備えた径方向オフセット接続部33である。また、第三導体部43の第三スロット位置S3に対応する第五接続部55は、周方向他方側C2にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32である。また、第三導体部43の第四スロット位置S4に対応する第六接続部56は、周方向一方側C1にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32である。また、第四導体部44の第三スロット位置S3に対応する第七接続部57及び第四スロット位置S4に対応する第八接続部58の双方は、径方向内側R1にオフセットする径方向オフセット屈曲部61を備えた径方向オフセット接続部33である。
【0056】
また、本実施形態では、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とのいずれかの分類、及び各接続部50が備える周方向オフセット屈曲部60又は径方向オフセット屈曲部61のオフセット方向に関して、以下のような条件が満たされている。すなわち、第一導体部41の第一スロット位置S1に対応する第一接続部51と第三導体部43の第三スロット位置S3に対応する第五接続部55とが一致するとともに、第二導体部42の第一スロット位置S1に対応する第三接続部53と第四導体部44の第三スロット位置S3に対応する第七接続部57とが一致する。また、第一導体部41の第二スロット位置S2に対応する第二接続部52と第三導体部43の第四スロット位置S4に対応する第六接続部56とが一致するとともに、第二導体部42の第二スロット位置S2に対応する第四接続部54と第四導体部44の第四スロット位置S4に対応する第八接続部58とが一致する。このように、第一導体部41及び第二導体部42の組と、第三導体部43及び第四導体部44の組との間で、接続部50の形状が類似したものとなる。よって、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、及び第四導体部44の各線状導体部を容易に配置することができ、コイル20の成形工程を簡素なものとすることが可能となっている。
【0057】
さらに、本実施形態では、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とのいずれかの分類に関し、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、及び第四導体部44の全てについて、軸方向配列部40に対して周方向一方側C1の該当するスロット位置に対応する接続部50と、当該軸方向配列部40に対して周方向他方側C2の該当するスロット位置に対応する接続部50とが一致するため、コイルセット3を構成する各コイル20の成形工程を簡素なものとすることが可能となっている。
【0058】
また、本実施形態では、図3及び図4に示すように、軸方向他方側L2のコイルエンド部31も、軸方向配列部を有している。具体的には、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、及び第四導体部44のそれぞれは、軸方向他方側L2のコイルエンド部31において周方向Cに延びる部分を備え、当該周方向に延びる部分のそれぞれが、軸方向Lにおけるステータコア1側から第三導体部43、第四導体部44、第一導体部41、第二導体部42の順となるように同じ径方向R位置で軸方向Lに積み重なるように配列されて、軸方向他方側L2における軸方向配列部を構成している。これにより、本実施形態では、軸方向他方側L2においても、コイルエンド部31の径方向R幅を最小限に抑えることができるとともに、コイルエンド部31が占有する空間の低減を図ることが可能となっている。
【0059】
さらに、図3〜図5から明らかなように、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、及び第四導体部44の全てについて、軸方向一方側L1の接続部50と、軸方向他方側L2の接続部とが、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とのいずれかの分類に関して一致する。そのため、一本の線状導体から4ターン分を連続成形する際に、1ターン分のそれぞれを同様の屈曲工程で成形することができ、各コイル20の成形工程を簡素なものとすることができる。
【0060】
1−3.コイルセットの構成
次に、上記のようなU相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wを備えるコイルセット3の構成を、特に、U相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wの配置構成を中心に説明する。
【0061】
詳細な説明は省略するが、本実施形態に係るステータコア1には、互いに隣接する2つのU相用のスロット10と、互いに隣接する2つのV相用のスロット10と、互いに隣接する2つのW相用のスロット10とが、順次繰り返して形成されている。このようなスロット10の配置に合わせて、コイルセット3は、U相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wを、各相のコイル20におけるコイル辺部30が、周方向Cに沿って二スロット分ずつ順次ずれて配置されるように備えている。
【0062】
図2〜図4に示すように、U相コイル20uの軸方向配列部40における周方向一方側C1部分は、W相コイル20wの軸方向配列部40における周方向他方側C2部分の径方向外側R2に、当該周方向他方側C2部分に対して周方向Cに重複するように配置されている。なお、U相コイル20uの軸方向配列部40における周方向一方側C1部分と、W相コイル20wの軸方向配列部40における周方向他方側C2部分との径方向Rに沿った離間距離は、U相コイル20uとW相コイル20wとの間に必要な絶縁距離に応じて定められる。また、相間絶縁物が装着される場合には、当該相間絶縁物の径方向R幅や、当該相間絶縁物の挿入作業に必要なスペース等にも応じて定める構成としても良い。
【0063】
また、V相コイル20vの軸方向配列部40における径方向段差部34に対して周方向一方側C1部分は、W相コイル20wの軸方向配列部40と同じ径方向R位置に配置されるとともに、U相コイル20uの軸方向配列部40における周方向他方側C2部分の径方向内側R2に、当該周方向他方側C2部分に対して周方向Cに重複するように配置されている。
【0064】
そして、V相コイル20vの軸方向配列部40における径方向段差部34に対して周方向他方側C2部分は、U相コイル20uの軸方向配列部40と同じ径方向R位置に配置されるとともに、W相コイル20wの軸方向配列部40における周方向一方側C1部分の径方向外側R2に、当該周方向一方側C1部分に対して周方向Cに重複するように配置されている。
【0065】
よって、本実施形態では、V相コイル20vが備える上述した径方向段差部34の径方向Rのオフセット幅は、軸方向配列部40における線状導体の径方向R幅と、U相コイル20uの軸方向配列部40における周方向一方側C1部分とW相コイル20wの軸方向配列部40における周方向他方側C2部分との径方向Rに沿った離間距離との和に設定されている。
【0066】
そして、このように各相のコイル20を配置することで、U相コイル20u及びW相コイル20wのそれぞれの軸方向配列部40が位置する径方向R範囲と、V相コイル20vの軸方向配列部40が位置する径方向R範囲とが径方向に重複する割合が高まり、各相の軸方向配列部40が位置する径方向R範囲を全て含む最小の径方向R範囲は、V相コイル20vの軸方向配列部40が位置する径方向R範囲と概ね一致する。これにより、コイルエンド部31が占有する空間の径方向R幅を小さく抑えることが可能となっている。
【0067】
2.第二の実施形態
次に、本発明に係るコイル及びコイルセットの第二の実施形態について説明する。図6に示すように、本実施形態に係るコイルセット3は、上記第一の実施形態と同様、3相のコイル20(U相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20w)を備え、各コイル20は、波巻によりステータコア1に巻装される形状に形成されている。しかし、本実施形態に係るコイルセット3は、U相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wのそれぞれが、接続部50のオフセット方向に関して異なる構成を有するという点で、上記第一の実施形態とは大きく異なる。このような構成を備えることで、コイルエンド部31が占有する空間の径方向R幅を小さく抑えることが可能となっている。以下、本実施形態に係るコイル20及びコイルセット3の構成について、上記第一の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0068】
2−1.コイルの構成
図6に示すように、本実施形態では、軸方向一方側L1のコイルエンド部31は、上記第一の実施形態と同様の構成となっているが、軸方向他方側L2のコイルエンド部31の構成が大きく異なっている。すなわち、本実施形態では、軸方向他方側L2のコイルエンド部31は、径方向内側R1へ屈曲形成された屈曲コイルエンド部37とされている。具体的には、屈曲コイルエンド部37は、屈曲部において線状導体部をコイル辺部30に対して略直角に径方向内側Rへ屈曲することで形成されている。
【0069】
図7は、ステータコア1に巻装される形状に形成されたU相コイル20uを示す斜視図である。図8は、ステータコア1に巻装される形状に形成されたV相コイル20vを示す斜視図である。図9は、ステータコア1に巻装される形状に形成されたW相コイル20wを示す斜視図である。これらの図に示すように、本実施形態では、U相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wは、それぞれ異なる形状とされている。そして、これらの各コイル20は、上記第一の実施形態と同様、一本の線状導体により4ターン分が連続成形されるものであり、全体として円筒状の波形形状を有する。
【0070】
また、図8に示すように、本実施形態に係るV相コイル20vは、上記第一の実施形態と同様、軸方向配列部40における周方向の所定位置(本例では、軸方向配列部40の周方向Cにおける中心位置近傍)に、軸方向配列部40の周方向一方側C1部分を当該軸方向配列部40の周方向他方側C2部分に対して径方向内側R1にオフセットするための径方向段差部34を備えている。
【0071】
次に、図10から図12を参照して、本実施形態に係る各相のコイル20の接続部50の構成について説明する。図10は、図7における軸方向一方側L1の軸方向配列部40の一つの近傍の部分拡大図である。図11は、図8における軸方向一方側L1の軸方向配列部40の一つの近傍の部分拡大図である。図12は、図9における軸方向一方側L1の軸方向配列部40の一つの近傍の部分拡大図である。これらの図から明らかなように、本実施形態に係るコイル20においては、上記第一の実施形態とは異なり、接続部50は、周方向導体部35との境界部をコイル辺部30との境界部に対して径方向外側R2にオフセットさせるため2つの屈曲部62、63を備えておらず、周方向オフセット接続部32は径方向Rに屈曲しない構成とされている。
【0072】
本実施形態においても上記第一の実施形態と同様、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とのいずれかの分類、及び各接続部50が備える周方向オフセット屈曲部60又は径方向オフセット屈曲部61のオフセット方向に関して、以下のような条件が満たされている。すなわち、第一導体部41の第一スロット位置S1に対応する第一接続部51と第三導体部43の第三スロット位置S3に対応する第五接続部55とが一致するとともに、第二導体部42の第一スロット位置S1に対応する第三接続部53と第四導体部44の第三スロット位置S3に対応する第七接続部57とが一致する。また、第一導体部41の第二スロット位置S2に対応する第二接続部52と第三導体部43の第四スロット位置S4に対応する第六接続部56とが一致するとともに、第二導体部42の第二スロット位置S2に対応する第四接続部54と第四導体部44の第四スロット位置S4に対応する第八接続部58とが一致する。よって、以下の説明では、第一接続部51、第二接続部52、第三接続部53、及び第四接続部54についてのみ詳細に説明する。
【0073】
図10に示すように、U相コイル20uは、第一導体部41の第一スロット位置S1に対応する第一接続部51が、周方向他方側C2にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32であり、第一導体部41の第二スロット位置S2に対応する第二接続部52が、周方向一方側C1にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32である。また、第二導体部42の第一スロット位置S1に対応する第三接続部53及び第二スロット位置S2に対応する第四接続部54の双方が、径方向内側R1にオフセットする径方向オフセット屈曲部61を備えた径方向オフセット接続部33である。
【0074】
図11に示すように、V相コイル20vは、第一導体部41の第一スロット位置S1に対応する第一接続部51が、径方向外側R2にオフセットする径方向オフセット屈曲部61を備えた径方向オフセット接続部33であり、第一導体部41の第二スロット位置S2に対応する第二接続部52が、周方向一方側C1にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32である。また、第二導体部42の第一スロット位置S1に対応する第三接続部53が、周方向一方側C1にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32であり、第二導体部42の第二スロット位置S2に対応する第四接続部54が、径方向内側R1にオフセットする径方向オフセット屈曲部61を備えた径方向オフセット接続部33である。
【0075】
このように、V相コイル20vは、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とのいずれかの分類、及び各接続部50が備える周方向オフセット屈曲部60又は径方向オフセット屈曲部61のオフセット方向に関して、第二接続部52、第四接続部54、第六接続部56、及び第八接続部58の構成が、U相コイル20uと一致する。一方、周方向一方側C1の接続部50の構成は、U相コイル20uや後述するW相コイル20wと以下の点で大きく異なっている。すなわち、周方向一方側C1における周方向オフセット接続部32(第三接続部53)は、周方向Cの外側(この接続部に対しては周方向一方側C1)にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えている。これは、第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2の双方において第一導体部41が第二導体部42に対して径方向外側R2に配置されるという条件の下、周方向一方側C1では径方向Rに隣接して配置されるコイル辺部30の内の径方向外側R2のコイル辺部30を、軸方向配列部40に対して径方向外側R2に突出させるとともに、周方向他方側C2では径方向Rに隣接して配置されるコイル辺部30の内の径方向内側R1のコイル辺部30を、軸方向配列部40に対して径方向内側R1に突出させるというV相コイル20v特有の構成を実現するためである。第七接続部57についても同様である。
【0076】
図12に示すように、W相コイル20wは、第一導体部41の第一スロット位置S1に対応する第一接続部51が、周方向他方側C2にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32であり、第一導体部41の第二スロット位置S2に対応する第二接続部52が、周方向一方側C1にオフセットする周方向オフセット屈曲部60を備えた周方向オフセット接続部32である。また、第二導体部42の第一スロット位置S1に対応する第三接続部53及び第二スロット位置S2に対応する第四接続部54の双方が、径方向外側R2にオフセットする径方向オフセット屈曲部61を備えた径方向オフセット接続部33である。
【0077】
このように、W相コイル20wは、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とのいずれかの分類、及び各接続部50が備える周方向オフセット屈曲部60又は径方向オフセット屈曲部61のオフセット方向に関して、第一接続部51、第二接続部52、第五接続部55、及び第六接続部56の構成が、U相コイル20uと一致する。また、W相コイル20wは、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とのいずれかの分類に関して、第三接続部53、第四接続部54、第七接続部57、及び第八接続部58の構成が、U相コイル20uと一致するが、オフセット方向が逆の方向となっている。
【0078】
なお、図10から図12より明らかなように、各相のコイル20のそれぞれにおいて、第一導体部41と第二導体部42との各スロット位置(第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2)における径方向Rの位置関係は同一となっている。例えば、図10及び図11に示すように、U相コイル20u及びV相コイル20vについては、第一導体部41は、第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2の双方において、第二導体部42に対して径方向外側R2に配置されている。また、図12に示すように、W相コイル20wについては、第一導体部41は、第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2の双方において、第二導体部42に対して径方向内側R1に配置されている。すなわち、コイル20によって各スロット位置における第一導体部41と第二導体部42との径方向Rの位置関係は異なるものとなり得るが、本例では、同じコイル20であれば、第一導体部41と第二導体部42との各スロット位置(第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2)における径方向Rの位置関係は同一となるように構成されている。第三導体部43及び第四導体部44についても同様である。
【0079】
2−2.コイルセットの構成
本実施形態に係るコイルセット3においては、U相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wの各コイル20が備える軸方向配列部40同士の周方向C及び径方向Rにおける位置関係は、上記第一の実施形態と同様である。しかし、本実施形態では、各相のコイル20が互いに異なる構成を有するため、軸方向配列部40が位置する径方向R範囲と、コイル辺部30が位置する径方向R範囲とが径方向Rに重複する割合を高めることができ、コイルエンド部31が占有する空間の径方向R幅を小さく抑えることが可能となっている。以下、この点について説明する。
【0080】
図13は、本実施形態に係るコイルセット3における各相の軸方向配列部40及びコイル辺部30の周方向C及び径方向Rの位置関係を説明するための説明図である。なお、図13においては、周方向Cに沿って順次繰り返し配置されるU相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wの内、それぞれ1つの軸方向配列部40のみを示している。また、各スロット位置において径方向Rに隣接して配置される2つのコイル辺部30は、断面に斜線が引かれているものが同相の軸方向配列部40から径方向Rに突出していない方のコイル辺部30を表し、断面に斜線が引かれていないものが同相の軸方向配列部40から径方向Rに突出している方のコイル辺部30を表している。なお、図13においては、同相の軸方向配列部40から径方向Rに突出するコイル辺部30にのみ符号を付している。
【0081】
U相コイル20uにおいては、径方向Rに隣接する2つのコイル辺部30の内の径方向内側R1のコイル辺部30が、当該U相コイル20uの軸方向配列部40に対して径方向内側R1に突出する。そして、径方向内側R1に突出するU相コイル20uのコイル辺部30は、V相コイル20vの軸方向配列部40における径方向段差部34に対して周方向一方側C1部分、及びW相コイル20wの軸方向配列部40の双方に対して径方向Rに重複するように配置されている。図に示す例では、径方向内側R1に突出するU相コイル20uのコイル辺部30と、V相コイル20vの軸方向配列部40における径方向段差部34に対して周方向一方側C1部分と、W相コイル20wの軸方向配列部40とが、径方向Rの中心位置が互いにほぼ等しくなるように配置されている。
【0082】
また、W相コイル20wにおいては、径方向Rに隣接する2つのコイル辺部30の内の径方向外側R2のコイル辺部30が、当該W相コイル20wの軸方向配列部40に対して径方向外側R2に突出する。そして、径方向外側R2に突出するW相コイル20wのコイル辺部30は、V相コイル20vの軸方向配列部40における径方向段差部34に対して周方向他方側C2部分、及びU相コイル20uの軸方向配列部40の双方に対して径方向Rに重複するように配置されている。図に示す例では、径方向外側R2に突出するW相コイル20wのコイル辺部30と、V相コイル20vの軸方向配列部40における径方向段差部34に対して周方向他方側C2部分と、U相コイル20uの軸方向配列部40とが、径方向Rの中心位置が互いにほぼ等しくなるように配置されている。
【0083】
さらに、V相コイル20vにおいては、径方向段差部34に対して周方向一方側C1では、径方向Rに隣接する2つのコイル辺部30の内の径方向外側R2のコイル辺部30が、当該V相コイル20vの周方向一方側C1の軸方向配列部40に対して径方向外側R2に突出する。そして、径方向外側R2に突出するV相コイル20vのコイル辺部30は、U相コイル20uの軸方向配列部40に対して径方向Rに重複するように配置されている。図に示す例では、径方向外側R2に突出するV相コイル20vのコイル辺部30と、U相コイル20uの軸方向配列部40とが、径方向Rの中心位置が互いにほぼ等しくなるように配置されている。
【0084】
また、V相コイル20vにおいては、径方向段差部34に対して周方向他方側C2では、径方向Rに隣接する2つのコイル辺部30の内の径方向内側R1のコイル辺部30が、当該V相コイル20vの周方向他方側C2の軸方向配列部40に対して径方向内側R1に突出する。そして、径方向内側R1に突出するV相コイル20vのコイル辺部30は、W相コイル20wの軸方向配列部40に対して径方向Rに重複するように配置されている。図に示す例では、径方向内側R1に突出するV相コイル20vのコイル辺部30と、W相コイル20wの軸方向配列部40とが、径方向Rの中心位置が互いにほぼ等しくなるように配置されている。
【0085】
このように、本実施形態では、各相のコイル20が備える径方向オフセット屈曲部61は、オフセット方向が径方向内側R1のものと、オフセット方向が径方向外側R2のものとの双方があるため、図13に示すように、軸方向配列部40が位置する径方向R範囲と、コイル辺部30が位置する径方向R範囲とが径方向Rに重複する割合が高まるように各コイル20を配置することが可能となっている。具体的には、図13に示すように、各相のコイルエンド部31とコイル辺部30が位置する径方向R範囲を全て含む最小の径方向R範囲が、軸方向配列部40やコイル辺部30における線状導体の径方向R幅の2倍程度の値となるように、各コイル20を配置することができる。これにより、コイルエンド部31が占有する空間の径方向R幅を小さく抑えることが可能となっている。
【0086】
3.その他の実施形態
(1)上記の第一及び第二の実施形態では、コイル20が、ステータコア1に波巻により巻装される形状に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、図14に一例を示すように、コイル20が、ステータコア1に対して同心巻により巻装される形状に形成されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。図15は、このような構成における、ステータコア1に巻装される形状に形成されたU相コイル20uを示す斜視図である。この図から明らかなように、U相コイル20uは、一本の線状導体により4ターン分が連続成形されるものである。なお、V相コイル20v及びW相コイル20wは、U相コイル20uと同様の構成であるため、図示は省略する。
【0087】
また、図15に示す例では、軸方向L両側のコイルエンド部31において、周方向に延びる線状導体部が同じ径方向R位置で軸方向Lに積み重なるように配列されているが、軸方向一方側L1にはコイル接続部36が備えられており、軸方向Lに積み重なる線状導体部の数が、周方向C両側で異なっている。よって、図15に示す例では、軸方向他方側L2のコイルエンド部31が、上記第一及び第二の実施形態における軸方向一方側L1の軸方向配列部40に相当する軸方向配列部40を備えているといえる。そのため、図15に示すように、本例では、軸方向他方側L2の軸方向配列部40において軸方向Lに配列された4本の線状導体部が、軸方向Lにおけるステータコア1側から順に、すなわち、軸方向他方側L2に向かって、第一導体部41、第二導体部42、第三導体部43、第四導体部44となる。
【0088】
(2)上記第一及び第二の実施形態では、軸方向配列部40において軸方向Lに配列される周方向導体部35が、軸方向Lの位置が一様になるように形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、周方向導体部35が、その周方向C中心の近傍で軸方向Lの高さが高くなるようなアーチ状(円弧状、弓状)に形成されている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0089】
(3)上記第一の実施形態では、第三接続部53、第四接続部54、第七接続部57、及び第八接続部58が、径方向内側R1にオフセットする径方向オフセット屈曲部61を備えた径方向オフセット接続部33である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、上記第二の実施形態のW相コイル20w(図12参照)のように、第三接続部53、第四接続部54、第七接続部57、及び第八接続部58が、径方向外側R2にオフセットする径方向オフセット屈曲部61を備えた径方向オフセット接続部33である構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、上記第一の実施形態におけるU相コイル20u、V相コイル20v、W相コイル20wの全てが、上記第二の実施形態におけるV相コイル20vと同様の構成を有するコイル20である構成としても好適である。
【0090】
(4)上記第一の実施形態では、軸方向他方側L2のコイルエンド部31も軸方向配列部を有している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、上記第一の実施形態において軸方向他方側L2のコイルエンド部31が軸方向配列部を有していない構成としても好適である。また、上記第二の実施形態では、軸方向他方側L2のコイルエンド部31が屈曲コイルエンド部37である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、上記第二の実施形態において軸方向他方側L2のコイルエンド部31も軸方向配列部を有する構成としても好適である。
【0091】
(5)上記第一及び第二の実施形態では、各スロット位置に対応する2つの接続部50に関し、一方の接続部(周方向オフセット接続部32)に周方向オフセット屈曲部60が形成され、他方の接続部(径方向オフセット接続部33)に径方向オフセット屈曲部61が形成される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、少なくとも何れかのスロット位置において、当該スロット位置に対応する2つの接続部50の内の1つの接続部に、周方向オフセット屈曲部60と径方向オフセット屈曲部61の双方を形成する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
【0092】
(6)上記第一及び第二の実施形態では、周方向オフセット接続部32と径方向オフセット接続部33とのいずれかの分類、及び各接続部50が備える周方向オフセット屈曲部60又は径方向オフセット屈曲部61のオフセット方向に関し、第一接続部51と第五接続部55とが一致し、第二接続部52と第六接続部56とが一致し、第三接続部53と第七接続部57とが一致し、第四接続部54と第八接続部58とが一致する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、上記の少なくとも何れかが一致しない構成とすることもできる。
【0093】
(7)上記第一の実施形態では、周方向オフセット屈曲部60や径方向オフセット屈曲部61が、接続部50における2つの屈曲部62、63に挟まれた部分に形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではい。すなわち、周方向オフセット屈曲部60や径方向オフセット屈曲部61は、屈曲部62、63の形成位置とは無関係に、接続部50の任意の位置に形成することができる。また、上記第二の実施形態では、接続部50が2つの屈曲部62、63を備えない場合を例として説明したが、上記第二の実施形態において、接続部50が2つの屈曲部62、63を備える構成とすることもできる。
【0094】
(8)上記第一及び第二の実施形態における各相の軸方向配列部40同士の周方向Cや径方向Rの位置関係はあくまで一例である。従って、例えば、V相コイル20vの軸方向配列部40における径方向段差部34に対して周方向一方側C1部分が、W相コイル20wの軸方向配列部40と同じ径方向R位置ではなく、当該径方向R位置より径方向内側R1や径方向外側R2に配置される構成としても好適である。また、V相コイル20vの軸方向配列部40における径方向段差部34に対して周方向他方側C2部分が、U相コイル20uの軸方向配列部40と同じ径方向R位置ではなく、当該径方向R位置より径方向内側R1や径方向外側R2に配置される構成としても好適である。
【0095】
(9)上記第一及び第二の実施形態では、各相のコイル20のそれぞれについて、第一導体部41と第二導体部42との各スロット位置(第一スロット位置S1及び第二スロット位置S2)における径方向Rの位置関係が同一である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。従って、第一スロット位置S1における第一導体部41と第二導体部42との径方向Rの位置関係と、第二スロット位置S2における第一導体部41と第二導体部42との径方向Rの位置関係とが逆の関係になっている構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。第三導体部43及び第四導体部44についても同様である。
【0096】
(10)上記第一及び第二の実施形態では、コイルセット3が3つのコイル20を備える場合を例として説明したが、コイルセット3が備えるコイル20の個数は、巻装の対象となる電機子コアを有する回転電機を駆動する交流電源の相数に応じて適宜変更可能である。すなわち、回転電機を駆動する交流電源の相数がN相(Nは自然数)であれば、コイルセット3がN個の異なる相のコイル20を備える構成とすると好適である。
【0097】
(11)上記第一及び第二の実施形態では、各相のコイル20は、長手方向(通電方向に等しい)に直交する面における断面形状が矩形状の線状導体で構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、断面形状が、円形状、多角形状、楕円形状等の線状導体を用いることができる。
【0098】
(12)上記第一及び第二の実施形態では、ステータコア1が径方向内側R1に開口するスロット10を有するインナーロータ型の回転電機用のステータコアである場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、ステータコア1が径方向外側R2に開口するスロットを有するアウターロータ型の回転電機用のステータコアである構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この構成では、互いに周方向Cに隣接するスロット間に設けられたティースの径方向外側R2の端面を含む仮想的な円筒状の面であるコア外周面を定義することができ、この円筒状のコア外周面を本発明における「円筒状のコア基準面」とすることができる。
【0099】
(13)上記の第一及び第二の実施形態では、U相コイル20u、V相コイル20v、W相コイル20wが、それぞれ、本発明における「第一相コイル」、「第二相コイル」、「第三相コイル」に相当する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一相コイル、第二相コイル、及び第三相コイルのU相コイル20u、V相コイル20v、及びW相コイル20wに対する割当は適宜変更可能である。
【0100】
(14)上記第一及び第二の実施形態では、周方向一方側C1が時計方向であり、周方向他方側C2が反時計方向である場合を例として説明したが、周方向一方側C1と周方向他方側C2を入れ替えた構成とすることも当然に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、円筒状のコア基準面の軸方向及び径方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されてなる電機子コアに対して波巻又は同心巻により巻装されるコイル、及び当該コイルを備えたコイルセットに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1:ステータコア(電機子コア)
3:コイルセット
10:スロット
20:コイル
20u:U相コイル(第一相コイル)
20v:V相コイル(第二相コイル)
20w:W相コイル(第三相コイル)
30:コイル辺部
31:コイルエンド部
32:周方向オフセット接続部
33:径方向オフセット接続部
34:径方向段差部
40:軸方向配列部
41:第一導体部
42:第二導体部
43:第三導体部
44:第四導体部
50:接続部
60:周方向オフセット屈曲部
61:径方向オフセット屈曲部
L:軸方向
L1:軸方向一方側
L2:軸方向他方側
C:周方向
C1:周方向一方側
C2:周方向他方側
R:径方向
R1:径方向内側
R2:径方向外側
S1:第一スロット位置
S2:第二スロット位置
S3:第三スロット位置
S4:第四スロット位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のコア基準面の軸方向及び径方向に延びるスロットが当該コア基準面の周方向に複数分散配置されてなる電機子コアに対して波巻又は同心巻により巻装されるコイルであって、
一本の線状導体により4ターン分が連続成形され、前記電機子コアに巻装された巻装状態において前記スロット内に配置されるコイル辺部と、周方向位置が異なる2つの前記コイル辺部の間を接続するように周方向に延びるとともに前記巻装状態において前記電機子コアの軸方向外側に突出して配置されるコイルエンド部と、を備え、
軸方向一方側の前記コイルエンド部が、周方向に延びる4本の線状導体部を同じ径方向位置で軸方向に積み重ねるように配列してなる軸方向配列部を有し、
前記軸方向配列部において軸方向に配列された4本の線状導体部のそれぞれを、軸方向における前記電機子コア側から順に、第一導体部、第二導体部、第三導体部、第四導体部とした場合に、
前記第一導体部及び前記第二導体部は、一つのスロットの位置である第一スロット位置において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列され、前記第一スロット位置に対して周方向他方側に離間したスロットの位置である第二スロット位置において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列され、
前記第三導体部及び前記第四導体部は、前記第一スロット位置に対して周方向一方側に隣接したスロットの位置である第三スロット位置において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列され、前記第二スロット位置に対して周方向他方側に隣接したスロットの位置である第四スロット位置において軸方向に延びると共に径方向に互いに隣接するように配列されたコイル。
【請求項2】
前記一本の線状導体の何れか一方の端部から他方の端部に向かって、前記第一導体部、前記第二導体部、前記第三導体部、前記第四導体部の順に形成されている請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記第一導体部及び前記第二導体部のそれぞれが、前記第一スロット位置及び前記第二スロット位置の各スロット位置に対応して、当該各スロット位置に配置された前記コイル辺部を構成する部分と、前記軸方向配列部を構成する部分との間を接続する接続部を備え、
前記第三導体部及び前記第四導体部のそれぞれが、前記第三スロット位置及び前記第四スロット位置の各スロット位置に対応して、当該各スロット位置に配置された前記コイル辺部を構成する部分と、前記軸方向配列部を構成する部分との間を接続する接続部を備え、
前記各スロット位置に対応する前記接続部に関し、当該各スロット位置において径方向に互いに隣接するように配列された2本の線状導体部の内の一方の線状導体部の前記接続部が周方向オフセット屈曲部を備えた周方向オフセット接続部とされ、他方の線状導体部の前記接続部が径方向オフセット屈曲部を備えた径方向オフセット接続部とされ、
前記周方向オフセット屈曲部は、前記周方向オフセット接続部の中心線の位置を、前記コイル辺部側から前記軸方向配列部側に向かうに従って、径方向視にて前記径方向オフセット接続部の中心線と略一致する周方向位置から、当該径方向オフセット接続部の中心線に対して周方向にオフセットさせるための屈曲部であり、
前記径方向オフセット屈曲部は、前記径方向オフセット接続部の中心線の位置を、前記軸方向配列部側から前記コイル辺部側に向かうに従って、周方向視にて前記周方向オフセット接続部の中心線と略一致する径方向位置から、当該周方向オフセット接続部の中心線に対して径方向にオフセットさせるための屈曲部である請求項1又は2に記載のコイル。
【請求項4】
前記周方向オフセット接続部と前記径方向オフセット接続部とのいずれかの分類、及び各接続部が備える前記周方向オフセット屈曲部又は前記径方向オフセット屈曲部のオフセット方向に関し、
前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部と前記第三導体部の前記第三スロット位置に対応する前記接続部とが一致するとともに、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部と前記第四導体部の前記第三スロット位置に対応する前記接続部とが一致し、
前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部と前記第三導体部の前記第四スロット位置に対応する前記接続部とが一致するとともに、前記第二導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部と前記第四導体部の前記第四スロット位置に対応する前記接続部とが一致する請求項3に記載のコイル。
【請求項5】
前記第一導体部、前記第二導体部、前記第三導体部、及び前記第四導体部のそれぞれは、軸方向他方側の前記コイルエンド部において周方向に延びる部分を備え、当該周方向に延びる部分のそれぞれが、軸方向における前記電機子コア側から前記第三導体部、前記第四導体部、前記第一導体部、前記第二導体部の順となるように同じ径方向位置で軸方向に積み重ねるように配列されて、軸方向他方側における軸方向配列部を構成している請求項1から4のいずれか一項に記載のコイル。
【請求項6】
請求項4に記載のコイルを3つ備えると共に、それぞれ第一相コイル、第二相コイル、第三相コイルとし、
前記第一相コイル、前記第二相コイル、及び前記第三相コイルは、前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、周方向他方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部及び前記第二スロット位置に対応する前記接続部の双方が、径方向一方側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた前記径方向オフセット接続部であるコイルセット。
【請求項7】
請求項4に記載のコイルを3つ備えると共に、それぞれ第一相コイル、第二相コイル、第三相コイルとし、
前記第一相コイルは、前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、周方向他方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部及び前記第二スロット位置に対応する前記接続部の双方が、径方向内側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた前記径方向オフセット接続部であり、
前記第二相コイルは、前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、径方向外側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた前記径方向オフセット接続部であり、前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、径方向内側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた前記径方向オフセット接続部であり、
前記第三相コイルは、前記第一導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部が、周方向他方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第一導体部の前記第二スロット位置に対応する前記接続部が、周方向一方側にオフセットする前記周方向オフセット屈曲部を備えた前記周方向オフセット接続部であり、前記第二導体部の前記第一スロット位置に対応する前記接続部及び前記第二スロット位置に対応する前記接続部の双方が、径方向外側にオフセットする前記径方向オフセット屈曲部を備えた前記径方向オフセット接続部であるコイルセット。
【請求項8】
前記第二相コイルは、前記軸方向配列部における周方向の所定位置に、周方向一方側を周方向他方側に対して径方向内側にオフセットするための径方向段差部を備え、
前記第一相コイルの前記軸方向配列部における周方向一方側部分が、前記第三相コイルの前記軸方向配列部における周方向他方側部分の径方向外側に、当該周方向他方側部分に対して周方向に重複するように配置され、
前記第二相コイルの前記軸方向配列部における前記径方向段差部に対して周方向一方側部分が、前記第三相コイルの前記軸方向配列部と同じ径方向位置に配置されるとともに、前記第一相コイルの前記軸方向配列部における周方向他方側部分の径方向内側に、当該周方向他方側部分に対して周方向に重複するように配置され、
前記第二相コイルの前記軸方向配列部における前記径方向段差部に対して周方向他方側部分が、前記第一相コイルの前記軸方向配列部と同じ径方向位置に配置されるとともに、前記第三相コイルの前記軸方向配列部における周方向一方側部分の径方向外側に、当該周方向一方側部分に対して周方向に重複するように配置されている請求項6又は7に記載のコイルセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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